ベトナムからの訪日客は2025年に67万8,594人(前年比+9.2%)と過去最高を更新し、2026年も1〜8月累計で50万5,300人(+5.4%)と伸びが続いている。月別の到着の山は旧正月テトを含む2月に出る一方で、観光庁の宿泊旅行統計で延べ宿泊者数を月別に追うと、山は2月ではなく4月と11月に立っていた。観光目的の訪日が約半数にとどまる市場だけに、到着と宿泊のずれがどの県でどう出るのかは、観光地以外の県で業務型ホテルを運営する事業者にとって見過ごせない論点になる。本稿では、JNTOの月次推計、観光庁の国籍別・都道府県別延べ宿泊者数、出入国在留管理庁の在留外国人統計を並べ、ベトナム客が泊まる県と在留者の多い県の重なりを確かめたうえで、テト2027(2027年2月6日・土曜)に向けた2月の推定成約ADRを県別・都市別に示す。
• ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。
• エリア(都道府県・市区町村)単位のADRは、対象施設の推定成約単価の中央値(エリアの標準的な施設の水準)です。
• 掲載価格に言及する箇所は、2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
• OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。
• 出典:メトロエンジンリサーチ(国内約168,000施設のOTA公開価格を継続追跡、うち稼働確認済み約27,000施設)
- — 67万8,594人:2025年のベトナム訪日客は前年比+9.2%で過去最高。2026年1〜8月累計も50万5,300人(+5.4%)と伸びは一桁に落ち着いた。
- — 到着は2月、宿泊は4月と11月:2025年はテトの2月が到着最多(7万3,813人)でも延べ宿泊は4万3,670人泊と年間最少で、到着1人あたり0.59泊にとどまる。
- — 東京・大阪・愛知で55.8%:延べ宿泊70万7,470人泊(2025年)の過半が3都府県に集まる一方、外国人宿泊に占める比率は埼玉・愛知・山梨・岐阜・静岡などで全国平均0.46%の3倍前後。
- — 在留68万1,100人との重なり:埼玉・兵庫・福岡・茨城・群馬は在留が多く宿泊が少ない県で、訪問需要を宿泊に転換する余地がある(相関であり因果は断定しない)。
- — テト2027は2月6日:製造業の県の2026年2月の推定成約ADRはビジネス区分で¥6,300〜¥7,700と4月との差も小さく、単価より年間を通じた指名の積み上げが効く市場。
到着の山はテトの2月、2026年はテト明けの3月が過去最多
まずは到着側から確認したい。JNTOの訪日外客統計によると、2025年のベトナムからの訪日客は67万8,594人で、2024年の62万1,173人から5万7,000人あまり増えて過去最高となった。月別では2月が7万3,813人(前年同月比+22.7%)で年間最多かつ最高の伸び率を記録し、3月(6万4,123人・−5.0%)を除く11か月で前年を上回っている。2025年のテト(旧正月元日)は1月29日で、連休が1月末から2月初旬にかかったことが2月の山をつくったと読める。
2026年に入ると、同じ山が1か月ずれた。テト2026は2月17日(火曜)で、2月の到着は6万1,079人(−17.3%)と前年を割ったものの、3月は9万2,051人(+43.6%)と単月の過去最多を更新し、4月も7万6,029人(+18.6%)と高水準を保った。ただし5月(5万8,058人・−2.0%)、7月(5万2,100人・−2.7%)、8月(5万6,600人・−7.5%)は前年割れが続き、6月(5万6,508人・+6.7%)を含めた1〜8月累計は50万5,300人(+5.4%)と、伸び率は一桁に落ち着いている。訪日ラボはこの鈍化の背景として、経済見通しの不透明感による海外旅行需要の抑制と、中国旅行の人気継続を挙げている。なお、JNTOの9月分推計は本稿執筆時点(10月20日)で未公表のため、8月分を最新値として扱う。
出典:日本政府観光局(JNTO)「訪日外客統計」月次推計値よりホテルバンク編集部作成。2026年は1〜8月(8月は推計値)
