温泉旅館の客室を和室から和洋室(畳の上にベッドを置いた客室)に変える改装は、どこまで単価に効くのか。本稿では、宿泊者口コミの意味解析で「和洋室」「和室」が語られている旅館・リゾートを市町村ごとに抽出し、同じ市町村の中で和洋室の言及が多い宿と和室の言及が中心の宿の推定成約ADR(12ヶ月)を比べた。対象は68市町村・和洋室型114軒と和室中心299軒である。結論を先に置くと、単価差は町の価格帯で向きが変わる。町の旅館ADRが1.8万円未満の市町村では和洋室型が+10.8%、2.5万円以上の市町村では逆に和洋室型の単価が和室中心の宿を33.9%下回り、和室が高単価の商品になっている。そのうえで、30室の温泉旅館で10室を和洋室に変えるモデルの回収年数を試算した。
既刊との違い:既刊『「和室に泊まりたい」訪日客はどこに向かうか — 畳・布団の口コミ評価TOP30と国別需要マップ2026』は和室の需要そのものを扱った。本稿は和室を和洋室に変える改装の投資判断が主題で、和室を否定するものではない(和室のまま高い単価を取っている層も並べて示す)。また『ブランド転換(リブランド)の実測ROI』や『ホテル改装の実質Capex』とは、改装の対象を「客室タイプの変更」一点に絞る点で異なる。工事中に止まる客室の売上の数え方は後者の方法をそのまま使う。
本記事における指標の定義
- ADR(平均客室単価):各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。本稿の施設ADRは2025年9月〜2026年8月の確定12ヶ月の中央値、町の旅館ADRは市町村内の旅館の中央値(エリアの標準的な施設の水準)です。
- 客室稼働率:本稿の試算に用いる稼働率は観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値(確定値)の宿泊施設タイプ別客室稼働率(公表統計の実績値)です。なお当社が別途算出するOCC(稼働率)は「エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)」であり、本稿の試算には用いていません。
- 和洋室型/和室中心:直近24ヶ月の宿泊者口コミを意味解析し、肯定的な文脈で「和洋室」「和室」に言及した件数で分類。和洋室型=和洋室の言及5件以上かつ和室の言及以上。和室中心=和室の言及5件以上かつ和洋室の言及が和室の3分の1以下。どちらにも当てはまらない宿は「混在」。言及件数は評価スコアではありません。
- 単価差:同一市町村内で、和洋室型の施設ADR中央値を和室中心の施設ADR中央値と比べた差。横断比較であり、改装による上昇幅そのものではありません。
- データ出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(推定成約ADR)/ホテルバンク編集部調べ(口コミのNLP解析)/観光庁「宿泊旅行統計調査」
単価の伸びしろが大きい町
町の旅館ADRが1.8万円未満の42市町村では、和洋室型の宿の単価が和室中心の宿を+10.8%(中央値・約¥1,800)上回る。一部客室の転換が投資機会になりやすい。
稼働の上乗せで判断する町
1.8万〜2.5万円の20市町村では単価差は+4.7%。単価差だけでは回収の時間軸が長く、ベッドを求める高齢の家族客や三世代旅の取り込みによる稼働の上乗せが判断の軸になる。
和室の磨き込みが効く町
2.5万円以上の6市町村(箱根町・熱海市など)では、和室中心の宿のADRが和洋室型を上回る。この価格帯では和室そのものが高単価の商品であり、和室の質を上げる改装にポテンシャルがある。
- — +10.8% 町の旅館ADRが1.8万円未満の42市町村では、和洋室型の宿の推定成約ADRが和室中心の宿を上回る(市町村中央値、2025年9月〜2026年8月)。
- — −33.9% 町の旅館ADRが2.5万円以上の6市町村(箱根町・熱海市など)では全ての町で和室中心の宿が高単価。和室の質を上げる改装に投資機会がある。
- — 98.3% 和洋室の言及は日本語が中心(245軒・2,593件)。訪日客は「和洋室」ではなく「和室」と「ベッド」の組み合わせで客室を語る。
