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ホテル採用単価は1人61〜102万円 — 100室モデルで1泊101円、ADR1%の値決め余地

投稿日 : 2026.09.19

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ホテル採用単価は1人61〜102万円 — 100室モデルで1泊101円、ADR1%の値決め余地

宿泊業の採用を語るとき、議論は「賃金をいくら上げるか」「シフトをどう組むか」に向かいがちである。しかし損益計算書に最初に現れるのは、賃金より前の段階、つまり1人を採用席に座らせるまでにかかる費用だ。厚生労働省の公表データを組み合わせると、人材紹介経由の採用単価は職種ごとに約61万円から約102万円という幅で観測できる。本稿では、職業別の有効求人倍率、採用チャネル別の1人あたり単価、そして100室ビジネスホテルと80室旅館の2モデルで年間採用コストを積み上げ、それを吸収するために必要なADR上乗せ幅を都道府県別に逆算する。

本記事における指標の定義

  • ADR(平均客室単価):各施設がOTA等上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。
  • OCC(稼働率):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。本稿の試算で用いる稼働率は後述の「■ 試算前提」に記載した仮定値です。
  • 有効求人倍率:有効求人数 ÷ 有効求職者数。本稿はパートタイムを含む常用の実数(季節調整前)を用いています。
  • データ出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」/同「雇用動向調査」/同「職業紹介事業報告書」、メトロエンジンリサーチ
Key Takeaways
  • 接客・給仕の有効求人倍率2.30倍(2026年7月、全職業1.05倍)。全職業とのギャップは2024年の1.77ptから1.25ptへ縮小した
  • 人材紹介は1件約102万円(接客・給仕)、調理は約61万円。ホテル系の求人サイト費用は1人平均14.3万円・中央値8.0万円にとどまる
  • — 離職率25.1%を前提に、100室ビジネスホテルの年間採用コストは104.6万〜296.0万円、80室旅館は140.7万〜384.0万円と試算
  • — モデルAの吸収に必要なADR上乗せは1泊36〜101円=12都道府県で0.25〜1.44%。1泊あたりコストを最も大きく動かすのは稼働率ではなく採用チャネルの構成

接客・給仕は2.30倍、全職業は1.05倍 — 採用市場で宿が置かれている位置

まず、宿泊業が採用市場のどこに立っているかを数値で確定させたい。厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」の職業別長期時系列表から、パートタイムを含む常用の有効求人倍率を直近24ヶ月(2024年8月〜2026年7月)で取り出すと、2026年7月時点の水準は次のとおりである。

全職業計は1.05倍。これに対し、フロント・レストランサービスなど宿の中核人材が含まれる接客・給仕の職業は2.30倍、調理場を担う飲食物調理の職業は2.18倍、介護・清掃・生活衛生などを含むサービスの職業全体は2.60倍となる。参考として、同じサービス系のなかで最も需給が締まっている介護サービスの職業は3.82倍、運搬・清掃系に分類される清掃の職業は1.10倍だった。

出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」長期時系列表(職業別労働市場関係指標・パートタイムを含む常用)よりホテルバンク編集部作成

注目すべきは水準そのものではなく、その方向である。接客・給仕の職業は2024年11月に2.95倍のピークを付けたのち、2026年7月には2.30倍まで0.65ポイント下がった。飲食物調理の職業も2024年12月の2.96倍から2.18倍へ0.78ポイント低下している。全職業平均との差(ギャップ)で見ると、接客・給仕は2024年9月と11月の1.77ポイントが最大で、2026年7月は1.25ポイントまで縮小した。飲食物調理も1.74ポイント(2024年12月)から1.13ポイントへ縮んだ。

出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」長期時系列表よりホテルバンク編集部作成

つまり、宿の採用競合環境は依然として全職業平均の約2.1〜2.2倍の厳しさにあるが、ギャップは2年前より約0.5ポイント縮まっている。ここに採用単価を織り込んだ値決めを整える余地が生まれる。競争が最も激しかった局面で払っていた単価を前提に置き続ける必要はなく、逆に緩んでいる今のうちに「1人あたりいくらで採れているか」を単価として棚卸しできる、ということである。

