トップ > 業界トレンド > ホテルのリネン費は1室年7.4万〜51.4万円 — 業態別のADR比と連泊時交換の設計【2026年】

ホテルのリネン費は1室年7.4万〜51.4万円 — 業態別のADR比と連泊時交換の設計【2026年】

投稿日 : 2026.10.26

東京都

大阪府

京都府

北海道

沖縄県

ホテルのリネン費は1室年7.4万〜51.4万円 — 業態別のADR比と連泊時交換の設計【2026年】

ホテル・旅館の変動費のなかで、リネン(シーツ・枕カバー・タオル・館内着・浴衣など)は請求書が毎月届くわりに、1室・1泊あたりでいくらかかっているかが運営指標として語られることの少ない費目である。本稿では、業態ごとに1泊で入れ替わるリネンの枚数を置き、観光庁「宿泊旅行統計調査」の平均泊数と1室あたり宿泊人数、メトロエンジンリサーチの推定稼働率と推定成約ADRを掛け合わせて、5都道府県・4業態の13区分についてリネン費を1室あたりの年額とADR比に落とし込んだ。基準ケースの試算では、連泊中も毎日交換する場合の年額は1室あたり約12.3万〜51.4万円、ADRに対する比率は約3.0〜12.0%となり、連泊中の交換を省略する運用では年額が約2〜5割縮む。削る対象としてではなく、見えにくい原価をどう設計するかという視点で数字を読み解く。

本記事のデータについて
• ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。
• エリア(都道府県・市区町村)単位のADRは、対象施設の推定成約単価の中央値(エリアの標準的な施設の水準)です。
• 掲載価格に言及する箇所は、2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
• OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。
• 出典:メトロエンジンリサーチ(国内約168,000施設のOTA公開価格を継続追跡、うち稼働確認済み約27,000施設)
本稿の試算の読み方
• リネン単価は、ホテル規模の契約を想定した本稿独自の基準ケース(リース料と洗濯加工賃を含む1枚あたり料金・税抜)であり、特定事業者の価格ではない。実際の単価は契約条件で大きく変わるため、自施設の単価に置き換えて読んでいただきたい。
• 稼働率は2026年6〜9月の4ヶ月平均(OTA販売在庫に基づく推定値・主要予約サイト掲載ベース)。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なる。比較のため観光庁の2025年客室稼働率を当てはめた年額も併記した。
• ADRは2025年10月〜2026年9月の12ヶ月の推定成約ADR(月次のエリア中央値の平均・税抜相当)。リネン費のADR比は稼働率に左右されない指標である。
Key Takeaways
  • — 1泊あたりのリネン費は基準ケースでビジネス約410円、旅館約1,410円。1泊で入れ替わる枚数は業態により約5.7〜16.8枚と3倍近く開く。
  • — 毎日交換する場合の年額は1室約12.3万〜51.4万円、ADR比は約3.0〜12.0%(5都道府県・4業態の13区分、推定稼働率は2026年6〜9月平均)。
  • — 連泊中の交換を省略すると年額は約2〜5割縮む。平均泊数2.10泊の東京都シティホテルで52.4%減、1.27泊の北海道の旅館では21.3%減にとどまる。
  • — クリーニング業の施設数は1997年度末164,225施設から2024年度末69,855施設へ約57%減。最低賃金の引き上げと物流の時間外上限規制も重なり、単価は上がりやすい。
  • — 口コミの好意的な割合は寝具33.7%、タオル52.9%で、推定成約ADRの価格帯による差はほぼ無い。評価を左右するのは単価帯よりも運用と品目の設計である。

クリーニング所は20年余りで半分以下に — 受け皿の縮小と単価上昇の背景

まず、リネンの単価を押し上げている構造から確認しておきたい。厚生労働省「衛生行政報告例」によると、クリーニング業の施設数(取次所を含む)は1997年度末の164,225施設から2024年度末には69,855施設へと、約57%減った。家庭向けの店舗を含む数字であり、宿泊施設のリネンを扱う工場だけの推移ではないものの、洗濯を担う産業の裾野が細っていることは読み取れる。