消費面では、観光庁のインバウンド消費動向調査をもとに訪日ラボが集計した2025年のベトナム市場の旅行消費額は2,055億円、1人あたり旅行支出は30万3,379円で、いずれも過去最高だった。到着が伸び、単価も維持されている市場である。一方で、観光・レジャー目的の比率は2024年が51.7%、2025年が49.9%と約半数にとどまる。残りの半数には親族・知人訪問や留学・就労に関わる来訪が含まれており、この構成こそが、宿泊の山が到着の山と一致しない理由の有力な候補になる。
延べ宿泊の山は4月と11月 — 到着1人あたりの宿泊は2月が最も薄い
観光庁「宿泊旅行統計調査」の2025年年間値(確定値)には、従業者数10人以上の施設を対象にした国籍別・都道府県別の外国人延べ宿泊者数(参考第1表)が収録されている。ベトナム国籍の延べ宿泊者数は2025年に70万7,470人泊で、外国人全体(同集計1億5,425万4,100人泊)の0.46%にあたる。これを月別に並べると、4月が8万1,340人泊で最多、11月が7万8,780人泊で続き、到着が最多だった2月は4万3,670人泊と年間で最も少ない月だった。
到着と宿泊を同じ月で割った「到着1人あたり延べ宿泊」を機械的に計算すると、年間平均が1.04泊に対し、2月は0.59泊、8月は0.74泊で、11月と12月は1.52泊まで上がる。月をまたぐ滞在や集計対象外の小規模施設があるため厳密な滞在日数ではないものの、テトの来訪者がホテルに泊まる比率が桜や紅葉の時期より低いという傾向は、この比率からも読み取れる。親族や知人の家に滞在する来訪が多いのか、滞在が短いのかは統計からは判別できないが、少なくとも「テトの2月に到着が増える=ホテルの2月需要が増える」とは単純には言えない。全市場で同じ除算を行い、到着が過去最高でも延べ宿泊が減った構図を1人あたり泊数で分解した訪日客は過去最高でも延べ宿泊者数は減少 — 1人あたり3.96泊とADRの二極化も、この読み方の参考になる。
| 2025年 | 訪日客数(人) | 前年同月比 | 延べ宿泊者数(人泊) | 到着1人あたり宿泊 |
|---|---|---|---|---|
| 1月 | 50,415 | +13.0% | 47,670 | 0.95 |
| 2月(テト1/29) | 73,813 | +22.7% | 43,670 | 0.59 |
| 3月 | 64,123 | −5.0% | 64,160 | 1.00 |
| 4月 | 64,089 | +4.0% | 81,340 | 1.27 |
| 5月 | 59,263 | +17.2% | 58,630 | 0.99 |
| 6月 | 52,935 | +11.5% | 56,800 | 1.07 |
| 7月 | 53,538 | +7.7% | 59,080 | 1.10 |
| 8月 | 61,215 | +16.8% | 45,290 | 0.74 |
| 9月 | 50,419 | +9.9% | 43,900 | 0.87 |
| 10月 | 53,238 | +4.4% | 61,830 | 1.16 |
| 11月 | 51,850 | +3.3% | 78,780 | 1.52 |
| 12月 | 43,696 | +9.1% | 66,300 | 1.52 |
| 年計 | 678,594 | +9.2% | 707,470 | 1.04 |
出典:JNTO「訪日外客統計」、観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値(確定値)参考第1表(従業者数10人以上の施設、ベトナム国籍)よりホテルバンク編集部作成。「到着1人あたり宿泊」は延べ宿泊者数÷訪日客数の単純比
2026年分についても補足しておく。観光庁の2026年1〜7月の第2次速報では、国籍別表の対象が「客室数20室以上の施設」に変わり、国籍区分も24区分に拡張されたため、2025年の年間値とは直接比較できない。その2026年の系列だけを見ると、ベトナム国籍の延べ宿泊は1月4万7,600人泊、テトを含む2月が8万7,690人泊、3月6万9,990人泊、4月が11万7,310人泊で最多、5月6万8,150人泊、6月7万3,820人泊、7月7万6,800人泊と推移した。2026年は2月にも山が立ち、そのうち北海道が1万2,680人泊(2月の都道府県別で3位)を占めている。テト月の宿泊は年によって振れるが、4月が最大の山になる点は2025年と2026年で共通していた。
ベトナム客が泊まる県 — 東京・大阪・愛知で55.8%、構成比が高いのは製造業の県
