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福島県の宿泊税は未導入(2026年10月確認)|払うのは入湯税150円・会津若松350円、導入なら負担率は何%か

投稿日 : 2026.11.01

福島県

福島県の宿泊税は未導入(2026年10月確認)|払うのは入湯税150円・会津若松350円、導入なら負担率は何%か

「福島県 宿泊税」の答えを先に置く。福島県にも、福島市・郡山市・会津若松市・いわき市を含む県内市町村にも、宿泊税は導入されていない。条例案の提出も、導入を検討する会議の設置も公表されていない(2026年10月25日、県公式サイト・県議会の定例会結果一覧・各市の公式サイトを確認)。内堀雅雄知事は2024年7月29日の記者会見で、全国の導入状況を注視するとしたうえで「宿泊税について具体的な検討というものは考えておりません」と述べており、その後の県議会(2025年9月〜2026年9月の5定例会)にも宿泊税に関する議案は出ていない。県内で宿泊者が実際に払う法定の税は、温泉のある宿で市町村が課す入湯税(標準1人1泊150円、会津若松市は2025年10月1日から350円)だけである。本稿では、この「現状」を一次資料で固めたうえで、東京都の3%や宮城県の300円など既存の制度を「もし福島県が同型で導入したら」という仮定で県内6エリアの推定成約ADRと掲載価格に当て、1人1泊の実効負担率を試算する。あわせて入湯税との合算、隣県5県の検討状況、導入が決まった場合に事業者が準備する項目を整理する。

本記事のデータについて
• ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。
• エリア(都道府県・市区町村)単位のADRは、対象施設の推定成約単価の中央値(エリアの標準的な施設の水準)です。
• 掲載価格に言及する箇所は、2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
• OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。
• 出典:メトロエンジンリサーチ(国内約168,000施設のOTA公開価格を継続追跡、うち稼働確認済み約27,000施設)
本稿の試算について
• 福島県が宿泊税を導入する予定は公表されていない。以下の負担率は、他自治体の税額体系を仮に福島県に当てはめた場合の計算であり、導入の予測や提案ではない。
• 1人1泊の課税標準は「素泊まり・税抜」で定義する条例が多い。本稿では推定成約ADR(1室・税抜相当)÷2名を下限側、掲載価格(1室・税込・全プラン平均)÷1.1÷2名を上限側として併記する。旅館の掲載価格は食事代を含むため、上限側は実際の課税標準より高めに出る。
• 実効負担率=宿泊税額÷1人1泊単価(%)。入湯税との合算は(入湯税+宿泊税)÷1人1泊単価。消費税は含めない。沖縄県型は条例どおり1人1泊料金の1,000円未満を切り捨てた額に2%を乗じているため、表示上の負担率は2%をやや下回る。対象期間は2025年10月〜2026年9月の12か月(確定月のみ)、調査時点は2026年10月25日。
Key Takeaways
  • — 未導入・検討会なし:福島県・県内市町村とも宿泊税はなく、条例案も検討会も公表されていない(2026年10月25日確認)。
  • — 入湯税150円・会津若松市350円:県内の宿で払う法定の税は入湯税だけ。会津若松市の350円は2025年10月1日〜2035年9月30日の時限措置。
  • — 東京都型3%は全エリア0%:推定成約ADR基準の1人1泊単価(約¥2,900〜¥7,600)は、どのエリア・業態も免税点1万3,000円に届かない。
  • — 宮城県型300円は旅館で4.0〜4.7%(いわき市・白河市を除く)、ビジネスホテルは全エリア免税。負担率を決めるのは税率より免税点の位置。
  • — 入湯税との合算は最大8.6%(会津若松市の旅館+宮城県型)。仮定税収は延べ959万9,100人泊(2025年)×300円で、全泊課税でも約28.8億円。

福島県の宿泊税は「未導入・検討会なし」 — 知事会見と県議会の記録で確認する

まず現状を一次資料で押さえておきたい。福島県公式サイトで宿泊税に関する公表資料を探すと、見つかるのは2024年7月29日の知事記者会見の記録である。記者が東京・大阪・福岡の3都府県で導入済みで千葉県も検討に入ったことを前提に県の考えを問うと、知事は「全国における導入状況を注視してまいります」としたうえで、東日本大震災と原発事故以降に観光が厳しい状況に置かれ、感染症での落ち込みから「もう一度回復している途上」にあることを理由に、「この宿泊税について具体的な検討というものは考えておりません」と答えた。続けて、2025年のプレDC、2026年の本番DC、2027年のアフターDCという3か年を軸に誘客へ力を尽くすと述べている。

