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外湯温泉街の宿は何軒か — 城崎52・野沢55・渋30・鉄輪22軒、秋冬ADRは最大2.3倍差

投稿日 : 2026.09.01

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エリア・施設分析

外湯温泉街の宿は何軒か — 城崎52・野沢55・渋30・鉄輪22軒、秋冬ADRは最大2.3倍差

外湯(そとゆ)めぐりを核にした温泉街では、宿は「自前の大浴場で完結する箱」ではなく「街の湯に歩いて出ていく拠点」として設計される。この構造は客室ストックの形にも表れる。本稿では城崎・野沢・渋・鉄輪の4温泉街について、外湯群の重心から半径800mおよび1.5km圏内の宿泊施設数・総客室数・1施設あたり規模を集計し、あわせて2026年秋冬の単価階層を比較した。

本記事における指標の定義

  • ADR(平均客室単価):各施設がOTA等で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。温泉街単位のADRは対象施設の中央値(その街の標準的な施設の水準)。
  • 掲載価格:OTA等に掲載されている全プラン平均(素泊まり〜食事付きを含む)の1室あたり料金(2名1室利用時・税込)。上記のADRとは基準が異なるため、本文では明示的に「掲載価格」と表記した箇所のみを指します。
  • 稼働中施設:宿泊施設マスターに営業中として登録があり、かつ調査時点の前後(120日前〜240日後のチェックイン日)で販売価格の観測が1件以上ある施設。マスター上は営業中でも販売実績が確認できない施設は集計から除外しています。
  • 圏内:各温泉街の外湯群の重心(後述)からの直線距離。徒歩経路距離ではありません。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ
Key Takeaways
  • — 外湯群の重心から半径800m圏の稼働中の宿は、城崎52軒764室・野沢55軒656室・渋30軒350室・鉄輪22軒537室。軒数と客室数で順位が入れ替わる。
  • — 城崎・渋・野沢は800m圏に40室以上がゼロ、中央値10〜12室の小規模宿密集型。鉄輪だけが中央値15.5室・最大96室の大型混在型。
  • — 2026年10〜12月の推定成約ADR中央値は城崎¥30,200、鉄輪¥20,300、野沢¥14,200、渋¥13,200で、最上位と最下位に2.3倍の開き。
  • — 城崎と渋は供給構造がほぼ同型(旅館ほぼ全数・40室以上ゼロ)にもかかわらず単価は2.3倍差。規模の型は単価階層を規定しない。
  • — 野沢は800m圏の登録98軒のうち43軒(44%)で販売価格を観測できず、公開情報だけでは街の受け入れ能力を把握しきれない。

中心点をどう置いたか — 外湯の座標から重心を取る

温泉街の範囲は行政区画と一致しない。「別府市」で切れば鉄輪以外の7つの温泉郷が混ざり、「山ノ内町」で切れば渋・湯田中・安代が一緒になる。そこで本稿では、各街の外湯(共同浴場)そのものの座標を取得し、その重心を中心点として距離を測った。中心点が数百メートルずれると圏内施設数が丸ごと変わるため、座標は温泉組合・自治体の公式情報で外湯の数と名称を確認したうえで、機械可読な公開地理情報データベースから個別座標を取得し、両者を突き合わせている。

4温泉街の外湯数・座標取得状況と中心点(外湯群の重心)
温泉街 所在 外湯数 座標取得できた外湯 中心点(緯度, 経度)
城崎温泉兵庫県豊岡市城崎町湯島7湯7/735.62577, 134.80908
野沢温泉長野県下高井郡野沢温泉村13湯11/1336.92303, 138.44662
渋温泉長野県下高井郡山ノ内町平穏9湯9/936.73427, 138.43203
鉄輪温泉大分県別府市鉄輪約9湯2/約933.31638, 131.47807

外湯の名称・湯数は各温泉観光協会・自治体公式サイト、座標は公開地理情報データベース。表はホテルバンク編集部作成

城崎は鴻の湯・まんだら湯・御所の湯・一の湯・柳湯・地蔵湯・さとの湯の7湯(豊岡市観光公式サイト)で、東端のさとの湯から西端の鴻の湯まで直線約830m。大谿川に沿った一本の線状に並ぶ。野沢は13湯(野沢温泉観光協会)が村内に面的に散っており、渋は九湯めぐりの9湯(信州渋温泉公式)が石畳通り沿いの約370m四方に凝縮している。

