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延岡・日向・都城のホテル投資2026 — 単価6,000円台、GW最速完売と空く上位価格帯

投稿日 : 2026.09.12

宮崎県

投資・開発

延岡・日向・都城のホテル投資2026 — 単価6,000円台、GW最速完売と空く上位価格帯

宮崎県の宿泊市場を投資対象として語るとき、これまで議論の中心にあったのは高千穂の山岳観光と、宮崎市のスポーツキャンプ需要だった。本稿が扱うのはその両方ではなく、県北の延岡市・日向市と県西の都城市という業務3市である。旭化成の企業城下町、細島港を抱える工業都市、そして県内第2の人口を持つ商業都市。いずれも平日の業務需要が土台にあり、県庁所在地とは異なる需給の形をしている。

先に既刊との線引きを置いておく。ホテルバンクではこれまで、宮崎・佐賀のホテル投資ホワイトスペースで県単位の価格帯分布を、また高千穂については山岳ラグジュアリーの空白として扱ってきた。本稿では高千穂を「県内価格の天井」として参照するにとどめ、主題を業務3市の中価格帯に置く。九州の他の既刊エリア記事(鹿児島の県内ADR階層など)とも対象地域は重ならない。

検証するのは3点である。第一に、県内のADR階層が「山岳観光/県都/業務3市」の三層でどう分かれるか。第二に、確定済みのピーク日(GW2026)の客室ベース在庫データで、その3市の需給がどこまで締まっているか。第三に、建設費の原単位から新設が成立する必要ADRを逆算し、現行水準との距離をどう埋めるか。

本記事における指標の定義

  • ADR(平均客室単価)=各施設がOTA等で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。
  • 掲載価格(全プラン平均・税込)=OTA等に掲載されている全プランの平均。素泊まりから食事付きまでを含むため、推定成約ADRより高い水準になります。本稿では両者を明確に区別して表記します。
  • OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。都道府県・市区町村などのマクロ単位でのみ用い、個別施設のOCCは算出していません。
  • LT(リードタイム)=チェックイン日までの日数。LT0=当日。
  • 早期完売LT=残室数が初めて0室に到達したリードタイム(値が大きいほど早く完売したことを示す)。完売観測日数=残室0を観測した延べ日数。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング/総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査」/国土交通省 国土数値情報・地価公示・建築動態統計調査
業務3市 客室
4,081
96施設・延岡+日向+都城
3市のADR上限
¥11,526
ADR取得38施設中の最高値
¥10,000超の施設
2
113室のみ(N=38)
延岡 早期完売LT
34.0
GW2026・中央値(N=5)
新設の必要ADR
¥12.8-14.7k
宿泊特化100室・OCC70-80%

Key Takeaways

  • 宮崎県のADR階層は三層に分かれる。高千穂町 ¥16,039(N=13)が天井、宮崎市 ¥8,036(N=55〜58)が中間、業務3市は都城市 ¥6,408/日向市 ¥6,174/延岡市 ¥5,903。いずれも直近12ヶ月(2025年8月〜2026年7月)の推定成約ADR平均。
  • 業務3市でADRを算出できた38施設のうち、¥10,000超はわずか2施設・113室。同じ県内でも宮崎市は¥10,000〜14,000帯に13施設・2,191室を抱えており、上位中価格帯の受け皿が3市側に開いている
  • GW2026(5/2〜5/5)の客室ベース在庫では、早期完売LT上位6施設のうち4施設が延岡、1施設が都城。延岡の中央値LT34.0に対し宮崎市はLT9.0で、約25日早く売り切れている(40室以上のビジネス・シティホテル、N=延岡5・宮崎市17)。
  • 需要基盤も確認できる。延岡駅1km圏は事業所1,417・従業者7,598人、都城市役所1km圏は943・7,680人、日向市駅1km圏は890・5,061人。3市とも平日業務の厚みが実測できる。
  • 新設100室が利回り8%を成立させる必要ADRは¥12,800〜14,700(宿泊特化仕様・OCC70〜80%)。現行水準との距離があるため、当面の受け皿づくりは既存ストックの取得・リポジション側に有利である。