- — 27.2年 30室旅館で10室を転換するケースA(工事費75万円/坪)の単価差のみでの回収年数。工事費50万〜100万円/坪の幅では18.5〜35.9年。
- — 11.6年 転換室の稼働が+5pt動いた場合の回収年数。投資判断を動かすのは単価差の大きさと、和洋室を指名する客層による稼働の上乗せである。
和洋室が語られる旅館・リゾートは全国245軒 — 長野・熊本・福島に厚い
まず母数を確かめる。都道府県ごとに、和洋室の言及が多い施設を抽出した(言及5件以上を基本とし、施設数の多い地域では抽出条件を引き上げ)。旅館とリゾートに絞ると245軒・客室24,295室、言及は3,045件である。最も多いのは長野県(28軒)で、熊本県(19軒・阿蘇エリアが中心)、福島県(17軒)が続く。いずれも高原・山あいの温泉地を多く抱え、ファミリーや三世代での滞在が多い県である。
| 都道府県 | 施設数 | 客室数 | 和洋室の言及 | 旅館の客室稼働率(2025年) |
|---|---|---|---|---|
| 長野県 | 28 | 2,638 | 242件 | 27.2% |
| 熊本県 | 19 | 1,107 | 181件 | 41.9% |
| 福島県 | 17 | 1,904 | 196件 | 37.1% |
| 長崎県 | 12 | 1,067 | 123件 | 39.8% |
| 岐阜県 | 10 | 942 | 133件 | 41.5% |
| 沖縄県 | 10 | 2,132 | 87件 | 43.6% |
| 新潟県 | 10 | 1,184 | 87件 | 28.4% |
| 鳥取県 | 9 | 740 | 100件 | 45.3% |
地図では、次節で単価を比べる68市町村の位置を示した。円の色は単価差の向き(濃い青=和洋室型が高い、灰色=和室中心が高い)、大きさは比較に使った施設数である。和洋室型が高い町は東北・北陸・九州の中価格帯の温泉地に多く、和室中心が高い町は首都圏近郊の高価格帯の温泉地に集まる。
同じ町で比べると、単価差は町の価格帯で向きが変わる
立地の差を消すため、比較は同じ市町村の中だけで行った。和洋室型と和室中心の宿が両方ある68市町村で、和洋室型の施設ADR中央値から和室中心の施設ADR中央値を引いた。全体ではばらつきが大きい。そこで、各市町村の旅館全体のADR中央値(比較対象の2群とは別に集計した町の標準的な水準)で3つの価格帯に分けた。
結果は明快である。町の旅館ADRが1.8万円未満の42市町村では和洋室型が+10.8%高く、和洋室型が上回る町は57.1%に及ぶ。1.8万〜2.5万円の20市町村では差は+4.7%に縮む。これに対して2.5万円以上の6市町村では、すべての町で和室中心の宿のADRが高く、差の中央値は−33.9%である。和洋室型と和室中心の宿がそれぞれ2軒以上ある25市町村に絞っても、同じ並びになる。
| 町の旅館ADR帯 | 市町村 | 和洋室型 | 和室中心 | 和洋室型ADR | 和室中心ADR | 単価差(中央値) | 和洋室型が高い町 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1.8万円未満 | 42 | 58軒 | 144軒 | ¥17,900 | ¥17,100 | +10.8% | 57.1% |
| 1.8万〜2.5万円 | 20 | 38軒 | 110軒 | ¥21,200 | ¥20,100 | +4.7% | 60.0% |
| 2.5万円以上 | 6 | 18軒 | 45軒 | ¥17,900 | ¥29,100 | −33.9% | 0.0% |
市町村ごとの差も並べた(和洋室型・和室中心がそれぞれ2軒以上ある25市町村)。上位は福井県あわら市(+128.5%)、佐賀県嬉野市(+84.4%)、山口県萩市(+77.6%)、熊本県阿蘇市(+72.8%)で、会津若松市と下呂市も和洋室型が上回る側に入る。下位には沖縄県恩納村(−61.4%)、三重県菰野町(−58.7%)、神奈川県箱根町(−33.9%)、静岡県熱海市(−33.8%)が並ぶ。市町村単位の差は、比較する施設数が少ないほど振れ幅が大きくなる点に留意したい。
