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長期滞在型ホテル、日本の主要ブランドと事業モデル|旅館業法・賃貸の境界と東京30泊54.5万円の費用構造

投稿日 : 2026.09.30

東京都

客層・セグメント分析

長期滞在型ホテル、日本の主要ブランドと事業モデル|旅館業法・賃貸の境界と東京30泊54.5万円の費用構造

「長期滞在型ホテル」は、エクステンデッドステイ型ホテル、サービスアパートメント、アパートメントホテル、マンスリー対応の宿泊特化型ホテルを束ねた呼び名である。ただし事業として見ると、これらは旅館業法にもとづく宿泊契約で日単位の価格を動かすモデルと、賃貸借契約で月額を固定するモデルに分かれ、許認可・消費税・宿泊税・収益の振れ幅がすべて異なる。本稿では、投資家・運営者・市場調査担当の読者に向けて、①セグメントの定義と制度上の位置づけ、②日本で展開する主要ブランド(各社公表値の引用)、③東京都の掲載価格から見た30泊の費用感、④ADR×稼働の宿泊モデルと月額固定のレジデンスモデルの収益構造を順に整理する。

本記事における指標の定義

  • 掲載価格(全プラン平均):各施設がOTA等に公開している販売プラン(素泊まり〜食事付きを含む)の平均。2名1室利用時の1室あたり料金(税込)。本稿の「30泊費用」はこの水準を30倍した試算値であり、実際の連泊契約・法人契約の単価とは異なります。
  • ADR(平均客室単価):各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。
  • OCC(稼働率):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ(価格・稼働)、各社公表資料(ブランド情報)、厚生労働省・国税庁・東京都主税局(制度)
東京都ビジネスホテル 30泊
約54.5万円
掲載価格18,166円×30泊・968軒・2026年9月
東京都シティホテル 30泊
約128.4万円
掲載価格42,802円×30泊・121軒・2026年9月
ADRの年間振れ幅(最高月÷最低月)
1.54倍
東京都ビジネス・シティとも(2025年9月〜2026年8月)
東京都ビジネスホテル 推定OCC(2026年5月)
93.5%
日別73.3%〜99.9%・533施設
Key Takeaways
  • — 事業の性格を決めるのは設備ではなく契約形態。宿泊契約(旅館業法)は30泊以上でも消費税課税・宿泊税の対象、1ヶ月以上の住宅貸付けは消費税非課税・宿泊税の対象外となる。
  • — 東京都の掲載価格(2026年9月・1室2名・税込)で30泊すると、ビジネスホテル約54.5万円(968軒)、シティホテル約128.4万円(121軒)。連泊割引20%を仮定しても約43.6万円・約102.7万円。
  • — 東京都の推定成約ADRは直近12ヶ月(2025年9月〜2026年8月)で最高月が最低月の1.54倍。月額・連泊商品は閑散月の売上を下支えする平準化の手段になる。

長期滞在型ホテルのセグメント定義 — 4つの類型は契約形態で分かれる

長期滞在型の宿泊商品は、客室設備(キッチン・洗濯乾燥機・リビング)だけで見ると似通っている。しかし事業の性格を決めるのは設備ではなく契約形態である。宿泊契約として販売する限り、滞在が30泊を超えても旅館業法の許可施設であり、日単位で価格を変えられる。一方で賃貸借契約として1ヶ月以上を貸す場合は、不動産賃貸業として扱われる余地が生まれ、課税関係も変わる。

実務上の類型は、おおむね次の4つに整理できる。なお、同じブランドの中でも「1泊から予約可能な宿泊商品」と「30泊以上の長期滞在商品」を併売するケースは多く、1つの施設が複数の類型にまたがることも珍しくない。

長期滞在型ホテルの4類型と契約形態
類型主な契約形態典型的な滞在単位客室・サービスの特徴
エクステンデッドステイ型ホテル宿泊契約(旅館業法)1泊〜数週間宿泊特化型の客室にミニキッチン・洗濯乾燥機・電子レンジ等を装備
アパートメントホテル宿泊契約(旅館業法)数泊〜2週間程度の多人数滞在40㎡前後の広い客室、キッチン・ダイニング、4〜6名定員
サービスアパートメント宿泊契約または賃貸借(施設・商品により異なる)1ヶ月〜年単位(1泊から受ける施設もある)レジデンス仕様、フロント・ハウスキーピング・ラウンジを常設
マンスリー対応(家具付き賃貸)賃貸借(1ヶ月以上)1ヶ月以上家具・家電付き住戸。清掃・寝具管理は原則として入居者側

