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2027年に完成するホテル計画16件・3,672室 — 39〜63階の複合タワー4件と幕張1,000室

投稿日 : 2026.11.04

指定なし

投資・開発

2027年に完成するホテル計画16件・3,672室 — 39〜63階の複合タワー4件と幕張1,000室

当社が収録する100室以上のホテル建築計画(2026年10月28日取得、63件)のうち、完成予定が2027年に入る計画は16件・3,672室である。内訳を見ると、39〜63階の超高層複合に入る4件(大阪・堂島浜、横浜・北仲通、日本橋1丁目、大手町2丁目)が789室、幕張に1件で1,000室を置く計画が最大規模を占め、残る9件は届出用途がホテルのみの単独型(計1,576室)という構成になる。2027年完成の計画のうち着工予定日が収録されている14件は、いずれも2026年3月までに着工時期を迎えており、完成年が後ろにずれる余地はあっても、供給が大きく欠ける可能性は小さい。

本稿では16計画を一覧化したうえで、各計画地の半径1km圏(郊外・リゾート立地は3km圏)にある既存客室に対して新規客室が何%の上積みになるか、そして所在区市の推定成約ADR(2026年9月確定月)がどの水準にあるかを並べ、2027年の供給がどこに、どの価格帯で積み上がるのかを読み解く。想定する読者は、出店判断を控える運営会社、物件の取得・開発を検討するREIT・私募ファンド、そして融資審査にあたる地域金融機関である。

本記事のデータについて
• ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。
• エリア(都道府県・市区町村)単位のADRは、対象施設の推定成約単価の中央値(エリアの標準的な施設の水準)です。
• 掲載価格に言及する箇所は、2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
• OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。
• 出典:メトロエンジンリサーチ(国内約168,000施設のOTA公開価格を継続追跡、うち稼働確認済み約27,000施設)
本稿の母集団と客室ストックの定義
• 建築計画は国土交通省「建築物動態統計調査」の確認申請情報を基に当社が収録したもので、100室以上の計画に限る。全国で進むホテル計画の全数ではなく、当社収録分(2026年10月28日取得・63件)に基づく。完成年別の件数は調査時点での確認申請ベースであり、今後の申請追加で件数は増加する見込みである。
• 本記事の客室ストックは、日本橋1丁目から半径1,000m圏内にある客室数10室以上の宿泊施設(レジャーホテルを除く)を対象とし、「稼働中」は直近3か月(2026年8月〜2026年10月)に主要予約サイトで販売価格が確認できた施設を指す(2026年10月28日時点、メトロエンジンリサーチ集計)。 他の計画地も同じ条件で、半径1,000m(陸前高田・みどり市・富良野・京都相国寺門前町は3,000m)で集計した。
• 推定成約ADRは所在区市(政令指定都市は区)の2026年9月確定月の値で、N=対象施設数を併記する。計画のブランド・名称は、事業者または自治体の公表資料で確認できたものだけを記載し、確認できない計画は推定しない。
2027年完成の計画
16件
3,672室・100室以上
超高層複合(39〜63階)
4件
789室・全体の21%
単独型(用途ホテルのみ)
9件
1,576室
最大の1計画
1,000室
幕張・ひび野 23階複合
収録計画の総数
63件
2026年10月28日取得
Key Takeaways
  • — 16件・3,672室:当社収録の100室以上の建築計画63件(2026年10月28日取得)のうち、完成予定が2027年の計画。平均230室で、幕張の1,000室を除くと平均178室。
  • — 超高層複合4件・789室:堂島浜・横浜北仲通・日本橋1丁目・大手町2丁目の39〜63階タワーに入るホテルでコホートの21%。届出用途がホテルのみの単独型9件は1,576室。
  • — 都心は+0.7〜3.4%:稼働客室が数千〜1万室超ある都心の1km圏では1件の開業による増加率は3%台まで。みどり市・陸前高田は2倍超、幕張は+26.2%。
  • — 大阪市北区は−33.7%:所在区市の推定成約ADR(2026年9月)は渋谷区¥23,657(N=33)が最高。大阪市北区は¥10,360(N=74)と万博会期中の前年同月から大きく下落。
  • — 需要+5%でも幕張は66.6%:開業前の圏内稼働率を80%(通年の前提値)と置く感応度試算(表5)では、都心(+1.4%)は82.8%、幕張(+26.2%)は需要が26%増えて初めて80%を維持する。