この姿勢はその後も変わっていない。県議会の定例会結果一覧を2025年9月、12月、2026年2月、6月、9月の5定例会分までさかのぼっても、宿泊税の条例案や関連議案は見当たらない。宿泊税は法定外目的税であり、条例の可決と総務大臣の同意を経て施行日が決まる。条例案が出ていない以上、少なくとも1年程度の制度設計と手続きを経なければ課税は始まらないと読める。市町村レベルでも、福島市・郡山市・会津若松市・いわき市の公式サイトに宿泊税の条例や検討会の記載はなく、各市の税のページに並ぶのは入湯税の案内だけである(いずれも2026年10月25日確認)。

むしろ県の政策の向きは課税と逆で、宿泊需要を押し上げる側にある。本番DC「ふくしまデスティネーションキャンペーン」は2026年4月1日〜6月30日に実施され、県の「また来て。」割は1人1泊8,000円(税込)以上の宿泊に3,000円を割り引く制度で、第3期(2026年11月1日〜12月25日宿泊分)と第4期(2027年1月4日〜30日宿泊分)の実施が公表されている。宿泊税を論じる前提として、県が現在は財源確保よりも誘客を優先する局面にあることは押さえておきたい。

県内で払う法定の税は入湯税だけ — 標準150円、会津若松市は350円

では福島県の宿で宿泊者が実際に払う税は何か。答えは温泉(鉱泉浴場)のある宿で市町村が課す入湯税で、地方税法上の法定目的税、標準税率は1人1日150円である。制度の全体像は入湯税とは?いくら払う?標準1人1泊150円・全国一覧と免除で整理しており、ここでは本稿で扱う4市の税率を公式資料から引く。

県内4市の入湯税 — 宿泊・日帰りの税額と主な課税免除(2026年10月25日時点)
市(主な温泉地)宿泊・1人1泊日帰り主な課税免除根拠
福島市(飯坂・土湯・高湯)150円75円12歳未満、修学旅行、15日以上の療養(診断書)福島市「入湯税」
郡山市(磐梯熱海)150円100円共同浴場・一般公衆浴場の入湯者 等郡山市「入湯税の概要」
会津若松市(東山・芦ノ牧)350円350円12歳未満、療養(診断書)、修学旅行。日帰りは税抜1,000円以下なら免除会津若松市「入湯税について」
いわき市(いわき湯本)150円150円(税抜4,200円以下の日帰り中心施設は免除)12歳未満、一般公衆浴場の入湯者いわき市「入湯税」

出典:各市の公式資料よりホテルバンク編集部作成(2026年10月25日時点)

会津若松市の350円は、市税条例の特例として2025年10月1日から2035年9月30日までの10年間に限り「150円」を「350円」と読み替えるもので、引上分の200円は「会津若松市温泉地域活性化基金」に積み立てられ、東山温泉・芦ノ牧温泉の景観修景事業に充てられる。入湯税には制限税率がなく、条例改正だけで税率を変えられる点が総務大臣の同意を要する宿泊税との違いで、この動きは入湯税150円が動き出した — 会津若松350円・伊豆300円で全国の改定例とともに追っている。つまり福島県で「宿泊に乗る税」を論じるなら、現時点の主役は宿泊税ではなく、市町村ごとに税率と免除が異なる入湯税である。