三層構造 — 高千穂¥16,039・宮崎市¥8,036・業務3市¥5,900〜6,400

まず県内の価格階層を整理する。直近12ヶ月(2025年8月〜2026年7月)の推定成約ADRを市町村別に12ヶ月平均でならすと、宮崎県は明確な三層に分かれる。最上位が高千穂町の¥16,039、次が県都・宮崎市の¥8,036、そしてその下に業務3市が並ぶ。県全体の平均は¥6,913で、業務3市はいずれもこれを下回る。

市町村別 推定成約ADR(2025年8月〜2026年7月の12ヶ月平均)
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(各市町村の推定成約ADR算出施設数 N=3〜55。施設数1〜2の市町村は参考値のため除外)

三層の性格はそれぞれ異なる。高千穂町は13施設と規模こそ小さいが、旅館 神仙(13室)が¥71,139、離れの宿 神隠れ(8室)が¥49,517、ホテル四季見(20室)が¥26,212と、県内で唯一¥20,000超の帯を複数施設で成立させている。67室のソレスト高千穂ホテルが¥16,316で、規模のある施設でも¥15,000超が成り立つ。宮崎県に上位帯の需要が存在しないわけではない——このことは、以降の議論の前提として押さえておきたい。

中間層の宮崎市は、県内の客室ストックの中心である。半径7km圏で107施設・8,519室を抱え、春季スポーツキャンプという他県にはない需要のピークを持つ。県全体の月次推移を年次オーバーレイで見ると、この季節性がはっきり出る。

宮崎県 月次 推定成約ADR(年次オーバーレイ・実績確定月のみ)
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(N=152〜169施設/月。2026年は7月まで表示。8月以降は調査時点の掲載水準に基づく推定となるためトレンド判断から除外)

2月が毎年の最高値を作る。2024年2月¥8,454、2025年2月¥8,047、そして2026年2月は¥8,962で前年同月比+11.4%。宮崎市に限れば2025年2月¥10,761から2026年2月¥12,582へ+16.9%と伸びている。宮崎県の発表によれば、2026年1〜3月の春季キャンプ・合宿の経済効果は126億2,700万円で前年同期比+27.1%。侍ジャパン宮崎春季キャンプ2026の開催による観客増が主因とされる。単月に需要が集中する市場では、価格の天井はイベントが作るという構図がそのまま数字に出ている。

そして三層目が業務3市である。都城市¥6,408、日向市¥6,174、延岡市¥5,903。この水準だけを見れば県内の下位に位置するが、重要なのは水準ではなく分布の形だ。次章以降、需要基盤と在庫消化の両面から、この3市に何が積み上がっているかを見ていく。

需要基盤 — 延岡駅1km圏に事業所1,417・従業者7,598人、3市とも業務の厚みが実測できる

価格帯の空白を投資対象として評価するには、その帯を支える需要が立地にあるかを確認しなければならない。総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査」に基づき、各市の中心部(半径1km圏)の就業構造を集計した。あわせて、国土交通省 国土数値情報の250mメッシュ別将来推計人口から、半径1.5km圏の居住人口と2040年推計を並べる。

表1 業務3市・宮崎市の中心部就業構造と居住人口推計(事業所・従業者は半径1km圏/居住人口は半径1.5km圏)
中心地点事業所
(半径1km)
従業者
(半径1km)
オフィス系
従業者比率
居住人口2025
(半径1.5km)
同2040推計2025→2040高齢比率
2025
宮崎駅周辺3,76034,11523.4%44,88543,270▲3.6%26.2%
延岡駅周辺1,4177,59813.4%22,42918,696▲16.6%32.8%
都城市役所周辺9437,68011.7%15,62613,780▲11.8%32.7%
日向市駅周辺8905,06114.8%20,22117,705▲12.4%32.1%
就業=総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査(2021)」、境界=国勢調査2020 小地域(e-Stat統計GIS)。居住人口=国土交通省 国土数値情報「250mメッシュ別将来推計人口(R6国政局推計)」。居住人口であり滞在人口・通過人口ではありません。都城は都城駅周辺での集計が小地域2区画にとどまるため、商業集積の中心である市役所周辺を代表座標としています。

