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ヒルトン福岡シーホーク改装62室は3.1万円〜 — 中央区ADR1.44万円の2.1倍、3〜4名定員22室の受け皿

投稿日 : 2026.10.23

福岡県

エリア・施設分析

ヒルトン福岡シーホーク改装62室は3.1万円〜 — 中央区ADR1.44万円の2.1倍、3〜4名定員22室の受け皿

ヒルトン福岡シーホーク(福岡市中央区地行浜)は2026年10月1日(木)、30・31階のエグゼクティブルーム62室と5階のエグゼクティブラウンジをリニューアルオープンした。ヒルトンが7月15日に公表したリリースによれば、2012年4月以来14年ぶりの大規模改装で、公表料金はエグゼクティブキング・ツインが1室31,000円〜、2寝室・4ベッドのエグゼクティブデラックスファミリーが50,000円〜である。全1,052室のうち改装対象は5.9%にあたる62室だが、そのうち3〜4名定員の客室が22室を占める点に、家族・グループ需要を上層階へ取り込む設計意図が読める。本稿では、この公表料金が福岡市中央区の推定成約ADR(2026年9月・1万4,444円、N=84)に対してどの位置に入るのか、地行浜・百道の半径2km圏と天神・博多の上位グレード施設の客室数・口コミを並べて、クラブラウンジ付き客室という価格帯の厚みを読み解く。

本記事のデータについて
• ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。
• エリア(都道府県・市区町村)単位のADRは、対象施設の推定成約単価の中央値(エリアの標準的な施設の水準)です。
• 掲載価格に言及する箇所は、2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
• OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。
• 出典:メトロエンジンリサーチ(国内約168,000施設のOTA公開価格を継続追跡、うち稼働確認済み約27,000施設)
本記事の客室ストックは、ヒルトン福岡シーホーク(地行浜)から半径2,000m圏内にある客室数10室以上の宿泊施設(レジャーホテルを除く)を対象とし、「稼働中」は直近3か月(2026年8月〜2026年10月)に主要予約サイトで販売価格が確認できた施設を指す(2026年10月20日時点、メトロエンジンリサーチ集計)。天神駅・博多駅の半径1,000m圏も同じ条件で集計している。ヒルトン福岡シーホークの客室数・宴会場数・開業年はヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)、グランド ハイアット 福岡の客室数・開業年月は日本ハイアット「報道資料 2026年4月」の記載値を用いた。推定成約ADRは2026年10月20日の調査時点で再取得した値である。
Key Takeaways
  • — 3.1万円〜:改装62室(全1,052室の5.9%)の公表下限は、福岡市中央区の推定成約ADR1万4,444円(2026年9月・N=84)の約2.1倍、中央区シティホテル2万2,229円(N=12)の約1.4倍の位置
  • — 3〜4名定員22室:62室の35%が3〜4名定員。定員上限で割った1名あたりは11,500〜12,500円と、2名用キング・ツイン(15,500円)より低い価格設計
  • — 2.3〜2.8倍:館全体の推定成約ADRは掲載8か月(2025年9〜12月・2026年6〜9月)で中央区全業態の2.3〜2.8倍、2026年9月は3万5,680円(前年同月比+8.8%)
  • — 2km圏2,100室の50%:地行浜2km圏は掲載14軒・2,100室で、その半分を1棟が占める。稼働中1.6万〜1.8万室の天神・博多1km圏より供給が薄い目的地型の商圏
  • — 3万円超は5施設:上位グレード12施設のうち2026年9月の推定成約ADR3万円超は5施設、うち300室以上はグランド ハイアット 福岡とヒルトン福岡シーホークの2施設のみ

改装の中身 — 62室・5タイプと243㎡のラウンジ

まずは改装の構成を整理したい。ヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)によれば、ヒルトン福岡シーホークは客室1,052室・宴会場30・料飲施設5を備え、2010年にリブランドで開業した九州最大級のフルサービスホテルである。今回の改装対象は30・31階の5タイプで、エグゼクティブキング19室、エグゼクティブツイン21室、エグゼクティブデラックスツイン13室、エグゼクティブデラックストリプル3室、エグゼクティブデラックスファミリー6室の計62室。リリース上はエグゼクティブキングを21室と記載しているが、うち2室は32・33階にあり今回の改装範囲外とされているため、改装室数は62室で一致する。