試算の前提 — 6エリアの推定成約ADRと1人1泊換算

ここからが本体である。県内の主要エリアとして福島市、郡山市、会津若松市、いわき市、二本松市(岳温泉)、白河市の6市を選び、メトロエンジンリサーチの推定成約ADR(1室2名・税抜相当)と掲載価格(1室2名・税込・全プラン平均)を2025年10月〜2026年9月の12か月で平均した。宿泊税の課税標準は多くの条例で「1人1泊の素泊まり・税抜料金」なので、1室2名の数値を2で割って1人1泊に換算する。下図は旅館業態とビジネスホテル業態の換算値で、横線は宮城県・長野県が採る免税点6,000円と、東京都が2027年4月から採る免税点1万3,000円である。6エリアの単価がどの階層に位置するかは、福島県の宿泊市場2026 — 会津・裏磐梯・いわき・郡山、4層構造で読む秋のADR階層で県全体の構造とともに整理している。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(2025年10月〜2026年9月の12か月平均。下限側=推定成約ADR÷2、上限側=掲載価格÷1.1÷2。白河市の旅館はN=1〜2のため参考値)

旅館業態の1人1泊換算は、下限側で会津若松市が約¥7,600、二本松市が約¥7,200、郡山市が約¥6,600、福島市が約¥6,400と6,000〜7,600円の帯に並び、いわき市は約¥4,000とやや低い。一方で食事込みの掲載価格から割り戻した上限側は会津若松市で約¥18,400、福島市・郡山市・二本松市で約1万5,200〜1万5,900円になり、下限側の2倍強に開く。この差は旅館の販売が2食付きプランを主体とすることの反映で、素泊まり相当額をどう切り出すかが課税標準の決め手になる。ビジネスホテル業態は下限側で約2,900〜3,800円、上限側でも5,400〜7,200円にとどまり、どの基準で見ても6,000円の免税点を挟む位置にある。

他県の制度を福島県に当てはめると — 免税点の位置で負担率が決まる

当てはめる制度は、都道府県が導入または改定を決めた4型と、市町村の2型である。東京都は2027年4月1日から一律3%・免税点1人1泊1万3,000円未満の定率制へ移行し(東京都主税局)、沖縄県は2027年2月1日から宿泊料金の2%(税額上限2,000円)を課す(沖縄県)。宮城県は2026年1月13日から1人1泊300円・6,000円未満免税(宮城県)、長野県は2026年6月1日から同じく300円(開始3年間は200円)・6,000円未満免税で、福岡県は2020年4月から200円定額・免税点なしである(福岡県)。市町村では、栃木県那須町が2026年10月1日から1万円未満100円〜10万円以上3,000円の6段階、岩手県盛岡市が同日から200円定額をそれぞれ免税点なしで始めた(那須町・盛岡市の宿泊税が10/1開始)。全国の体系は宿泊税の改定一覧 2026-27に整理しており、沖縄県の2%が実勢単価でいくらになるかは沖縄 宿泊税は2027年2月1日から2%で市町村別に試算している。

これらを6エリアの下限側(推定成約ADR基準)に当てた結果が表1である。読み方の要点は税率の高低ではなく、免税点が自エリアの単価のどこに落ちるかにある。

表1 仮定試算:他自治体の税額体系を福島県6エリアに当てた場合の1人1泊実効負担率(下限側=推定成約ADR基準)
エリア業態推定成約ADR
(1室2名)
1人1泊換算対象施設東京都型
3%・免税点1.3万円
沖縄県型
2%・上限2,000円
宮城県・長野県型
300円・6千円未満免税
那須町型
6段階100〜3,000円
福岡県・盛岡市型
200円定額
福島市(飯坂・土湯・高湯)旅館¥12,759¥6,380N=44〜460.0%1.9%4.7%1.6%3.1%
福島市(飯坂・土湯・高湯)ビジネス¥6,395¥3,198N=18〜210.0%1.9%0.0%3.1%6.3%
郡山市(磐梯熱海)旅館¥13,270¥6,635N=22〜240.0%1.8%4.5%1.5%3.0%
郡山市(磐梯熱海)ビジネス¥6,577¥3,288N=25〜250.0%1.8%0.0%3.0%6.1%
会津若松市(東山・芦ノ牧)旅館¥15,137¥7,568N=26〜280.0%1.8%4.0%1.3%2.6%
会津若松市(東山・芦ノ牧)ビジネス¥6,653¥3,326N=10〜100.0%1.8%0.0%3.0%6.0%
いわき市(いわき湯本)旅館¥7,915¥3,958N=33〜390.0%1.5%0.0%2.5%5.1%
いわき市(いわき湯本)ビジネス¥5,814¥2,907N=35〜380.0%1.4%0.0%3.4%6.9%
二本松市(岳温泉)旅館¥14,453¥7,226N=7〜70.0%1.9%4.2%1.4%2.8%
二本松市(岳温泉)ビジネス¥7,501¥3,750N=2〜20.0%1.6%0.0%2.7%5.3%
白河市(那須隣接)旅館¥6,131¥3,066N=1〜20.0%2.0%0.0%3.3%6.5%
白河市(那須隣接)ビジネス¥7,058¥3,529N=3〜30.0%1.7%0.0%2.8%5.7%