採用チャネル別・1人あたり単価は8万円〜102万円 — 公表資料から拾える実額

では、宿が1人を採用するのに実際いくらかかるのか。ここでは推測での料率記載を避け、公表資料から拾える実額だけを並べる。

最も信頼度が高いのは厚生労働省「職業紹介事業報告書」の集計結果である。令和6年度(速報)では、有料職業紹介事業の常用就職1件あたりの手数料は約103万円(対前年度比+10.9%)と公表されている。手数料収入の総額は約9,835億円(同+17.6%)、うち常用就職に係る手数料が約9,136億円、有料職業紹介事業の常用就職件数は888,993件(同+5.3%)だった。

同じ資料には取扱職業区分別の手数料徴収額と常用就職件数が収録されているため、職種別の1件あたり単価を算出できる。接客・給仕の職業は手数料合計174億0,658万円 ÷ 常用就職17,113件で約102万円飲食物調理の職業は54億4,726万円 ÷ 8,880件で約61万円となる。参考として施設介護の職業は約62万円、清掃・洗浄作業員は約67万円、居住施設・ビル等の管理の職業は約123万円である。接客・給仕は全職業平均とほぼ同水準、調理は約4割低い、というのがこのデータから読める構造だ。

出典:厚生労働省「令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)」/株式会社マイナビ「中途採用状況調査2026年版(2025年実績)」よりホテルバンク編集部作成

求人媒体側は、マイナビ「中途採用状況調査2026年版(2025年実績)」が職種別の「採用1人あたりにかかった求人サイトの求人費」を公表している。全職種平均は36.7万円(中央値20.0万円)だが、「美容・ブライダル・ホテル・交通」職種は平均14.3万円・中央値8.0万円(n=52)と、全体を大きく下回る。「販売・フード・アミューズメント」も平均18.8万円・中央値10.0万円(n=69)である。宿泊・飲食系の職種は、求人サイト経由であれば1人あたり10万円前後で採用できている、ということになる。

採用チャネル別・1人あたり採用単価(公表値)
採用チャネル 1人あたり単価 条件・母集団 出典(年次)
人材紹介(全職業平均) 約103万円 常用就職1件あたり手数料・公表値 厚労省 職業紹介事業報告書(令和6年度速報)
人材紹介(接客・給仕の職業) 約102万円 手数料合計174億0,658万円÷17,113件 同上よりホテルバンク編集部算出
人材紹介(飲食物調理の職業) 約61万円 手数料合計54億4,726万円÷8,880件 同上よりホテルバンク編集部算出
人材紹介(料率ベース) 理論年収の30〜40%程度 届出制手数料。マイナビは「年収の30%程度」、マンパワーグループは「35〜40%程度」と記載 マイナビ(2026年3月)/マンパワーグループ
人材紹介(上限制手数料) 6か月賃金の11.0% 免税事業者は10.3%。実務上の採用例は少数 マンパワーグループ
求人サイト(全職種) 平均36.7万円/中央値20.0万円 採用1人あたりの求人サイト求人費 マイナビ 中途採用状況調査2026年版
求人サイト(美容・ブライダル・ホテル・交通職種) 平均14.3万円/中央値8.0万円 n=52(当該職種で求人サイト費用が発生した企業) 同上
求人サイト(販売・フード・アミューズメント職種) 平均18.8万円/中央値10.0万円 n=69 同上
リファラル報奨(正社員) 5〜20万円 ボリュームゾーン。紹介者と応募者の配分は概ね2:1 Refcome(リフカム)
リファラル報奨(非正規) 5,000円〜1万円 ボリュームゾーン 同上
ハローワーク 無料 国が行う無料職業紹介 厚生労働省「ハローワークのサービス」

