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モットーbyヒルトン京都108室の必要ADRは約2.4万円 — 延床4,300㎡・下京区で逆算

投稿日 : 2026.10.05

京都府

投資・開発

モットーbyヒルトン京都108室の必要ADRは約2.4万円 — 延床4,300㎡・下京区で逆算

ヒルトンは2026年8月6日、マイクロホテルブランド「モットーbyヒルトン」の日本初進出を発表した。平和不動産が京都市下京区月鉾町(四条通新町東入)に開発する地上10階・延床約4,300㎡の建物に108室を入れ、2029年度の開業を予定する。本稿では、敷地約580㎡の小規模地に「狭い客室を多く取る」新築ホテルが、推定成約ADRが年平均約1万5,600円の下京区でどの水準の単価を必要とするかを、既存ホテル38施設の延床効率と単価、用途地域と地価、建築費から逆算する。

なお、同じヒルトン系の京都案件には、上京区の既存ホテルをソフトブランドへ転換する(仮称)京都ブライトンホテル キュリオ・コレクションbyヒルトン(約160室、2028年開業予定)もあるが、本稿は既存ホテルの転換ではなく、京都の高さ規制と容積率の下で成立する新築マイクロホテルの単価に論点を絞る。

本記事における指標の定義

  • ADR(平均客室単価):各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。
  • 1室あたり延床:建物の延床面積を客室数で割った値。ロビー・レストラン・廊下・機械室などの共用部を含むため、客室の専有面積(客室面積)とは異なります。モットーbyヒルトン京都四条烏丸の客室面積は公表されていません。
  • 延床1㎡あたりADR:施設のADRを1室あたり延床で割った値。建物の床1㎡が1泊あたりどれだけの客室単価を生んでいるかの目安として本稿で用います。
  • 稼働率:必要ADRの試算では前提値として置きます(京都市観光協会が公表する市内主要ホテルの客室稼働率を参照)。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング
計画客室数
108室
2029年度開業予定
1室あたり延床
約39.8㎡
延床約4,300㎡÷108室
試算上の必要ADR
約¥24,200
ベースケース・税抜相当
下京区の推定成約ADR
¥15,600
2025年9月〜2026年8月平均
隣接地の公示地価
¥398万/㎡
2026年・前年比+12.1%

結論を先に示す。敷地に公示地価を当て、建築費を2024年の宿泊業用着工実績から建設期間のインフレを織り込んで置くと、総事業費は約57億円、1室あたり約5,300万円となる。NCF利回り5.0%を確保するための必要ADRは約2万4,200円で、下京区全体の推定成約ADR(約1万5,600円)の1.55倍にあたる。一方、四条烏丸の外資系2施設は直近12ヶ月で2万8,500円〜3万1,200円の推定成約ADRを実現しており、ブランドの集客力と客室設計で単価を乗せる余地は、同じ交差点の周辺で既に確認できる。

Key Takeaways
  • — 試算上の必要ADRは約2万4,200円(税抜相当・NCF利回り5.0%)。下京区の推定成約ADR約1万5,600円(2025年9月〜2026年8月平均、N=157〜168施設)の1.55倍にあたる。
  • — 総事業費は約57.2億円、1室あたり約5,300万円。隣接地の公示地価398万円/㎡(2026年・前年比+12.1%)を当てた土地が約4割を占める。
  • — 下京区・中京区の38施設では延床1㎡あたりADRの中央値が534円で、1室あたり延床の区分間の差は小さい。室数を増やしても建物全体の客室売上は伸びにくい。
  • — 必要ADRを延床1㎡あたりに直すと約608円で、既存38施設の上位4分の1(613円)とほぼ同水準。四条烏丸の外資系2施設は2万8,500〜3万1,200円を実現している。
  • — 感度幅は2万100円〜2万9,100円(利回り4.5〜5.5%×建築費60〜80万円/㎡)。半径1km圏では2025年以降に11施設・726室が新規掲載された。

計画の概要 — 敷地580㎡に10層・108室、日本初のモットー

発表資料によると、計画地は京都市営地下鉄烏丸線「四条」駅、阪急京都線「烏丸」駅からいずれも徒歩約2分の四条通沿いにある。基本設計は竹中工務店、事業主は平和不動産、運営はヒルトンで、オールデイダイニングとオープンテラス付きラウンジを計画する。客室面では、複数の客室をつなげて使うコネクティングルームを予約時に確定できる「コンファームド・コネクティングルーム」を採り入れる。家族や友人グループが隣り合う部屋を確実に押さえられる設計であり、1室あたりの面積を抑えながらグループ需要も取り込む狙いが読み取れる。

ヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)によれば、モットーbyヒルトンは「主要な場所に位置する、都会的な雰囲気を持つマイクロホテル」と定義され、世界6か国で12軒を展開する。発表資料は、開業予定を含めて20軒以上を構想しているとしている。同社は国内で9ブランド・37軒を運営し、13軒の開業予定を公表しており、本計画はそのうちの1件である。

モットーbyヒルトン京都四条烏丸の計画概要
項目内容
名称モットーbyヒルトン京都四条烏丸
所在地京都市下京区四条通新町東入月鉾町54
敷地面積/延床面積約580㎡/約4,300㎡
階数/客室数地上10階/108室(予定)
開業予定2029年度
事業主/運営/基本設計平和不動産/ヒルトン/竹中工務店
主な共用施設オールデイダイニング、オープンテラス付きラウンジ
1室あたり延床(当社算出)約39.8㎡(延床÷客室数。客室面積は非公表)

出典:ヒルトン プレスリリース(2026年8月6日)、ヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成

京都ではヒルトン系が既に5軒・計1,101室(当社合算)を運営しており、モットーの開業時点では、2028年開業予定の(仮称)京都ブライトンホテル キュリオ・コレクションbyヒルトン(約160室)と合わせて7軒になる見込みである。計画地から南南東へ約600mには、2022年に日本初のヒルトン・ガーデン・インとして開業したヒルトン・ガーデン・イン京都四条烏丸(250室)がある。

京都のヒルトン系ホテル(開業済み5軒・開業予定2軒)
京都のヒルトン系ホテルブランド客室数開業
ROKU KYOTO, LXR Hotels & ResortsLXR Hotels & Resorts114室2021年
ヒルトン・ガーデン・イン京都四条烏丸Hilton Garden Inn250室2022年
ダブルツリーbyヒルトン京都東山DoubleTree by Hilton158室2023年
ダブルツリーbyヒルトン京都駅DoubleTree by Hilton266室2024年
ヒルトン京都Hilton Hotels & Resorts313室2024年
(仮称)京都ブライトンホテル キュリオ・コレクションbyヒルトンCurio Collection by Hilton約160室2028年開業
モットーbyヒルトン京都四条烏丸Motto by Hilton108室2029年開業(2029年度)

出典:ヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)。開業時期は資料表記のまま。網掛けは開業予定。合計客室数は当社合算

下京区と中京区の推定成約ADR — 年平均1.56万円、夏は前年割れ・秋は回復

メトロエンジンリサーチのデータで、計画地のある下京区の推定成約ADRを2025年9月〜2026年8月の12ヶ月で平均すると1万5,606円(対象157〜168施設)となり、前年の同じ12ヶ月(1万4,790円)を5.5%上回った。業態別ではビジネスホテルが1万4,768円(111〜118施設)、シティホテルが2万5,491円(18〜20施設)である。四条通を挟んで北側の中京区は全体で1万6,943円(102〜112施設)と、下京区より約1,300円高い。

月別に見ると季節の振れが大きい。下京区は4月と10〜11月に2万円台へ上がり、1〜2月と6〜8月には1万1,000円前後(1万900〜1万1,800円台)に下がる。2026年は6月が前年同月比−5.7%、7月が−10.4%、8月が−11.9%と夏場に前年を下回ったが、調査時点の掲載水準に基づく推定では10月が+13.1%、11月が+4.5%と、秋の繁忙期は前年を上回る水準で推移している。開業後の単価を考える際は、年平均だけでなく、この季節の振れ幅を前提に置く必要がある。

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(下京区N=157〜168施設、中京区N=102〜112施設)。2026年9〜12月は調査時点の掲載水準に基づく推定

下京区・中京区の業態別推定成約ADR(2025年9月〜2026年8月平均)
区・業態推定成約ADR(2025/9〜2026/8平均)前年同期比対象施設数
下京区・全業態¥15,606+5.5%157〜168
下京区・ビジネスホテル¥14,768+3.0%111〜118
下京区・シティホテル¥25,491+2.6%18〜20
中京区・全業態¥16,943+1.8%102〜112
中京区・ビジネスホテル¥15,868−0.3%76〜82
中京区・シティホテル(参考)¥29,748+1.2%9