鉄輪については、別府市が公表する共同温泉のうち機械可読な座標が確認できたのは市営の鉄輪むし湯と谷の湯の2施設にとどまった。すじ湯・渋の湯・熱の湯・上人湯などはいでゆ坂沿いのむし湯から概ね150m圏に集中しているため、本稿では市営施設である鉄輪むし湯の所在地を中心点として採用した。テーマの性質上、別府市全域ではなく鉄輪の外湯圏に限定している。

800m圏の宿は52軒・55軒・30軒・22軒 — 軒数と客室数は連動しない

中心点から半径800m圏で、直近に販売実績が確認できる稼働中の宿を数えると、城崎52軒・野沢55軒・渋30軒・鉄輪22軒だった。軒数だけを見れば野沢と城崎が拮抗し、鉄輪は城崎の半分以下である。ところが総客室数では順位が入れ替わる。城崎764室に対し、鉄輪は22軒で537室を抱え、55軒を数える野沢の656室に肉薄する。軒数と客室数が連動していないことが、この4街の供給構造の違いを最初に示すサインになる。

城崎温泉・800m圏
52軒 / 764室
中央値12室・40室以上ゼロ
野沢温泉・800m圏
55軒 / 656室
中央値10室・民宿24軒
渋温泉・800m圏
30軒 / 350室
中央値10.5室・旅館29軒
鉄輪温泉・800m圏
22軒 / 537室
中央値15.5室・40室以上4軒

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(800m圏・稼働中施設。城崎N=52、野沢N=55、渋N=30、鉄輪N=22)

半径を1.5kmまで広げると、城崎58軒1,065室、野沢60軒719室、渋46軒623室、鉄輪25軒560室になる。増分の中身が街ごとに異なる点が重要だ。城崎では800m圏の外側に大型施設(最大103室)が加わって客室数が301室増えるのに対し、野沢は5軒63室、鉄輪は3軒23室しか増えない。野沢と鉄輪は、外湯圏の外に出ても客室ストックがほとんど積み上がらない。逆に渋は16軒273室が加わり、これは隣接する湯田中・安代側の宿が距離圏に入ってくるためで、外湯圏としての渋を論じるなら800m圏で切るのが妥当と判断した。

800m圏/1.5km圏の施設数・総客室数と1施設あたり規模(稼働中施設)
温泉街 800m 軒数 800m 客室 1.5km 軒数 1.5km 客室 中央値
客室数
平均
客室数
最大
客室数
販売実績なしで
除外(800m)
城崎温泉52764581,06512.014.7378軒
野沢温泉556566071910.011.92943軒
渋温泉303504662310.511.7293軒
鉄輪温泉225372556015.524.4967軒

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(中央値・平均・最大は800m圏の稼働中施設ベース。城崎N=52、野沢N=55、渋N=30、鉄輪N=22)

右端の「販売実績なしで除外」の列は読み飛ばせない。野沢では800m圏のマスター登録98軒のうち43軒が、調査時点の前後でOTA等の販売価格を1件も観測できなかった。除外率44%は4街で突出している。これは閉業を意味するものではなく、直販・電話予約のみで運営している民宿や、スキーシーズンに限って稼働する宿が相当数含まれていると考えられる。野沢の実際の受け入れ能力は本稿の656室より大きい可能性が高い、という前提で以下を読んでいただきたい。城崎(除外8軒)・渋(3軒)・鉄輪(7軒)はこの偏りが小さい。

中央値10〜12室が3街、鉄輪だけ15.5室 — 小規模密集型と大型混在型

1施設あたりの規模を見ると、4街は明確に2つのパターンに割れる。城崎(中央値12.0室)・渋(10.5室)・野沢(10.0室)は、いずれも800m圏に40室以上の施設が1軒も存在しない。最大でも城崎37室、渋・野沢29室である。対して鉄輪は中央値15.5室・最大96室で、40室以上が4軒ある。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(800m圏・稼働中施設の客室規模帯別構成比。城崎N=52、野沢N=55、渋N=30、鉄輪N=22)

この差は総客室数の集中度に直結する。鉄輪では上位3軒だけで800m圏の総客室数の41.9%を占め、40室以上の4軒(大江戸温泉物語Premium ホテル風月96室、ホテル山水館74室、湯けむりの宿 はなみずき55室、おにやまホテル48室)で273室、すなわち537室の50.8%に達する。街の客室の半分を4軒が持っている計算だ。一方で城崎は上位3軒シェア13.9%、野沢は12.8%にとどまる。城崎は52軒で764室を分け合っており、最大の施設ですら街全体の5%に届かない。

