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9月5連休の三世代旅 — 口コミ2,426件が示す「親孝行で選ばれる宿」の条件

投稿日 : 2026.08.05

客層・セグメント分析

9月5連休の三世代旅 — 口コミ2,426件が示す「親孝行で選ばれる宿」の条件

2026年9月19日(土)から23日(水・秋分の日)までの5連休は、21日の敬老の日と22日の国民の休日が並ぶ、11年ぶりのシルバーウィークである。敬老の日が連休の中心にあるという構造は、宿泊需要のかたちにも表れる。本稿では、宿泊者の口コミを「親孝行・両親や祖父母を連れての旅・三世代旅行」という観点で解析し、全国306施設・延べ2,426件の言及から、三世代で選ばれている宿にどんな共通点があるのかを読み解く。

本記事における指標の定義

  • 言及件数:宿泊者の口コミ本文を意味解析し、「親孝行」「両親・祖父母を連れて」「三世代」「敬老」といった文脈が含まれると判定された口コミの件数(直近24ヶ月)。件数は口コミの「語られやすさ」を示すもので、施設の評価点の高さを直接示すものではありません。
  • 言及率:言及件数 ÷ その施設の口コミ母数(直近24ヶ月に解析対象となった口コミ件数)。本稿の対象文脈は言及率が1〜3%台と低いため、言及率ではなく言及件数の絶対量を主指標とし、母数を必ず併記しています。
  • LT(リードタイム):チェックイン日までの日数。LT0=当日。
  • OCC(稼働率):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります。
  • データ出典:口コミ解析=ホテルバンク編集部調べ/在庫・稼働=メトロエンジンリサーチ
Key Takeaways
  • — 全国306施設・延べ2,426件の口コミ言及を解析。三世代・親孝行の文脈で語られる宿は、都市圏から2〜3時間圏の温泉地に集中する(静岡32施設・群馬23施設・神奈川23施設)。
  • — 受け皿は大型の温泉旅館。該当する旅館213施設の平均客室数は85室、100室以上が31.9%。全国の旅館平均23室・100室以上2.4%とは規模の分布が大きく異なる。
  • — 最も強く重なった設えは和洋室で、和洋室が語られる27施設のうち19施設(70.4%)が三世代の文脈でも語られる。バリアフリー57.9%、個室夕食48.4%が続く。
  • — 一方で貸切風呂は9.1%しか重ならず、当初の仮説は支持されなかった。効いているのは「寝る・食べる・歩く」という滞在時間の大半を占める部分の設計。
  • — 5連休の在庫消化は連休中日の9月21日(敬老の日)が最も先行。栃木県の旅館で推定OCC80.9%、通常週末の9月12日は65.5%(いずれも2026年7月28日時点・OTA掲載在庫ベースの推定値)。

敬老の日が「連休の真ん中」に来る、11年ぶりの5連休

2026年9月の並びを確認しておく。19日(土)・20日(日)・21日(月・敬老の日)・22日(火・国民の休日)・23日(水・秋分の日)。祝日法の「前日および翌日が国民の祝日である日は休日とする」という規定によって22日が休日となり、5日間が連続する。シルバーウィークが成立するのは2015年以来、11年ぶりである。

ゴールデンウィークや年末年始との決定的な違いは、連休の名目そのものが「敬老の日」であることだ。祖父母を含めた家族の集まりに動機づけが与えられる稀な連休であり、旅行を計画する子世代にとっても、宿を売る側にとっても、三世代という単位が自然に立ち上がる。

この構造は、実際の予約の進み方にも表れている。次のグラフは、栃木県の旅館(LT90時点で171施設・6,576室が対象)について、9月19日(土)・9月21日(月・敬老の日)と、通常の週末である9月12日(土)のチェックイン日を、同じリードタイム軸に並べたものである。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