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング。前年同期比は2024年9月〜2025年8月の12ヶ月平均との比較。中京区シティホテルは対象9施設のため参考値

立地と容積 — 商業地域・容積率700%、四条通沿道の高さ31mに10層を積む

国土交通省の不動産情報ライブラリで計画地の用途地域を確認すると、商業地域・指定容積率700%・建蔽率80%である。京都市の高度地区では、四条烏丸交差点周辺など大通りに面した地域の高さの最高限度が31mに定められている。1層あたり約3.1mで割れば10層がほぼ上限であり、地上10階という計画は高さの枠を使い切る設計といえる。京都の高さ規制が1室あたりの土地コストをどれだけ押し上げるかは、京都のホテル用地、高さ20m規制で1室土地コスト+25%で詳しく試算している。

敷地約580㎡に対して延床約4,300㎡は、敷地面積の約7.4倍にあたる。指定容積率700%で計算した容積対象床面積の上限は約4,060㎡だが、延床面積には昇降機の昇降路など容積率の算定から除かれる部分が含まれうるため、この差は直ちに矛盾を意味しない。1層あたりの床は平均約430㎡で、建蔽率80%の上限(約464㎡)に近い。高さと容積の両方で上限に近い床を確保したうえで、何室をどの大きさで並べるかが、この敷地の事業性を左右する。

地価の上昇も急である。計画地と同じ月鉾町にある地価公示地点(京都下京5-12、四条通新町東入月鉾町39番1)は、2026年1月1日時点で1㎡あたり398万円、前年比+12.1%となった。2021年の280万円からの5年間で+42%上がっている。全国のホテル立地の地価の動きは、基準地価2026、ホテル立地の商業地は半年で+4.3%も参考になる。周辺の就業人口も厚く、経済センサス(2021年)によると計画地の半径1km圏には事業所7,003か所・従業者8万3,633人があり、うちオフィス系の比率は30.4%である。平日の業務出張と、週末・休暇期の観光の両方を取り込める立地である。

出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(地価公示 京都下京5-12)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(延床面積が判明する下京区・中京区の38施設、2025〜2026年に新規掲載を確認した半径1km圏の20室以上11施設)。円の色は1室あたり延床の区分、赤は2025年以降の新規開業

1室あたり延床と単価 — 床1㎡が生むADRは中央値534円でほぼ横ばい

延床面積と客室数がともに判明する下京区・中京区のホテル38施設(計6,967室)について、1室あたり延床の区分ごとに直近12ヶ月の推定成約ADRを集計した。1室あたり延床が25㎡未満の4施設は中央値1万958円、25〜32㎡の12施設は1万3,741円、32〜40㎡の11施設は1万9,930円、40〜50㎡の6施設は2万5,724円と、床を広く取る施設ほどADRは高い。

ただし、ADRを1室あたり延床で割った「延床1㎡あたりADR」で見ると、区分間の差は小さい。区分別の中央値は457〜577円の範囲に収まり、38施設全体の中央値は534円、上位4分の1の境界は613円である。つまりこの商圏では、1室あたりの床を削って室数を増やしても、客室単価がほぼ比例して下がるため、建物全体が1泊で生む客室売上はあまり変わらない。マイクロホテルの収益力は室数の多さそのものではなく、同じ床からどれだけ高い単価を引き出せるかにかかっている。全国の1室あたり延床の分布と、それを左右する要因については、ホテル1室あたりの延床は13〜196㎡が掘り下げている。

モットーbyヒルトン京都四条烏丸の1室あたり延床約39.8㎡は、この中で32〜40㎡区分の上端に位置する。マイクロホテルでありながら1室あたり延床が中位にあるのは、オールデイダイニングやテラス付きラウンジなど、ブランドが重視する共用空間に床を配分しているためと考えられる。客室は小さく、共用部は広く取る構成である。

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(N=38施設・6,967室、推定成約ADRは2025年9月〜2026年8月の12ヶ月平均)

1室あたり延床区分別の推定成約ADR(下京区・中京区38施設)
1室あたり延床施設数客室数1室あたり延床(中央値)推定成約ADR(中央値)延床1㎡あたりADR(中央値)
25㎡未満41,39619.2㎡¥10,958¥570
25〜32㎡121,74330.1㎡¥13,741¥457
32〜40㎡(計画は約39.8㎡)112,11935.7㎡¥19,930¥545
40〜50㎡61,05545.8㎡¥25,724¥577
50〜80㎡565457.7㎡¥31,040¥508