完成年別に見ると、2027年は件数で16件・客室で3,672室の中位コホート

まずは収録計画全体の分布を確認しておく。完成予定を年別に積むと、2025年が21件・5,254室、2026年が17件・4,590室、2027年が16件・3,672室、2028年が7件・1,375室、2029年以降が2件・200室と、年を追うごとに件数も客室も細っていく形になる。ただし、この右肩下がりは需要の鈍化ではなく、確認申請が通常は完成の1〜3年前に出されるために、先の年ほど「まだ届出に至っていない計画」が多い観測上の性質によるものだ。2027年は、着工から完成までの工期を考えると新規に加わる計画がほぼ出尽くした年であり、件数の確度が高い最後のコホートといえる。これより先の年を扱った2029年以降に完成するホテル計画43件では、届出が東京都に集中し複合開発が半数を占める構図を示しており、本稿はその手前の2027年に絞って読む。

1件あたりの客室規模にも違いがある。2027年コホートは平均230室で、2025年(平均250室)や2026年(平均270室)よりやや小さい。幕張の1,000室を除くと15件・2,672室、平均178室となり、都心の100〜270室クラスが中心である。超高層複合に入るホテルは、建物全体の規模は大きくてもホテル区画は100〜270室にとどまる点が特徴で、床の大半は住宅・オフィスが占める。

出典:国土交通省「建築物動態統計調査」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(100室以上・当社収録63件、2026年10月28日取得)

2027年に完成する16計画 — 2月の陸前高田から12月の幕張・富良野・大手町まで

16計画を完成予定日の順に並べたのが表1である。2月に岩手県陸前高田市の134室(共立メンテナンス)と大阪・堂島浜の220室、札幌・南7条西4の126室が続き、3月末に渋谷・道玄坂、4月に群馬県みどり市、札幌・北6条西6、岡山駅前、5月に横浜・北仲通、7月に神戸・小野柄通、8月に東日暮里と内神田、9月に京都・相国寺門前町、10月に日本橋1丁目、そして12月末に幕張・富良野・大手町が並ぶ。年の前半に地方中核都市と大阪、後半に東京都心と千葉が集中する時間軸になっている。

名称が公表資料で確認できる計画は7件ある。日本橋1丁目はヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)にウォルドーフ・アストリア東京日本橋(197室)として2027年開業予定と記載され、横浜・北仲通もコンラッド横浜(272室)として同資料の開業予定13軒に含まれている。大阪・堂島浜は三井不動産レジデンシャル等の公表で三井ガーデンホテルズのプレミアシリーズ、岡山駅前はJR四国の公表で同社の新ブランド「HOTEL NEMUS OKAYAMA by CLEMENT」、京都・相国寺門前町は京都市の上質宿泊施設誘致制度の資料でローズウッドの運営、渋谷・道玄坂はTRUNK(HOTEL) DOGENZAKA(仮称)と報じられ、大手町2丁目のTORCH TOWERにはドーチェスター・コレクションが約110室(予定)で入ると報道されている。残る9件は公表資料でブランドを確認できなかったため、建築主・事業者名と計画数値のみを記載した。