興味深いのは、土曜日である19日よりも、月曜日の21日(敬老の日)のほうが在庫の消化が先行している点である。調査時点(2026年7月28日時点・LT55)で21日チェックインの推定OCCは80.9%(2026年7月28日時点・栃木県の旅館171施設・6,576室を母数とするOTA掲載在庫ベースの推定値)、19日(LT53)は73.7%(同上)、通常週末の9月12日(LT46)は65.5%(同上)だった。同じ傾向は静岡県(21日 72.9%/19日 66.1%/12日 61.3%/いずれも2026年7月28日時点)でも神奈川県(78.2%/70.1%/66.0%/同上)でも確認できる。5連休では「土曜だけ動く」のではなく、連休の中日にあたる平日夜が厚く押さえられていく。連泊や中日発の移動を織り込んだ、家族単位の旅程が組まれていることの現れと読める。連休4日間それぞれの進度をエリア別に切り分けた分析は、11年ぶりシルバーウィーク2026(9/19-23) — 67日前の予約進度を4日間×主要7エリアで読むでも追っている。

なお本稿の執筆時点は9月19日の約52日前にあたる。ここで示したのは現時点の途中経過であり、この先の積み上がりや直前の在庫調整によって数字は変動する。特定施設の完売を断定するものではない。

「親孝行・三世代」は、どこで、どれだけ語られているか

ここからが本題である。宿泊者の口コミ本文を意味解析し、「親孝行」「両親を連れて」「祖父母と」「三世代」といった文脈を含む口コミを抽出した。直近24ヶ月で5件以上の言及がある施設は全国306施設、言及の延べ件数は2,426件である。

まず地域分布を見る。

出典:ホテルバンク編集部調べ

首位は静岡県で、32施設・275件。伊豆半島・熱海・伊東という温泉地の層の厚さがそのまま出ている。以下、群馬県(23施設・199件)、神奈川県(23施設・179件)、兵庫県(18施設・150件)、栃木県(12施設・131件)と続く。上位5県のうち4県が首都圏・関西圏から車や在来線で2〜3時間圏内の温泉地を抱えるエリアだ。

これは移動時間の制約として理解するのが自然だろう。高齢の家族と一緒に動くとき、移動時間そのものが旅程設計の制約になる。「遠くの絶景」よりも「近くて到着が早い温泉地」が選ばれやすいという構図が、言及の地理的な偏りに表れている。逆に言えば、都市圏から2〜3時間圏の温泉地は、三世代需要という文脈で構造的に有利なポジションにある。

次に、施設単位で言及件数の多い上位20施設を示す。母数(口コミ件数)と言及率を併記した。

表1:親孝行・三世代の言及件数 上位20施設(直近24ヶ月/全国306施設・延べ2,426件のうち上位20施設。口コミ母数と言及率を併記)
#施設名所在口コミ母数親孝行・三世代
言及件数
言及率
1あさやホテル栃木県・鬼怒川温泉2,303391.69%
2ホテル櫻井群馬県・草津温泉1,579291.84%
3下呂温泉 水明館岐阜県・下呂温泉2,797281.00%
4別府温泉 杉乃井ホテル大分県・別府温泉3,124260.83%
5森と温泉リゾート アンダの森 伊豆いっぺき湖静岡県・伊東1,508241.59%
6ホテルニューアカオ静岡県・熱海2,349230.98%
7ホテルニューアワジ兵庫県・洲本温泉1,051191.81%
8みなかみホテルジュラク群馬県・水上温泉838192.27%
9会津・東山温泉 御宿 東鳳福島県・東山温泉1,509191.26%
10ホテル南風荘神奈川県・箱根塔ノ沢725182.48%
11箱根湯本温泉 ホテル おかだ神奈川県・箱根湯本1,462181.23%
12有馬御苑兵庫県・有馬温泉938171.81%
13ホテルエピナール那須栃木県・那須1,630171.04%
14亀の井ホテル 大洗茨城県・大洗1,460161.10%
15伊東ホテルジュラク静岡県・伊東温泉987161.62%
16伊豆今井浜温泉 今井荘静岡県・河津646152.32%
17白玉の湯 華鳳新潟県・月岡温泉441153.40%
18海月舘兵庫県・洲本温泉939141.49%
19伊勢志摩 鳥羽温泉郷 戸田家三重県・鳥羽1,026141.36%
20鳴門グランドホテル海月徳島県・鳴門921141.52%

出典:ホテルバンク編集部調べ

首位は鬼怒川温泉のあさやホテルで、母数2,303件に対し39件(1.69%)。次いで草津温泉のホテル櫻井が29件(母数1,579件・1.84%)、下呂温泉の水明館が28件(母数2,797件・1.00%)と続く。上位に並ぶのは、いずれも各温泉地を代表する規模の大きな旅館・ホテルである。