出典:各社公表資料・厚生労働省通知等よりホテルバンク編集部作成

制度上の位置づけ — 旅館業法と賃貸借の境界、「30日以上」はどう扱われるか

旅館業にあたるかどうかの判断軸は、厚生省(当時)の通知「旅館業法運用上の疑義について」(昭和63年1月29日 衛指第23号)に示されている。要点は2つで、施設の衛生上の維持管理責任が営業者にあるか、そして宿泊者がその部屋に生活の本拠を有さないことを原則として営業しているかである。

「1ヶ月」という線引きは、この判断を運用する自治体の基準として表れる。たとえば東京都中央区の「旅館業と貸室業との判断基準について」は、1ヶ月未満の宿泊を原則としてすべて旅館業法の対象として取り扱うとしている。ただし1ヶ月以上であっても、1ヶ月以上の貸室業を営む意思を対外的に明示していない場合や、1ヶ月に達する前にサービス提供の終了を繰り返す場合は、旅館業法の対象になるとも明記している。つまり「30泊以上だから賃貸」とは自動的にはならない。契約形態・募集方法・衛生管理の責任分担が一体で判断される。

この区分は課税関係にも直結する。国税庁のタックスアンサーNo.6226「住宅の貸付け」のとおり、住宅の貸付けは貸付期間が1ヶ月に満たない場合などを除いて消費税が非課税となる。一方で消費税法基本通達(第13節 住宅の貸付け関係)は、旅館業法の適用を受けるホテル・旅館等の施設の貸付けは、利用期間が1ヶ月以上となる場合でも非課税にならないとしている。ホテルの長期滞在プランは30泊でも課税売上、賃貸借で運営するレジデンスは非課税売上になるという違いは、価格表示だけでなく、非課税売上に対応する仕入れの消費税が原則として控除対象にならないという形で運営側の費用構造にも影響する。

宿泊税も同じ境界で分かれる。東京都主税局によると、現行の東京都宿泊税は都内の旅館・ホテルの宿泊者が対象で、宿泊料金(1人1泊)1万円未満は非課税、1万円以上1万5千円未満は100円、1万5千円以上は200円の定額制である。令和9年(2027年)4月1日の宿泊分からは宿泊料金の3%の定率制に改められ、免税点は1人1泊1万3千円未満に引き上げられ、課税対象は簡易宿所等にも広がる。たとえば1人1泊の宿泊料金が2万円の場合、現行200円から改正後は600円となる計算で、長期滞在では泊数分だけ積み上がる。賃貸借で提供する住戸はこの宿泊税の対象外である。

宿泊契約と賃貸借(住宅貸付け)の制度比較
項目宿泊契約(ホテル・アパートメントホテル等)賃貸借(1ヶ月以上の住宅貸付け)
根拠・許認可旅館業法の許可借地借家法等(旅館業の許可は不要。ただし運用実態で判断)
「1ヶ月」の意味30泊以上でも宿泊契約のまま1ヶ月以上の貸室業として明示・募集していることが前提(中央区基準の例)
消費税課税(利用期間1ヶ月以上でも非課税にならない)住宅の貸付けは原則非課税
東京都宿泊税対象(現行:定額100円・200円/2027年4月〜:3%)対象外
衛生管理の責任営業者(客室清掃・寝具提供)原則として入居者(住戸内)

出典:厚生労働省通知(昭和63年衛指第23号)、中央区「旅館業と貸室業との判断基準について」、国税庁、東京都主税局よりホテルバンク編集部作成。個別案件の該当性は所管保健所・税務署の判断による

日本で展開する主要ブランド — 各社公表値をそのまま引用(五十音順)

国内の長期滞在型ブランドは、外資系のサービスアパートメント運営会社、国内デベロッパー系のアパートメントホテル、宿泊特化型ホテルの中長期滞在対応型が並立している。下表は各社が自社サイト・プレスリリースで公表している数値を、基準時点とあわせてそのまま掲載した。掲載順は五十音順である。施設数の数え方(複数ブランドの合算か単一ブランドか、開業予定を含むか等)は各社で異なるため、本稿では施設数・客室数によるブランド間の比較や順位付けは行わない。