では、その宿泊はどの県に出ているのか。2025年年間値のベトナム国籍延べ宿泊者数を都道府県別に並べると、東京都が19万6,130人泊(全国の27.7%)、大阪府が12万9,210人泊(18.3%)、愛知県が6万9,250人泊(9.8%)で、上位3都府県で55.8%を占める。京都府5万170人泊、千葉県3万3,020人泊、静岡県2万7,060人泊、山梨県2万5,390人泊、神奈川県2万4,940人泊、岐阜県2万3,280人泊、北海道2万2,020人泊が続き、上位10都道府県で84.9%に達した。国籍ごとの宿泊がどの県に受け止められているかという全体の地図は、首位交代は米国、2位台湾・3位韓国 — 国籍別宿泊の県別受け皿マップ2026で47都道府県の分布として整理している。
出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値(確定値)参考第1表(従業者数10人以上の施設)よりホテルバンク編集部作成
規模で見れば三大都市圏に集中する構図だが、各県の外国人延べ宿泊者数に占めるベトナム国籍の比率に目を移すと、顔ぶれが変わる。全国平均が0.46%のところ、島根県2.37%、福島県2.01%、埼玉県1.58%、愛知県1.53%、山梨県1.51%、岐阜県1.46%、静岡県1.41%、三重県1.39%、茨城県1.39%、滋賀県1.31%と、製造業の集積地や観光地以外の県で全国平均の3倍前後に達する。対照的に東京都は0.38%、京都府0.32%、北海道0.20%、福岡県0.12%にとどまり、欧米豪や東アジアの来訪が厚い観光地ほど、ベトナム客の存在感は相対的に薄い。愛知県内の国籍別順位では、ベトナムは「その他」を除く20か国・地域中10位(中国・台湾・韓国・香港・タイが上位5か国)で、6万9,250人泊という量と1.53%という比率を両立させている。
在留者68.1万人の分布と重ねる — 宿泊の多い県、在留者の多い県、その両方の県
ここで出入国在留管理庁「在留外国人統計」を重ねる。2025年12月末の在留ベトナム人は68万1,100人で、在留外国人412万5,395人の16.5%を占め、中国に次ぐ2番目の規模にある。都道府県別では愛知県7万820人、大阪府7万728人、東京都5万8,535人、埼玉県5万2,974人、神奈川県4万4,546人、千葉県4万1,680人、兵庫県3万4,482人、福岡県2万3,701人、静岡県2万1,671人、茨城県2万1,369人の順で、群馬県1万6,814人、広島県1万6,300人、岐阜県1万5,941人、三重県1万5,732人が続く。在留資格の内訳は特定技能1号が15万8,497人(23.3%)、技術・人文知識・国際業務が12万1,079人(17.8%)、技能実習(1号ロ・2号ロ・3号ロ合計)が18万7,925人(27.6%)、家族滞在が7万6,958人(11.3%)、留学が4万7,145人(6.9%)で、働き盛りの世代が地域の産業を支えながら暮らしている。この在留者の広がりが、本国から家族や友人を呼ぶ来訪の受け皿になっている。
| 都道府県 | 延べ宿泊者数 2025年(人泊) | 宿泊順位 | 在留者数 2025年12月末(人) | 在留順位 | 在留者1人あたり宿泊 | 外国人宿泊に占める比率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 東京都 | 196,130 | 1 | 58,535 | 3 | 3.35 | 0.38% |
| 大阪府 | 129,210 | 2 | 70,728 | 2 | 1.83 | 0.56% |
| 愛知県 | 69,250 | 3 | 70,820 | 1 | 0.98 | 1.53% |
| 京都府 | 50,170 | 4 | 11,978 | 19 | 4.19 | 0.32% |
| 千葉県 | 33,020 | 5 | 41,680 | 6 | 0.79 | 0.76% |
| 静岡県 | 27,060 | 6 | 21,671 | 9 | 1.25 | 1.41% |
| 山梨県 | 25,390 | 7 | 5,026 | — | 5.05 | 1.51% |
| 神奈川県 | 24,940 | 8 | 44,546 | 5 | 0.56 | 0.60% |
| 岐阜県 | 23,280 | 9 | 15,941 | 13 | 1.46 | 1.46% |