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成。税額体系は各自治体の公表資料。福島県に導入予定はなく、仮定の計算である。白河市は対象施設が少ないため参考値(旅館は2施設がそろう2026年2〜9月の8か月平均)

東京都型は、下限側では6エリア・2業態の全12行が免税点1万3,000円に届かず、負担率は0%になる。免税点を高く置いた定率制は、単価水準が東京都の半分以下の福島県に移すと「ほぼ誰にも課税されない制度」になるということである。宮城県・長野県型の300円は免税点6,000円を境に二分され、旅館業態では福島市4.7%、郡山市4.5%、会津若松市4.0%、二本松市4.2%と4〜5%に達する一方、いわき市の旅館とビジネスホテル業態は全エリアで免税となる。沖縄県型の2%は定率なので単価によらず1.4〜2.0%に収まり、那須町型は1万円未満の100円が効いて旅館1.3〜3.3%(参考値の白河市を除けば1.3〜2.5%)、ビジネス2.7〜3.4%、福岡県・盛岡市型の200円定額は単価の低いビジネスホテル業態で6%前後まで上がる。宮城県の免税点6,000円は、県内旅館の下限側単価(6,000〜7,600円)のすぐ下にあるため、仮に同型を採れば旅館にはほぼ全面的に課税され、ビジネスホテルにはほぼ課税されない、という線引きになる。免税点1万3,000円が東京都内の実勢単価のどこに落ちるかは、東京の宿泊税が2027年4月1日から3%定率へで検証しており、同じ制度が単価水準の違う地域でどう効くかの対照になる。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(旅館業態・下限側。東京都型は全エリア0%のため省略。仮定の計算)

次に、食事込みの掲載価格から割り戻した上限側で同じ計算をしたのが表2である。課税標準に食事分が混ざった場合の「最大でこの程度」という目安と考えてほしい。

表2 仮定試算:旅館業態・上限側(掲載価格÷1.1÷2名)での1人1泊実効負担率
エリア掲載価格
(1室2名・税込)
1人1泊換算
(税抜)
対象施設東京都型
3%・免税点1.3万円
沖縄県型
2%・上限2,000円
宮城県・長野県型
300円・6千円未満免税
那須町型
6段階100〜3,000円
福岡県・盛岡市型
200円定額
福島市(飯坂・土湯・高湯)¥33,457¥15,208N=45〜513.0%2.0%2.0%2.0%1.3%
郡山市(磐梯熱海)¥34,789¥15,813N=21〜243.0%1.9%1.9%1.9%1.3%
会津若松市(東山・芦ノ牧)¥40,370¥18,350N=26〜283.0%2.0%1.6%1.6%1.1%
いわき市(いわき湯本)¥21,742¥9,883N=34〜380.0%1.8%3.0%1.0%2.0%
二本松市(岳温泉)¥34,962¥15,892N=7〜73.0%1.9%1.9%1.9%1.3%
白河市(那須隣接)¥27,748¥12,613N=1〜20.0%1.9%2.4%2.4%1.6%

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成。掲載価格は全プラン平均で食事代を含むため、課税標準としては高めに出る。仮定の計算

上限側に移ると構図が変わる。東京都型では福島市・郡山市・会津若松市・二本松市の旅館が1万3,000円を超えて3%の課税対象になり、1人1泊で約460〜550円、負担率は3.0%になる。いわき市の旅館(約¥9,900)と白河市は上限側でも非課税のままである。定額型は単価が上がる分だけ率が下がり、宮城県型は1.6〜2.4%(上限側でも1万円を下回るいわき市のみ3.0%)、那須町型は1万円以上2万円未満の300円が適用される5エリアで1.6〜2.4%、1万円未満のいわき市は100円で1.0%に収まる。下限側と上限側のどちらに近いかは、各施設が素泊まり相当額をどう設定するかで決まる。那須町の条例が「いわゆる素泊まり料金とそれにかかるサービス料等」を課税標準とし、食事代と消費税を含めないと定めているように、食事付きプランの分解が税額を左右する。