800m圏の客室規模帯別構成と上位3軒の客室シェア(稼働中施設)
温泉街 15室以下 16〜39室 40室以上 上位3軒の
客室シェア
供給構造の型
城崎温泉35軒17軒0軒13.9%小規模宿密集型
野沢温泉45軒10軒0軒12.8%小規模宿密集型(最も分散)
渋温泉25軒5軒0軒21.1%小規模宿密集型(最も凝縮)
鉄輪温泉11軒7軒4軒41.9%大型施設混在型

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(800m圏・稼働中施設。城崎N=52、野沢N=55、渋N=30、鉄輪N=22)

業態構成もこの分類を裏づける。城崎は52軒中49軒、渋は30軒中29軒、鉄輪は22軒中20軒が旅館である。ところが野沢だけは民宿24軒・旅館23軒とほぼ二分され、さらにペンション3軒・ロッジ2軒・ホステル1軒・ゲストハウス1軒・農家民宿1軒が加わる。スキー場を抱える村として、山小屋・下宿型の宿泊形態が外湯圏にそのまま残っている構造だ。同じ「小規模宿密集型」でも、城崎・渋が旅館一色であるのに対し、野沢は業態が多層化している。この村に近年入ってきたブランド系の宿がどの規模で計画されているかは、白馬・野沢温泉スキーリゾート投資2026が客室数と運営会社まで整理している。

外湯1湯あたりの客室数 — 城崎109室、渋39室

外湯めぐりを核にした街では、宿の総客室数と外湯の数の比が、街の設計思想をよく表す。800m圏の総客室数を外湯数で割ると、城崎は7湯で764室を受け止めるため1湯あたり109室、鉄輪は約9湯で537室なので約60室、野沢は13湯で656室なので約50室、渋は9湯で350室なので約39室になる。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(800m圏総客室数÷外湯数。城崎N=52、野沢N=55、渋N=30、鉄輪N=22施設。外湯数は各温泉観光協会・自治体公式サイト)

城崎の109室は他の3街の2倍前後にあたる。7湯という湯の数に対して宿が最も多く積み上がっている街ということになる。城崎は外湯めぐりを街全体の商品にしてきた歴史があり、宿の内湯を控えめにして外湯へ客を送り出す設計が広く共有されてきた。1湯あたりの受け持ち客室数が大きいのは、その集約モデルが機能してきた結果とも読める。逆に渋の39室は、9湯が370m四方に凝縮しているうえに宿が30軒350室と小ぶりなため、湯に対する宿の密度が最も低い。宿泊客に外湯の鍵を渡す運用が成立しやすい規模感である。

ただしこの指標は供給側の比率であり、実際の混雑度を示すものではない。外湯の浴槽サイズ、日帰り客の受け入れ可否、宿泊客専用かどうかは街ごとに異なる。城崎は日帰り入浴パスポートを販売して外来客も受け入れる一方、渋の9湯のうち8湯は宿泊客専用(大湯のみ時間限定で外来可)という違いがあり、同じ比率でも意味は変わる。

地図で見る2つの型 — 線状に並ぶ城崎、坂に散る鉄輪

両極にある城崎と鉄輪を地図に落とすと、供給構造の違いがそのまま空間配置に表れる。円の大きさは客室数、青が宿、赤が外湯(共同浴場)である。

城崎温泉 — 52軒764室・外湯7湯(800m圏)

鉄輪温泉 — 22軒537室・座標確認できた外湯2湯(800m圏)

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(外湯座標は公開地理情報データベース。地図タイルの帰属表示は地図内に記載)

城崎では大谿川に沿って7湯が一直線に並び、宿がその両側に貼りつくように分布する。宿から外湯までの動線が街路そのものであり、どの宿からでも複数の湯が徒歩数分の距離に入る。円の大きさがほぼ揃っているのも見てとれる。鉄輪は逆に、扇状の斜面に沿って大きな円(96室・74室・55室・48室)が離れて配置され、小さな円がいでゆ坂周辺に固まる二層構造になっている。大型施設は自前の大浴場と眺望を持つ滞在型として成立し、いでゆ坂の小規模宿は共同浴場と地獄蒸しの生活圏に近接する、という役割分担が読める。

秋冬の単価階層 — 城崎¥30,200に対し渋¥13,200、2.3倍の開き

2026年10〜12月を対象に、800m圏の各施設の推定成約ADRを月平均して分布を取ると、街ごとの単価階層がはっきり分かれる。中央値は城崎¥30,200、鉄輪¥20,300、野沢¥14,200、渋¥13,200。最上位の城崎と最下位の渋では2.3倍の開きがある。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(2026年10〜12月・800m圏。城崎N=44、野沢N=17、渋N=27、鉄輪N=15施設)

