メトロエンジンリサーチが把握する範囲で、2026年10月から2027年1月にかけて開業する100室以上の宿泊施設は18件・合計3,054室である。ただしこの数字をそのまま「新しく増える客室」と読むと実態を外す。各案件の公式リリースを1件ずつ照合すると、少なくとも2件・492室は既存ホテルのリブランドまたは改装によるもので、市場に積み増される純増分は2,562室にとどまる。本稿ではこの18件を実名で並べたうえで、各案件の半径2km圏にどれだけの客室ストックが既にあるか、そして新規案件がエリアのどの価格帯に参入してくるかを定量化する。
本記事における指標の定義
- ADR(平均客室単価):各施設がOTA等で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。
- 掲載価格:OTA等に掲載されている全プランの平均額(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)。素泊まりから食事付きまでを含みます。
- 供給インパクト:新規案件の客室数 ÷ 半径2km圏に立地する既存施設(20室以上)の客室数合計。既存ストックに対して何%が積み増されるかを示します。
- データ出典:メトロエンジンリサーチ(施設・客室数・価格)、各社公式リリース(開業日・客室数の照合)、国土交通省「建築物動態統計調査」(計画パイプライン)
- — 18件3,054室:2026年10月〜2027年1月に開業する100室以上の施設(メトロエンジンリサーチ把握分)。公式リリースと照合すると492室はリブランド・改装で、純増は2,562室。
- — +0.3%〜+78.7%:半径2km圏の既存客室に対する積み増し率。大阪本町の202室は+0.3%、青森県六ヶ所村の210室は+78.7%で、同じ200室級でも重みは約260倍違う。
- — 0.6〜4.3倍:参入ADRのエリア中央値比(推定成約ADR・2026年11〜12月)。箱根の126室は4.3倍で上限レンジを新設し、大船の122室は0.6倍で裾野を広げる。
18件3,054室 — 100室超の全リストと公式照合結果
まず対象期間の全件を並べる。抽出条件は「客室数100室以上」「2026年10月1日〜2027年1月31日に開業」で、当社が把握する施設データベースから重複を除外したうえで、1件ずつ運営会社・開発事業者の公式リリースを確認した。開業日や客室数が当社データと食い違う場合は公式側を採用している。
照合の結果、2件で修正が入った。ソラリア西鉄ホテル大阪本町は西日本鉄道の公式リリースで開業日が2026年12月18日と明示されており(当社データでは12月17日)、ザ グランドキャッスル 那覇 首里城 by ヒューイットリゾートは2027年1月1日のリブランドオープンで、現在のダブルツリーbyヒルトン那覇首里城の運営契約終了後にリノベーションを行うという建て付けだった。後者は新築ではなく既存ストックの転換である。
| 開業日 | 施設名 | 客室数 | 所在 | 公式リリースとの照合 |
|---|---|---|---|---|
| 2026/10/01 | ホテルアマネク熊本 | 176 | 熊本県熊本市 | 当社データ |
| 2026/10/02 | たびのホテル青森六ヶ所村 | 210 | 青森県六ヶ所村 | 公式一致(室数・日付) |
| 2026/10/15 | リッチモンドホテル八戸スクエア | 126 | 青森県八戸市 | 公式一致(室数・日付) |
| 2026/10/15 | HOTEL AZ 岡山備前店 | 157 | 岡山県備前市 | 当社データ |
| 2026/10/16 | スマイルホテル八王子南口駅前 | 114 | 東京都八王子市 | 当社データ |
| 2026/10/30 | 東横イン大船駅西口 | 122 | 神奈川県鎌倉市 | 当社データ |
| 2026/10/31 | スマイルホテルプレミアム鳥取 | 119 | 鳥取県鳥取市 | 当社データ |
| 2026/11/01 | 亀の湯by HATAGO INN | 134 | 熊本県熊本市 | 当社データ |