表1 2027年に完成予定のホテル建築計画16件(100室以上・当社収録分、2026年10月28日取得)
完成予定計画地客室階数届出用途建築主・事業者公表資料で確認できた名称
2027/02/01陸前高田市高田1343ホテル株式会社共立メンテナンス—
2027/02/26大阪・堂島浜22040分譲共同住宅(514戸)・ホテル・事務所三井不動産レジデンシャル・三井不動産ほか(公表)(仮称)大阪市北区堂島浜二丁目計画/三井ガーデンホテルズ プレミアシリーズ(公表)
2027/02/28札幌・南7条西412610ホテル東急不動産株式会社都市事業ユニット開発企画本部—
2027/03/31渋谷・道玄坂213011事務所・ホテル・飲食店舗・物販店舗・駐車場三菱地所(株)再開発事業部、道玄坂二丁目南地区市街地再開発組合、事業協力者:三菱地所(株)、鹿島建設(株)道玄坂二丁目南地区第一種市街地再開発/TRUNK(HOTEL) DOGENZAKA(仮称・報道)
2027/04/01みどり市笠懸15010ホテル株式会社タイムプロヂュース—
2027/04/30札幌・北6条西616811ホテルアパホーム株式会社、アパマンション株式会社—
2027/04/30岡山・駅前町17716ホテル、共同住宅、店舗野村不動産株式会社岡山市駅前町一丁目2番3番4番地区第一種市街地再開発/JR四国グループの新ホテル(公表)
2027/05/31横浜・北仲通27240共同住宅、ホテル、駐車場株式会社大和地所・住友不動産株式会社(仮称)北仲通北地区A1・2地区/コンラッド横浜(公表)
2027/07/31神戸・小野柄通22312ホテル大和ハウスリアルティマネジメント株式会社—
2027/08/01東日暮里117914ホテルアパホーム株式会社、アパマンション株式会社—
2027/08/15内神田126113ホテルアパホーム株式会社、アパマンション株式会社—
2027/09/30京都・相国寺門前町1353ホテル、駐車場三菱地所株式会社(仮称)京都相国寺門前町計画/ローズウッド(京都市公表資料)
2027/10/31日本橋1丁目19739商業店舗・事務所・ホテル・共同住宅等日本橋1丁目中地区市街地再開発組合、事業協力者:三井不動産株式会社、野村不動産株式会社日本橋一丁目中地区第一種市街地再開発/ウォルドーフ・アストリア東京日本橋(公表)
2027/12/31幕張・ひび野1,00023ホテル,映画館,飲食店,温浴施設ロイヤルリース株式会社—(公表資料で名称は確認できず)
2027/12/31富良野・下御料20010ホテルルートインジャパン株式会社—
2027/12/31大手町210063事務所、ホテル、 ホール、店舗、 駐車場等三菱地所株式会社TORCH TOWER/ドーチェスター・コレクション(報道・約110室予定)

出典:国土交通省「建築物動態統計調査」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成。名称は各事業者・自治体の公表資料、ヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)および報道による

図 2027年完成予定16計画の位置(円の大きさ=客室数)。出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング

既存客室に対する増加率 — 都心は1〜3%、郊外3件と幕張・東日暮里は二桁

供給インパクトは、客室数の絶対値ではなく、その立地にすでにある客室に対する比率で見るべきである。表2と図2は、各計画地を中心とする半径1km圏(郊外・リゾート立地の陸前高田・みどり市・富良野と、1km圏に稼働施設が1軒しかない京都・相国寺門前町は3km圏)にある稼働中の客室数を分母に、計画客室を割った増加率を示している。

結果は明快に二極化した。札幌・南7条西4(+0.7%)、大手町(+1.3%)、堂島浜と札幌・北6条西6(+1.4%)、日本橋(+1.6%)、横浜・北仲通(+2.7%)、道玄坂・岡山・神戸・内神田(+3.1〜3.4%)と、既存ストックが1万室前後ある都心部では、1件の新規開業が圏内客室を押し上げる幅は3%台までにとどまる。一方で、群馬県みどり市(3km圏の稼働客室103室に対し150室、+145.6%)と陸前高田(98室に対し134室、+136.7%)は、1件の開業で圏内の客室が2倍を超える。幕張・ひび野は1km圏に稼働8軒・3,811室とまとまったストックがあるものの、1,000室の計画は+26.2%に相当し、首都圏では最大の供給インパクトになる。東日暮里(1km圏1,128室に対し179室、+15.9%)と富良野(3km圏1,488室に対し200室、+13.4%)もこれに続く。