客室とあわせて、5階のエグゼクティブラウンジは243㎡・88席+個室1に拡張された。朝食は平日6:30〜10:00、土日祝は10:30まで、17:00〜19:00のカクテルタイムには博多湾の夕景を眺めながらアルコールとカナッペが供され、朝食ビュッフェには明太子など福岡の食材が並ぶ。デザインは「博多湾の自然と国際都市・福岡の調和」をコンセプトに、客室には湾のきらめきと海岸線の松林、ラウンジには船旅と砂の質感をモチーフに取り込んだという。

改装対象62室の客室タイプ別構成と公表料金(2026年10月1日リニューアル)
客室タイプ改装室数面積最大定員公表料金(1室)定員上限で割った1名あたり
エグゼクティブキング19室24〜31㎡2名31,000円〜15,500円
エグゼクティブツイン21室23.9〜26.6㎡2名31,000円〜15,500円
エグゼクティブデラックスツイン13室35〜37㎡3名(子供用ベッド)37,000円〜約12,300円
エグゼクティブデラックストリプル3室41.7〜56㎡4名(子供用ベッド)46,000円〜11,500円
エグゼクティブデラックスファミリー6室71.2〜78.7㎡4名(2寝室・4ベッド)50,000円〜12,500円
合計62室—3〜4名定員22室——

出典:ヒルトン福岡シーホーク リリース(2026年7月15日)よりホテルバンク編集部作成。公表料金は1室あたりの下限値(〜)で、日付・需要により変動する。1名あたりは定員上限で機械的に割った目安

この表で目を引くのは、62室のうち3〜4名定員が22室(35%)に達することだ。従来、クラブラウンジ付きのエグゼクティブフロアは2名利用のビジネス・カップル向けに設計されることが多く、71㎡超の2寝室タイプを6室も置くホテルは全国的にも少数派である。デラックスファミリーを定員4名で使えば1名あたり12,500円、デラックストリプルなら11,500円と、2名用のキング・ツイン(15,500円)より1名単価が下がる構造になっており、「3世代でラウンジを使う」という利用シーンへ価格面からも入口を開いていると読める。

公表料金3.1万円は中央区のどこに入るか — 推定成約ADRとの距離

それでは、この公表料金は福岡市中央区の相場のどこに位置するのか。メトロエンジンリサーチのデータによると、中央区(全業態)の推定成約ADRは2025年9月の1万4,535円(N=79)から10月1万6,431円(N=81)、11月1万9,645円(N=80)、12月1万8,232円(N=79)と秋に向けて切り上がり、2026年9月は1万4,444円(N=84)と前年同月比−0.6%でほぼ横ばいに着地した。業態別に見ると、2026年9月のビジネスホテルは1万4,168円(N=71)、シティホテルは2万2,229円(N=12)で、隣接する博多区のシティホテルは2万4,144円(N=10)である。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(福岡市中央区・全業態・推定成約ADR中央値・税抜相当、各月N=76〜84施設、確定月のみ)

エグゼクティブキング・ツインの公表下限31,000円は、中央区全業態の推定成約ADR1万4,444円の約2.1倍、中央区シティホテルの2万2,229円に対しては約1.4倍、博多区シティホテルの2万4,144円に対しては約1.3倍の位置にある。ただし推定成約ADRは税抜相当の成約推定値、公表料金は販売下限値であり基準が異なるため、倍率はあくまで位置づけの目安として読んでほしい。一方で、ヒルトン福岡シーホーク自身の推定成約ADRは2026年9月で3万5,680円と中央区全業態の約2.5倍であり、1,052室の大箱でこの水準を保っていること自体が、エグゼクティブフロアの上に価格帯を積む土台になっている。

出典:メトロエンジンリサーチ(推定成約ADR・2026年9月・税抜相当)、ヒルトン福岡シーホーク リリース(公表料金・1室下限値)よりホテルバンク編集部作成。基準が異なるため倍率は目安