主要な温泉地を個別に見ると、下呂市は和洋室型の宿のADR中央値が和室中心の宿を上回る。箱根町・熱海市・草津町では逆に和室中心の宿のADRが高い。由布院を抱える由布市と伊東市は差が小さい。なお別府市と鬼怒川を抱える日光市は和洋室型の宿の厚みが特徴の温泉地である。
| 温泉地(市町村) | 町の旅館ADR | 和洋室型 | 和室中心 | 単価差 |
|---|---|---|---|---|
| 群馬県草津町 | ¥16,600 | 1軒・¥18,300 | 5軒・¥32,000 | −42.7% |
| 神奈川県箱根町 | ¥25,500 | 3軒・¥19,800 | 15軒・¥30,000 | −33.9% |
| 静岡県熱海市 | ¥25,700 | 8軒・¥16,000 | 11軒・¥24,200 | −33.8% |
| 大分県由布市 | ¥23,700 | 3軒・¥23,500 | 3軒・¥25,200 | −6.8% |
| 静岡県伊東市 | ¥23,500 | 5軒・¥17,100 | 21軒・¥17,700 | −3.7% |
| 北海道登別市 | ¥18,700 | 2軒・¥18,400 | 8軒・¥21,500 | −14.3% |
| 岐阜県下呂市 | ¥17,800 | 4軒・¥23,100 | 12軒・¥20,800 | +11.2% |
和室のまま単価を取っている層 — 高価格帯の温泉地では和室が主力商品
和室は和洋室に変えるべき客室ではない。比較対象の市町村で、和室中心の宿の中には、同じ町の和洋室型の単価中央値以上のADRを取っている宿も多い。特に2.5万円以上の温泉地では、眺望・広縁・露天風呂などと組み合わせた和室が単価を支えている。
宿泊者の口コミにもその姿が表れる。箱根町のホテル河鹿荘には「12.5畳和室+広縁のゆったりとした造り…」、草津町の草津温泉 ホテル一井には「湯畑が見下ろせる和室で満足…」といった声が寄せられている(ホテルバンク編集部調べ、直近24ヶ月の宿泊者口コミ、両施設の和室の言及計36件)。本稿の試算モデルが12.5畳の和室を前提にしているのは、この広さが旅館の標準的な和室であり、和室のまま高単価を取る宿でも主力になっているためである。
和洋室の言及は98.3%が日本語 — 訪日客は「和室×ベッド」で語る
和洋室への改装は訪日客向けの投資なのか、国内客向けの投資なのか。旅館・リゾート245軒で和洋室に言及した口コミ(1施設あたり記述言語ごとに最大20件を抽出、計2,593件)を記述言語で分けると、日本語が98.3%を占め、中国語(繁体字・簡体字)と韓国語は合わせて0.7%、英語は確認されなかった(かなを含まない短文など言語を判別できない言及が1.1%)。記述言語は国籍と一致しないが、和洋室という言葉で客室を評価しているのは主に国内客である。
ただし、これは訪日客がベッドのある和室を求めていないことを意味しない。訪日客の多い箱根町の旅館7軒で同じ抽出をすると、英語の口コミは「和室」の言及が53件、「ベッド」の言及が56件ある一方、「和洋室」は0件だった。英語では和洋室という客室区分の言葉が使われず、「ベッドのある和室」として語られる。訪日客の需要は「和室」と「ベッド」の組み合わせで読むのが適切である。
国内の側では、高齢の家族との旅行に触れた声が目立つ。和洋室に言及した口コミのうち、高齢の親・祖父母、足腰への配慮、車椅子などに触れたものは42件(37軒)あった。下呂市の下呂ロイヤルホテル雅亭には「高齢者がいるので和洋室の変更を…」、「和洋室の部屋はとても広く開放感…」という声が寄せられている。布団の上げ下ろしや床からの立ち上がりを避けたい客層が、和洋室を指名して選んでいる。三世代旅の需要については『9月5連休の三世代旅 — 口コミ2,426件が示す「親孝行で選ばれる宿」の条件』で整理している。
「改装済み」の言及は和洋室型でやや多く、直近の比率も高い
