ホテル経営の売上は、突き詰めれば「客室数 × 稼働率 × ADR(平均客室単価)× 365日」という一本の掛け算で決まる。そして費用の主役は、人件費・水光熱費・賃料または減価償却の3つである。この掛け算のどこを取りに行くかが業態の選択であり、費用の誰が負うかが運営形態の選択だ。本稿では、メトロエンジンリサーチの推定成約ADRと観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値(確定値)を突き合わせ、業態別に「1室あたり年間いくらの売上が立ち、そのうち何割が手元に残るのか」を数字で示す。
本記事における指標の定義
- ADR(平均客室単価):各施設がOTA等で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。本稿の業態別ADRは、全国47都道府県の値を対象施設数で加重平均したものです。
- 実績稼働率(客室稼働率):観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年(令和7年)年間値(確定値)の客室稼働率。全国・宿泊施設タイプ別の公表値をそのまま引用しています。1室あたり年間売上の試算にはこの公表値のみを用いています。
- OCC(稼働率・当社推定):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります。上記の実績稼働率とは母集団・算出方法が異なるため、本稿では混用せず参考列として分けて表示します。
- RevPAR(販売可能客室1室あたり売上):ADR × 稼働率。
- GOP(営業粗利益):売上から運営に直接かかる費用を差し引いた利益。本稿では業態別の目安レンジのみを扱います。定義と算定範囲は別稿に譲ります。
- データ出典:メトロエンジンリサーチ/観光庁「宿泊旅行統計調査」
- — 1室あたり年間売上はリゾート約351万円・シティ約340万円・ビジネス約231万円・旅館約186万円。ADRの序列と年間売上の序列は一致しない。
- — 旅館のADRは約13,300円とビジネスホテルの約8,400円より6割高いが、稼働率38.2%対75.3%(観光庁2025年1月〜12月・確定値)の差で年間売上は逆転する。
- — 1室あたり年間GOPはビジネス92〜139万円、リゾート70〜140万円、シティ34〜102万円、旅館9〜28万円。売上規模と利益の厚みは連動しない。
- — 運営形態4類型は需要変動リスクの配分設計。変動賃料は閾値超過分の97.5%、運営委託はベース売上2〜4%+GOP8〜12%程度が目安。
- — 成立ラインはADR×稼働率。1室年間GOP100万円ならGOP率45%換算で6,088円。ADR8,000円で稼働76.1%、16,000円で38.1%が要る。
売上は3つの数字の掛け算にすぎない
ホテルという事業の売上構造は、他の不動産賃貸業と比べても異例なほど単純である。持っている客室の数は動かせない。動かせるのは「そのうち何室が売れたか(稼働率)」と「1室いくらで売れたか(ADR)」の2つだけだ。この2つを掛けた値がRevPARであり、RevPARに客室数と365日を掛ければ年間の客室売上になる。
だからこそ、経営の議論はほぼ必ずこの2軸に還元される。稼働は高いが単価が低い宿と、単価は高いが稼働が半分に満たない宿では、同じ客室数でも年間売上が倍近く変わる。そして重要なのは、この2軸のどちらを主戦場にするかが「業態」の実体だという点である。ビジネスホテルは稼働を、旅館やリゾートは単価と滞在価値を取りに行く設計になっている。
費用側の主役は3つに絞られる。第一に人件費。2026年度の地域別最低賃金の目安は全国加重平均1,176円と答申され、前年から55円(+4.9%)の引き上げとなった。フロント・清掃・料飲と労働集約的な工程が多い宿泊業では、この上昇はそのまま損益に効く。第二に水光熱費。客室単位で毎日発生する変動費であり、電力単価の変動に直接さらされる。第三に賃料または減価償却。これは後述する運営形態によって「誰の損益に立つか」が変わる、構造上もっとも大きな分岐点である。
業態別の実勢 — 1室あたり年間売上は186万〜351万円
それでは実際の数字を置いてみよう。メトロエンジンリサーチが全国47都道府県について集計した2026年7月の推定成約ADRを業態別に加重平均し、観光庁が公表した2025年の客室稼働率(確定値)を掛け合わせると、1室あたりの年間売上の目安が出る。
| 業態 | 推定成約ADR 2026年7月・全国加重平均 |
集計施設数 | 実績稼働率 観光庁2025年1月〜12月・確定値 |
1室あたり 年間売上目安 |
参考:当社推定OCC 2026年7月時点 |
|---|---|---|---|---|---|
| リゾートホテル | ¥16,900 | 1,613 | 56.9% | 約351万円 | 85.4% |
| シティホテル | ¥12,600 | 1,117 | 74.1% | 約340万円 | 88.9% |
| ビジネスホテル | ¥8,400 | 7,398 | 75.3% | 約231万円 | 88.5% |
| 旅館 | ¥13,300 | 6,814 | 38.2% | 約186万円 | 81.9% |
| 簡易宿所系 (カプセルホテル等) | ¥4,700 | 119 | 29.6% | 約50万円 | 96.3% |