月別に見ると、改装オープンを10月1日に置いた意味も見えてくる。ヒルトン福岡シーホークの推定成約ADRは2025年9月の3万2,795円に対し10月4万5,268円、11月4万7,398円、12月4万4,133円と秋の3か月で35〜45%高い水準にあり、同じ期間の中央区全業態(1万6,431円→1万9,645円→1万8,232円)との倍率は2.4〜2.8倍へ開いた。2026年に入ってからは6月3万2,015円、7月3万3,393円、8月3万4,795円、9月3万5,680円と夏場から段階的に回復しており、単価が季節的に最も厚くなる局面でエグゼクティブフロアの商品力を引き上げた、という時間軸の設計だと読める。

ヒルトン福岡シーホークと中央区全業態の推定成約ADR(月別・確定月)
月ヒルトン福岡シーホーク 推定成約ADR中央区・全業態 推定成約ADR(N)倍率
2025年9月¥32,795¥14,535(79)2.26倍
2025年10月¥45,268¥16,431(81)2.76倍
2025年11月¥47,398¥19,645(80)2.41倍
2025年12月¥44,133¥18,232(79)2.42倍
2026年6月¥32,015¥13,405(83)2.39倍
2026年7月¥33,393¥13,805(83)2.42倍
2026年8月¥34,795¥14,353(83)2.42倍
2026年9月¥35,680¥14,444(84)2.47倍

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(推定成約ADR・税抜相当・確定月のみ。施設単位の値は本記事の定義に基づく推定値)

地行浜・百道の半径2km圏 — 2,100室の半分を1棟が占める商圏

次に立地側の供給を見る。ヒルトン福岡シーホークから半径2,000m圏の客室ストックは掲載14軒・2,100室、うち直近3か月に販売価格が確認できた稼働中の施設は11軒・1,935室である。業態別にはシティホテルが2軒・1,282室、ビジネスホテルが10軒・782室(稼働中7軒・617室)、ホステルが2軒・36室で、ヒルトン福岡シーホーク1棟(当社集計では1,053室)が圏内客室の50.1%を占める。天神駅1km圏が稼働中129軒・1万5,743室、博多駅1km圏が稼働中130軒・1万8,152室という福岡の二大集積と比べると、地行浜・百道は供給が薄く、ドームと海辺という目的地型の需要を一棟で受け止める商圏といえる。天神・博多側の今後の供給パイプラインについては、福岡・博多/天神の客室供給2026-2028が天神ビッグバン後の受け皿を整理している。

ここで注目したいのが、2026年に開業した福岡プリンスホテル ももち浜(229室、ヒルトンから約0.9km)である。推定成約ADRは2026年9月で2万8,865円と、中央区シティホテルの中央値(2万2,229円)を上回る水準で立ち上がっており、2km圏に「上位グレードの選択肢が2つある商圏」が生まれた。クラブラウンジ付きの上層階62室を持つヒルトンと、新築の229室が並ぶことで、百道エリアを目的地として選ぶ宿泊者にとって価格帯の階段が整い、エリア全体の単価の厚みが増す方向に働くと考えられる。

圏域別の客室ストック(2026年10月20日時点)
圏域掲載 軒数/室数稼働中 軒数/室数構成の特徴
地行浜(ヒルトン)2km圏14軒/2,100室11軒/1,935室シティ2軒1,282室(61%)、1棟が50%
天神駅 1km圏180軒/19,522室129軒/15,743室ビジネス中心、上位グレードのシティが点在
博多駅 1km圏178軒/22,037室130軒/18,152室駅前にシティ・ビジネスが高密度

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(客室数10室以上・レジャーホテル除く、2026年10月20日時点。稼働中=直近3か月に販売価格を確認)

天神・博多の上位グレード施設と並べる — 3万円台はどの厚みにあるか

それでは、福岡市内の上位グレード施設の中で3万円台という価格帯はどの程度の厚みを持つのか。地行浜2km圏と天神・博多1km圏から、シティホテル区分かつ上位グレードの12施設を抽出し、客室数・推定成約ADR(2026年9月と前年同月)・口コミ総合スコアを並べた。2026年9月の推定成約ADRが3万円を超えるのは、ザ・リッツ・カールトン福岡(12万4,847円)、グランド ハイアット 福岡(4万3,652円)、ザ・ゲートホテル福岡 by HULIC(3万7,038円)、ヒルトン福岡シーホーク(3万5,680円)、ホテル イル パラッツォ(3万4,749円)の5施設で、2万円台後半に福岡プリンスホテル ももち浜(2万8,865円)とホテル日航福岡(2万8,391円)が続く。