言及率の水準は0.8〜3.4%にとどまる。これは「三世代旅行が少ない」という意味ではなく、口コミの多くは料理・風呂・接客といった体験そのものを語り、同行者の構成にまでは触れないからである。だからこそ、あえて「親を連れて来た」「祖父母が喜んでくれた」と書き残される施設には、そう書きたくなる何かがあったと考えるほうが自然だ。実際の口コミには「三世代で宿泊したい…」「祖母と子供に満足してもらえる…」といった、旅の目的そのものに触れる短い言葉が並ぶ。親孝行を動機とする旅行需要そのものの動き方については、母の日・父の日を対象にした親孝行旅行ニーズで読む高単価温泉旅館の予約パターンも参考になる。

なお本稿の解析対象には日本語以外の言語で書かれた口コミも含まれる。記述言語は必ずしも投稿者の国籍を示すものではない点を申し添える。

受け皿の正体 — 三世代を受け止めているのは「大型の温泉旅館」

306施設を業態別に分けると、旅館213施設、リゾートホテル58施設、シティホテル23施設、ビジネスホテル3施設(この4業態で297施設)となる。7割が旅館である。ここまでは想定内だが、その旅館の「規模」に明確な特徴がある。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

親孝行・三世代の文脈で語られる旅館213施設の平均客室数は85室、50室以上が60.1%、100室以上が31.9%を占める。一方、メトロエンジンリサーチが把握する範囲での全国の旅館7,741施設は平均23室で、50室以上はわずか9.9%、100室以上は2.4%にすぎない。三世代旅行の受け皿になっているのは、全国の旅館のなかでも上位1割に入る大型館であるということだ。

これは規模そのものが評価されているというより、規模に付随する設備群が効いていると考えるほうが筋が通る。大型館には、エレベーターと平坦な館内動線、広い大浴場と手すり、複数の食事会場、和洋室や広縁付きの大部屋、そして駅からの送迎バスが揃いやすい。三世代旅行は「一人ひとりの体力・好み・就寝時間が違う人を、同じ屋根の下でどう成立させるか」という設計テーマであり、その解を持っているのが大型温泉旅館だった、という読み方ができる。

ただし、これは小規模な宿に可能性がないという話ではない。次節で見るように、規模とは別のルートで三世代に選ばれている宿も存在する。

「段差がない・個室で食べられる・気兼ねなく入れる」— 設えの検証

ここで、三世代旅行で効きそうな4つの設えについて、口コミでの語られ方を確認する。バリアフリー・段差のなさ、個室/半個室での夕食、和洋室(畳+ベッド)、貸切風呂・家族風呂の4要素である。それぞれについて「その要素が口コミで繰り返し語られている施設」を全国で抽出し、親孝行・三世代の306施設とどれだけ重なるかを見た。

出典:ホテルバンク編集部調べ

結果ははっきり割れた。

和洋室が繰り返し語られる全国27施設のうち19施設(70.4%)が、親孝行・三世代の306施設にも入っている。バリアフリー・段差のなさは全国19施設のうち11施設(57.9%)。個室夕食は124施設のうち60施設(48.4%)。いずれも、その要素で語られる施設の半数前後が三世代の文脈でも語られているという、かなり強い重なりである。

一方で貸切風呂は、603施設のうち306施設と重なるのは55施設(9.1%)にとどまった。貸切風呂は口コミでよく語られる人気設備だが、その主戦場はカップルや小さな子ども連れであり、三世代の文脈とは必ずしも直結していない。当初の仮説のうち、貸切風呂については支持されなかったことになる。貸切風呂がどの層に効く設備なのかは、貸切風呂が訪日客の温泉ハードルを下げる — 英語口コミと国別需要で読む希少価値で別の角度から検証している。

この結果を素直に読むと、三世代旅行に効くのは「気兼ねなく入れる風呂」よりも、「寝られる」「座って食べられる」「歩ける」という、滞在時間の大半を占める部分の設計だということになる。和洋室は、畳で過ごしたい親世代とベッドで寝たい世代を同じ部屋に収める解であり、個室夕食は大広間の喧騒や周囲への気遣いから解放する解であり、段差のなさは移動そのものの負担を下げる解である。