京都・相国寺門前町は注意が要る。1km圏には客室10室以上の稼働施設が1軒・12室しかなく、1km圏で割れば増加率は意味をなさない。3km圏に広げると稼働177軒・12,861室があり、135室の計画は+1.0%にあたる。御所の北側という立地は、既存の宿泊集積から距離を置いた「飛び地」であることが数字からも読める。

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(2026年10月時点)。圏内客室は客室数10室以上・レジャーホテル除く・直近3か月に販売価格が確認できた施設

表2 各計画地の既存客室ストックと所在区市の推定成約ADR(増加率の降順)
計画地圏域圏内の稼働中客室(軒/室)計画客室既存稼働客室に対する増加率所在区市の推定成約ADR 2026年9月前年同月比
みどり市笠懸3km3軒/103室150+145.6%¥4,390(N=2)+9.9%
陸前高田市高田3km2軒/98室134+136.7%¥7,913(N=5)+26.8%
幕張・ひび野1km8軒/3,811室1,000+26.2%¥17,009(N=13)+43.6%
東日暮里11km21軒/1,128室179+15.9%¥12,236(N=11)-6.9%
富良野・下御料3km25軒/1,488室200+13.4%¥12,395(N=13)+5.4%
内神田11km55軒/7,762室261+3.4%¥14,900(N=80)-3.5%
神戸・小野柄通1km41軒/6,858室223+3.3%¥12,120(N=64)+0.2%
渋谷・道玄坂21km31軒/4,137室130+3.1%¥23,657(N=33)+10.0%
岡山・駅前町1km37軒/5,795室177+3.1%¥8,621(N=50)+12.9%
横浜・北仲通1km39軒/10,192室272+2.7%¥12,428(N=51)+11.2%
日本橋1丁目1km89軒/11,965室197+1.6%¥17,270(N=152)-2.4%
大阪・堂島浜1km55軒/15,640室220+1.4%¥10,360(N=74)-33.7%
札幌・北6条西61km60軒/12,255室168+1.4%¥14,868(N=22)+3.2%
大手町21km58軒/7,909室100+1.3%¥14,900(N=80)-3.5%
京都・相国寺門前町3km177軒/12,861室
(1km圏は稼働1軒・12室)
135+1.0%¥15,353(N=9)+6.2%
札幌・南7条西41km116軒/18,176室126+0.7%¥16,122(N=140)+7.2%

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(2026年10月時点)。ADRは推定成約ADR(2026年9月確定月、税抜相当)、N=対象施設数。みどり市はN=2のため参考値

複合タワー4件と単独型9件 — 1室あたり延床は16㎡から152㎡まで

16計画のうち7件は、届出用途にホテル以外(住宅・事務所・店舗・映画館など)を含む複合用途である。このうち39階以上の超高層が4件あり、堂島浜(40階、ホテルは25〜31階)、横浜・北仲通(40階、1〜16階がホテルで上層は賃貸住宅)、日本橋1丁目(39階)、大手町2丁目(63階、ホテルは上層階で開業は2028年度予定と報じられている)がそれにあたる。4件のホテル客室は合計789室で、2027年コホート全体の21%にあたる。残る3件は道玄坂(ホテル棟11階)、岡山駅前(ホテル棟16階)、幕張(23階)で、計1,307室である。このうち堂島浜・横浜北仲・岡山駅前のように住宅が主たる床を占める棟にホテルが入る構成については、住宅併設ホテル7案件1,401室の供給インパクトで各案件の諸元と商圏データを照合している。

複合用途の計画では、届出の延床面積が建物全体(住宅・オフィス区画を含む)を指す場合があり、ホテル区画だけの効率を比較することはできない。そこで1室あたり延床の比較は、届出用途がホテル(または駐車場を含むホテル)だけの単独型9計画に限った。