改装直後の評価の変化を層で見る。各施設で「改装済み」「古さ」に触れた口コミを直近24ヶ月から最大20件ずつ抽出し、群ごとに平均した。どちらの群でも9割超の施設で両方の言及があり、客室の新しさは旅館全般で話題になりやすい。そのうえで、和洋室型は「改装済み」の言及が1施設あたり13.8件と和室中心(12.1件)より多く、そのうち直近12ヶ月の投稿が52.4%(和室中心49.6%)を占める。和洋室への転換は客室の刷新と同時に行われることが多く、改装の効果が口コミに表れやすい。
| 群 | 施設数 | 客室数 | 「改装済み」言及(平均) | うち直近12ヶ月 | 「ベッド」言及(平均) |
|---|---|---|---|---|---|
| 和洋室型 | 187 | 17,290 | 13.8件 | 52.4% | 12.6件 |
| 和室中心 | 419 | 25,804 | 12.1件 | 49.6% | 11.2件 |
| 混在 | 99 | 9,354 | 16.8件 | 50.5% | 14.8件 |
正の事例として、会津若松市のくつろぎ宿 新滝には「2024年リニューアルの部屋が快適」「広い和洋室は大変快適…」、下呂市の下呂温泉 水明館には「リニューアルされた和洋室とても綺麗…」という声がある(ホテルバンク編集部調べ、直近24ヶ月の宿泊者口コミ、両施設の和洋室の言及計76件)。どちらも和洋室型の単価が上回る町の宿で、改装と和洋室の評価が一体で語られている。改装済みの清潔感と満足度の関係は『『改装済みで綺麗』が満足度を跳ね上げる宿 全国TOP30 2026』で扱っている。
試算 — 30室の温泉旅館で10室を和洋室に変えると
ここからは試算である。30室の温泉旅館が、12.5畳の和室10室を和洋室に変えるモデルを置く。工事費は「客室のみ改修する場合、50万〜100万円/坪程度」という業界の目安(ミサワリフォーム関東、2026年3月)を上下限とし、中央を75万円/坪とした。12.5畳は1坪≒2畳で約6.25坪なので、1室あたりの工事費は312万〜625万円、中央値で469万円になる。
増収は「単価差×稼働×室数」で置く。単価差は前節の町の価格帯別の中央値を使い、1.8万円未満の町(和室中心の宿のADR¥17,100・単価差+10.8%)をケースA、1.8万〜2.5万円の町(同¥20,100・+4.7%)をケースBとした。客室稼働率は観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値(確定値)の旅館38.2%(全国)を用い、増収のうち利益に残る割合は70%とした。工事中に止まる客室の売上は『ホテル改装の実質Capexは1室300万円→398万円』と同じく「室日×(ADR×客室稼働率)」で数え、貢献利益率70%で足し戻す。10室を1室あたり45日ずつ止める前提(450室日)とした。
| 試算前提 | ケースA(町のADR 1.8万円未満) | ケースB(1.8万〜2.5万円) |
|---|---|---|
| 改装前ADR(和室中心の宿の中央値) | ¥17,100 | ¥20,100 |
| 単価差(和洋室型、市町村中央値) | +10.8% | +4.7% |
| 客室稼働率(旅館・2025年確定値) | 38.2% | 38.2% |
| 1室あたり年間増収(利益ベース) | ¥179,900 | ¥92,000 |
| 工事中に止まる売上(1室・45日・利益ベース) | ¥205,300 | ¥241,400 |
| 回収年数(工事費50万円/坪) | 18.5年 | 36.6年 |
| 回収年数(75万円/坪) | 27.2年 | 53.6年 |
| 回収年数(100万円/坪) | 35.9年 | 70.5年 |
単価差だけを回収の原資にすると、ケースAでも18.5〜35.9年という長い時間軸になる。旅館の客室稼働率が4割弱であるため、1室あたりの年間増収は¥179,900という水準になる。投資判断を動かす変数は2つある。1つは単価差の大きさ、もう1つは和洋室に変えた客室の稼働である。