出典:厚生労働省「衛生行政報告例」(1997〜2021年度はe-Stat、2022〜2024年度は「令和6年度衛生行政報告例の概況」)よりホテルバンク編集部作成

対照的なのが宿泊施設の数である。同じ統計で2020年度末を100とすると、洗濯設備を持つクリーニング所(取次所を除く)は2024年度末に82.8まで減った一方、旅館業の施設数は110.3まで増えている。リネンを出す側が増え、受ける側が減るという需給の組み合わせが、単価の上昇圧力として働いていると考えられる。

出典:厚生労働省「令和6年度衛生行政報告例の概況」よりホテルバンク編集部作成(各年度末、2020年度=100)

コスト面の要因も重なる。白洋舍の解説によれば、リネンサプライの単価は集配の車両費・人件費からなる基本料金、洗濯・乾燥・仕上げの加工賃、布製品そのもののレンタル料で構成される。このうち人件費については、令和8年度の地域別最低賃金が全国加重平均1,177円(前年度比+56円)に引き上げられ、10月から順次発効している。集配を担うトラック運転者には2024年4月から時間外労働の上限(年960時間)が適用されており、配送頻度の高い契約ほど物流費の比重が増す。宿泊施設向けのコスト解説でも、人件費と水道光熱費の上昇、材料費の高騰を背景に値上げ要請が続いていると指摘されている。同じ賃金改定が宿の側の清掃人件費に及ぼす影響は、ホテル客室清掃の人件費は1室640円 — 2026年最低賃金改定後の47県試算で整理している。

需要側は堅調である。矢野経済研究所の調査では、国内リネンサプライ市場は2025年度に5,388億円(前年度比103.6%)と5年連続で拡大し、ホテルリネンは2026年度見込みで前年度比104.0%、市場全体の38.2%を占める。同調査は人材が慢性的に確保しにくい状況にも触れ、2027年度から特定技能の対象分野にリネンサプライが加わる予定であるとしている。宿の側から見れば、リネンは「黙っていても下がる費目」ではなく、契約と運用で設計していく費目になったといえる。

業態別の1泊あたりリネン枚数 — ビジネス約5.7枚、旅館約16.8枚

次に、1泊で入れ替わるリネンの枚数を業態ごとに置く。ビジネスホテルはシーツ・デュベカバー・枕カバーの寝具3点を1室1組とし、バスタオルとフェイスタオルを宿泊人数分とした。シティホテルとリゾートホテルは寝具3点とタオル類、ガウン(ナイトウェア)を人数分とし、バスマットを1室1枚加えた。旅館は布団のシーツ・掛布団カバー・枕カバーとタオル類に、浴衣と帯を人数分、丹前は通年の半分の期間に使う前提で人数分の0.5枚を足している。

宿泊人数は、観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年確定値の延べ宿泊者数を利用客室数で割った値を使った。全国ではビジネスホテル1.34人、シティホテル1.77人、リゾートホテル2.38人、旅館2.24人である。この人数を掛けると、1泊あたりの枚数はビジネス約5.7枚、シティ約11.6枚、リゾート約15.3枚、旅館約16.8枚となり、業態によって3倍近い開きが出る。

表1 業態別のリネン品目と1泊あたり枚数・費用(基準ケース単価・税抜)
品目基準ケース単価(1枚・税抜)ビジネスシティ/リゾート旅館
シーツ(ベッド・敷布団)¥1001室1枚人数分人数分
デュベカバー・掛布団カバー¥1501室1枚人数分人数分
枕カバー¥401室1枚人数分人数分
バスタオル¥60人数分人数分人数分
フェイスタオル¥30人数分人数分人数分
バスマット¥50—1室1枚—
ガウン・ナイトウェア¥150—人数分—
浴衣/帯¥120/¥30——人数分
丹前(羽織)¥200——人数分×0.5
1泊あたり枚数(全国の宿泊人数)—約5.7枚約11.6/15.3枚約16.8枚
1泊あたりリネン費(全国の宿泊人数)—約¥410約¥990/¥1,310約¥1,410

出典:単価は本稿の試算前提。宿泊人数は観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年確定値(延べ宿泊者数÷利用客室数)よりホテルバンク編集部作成