表3 複合用途の7計画 — 超高層4件(39〜63階)と中層複合3件
計画地客室階数届出用途ホテル区画の位置(公表・報道)
大阪・堂島浜22040分譲共同住宅(514戸)・ホテル・事務所高層棟40階の25〜31階にホテル、他は住宅
渋谷・道玄坂213011事務所・ホテル・飲食店舗・物販店舗・駐車場ホテル棟11階(隣接オフィス棟30階)
岡山・駅前町17716ホテル、共同住宅、店舗ホテル棟16階、住宅棟(31階)と一体
横浜・北仲通27240共同住宅、ホテル、駐車場40階の1〜16階がホテル、18階以上は賃貸住宅
日本橋1丁目19739商業店舗・事務所・ホテル・共同住宅等39階複合棟の上層階
幕張・ひび野1,00023ホテル,映画館,飲食店,温浴施設23階、映画館・温浴施設と複合
大手町210063事務所、ホテル、 ホール、店舗、 駐車場等63階の上層階、ホテル開業は2028年度予定(報道)
表4 単独型(届出用途がホテルのみ)9計画の規模指標
計画地客室階数延床面積(㎡)1室あたり延床
内神田1261134,27416.4㎡
札幌・北6条西6168112,80016.7㎡
みどり市笠懸150103,21921.5㎡
東日暮里1179143,95422.1㎡
陸前高田市高田13434,80435.9㎡
神戸・小野柄通2231210,88048.8㎡
札幌・南7条西4126107,73061.4㎡
富良野・下御料2001013,00065.0㎡
京都・相国寺門前町135320,553152.2㎡

単独型9計画の1室あたり延床は16.4㎡から152.2㎡まで、約9倍の幅がある。内神田(16.4㎡)、札幌・北6条西6(16.7㎡)、みどり市(21.5㎡)、東日暮里(22.1㎡)は、共用部を含めても1室あたり20㎡前後に収まるコンパクトな客室計画で、宿泊特化型の高密度プランと読める。内神田・東日暮里・札幌北6条西6の3件・608室はいずれもアパグループ(アパホーム・アパマンション)が建築主で、東京都心と札幌駅北口という需要の厚い立地に、短工期で高密度の客室を積む同社の展開力がよく表れている。陸前高田(35.9㎡)と神戸・小野柄通(48.8㎡)はビジネス〜ミドルの中間帯、札幌・南7条西4(61.4㎡)と富良野(65.0㎡)はゆとりのある客室か、飲食・温浴など共用部の比重が大きい計画と推察される。京都・相国寺門前町の152.2㎡は、135室に対し延床20,553㎡を確保する低層3階の計画で、公表されているラグジュアリー運営と整合する水準にある。

出典:国土交通省「建築物動態統計調査」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(届出延床面積÷計画客室数)

所在区市の推定成約ADR — 大阪市北区は−33.7%、渋谷区・岡山市北区は二桁増

供給を受け止める側の価格水準として、各計画地が属する区市の推定成約ADR(2026年9月確定月)を前年同月と並べたのが図4である。最も高いのは渋谷区の¥23,700(N=33、前年同月比+10.0%)で、中央区¥17,300(N=152、−2.4%)、千葉市美浜区¥17,000(N=13、+43.6%)、札幌市中央区¥16,100(N=140、+7.2%)、京都市上京区¥15,400(N=9、+6.2%)が続く。千代田区は¥14,900(N=80、−3.5%)で、内神田と大手町の2計画がここに入る。

対照的なのが大阪市北区である。2026年9月の推定成約ADRは¥10,400(N=74)で、前年同月の¥15,600から−33.7%と、16計画の所在区市で唯一の大幅な下落になった。2025年は大阪・関西万博の会期中にあたり、北区の月次推移を追うと2025年9月の約1.56万円から2026年6月には約8,800円まで下がり、9月時点で約1.04万円へ戻している。堂島浜の220室が開業する2027年春は、万博前の水準への回帰が進んでいるかどうかが問われる局面になる。千葉市美浜区の+43.6%は、N=13という母数の小ささと、幕張メッセの催事日程に左右される月次の振れ(2026年7月は約1.09万円、9月は約1.70万円)を踏まえ、トレンドではなく9月単月の値として読むのが妥当だろう。