入湯税との合算 — 1万円未満の温泉宿で負担はどこまで積み上がるか

温泉宿の宿泊者が払う税は入湯税と宿泊税の二本立てになる。入湯税+宿泊税、1万円未満の温泉宿は単価の7.2%では、温泉地19市町村の1,152軒を価格帯別に集計し、推定成約ADR(1室2名)1万円未満の帯で入湯税と宿泊税の合計が単価の7.2%(施設別中央値)に達することを示した。同じ方法を福島県の旅館業態に当てると表3になる。入湯税は各市の現行税率(会津若松市のみ350円)、宿泊税は仮定の4型である。

表3 入湯税(現行)+宿泊税(仮定)の合算負担率 — 旅館業態・下限側・1人1泊
エリア入湯税
(現行)
1人1泊換算入湯税のみ
(現状)
+沖縄県型2%+宮城県型300円+那須町型+200円定額
福島市(飯坂・土湯・高湯)150円¥6,3802.4%4.2%7.1%3.9%5.5%
郡山市(磐梯熱海)150円¥6,6352.3%4.1%6.8%3.8%5.3%
会津若松市(東山・芦ノ牧)350円¥7,5684.6%6.5%8.6%5.9%7.3%
いわき市(いわき湯本)150円¥3,9583.8%5.3%3.8%6.3%8.8%

出典:メトロエンジンリサーチ、各市の公表資料よりホテルバンク編集部作成。東京都型は下限側で全エリア非課税のため「入湯税のみ」と同値。仮定の計算

現状の負担は入湯税だけなので、福島市・郡山市の旅館で2.3〜2.4%、いわき市で3.8%、350円の会津若松市で4.6%である。ここに宮城県型の300円を重ねると福島市7.1%、郡山市6.8%、会津若松市8.6%となり、先の記事で示した温泉地19市町村の1万円未満帯(1室単価)の中央値7.2%とほぼ同じ水準に届く。いわき市は単価が6,000円を下回るため宮城県型では免税のまま3.8%にとどまるが、免税点のない200円定額型では8.8%と4市で最も高くなる。定額型は単価の低い宿ほど率が上がるという、先の記事と同じ構造が福島県でも再現される。

価格帯ごとの形を一般化したのが下図である。横軸は1人1泊単価(素泊まり・税抜)、縦軸は入湯税と宿泊税の合計が単価に占める比率で、入湯税150円の市と350円の会津若松市について、宿泊税なし・宮城県型・那須町型・東京都型を重ねた。

出典:各自治体の公表資料よりホテルバンク編集部作成(制度の数式を単価帯に当てた仮定の計算。実在の施設の値ではない)

曲線が教えるのは三つである。第一に、定額型(宮城県型)は6,000円の免税点の直上で負担率が最も高く(150円の市で7.5%、会津若松市で10.8%)、単価が上がるほど下がる。第二に、那須町型は段階の入口で跳ね、出口で下がる鋸歯状になるが、おおむね2〜5%の幅に収まる。第三に、東京都型は1万3,000円未満では入湯税のみの負担率に一致し、1万3,000円を境に3ポイント前後の段差が生じる。福島県の旅館の下限側単価(6,000〜7,600円)は、このうち定額型の負担率が最も高くなる帯にちょうど重なる。制度の型によって負担が最大化する単価帯が違う、という事実は、仮に将来議論が始まったときに事業者が持ち込める論点になる。

隣県5県の状況 — 宮城は導入済み、栃木は県の検討会議が2回目、他3県は県レベルの公表なし

福島県が接する5県の状況を、県と県内市町村に分けて並べたのが表4である。調査時点は2026年10月25日で、県の公式サイトと総務省の公表資料で確認できた内容に限る。