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(N=38施設)。1室あたり延床が80㎡以上の大型複合施設、推定成約ADRの観測が12ヶ月中10ヶ月未満の施設は集計から除外

同じ四条烏丸で外資系ブランドが実現している単価も参考になる。ヒルトン・ガーデン・イン京都四条烏丸(250室)の推定成約ADRは直近12ヶ月平均で2万8,500円、2025年8月に開業したコートヤード・バイ・マリオット京都四条烏丸(125室)は3万1,200円で、いずれも下京区全体の水準を大きく上回る。グローバルな会員基盤と送客網を持つブランドが、この交差点の周辺で高い単価を維持していることを示すデータである。

口コミに表れる客室の広さ — 延床25㎡未満では広さへの不満が16.2%

客室を小さくするときに気になるのは、宿泊者の受け止め方である。上記38施設に寄せられた直近24ヶ月の口コミ6万769件を自然言語処理で解析し、客室の広さに触れた口コミの割合を区分別に集計した。1室あたり延床25㎡未満の区分では、広さへの不満を含む口コミが16.2%にのぼる一方、32〜40㎡では5.1%、40〜50㎡では4.3%に下がる。広さを好意的に評価する口コミは、25㎡未満の6.4%から40〜50㎡の18.1%まで上がる。

32〜40㎡の区分は、広さへの不満が5.1%と低く、好意的な言及が13.4%とそれを上回る。1室あたり延床が同じ区分に入るモットーの計画は、客室自体は小さくても、ラウンジやダイニングを「客室の外に広がる居場所」として使ってもらえれば、広さの受け止め方を前向きに変えられる余地がある。コンファームド・コネクティングルームで家族・グループが2室以上を確保できることも、1室の小ささを補う設計といえる。

出典:ホテルバンク編集部調べ(NLP解析、N=38施設・口コミ60,769件、直近24ヶ月)。割合は各区分の口コミ総数に対する、客室の広さに言及した口コミの比率

必要ADRの逆算 — 総事業費約57億円、ベースケースで約2万4,200円

ここからは、敷地・延床・客室数の公表値に一般的な前提を当て、NCF利回りから必要ADRを逆算する簡易試算を示す。平和不動産の実際の取得価格・工事費・運営契約は公表されておらず、以下は同規模の計画を検討する際の目安として当社が置いた前提である。

必要ADR逆算の前提(ベースケース)
前提ベースケース根拠
土地約23.1億円敷地約580㎡×地価公示398万円/㎡(同一町内の地点を当てた仮置き)
建築費単価69.0万円/㎡宿泊業用の着工実績(2024年・全国)59.1万円/㎡に、Turner & Townsendの建設コスト上昇予測(2025年+5.6%、2026年+5.3%、2027年+5.0%)を複利で適用
建築費約29.7億円延床約4,300㎡×69.0万円
設計・FF&E・開業費等約4.5億円建築費の15%と仮定
総事業費約57.2億円1室あたり約5,300万円(うち土地が約4割)
目標NCF利回り5.0%京都の宿泊特化型ホテルの期待利回り4.5%(日本不動産研究所、2026年4月)に開発期間分の上乗せ0.5pt
NCF/総売上30%料飲を持つ宿泊主体型を想定。MHM運営91物件のGOP率38.9%(インヴィンシブル投資法人、2024年12月期)から運営フィー・修繕積立・公租公課等を控除した水準として設定
客室売上比率85%オールデイダイニング1か所を想定
稼働率85%京都市内主要ホテルの2025年年間実績80.6%(京都市観光協会)に立地・ブランドを加味。感度表で80.6%も示す

出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ、e-Stat「建築着工統計調査」、Turner & Townsend、日本不動産研究所「不動産投資家調査」、京都市観光協会、インヴィンシブル投資法人IRよりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成

この前提では、年間NCF約2.86億円を得るのに総売上約9.53億円、客室売上約8.10億円が必要になる。108室・稼働率85%(通年の想定値)で割り戻すと、RevPARは約2万600円、必要ADRは約2万4,200円(税抜相当)となる。延床1㎡あたりに直すと約608円で、既存38施設の上位4分の1の境界(613円)とほぼ同じ水準である。下京区全体の1.55倍、1室あたり延床が同じ32〜40㎡区分の中央値の1.21倍にあたるが、同じ交差点周辺の外資系2施設の実績(2万8,500円〜3万1,200円)は下回る。