下の表は、ケースAの改装前ADR(¥17,100)を固定し、工事費の単価帯と単価差の組み合わせで回収年数を並べたものである。単価差が+20%の町なら工事費50万円/坪で10.0年、和洋室化と同時に眺望・客室露天などの付加価値を足して+30%を狙う設計なら、工事費75万円/坪でも9.8年に収まる。
| 工事費\単価差 | +4.7% | +10.8% | +20.0% | +30.0% |
|---|---|---|---|---|
| 50万円/坪(1室312万円) | 42.5年 | 18.5年 | 10.0年 | 6.7年 |
| 75万円/坪(1室469万円) | 62.5年 | 27.2年 | 14.7年 | 9.8年 |
| 100万円/坪(1室625万円) | 82.5年 | 35.9年 | 19.4年 | 12.9年 |
稼働の上乗せも大きい。和洋室を指名する高齢の家族客や三世代旅を取り込み、転換した10室の稼働が+3pt動けば、ケースA・75万円/坪の回収年数は27.2年から15.1年に、+5ptなら11.6年に縮む。和洋室化の投資判断は、単価よりも「その客室を指名する客層がどれだけ町に来ているか」で決まる部分が大きい。
全室か一部か — 改装室数の配分で変わるもの
転換する室数を5・10・20・30室と変えても、1室あたりの回収年数はほぼ変わらない(27.2年)。30室すべてを転換する場合だけは、客室を止める期間が延びるため全館休館(90日)を想定し、回収年数は28.3年になる。一方で、全室転換は和室を選ぶ客層(和室のまま高単価を取る層を含む)の受け皿をなくす。前節のとおり町の価格帯によっては和室が主力商品であるため、まずは一部の客室で和洋室の単価と稼働を確かめ、その結果で転換室数を積み増す段階的な進め方に投資機会がある。
| 転換室数 | 残る和室 | 工事費 | 工事中に止まる売上 | 年間増収(利益ベース) | 回収年数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 5室 | 25室 | 2,344万円 | 103万円 | 90万円 | 27.2年 |
| 10室 | 20室 | 4,688万円 | 205万円 | 180万円 | 27.2年 |
| 20室 | 10室 | 9,375万円 | 411万円 | 360万円 | 27.2年 |
| 30室 | 0室 | 14,062万円 | 1,232万円 | 540万円 | 28.3年 |
補助制度を併用する場合 — バリアフリー工事部分に限り1/2
和洋室化に合わせて段差の解消や手すりの設置、浴室・トイレのバリアフリー化を行う場合は、観光庁の「観光地・観光産業におけるユニバーサルツーリズム促進事業」を併用できる可能性がある。令和7年度補正予算の同事業では、宿泊施設などの施設整備・設備導入に対する補助率は1/2、上限は1,500万円で、自治体と防災協定を結ぶ事業者は上限額が増額される(観光庁「補助事業者(執行団体)公募要領」2026年1月14日)。宿泊事業者向けの公募期間は2026年3月31日〜5月15日だった。対象はバリアフリー化に必要な工事であり、和洋室化の工事費全体が対象になるものではない。段差のない客室が宿泊者の口コミでどう語られているかは、段差のない宿はどこにあるか — バリアフリーが口コミに残る全国25軒で詳しく分析している。
仮に10室の工事費4,688万円のうち3割(1,406万円)がバリアフリー工事に当たるとすると、補助額は703万円となり、ケースA・75万円/坪の回収年数は27.2年から23.3年に縮む(試算)。対象経費の範囲や次回公募の有無は、申請前に一次情報で確認する必要がある。
| 項目(10室・75万円/坪・ケースA) | 補助なし | 補助あり(試算) |
|---|---|---|
| 工事費 | 4,688万円 | 4,688万円 |
| 補助額(バリアフリー工事3割×補助率1/2、上限1,500万円) | — | 703万円 |
| 回収年数 | 27.2年 | 23.3年 |
まとめ — 町の価格帯で投資の打ち手が分かれる