出典:厚生労働省/株式会社マイナビ/Refcome 各公表資料よりホテルバンク編集部作成

企業単位の年間支出額も同じ調査から確認できる。2025年実績の年間採用費用は1社平均609.9万円(前年から40.7万円減、n=1,280)で、予算平均696.0万円を下回った。チャネル別の実績平均は人材紹介375.5万円、求人広告125.1万円(うち求人サイトのみ111.8万円)、ダイレクトリクルーティング173.9万円、求人検索エンジン122.7万円、合同説明会等イベント123.5万円、採用ブランディング82.7万円である。年間採用人数の平均は12.3人(採用目標16.7人、n=1,327)だった。費用と人数は別設問のため厳密な割り算ではないが、単純に割り戻すと1人あたり約49.6万円となる。人材紹介に年間支出の6割強が集まっている構図が、そのまま採用単価の重心を決めている。

100室ビジネスホテルは年104〜296万円、80室旅館は年141〜384万円

次に、この単価を宿の損益に載せる。採用件数の起点になるのは離職率である。厚生労働省「令和6年雇用動向調査」によると、宿泊業,飲食サービス業の離職率は25.1%(入職率28.4%)で、産業計の離職率14.2%(入職率14.8%)を10.9ポイント上回る。就業形態別に見ると一般労働者18.1%、パートタイム労働者29.9%である。この2つの率を使うと、常用従業員数から年間の離職=補充採用件数を導ける。

2モデルの年間採用コスト試算(100室ビジネスホテル/80室旅館)
項目 モデルA:100室ビジネスホテル モデルB:80室旅館
常用従業員(一般/パート) 30名(14/16) 40名(18/22)
年間離職・補充採用件数 7.32人(2.53/4.78) 9.84人(3.26/6.58)
年間採用コスト:媒体中心ケース 104.6万円 140.7万円
年間採用コスト:紹介併用ケース 296.0万円 384.0万円
客室1室あたり年額(媒体中心/紹介併用) 10,465円/29,598円 17,582円/47,995円
販売1泊あたり(媒体中心/紹介併用) 35.8円/101.4円 68.8円/187.8円

出典:厚生労働省「令和6年雇用動向調査」「令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)」、株式会社マイナビ「中途採用状況調査2026年版」よりホテルバンク編集部試算

100室ビジネスホテルは年7.32人の補充採用が発生し、求人サイト中心で回せば年104.6万円、一般労働者枠を人材紹介に頼ると年296.0万円。同じ採用件数でも、チャネル構成の違いだけで年間コストは約2.8倍に開く。80室旅館は労働集約度が高い分、件数が9.84人に増え、年140.7万円〜384.0万円となる。客室1室あたりに割り戻すと、モデルAで年10,465円〜29,598円、モデルBで年17,582円〜47,995円。販売1泊に落とすと、モデルAは35.8円〜101.4円、モデルBは68.8円〜187.8円である。

■ 試算前提

上記の試算に用いた数値・出典・前提年次を全て開示する。

試算前提(数値・出典・前提年次)
前提項目 採用値 根拠・前提年次
離職率(一般労働者) 18.1% 厚労省「雇用動向調査」宿泊業,飲食サービス業(令和6年=2024年)
離職率(パートタイム労働者) 29.9% 同上(令和6年)
人材紹介単価(一般労働者枠) 101.7万円/件 厚労省「職業紹介事業報告書」令和6年度速報・接客・給仕の職業の手数料合計÷常用就職件数
求人サイト単価(媒体中心ケース) 14.3万円/人 マイナビ「中途採用状況調査2026年版」美容・ブライダル・ホテル・交通職種の平均(2025年実績、n=52)
求人サイト単価(紹介併用ケースのパート枠) 8.0万円/人 同上・同職種の中央値(2025年実績)
常用従業員数 モデルA 30名/モデルB 40名 仮定値。宿泊特化型100室、2食提供の旅館80室の一般的な体制として設定。外部統計に基づく値ではない
一般労働者とパートの比率 モデルA 14:16/モデルB 18:22 仮定値
稼働率 モデルA 80%/モデルB 70% 仮定値。1泊あたり換算の分母(客室数×365日×稼働率)に使用
チャネル構成(媒体中心ケース) 全件を求人サイトで充当 仮定。下限ケースとして設定
チャネル構成(紹介併用ケース) 一般労働者枠を人材紹介、パート枠を求人サイトで充当 仮定。上限ケースとして設定
ADR(上乗せ幅の分母) 県別ビジネスホテルの推定成約ADR メトロエンジンリサーチ、2025年9月〜2026年8月の12ヶ月平均(全月が確定月ベース)
試算に含めない費用 採用担当者の人件費、面接・研修工数、入社時の備品・制服、紹介手数料の返還金(リファンド) 外部支出のみを対象としたため