ADR・当社推定OCC出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成/実績稼働率出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値(確定値)
2つの稼働率を混ぜていない理由。「実績稼働率」は観光庁の全数ベースの公表値で、営業していない日も分母の暦日に含まれる。「当社推定OCC」はOTA上に出された販売在庫がどれだけ消化されたかの推定値で、そもそも在庫を出していない日や、OTAに出さずに直販・団体で売っている客室は分母に入らない。両者は母集団も算出方法も異なるため、1室あたり年間売上の試算には公表値のみを用い、当社推定値は需給の逼迫度を見るための参考列として分けている。なお簡易宿所系の集計施設数は119施設と限られるため、この行は目安として扱われたい。
まず目を引くのは、ADRの序列と年間売上の序列が一致しないことである。旅館の推定成約ADRは約13,300円で、ビジネスホテルの約8,400円より6割近く高い。ところが1室あたり年間売上では旅館186万円に対しビジネスホテル231万円と、逆転する。理由は稼働率で、旅館の38.2%に対しビジネスホテルは75.3%(いずれも観光庁2025年1月〜12月・確定値)と、ほぼ2倍の日数を売っているためだ。単価の差より稼働の差のほうが、年間売上に効いている。
ただしこの稼働率の差は、そのまま経営の巧拙を意味しない。観光庁の客室稼働率は「利用客室数 ÷(客室数 × 暦日数)」で算出されるため、週末やハイシーズン中心に営業する宿、休館日を設ける宿は構造的に低く出る。旅館の稼働率が低めに見えるのは、年中無休・毎日満室を前提としない営業設計を選んでいる施設が母集団に多く含まれることの反映でもある。
もう一点、旅館のADRを読むうえで欠かせない前提がある。旅館の掲載プランは1泊2食付きが標準であり、そのADRには夕食・朝食の対価が含まれている。つまり同じ13,300円でも、素泊まり中心のビジネスホテルの単価とは中身が違う。この差は次章の費用構造で決定的に効いてくる。
出典:メトロエンジンリサーチ(ADR)/観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値・確定値(客室稼働率)、ホテルバンク編集部より作成
もうひとつ、業態の性格を端的に示すデータがある。観光庁の統計では、2025年12月時点の宿泊施設数は全国74,125施設、2025年の延べ宿泊者数は6億6,110万人泊(うち外国人1億7,992万人泊、27.2%)だった。この2つを業態別のシェアで並べると、施設数の分布と宿泊者数の分布がまったく重ならない。
出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値(確定値)、施設数は2025年12月時点、ホテルバンク編集部より作成
ビジネスホテルは施設数では全体の11.3%(8,410施設)にすぎないが、延べ宿泊者数では46.3%を占める。1施設あたりの客室数が大きく、かつ年間を通じて高い稼働で回すモデルだからだ。対照的に、旅館は施設数の25.2%(18,700施設)を占めながら宿泊者数シェアは12.0%、簡易宿所は施設数28.4%(21,080施設)に対して宿泊者数シェアは4.9%である。施設の「数」で見た日本の宿泊産業は小規模施設が圧倒的多数だが、「泊数」で見ると大規模なビジネスホテルが半分近くを運んでいる。この非対称性が、これから述べる収益構造の違いの背景にある。
費用構造とGOP — 売上の何割が手元に残るか
売上が立っても、そこから人件費・水光熱費・食材費・OTA手数料・清掃委託費などを差し引かなければ経営の実態はわからない。この「運営に直接かかる費用を引いた後の利益」がGOP(営業粗利益)であり、ホテル投資の世界ではもっとも参照される指標である。GOPの定義・算定範囲・RevPARとの関係についてはGOPとは何か — 定義・マージン水準・RevPARとの接続で詳述しているので、本稿では業態別の目安レンジのみを扱う。
GOP率の実勢を知るうえで、もっとも信頼できる公開情報は上場ホテルREITの開示である。インヴィンシブル投資法人は、同REITが保有しMHMが運営する91物件のGOP率を2024年12月期に38.9%(前年同期比+1.6pt)、2025年6月期には36.0%(同+1.1pt)と開示している。これはフルサービスと宿泊特化型が混在するポートフォリオの実績値であり、業態を絞ればレンジはさらに広がる。
| 業態 | 1室あたり年間売上 | GOP率の目安レンジ | 1室あたり年間GOP | 構造の特徴 |
|---|---|---|---|---|
| ビジネスホテル | 約231万円 | 40〜60% | 92〜139万円 | 客室売上が中心。料飲部門が小さく、1室あたりの人手も少ない |
| リゾートホテル | 約351万円 | 20〜40% | 70〜140万円 | 単価が高い一方、施設規模と季節変動に応じた人員配置が要る |
| シティホテル | 約340万円 | 10〜30% | 34〜102万円 | 料飲・宴会を併せ持つ分だけ売上規模は大きく、費用の内訳も厚い |
| 旅館 | 約186万円 | 5〜15% | 9〜28万円 | 2食付きが標準で、売上に食材原価と調理・接客の人手が組み込まれる |