同じ建物に客室の大きさを変えて入れた場合と比べると、単価の意味がよりはっきりする。1室あたり延床を下京区・中京区で一般的な30㎡程度にして143室入れると、必要ADRは約1万8,300円に下がるが、同じ区分の既存施設の中央値(1万3,741円)の1.33倍を要する。逆に45㎡程度で94室にすると必要ADRは約2万7,800円に上がる一方、40〜50㎡区分の中央値(2万5,724円)との差は1.08倍に縮まる。総事業費を同額と置いた単純比較ではあるが、前節で見たとおり延床1㎡あたりのADRが区分間でほぼ横ばいのこの商圏では、室数を増やすほど市場水準に対して求められる上乗せ幅が大きくなる。108室案はその中間にあり、ブランドの集客力とグループ需要で約2割の上乗せを得られるかが事業性の焦点になる。

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算。市場水準は1室あたり延床の同区分の既存施設の推定成約ADR中央値(2025年9月〜2026年8月)

主な前提を動かしたときの必要ADRを2つの感度表にまとめた。建築費が80万円/㎡まで上がり、目標利回りを5.5%に置くと必要ADRは2万9,100円に達する。一方、利回り4.5%・建築費60万円/㎡では2万100円まで下がる。稼働率とNCF率の組み合わせでは1万9,600円〜3万600円の幅があり、運営効率の差が必要単価を大きく動かす。土地を公示地価の±20%で置き直すと、必要ADRは2万2,200円〜2万6,100円となる。

感度表1:目標NCF利回り×建築費単価ごとの必要ADR
目標NCF利回り\建築費単価60万円/㎡69万円/㎡80万円/㎡
4.5%¥20,100¥21,800¥23,800
5.0%¥22,300¥24,200¥26,500
5.5%¥24,500¥26,600¥29,100

必要ADR(稼働率85%〔通年の想定値〕・NCF/総売上30%・客室売上比率85%)。出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算

感度表2:稼働率×NCF/総売上ごとの必要ADR
稼働率\NCF/総売上25%30%35%
80.6%(京都市主要ホテル2025年実績)¥30,600¥25,500¥21,900
85%¥29,000¥24,200¥20,700
90%¥27,400¥22,800¥19,600

必要ADR(目標NCF利回り5.0%・建築費69万円/㎡)。出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算。本試算は簡易試算であり、実際の投資判断には詳細なフィージビリティ・スタディが必要です

開業は2029年度で、市場の単価もそれまでに動く。1室あたり延床32〜40㎡区分の中央値1万9,930円が年3%で伸びれば2029年時点で約2万1,800円、下京区の直近12ヶ月の伸び(+5.5%)が続けば約2万3,400円となり、必要ADRとの差は縮まる。建築費の上昇は新規計画を絞る方向にも働くため、既存・計画済みの施設にとっては競合の増加が緩やかになる面もある。

周辺の供給 — 半径1km圏で2025年以降11施設・726室の新規掲載

計画地の半径1km圏では、2025年以降に20室以上の新規ホテル11施設・計726室のOTA等での掲載を確認した。うち100室を超えるのはコートヤード・バイ・マリオット京都四条烏丸(125室)、KIORI Exec Gojo(118室)、ガーナーホテル京都四条烏丸(103室)の3施設で、ほかは30〜80室台の小〜中規模が中心である。四条烏丸周辺では小規模地を活かした中小規模のホテル開発が続いており、モットーはその中で、グローバルブランドとコネクティングルームという明確な違いを持つ新築案件となる。国土交通省の建築着工統計に基づく計画データでは、調査時点で下京区・中京区の新たな大型計画は確認されていないが、確認申請は開業の1〜2年前に出るのが通例であり、2029年度までの計画は今後増える可能性がある。

半径1km圏で2025年以降に新規掲載されたホテル(20室以上・11施設)
施設名客室数掲載開始(開業)
スマートプレイスイン京都二条城堀川45室2025年3月
スマートプレイスイン京都四条堀川42室2025年3月
コートヤード・バイ・マリオット京都四条烏丸125室2025年8月
キオリホテル東洞院36室2025年9月
yugen kyoto shijo58室2025年9月
HANARE by Tokyu Stay42室2025年9月
KIORI Exec Gojo118室2025年10月
キオリエグゼ室町48室2025年11月
ガーナーホテル京都四条烏丸103室2025年11月
Shijo Guesthouse HIVE78室2025年12月
京都ファンゲートホテル31室2026年7月