| 北海道 | 22,020 | 10 | 14,008 | 15 | 1.57 | 0.20% |
| 福岡県 | 9,770 | 11 | 23,701 | 8 | 0.41 | 0.12% |
| 兵庫県 | 8,470 | 12 | 34,482 | 7 | 0.25 | 0.45% |
| 三重県 | 4,420 | 17 | 15,732 | 14 | 0.28 | 1.39% |
| 埼玉県 | 4,090 | 18 | 52,974 | 4 | 0.08 | 1.58% |
| 茨城県 | 3,760 | 19 | 21,369 | 10 | 0.18 | 1.39% |
| 群馬県 | 2,510 | — | 16,814 | 11 | 0.15 | 0.83% |
出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値(確定値)参考第1表、出入国在留管理庁「在留外国人統計」2025年12月末(e-Stat掲載の都道府県別・国籍別・在留資格別表をベトナム国籍で集計)よりホテルバンク編集部作成。「外国人宿泊に占める比率」は各県の外国人延べ宿泊者数に占めるベトナム国籍の比率。網掛けは比率が全国平均(0.46%)の3倍前後の県
出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値、出入国在留管理庁「在留外国人統計」2025年12月末よりホテルバンク編集部作成(延べ宿泊者数1,000人泊以上の都道府県、両軸とも対数目盛)
重ね合わせると、県は三つの型に分かれる。第一に宿泊と在留の双方で上位に入る東京都・大阪府・愛知県・千葉県・静岡県・神奈川県で、観光と訪問・業務の需要が同時に出ている。第二に宿泊が多く在留が少ない京都府・山梨県・北海道で、在留者1人あたり宿泊が京都府で4.19泊、山梨県で5.05泊に達する観光地型である(北海道は1.57泊)。第三に在留が多く宿泊が少ない埼玉県(在留4位・宿泊18位)、兵庫県(7位・12位)、福岡県(8位・11位)、茨城県(10位・19位)、群馬県(11位・圏外)で、在留者1人あたり宿泊は0.1〜0.4泊にとどまる。
第三の型をどう読むかが本稿の核心になる。在留者を訪ねる来訪が親族や知人の住まいに滞在すれば宿泊統計には現れないし、首都圏や関西圏では隣接する大都市のホテルに泊まって日帰りで訪ねる行動も考えられる。相関だけで因果を断定することはできない。ただし、こうした県でもベトナム国籍が外国人延べ宿泊に占める比率は埼玉県1.58%、茨城県1.39%と全国平均の3倍に達しており、絶対数は小さくても、インバウンドの構成の中では見逃せない一角をすでに占めている。製造業の集積地に立つ業務型ホテルにとって、ベトナムは「観光地ではないから縁がない市場」ではなく、「在留者を起点に訪問需要が出る市場」として捉える余地がある。
テト期の単価帯 — 2026年2月の推定成約ADRを県別・都市別に読む
最後に、テト期にあたる2月の単価帯を押さえておきたい。メトロエンジンリサーチの推定成約ADR(本記事のADR、エリア内施設の中央値)で2026年2月を見ると、全業態では東京都¥13,900(N=1,130施設・前年同月比+4.0%)、神奈川県¥13,400(N=571・+8.9%)、静岡県¥13,500(N=844・+9.4%)、兵庫県¥13,400(N=562・+7.0%)、京都府¥12,900(N=589・+2.2%)、福岡県¥12,100(N=469・+8.7%)、北海道¥10,600(N=924・+11.9%)と、大都市圏や観光地を抱える県は1万円を超える。ベトナム客の構成比が高い製造業の県は、愛知県¥8,300(N=512・+4.3%)、岐阜県¥9,900(N=376・+0.5%)、埼玉県¥7,900(N=219・+4.7%)、茨城県¥7,000(N=311・+7.4%)と、全国の中では手の届きやすい価格帯にある。大阪府は¥8,700(N=644)で前年同月比−9.9%と、2025年2月の水準から下がった。