GOP率レンジ出典:株式会社リロホテルソリューションズ公表資料/1室あたり年間売上はメトロエンジンリサーチのADRと観光庁の客室稼働率から算出、ホテルバンク編集部より作成
出典:メトロエンジンリサーチ/観光庁「宿泊旅行統計調査」/リロホテルソリューションズ公表のGOP率目安、ホテルバンク編集部より作成
この表が示しているのは、売上の大きさと1室あたりの利益の厚みが必ずしも連動しないという事実である。リゾートホテルとシティホテルは1室あたり年間売上で340万〜351万円と最上位に並ぶが、GOP率の目安を当てると1室あたりGOPはビジネスホテルと同程度か、レンジの下限では下回る。逆にビジネスホテルは売上こそ231万円と3番手だが、料飲部門を持たず1室あたりの人手を抑えられる分、レンジ中央値では最も厚い利益を残しやすい。ビジネスホテルが施設数11.3%で泊数46.3%を占めるまで拡大してきた理由が、ここに集約されている。
旅館については、数字の読み方に注意が要る。旅館の売上には夕食・朝食の対価が含まれるため、GOP率の分母が食事売上まで含んだ大きさになる。同時に、その食事を成立させるための食材原価と調理・配膳の人件費が費用側に立つ。つまり旅館のGOP率が薄く見えるのは、客室を売る事業に食事を提供する事業が重なった複合構造を、ひとつの率で表現しているからである。旅館の強みは1室あたりGOPの厚みではなく、少ない客室数で高い単価と滞在価値を成立させる設計にある。実際、後述するように旅館は平均22.5室という小規模構成であり、大規模施設を建てずに事業を始められる点は他業態にない参入のしやすさだ。
運営形態4類型 — 誰がどのリスクを負うか
ここまでは「ホテルという箱がいくら稼ぐか」の話だった。次は、その稼ぎが誰の損益計算書に立つのかという話になる。日本のホテルの収益の受け取り方は、大きく4類型に整理できる。
| 類型 | 収益の受け取り方 | オーナー(所有者)が負うリスク | 運営者が負うリスク | 水準の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 所有直営 | 売上もGOPもそのまま自社の損益になる | 稼働・単価・人件費・水光熱・修繕まで全て | 同一主体のため区別なし | 上振れも下振れも最大 |
| 賃貸借 (固定賃料) |
オーナーは定額の賃料収入。運営成果は運営者に帰属 | テナントの信用リスクと契約更改時の賃料改定 | 稼働・単価の変動を全て吸収する | 収入は安定するが上振れは取れない |
| 賃貸借 (変動賃料) |
賃料=固定部分+GOPや売上に連動する変動部分 | 需要変動を賃料経由で一部負担する | 固定費の下振れ。閾値を割ると変動部分はゼロ | 下記のREIT開示例を参照 |
| 運営委託 (MC) |
売上・GOPはオーナー帰属。運営者は報酬を受け取る | 需要変動を全て負う。運営実務は委ねられる | 報酬の減少(売上・GOP連動のため) | ベース報酬は売上の2〜4%程度、インセンティブはGOPの8〜12%程度が広く言及される水準 |
| フランチャイズ (FC) |
売上・GOPは加盟店に帰属。本部にロイヤルティを支払う | 需要変動と運営実務の両方を負う | 本部側はブランド価値の維持 | 料率・分担金は本部ごとに異なるため、情報開示書面での確認が前提 |
運営委託の報酬水準:ホテル運営受託事業者・専門コンサルティング各社の公表資料より整理。ホテルバンク編集部より作成
この4類型は「どれが優れているか」の問題ではなく、需要変動のリスクを誰が抱えるかの配分設計である。所有直営は上振れをすべて取れる代わりに、下振れもすべて受ける。固定賃料はその真逆で、オーナー側の収入が読める代わりに好況期のアップサイドは運営者に流れる。この中間を埋めるために設計されたのが変動賃料であり、上場ホテルREITの開示を見ると具体的な設計思想が読み取れる。
上場ホテルREITが開示する変動賃料の設計例
ジャパン・ホテル・リート投資法人は、賃料を固定賃料と変動賃料で構成し、変動賃料の算出方法を「変動賃料=[ホテルAGOP(調整後GOP)-2,980百万円]× 97.5%」と開示している。算出額が0円を下回る場合、変動賃料は0円となる。つまり調整後GOPが一定の閾値を超えた部分だけがオーナー側に流れる設計であり、閾値までのGOPは運営者が固定費を賄う原資として残る。同REITは第27期(2026年12月期)について、変動賃料が導入された29物件のRevPER(客室1室あたり売上)を18,270円と想定している。
いちごホテルリート投資法人は、賃料収入の約48%が変動賃料で構成されると開示している。第21期(2026年1月期)は変動賃料21物件のRevPERが10,121円(前年同期比+2.9%)、第22期(2026年7月期)は同21物件で8,865円(同−9.5%)を想定としている。2025年の新規取得物件では最低保証賃料と変動賃料を組み合わせた賃料体系が採用されており、パス・スルー型のマスターリース構造が用いられている。