日本で展開する主要な長期滞在型ブランド(五十音順・各社公表値)
ブランド(運営)公表されている規模・計画長期滞在に関わる特徴出典
アスコット(アスコット、サマセット、シタディーン、オークウッド、lyf)日本で5ブランド・22プロパティを運営(2026年6月25日発表時点)2026年6月25日開業の「オークウッド大井町トラックス東京」は30泊以上の長期滞在専用、全78室・約27〜107㎡、全室フルキッチン・洗濯乾燥機アスコットジャパン発表(2026年6月25日)
WAYPOINT(三菱地所・三菱地所ホテルズ&リゾーツ)1号物件「WAYPOINT TSUKIJI TOKYO」2026年4月1日開業・52室。2030年までに10軒の開業を目標最大6名。一部客室にミニキッチン・洗濯乾燥機を備え長期滞在に対応三菱地所 ニュースリリース(2026年2月2日)
東急ステイ(東急リゾーツ&ステイ)2026年3月17日開業の「東急ステイ渋谷 恵比寿」(全77室)が全国33施設目出張・観光から転勤時の一時的な住まいまで、短期から中長期の滞在に対応。客室に洗濯乾燥機・電子レンジ・ミニキッチン(一部タイプ)東急不動産 ニュースリリース(2026年3月13日)、東急不動産 事業紹介
ハイアット ハウス(ハイアット)国内2ホテル:ハイアット ハウス 東京 渋谷(126室・2024年2月26日開業)、ハイアット ハウス 金沢(92室・2020年8月開業)「暮らすように泊まる」ブランド。東京 渋谷は中・長期滞在を想定した32〜96㎡のアパートメントタイプで、全室にキッチン・洗濯乾燥機を備える日本ハイアット 株式会社「報道資料 2026年4月」、東急不動産 ニュースリリース(2024年)
フレイザー(フレイザーズホスピタリティー)フレイザーレジデンス南海大阪:全114室・28〜77㎡、2010年10月5日開業中長期滞在型のサービスアパートメント。全室にキッチン・洗濯乾燥機。1泊からの利用にも対応南海都市創造・フレイザーズホスピタリティー発表(2010年7月15日)
MIMARU(コスモスイニシア・コスモスホテルマネジメント)2026年9月1日開業の「MIMARU大阪 心斎橋CENTRAL」が28施設目、総客室数1,500室。2030年に3,000室体制を目指す40㎡超の客室にキッチン・ダイニング・洗濯乾燥機。長期滞在や子ども連れの旅に対応コスモスイニシア発表(2026年8月26日)

出典:各社公表資料よりホテルバンク編集部作成。数値は各社の公表時点のもので、数え方は各社で異なる

ブランドの顔ぶれからは、2つの潮流が読み取れる。1つは、多人数・キッチン付きのアパートメントホテルがデベロッパー主導で拡大していること。MIMARUの2030年3,000室体制、WAYPOINTの2030年10軒という目標はいずれも、訪日グループ客の中期滞在を取り込む供給計画である。もう1つは、外資系サービスアパートメントが「30泊以上」専用の商品設計に踏み込んでいることで、オークウッド大井町トラックス東京はその代表例となる。宿泊特化型の中長期滞在対応ブランドは、出張・研修・転勤といった法人需要を日単位でも月単位でも受けられる柔軟さが強みといえる。

なお、ブランド単位の実勢価格や立地の分布は、長期滞在型ホテル ブランド市場地図2026および長期滞在型ホテルの主要ブランドと30泊価格帯(東京・大阪・福岡)で詳しく扱っている。本稿は、それらの前提となる制度と収益構造に焦点を当てる。

料金実勢 — 東京都で30泊すると掲載価格ベースで約54.5万〜128.4万円

まず、長期滞在の費用感の基準として、一般的なホテルに30泊した場合の水準を押さえておく。メトロエンジンリサーチの集計によると、2026年9月の東京都の掲載価格(全プラン平均、2名1室利用時の1室あたり料金・税込)は、ビジネスホテルが約18,200円/泊(968軒)、シティホテルが約42,800円/泊(121軒)である。これを単純に30倍すると、ビジネスホテルで約54.5万円、シティホテルで約128.4万円となる(端数を含む1泊単価で計算。円単位の値は下表の試算前提を参照)。1人あたりに直すと、ビジネスホテルでも30泊で約27.2万円の水準だ。

ただし、この試算は連泊割引を含まない上限的な目安である。東京都の公開プランを見ると、「2泊以上で5〜10%OFF」「7泊以上で15%OFF」のように泊数条件で割引を付けた連泊プランが数多く並ぶ。仮に5%・10%・20%の連泊割引が適用された場合の30泊費用は下図のとおりで、20%割引でもビジネスホテルで約43.6万円、シティホテルで約102.7万円となる。なお割引率は感度を見るための仮定値であり、実際の割引水準は施設・時期により異なる。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(東京都・2026年9月・掲載価格ベース・税込・1室2名。割引率は仮定値)