想定読者であるビジネスホテルの運営者に合わせて、ビジネス区分だけを取り出すと景色はさらに近づく。2026年2月のビジネス区分の推定成約ADRは、東京都¥13,300(N=916)、福岡県¥11,100(N=339)、京都府¥9,600(N=319)、神奈川県¥8,900(N=212)、北海道¥8,800(N=441)、大阪府¥8,400(N=498)、千葉県¥8,200(N=162)、埼玉県¥7,700(N=150)、愛知県¥7,500(N=329)、兵庫県¥7,400(N=167)、広島県¥7,100(N=186)、岐阜県¥6,900(N=122)、茨城県¥6,700(N=184)、静岡県¥6,600(N=219)、群馬県¥6,500(N=103)、三重県¥6,300(N=93)である。同じビジネス区分で4月(桜の時期)を見ると東京都は¥17,800、京都府は¥20,300まで上がるのに対し、愛知県は¥8,100、埼玉県は¥7,800、茨城県は¥6,700とほぼ横ばいで、製造業の県では2月と4月の単価差が小さい。言い換えれば、これらの県では季節で単価を取りに行くより、テトから桜にかけての来訪を安定した客室稼働に結びつけることの方が、収益への寄与が大きい。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(2026年2月・全業態・推定成約ADR=エリア内施設の中央値、N=各エリアの対象施設数)
県都や工業都市に落とすと、2026年2月の全業態推定成約ADRは名古屋市中村区¥10,300(N=72)、名古屋市中区¥8,900(N=89)、豊田市¥7,000(N=30)、豊橋市¥7,400(N=19)、大阪市中央区¥10,300(N=191)、大阪市淀川区¥7,500(N=39)、川崎市川崎区¥9,000(N=32)、横浜市中区¥10,500(N=50)、千葉市中央区¥9,500(N=34)、成田市¥7,700(N=29)、さいたま市大宮区¥8,800(N=19)、神戸市中央区¥10,100(N=63)、姫路市¥7,100(N=40)、福岡市博多区¥14,700(N=144)、北九州市小倉北区¥8,800(N=30)、静岡市葵区¥7,900(N=37)、富士市¥6,600(N=27)、岐阜市¥8,000(N=32)、四日市市¥6,700(N=25)、津市¥7,500(N=28)、つくば市¥7,900(N=32)、水戸市¥7,100(N=34)、広島市中区¥7,900(N=60)、福山市¥6,400(N=37)、太田市¥6,500(N=13)だった。名古屋駅前の中村区や博多区のように1万円を超える都市もあるが、豊田市・四日市市・福山市・太田市といった工業都市は¥6,400〜¥7,000の帯に収まり、親族を訪ねる来訪者が数泊するうえで負担感の小さい水準といえる。
| 都市・区 | 2025年2月 | 2026年2月 | 前年同月比 | N(2026年2月) |
|---|---|---|---|---|
| 名古屋市中村区 | ¥9,227 | ¥10,348 | +12.1% | 72 |
| 豊田市 | ¥7,401 | ¥7,006 | −5.3% | 30 |
| 豊橋市 | ¥6,957 | ¥7,441 | +7.0% | 19 |
| 大阪市中央区 | ¥11,685 | ¥10,268 | −12.1% | 191 |
| 川崎市川崎区 | ¥8,724 | ¥8,957 | +2.7% | 32 |
| さいたま市大宮区 | ¥9,487 | ¥8,807 | −7.2% | 19 |
| 神戸市中央区 | ¥9,514 | ¥10,136 | +6.5% | 63 |
| 姫路市 | ¥7,166 | ¥7,100 | −0.9% | 40 |
| 福岡市博多区 | ¥13,942 | ¥14,674 | +5.3% | 144 |
| 静岡市葵区 | ¥7,608 | ¥7,915 | +4.0% | 37 |
| 岐阜市 | ¥6,816 | ¥7,956 | +16.7% | 32 |
| 四日市市 | ¥5,318 | ¥6,719 | +26.3% | 25 |
| つくば市 | ¥7,160 | ¥7,869 | +9.9% | 32 |
| 福山市 | ¥6,224 | ¥6,420 | +3.1% | 37 |
| 太田市 | ¥6,308 | ¥6,537 | +3.6% | 13 |
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(全業態・推定成約ADR=エリア内施設の中央値、2月の確定月どうしの前年同月比)