変動賃料の水準感を理解するうえで重要なのは、閾値の存在である。ジャパン・ホテル・リートの式では調整後GOPが29億8,000万円を超えるまで変動賃料は発生しない。オーナーが取れるのは、その線を越えた先の97.5%だ。裏を返せば、運営者はその閾値までのGOPを自らの取り分として確保している。運営委託(MC)で報酬がベース2〜4%+インセンティブGOP8〜12%程度に設計されるのも同じ発想で、「固定的に受け取る部分」と「成果に連動する部分」を分けて、双方の意欲とリスク耐性を両立させている。フィー控除後のNOIで運営委託提案を比較する実務については、運営委託3提案の採点フレーム — フィー控除後NOIで見る損益分岐GOPで詳しく扱っている。
開業の入口 — 旅館業法の営業種別をどう選ぶか
宿泊料を受けて人を宿泊させる営業を行うには、旅館業法に基づく許可が必要になる。2018年6月15日施行の改正で、従来4区分だった営業種別は3区分に整理された。許可権者は施設所在地の都道府県知事(保健所を設置する市・特別区の場合は市長・区長)である。
| 営業種別 | 旅館業法上の定義 | 主に該当する施設像 |
|---|---|---|
| 旅館・ホテル営業 | 施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のもの | ビジネスホテル、シティホテル、リゾートホテル、旅館。2018年改正でホテル営業と旅館営業が一本化された |
| 簡易宿所営業 | 宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業 | カプセルホテル、ホステル、ゲストハウス、ペンション、山小屋など。2016年4月に最低床面積の基準が緩和された |
| 下宿営業 | 施設を設け、1月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業 | 月単位で提供する長期滞在型の宿泊施設 |
出典:観光庁 民泊制度ポータルサイト「旅館業法について」、ホテルバンク編集部より作成
構造設備基準(客室の最低床面積、換気・採光、入浴設備、玄関帳場の要否など)は営業種別ごとに定められており、さらに地域によっては条例で上乗せ基準が設けられている。同じ建物・同じ客室構成でも、営業種別と自治体によって満たすべき要件が変わるため、物件を決める前の段階で所管保健所への事前相談を行うのが実務上の定石である。用途地域による立地制限、建築基準法上の用途変更、消防法令適合通知書の取得も並行して確認が必要になる。
開業判断のもうひとつの軸が建設費である。国土交通省「建築着工統計」に基づく2025年のホテル建築費は全構造平均195.2万円/坪、S造240.5万円/坪、RC造202.6万円/坪と、2022年の138万円/坪から大幅に上昇している。1室あたりに換算した建設費の実勢と、REITの取得価格から逆算した1室単価との比較についてはホテルの1室あたり床面積と建設単価 — REIT取得価格との比較で扱っているので、投資判断の際はそちらを参照されたい。
早見表 — 運営形態別に「1室あたり年間でいくら残るか」
ここまでの表1(1室あたり年間売上)・表2(GOP率の目安レンジ)・表3(運営形態4類型)を、開業検討の視点でひとつに束ねたのが次の早見表である。主要4業態の1室あたり年間売上は約186万〜351万円、そこからGOP率の目安5〜60%を当てた1室あたり年間GOPは約9万〜140万円(ADRは2026年7月・全国、集計施設数はリゾートホテル1,613・シティホテル1,117・ビジネスホテル7,398・旅館6,814。稼働率は観光庁2025年1月〜12月・確定値)。運営形態の違いは、この売上とGOPが「誰の損益に立ち、どこで何が差し引かれるか」の違いとして整理できる。
| 類型 | 1室あたり年間売上の帰属 | 差し引かれる主要コスト | 手残り(1室あたり年間)の目安 |
|---|---|---|---|
| 所有直営 | 約186万〜351万円(業態による・表1)がそのまま自社に帰属 | 人件費・水光熱費・食材費・OTA手数料・清掃委託費など運営費の全額。修繕・保険等はさらに別途 | GOPベースで約9万〜140万円(GOP率5〜60%・表2)。ビジネスホテル92〜139万円、リゾート70〜140万円、シティ34〜102万円、旅館9〜28万円 |
| 賃貸借 (リース) |
売上は運営者(テナント)に帰属。オーナーは賃料収入のみ(固定、または固定+変動) | 運営者側:運営費に加えて賃料。変動賃料の開示例は「調整後GOPの閾値超過分×97.5%」、賃料収入の約48%が変動賃料という構成例もある | オーナー側は賃料相当で安定するが上振れは取れない。運営者側はGOPから賃料を差し引いた残り(閾値までのGOPが固定費原資) |
| 運営委託 (MC) |
売上・GOPともオーナーに帰属。運営者は報酬を受け取る | 運営費に加えて委託報酬:ベース報酬は売上の2〜4%程度+インセンティブはGOPの8〜12%程度が広く言及される水準 | 1室あたり年間GOP約9万〜140万円から委託報酬を控除した額。需要変動の下振れはオーナーが全て負う |
| フランチャイズ (FC) |
売上・GOPとも加盟店に帰属。本部にロイヤルティを支払う | 運営費に加えて本部ロイヤルティ。料率・分担金は本部ごとに異なり、情報開示書面での確認が前提 | 1室あたり年間GOP約9万〜140万円からロイヤルティ等を控除した額。運営実務と需要変動の両方を自ら負う |