3市の業務の厚みは、県都との比較で見ると相対的には小さい。ただし絶対量としては、延岡駅1km圏に7,598人、都城市役所1km圏に7,680人、日向市駅1km圏に5,061人の従業者が集まっている。100室規模のホテル1棟が拾うべき平日需要としては十分な母数であり、実際に3市の客室ストック(96施設・4,081室)はこの就業基盤の上に成立している。オフィス系比率が11〜15%と低いのは、製造業・物流・卸売の比重が高い産業構造の反映であり、本社機能に依存しない出張・工事・技術系の滞在需要が土台になっていると読める。

居住側は3市とも2040年に向けて縮小方向にある。ただし宿泊需要の源泉は居住人口そのものではなく就業と来訪であり、この2つは分けて評価する必要がある。延岡駅圏の居住分布をメッシュで見ると、人口は駅の東側から五ヶ瀬川沿いにかけて厚く、駅前の商業集積とは重心がずれている。

延岡駅 半径1.5km圏 居住人口メッシュ(250m区画)
出典: 国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口・R6国政局推計)/メッシュ97区画
商業地の公示地価(2026年1月1日時点)
表2 業務3市・宮崎市の商業地公示地価(2026年1月1日時点・市別平均)
宮崎市¥100,103/㎡+2.08%
延岡市¥46,900/㎡▲0.28%
日向市¥41,500/㎡▲0.01%
都城市¥33,550/㎡+0.15%
出典: 国土交通省「地価公示」(令和8年)商業地の市別平均価格・変動率
駅前商業地の最高標準地
表3 業務3市・宮崎市の駅前商業地 最高標準地(2026年1月1日時点)
宮崎市 橘通西3丁目¥316,000/㎡
都城市 上川東4丁目¥72,500/㎡
延岡市 中央通2丁目¥70,000/㎡
日向市 上町1丁目¥61,200/㎡
出典: 国土交通省「地価公示」(令和8年)

地価水準は3市とも宮崎市の3分の1から2分の1にとどまり、変動率もほぼ横ばい圏にある。用地取得の負担が軽いことは、建設費が高止まりする局面では数少ない有利条件である。100室・敷地1,200㎡を想定すると、土地代は1室あたり延岡56万円・日向50万円・都城40万円にすぎない。総投資に占める土地の比重が2〜3%程度に収まるため、事業採算はほぼ建設費とADRの2変数で決まる構造になる。この点は後段の逆算で再度扱う。

GW2026の在庫消化 — 早期完売LT上位6施設のうち5施設が業務3市

需給の実態は、確定したピーク日の客室ベース在庫データで確認する。ここでは2026年のゴールデンウィーク(5月2日〜5月5日の4日間)を対象とした。すでに経過した日程であり、完売の有無は確定している。

集計対象は、期間中にOTA公開枠が総客室の30%以上あった施設に限定した。県内719施設のうち在庫データを取得できたのは229施設、公開枠30%未満を除いた集計対象は180施設である。公開枠が小さい施設は、公式サイト直販や旅行会社・法人契約を中心とした運用、あるいはチェックインに近づくにつれて在庫を追加していく運用など複数の可能性があり、残室の少なさが施設全体の満室を意味しないため対象から外している。