2026年10〜12月・800m圏の推定成約ADR分位(施設別月平均の分布)
温泉街 対象施設数 下位25%点 中央値 上位25%点 上位/下位
の倍率
城崎温泉44¥20,300¥30,200¥37,3001.84倍
鉄輪温泉15¥13,700¥20,300¥25,6001.87倍
野沢温泉17¥12,300¥14,200¥16,3001.33倍
渋温泉27¥9,700¥13,200¥21,9002.25倍

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(推定成約ADR・2026年10〜12月の施設別月平均から算出。城崎N=44、野沢N=17、渋N=27、鉄輪N=15施設)

ここで重要なのは、城崎と渋が供給構造としてはほぼ同型だという点である。どちらも旅館がほぼ全数を占め、40室以上がゼロ、中央値10〜12室の小規模宿密集型だ。にもかかわらず単価階層は2.3倍離れている。規模の型が単価を決めているわけではない。

分布の幅にも違いが出る。渋は上位25%点が下位25%点の2.25倍と最も広く、¥9,700台の宿と¥21,900台の宿が同じ街に並ぶ。金具屋(29室)に代表される歴史的建築の宿と、素泊まり中心の小規模旅館が混在しているためだ。逆に野沢は1.33倍と最も狭く、¥12,300〜¥16,300のレンジに集中している。単価の横並び性が強く、街として同じ価格帯を共有していることになる。城崎は1.84倍で、¥20,300を下限としつつ上位は¥37,300超まで伸びる。下限そのものが他街の中央値を上回っている点が城崎の特徴である。

この単価階層のカバー範囲について。推定成約ADRは業態別の補正係数を用いる都合上、旅館・ビジネス・シティ・リゾート・カプセルの各業態を対象としており、民宿・ペンション・ロッジ・ゲストハウス等は対象外です。城崎・渋・鉄輪は800m圏の稼働施設のほとんどが旅館であるためカバー率が高い一方、野沢は800m圏55軒のうち民宿24軒・ペンション3軒ほかが対象外となり、上表の野沢の数値は旅館17軒の水準を示しています。野沢の街全体の平均的な支払額は、この数値より低い方向に振れる可能性があります。

季節振幅は城崎・野沢が2.0倍、鉄輪は1.4倍

単価の高さと同じくらい、年間の振れ幅が街の性格を決める。2025年12月から2026年7月までの実績期間で、各街の月次中央値の最高月と最低月を比べると、城崎は2025年12月の¥39,700から2026年7月の¥19,600まで2.02倍、野沢は2026年1月の¥20,800から2026年6月の¥10,300まで2.02倍の振幅がある。渋は1.60倍、鉄輪は1.43倍にとどまる。この振れ幅を全国の市区町村で同じ物差しに並べた分布は、市区町村別・季節振幅ランキング2026が633市区町村分を一覧にしている。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(800m圏の施設別推定成約ADRの月次中央値。城崎N=44、野沢N=17、渋N=27、鉄輪N=15施設。2026年8月以降は調査時点の掲載水準に基づく推定)

城崎の山はズワイガニに連動する。2026年8月の¥19,300から12月の¥34,600へ、現時点の掲載水準ベースで約1.8倍に立ち上がる形が既に出ている。日本海側の港町に共通するカーブで、解禁日を境に価格帯が階段状に切り替わる構造はズワイガニ解禁と日本海6県の単価分析で詳しく扱っている。野沢の山は1月、つまりスキーシーズンで、外湯めぐりというより雪の需要が単価を押し上げている。渋の山は2月にあり、地獄谷野猿公苑の雪景色を目的とする冬の訪日需要とタイミングが重なる。

これに対して鉄輪は1.43倍と最も平坦で、7月の¥14,900から12月の¥21,300まで、なだらかな年間カーブを描く。別府は温泉地であると同時に通年の都市型観光地でもあり、季節依存が構造的に小さい。大型施設が客室の半分を占める供給構造とも整合する。稼働の谷が浅ければ、40室以上の箱を年間通して回せるからだ。逆に城崎・野沢のように振幅が2倍ある街では、閑散期の固定費負担が大きい大型施設は成立しにくい。40室以上がゼロという事実は、季節振幅の裏返しとして読むことができる。

4街を並べて見えること

整理すると、外湯を持つ温泉街の客室ストックには次の3つの型がある。第一に、城崎のように「小規模宿が密集し、かつ単価階層が高い」型。52軒764室が中央値12室で並び、下位25%点でも¥20,300を確保している。外湯めぐりを街の商品として共有し、宿は客室数を増やすかわりに料理と設えで単価を取る設計だ。第二に、渋・野沢のように「小規模宿が密集し、単価は¥13,000〜¥14,000台」の型。渋は9湯が370m四方に凝縮した歩ける密度、野沢は13湯と民宿を含む多層的な業態構成で、どちらも街の規模に対して湯が多い。第三に、鉄輪のように「大型施設が客室の半分を占め、季節振幅が小さい」型である。