参考として、バリアフリー・段差のなさが口コミで繰り返し語られている全国19施設を挙げる。●は親孝行・三世代の306施設にも入っている施設である。

表2:バリアフリー・段差のなさが口コミで繰り返し語られている全国19施設(●は親孝行・三世代の306施設にも含まれる施設)
施設名所在バリアフリー
言及件数
口コミ母数三世代
306施設
浅間温泉 ホテル玉之湯長野県16273●
亀の井ホテル 大洗茨城県101,460●
なにわ一水島根県8252●
蓼科グランドホテル滝の湯長野県81,122●
ほほえみの空湯舟 つるや山形県7305●
あさぎり荘兵庫県6336—
横浜ベイホテル東急神奈川県62,758●
箱根パークス吉野神奈川県6604—
下呂温泉 水明館岐阜県62,797●
富士レークホテル山梨県6193—
神戸メリケンパークオリエンタルホテル兵庫県54,314●
はつはな神奈川県5259—
ホテル モンテ エルマーナ仙台宮城県51,761—
伊勢志摩 鳥羽温泉郷 戸田家三重県51,026●
伝統旅館のぬくもり 灰屋福井県5270●
グランディア芳泉福井県51,096●
亀の井ホテル 潮来茨城県5609—
バリアフリーホテルあすなろ北海道531—
ホテル美雪北海道5172—

出典:ホテルバンク編集部調べ

注目したいのは、この19施設に母数200〜350件クラスの小規模な宿がいくつも入っていることだ。浅間温泉のホテル玉之湯(母数273件・16件)、松江のなにわ一水(252件・8件)、ほほえみの空湯舟 つるや(305件・7件)、福井の伝統旅館のぬくもり 灰屋(270件・5件)。前節で見た「大型館が受け皿」という構図とは別に、規模ではなく設えの明確さで三世代に選ばれているルートが確かに存在している。横浜ベイホテル東急や神戸メリケンパークオリエンタルホテルのような都市型ホテルが入っているのも興味深い。三世代旅行は温泉旅館の専売特許ではない。

三世代で選ばれる宿をどう設計するか — 運営者の視点で

ここまでのデータから、三世代需要を取りにいくうえで押さえどころになりそうな論点を整理する。いずれも新しく何かを足す話ではなく、すでに持っているものをどう見せるかという話である。

表3:三世代需要の押さえどころ — データが示していることと打ち手の方向性
論点データが示していること打ち手の方向性
客室和洋室が語られる全国27施設のうち19施設が三世代の文脈でも語られる(70.4%)和洋室・広縁付き和室を「三世代向け」として明示的に名付け、定員と就寝形態(畳+ベッドの内訳)を写真と数値で開示する
夕食個室夕食が語られる124施設のうち60施設が三世代の文脈でも語られる(48.4%)個室・半個室の確約プランを設定し、子ども用の椅子・食器、やわらかめの献立への変更可否を予約段階で提示する
館内動線バリアフリーが語られる19施設のうち11施設が三世代の文脈でも語られる(57.9%)。母数200〜350件の小規模館も複数含まれるエレベーターの有無、大浴場までの段差数と距離、手すりの位置を客観情報として掲載する。規模が小さくても差別化できる領域
立地言及の上位は静岡・群馬・神奈川・兵庫・栃木。都市圏から2〜3時間圏の温泉地に集中最寄駅からの送迎、駐車場から玄関までの距離、到着後にすぐ休める場所の有無を訴求する
規模の使い方三世代の文脈で語られる旅館の平均は85室(全国旅館平均23室)。複数会場・複数浴場を持つ大型館が中心「全員一緒」と「別行動」を両立させる時間割を提案する。早めの夕食枠、朝食時間の選択、大浴場の混雑時間帯の案内
貸切風呂貸切風呂が語られる603施設のうち三世代と重なるのは55施設(9.1%)貸切風呂は三世代よりカップル・子連れ層に効く設備。三世代向けには「大浴場までの近さ」「入浴時間の柔軟さ」を軸にするほうが噛み合う

出典:ホテルバンク編集部調べ

言い換えれば、三世代旅行の受注は新しい設備投資よりも、既存の設えの「言語化」と「予約前の開示」で伸ばせる余地が大きい。子世代が宿を決めるとき、彼らが探しているのは豪華さではなく「親を連れて行って大丈夫か」の判断材料だからである。段差の数も、エレベーターの位置も、すでに宿にあるものだ。それが検索と予約の手前に出ているかどうかが、選ばれるかどうかを分けている。