GW2026(5/2〜5/5)平均 早期完売LT — ビジネス・シティホテル 40室以上 上位14施設
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(宮崎県 対象719施設・在庫データ取得229施設・OTA公開枠30%以上の180施設を集計。うちビジネス・シティホテル40室以上=N=30)
表4 GW2026(5/2〜5/5)平均 早期完売リードタイム上位14施設(ビジネス・シティホテル40室以上)
順位施設客室平均
早期完売LT
完売を
観測した日
延べ
完売観測日数
推定成約ADR
12ヶ月平均
1アパホテル〈宮崎延岡中央〉延岡市9334.52/4日27¥6,752
2ベッセルホテル都城都城市12834.54/4日16¥9,804
3エンシティホテル延岡延岡市12534.03/4日75¥7,390
4HOTEL AZ 宮崎田野店宮崎市9134.03/4日98¥5,548
5アパホテル〈宮崎延岡駅前〉延岡市19234.02/4日14¥7,206
6延岡アーバンホテル延岡市9533.01/4日29¥5,938
7都城サンプラザホテル都城市8229.33/4日47¥6,497
8HOTEL AZ 宮崎延岡店延岡市9129.24/4日88¥5,566
9ホテルルートイン宮崎橘通宮崎市21327.02/4日46¥8,645
10日向第一ホテル日向市10026.02/4日26¥6,209
11ホテルルートイン都城都城市20326.03/4日55¥7,901
12東横INN宮崎駅前宮崎市20025.73/4日33¥7,869
13ケイズストリートホテル宮崎宮崎市15621.02/4日32¥7,349
14ホテル ブリスベンズ宮崎市13417.52/4日34¥5,967
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング。早期完売LT=残室数が初めて0室に到達したリードタイムの期間平均(値が大きいほど早期完売)。青色行は業務3市。推定成約ADRは2025年8月〜2026年7月の12ヶ月平均。

順位の上位は業務3市が占める。上位6施設のうち4施設が延岡、1施設が都城で、宮崎市勢では第4位のHOTEL AZ 宮崎田野店(旧田野町エリアの郊外立地)が続き、駅前・中心部ではホテルルートイン宮崎橘通のLT27.0が最上位となる。40室以上のビジネス・シティホテルで市別の中央値を取ると、延岡市LT34.0(N=5)に対して宮崎市LT9.0(N=17)。延岡は宮崎市より約25日早く客室を売り切っている。都城市はLT16.2(N=6)、日向市はLT13.0(N=2)で、いずれも宮崎市を上回る。

この差の背景には規模の非対称がある。宮崎市は7km圏で8,519室を抱えるため、連休のピークでも在庫が最後まで残りやすい。一方で3市の客室ストックは合計4,081室と宮崎市の半分以下で、需要が集中すると短時間で消化される。「単価が低い」ことと「売れ残っている」ことは別の話であり、GWの実測はむしろ3市の消化力の高さを示している。

GW2026 残室推移 — 4施設のリードタイム別 残室数(室ベース)
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング。延岡アーバンホテル・日向第一ホテル・ベッセルホテル都城・コンフォートホテル宮崎の各1日程。OTA公開枠が総客室の30%以上ある施設のみ。X軸右端がチェックイン当日(LT0)。

個別の消化の形も読める。延岡アーバンホテル(95室)は5月2日チェックイン分について、LT53時点で残室40室だったものがLT52で19室まで一気に減り、そこからLT35まで19〜20室で横ばい、LT33で残室0室に到達した。その後LT24〜LT20に2室が戻り、LT19で再び完売している。ベッセルホテル都城(128室)は5月3日分でLT34にいったん残室0を記録した後、LT33で19室、LT25で46室まで在庫が追加され、LT13以降で再び消化しきる形をとった。5室以上かつ3日以上継続した在庫の戻りは、キャンセルの循環というよりホテル側の追加販売と読むのが自然だろう。

日向第一ホテル(100室)はLT38で41室の在庫が立ち上がり、LT22で残室0に到達。コンフォートホテル宮崎(179室)はLT54で106室からの長い消化カーブを描き、LT25で残室2室、LT21で0室に達した。179室という規模を連休のピークで消化しきる力があり、県都の大箱としては安定した形である。3市と宮崎市では在庫の立ち上がり方も消化速度も異なる——同じ県内でも、レベニュー運用の設計は別物として考えるべきということでもある。業態ごとに予約がいつ入るかの違いは、宮崎県の業態別ブッキングカーブで旅館・シティ・ビジネスの3区分について整理している。

ポジショニング — 業務3市38施設のうち¥10,000超は2施設113室のみ

ここまでの2つの軸——推定成約ADRと早期完売LT——を1枚に重ねる。横軸に施設別の推定成約ADR(12ヶ月平均)、縦軸にGW2026の平均早期完売LTを置き、円の大きさを客室数とした。市ごとに色を分けている。