本表は表1(推定成約ADR 2026年7月・全国×観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値・確定値の客室稼働率)、表2(GOP率目安レンジ:リロホテルソリューションズ公表資料)、表3(運営形態4類型)の再構成であり、新規の推計値は含まない。出典:メトロエンジンリサーチ/観光庁/各社公表資料、ホテルバンク編集部より作成
向く人・向かない人 — 形態別の適性
同じ数字でも、どの形態が「向く」かは資金・ノウハウ・リスク許容度で変わる。開業検討の入口として短く整理する。
- 所有直営:向くのは、下振れを吸収できる資金体力と運営体制(採用・現場マネジメント)を自前で持てる事業者。約9万〜140万円という1室あたり年間GOPの上限側を丸ごと取りにいける唯一の形態である。逆に、需要変動の下振れを受け止める余力がない段階では選びにくい。
- 賃貸借(リース):オーナーとしては、収入の安定を最優先する場合に向く。固定賃料なら収入は読めるが、好況期の上振れは運営者に流れるため、アップサイドを取りたい場合は変動賃料の設計(閾値と連動率)を確認したい。運営者(テナント)としては、賃料という固定費を抱えても稼働と単価で上回れる立地・商品に自信がある場合に向く。
- 運営委託(MC):資本はあるが運営ノウハウを持たないオーナーに向く。売上・GOPが自らに帰属したまま実務を委ねられる。一方で需要変動は全てオーナー側に残るため、収入のブレを避けたい場合には向かない。委託報酬(ベース売上2〜4%程度+GOP連動8〜12%程度)を控除した後のNOIで複数提案を比較するのが実務の要点である。
- フランチャイズ(FC):自ら運営しながらブランドと送客の仕組みを活用したい事業者に向く。売上・GOPは加盟店に帰属する。ロイヤルティ等の負担を事業計画に織り込むこと、本部の運営基準に沿うことが前提になるため、独自の商品設計を貫きたい場合は情報開示書面の確認を経て慎重に判断したい。
いずれの形態でも、手残りの土台になるのは業態別の売上(約186万〜351万円)とGOP率(5〜60%)である。次章では、その前提となる「規模」を確認する。
規模感 — 小規模でも成立する業態はどれか
「何室から始められるか」は、開業を検討する事業者がもっとも早い段階で直面する問いである。メトロエンジンリサーチが把握する範囲で、2026年時点でOTA上の稼働が確認できるのは全国27,162施設・1,267,377室。これを業態別に集計すると、業態ごとの標準的な規模感がはっきり分かれる。
| 業態 | 施設数 | 客室数 | 1施設あたり平均客室数 |
|---|---|---|---|
| シティホテル | 615 | 118,335 | 192.4室 |
| ビジネスホテル | 5,847 | 592,694 | 101.4室 |
| リゾートホテル | 968 | 78,847 | 81.5室 |
| 旅館 | 5,150 | 115,993 | 22.5室 |
| ホステル | 914 | 16,240 | 17.8室 |
| ゲストハウス | 1,142 | 8,816 | 7.7室 |
| ペンション | 1,074 | 8,841 | 8.2室 |
| 民宿 | 901 | 7,278 | 8.1室 |
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(OTA掲載確認ベース、2026年時点・全国27,162施設/1,267,377室のうち主要業態を抜粋)、ホテルバンク編集部より作成
メトロエンジンリサーチが追跡する施設マスターで客室数の登録がある施設を規模帯別に見ると、傾向はさらに明確になる。旅館14,906施設のうち19室以下が10,980施設、実に73.7%を占める。一方でビジネスホテル12,475施設では19室以下は1,790施設(14.3%)にとどまり、100室以上が4,228施設(33.9%)を占める。小規模で成立させることを前提に設計されてきた業態は旅館・ゲストハウス・ペンション系であり、ビジネスホテルとシティホテルは規模の経済を前提とした業態であると読める。
ただし、小規模には固有の前提がある。観光庁の2025年1月〜12月(通年・確定値)で従業者規模別の客室稼働率を見ると、その差は無視できない大きさになる。
出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値(確定値)、ホテルバンク編集部より作成
従業者数0〜9人の施設は全国60,128施設と総数74,125施設の81.1%を占めるが、その客室稼働率は35.6%(2025年1月〜12月・通年)である。これに対し10〜29人は70.4%、30〜99人は71.5%、100人以上は70.8%と、10人を境に水準が一段変わる。全体平均は61.6%だ。
この差は、小規模施設の運営が非効率だという意味ではない。少人数体制の施設には、通年フル稼働を目指さず繁忙期に集中して営業する、季節や曜日を絞って質を保つ、といった営業設計を選んでいる施設が多く含まれる。むしろ読み取るべきは「小規模で始めるなら、年間稼働率が35〜40%前後でも成立する単価設計と費用設計が要る」という前提条件のほうである。年間300日を売る前提の損益計算を、年間140日しか売らない施設に当てはめると計画は成り立たない。次章の感度表は、まさにこの点を数字で確かめるためのものだ。
ADRは季節で動く — 年間平均だけで計画を組まない