表4 福島県と隣接5県の宿泊税の状況(2026年10月25日時点)
県県レベル県内市町村の動き根拠
福島県未導入。条例案・検討会の公表なし。知事は2024年7月29日の会見で「具体的な検討は考えていない」宿泊税の導入・検討を公表した市町村なし。会津若松市が入湯税を350円へ(2025年10月1日〜)知事記者会見、県議会定例会結果(2025年9月〜2026年9月)
宮城県導入済み。2026年1月13日宿泊分から1人1泊300円、6,000円未満は免税仙台市内は県100円+市200円の計300円。鳴子温泉(大崎市)は県税300円の対象宮城県「宿泊税」、仙台市「宿泊税」
栃木県検討中。「栃木県観光振興財源検討会議」を設置し、第1回を2026年7月17日、第2回を10月19日に開催。第2回の議題は「県が実施すべき観光振興施策の検討、他自治体における財源確保事例の比較等」那須町が2026年10月1日から町独自の宿泊税(6段階100〜3,000円)を課税。日光市・那須塩原市は未導入栃木県 第2回検討会議、第1回
山形県県レベルの条例案・検討会の公表は確認できず山形市が宿泊料金の3%の定率制を2027年4月1日に施行予定(2026年6月30日に総務大臣同意)総務省 報道資料
新潟県県レベルの条例案・検討会の公表は確認できず佐渡市が2024年7月に「佐渡市宿泊税検討会議」を設置し、宿泊税と入島税を含めた財源を検討佐渡市 検討会議資料
茨城県県レベルの条例案・検討会の公表は確認できず(県サイトには宮城県・仙台市の課税開始に関する観光庁の事務連絡を掲載)導入・検討を公表した市町村は確認できず茨城県「観光庁からの通知等」

出典:各県・市町村・総務省の公表資料よりホテルバンク編集部作成(2026年10月25日時点)。共同通信の2025年8月調査では32都道府県の92自治体が新規導入を検討中と回答している

この表を県境の温泉地に落とすと、課税の有無が価格競争に効く構図が見える。那須町の1人1泊換算は全施設で約¥9,900(N=49〜54)、旅館業態で約¥10,100(N=28〜31)なので、那須町型の税額は旅館業態なら1万円以上2万円未満の300円(3.0%)、全施設の中央値なら1万円未満の100円(1.0%)が乗る。もともと那須町と白河市の単価差は3倍近くあるため、300円が客の流れを変える規模ではないが、同じ那須高原の名で売る施設が県境の両側にある以上、「税込み総額」の表示が揃ったときに300円分の見え方が違ってくる。鳴子(大崎市・宮城県税300円の対象)と飯坂(福島市・課税なし)の関係はより拮抗している。大崎市の旅館業態の1人1泊換算は約¥6,300(N=28〜32)、福島市の旅館は約¥6,400(N=44〜46)と単価帯が重なるうえ、大崎市側は免税点6,000円のわずかに上に位置する。宮城県の300円が課税されるかどうかは施設ごとの素泊まり相当額の設定次第で、同じ価格帯の飯坂側には乗らない。県境の両側で同じ単価帯の宿が税の有無だけで分かれる状態は、宿泊税が県単位で決まる以上、どの県境でも起こりうる。

仮に導入された場合の税収規模 — 延べ宿泊者数960万人泊×税額×課税対象比率

負担率は宿泊者側から見た数字だが、制度を設計する県の側から見れば論点は税収の規模になる。観光庁の宿泊旅行統計調査(2025年・年の確定値)では、福島県の延べ宿泊者数は959万9,100人泊(うち外国人35万9,730人泊)、隣の宮城県は1,041万7,370人泊である。定額型の税収は「延べ宿泊者数×課税対象になる宿泊の比率×税額」で決まるので、課税対象比率を仮定の軸に置いて表5の格子を作った。

表5 仮定試算:福島県が定額型の宿泊税を導入した場合の年間税収規模(2025年の延べ宿泊者数959万9,100人泊を基準)
税額(1人1泊)課税対象40%60%80%100%(全泊課税)
100円(那須町型の1万円未満)約3.8億円約5.8億円約7.7億円約9.6億円
200円(福岡県・盛岡市型)約7.7億円約11.5億円約15.4億円約19.2億円
300円(宮城県・長野県型)約11.5億円約17.3億円約23.0億円約28.8億円