地方の3件は所在市のADRが1万円を下回る。岡山市北区は¥8,600(N=50、+12.9%)と伸びているが、177室の新ホテルは駅前再開発の住宅・商業と一体で、価格帯の上積みを狙える立地にある。陸前高田市は¥7,900(N=5、+26.8%)、みどり市はN=2のため参考値にとどまるが、いずれも既存ストックが100室前後の市場であり、新規開業が市のADR統計そのものを塗り替える規模になる。

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング。推定成約ADR(税抜相当)、2025年9月・2026年9月の確定月、N=2026年9月の対象施設数。みどり市(N=2)は除外

2027年の供給を読む3つの視点 — 投資家・運営会社への示唆

ここまでを整理すると、2027年の供給は「都心の超高層に入るラグジュアリー・アッパー帯」「宿泊特化型の都心・駅前」「既存ストックの薄い地方・郊外への大型投入」の三層で構成されていることがわかる。第一の層では、日本橋・大手町・堂島浜・横浜北仲の4件が、既存客室に対して1〜3%の上積みにとどまる一方、価格帯は既存市場の上端を切り開く位置にある。REITや私募ファンドにとっては、周辺既存物件のADR上限が引き上げられる波及効果を織り込む余地があり、特に中央区・千代田区・横浜市中区は推定成約ADRが1.2万〜1.7万円台の中価格帯で厚みがあるため、上位帯の新設が既存のアップセルの余地を広げる方向に働く可能性がある。

第二の層は、アパグループの3件(608室)や神戸・小野柄通の223室に代表される宿泊特化型で、1km圏の増加率は1.4〜3.4%と限定的である。既存の運営会社にとっては、同一価格帯の競合が増える局面だが、千代田区・札幌市北区・神戸市中央区の推定成約ADRは前年同月比で−3.5%〜+3.2%と安定しており、需要の底堅さが供給を吸収する前提は崩れていない。東日暮里(+15.9%)だけは圏内ストックが1,128室と小さく、荒川区の推定成約ADRが¥12,200(N=11、−6.9%)と軟化している点を含めて、開業前後の価格動向を注視したい立地である。

第三の層が、幕張の1,000室、富良野の200室、みどり市の150室、陸前高田の134室である。幕張は1km圏の稼働客室3,811室に対し+26.2%、みどり市と陸前高田は圏内客室を2倍超に、富良野も+13.4%押し上げる規模で、いずれも「既存の相場に収まる」というより「相場を作る」投資になる。地域金融機関が審査にあたる場合、所在市のADR統計(N=2〜13)はこの規模の新規供給を織り込んでいないため、既存平均ではなく、計画の想定客層と集客導線(幕張メッセの催事、富良野の冬季・夏季のリゾート需要、みどり市の産業立地)に即した個別の需要見立てを置くことが、審査の前提として有効といえる。なかでも幕張の1,000室については、敷地条件から逆算した商品レンジと美浜区の実勢ADRから成立条件を分解した海浜幕張駅前1,000室・総投資300億円の複合開発が参考になる。

第三の層の「相場を作る」規模感を、稼働率の側から確かめておく。開業前の圏内稼働率を80%(通年の前提値・試算上の仮定)と置き、開業後の圏内稼働率=80%×(1+需要の増加率)÷(1+客室の増加率)として、表2の増加率ごとに需要の伸びを3シナリオ(悲観±0%・中位+5%・楽観+10%)と+20%で振ったのが表5である。都心の+1.4%であれば需要が横ばいでも78.9%と約1ポイントの低下で収まり、+5%の伸びで82.8%に上がる。これに対し幕張(+26.2%)は需要+10%でも69.7%、陸前高田やみどり市は需要+20%でも40%前後にとどまり、圏内の稼働率を開業前の水準に保つには客室増加率と同じ率の需要増、すなわち新規ホテル自体が新たな需要を呼び込むことが前提になる。