感度表に進む前に、ひとつ確認しておくべき事実がある。ADRは年間を通じて一定ではない。全国47都道府県の推定成約ADRを対象施設数で加重平均した月次推移を、年ごとに重ねて描くと、季節の波形がはっきり見える。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(全国47都道府県・全業態、対象施設数で加重平均。集計施設数は各月およそ15,800〜17,200施設)
2025年は8月に12,026円、11月に12,012円と年内の高い水準をつけ、6月には9,803円まで下がった。同じ全国平均でも月次で2割強の振れ幅がある。2026年に入ってからは1月11,219円、5月11,129円と推移し、6月は9,354円(前年同月比−4.6%)、7月は10,125円(同−4.4%)となっている。年間平均のADRだけで事業計画を組むと、閑散月のキャッシュフローを取り違える。特に借入返済のスケジュールを組む際は、月次の谷を前提にした資金繰りが要る。
成立ライン — ADR×稼働の感度表
■ 試算前提
- 1室あたり年間売上 = 推定成約ADR × 稼働率 × 365日。客室売上のみを対象とし、料飲・宴会・その他部門の売上は含まない。
- ADRは推定成約ADR(税抜相当)を用いる。掲載価格(全プラン平均・税込)ではない。
- 稼働率は暦日ベース(休館日も分母に含む)。観光庁「宿泊旅行統計調査」の客室稼働率と同じ定義。
- GOP率は宿泊特化型の保守的な水準として45%を用いる。業態・立地・運営形態により実勢は異なる(本稿の業態別レンジ表を参照)。
- 「成立ライン」は1室あたり年間GOP100万円を暫定目標とし、そこから逆算した必要売上222万円/室・年を基準とする。この100万円という水準は、1室あたりの建設費・土地取得費・借入返済・修繕積立の負担を賄う出発点として置いた仮の目標値であり、実際の必要水準は取得価格と資本構成によって変わる。
- 本試算は簡易試算であり、実際の投資判断には詳細なフィージビリティ・スタディが必要です。
この前提で、推定成約ADRと稼働率の組み合わせごとに1室あたり年間売上を計算したのが次の表である。
| 推定成約ADR \ 稼働率 通年ベース(年間365日換算) |
40% | 55% | 65% | 75% | 85% |
|---|---|---|---|---|---|
| ¥6,000 | 88万円 | 120万円 | 142万円 | 164万円 | 186万円 |
| ¥8,000 | 117万円 | 161万円 | 190万円 | 219万円 | 248万円 |
| ¥10,000 | 146万円 | 201万円 | 237万円 | 274万円 | 310万円 |
| ¥13,000 | 190万円 | 261万円 | 308万円 | 356万円 | 403万円 |
| ¥16,000 | 234万円 | 321万円 | 380万円 | 438万円 | 496万円 |
青地は1室あたり年間売上222万円(GOP率45%換算で1室あたり年間GOP100万円)に到達するセル。出典:ホテルバンク編集部による試算
ただし、この成立ラインはGOP率を45%と置いた場合の一本の線にすぎない。GOP率は業態・立地・運営形態によって振れるため、前提を上下に動かした3ケースを併記しておく。中位は本稿の試算前提である45%、悲観・楽観はその上下10ポイントに置いた感応ケースである。
| 前提ケース | GOP率 | 必要な1室 年間売上 |
必要な ADR×稼働率 |
ADR ¥8,000 |
ADR ¥10,000 |
ADR ¥13,000 |
ADR ¥16,000 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 悲観 | 35% | 286万円 | 7,828円 | 97.8% | 78.3% | 60.2% | 48.9% |
| 中位(本稿の前提) | 45% | 222万円 | 6,088円 | 76.1% | 60.9% | 46.8% | 38.1% |
| 楽観 | 55% | 182万円 | 4,982円 | 62.3% | 49.8% | 38.3% | 31.1% |
各セルは1室あたり年間GOP100万円に到達するために必要な稼働率。出典:ホテルバンク編集部による試算
読み取れるのは、GOP率の10ポイントの差が必要稼働率に20ポイント前後の差として跳ね返るという点である。ADR 10,000円の施設であれば、GOP率35%では稼働78.3%が要るのに対し、55%なら49.8%で足りる。単価と稼働の設計と同じ重みで、費用構造をどこまで絞れるかが成立条件を決めている。運営形態の選択が損益に効いてくるのも、この費用側の振れ幅を誰がどこまで管理できるかという問題だからである。
この表を稼働率の側から読み直すと、業態選択の意味がより鮮明になる。目標を1室あたり年間GOP100万円に置いた場合、必要な売上は222万円/室・年、すなわちADR×稼働率=6,088円という一本の線になる。
出典:ホテルバンク編集部による試算。業態別の実績点は観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値(確定値)の客室稼働率とメトロエンジンリサーチの推定成約ADR(2026年7月・全国加重平均)による