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年(年の確定値)第2表よりホテルバンク編集部作成。課税対象比率は仮定値で、免税点・課税免除(修学旅行・12歳未満等)・徴収事務費は考慮していない。福島県に導入予定はなく、仮定の計算である

読み方の要点は、どの税額を選ぶかより課税対象比率のほうが税収を大きく動かすことにある。300円の宮城県型でも、課税対象が全泊の4割なら約11.5億円、全泊なら約28.8億円と2.5倍の開きがある。そして課税対象比率を決めるのは免税点である。表1で見たとおり、推定成約ADR基準の1人1泊単価はビジネスホテル業態が全6エリアで約¥2,900〜¥3,800と6,000円の免税点を下回り、旅館業態でもいわき市(約¥4,000)と白河市が下回る。宮城県型をそのまま移せば、ビジネスホテルの宿泊はほぼ課税対象から外れ、税収の大半を温泉旅館の宿泊者が負担する構造になる。免税点のない200円定額型なら比率は100%に近づくが、その場合は単価の低いビジネスホテルで負担率が6%前後に上がる(表1)。税収の厚みと負担の偏りは免税点の位置で同時に決まり、どちらか一方だけを最適化することはできない。

導入が決まった場合に事業者が準備する項目 — 那須町・盛岡市の10月施行例から

福島県に導入予定はないが、仮に条例案が出てから施行までの期間は、那須町(2025年6月条例可決→2026年10月1日施行)と盛岡市(2025年12月24日公布→2026年10月1日施行)の例で9〜16か月だった。両自治体の施行に合わせて事業者の実務を整理した記事から、福島県内の事業者が同じ局面で準備することになる項目を引いておく。

導入が決まった場合の準備項目 — 那須町・盛岡市の例と福島県内の事業者が備える点
項目那須町・盛岡市の例福島県内の事業者が備える点
特別徴収義務者の登録那須町は営業開始の前日までに施設ごとに申告。盛岡市は市の指定番号を取得。町外・市外に本社がある場合は納税管理人を置く施設ごとの申告が原則。県外本社のチェーン・REIT保有物件は納税管理人の設定を本社側で手当てする
課税標準の切り出し那須町は「素泊まり料金とそれにかかるサービス料等」が課税標準で、食事代・消費税を含めない。食事付きプランは素泊まり相当額をプランごとにマスター登録2食付き主体の温泉旅館ほど影響が大きい。プラン別の素泊まり相当額を事前に整理しておくと、施行時の作業が設定変更だけで済む
PMS・予約サイトの税表示宿泊税は預り金として売上の外に置き、「税込料金+入湯税・宿泊税別途」の表示に揃える入湯税の表示をすでに行っている温泉宿は、同じ枠に宿泊税を追加する形になる。定率制なら料金連動の計算をPMS側に持たせる
免税点・課税免除の判定那須町は12歳未満と学校主催の修学旅行等(大学を除く)を免除、免税点なし。盛岡市は免除の条文がなく年齢を問わず200円免税点(宮城県型なら6,000円)や年齢免除の有無で、チェックイン時の確認項目と徴収額が変わる。入湯税の12歳未満免除と条件が一致するとは限らない
申告・納入のサイクル那須町は毎月分を翌月末まで(初年度は10〜2月分を2027年3月31日まで、要申請)。盛岡市は毎月末日までに前月分、要件を満たせば3か月ごとに変更可入湯税の申告(郡山市は翌月末日、いわき市は毎月15日)と期限が異なる場合、月次の経理カレンダーを二本立てにする

出典:那須町・盛岡市・郡山市・いわき市の公式資料よりホテルバンク編集部作成。各施設の適用は所管の税務課に確認を

これらは導入が決まってから取りかかっても間に合う作業である。ただし、課税標準の切り出しだけは平時に整えておく価値がある。食事付きプランの素泊まり相当額は、宿泊税の有無にかかわらず料金設計の基礎になる数字であり、整理しておけば仮に制度が動いたときの対応が設定変更だけで済む。