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(OTA掲載確認ベース、半径1km圏・20室以上、N=11施設)。同一施設と判断した重複掲載は1件に集約。掲載は開業の前後にずれて出るため、直近以降の件数は今後の掲載で増える可能性がある。計画データは国土交通省「建築物動態統計調査」の確認申請ベースで、調査時点での確定パイプラインの下限値

まとめ — 小さな客室の宿は「床1㎡の単価」で比べる

モットーbyヒルトン京都四条烏丸は、敷地約580㎡の小規模地に、高さ31m・容積率700%の枠をほぼ使い切って108室を入れる計画である。当社の簡易試算では、公示地価ベースの土地と建設インフレ込みの建築費を合わせた総事業費は約57億円、NCF利回り5.0%に必要なADRは約2万4,200円となった。下京区全体の水準を大きく上回るが、延床1㎡あたりに直せば既存施設の上位4分の1とほぼ同水準であり、同じ交差点周辺の外資系ホテルの実績の範囲内に収まる。

都心の小規模地でホテル開発を検討するデベロッパーやアセットマネージャーにとっての示唆は3点ある。第一に、下京区・中京区では1室あたり延床が小さい施設ほどADRも比例して低く、室数を増やすだけでは建物全体の客室売上は伸びにくい。第二に、マイクロ型の計画では延床1㎡あたりのADRを市場の上位水準まで引き上げる仕組み、つまりブランドの送客力、共用部の魅力、コネクティングルームによるグループ需要の取り込みが事業性の中心になる。第三に、土地が総事業費の約4割を占めるため、地価の上昇(5年で+42%)が必要ADRを押し上げる。用地取得の段階で、延床1㎡あたりのADRをどこまで取れるかを先に確かめておくことが、計画の成立ラインを見極める近道になる。

将来日程のADRに関する注意:2026年9〜12月のADRは、調査時点でOTA等に掲載されている価格水準に基づく推定であり、チェックイン日に近づくにつれて変動します。必要ADRの試算は公表値と一般的な前提に基づく簡易試算で、事業主の実際の取得価格・工事費・運営契約条件を反映したものではありません。REIT開示の成約ADRは消費税抜き表示で、本記事の推定成約ADRも税抜相当の水準です。京都市観光協会の客室単価は集計対象と定義が当社推計と異なります。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

推定成約ADRはメトロエンジンリサーチ&コンサルティングのOTA公開価格データに基づく推定値(下京区N=157〜168施設、中京区N=102〜112施設、2025年9月〜2026年8月)。延床効率は延床面積と客室数が判明する下京区・中京区の38施設・6,967室、口コミは同38施設の60,769件(直近24ヶ月)。用途地域・地価は国土交通省 不動産情報ライブラリ、建築費はe-Stat「建築着工統計調査」(宿泊業用・2024年)、計画概要はヒルトンの発表資料による。

■ 試算前提

土地=敷地約580㎡×地価公示398万円/㎡(同一町内の地点)、建築費単価69.0万円/㎡(2024年の宿泊業用着工実績59.1万円/㎡に2025〜2027年の建設コスト上昇予測を複利で適用)、設計・FF&E・開業費等は建築費の15%、目標NCF利回り5.0%、NCF/総売上30%、客室売上比率85%、稼働率85%(通年の想定値)。感度表では利回り4.5〜5.5%、建築費60〜80万円/㎡、稼働率80.6〜90%(通年)、NCF率25〜35%を動かした。

■ 限界・留意点

事業主の実際の取得価格・工事費・運営契約は公表されておらず、試算は同規模計画を検討する際の目安である。推定成約ADRはOTA公開価格からの推定値(上場ホテルREITの開示実績との照合で誤差中央値約7%)で、2026年9〜12月は調査時点の掲載水準に基づく。1室あたり延床は共用部を含み、客室面積とは異なる。新規供給はOTA掲載確認ベースで、2029年度までの計画は今後増える可能性がある。

■ 市場データ

  • メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — 推定成約ADR(下京区N=157〜168施設、中京区N=102〜112施設)、延床面積判明施設38施設の単価集計、新規開業の掲載確認データ
  • ホテルバンク編集部調べ — 宿泊者口コミのNLP解析(38施設・60,769件・直近24ヶ月)

■ 事業者・ブランド資料

■ 政府統計・公的データ

■ 業界レポート

出典: ヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)

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