推定成約ADR × GW2026 早期完売LT ポジショニング(円サイズ=客室数)
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(ビジネス・シティホテル40室以上・ADR取得済 N=30施設。ADRは2025年8月〜2026年7月の12ヶ月平均、早期完売LTはGW2026 5/2〜5/5の期間平均)。青枠=受け皿の空白帯。

散布図の右側、ADR¥10,000より右には業務3市の施設が1つも存在しない。プロットされるのは宮崎市の駅前・沿岸勢だけである。しかも縦軸で上に位置する(=早く売り切れる)のは、左側の低ADR帯に集まる3市の施設だ。需要の消化力が最も高い群が、価格帯としては最も下に固まっている——これがこの図の読みどころである。

この構造を供給密度の側からも確認する。各市の半径6〜7km圏でADRを算出できた施設を価格帯別に集計した。

推定成約ADR帯別の施設数(4市・10室以上・ADR取得済)
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(延岡N=15・日向N=7・都城N=16・宮崎N=49、2025年8月〜2026年7月の12ヶ月平均ベース。圏域は延岡・日向が半径6km、都城・宮崎が半径7km)
表5 推定成約ADR帯別の施設数・客室数(延岡・日向・都城・宮崎市/10室以上・ADR取得済)
推定成約ADR帯延岡市
施設/客室
日向市
施設/客室
都城市
施設/客室
業務3市 計
施設/客室
宮崎市
施設/客室
〜¥8,00015/1,1885/39313/1,25033/2,83122/2,186
¥8,000〜10,0000/02/981/1283/22612/1,696
¥10,000〜14,0000/00/02/1132/11313/2,191
¥14,000〜18,0000/00/00/00/01/41
¥18,000〜0/00/00/00/01/30
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(10室以上・推定成約ADR取得済 N=87施設)

数字はきわめて明快である。業務3市38施設のうち33施設(86.8%)が¥8,000未満に集まり、¥10,000を超えるのは2施設・113室にすぎない。延岡市に至っては、ADRを算出できた15施設すべてが¥8,000未満の帯に入る。

ここで重要なのは、その2施設が実際に成立していることだ。都城市のホテル テラスタ 都城(93室・¥10,130)とホテル中山荘(20室・¥11,526)は、業務3市のなかで¥10,000超を成り立たせている実例である。とくに前者は93室という一定の規模を持ちながらこの水準を維持しており、「地方業務市では¥10,000は無理」という前提が事実ではないことを示す。

比較対象として宮崎市を見ると、¥10,000〜14,000帯に13施設・2,191室が並ぶ。JR九州ホテル 宮崎(141室・¥12,945)、アートホテル宮崎 スカイタワー(131室・¥11,326)、リッチモンドホテル宮崎駅前(201室・¥10,652)、グリーンリッチホテル宮崎橘通2(163室・¥10,262)、ホテルJALシティ宮崎(210室・¥10,047)など、100〜200室クラスがこの帯を厚く形成している。同一県内・同一の顧客動線の上で、この帯が県都では成立し、業務3市では未形成である。これが本稿の言う受け皿の空白だ。

厚い ¥8,000未満・33施設2,831室

業務3市の中核。GW2026で県内最速級の消化を実現した施設群がここに集まる。需要の土台としては十分に厚く、稼働面での不安は小さい。

空白 ¥10,000〜14,000

3市で2施設113室のみ。宮崎市では13施設2,191室が成立している帯であり、3市側に受け皿の余地が残る。100〜150室クラスの上位中価格帯が想定レンジ。

参照 高千穂 ¥16,039

県内価格の天井。¥20,000超を複数施設で成立させる需要が県内に存在することの実証。ただし山岳観光の文脈であり、業務3市とは需要源が異なる。

宮崎県 主要5エリアの宿泊施設分布(円=客室数規模、色=推定成約ADR帯)
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(10室以上・推定成約ADR取得済 N=99施設。高千穂町は8室以上)