単価の置き方には幅がある点も付記しておく。京都の宿泊施設向けリネン業者の公開料金はシーツ330円〜、枕カバー150円、バスタオル120円で、民泊向けの解説では1LDK・17点のセットが1回2,500〜4,000円(1枚あたり約150〜240円)とされる。いずれも集配の頻度が低い小口契約の水準であり、本稿の基準ケースはその3〜4割程度に当たる。小口契約に近い施設では、以下の金額とADR比をおおむね2倍に読み替えると実態に近づくだろう。

年間交換回数は平均泊数で決まる — 連泊時の交換省略で2〜5割の差

年間の交換回数は「365日×稼働率」で埋まった客室泊数を出し、そこに連泊時の運用を掛けて求めた。ケースAは連泊中も毎日すべて交換する運用、ケースBは連泊中のリネン交換を省略し、チェックアウト時のみ全量を交換する運用(いわゆるエコ清掃を全量に適用した場合)である。ケースBの交換回数は埋まった客室泊数を平均泊数で割った値になり、平均泊数は延べ宿泊者数を実宿泊者数で割って求めた。

平均泊数は区分ごとに差が大きい。東京都のシティホテルは2.10泊と長く、ケースBにすると交換回数が52.4%減る。一方、北海道の旅館は1.27泊で、減少幅は21.3%にとどまる。連泊が多い施設ほど運用の選び方が年額を左右し、1泊滞在が中心の旅館では運用よりも1泊あたりの枚数と単価の設計が効いてくる構造である。平均泊数が清掃原価をどこまで動かすかについては、ホテルの平均泊数で清掃原価は1室年18.7万円動くで47都道府県の試算を示している。

表2 5都道府県・4業態13区分のリネン費年額とADR比(推定稼働率2026年6〜9月平均、推定成約ADR2025年10月〜2026年9月)
都道府県業態平均泊数1室あたり人数推定稼働率
(対象施設/客室)
推定成約ADR1泊リネン費年額A
毎日交換
年額B
連泊時省略
ADR比AADR比B
東京都ビジネス1.731.5090.4%
534施設/78,020室
¥14,203
N=912
¥42514.0万円8.1万円3.0%1.7%
大阪府ビジネス1.431.4779.6%
283施設/47,691室
¥9,634
N=497
¥42212.3万円8.6万円4.4%3.1%
京都府ビジネス1.771.6282.7%
188施設/19,442室
¥13,868
N=323
¥43513.1万円7.4万円3.1%1.8%
北海道ビジネス1.501.4091.2%
219施設/25,632室
¥8,954
N=431
¥41613.8万円9.2万円4.6%3.1%
沖縄県ビジネス1.561.5287.0%
133施設/12,523室
¥8,928
N=194
¥42613.5万円8.7万円4.8%3.1%
東京都シティ2.101.8889.1%
53施設/17,199室
¥27,211
N=107
¥1,04534.0万円16.2万円3.8%1.8%
大阪府シティ1.651.8982.2%
34施設/7,861室
¥13,185
N=94
¥1,05231.6万円19.1万円8.0%4.8%
京都府シティ1.811.9183.2%
35施設/4,926室
¥23,435
N=58
¥1,06532.4万円17.9万円4.5%2.5%
北海道シティ1.521.7890.3%
35施設/8,556室
¥14,624
N=75
¥99432.8万円21.6万円6.8%4.5%
北海道リゾート1.452.1384.0%
85施設/9,088室
¥16,687
N=139
¥1,18136.2万円24.9万円7.1%4.9%
沖縄県リゾート1.812.3487.9%
178施設/16,403室
¥16,730
N=270
¥1,29041.4万円22.9万円7.7%4.3%
京都府旅館1.452.7082.8%
84施設/1,598室
¥24,472
N=195
¥1,70051.4万円35.3万円7.0%4.8%
北海道旅館1.271.8485.4%
162施設/7,170室
¥9,670
N=276
¥1,15836.1万円28.4万円12.0%9.4%