出典:ホテルバンク編集部作成

仮定値を明示したとおり、従業員数・比率・稼働率の3点は各施設の実情に置き換えて読む必要がある。ただし試算の骨格は「離職率 × 従業員数 × 採用単価」であり、従業員数が±20%動いても年間コストは比例して動くだけなので、順位関係と桁は変わらない。

吸収に必要なADR上乗せは0.25〜1.44% — 12都道府県で逆算

最後に、この採用単価を宿泊単価で吸収するにはADRを何%積めばよいかを逆算する。分母にはメトロエンジンリサーチの県別ビジネスホテル推定成約ADR(2025年9月〜2026年8月の12ヶ月平均)を用いる。この期間は全月が確定月ベースであり、確定月と先行スナップショットをまたぐ比較は行っていない。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

都道府県別・採用コスト吸収に必要なADR上乗せ率(モデルA)
都道府県 推定成約ADR 対象施設数 必要上乗せ率(モデルA・媒体中心) 必要上乗せ率(モデルA・紹介併用)
東京都14,178円9240.25%0.71%
京都府13,892円3290.26%0.73%
福岡県10,900円3410.33%0.93%
大阪府10,016円5030.36%1.01%
神奈川県9,221円2130.39%1.10%
北海道8,881円4410.40%1.14%
沖縄県8,865円1960.40%1.14%
石川県7,827円1110.46%1.30%
愛知県7,820円3290.46%1.30%
広島県7,700円1890.47%1.32%
宮城県7,568円1420.47%1.34%
静岡県7,048円2220.51%1.44%

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(推定成約ADRは2025年9月〜2026年8月の12ヶ月平均。対象施設数は同期間の最大値)

結論はシンプルだ。100室ビジネスホテル(モデルA)の採用単価は、媒体中心で回せばADRの0.25〜0.51%、人材紹介を併用しても0.71〜1.44%で吸収できる規模である。モデルAの紹介併用ケースで吸収に必要な上乗せは都道府県を問わず1泊約101円であり、これはADR14,178円の東京都では0.71%、ADR7,048円の静岡県でも1.44%にとどまる。最低賃金改定のように1室あたり年間1万円規模で効いてくるコストとは桁が違い、値決めの微調整の範囲に収まる。

重要なのは、この「1%以内」という水準がチャネル構成によって約3倍動くという点だ。同じ採用件数でも、媒体中心なら東京都で0.25%、紹介併用なら0.71%。ADRに転嫁するにせよしないにせよ、まず握るべきは「自館は1人あたりいくらで採れているか」であり、その単価がわかれば必要な上乗せ幅は即座に計算できる。

感度分析:紹介への依存度 × 稼働率で1泊あたりコストはどう動くか

上乗せ幅を左右する変数は、採用チャネルの構成と、1泊あたり換算の分母になる稼働率の2つである。モデルA(100室ビジネスホテル、年7.32人の補充採用)について、媒体中心ケース(0%)から紹介併用ケース(100%)までの単価前提を線形に配分した中間ケースと、稼働率70〜90%の仮定値を組み合わせると、販売1泊あたりの採用コストは次のとおりとなる。

感度分析:モデルAの販売1泊あたり採用コスト(紹介併用ケースへの移行度 × 稼働率)
稼働率 \ 紹介併用ケースへの移行度 媒体中心(0%)25%50%75%紹介併用(100%)
稼働率70%(仮定)41.0円59.7円78.4円97.1円115.8円
稼働率80%(仮定)35.8円52.2円68.6円85.0円101.4円
稼働率90%(仮定)31.9円46.4円61.0円75.5円90.1円

出典:「■ 試算前提」の数値(厚生労働省「令和6年雇用動向調査」「令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)」、株式会社マイナビ「中途採用状況調査2026年版」)よりホテルバンク編集部試算。稼働率は仮定値