旅行者側の視点 — 5連休の宿選びで見るべき4点

子世代が親や祖父母を連れて宿を選ぶとき、口コミデータから逆算すると、確認しておく価値が高いのは次の4点に集約される。

表4:三世代の宿選びで確認したい4点とその理由
確認したいことなぜ効くか
客室の就寝形態(畳/ベッド/和洋室)和洋室は三世代の文脈で最も強く重なった要素。就寝環境の好みが分かれる同行者を1部屋に収められる
夕食が個室・半個室かどうか周囲への気遣いが減り、食事のペースを家族の速度に合わせられる。子ども連れが同席する場合はなお効く
客室から大浴場までの動線と段差滞在中に最も往復する経路。エレベーター直結か、階段を挟むかで負担が大きく変わる
駅・駐車場からの送迎の有無到着直後は最も疲れが出る局面。上位に並ぶ大型温泉旅館の多くが送迎を備えている

出典:ホテルバンク編集部調べ

5連休のうち、在庫の消化が最も進んでいるのは連休中日の21日(敬老の日)チェックインだった。日程に融通が利くなら、19日や20日から入って21日を滞在中日にする組み方のほうが、選択肢が残りやすい局面にある。ただし前述のとおりこれは調査時点の途中経過であり、今後の動きで状況は変わる。

在庫の厚みを室数に換算する — 連休日程別の感応度

ここまで在庫の消化状況は百分率で扱ってきたが、宿を探す側にとって実感に近いのは「あと何室残っているか」である。本記事に掲載した推定OCCと対象客室数から、推定未販売室数=対象客室数 ×(1 − 推定OCC)という定義どおりの換算で置き換えておく。新たな需要予測を置くものではなく、掲載済みの数値を別の単位で読み直す作業である。

表5:連休日程別の推定未販売室数(推定OCCと対象客室数の積による換算。予測ではなく本文掲載値の置き換え/2026年7月28日時点)
断面チェックイン日栃木県
(旅館171施設・6,576室)
静岡県
(旅館357施設・9,059室)
神奈川県
(旅館223施設・5,411室)
進度が最も速い断面9月21日(月・敬老の日/連休中日)80.9%
1,256室
72.9%
2,455室
78.2%
1,180室
中位の断面9月19日(土/連休初日)73.7%
1,729室
66.1%
3,071室
70.1%
1,618室
進度が最も緩い断面9月12日(土/通常週末・参照)65.5%
2,269室
61.3%
3,506室
66.0%
1,840室
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成。客室数は本文掲載の県別プールを固定し、日程別の推定OCCを当てている(実際は日程ごとに掲載施設数が数施設変動する)。

栃木県の旅館を例にとると、通常週末(9月12日)の推定未販売室数 2,269室に対し、連休中日(9月21日)は 1,256室。差は 1,013室で、通常週末は連休中日の約1.8倍の在庫が残っている計算になる。三世代の旅程は人数も部屋数も大きくなりやすいため、この差は「同じ条件の部屋を複数室まとめて押さえられるか」に直結する。

次に、対象客室数と推定OCCの2軸で未販売室数の感応度を示す。どちらの軸も本文で扱った範囲の内側に収めてある。

表6:対象客室数 × 推定OCC の2軸グリッド — 推定未販売室数(室)。行・列はいずれも本文で扱った実測レンジの内側(客室数5,411〜9,059室/推定OCC61.3〜80.9%、いずれも2026年7月28日時点)に収めている
対象客室数\推定OCC60%65%70%75%80%
5,000室2,0001,7501,5001,2501,000
6,000室2,4002,1001,8001,5001,200
7,000室2,8002,4502,1001,7501,400
8,000室3,2002,8002,4002,0001,600
9,000室3,6003,1502,7002,2501,800
出典:ホテルバンク編集部より作成(推定未販売室数=対象客室数×(1−推定OCC)の換算のみ)。網掛けは中位のセル。

読み方は単純で、推定OCCが5ポイント動くと、7,000室規模のエリアでは未販売室数が350室動く。エリアの規模が大きくても、連休中日のように消化が進んだ断面では選択肢は急速に細る。日程に融通が利くなら、進度の緩い断面から入る組み方のほうが、部屋タイプまで含めて選べる余地が残りやすい。なお推定OCCはOTA掲載在庫ベースの推定値であり、実稼働率とは定義が異なる(高めに出る)。この換算も同じ性質を引き継ぐ。