需給の厚み — 業態別の推定稼働率はビジネス85.0%・シティ91.9%

価格帯の空白が投資機会になるかどうかは、稼働の裏付けがあるかで決まる。宮崎県のOTA掲載在庫ベースの推定稼働率を、2026年8月について業態別に集計した。

表6 宮崎県の業態別 推定OCC(2026年8月・OTA掲載在庫ベースの推定値)
業態対象施設対象客室推定OCC
2026年8月
全施設23112,37785.9%
ビジネスホテル777,16285.0%
シティホテル181,93191.9%
デラックス235789.9%
リゾート151,75984.8%
旅館3754083.7%
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります。

市区町村単位でも同月の推定稼働率を取ると、延岡市88.9%(17施設1,161室)、都城市89.4%(22施設1,572室)、日向市90.6%(16施設532室)、宮崎市88.2%(78施設7,291室)で、3市はいずれも県都と同等かそれ以上の水準にある。8月という繁忙月の値である点は割り引く必要があるが、業務3市の需給が県都に対して見劣りしないことは確認できる。

シティホテルが91.9%と最も高いのも示唆的だ。宮崎県のシティホテル区分は18施設1,931室と規模が小さく、そこに需要が集中している。上位中価格帯の受け皿が薄いことの裏返しとも読める数字である。なお2026年10月以降は宮崎県を含む九州7県で需要喚起策が動くため、当面の稼働はその影響も含めて読む必要がある(九州応援割は対象7県・10月1日からで在庫消化の実測を扱っている)。

新設の必要ADR逆算 — 宿泊特化100室で¥12,800〜14,700、建設費±15%で¥10,900〜16,900

受け皿の空白を新築で埋める場合、どの水準のADRが必要になるか。ホテルバンクが先に公開したホテル1室の建築費は2,067万円 — 計画31件の客室原単位35.0㎡から逆算の原単位をそのまま用いて逆算する。

同記事は、国土交通省「建築動態統計調査」に基づく単独用途ホテル31件(計6,025室)の客室原単位を中央値35.0㎡/室と実測し、2025年のホテル用途の坪単価(全構造平均195.2万円、S造240.5万円、RC造202.6万円)を掛けて1室あたり建築費の中央値を2,067万円と算出している。同時に、原単位は客室数と逆相関し、200室以上の13件は中央値25.7㎡/室にまとまることも示している。業務3市で想定される100室規模の宿泊特化型は後者に近い。そこで本稿では2つの仕様を置いた。

表7 新設100室の建設費前提(仕様A 宿泊特化型/仕様B 中規模フルサービス型)
仕様客室原単位坪単価建物工事費+FF&E・設計監理・開業前費用
(×1.25)
A. 宿泊特化型25.0㎡/室240.5万円/坪(S造)1,819万円/室2,273万円/室
B. 標準仕様35.0㎡/室(中央値)195.2万円/坪(全構造平均)2,067万円/室2,583万円/室
出典: 国土交通省「建築動態統計調査」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成。建物工事費は土地代・消費税を含みません。×1.25はFF&E・設計監理料・開業前費用を建物工事費の25%と置いた前提値です。

ここに土地代を加える。100室・敷地1,200㎡・2026年の商業地平均価格で計算すると、1室あたり土地代は延岡56万円・日向50万円・都城40万円。総投資額は仕様Aで1室2,314〜2,330万円(100室で約23億円)、仕様Bで2,624〜2,640万円(同約26億円)となる。

そのうえで、GOP(Gross Operating Profit=運営総利益。売上から運営費を差し引いたホテル運営段階の利益で、減価償却・支払利息・賃借料の控除前)利回り8%を成立させる必要ADRを求める。前提は、客室売上に朝食・その他収入を10%上乗せした総収入、GOP率は総収入の45%(宿泊特化型・地方立地の保守値)とした。