東京都で30泊した場合の費用試算(2026年9月・掲載価格ベース)
■ 試算前提(東京都・2026年9月)ビジネスホテルシティホテル
掲載価格(全プラン平均・1泊・1室2名・税込)18,166円42,802円
集計対象968軒121軒
30泊(割引なし)544,980円1,284,060円
30泊(連泊割引10%を仮定)490,482円1,155,654円
30泊(連泊割引20%を仮定)435,984円1,027,248円

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成。掲載価格は食事付きプランを含む全プラン平均で、宿泊税は含まない

長期滞在型の料金体系は、この「1泊×泊数」とは設計思想が異なる。代表例として、フレイザーレジデンス南海大阪が2010年の開業時に公表した料金表(1名料金。水道光熱費・ハウスキーピング・朝食・サービス料・消費税を含む)を見ると、1ヶ月料金は1泊料金の約8.2〜10.8泊分に設定されていた。スタジオデラックスで1泊28,600円に対し1ヶ月290,000円(約10.1泊分)、2ベッドルームエグゼクティブで1泊95,000円に対し1ヶ月870,000円(約9.2泊分)である。公表値ベースの1泊料金はいわば定価であり、月額はそれとは別の価格表として組まれていたことがわかる。

出典:南海都市創造・フレイザーズホスピタリティー「フレイザーレジデンス南海大阪」開業発表(2010年7月15日)の通常料金よりホテルバンク編集部作成。現行料金ではない

週額・月額・連泊プランを組み合わせた料金体系は、利用者にとっては1泊あたりの単価が下がる仕組みであり、運営側にとっては清掃回数・チェックイン回数・販売手数料が泊数に比例して増えないことを価格に反映させる仕組みでもある。長期滞在の費用構造を評価する際は、1泊単価の比較だけでなく、どの費用が泊数に連動し、どの費用が滞在1件あたりの固定費になるかを分けて見る必要がある。平均泊数と清掃原価の関係はホテルの平均泊数で清掃原価は1室年18.7万円動くでも定量化している。

事業モデルの比較 — ADR×稼働の宿泊モデルと月額固定のレジデンスモデル

宿泊モデルの客室売上は「ADR×OCC×日数」で決まる。価格を日単位で動かせるため、需要の強い日には単価を引き上げられる。その裏返しとして、売上は季節と曜日の影響を直接受ける。東京都ビジネスホテルの推定成約ADR(N=894〜924施設)を2025年と2026年で重ねると、年間の山と谷がはっきり表れる。直近12ヶ月(2025年9月〜2026年8月)の最高月は2026年4月の約17,800円、最低月は2026年8月の約11,600円で、最高月は最低月の1.54倍だった。2026年8月は前年同月比-8.9%である。シティホテル(N=104〜109施設)でも直近12ヶ月の最高月(2025年11月・約32,800円)は最低月(2026年8月・約21,300円)の1.54倍で、振れ幅はほぼ同じだった。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(東京都ビジネスホテル・推定成約ADR・税抜相当。2026年は実績が確定した8月まで)

稼働も日によって大きく動く。東京都の推定OCC(対象ビジネスホテル529〜535施設/客室約7.8万室、主要予約サイト掲載ベース)は、2026年5月の月平均が93.5%だったが、日別では5月6日の73.3%から5月21日の99.9%まで開いた。8月も月平均88.8%に対し、日別では80.3%〜93.5%の幅がある。推定成約ADRと推定OCCを掛け合わせて1室あたりの月間客室売上を試算すると、ビジネスホテルは5月の約43.2万円に対して8月は約31.8万円、シティホテル(対象52〜54施設/客室約1.7万室)は5月の約75.1万円に対して8月は約57.5万円となった。同じ1室でも、月によって売上水準が3割前後動く計算である。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(東京都・2026年5〜8月。推定成約ADR×推定OCC×暦日数による試算。対象:ビジネスホテル推定OCC 529〜535施設/客室約7.8万室、シティホテル52〜54施設/客室約1.7万室、主要予約サイト掲載ベース)

これに対してレジデンスモデル(月額固定の賃貸借)は、入居中の月額が契約期間を通じて変わらない。需要の強い日に単価を上げる余地はない代わりに、閑散月も同じ額が入る。収益の変動要因は日々の価格と稼働ではなく、入退去の入れ替わりで生じる空室期間に移る。運営面では、客室清掃・寝具交換・フロント対応の頻度が下がり、販売チャネルも法人契約や仲介が中心となるため、泊数に比例する変動費が小さくなる。一方で、前節で見たとおり消費税は非課税売上となり、仕入れに含まれる消費税の扱いが宿泊モデルと異なる点は事業計画上の前提として織り込む必要がある。