そして最も示唆的なのは、城崎と渋という構造的にほぼ同型の2街に2.3倍の単価差が存在することだろう。40室以上ゼロ・旅館ほぼ全数・中央値10〜12室という条件が同じでも、単価階層は街の商品設計と需要の質で決まる。供給構造は単価の上限を規定しないし、小規模であることは高単価化の制約にもならない。城崎の下位25%点が渋の上位25%点(¥21,900)に近い水準にあるという事実は、小さな箱でも街ぐるみの設計次第で単価階層を引き上げられる余地があることを示している。

もうひとつ、実務的に見落とせないのは野沢の除外率44%である。800m圏に登録のある98軒のうち43軒が販売価格を観測できない状態にあった。OTA等に在庫を出していない宿がこれだけ残っているということは、街全体の受け入れ能力が公開情報からは把握しきれないことを意味する。供給の総量を語るときには、見えている656室の外側にストックがあることを前提に置く必要がある。

⚠ 将来日程のADRに関する注意:本記事の2026年8月以降のADRは、調査時点でOTA等に公開されている販売価格をもとに算出した推定値であり、チェックイン日に近づくにつれて変動します。現時点で高く設定されている価格が直前の調整で下落する可能性、および新規プランの追加で水準が変わる可能性がある点にご留意ください。2027年1月以降は掲載施設数が十分に揃わないため、本稿の集計対象から除外しています。

集計方法と対象範囲

対象は4温泉街の外湯群の重心(鉄輪のみ市営鉄輪むし湯の所在地)から半径800mおよび1.5km圏内にある宿泊施設で、宿泊施設マスター上で営業中かつ、2026年4月26日〜2027年4月21日のチェックイン日について販売価格の観測が1件以上ある施設に限定した。マスター登録があっても販売実績が確認できない施設は、閉業・直販専業・季節営業などが区別できないため一律で除外している。客室数は施設マスターの登録値を用いた(施設によっては、各施設がOTA等で公表する客室数と一致しない場合がある)。

推定成約ADRは、各施設がOTA等で公開する最安プラン水準に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価で、2026年7月以前は確定した実績月の値、2026年8月以降は調査時点の掲載情報に基づく推定値である。月次中央値の系列は、各月の集計対象施設数が系列中央値の60%を下回る月を除外したうえで作成した(この基準により2025年11月および2027年1月を除いている)。メトロエンジンリサーチは国内約168,000施設を追跡し、うちOTA上で稼働が確認できる約27,000施設・約126万室を分析対象としている。OTA等に掲載のない旅館・民宿・簡易宿所は含まれない。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

宿泊施設マスター(施設数・客室数・業態区分)、推定成約ADR、掲載価格の観測データはメトロエンジンリサーチ。外湯の名称・湯数は各温泉観光協会および自治体の公式サイト、外湯の個別座標は公開地理情報データベース(ODbL)による。

■ 試算前提

集計範囲は各温泉街の外湯群の重心(鉄輪のみ市営鉄輪むし湯の所在地)から半径800mおよび1.5kmの直線距離圏。稼働中施設は2026年4月26日〜2027年4月21日のチェックイン日について販売価格の観測が1件以上ある施設に限定した。推定成約ADRは各施設の最安プラン水準に業態別の補正係数を適用した推定成約単価(税抜相当)で、温泉街単位では対象施設の中央値を用いている。

■ 限界・留意点

客室数は施設マスターの登録値であり、各施設がOTA等で公表する客室数と一致しない場合がある。推定成約ADRは旅館・ビジネス・シティ・リゾート・カプセルの検証済み業態のみを対象とし、民宿・ペンション・ロッジ・ゲストハウス等は含まない(野沢の単価は800m圏55軒のうち旅館17軒の水準)。2026年8月以降の数値は掲載スナップショットに基づく推定であり、チェックイン日に近づくにつれ変動する。鉄輪は座標を確認できた外湯が2湯にとどまるため、中心点は市営鉄輪むし湯を代表点としている。圏内は直線距離であり徒歩経路距離ではない。

■ 外湯の名称・湯数・所在(一次情報)

■ 座標・地図

■ 宿泊供給・価格データ

  • メトロエンジンリサーチ — 宿泊施設マスター(施設数・客室数・業態区分)、推定成約ADR、掲載価格の観測データ

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