GOP利回り8%を成立させる必要ADR(延岡市・100室・仕様A 宿泊特化型)
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算(建物工事費=国土交通省「建築動態統計調査」、土地=国土交通省「地価公示」令和8年)。総収入=客室売上×1.10、GOP率45%、目標GOP利回り8%。簡易試算であり、実際の投資判断には詳細なフィージビリティ・スタディが必要です。
表8 新設100室の必要ADR感度分析(建設費±15% × OCC 70/75/80%)— OCC列はすべて試算前提値であり実績値ではない
ケース(100室・延岡市)OCC 70%OCC 75%OCC 80%
仕様A・建設費 ▲15%¥12,580¥11,741¥11,007
仕様A・基準ケース¥14,737¥13,754¥12,895
仕様A・建設費 +15%¥16,894¥15,768¥14,782
仕様B・基準ケース¥16,697¥15,584¥14,610
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算。都城市・日向市は土地代が延岡市より1室あたり6〜16万円低いため、必要ADRは¥30〜100程度下がります(延岡¥13,754に対し都城¥13,660)。

必要ADRは基準ケースで¥12,900〜14,700、建設費を±15%動かすと¥11,000〜16,900のレンジに収まる。現行の3市のADR(¥5,903〜6,408)との距離は小さくない。ただしこれは「新築ではこの帯に届かない」ではなく「新築で狙うなら¥13,000前後の商品設計が前提になる」という意味である。都城のホテル テラスタ 都城が93室で¥10,130を成立させていることを踏まえれば、¥13,000は現状の延長線上にはないが、商品性を変えた場合の到達点としては議論の余地が残る。

もうひとつの道筋が既存ストックの取得・リポジションである。同じ前提(GOP率45%・利回り8%)で、達成ADR別に成立する1室あたり総投資額(取得+改装)の上限を求めた。

表9 既存ストック取得・リポジションの投資上限額感度分析(達成ADR × OCC 70/75/80%)— OCC列はすべて試算前提値であり実績値ではない
達成ADROCC 70%OCC 75%OCC 80%
¥7,000(現行の3市中位)1,107万円/室1,186万円/室1,265万円/室
¥8,0001,265万円/室1,355万円/室1,445万円/室
¥10,000(都城の実例水準)1,581万円/室1,694万円/室1,807万円/室
¥12,0001,897万円/室2,033万円/室2,168万円/室
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算(総収入=客室売上×1.10、GOP率45%、目標GOP利回り8%)。取得価格+改装費の合計上限であり、土地・建物・FF&Eを一体で含みます。

ADR¥10,000・OCC75%(いずれも試算前提値)であれば、1室1,694万円までの投資で利回り8%が成立する。新築の必要総投資2,314万円/室に対して620万円/室の余裕があり、100室なら6.2億円の差になる。3市の既存ストックは96施設4,081室と母集団が厚く、この差額の範囲で取得・改装によって上位中価格帯の商品を作る余地がある——これが本稿の実務的な結論である。

投資判断サマリー — 3市それぞれの時間軸

表10 投資判断サマリー(延岡市・日向市・都城市)
推定成約ADR
12ヶ月平均
供給
(施設/客室)
GW2026
早期完売LT中央値
従業者
(1km圏)
商業地地価
(変動率)
強みと余地
延岡市¥5,90334/1,61334.0(N=5)7,598¥46,900
▲0.28%
県内最速級の在庫消化。¥8,000超の帯が未形成で、上位中価格帯の受け皿余地が最も大きい。
都城市¥6,40838/1,82116.2(N=6)7,680¥33,550
+0.15%
3市で唯一¥10,000超が2施設成立。上位帯の実証があり、追随の商品設計が組みやすい。
日向市¥6,17424/64713.0(N=2)5,061¥41,500
▲0.01%
客室ストックが647室と最も薄く、1棟の相対的な影響力が大きい。住宅地地価は+1.82%と3市で最も強い。
(参考)宮崎市¥8,036107/8,5199.0(N=17)34,115¥100,103
+2.08%
¥10,000〜14,000帯に13施設2,191室。3市が目指す帯がすでに成立している参照市場。
ADR・供給・早期完売LT=メトロエンジンリサーチ&コンサルティング/従業者=総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査(2021)」半径1km圏(都城は市役所周辺)/地価=国土交通省「地価公示」令和8年 商業地の市平均。

3市に共通するのは、需要の消化力はすでに実証されている一方で、価格帯の階段が1段しかないという構造である。¥8,000未満に33施設2,831室が集まり、その上が空いている。宮崎市では¥10,000〜14,000帯が13施設2,191室で成立しており、県内に前例がないわけではない。高千穂に至っては¥20,000超の帯を複数施設が支えている。