和室を和洋室に変える改装は、どの温泉地でも同じように単価を押し上げるわけではない。町の旅館ADRが1.8万円未満の市町村では和洋室型の宿が+10.8%高く、一部客室の転換に伸びしろがある。1.8万〜2.5万円の町では単価差が小さく、高齢の家族客や三世代旅による稼働の上乗せを投資判断の軸に置くことになる。2.5万円以上の温泉地では和室中心の宿が高単価を取っており、和室の質を上げる改装にポテンシャルがある。
取得・再生を検討するファンドや事業会社にとっては、対象物件の町がどの価格帯にあるかが改装方針の出発点になる。改装資金を出す地銀にとっては、単価差に加えて転換室の稼働の見込みと工事中に止まる客室の売上を、回収年数の前提として確認することが重要になる。承継した宿の改装を検討するオーナーにとっては、全室を一度に変えるより、数室で単価と稼働を確かめてから積み増す進め方が現実的な選択肢になる。
試算と集計に関する注意:本稿の数値は調査時点(2026年9月)で取得できた公開データにもとづく試算です。単価差は同一市町村内の横断比較であり、個別施設が改装した場合の単価上昇を保証するものではありません。口コミの記述言語は国籍と一致しません。工事費は業界の目安の範囲で置いた仮定であり、建物の構造・設備更新の有無で大きく変わります。補助制度の補助率・上限・公募時期は年度ごとに変わるため、申請前に観光庁の一次情報をご確認ください。
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参考資料・出典一覧
■ データソース
推定成約ADR(メトロエンジンリサーチ&コンサルティング、2025年9月〜2026年8月の確定12ヶ月中央値。旅館・リゾート705軒・136市町村、単価比較は同一市町村内に両群がそろう68市町村・413軒)、宿泊者口コミの意味解析(ホテルバンク編集部調べ、直近24ヶ月=2024年9月〜2026年8月)、客室稼働率は観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値(確定値)、工事費は改修事業者2社の公開目安、補助制度は観光庁の公募要領による。
■ 試算前提
30室の温泉旅館で12.5畳(約6.25坪)の和室を和洋室に転換。工事費は50万・75万・100万円/坪(1室312万〜625万円)。改装前ADRは和室中心の宿の中央値(ケースA ¥17,100/ケースB ¥20,100)、単価差は町の価格帯別の市町村中央値(+10.8%/+4.7%)。客室稼働率38.2%(2025年通年・旅館・全国)、増収のうち利益に残る割合70%。工事中は1室45日停止(30室転換は全館休館90日)とし、止まる売上を利益ベースで回収年数に加算。補助は工事費の3割をバリアフリー工事と仮定し補助率1/2。
■ 限界・留意点
単価差は同一市町村内の横断比較で、改装による単価上昇を示す因果推定ではない。推定成約ADRは税抜相当の推定値で、各施設の実際の成約価格とは異なる。和洋室型/和室中心の分類は口コミの言及件数に基づき、記述言語は国籍と一致しない。施設数が1〜2軒の群は個別施設の水準に左右される。回収年数は割引率・税・減価償却・資金調達コストを考慮しない単純回収年数で、構造や設備更新による工事費の変動は含まない。
■ 市場データ
- メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — 推定成約ADR(2025年9月〜2026年8月、旅館・リゾート705軒・136市町村)
- ホテルバンク編集部調べ — 宿泊者口コミのNLP解析(直近24ヶ月、和洋室の言及3,045件ほか)
■ 政府統計・公的データ
- 観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値(確定値)
- 観光庁「令和7年度補正予算『観光地・観光産業におけるユニバーサルツーリズム促進事業』に係る補助事業者(執行団体)公募要領」(2026年1月14日)
- 観光庁「令和7年補正予算『観光地・観光産業におけるユニバーサルツーリズム促進事業』の事業者公募開始のお知らせ」
- 観光庁「令和7年度 観光庁関係補正予算」(2025年11月)
■ 工事費の目安