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成。平均泊数・1室あたり人数は観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年確定値。推定稼働率は2026年6〜9月平均(主要予約サイト掲載ベース、対象施設数・客室数は4ヶ月平均)。京都府の旅館は月により76〜101施設。推定成約ADRは2025年10月〜2026年9月の月次エリア中央値の平均(Nは対象施設数の月平均)

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(基準ケース単価、推定稼働率2026年6〜9月平均)

年額で見ると、ビジネスホテルはケースAで1室あたり12.3万〜14.0万円、ケースBで7.4万〜9.2万円に収まる。シティホテルはケースAで31.6万〜34.0万円、リゾートホテルは36.2万〜41.4万円、旅館は京都府が51.4万円と最も大きい。100室のビジネスホテルに置き直すと、東京都ではケースAが年約1,404万円、ケースBが約814万円となり、運用の選び方だけで年約590万円の差が生まれる計算になる。

単価と運用を同時に動かすと、どちらの打ち手がどれだけ効くかを同じ表で比べられる。下表は、東京都の100室のビジネスホテル(推定稼働率と平均泊数は表2の東京都・ビジネスのまま)について、リネン単価の水準と、連泊中の交換を省略する運用をどこまで広げるか(連泊中の客室泊のうち省略を適用する割合)を掛け合わせ、年額とADR比を並べたものである。

表3 東京都・ビジネスホテル100室のリネン費年額 — 単価水準×連泊時省略の適用割合の2軸感度
リネン単価の水準 \ 連泊時省略の適用割合0%25%50%75%100%
基準×0.8
(単価交渉で2割減)
1,123万円
ADR比2.4%
1,005万円
ADR比2.1%
887万円
ADR比1.9%
769万円
ADR比1.6%
651万円
ADR比1.4%
基準ケース1,404万円
ADR比3.0%
1,256万円
ADR比2.7%
1,109万円
ADR比2.4%
962万円
ADR比2.0%
814万円
ADR比1.7%
基準×1.52,106万円
ADR比4.5%
1,885万円
ADR比4.0%
1,664万円
ADR比3.5%
1,442万円
ADR比3.1%
1,221万円
ADR比2.6%
基準×2.0
(小口契約に近い水準)
2,808万円
ADR比6.0%
2,513万円
ADR比5.4%
2,218万円
ADR比4.7%
1,923万円
ADR比4.1%
1,628万円
ADR比3.5%

出典:メトロエンジンリサーチ、観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年確定値よりホテルバンク編集部試算(推計値)。適用割合0%はケースA、100%はケースBに当たり、その間は線形に按分した。単価以外の前提は表2と同じ

単価が5割上がっても、連泊中の交換省略を全量に適用すれば年額は約1,221万円となり、基準単価で毎日交換する場合(約1,404万円)を下回る。一方、小口契約に近い2倍の単価では、全量に適用しても約1,628万円と基準ケースの約1.2倍が残り、ADR比も3.5%にとどまって基準ケースの毎日交換(3.0%)には届かない。単価交渉で2割下げた効果(年約281万円)は、省略の適用割合を5割に広げた効果(約295万円)とほぼ同じ大きさで、契約と運用のどちらから手を付けても同程度の余地があることが分かる。

なお、推定稼働率はOTA販売在庫ベースで夏季の4ヶ月を対象としているため、年平均の実稼働率とは異なる。観光庁の2025年客室稼働率を当てはめると、特に旅館とリゾートホテルで年額が小さくなる。運営計画に使う場合は、自施設の稼働率で置き換えるのが確実である。