この分布から読めるのは、福岡市内で「3万円台の成約水準をもつ大型シティホテル」はごく限られるという点だ。推定成約ADR3万円超の5施設のうち、客室数300室以上はグランド ハイアット 福岡(378室)とヒルトン福岡シーホーク(1,052室)の2施設だけで、残る3施設は77〜171室の中小規模である。すなわち1,052室という規模でこの単価帯に位置するヒルトンにとって、上層62室にラウンジアクセスを付けて3.1万〜5.0万円の価格帯を明示することは、同一館内に「量」と「単価」の両方を持たせる商品設計だと整理できる。口コミ総合スコアは4.14(N=39,157件)で、12施設の中で最も多い口コミ件数を持つ施設でもある。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(推定成約ADR・2026年9月・税抜相当・施設単位の推定値)

福岡市内の上位グレード12施設 — 客室数・推定成約ADR・口コミ
施設圏域客室数推定成約ADR 2026年9月2025年9月口コミ総合(件数)
ザ・リッツ・カールトン福岡天神167¥124,847¥142,5944.71(323)
グランド ハイアット 福岡天神・博多378¥43,652¥70,3554.65(16,787)
ザ・ゲートホテル福岡 by HULIC天神171¥37,038¥26,3584.71(45)
ヒルトン福岡シーホーク地行浜1,052¥35,680¥32,7954.14(39,157)
ホテル イル パラッツォ天神77¥34,749¥29,7124.67(6,312)
福岡プリンスホテル ももち浜地行浜2km圏229¥28,865—(開業前)—
ホテル日航福岡博多360¥28,391¥29,4474.40(23,564)
ホテルオークラ福岡天神264¥24,807¥27,2084.32(14,257)
ANAクラウンプラザホテル福岡博多320¥21,731¥19,4893.43(12,307)
ホテルモントレ ラ・スール福岡天神191¥20,866¥17,6104.17(15,336)
ホテルニューオータニ博多天神372¥19,375¥17,9193.85(17,946)
西鉄グランドホテル天神279¥18,547¥16,4244.31(23,108)

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(推定成約ADRは税抜相当の施設単位推定値・確定月。口コミはホテルバンク編集部調べ、総合スコア5点満点と累計件数)。客室数はヒルトン福岡シーホークがヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)、グランド ハイアット 福岡が日本ハイアット「報道資料 2026年4月」、その他は当社マスター

前年同月との比較では、12施設のうち7施設で2026年9月の推定成約ADRが前年9月を上回っており、ヒルトン福岡シーホークも3万2,795円から3万5,680円へ+8.8%と、中央区全業態(−0.6%)を上回る伸びで改装月を迎えた。上位グレードの中で単価が切り上がった施設と、前年の高水準を調整した施設が混在するのは、福岡の宿泊市場が2026年に入って「シティホテルの単価は伸び、ビジネスは横ばい」へ分岐してきた流れと整合する(福岡のADRはシティ+6.2%・ビジネス+2.2%へ分岐)。

3〜4名定員22室の受け皿 — 口コミが示す需要層

3〜4名定員の客室を上層階に22室置く判断は、同ホテルの宿泊者像とも噛み合っている。ホテルバンク編集部が集計した直近24か月(2024年10月〜2026年9月)の口コミ2,102件を対象にした言及分析では、「イベント会場へのアクセス」への言及が19.2%(404件、うち肯定330件)、「客室からの眺望」が15.5%(325件、うち肯定297件)、「海・ビーチの近さ」が6.6%(139件、うち肯定128件)、「ラウンジ」が5.1%(107件)と、ドーム・海辺・高層階という立地と建物の特徴が宿泊体験の中心に据えられていることがわかる。旅行目的別では、同期間の口コミのうちレジャー目的が1,106件、ビジネス目的が190件で、レジャー比率が際立って高い。