必要稼働率は、ADR 7,000円なら87.0%、8,000円なら76.1%、10,000円なら60.9%、12,000円なら50.7%、14,000円なら43.5%、16,000円なら38.1%となる。ここに業態別の実勢を重ねると、以下のことが読める。
| 業態 | 実勢ADR | 目標到達に必要な稼働率 | 実績稼働率(2025年1月〜12月・確定) | 読み方 |
|---|---|---|---|---|
| ビジネスホテル | ¥8,400 | 72.5% | 75.3% | 実績が必要水準を上回る。高稼働の維持が成立の前提条件 |
| シティホテル | ¥12,600 | 48.3% | 74.1% | 客室売上には余裕。ただしGOP率は料飲・宴会部門の設計に左右される |
| リゾートホテル | ¥16,900 | 36.0% | 56.9% | 単価が高い分、必要稼働のハードルが低い。季節変動への耐性がある |
| 旅館 | ¥13,300 | 45.8% | 38.2% | 客室売上のみで測る前提のため、食事・体験の付加価値と客室単価の設計が鍵になる |
必要稼働率は通年ベース(年間365日換算)。GOP率45%・1室あたり年間GOP100万円を前提とした試算値。実績稼働率は観光庁2025年1月〜12月・確定値。出典:メトロエンジンリサーチ/観光庁「宿泊旅行統計調査」、ホテルバンク編集部より作成
ここで注意したいのは、この必要稼働率が「客室売上のみ・GOP率45%」という宿泊特化型の前提で計算されている点である。旅館やリゾートホテルは食事・体験・物販といった客室外の売上を持ち、それが収益の重要な一部を構成する。したがって旅館の実績稼働率38.2%(観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年1月〜12月・確定値)が必要水準45.8%を下回っているという結果は、旅館業態の成立性を否定するものではなく、「客室単価だけで組み立てる損益計算は旅館には合わない」ことを示している。旅館の事業計画は、客室売上に加えて1泊あたりの食事・付帯売上を明示的に積み上げる形で組む必要がある。
逆にビジネスホテルは、必要稼働率72.5%(通年ベース・GOP率45%・1室あたり年間GOP100万円を前提とした試算値)に対し実績75.3%(2025年1月〜12月・確定値)と、余裕幅が2.8ポイントしかない。ビジネスホテルは高稼働を維持できることそのものが成立条件であり、稼働が数ポイント落ちれば利益はすぐに薄くなる。だからこそ、この業態では立地選定と、稼働を落とさずに単価を上げるレベニューマネジメントの精度が決定的に効いてくる。人件費上昇局面での省人化投資が採算に乗りやすいのも、1室あたりGOPの厚みがそもそも他業態より大きいためである。
まとめ — 業態と運営形態は「取りに行く数字」の選択である
本稿で確認したことを整理する。
第一に、ホテル経営の売上は客室数 × 稼働率 × ADR × 365日という掛け算に還元される。2026年7月時点の推定成約ADRと観光庁の2025年確定稼働率を掛け合わせると、1室あたり年間売上はリゾートホテル約351万円、シティホテル約340万円、ビジネスホテル約231万円、旅館約186万円となる。ADRの序列と年間売上の序列は一致せず、旅館はビジネスホテルより6割高い単価でありながら、稼働日数の差で年間売上は下回る。
第二に、売上の大きさと1室あたりの利益の厚みは連動しない。GOP率の目安レンジを当てると、1室あたり年間GOPはビジネスホテル92〜139万円、リゾートホテル70〜140万円、シティホテル34〜102万円、旅館9〜28万円となる。旅館の数値が薄く見えるのは、客室を売る事業と食事を提供する事業がひとつの率に重なっているためであり、旅館の事業計画は客室外の売上を明示的に積み上げて組む必要がある。
第三に、運営形態は需要変動リスクの配分設計である。所有直営はアップサイドもダウンサイドも自ら負い、固定賃料はその逆。変動賃料と運営委託はその中間を設計するための仕組みで、上場ホテルREITの開示では「調整後GOPが閾値を超えた部分の97.5%」「賃料収入の約48%が変動賃料」といった具体的な設計が読み取れる。運営委託の報酬はベース売上2〜4%程度+インセンティブGOP8〜12%程度が広く言及される水準である。
第四に、規模の前提は業態ごとに大きく異なる。旅館は平均22.5室、客室数登録のある14,906施設のうち73.7%が19室以下。対してビジネスホテルは平均101.4室で、100室以上が33.9%を占める。小規模で始めるなら、従業者数0〜9人の施設の実績稼働率が全国35.6%(2025年1月〜12月・通年)であるという前提を織り込んだ単価設計・費用設計が要る。
第五に、成立ラインはADR×稼働率という一本の積で決まる。1室あたり年間GOP100万円を目標に置けば、GOP率45%の前提でADR×稼働率=6,088円が必要になる。ADR 8,000円なら稼働76.1%、10,000円なら60.9%、16,000円なら38.1%。この積をどちらの因数で取りに行くかが、そのまま業態の選択になる。
ホテル経営が「儲かるか」という問いに一般解はない。ただし、どの業態でどの運営形態を選ぶかは、稼働を取りに行くのか単価を取りに行くのか、そしてリスクを自ら抱えるのか誰かと分けるのかという、2つの選択の組み合わせに整理できる。開業前に決めるべきはその2つであり、その先の数字は本稿の感度表に自社の前提を入れ替えれば描ける。
よくある質問(FAQ)