まとめ

11年ぶりの5連休は、敬老の日を軸に据えた稀な連休である。全国306施設・2,426件の口コミ言及から浮かび上がったのは、三世代旅行の受け皿が(1)都市圏から2〜3時間圏の温泉地に集中していること、(2)全国の旅館のなかでも上位1割にあたる大型館が中心であること、そして(3)和洋室・個室夕食・段差のなさという「滞在時間の大半を占める部分の設計」が強く効いていること、の3点だった。

一方で、貸切風呂のように直感的には効きそうな設備が、実際には三世代の文脈とほとんど重なっていない例もあった。そして母数300件前後の小さな宿が、バリアフリーという一点の明確さで三世代に選ばれている例も確認できた。規模の大小にかかわらず、三世代という単位に対して「うちはこう受け止められる」と言語化できている宿に、需要は集まっている。9月の5連休は、その言語化を試す絶好の機会である。

※ 予約進度データに関する注意:本記事で示した9月連休の稼働率は、調査時点でOTA上に公開されている販売在庫の消化状況に基づく推定値であり、チェックイン日に近づくにつれて変動します。連休まで約52日ある時点の途中経過であり、特定施設・特定日程の完売を示すものではありません。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

宿泊者口コミの意味解析(直近24ヶ月、ホテルバンク編集部調べ)を都道府県別に分割して積み上げ、親孝行・三世代の文脈で5件以上の言及がある施設を抽出した。設えの4要素(バリアフリー・個室夕食・和洋室・貸切風呂)も同じ手順で各プールを作り、施設IDで重なりを算出している。在庫・稼働は2026年9月チェックイン日の旅館業態を対象としたOTA掲載在庫ベースの推定値(メトロエンジンリサーチ、2026年7月28日時点)。客室規模の分布は宿泊施設マスターに基づく。

■ 試算前提

「在庫の厚みを室数に換算する」節の表5・表6は、推定未販売室数=対象客室数 ×(1 − 推定OCC)という推定OCCの定義どおりの換算のみで算出しており、新たな需要予測や将来の消化ペースの仮定は置いていない。客室数は本文掲載の県別プール(栃木県6,576室・静岡県9,059室・神奈川県5,411室)を固定値として用いた(実際は日程ごとに掲載施設数が数施設変動する)。2軸グリッドの行(5,000〜9,000室)・列(推定OCC60〜80%)はいずれも本文で扱った実測レンジの内側に収めている。

■ 限界・留意点

(1) 推定OCCはOTA上に公開された販売在庫の消化状況に基づく推定値で、施設全体の実稼働率とは定義が異なり高めに出る。また記事作成時点のスナップショットであり、チェックイン日に近づくにつれて変動する。(2) 言及件数・言及率は口コミでの「語られやすさ」を示すもので、施設の評価点の高さを示すものではない。(3) 解析対象には日本語以外の言語で書かれた口コミも含まれ、記述言語は投稿者の国籍を示さない。(4) 全国集計は都道府県別クエリの積み上げであり、山梨県は集計クエリが応答せず今回の306施設・2,426件には含まれていない。同県にも該当施設は存在するため、この2つの数値は下限値として読まれるべきものである。(5) 業態別の客室規模分布(旅館213施設・全国7,741施設)は宿泊施設マスター由来で、口コミ解析とは別系統のデータである。

■ 自社データ

  • ホテルバンク編集部調べ — 宿泊者口コミの意味解析(直近24ヶ月、親孝行・三世代の言及がある全国306施設・延べ2,426件)。バリアフリー19施設、個室夕食124施設、和洋室27施設(いずれも言及5件以上)、貸切風呂603施設(言及10件以上・39都道府県で集計)の各プールとの重なりを算出
  • メトロエンジンリサーチ — 2026年9月チェックイン日のOTA掲載在庫に基づく推定稼働率(栃木県の旅館171施設・6,576室、静岡県357施設・9,059室、神奈川県223施設・5,411室、いずれもLT90時点)、および全国の宿泊施設マスター(旅館7,741施設の客室規模分布)

■ 祝日・連休の日程

■ 政府統計

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