表4 推定稼働率と観光庁 客室稼働率(2025年)で見たリネン費年額の比較
区分推定稼働率
(2026年6〜9月)
観光庁 客室稼働率
(2025年)
年額A
(推定稼働率)
年額A
(観光庁稼働率)
年額B
(観光庁稼働率)
東京都・ビジネス90.4%81.5%14.0万円12.7万円7.3万円
大阪府・ビジネス79.6%82.9%12.3万円12.8万円8.9万円
京都府・ビジネス82.7%77.4%13.1万円12.3万円7.0万円
北海道・ビジネス91.2%76.1%13.8万円11.5万円7.7万円
沖縄県・ビジネス87.0%77.2%13.5万円12.0万円7.7万円
東京都・シティ89.1%77.2%34.0万円29.4万円14.0万円
大阪府・シティ82.2%79.4%31.6万円30.5万円18.5万円
京都府・シティ83.2%77.5%32.4万円30.1万円16.6万円
北海道・シティ90.3%74.5%32.8万円27.0万円17.8万円
北海道・リゾート84.0%51.1%36.2万円22.0万円15.2万円
沖縄県・リゾート87.9%66.6%41.4万円31.4万円17.3万円
京都府・旅館82.8%41.7%51.4万円25.9万円17.8万円
北海道・旅館85.4%43.9%36.1万円18.6万円14.6万円

出典:メトロエンジンリサーチ、観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年確定値よりホテルバンク編集部作成

ADR比は稼働率に左右されない — ビジネス3〜5%、旅館は7〜12%

経営指標として扱いやすいのは、1泊あたりリネン費をADRで割った比率である。稼働率の前提に左右されず、価格改定や契約見直しの効果をそのまま比べられる。基準ケースのケースAでは、ビジネスホテルが3.0〜4.8%、シティホテルが3.8〜8.0%、リゾートホテルが7.1〜7.7%、旅館が7.0〜12.0%となった。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(基準ケース単価、推定成約ADRは2025年10月〜2026年9月平均)

同じ業態でも、ADRの水準によって比率は大きく動く。シティホテルでは東京都(ADR約2.7万円)が3.8%であるのに対し、大阪府(約1.3万円)は8.0%と2倍強に開く。リネンの枚数は客室単価にかかわらずほぼ一定であるため、単価帯が低い区分ほど比率が高く出るのは自然な結果である。北海道の旅館の12.0%も、1泊あたり約1,160円のリネン費に対して推定成約ADRが約9,700円という組み合わせから生じている。ここでのADRは最安プラン水準から推定した客室単価であり、食事を含む販売単価で割れば比率はもっと小さくなる点に留意したい。

この比率は、価格設計の目安としても使える。小口契約に近い単価(基準ケースの約2倍)を置くと、ビジネスホテルで6〜10%、旅館では14〜24%まで上がる。リネン費をADRの何%に収めるかという目標を先に置けば、単価交渉、品目の見直し、連泊時の運用、館内着の提供方法といった打ち手を同じ物差しで比べられるようになる。こうした費目がGOPの階層のどこに位置づけられるかは、ホテルのGOPとは|計算式・USALIの階層・100室モデル感応度が参考になる。

口コミが示す「当たり前品質」と「差別化の余地」

コストを掛けたリネンが宿泊者の評価にどう表れるのかを、補助的に口コミから確認した。ホテルバンク編集部が集計した直近24ヶ月の宿泊者口コミのうち、NLP解析で「寝具の清潔さ」と「タオル」に関する言及が判定された施設を、東京都・大阪府・京都府・北海道・沖縄県の4業態について集計した(口コミ件数が多く施設単位の抽出上限に達する区分は除いた)。

寝具の清潔さについては、622施設・2,374件の言及のうち、好意的な評価は33.7%にとどまり、3分の2は改善を望む内容だった。清潔な寝具は満たされていて当然と受け止められ、気付かれるのは期待を下回ったときという「当たり前品質」の性格が強い。一方、タオルについては498施設・9,416件のうち52.9%が好意的で、質感や枚数の充実が評価として表に出やすい項目といえる。業態別ではビジネスホテル(61.6%)と旅館(58.8%)で好意的な割合が高い。

出典:ホテルバンク編集部調べ(NLP解析、直近24ヶ月の宿泊者口コミ)。価格帯は推定成約ADR(2025年10月〜2026年9月平均)

表5 推定成約ADR帯別に見た寝具・タオルの口コミ評価(直近24ヶ月)
推定成約ADR帯寝具 施設数寝具 言及件数寝具 好意的な割合タオル 施設数タオル 言及件数タオル 好意的な割合
1万円未満15742438.0%1001,23754.8%
1万〜1.5万円14549830.5%1211,99553.0%
1.5万〜2.5万円15069431.0%1483,57153.5%
2.5万円以上13566736.9%1112,41650.7%