表5 客室増加率×需要増加率の感応度 — 開業後の圏内稼働率(開業前80%と仮定した試算)
計画地客室増加率需要±0%(悲観)需要+5%(中位)需要+10%(楽観)需要+20%80%維持に必要な需要増
大阪・堂島浜/札幌・北6条西6+1.4%78.9%82.8%86.8%94.7%+1.4%
内神田1+3.4%77.4%81.2%85.1%92.8%+3.4%
富良野・下御料+13.4%70.5%74.1%77.6%84.7%+13.4%
東日暮里1+15.9%69.0%72.5%75.9%82.8%+15.9%
幕張・ひび野+26.2%63.4%66.6%69.7%76.1%+26.2%
陸前高田市高田+136.7%33.8%35.5%37.2%40.6%+136.7%
みどり市笠懸+145.6%32.6%34.2%35.8%39.1%+145.6%

出典:客室増加率は表2(メトロエンジンリサーチ&コンサルティング、2026年10月時点)。稼働率は開業前80%を置いた仮定計算で、予測値ではない。新規ホテルによる需要誘発や競合の価格対応は織り込んでいない

まとめ

当社収録の100室以上のホテル建築計画63件のうち、2027年完成は16件・3,672室である。39〜63階の超高層複合に入る4件が789室、幕張の1件が1,000室、単独型9件が1,576室という構成で、既存客室に対する増加率は都心が+0.7〜3.4%、郊外・地方の3件が+13〜146%、幕張が+26.2%と二極化していた。所在区市の推定成約ADRは渋谷区の約2.37万円から陸前高田市の約7,900円まで幅があり、大阪市北区は前年同月比−33.7%と万博後の調整が続いている。母集団は当社収録分であり全国の全計画ではないこと、完成年は確認申請時点の予定であり後ろにずれうることを踏まえつつ、2027年の供給地図として参照していただきたい。

よくある質問

Q. 16件は2027年に完成する全国のホテル計画の全数ですか。

A. いいえ。当社が収録する100室以上の建築計画(2026年10月28日取得・63件)のうち、完成予定が2027年のものを集計した数値です。100室未満の計画や、確認申請情報が収録に至っていない計画は含まれていません。

Q. 既存客室に対する増加率はどのように計算していますか。

A. 計画地を中心に半径1km(郊外・リゾート立地と京都・相国寺門前町は3km)の圏内で、客室数10室以上・レジャーホテルを除き、直近3か月に主要予約サイトで販売価格が確認できた施設の客室数を分母に、計画客室数を割った値です。民泊や10室未満の施設は分母に含まれていません。

Q. 記事中のADRは実際の成約単価ですか。

A. 推定値です。各施設の公開最安プラン水準に業態別の補正係数を適用した推定成約単価(税抜相当)で、上場ホテルREITの物件別開示実績との照合で誤差中央値は約7%であり、各施設の実際の成約価格や会計数値とは異なります。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

建築計画は国土交通省「建築物動態統計調査」の確認申請情報を基に当社が収録したもの(100室以上、2026年10月28日取得の63件、うち完成予定2027年の16件)。圏内客室はメトロエンジンリサーチ集計(客室数10室以上・レジャーホテル除く、「稼働中」は2026年8〜10月に販売価格が確認できた施設、2026年10月28日時点)。推定成約ADRは所在区市(政令指定都市は区)の2026年9月・2025年9月確定月の値で、N=対象施設数。

■ 試算前提

増加率=計画客室÷圏内の稼働中客室(半径1km、陸前高田・みどり市・富良野・京都相国寺門前町は3km)。1室あたり延床=届出延床面積÷計画客室で、延床が建物全体を指しうる複合用途7件は除外。表5は開業前の圏内稼働率を80%(通年の前提値)と置き、開業後稼働率=80%×(1+需要増加率)÷(1+客室増加率)で算出した仮定計算。

■ 限界・留意点

母集団は当社収録分で全国の全計画ではない。完成予定日は確認申請時点の予定で開業日とは異なり、後ろにずれうる(大手町2丁目のホテル開業は2028年度予定と報道)。推定成約ADRは推定値で、N=2〜13の区市は月次の振れが大きい。表5は需要の誘発や競合の価格対応を織り込まない機械的な試算であり、需要予測ではない。

■ 市場データ

■ 政府統計・公的データ

■ 事業者公表資料

■ ニュース・報道

出典: ヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)

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