2027年2月については、調査時点でOTAに掲載されている販売価格から推定した参考値が得られるが、確定月とは性質が異なるため上の表には含めていない。参考までに、2027年2月の掲載水準に基づく推定成約ADRは愛知県¥11,200(N=409)、大阪府¥10,400(N=576)、東京都¥15,400(N=988)、埼玉県¥10,000(N=161)で、いずれも掲載施設数がまだ少なく、チェックイン日が近づくにつれてプランの追加や価格調整で変動する。2026年2月の確定値と並べて増減を論じる段階にはない。
航空路線が地方の受け皿を広げる — 静岡・広島のハノイ線
需要の地理を変える要因として航空路線にも触れておく。訪日ラボがJNTOハノイ事務所の情報として伝えるところでは、2025年夏ダイヤの日本〜ベトナム間の航空便はコロナ前比約117%まで回復し、2025年7月にはベトナム航空がダナン〜関西線を再開した。地方路線では、ベトジェットエアの広島〜ハノイ線が2024年5月に週2往復で就航したのち増便を重ね、広島県の資料によると2025年12月20日からは週4往復(火・木・土・日)で運航している。さらに2026年4月28日には同社がハノイ〜静岡線を週3往復(火・木・日)で開設し、Aviation Wireはこれを静岡〜東南アジア間で初の定期便と報じた。
静岡県は2025年のベトナム国籍延べ宿泊が2万7,060人泊で全国6位、在留者も2万1,671人で9位に入り、宿泊と在留の双方で上位に来る県である。そこに本国との直行便が加わったことで、親族訪問と観光の両方の来訪が県内で完結しやすくなった。広島県は宿泊4,760人泊、在留1万6,300人と在留者側に厚みがあり、週4往復の直行便は在留者を起点とした往来を支える基盤になる。LCC路線網と訪日新興市場の関係については、LCC就航ネットワークで読む訪日新興3市場で路線別に整理している。
テト2027(2月6日)に向けた運営者の視点
ここまでを整理すると、ベトナム市場の需要は三つの層に分けて捉えると見通しがよい。第一は桜(4月)と紅葉(11月)に厚い観光層で、東京・大阪・京都・山梨・北海道の宿泊を押し上げている。第二は在留者を訪ねる訪問層で、到着はテト前後に集中する一方、宿泊統計には必ずしも比例して現れない。第三は業務や留学・研修に伴う来訪で、製造業の県での宿泊構成比の高さに表れている。地方のビジネスホテルにとって機会があるのは第二と第三の層である。
テト2027は2027年2月6日(土曜)で、ベトナム観光総局の日本語サイトはこの日を旧正月元日としている。ベトナム政府の公式連休の日程は例年前年の秋以降に公告されるため、連休の長さが確定した時点で、2月上旬から中旬にかけての来訪を想定した受け入れを組みたい。具体的には、在留者が家族を迎える際に使いやすい3〜4名で泊まれる客室の設定、ベトナム語の館内案内や決済手段の確認、在留者の勤務先企業や日本語学校・監理団体との連携による直接送客の仕組みづくりなどが考えられる。2025年の月別比率が示すとおり、テト月は到着に対して宿泊が薄い月でもある。だからこそ、訪問層を「泊まらずに帰る来訪者」のままにせず、近隣観光と組み合わせた連泊の提案で宿泊に転換できれば、観光地以外の県にとっては上乗せの需要になる。
単価の面では、製造業の県の2月の推定成約ADRがビジネス区分で¥6,300〜¥7,700の帯にあり、4月との差も小さいことから、テト期に単価を大きく動かす余地は限られる。むしろ、観光庁統計で2025年のベトナム国籍宿泊が月4万〜8万人泊の幅で年間を通じて動いていることを踏まえると、特定の月に賭けるより年間を通じた指名の積み上げが効く市場である。在留者68万1,100人は、本国に向けた最も確かな紹介経路でもある。
よくある質問
Q. ベトナムからの訪日客はテトの月に一番多いのですか。
到着はテトを含む月に山が出ます(2025年はテト1月29日で2月が7万3,813人と年間最多、2026年はテト2月17日でテト明けの3月が9万2,051人と単月の過去最多)。ただし観光庁の宿泊旅行統計で見ると2025年の延べ宿泊の山は4月(8万1,340人泊)と11月(7万8,780人泊)で、テトの到着増がそのままホテル需要の増加になるわけではありません。
Q. ベトナム客が多く泊まる県はどこですか。
2025年のベトナム国籍延べ宿泊者数(従業者数10人以上の施設)は東京都19万6,130人泊、大阪府12万9,210人泊、愛知県6万9,250人泊の順で、上位3都府県で全国の55.8%を占めます。各県の外国人宿泊に占める比率では、埼玉・愛知・山梨・岐阜・静岡・三重・茨城で全国平均(0.46%)の3倍前後に達し、製造業の集積地で存在感が高い市場です。