Q. ホテル経営は儲かるのか?
A. 一般解はないが、レンジで直答すると主要4業態の1室あたり年間売上は約186万〜351万円、GOP率の目安5〜60%を当てた1室あたり年間GOPは約9万〜140万円である(売上は推定成約ADR2026年7月・全国×観光庁2025年1月〜12月・確定値の稼働率。集計施設数はリゾート1,613・シティ1,117・ビジネス7,398・旅館6,814)。内訳はビジネスホテル92〜139万円、リゾートホテル70〜140万円、シティホテル34〜102万円、旅館9〜28万円。旅館の数値が薄く見えるのは食事提供事業を含んだ率だからであり、儲かるかどうかは「単価と稼働のどちらを取りに行くか」「リスクを自ら抱えるか誰かと分けるか」という2つの選択で決まる。目安として、1室あたり年間GOP100万円をGOP率45%の前提で狙うなら、ADR×稼働率=6,088円(ADR8,000円なら稼働76.1%、10,000円なら60.9%、16,000円なら38.1%)が成立ラインになる。
Q. 小規模で始めるなら何室からか?
A. 小規模で成立することを前提に設計されてきた業態を選ぶなら、数室〜19室でも事業として成立してきた実績がある。全国データ(2026年時点・OTA掲載確認ベース)では旅館の平均は22.5室で、客室数登録のある14,906施設のうち73.7%(10,980施設)が19室以下。ゲストハウスは平均7.7室、ペンション8.2室、民宿8.1室、ホステル17.8室である。ただし従業者数0〜9人の施設の実績稼働率は全国35.6%(観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年1月〜12月・確定値、全体平均は61.6%)にとどまるため、年間300日を売る前提ではなく、稼働35〜40%でも成立する単価設計・費用設計を最初から織り込むことが小規模開業の前提条件になる。
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参考資料・出典一覧
■ データソース
メトロエンジンリサーチの推定成約ADR(全国47都道府県・業態別、2026年7月、集計施設数は業態別に119〜7,398施設)、当社推定OCC(OTA掲載在庫ベース、2026年7月時点、全国21,156施設・1,324,155室)、施設数・客室数(OTA掲載確認ベース、2026年時点・全国27,162施設/1,267,377室)、観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値(確定値)、上場ホテルREITおよび業界各社の公表資料。当社集計値は2026年8月30日時点で再取得した値を用いている。
■ 試算前提
1室あたり年間売上 = 推定成約ADR × 客室稼働率 × 365日。客室売上のみを対象とし、料飲・宴会・その他部門の売上は含まない。ADRは推定成約ADR(税抜相当)、稼働率は観光庁の客室稼働率(暦日ベース・休館日も分母に含む)を用いた。GOP率は宿泊特化型の保守的な水準として45%を中位に置き、感応ケースとして35%・55%を併記している。成立ラインは1室あたり年間GOP100万円を暫定目標とし、そこから必要売上を逆算した。
■ 限界・留意点
推定成約ADRは各施設の公開最安プランに業態別の補正係数を適用した推定値であり、上場ホテルREITの物件別開示との照合(91施設・直近3ヶ月間)における誤差中央値は約7%。実際の成約価格・会計数値とは異なる。当社推定OCCと観光庁の実績稼働率は母集団・算出方法が異なるため、本稿では混用していない。簡易宿所系は集計施設数が119施設と限られるため目安として扱われたい。GOP率は業態別の公表目安レンジであり、個別施設の実績ではない。本稿は簡易試算であり、実際の投資判断には詳細なフィージビリティ・スタディが必要である。
■ 市場データ
- メトロエンジンリサーチ — 推定成約ADR(全国47都道府県・業態別、2026年7月、集計施設数は業態別に119〜7,398施設)、当社推定OCC(OTA掲載在庫ベース、2026年7月時点、全国21,156施設・1,324,155室)、施設数・客室数(OTA掲載確認ベース、2026年時点・全国27,162施設/1,267,377室)
■ 政府統計・公的データ
- 観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年(令和7年)1月〜12月 年間値(確定値) — 第1表(施設数)、第4表(延べ宿泊者数)、第8表(客室稼働率)
- 観光庁 民泊制度ポータルサイト「旅館業法について」 — 営業種別の定義・許可権者
- 国土交通省「建築着工統計調査」 — ホテル建築費の構造別坪単価
- 厚生労働省 中央最低賃金審議会 2026年度地域別最低賃金額改定の目安(全国加重平均1,176円、前年比+55円)
■ REIT・業界資料
- ジャパン・ホテル・リート投資法人 IR情報 — 変動賃料の算定式、第26期・第27期のRevPER想定
- いちごホテルリート投資法人 — 賃料構成に占める変動賃料比率、第21期・第22期のRevPER
- インヴィンシブル投資法人 決算説明資料 — 運営受託91物件のGOP率(2024年12月期38.9%、2025年6月期36.0%)
- 株式会社リロホテルソリューションズ — 業態別GOP率の目安レンジ
- 運営委託(MC)契約の報酬体系解説 — ベースフィー・インセンティブフィーの水準