加えて、言語別に見ると2,102件のうち韓国語の口コミが233件(11.1%)を占め、英語40件、繁体字中国語15件を大きく上回る。福岡と韓国の近接性を映した構成であり、2寝室・4ベッドのデラックスファミリーや子供用ベッド付きのデラックスツインは、家族単位で訪れる近距離インバウンドの受け皿としても機能する余地がある。累計39,157件の口コミの分類別スコアでは、清潔感4.38(N=10,241)、寝心地4.34(N=2,072)、客室4.27(N=13,259)、朝食4.15(N=4,284)と、改装で手を入れた客室とラウンジでの朝食に直結する項目が総合4.14を上回り(サービスは4.12)、上層階の商品を磨く投資が評価軸の強みに重なる設計になっている。

福岡県内で「子連れ」が肯定的に語られる施設の上位(直近24か月、言及10件以上)には、リゾート型や温泉付きの施設が並ぶ。都心部の大型シティホテルで3〜4名定員の客室を上層階にまとめ、ラウンジでの朝食・カクテルタイムまで家族で使える動線を作ることは、この層を市内中心部へ呼び込む数少ない選択肢になる。クラブラウンジ付き客室の上乗せ幅については、全国40軒の同一施設比較で1泊約1.9万円(+43%)という水準を別稿で整理しており(クラブラウンジ付き客室の上乗せは1泊約1.9万円(+43%))、2名用のキング・ツインの公表下限31,000円と館全体の推定成約ADR3万5,680円の関係からも、ラウンジ付き62室の上乗せは日付次第で大きく伸びる構造だと読める。

ドーム公演日と九州場所 — 需要の山は別稿で

地行浜の需要カレンダーを語るうえで、隣接するドームでのプロ野球・コンサートと、11月8日(日)から22日(日)の大相撲九州場所(福岡国際センター)は欠かせない要素である。ただし本稿の主題は改装と価格帯であるため深追いはせず、福岡市内のイベント日の在庫消化の型は福岡の10/24(土)、14日前で残り枠の中央値1.1%・完売中48.9%、業態別のブッキングカーブは福岡県の土曜ブッキングカーブを業態別に比較、ポストシーズンの開催都市需給はプロ野球ポストシーズン2026|開催都市ホテル需給の先読みシナリオを参照してほしい。九州場所期間の平日単価がどこまで取れるかは、大相撲九州場所15日間、福岡の平日単価はどこまで取れるかで前年実績と掲載水準の差を整理している。口コミにおける「イベント会場へのアクセス」19.2%という言及率は、これらの日程でエグゼクティブフロアの需要が厚くなることを示す補助線になる。

所有と運営の枕 — JHR保有物件としての位置

なお、ヒルトン福岡シーホークはジャパン・ホテル・リート投資法人(8985)の保有物件(取得価格64,350百万円・1,052室)であり、同投資法人は2026年8月の変動賃料等導入29ホテル合計で客室稼働率84.1%・ADR23,337円・RevPAR19,616円(前年同月比ADR−8.8%)を公表している。同投資法人は同ホテルを2025年2月に取得しており、月次開示の対象には2026年から加わっている。改装は保有者側の資本的支出と運営側の商品設計が噛み合って成立するもので、1,052室のうち62室という範囲に絞って上層階とラウンジに集中投資する形は、館全体を止めずに単価の天井を引き上げる手順として理解できる。

運営者への示唆 — 大箱の上層に「厚み」をつくる3つの機会

ここまでを整理すると、運営者にとっての機会は3つに絞れる。第一に、館全体の推定成約ADRが商圏中央値の2.3〜2.8倍で推移している大型施設では、上層階の一部をラウンジ付きの商品に切り出すことで、「量を売る階」と「単価を取る階」を同じ建物に共存させられる。第二に、3〜4名定員の客室を上層階に置くと、1名あたり単価を2名用より下げながら1室単価を上げる価格設計が可能になり、家族・3世代・近距離インバウンドという需要層を客単価の高い階へ誘導できる。第三に、改装のオープン時期を単価が季節的に厚くなる10〜12月に合わせると、新しい商品の価格帯が市場に記憶される初期の数か月を高需要期に重ねられる。いずれも断定ではなく、公表料金と推定成約ADRの関係から読み取れる方向性として提示したい。