宿泊モデルとレジデンスモデルの収益構造の比較
比較軸宿泊モデル(ADR×稼働)レジデンスモデル(月額固定)
売上の式ADR×OCC×日数月額×入居戸数
価格改定日単位(需要に応じたダイナミックプライシング)契約更新・新規募集時
売上の振れ幅季節・曜日で変動(東京都ではADRの最高月÷最低月=1.54倍)入居中は一定。入れ替え時の空室期間が主な変動要因
泊数に連動する費用清掃・リネン・アメニティ・予約ごとの販売手数料小さい(定期清掃・入退去時の原状回復が中心)
主な販売経路OTA等・自社サイト・法人契約法人契約・仲介・自社サイト
消費税・宿泊税消費税課税、宿泊税の対象住宅貸付けは消費税非課税、宿泊税の対象外

出典:メトロエンジンリサーチ、国税庁、東京都主税局よりホテルバンク編集部作成

収益性の目安として、ホテル運営のGOP率は業態で大きく異なる。リロホテルソリューションズの整理では、客室収益中心のビジネスホテルはGOP率が比較的高めになりやすく、料飲・宴会比率の高いシティホテルは原価率・人件費率が上がりやすいとされる。上場REITの開示実績では、インヴィンシブル投資法人(8963)のマイステイズ・ホテル・マネジメント運営ホテルのGOP率が38.9%(2024年12月期・91物件)である(インヴィンシブル投資法人「2024年12月期 決算説明資料」)。長期滞在の比率を高めるほど、泊数に連動する清掃・販売コストが下がる方向に働くため、宿泊特化型の高いGOP率をさらに引き上げる余地がある。

実務的に注目したいのは、両モデルを1つの施設で組み合わせるハイブリッド運営である。東急ステイやフレイザーのように、1泊からの宿泊と中長期の滞在を同じ建物で受ける形態は、需要の強い時期は日単位の価格で販売し、需要が緩む時期は連泊・月額の商品で稼働の土台をつくるという使い分けを可能にする。東京都ビジネスホテルの試算で見れば、8月の1室あたり月間客室売上(推定、税抜相当)は約31.8万円だった。閑散月にこの水準を安定して確保できる月額・連泊商品を設計できれば、繁忙月の日単位販売の伸びしろを残したまま、年間の収益の振れ幅を平準化できる。どの月に何割の客室を長期滞在枠に回すかは、ブッキングカーブと月別のADR・稼働の実績から逆算するのが合理的だろう。

まとめ — 長期滞在型は「設備」より「契約と収益の組み立て」で選ぶ

長期滞在型ホテルは、キッチンや洗濯乾燥機といった設備で語られがちだが、事業としての性格は契約形態で決まる。宿泊契約のまま30泊を販売するモデルは、価格の柔軟性を保ちつつ消費税・宿泊税の課税対象となる。1ヶ月以上の賃貸借として運営するモデルは、収益が安定する一方で、旅館業との境界を運用実態で満たす必要がある。2027年4月の東京都宿泊税の定率化は、長期滞在の宿泊商品の総額にも泊数分だけ効いてくるため、料金設計の見直し材料となるだろう。

供給側では、アパートメントホテルの拡大計画と、30泊以上専用のサービスアパートメントの開業が同時に進んでいる。東京都のホテルに30泊した場合の掲載価格ベースの費用は約54.5万〜128.4万円で、長期滞在型の月額・連泊商品はこの水準に対する選択肢として位置づけられる。運営者にとっては、ADRの年間1.54倍の振れ幅を月額商品でどこまで平準化するかが、長期滞在を収益源に組み込む際の設計の出発点となる。

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⚠ 将来日程の価格に関する注意:2026年9月の掲載価格には調査時点で未到来の宿泊日が含まれ、調査時点の掲載水準に基づく値です。チェックイン日に近づくにつれて新規プラン追加・価格調整で変動します。本稿の30泊費用・月間客室売上はいずれも試算であり、個別施設の実際の料金・売上とは異なります。制度の適用は個別の契約内容・運用実態により判断されるため、事業化にあたっては所管の保健所・税務署等にご確認ください。

あわせて読みたい

参考資料・出典一覧

■ 市場データ

  • メトロエンジンリサーチ — 東京都のカテゴリ別掲載価格(2026年9月、ビジネスホテル968軒・シティホテル121軒)、推定成約ADR(2025年1月〜2026年8月)、推定OCC(2026年5〜8月)、公開プラン名の集計

■ 法令・公的資料

■ 各社公表資料

■ 業界資料

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