出典:ホテルバンク編集部調べ(NLP解析)、メトロエンジンリサーチ。表は推定成約ADR帯別の内訳(寝具587施設・2,283件、タオル480施設・9,219件)

注目したいのは、好意的な割合がADRの価格帯でほとんど変わらない点である。寝具は30.5〜38.0%、タオルは50.7〜54.8%の範囲に収まり、高価格帯ほど評価が高いという傾向は見られなかった。リネンの評価は客室単価よりも、交換のタイミング、補充のしやすさ、肌触りといった運用と品目の設計で決まる部分が大きいと読める。連泊時のタオルの扱いについては、交換の頻度や枚数に触れた声も見られた。交換を省略する運用を採る場合でも、希望すればすぐに交換・補充できる導線と、その旨を客室で分かりやすく伝える工夫を組み合わせることで、コストの最適化と満足度の両立が図りやすくなるだろう。

まとめ — リネン費を「設計する原価」に

本稿の基準ケースでは、リネン費は1泊あたりビジネスホテルで約410円、旅館で約1,410円となり、ADR比はビジネスで3〜5%、旅館で7〜12%に達した。年額はビジネスホテルで1室12万〜14万円、旅館では最大51万円に上り、連泊中の交換を省略する運用では2〜5割縮む。平均泊数が長い都市部のシティホテルほど運用の効果が大きく、1泊滞在が中心の旅館では枚数と単価の設計が効く。

クリーニング所の減少、最低賃金の引き上げ、物流の労働時間規制が重なり、リネンの単価は今後も上がりやすい環境にある。だからこそ、リネン費をADR比で管理し、業態と滞在パターンに合わせて品目・交換頻度・契約条件を組み立てることに伸びしろがある。口コミの分析が示すように、評価を左右するのは価格帯ではなく運用であり、清潔さを確実に満たしたうえでタオルなど目に見える部分に重点を置く配分は、どの価格帯の宿にとっても検討する価値がある。

試算に関する注記:本稿のリネン単価は基準ケースとして置いた仮定値であり、特定のリネンサプライ事業者の料金を示すものではない。稼働率・ADRは調査時点(2026年10月)で確定している月のデータに基づく推定値である。施設ごとの実額は契約単価、品目構成、客室タイプ、連泊時の運用、自社洗濯の有無により大きく異なる。

あわせて読みたい

参考資料・出典一覧

■ データソース

平均泊数・1室あたり宿泊人数・客室稼働率は観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年確定値(第4・5・7・8表)。推定稼働率はメトロエンジンリサーチの都道府県×業態集計(主要予約サイト掲載ベース、2026年6〜9月の4ヶ月平均)、推定成約ADRは同じく月次エリア中央値の12ヶ月平均(2025年10月〜2026年9月、N=58〜912施設)。クリーニング業の施設数は厚生労働省「衛生行政報告例」。口コミは直近24ヶ月の宿泊者口コミのNLP解析(寝具622施設・タオル498施設)。

■ 試算前提

1泊あたりリネン費=品目別の基準ケース単価(リース料・洗濯加工賃込み、税抜)×1泊あたり枚数(品目により1室1組または宿泊人数分)。年額A=1泊あたりリネン費×365日×推定稼働率(連泊中も毎日交換)、年額B=年額A÷平均泊数(連泊中は省略しチェックアウト時のみ交換)。ADR比=1泊あたりリネン費÷推定成約ADR。表3は東京都・ビジネスの年額を単価水準0.8〜2.0倍、省略の適用割合0〜100%で按分した2軸感度。

■ 限界・留意点

基準ケース単価は本稿の仮定値で、特定事業者の料金ではない。推定稼働率はOTA販売在庫ベースの夏季4ヶ月平均で、施設全体の年平均実稼働率とは異なる(観光庁の稼働率を当てた年額を表4に併記)。推定成約ADRは最安プラン水準からの推定で、食事込みの販売単価で割れば比率は小さくなる。自社洗濯の有無、客室タイプ、品目構成、連泊時の運用により実額は大きく変わる。

関連記事