最も重い組み合わせ(紹介併用・稼働率70%)でも1泊116円で、ADR7,048円の静岡県に対して1.64%、ADR14,178円の東京都なら0.82%にあたる。最も軽い組み合わせ(媒体中心・稼働率90%)なら静岡県で0.45%である。つまり稼働率の仮定を上下10ポイント動かすより、チャネル構成を動かすほうが1泊あたりコストへの影響ははるかに大きい。値決めの前提として押さえるべき変数は、まず紹介への依存度だといえる。

定着1人=紹介1件分102万円 — 採用に頼らない設計の余地

採用単価を可視化すると、採用の反対側にある定着の金銭価値も同時に見えてくる。モデルAの紹介併用ケースでは、一般労働者1人の補充に101.7万円かかる。つまり一般労働者の定着を年1人分改善できれば、それは求人サイト経由で7人採用するのと同じ金額に相当する。パート1人の定着なら8.0万円だが、モデルAではパートの補充が年4.78人発生するため、こちらも積み上がれば効いてくる。

ここから導ける設計余地は3つある。

第一に、チャネルの重心を移す余地。年間支出の6割強が人材紹介に集まっているという全業種の構図(1社平均375.5万円/609.9万円)に対し、宿泊・ホテル系職種の求人サイト単価は1人あたり中央値8.0万円と全職種中央値20.0万円の4割にすぎない。宿は媒体経由での採用効率が相対的に高い職種であり、この差が使える。

第二に、リファラルの原資を単価から逆算する余地。正社員のリファラル報奨のボリュームゾーンは5〜20万円で、人材紹介1件(約102万円)の5分の1から20分の1である。同じ1人を採るのに使える金額として見れば、報奨額の設計にはかなりの幅がある。

第三に、求人倍率が緩んでいる今を使う余地。接客・給仕の職業の有効求人倍率は2024年11月の2.95倍から2026年7月の2.30倍へ、全職業平均とのギャップも1.77ポイントから1.25ポイントへ縮小した。採用競合が最も激しかった局面の単価を前提に置き続ける必要はなく、いま棚卸しをすれば、そのまま単価の引き下げ余地になる。

賃金水準やシフト設計の議論は、当サイトでも最低賃金2026「全国1,500円」への道 — 都道府県別ADR転嫁余地マップ2026年10月「106万円の壁」撤廃 — 宿泊業のシフト設計に生まれる通年戦力化の機会一泊二食モデルの再設計 — 調理・配膳人材の逼迫を、夕食プレミアムを守る効率化の機会にで扱ってきた。本稿はそれらの前段にある「採用そのものの単価」に主題を限定している。3本と併せて読めば、賃金・シフト・採用単価という3つのレイヤーで人的コストを設計できる。

まとめ

宿泊業の採用単価は、公表資料から実額で押さえられる。人材紹介は接客・給仕の職業で約102万円、飲食物調理の職業で約61万円(厚生労働省「令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)」より算出)。求人サイトは美容・ブライダル・ホテル・交通職種で1人あたり平均14.3万円・中央値8.0万円である。

これを離職率25.1%(宿泊業,飲食サービス業・令和6年雇用動向調査)と組み合わせると、100室ビジネスホテルで年104.6万〜296.0万円、80室旅館で年140.7万〜384.0万円。販売1泊あたりではモデルAで36円〜101円、モデルBで69円〜188円であり、モデルAの場合は12都道府県のビジネスホテル推定成約ADRに対して0.25〜1.44%の上乗せで吸収できる規模に収まる。

採用単価はADRの1%前後という「見えにくいが計算できる」コストである。1%を転嫁するかどうかを決める前に、まず自館の1人あたり単価を確定させ、そこから定着改善とチャネル構成の余地を測る。求人倍率が緩んでいる今が、その棚卸しに最も適したタイミングである。

あわせて読みたい

参考資料・出典一覧

■ 政府統計・公的データ

■ 民間調査・事業者公表資料

■ 市場データ

  • メトロエンジンリサーチ — 都道府県別ビジネスホテルの推定成約ADR(2025年9月〜2026年8月、対象施設数は本文表に記載)

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