時間軸で見れば、都城が最も早い。¥10,000超の2施設という実績があり、地価も3市で最も低く(¥33,550/㎡)、取得コストの面で有利である。延岡は最も余地が大きい。GWの消化速度は県内最速級で、従業者7,598人の業務基盤を持ちながら、¥8,000超の施設が1つもない。日向は1棟の影響力が大きい。客室647室という市場規模のため、100室クラスが1棟入るだけで供給構成が変わる。

いずれのケースでも、当面の現実解は既存ストックの取得・リポジションにある。ADR¥10,000・OCC75%(試算前提値)で1室1,694万円の投資上限が立ち、新築の必要投資2,314万円/室に対して十分な余裕がある。すでに需要の裏付けがある市場で、価格帯の階段を1段増やす——業務3市の投資機会は、この形で整理できる。

⚠ 分析対象期間について:本稿の推定成約ADRは2026年7月までの実績確定月のみを用いており、2026年8月以降の月は調査時点でOTA等に掲載されている販売価格に基づく推定となるため、トレンド判断から除外しています。在庫消化データは2026年5月2日〜5月5日(経過済みの確定日程)を対象としており、将来日程の完売予測ではありません。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

推定成約ADRは宮崎県内18市町村・直近12ヶ月(2025年8月〜2026年7月)の月次系列を12ヶ月平均でならした値(市町村別 N=3〜58施設/月、施設別 N=87施設)。在庫消化データはGW2026(2026年5月2〜5日)を対象に、宮崎県719施設のうち在庫を観測できた229施設、さらにOTA公開枠が総客室数の30%以上ある180施設に絞って集計した。推定OCCは2026年8月の業態別・OTA掲載在庫ベースの推定値(対象231施設・12,377室)。就業構造は経済センサス-活動調査(2021)の小地域集計、居住人口は国土数値情報の250mメッシュ別将来推計人口、建設費原単位は建築動態統計調査、地価は地価公示(令和8年)を用いた。

■ 試算前提

新設の必要ADR試算は100室・延岡市を基準に、仕様A(宿泊特化型・客室原単位25.7㎡/室)と仕様B(中規模フルサービス型・同35.0㎡/室)の2仕様を置き、建物工事費に×1.25でFF&E・設計監理料・開業前費用を加算した。土地は敷地1,200㎡・各市の商業地平均価格で算入。総収入は客室売上に朝食・その他収入を10%上乗せ(×1.10)、GOP率は総収入の45%(宿泊特化型・地方立地の保守値)、目標GOP利回りは8%とした。感度分析のOCC 70%/75%/80%および建設費±15%はいずれも試算上の前提値であり、実績値ではない

■ 限界・留意点

(1)推定成約ADRはOTA公開最安プランに業態別係数を適用した推定値で、上場ホテルREITの物件別開示実績との照合による誤差中央値は約7%。個別施設の実際の成約価格・会計数値とは一致しない。(2)推定OCCはOTA掲載在庫の消化率に基づく推定であり、直販・法人契約・旅行会社ブロックなどOTA外の在庫は捕捉していない。マクロ単位でのみ用い、個別施設のOCCは算出していない。(3)日向市はADR算出施設がN=7〜8と薄く、1施設の価格改定が市平均を動かしやすい。(4)早期完売リードタイムはOTA公開枠30%以上の施設に限定した集計で、県内全施設の予約動向を代表するものではない。(5)建設費・地価は統計上の平均値であり、個別案件の実際の事業費は用地条件・構造・仕様で大きく振れる。(6)本稿の試算は市場環境の把握を目的とした簡易試算であり、投資判断には個別のフィージビリティ・スタディが必要である。

■ 市場データ

  • メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — 推定成約ADR(市町村別 N=3〜58施設/月、施設別 N=87施設)、客室ベース在庫消化データ(宮崎県719施設中229施設で取得、OTA公開枠30%以上の180施設を集計)、OTA掲載在庫ベースの推定稼働率

■ 政府統計・公的データ

■ 地価の市別集計

■ 関連する既刊分析

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