よくある質問

Q. ヒルトン福岡シーホークのエグゼクティブルームはいくらから泊まれますか。
A. ヒルトンのリリース(2026年7月15日)では、エグゼクティブキングとエグゼクティブツインが1室31,000円〜、エグゼクティブデラックスツインが37,000円〜、デラックストリプルが46,000円〜、デラックスファミリーが50,000円〜と公表されています。いずれも下限値で、日付や需要によって変動します。

Q. 改装された客室は全体のどのくらいですか。
A. 改装対象は30・31階の62室で、ヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)に記載された全1,052室の5.9%に相当します。このうち3〜4名定員の客室は22室です。

Q. 福岡市中央区のホテル相場と比べるとどの位置になりますか。
A. メトロエンジンリサーチの推定成約ADR(税抜相当)は、2026年9月の中央区全業態で1万4,444円(N=84施設)、シティホテルで2万2,229円(N=12施設)でした。公表下限31,000円はそれぞれ約2.1倍・約1.4倍の位置にあります。推定値と公表料金は基準が異なるため、倍率は目安としてご覧ください。

まとめ

ヒルトン福岡シーホークの62室・243㎡ラウンジの改装は、全1,052室の5.9%という限定的な範囲でありながら、公表料金3.1万〜5.0万円という価格帯を福岡市中央区の推定成約ADR(1万4,444円)の2.1〜3.5倍の位置に明示した。地行浜2km圏の客室の半分を占める大箱が、館全体で商圏中央値の2.3〜2.8倍の単価を保ちつつ上層階に3〜4名定員22室を含むクラブフロアを整えたことは、福岡市内で3万円台の成約水準を持つ数少ない大型シティホテルとして「量」と「単価」を同時に持つ商品設計であり、イベント・眺望・海辺という口コミの評価軸、そして韓国語口コミが1割を超える宿泊者構成と噛み合っている。福岡プリンスホテル ももち浜の開業と合わせ、百道エリアには上位グレードの価格帯の階段が整いつつあり、2026年秋以降の単価の厚みを測る定点として追い続けたい。

補足:本記事のADRは2026年10月20日の調査時点で取得した推定成約ADRの確定月(2026年9月まで)のみを用いている。2026年10月以降の月は現時点の掲載水準に基づく推定であり本文では扱っていない。公表料金はヒルトンのリリースに記載された1室あたりの下限値で、将来日程の販売価格はチェックイン日に近づくにつれて変動する。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

メトロエンジンリサーチのOTA公開価格データ(福岡市中央区・博多区の推定成約ADR月次中央値と施設単位の推定値、確定月は2026年9月まで)、半径圏の客室ストック(2026年10月20日時点)、ヒルトン福岡シーホークのリリース(2026年7月15日)とヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)、ジャパン・ホテル・リート投資法人の月次開示、ホテルバンク編集部による口コミ集計(直近24か月・2,102件)。

■ 試算前提

推定成約ADRは最安プラン水準(2名1室利用・1室あたり・税込)に業態別の補正係数を適用した税抜相当の推定値で、エリアの値は対象施設の中央値。本文の倍率は推定成約ADRと公表料金(1室あたりの下限値)の比で、基準の違いを含む位置づけの目安。1名あたりの単価は公表下限を定員上限で機械的に割った値。客室ストックは客室数10室以上・レジャーホテルを除き、稼働中は直近3か月(2026年8〜10月)に販売価格を確認できた施設。

■ 限界・留意点

推定成約ADRは各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なる。公表料金は下限値で、日付・需要によって変動する。エグゼクティブフロア単独の成約単価は把握できないため、館全体の推定成約ADRで代替している。口コミの言及分析は直近24か月の2,102件が対象で、宿泊者全体を代表するとは限らない。2026年10月以降の月は確定値がなく、本文では扱っていない。

出典: ヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)

出典: 日本ハイアット 株式会社「報道資料 2026年4月」

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