まとめ

福島県と県内市町村に宿泊税はなく、条例案も検討会も公表されていない(2026年10月25日確認)。県は2024年7月の知事会見で「具体的な検討は考えていない」と述べ、以後の県議会にも議案は出ておらず、政策の向きはDCと「また来て。」割による誘客にある。県内で宿泊者が払う法定の税は入湯税だけで、標準150円、会津若松市は2035年9月までの10年間350円である。他県の制度を仮に当てはめると、東京都型の3%は下限側で全エリア非課税、宮城県型の300円は旅館で4〜5%・ビジネスホテルで免税、200円定額型はビジネスホテルで6%前後と、負担率を決めるのは税率より免税点の位置である。入湯税との合算は宮城県型で福島市・郡山市の旅館が7%前後、会津若松市が8.6%に達し、温泉地19市町村の1万円未満帯(1室単価)の中央値7.2%と同じ水準になる。隣県では宮城県が導入済み、栃木県が県の検討会議を2回開き、那須町・山形市・佐渡市と市町村単位の動きが先行しているが、福島県が同じ道を選ぶかどうかは県の判断であり、本稿の数字はその判断材料の一つにすぎない。事業者にできることは、素泊まり相当額の整理という平時の準備である。

よくある質問

Q. 福島県に宿泊税はある?
A. ない。福島県は宿泊税を導入しておらず、条例案の提出も検討会の設置も公表されていない(2026年10月25日確認)。内堀知事は2024年7月29日の記者会見で「宿泊税について具体的な検討というものは考えておりません」と述べ、2025年9月〜2026年9月の県議会5定例会にも宿泊税の議案は出ていない。

Q. 福島市・会津若松市など市町村の宿泊税は?
A. 福島市・郡山市・会津若松市・いわき市を含め、県内で宿泊税の導入や検討を公表した市町村はない。会津若松市は宿泊税ではなく入湯税を2025年10月1日から350円(標準150円)に引き上げており、2035年9月30日までの時限措置である。

Q. 入湯税との違いは?
A. 入湯税は温泉(鉱泉浴場)に入る行為に市町村が課す法定目的税で、標準1人1日150円。温泉のない宿にはかからない。宿泊税は泊まる行為に都道府県や市町村が条例で課す法定外税で、総務大臣の同意が必要。福島県の宿で現在かかるのは入湯税だけである。

Q. もし導入されたら、いつから・いくら?
A. 現時点で導入予定はなく、時期も税額も未定である。参考として、那須町・盛岡市では条例の可決・公布から施行まで9〜16か月を要した。税額は制度次第で、他県の体系を福島県の単価に当てた仮定試算では、東京都型3%なら標準的な施設は免税点に届かず非課税、宮城県型300円なら旅館で1人1泊単価の4〜5%、ビジネスホテルは免税という結果になる。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

福島県6市(福島市・郡山市・会津若松市・いわき市・二本松市・白河市)の推定成約ADRと掲載価格はメトロエンジンリサーチの都市×業態別月次集計(2025年10月〜2026年9月の12か月平均、対象施設数は各表に記載)。比較の那須町・大崎市も同じ集計。延べ宿泊者数は観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年(年の確定値)。税額体系・課税免除は各自治体・総務省の公表資料(2026年10月25日時点)。

■ 試算前提

1人1泊単価の下限側=推定成約ADR(1室2名・税抜相当)÷2、上限側=掲載価格(1室2名・税込・全プラン平均)÷1.1÷2。実効負担率=宿泊税額÷1人1泊単価、入湯税との合算は(入湯税+宿泊税)÷1人1泊単価。沖縄県型は1,000円未満切り捨て後に2%、那須町型は1万円未満100円・1万円以上2万円未満300円を適用。表5の税収規模=延べ宿泊者数×課税対象比率(仮定値40〜100%)×税額。

■ 限界・留意点

福島県に宿泊税の導入予定はなく、全ての負担率・税収は他自治体の制度を仮に当てはめた計算であり、導入の予測や提案ではない。推定成約ADRは施設の実際の成約価格と異なり、旅館の上限側は食事代を含むため課税標準より高めに出る。白河市・二本松市のビジネスホテルは対象施設が2〜3施設で参考値、白河市の旅館は2施設の8か月平均。税収規模は免税点・課税免除・徴収事務費を考慮していない。

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