Q. 2027年のテトはいつですか。
ベトナム観光総局の日本語サイトによると、2027年の旧正月元日(テト・グエン・ダン)は2027年2月6日(土曜)で、公式な連休の日程は政府の公告で確定します。
まとめ
ベトナムからの訪日は2025年に67万8,594人で過去最高となり、2026年も1〜8月累計で+5.4%と伸びている。到着の山はテトを含む月に出るが、延べ宿泊の山は4月と11月で、到着1人あたりの宿泊は2月が0.59泊と最も薄い。宿泊は東京・大阪・愛知に55.8%が集中する一方、外国人宿泊に占める構成比は埼玉・愛知・山梨・岐阜・静岡・三重・茨城で全国平均の3倍前後に達し、在留者68万1,100人の分布と重なる。在留が多く宿泊が少ない埼玉・兵庫・福岡・茨城・群馬は、訪問需要を宿泊に転換できる余地を残した県といえる。テト2027(2月6日)に向けては、製造業の県の2月の推定成約ADRがビジネス区分で¥6,300〜¥7,700の帯にあることを踏まえ、単価より年間を通じた指名の積み上げで臨むのが現実的である。
⚠ 将来日程のADRに関する注意:本記事で触れた2027年2月の推定成約ADRは、調査時点でOTAに公開されている販売価格に基づく参考値であり、チェックイン日に近づくにつれて変動します。確定月(2025年2月・2026年2月)の値とは性質が異なるため、増減の比較には用いていません。また、観光庁「宿泊旅行統計調査」の2026年分は第2次速報であり、国籍別表の対象施設(客室数20室以上)と国籍区分(24区分)が2025年年間値(従業者数10人以上・21区分)と異なるため、両年の延べ宿泊者数を直接比較していません。
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参考資料・出典一覧
■ データソース
訪日客数はJNTO「訪日外客統計」の月別・市場別推計値(2026年8月分まで)、延べ宿泊者数は観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値(確定値)参考第1表(従業者数10人以上の施設・ベトナム国籍)、在留者数は出入国在留管理庁「在留外国人統計」2025年12月末。推定成約ADRはメトロエンジンリサーチのOTA公開価格データから算出した。
■ 試算前提
「到着1人あたり宿泊」は同じ月の延べ宿泊者数÷訪日客数、「在留者1人あたり宿泊」は県別の延べ宿泊者数÷在留者数の単純比で、滞在日数そのものではない。推定成約ADRはエリア内施設の中央値(1室あたり・税抜相当)で、全業態とビジネス区分を分けて示した。前年同月比は確定月(2025年2月・2026年2月)どうしで計算している。
■ 限界・留意点
宿泊旅行統計は小規模施設や親族・知人宅での滞在を含まず、月をまたぐ滞在も分割される。2026年分(第2次速報)は国籍別表の対象施設と国籍区分が2025年年間値と異なるため直接比較していない。在留者数と宿泊の重なりは相関であり因果を示すものではない。2027年2月の値は掲載価格に基づく参考値で、確定月とは比較していない。
- 日本政府観光局(JNTO)「訪日外客統計」月別・市場別推計値(2026年8月分、2026年9月16日発表)
- 観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値(確定値)集計結果 参考第1表、および2026年1〜7月分 第2次速報 集計結果
- 出入国在留管理庁「在留外国人統計」2025年12月末(e-Stat掲載、都道府県別・国籍・地域別・在留資格別)
- 訪日ラボ「2025年のベトナム訪日客数・消費額」(2026年3月5日)
- 訪日ラボ「2026年上半期のベトナム訪日動向」(2026年8月27日)
- Aviation Wire「ベトジェット、ハノイ〜静岡線を4月28日開設 週3往復」(2026年1月21日)
- 広島県「広島空港 ハノイ線の増便について」(2025年12月20日から週4往復)
- ベトナム観光総局「テト・グエン・ダン(旧正月)」日程(2027年2月6日)
- メトロエンジンリサーチ — 推定成約ADR(都道府県・市区町村・ビジネス区分、2025年2月〜2027年2月)