| 2026/11/15 | たびのホテルlit豊川 | 112 | 愛知県豊川市 | 当社データ |
| 2026/11/16 | コートヤード・バイ・マリオット京都駅 | 270 | 京都市南区 | 公式一致(室数・日付) |
| 2026/12/01 | THE ALPS HOTEL HAKUBA | 159 | 長野県小谷村 | 公式:既存ホテルの改装開業 |
| 2026/12/01 | GRAND HOSTEL LDK広島 | 157 | 広島県広島市 | 当社データ |
| 2026/12/10 | スーパーホテル東広島八本松天然温泉 | 148 | 広島県東広島市 | 公式一致(室数)/日付は当社データ |
| 2026/12/15 | HOTEL THE MITSUI HAKONE | 126 | 神奈川県箱根町 | 公式一致(室数・日付) |
| 2026/12/18 | ソラリア西鉄ホテル大阪本町 | 202 | 大阪市中央区 | 公式で日付を修正(12/17→12/18) |
| 2026/12/24 | アパホテル〈渋谷駅前〉 | 231 | 東京都渋谷区 | 公式一致(室数・日付) |
| 2027/01/01 | ザ グランドキャッスル 那覇 首里城 by ヒューイットリゾート | 333 | 沖縄県那覇市 | 公式:既存ホテルのリブランド |
| 2027/01/15 | HOTEL AZ 島根安来店 | 158 | 島根県安来市 | 公式で日付を確認(2027/1/15)/室数は当社データ |
| 合計 | 18件 | 3,054 | うちリブランド・改装 492室/純増相当 2,562室 | |
出典:メトロエンジンリサーチ(OTA掲載確認ベース)および各社公式リリースより、ホテルバンク編集部作成
件数ベースでは10月が7件と最も多いが、客室数では10月1,024室・12月1,023室とほぼ拮抗する。12月は件数こそ6件だが、200室超の大型案件が2件(ソラリア西鉄ホテル大阪本町、アパホテル〈渋谷駅前〉)含まれるためだ。1件あたり平均は170室で、100室超に限った抽出としては中規模ビジネスホテルが中心という構成になる。
出典:メトロエンジンリサーチ(OTA掲載確認ベース、N=18施設)、ホテルバンク編集部より作成
なお、このリストは当社が把握する範囲のものであり、全数調査ではない。当社の施設データベースはOTA上での掲載確認と公表された建築計画をもとに構築しているため、開業直前まで販売を開始しない案件や、法人契約・団体販売を主軸に立ち上げる施設は捕捉が遅れる。実際、開業の数ヶ月前にならないとOTA掲載が出ないことが多く、直近月ほど件数は後から積み上がる性質がある。完全なリストとして扱わず、主要案件を公式リリースで補完しながら読む前提のものとして提示している。
半径2km圏の供給インパクトは+0.3%〜+78.7% — 同じ200室でも意味が違う
客室数の絶対値だけを見ても、その案件がエリアにどれだけの変化をもたらすかは分からない。202室のソラリア西鉄ホテル大阪本町と210室のたびのホテル青森六ヶ所村はほぼ同規模だが、周辺の既存ストックがまったく異なるからだ。そこで各案件の緯度経度を起点に半径2km圏を切り、そこに立地する20室以上の既存施設の客室数合計を分母として、新規客室数が何%を積み増すかを算出した。
結果は12件で+0.3%から+78.7%まで、およそ260倍の開きが出た。大阪市本町の半径2km圏には既に約6万室規模の客室が集積しており、202室の追加は+0.3%にすぎない。一方、青森県六ヶ所村の半径2km圏には20室以上の施設が5つ・267室しかなく、210室の投入は既存ストックの+78.7%に相当する。同じ「200室級の開業」でも、前者は市場に埋没する規模、後者はエリアの宿泊キャパシティを一段引き上げる規模ということになる。市区町村単位の既存ストック比で2026年の新規開業全体を並べ直した結果は、新規開業ホテルの供給圧ランキング2026-2027で掘り下げている。
出典:メトロエンジンリサーチ(半径2km圏・20室以上の施設を集計、N=12案件)、ホテルバンク編集部より作成
インパクトが大きい上位3件には共通点がある。いずれも、これまで宿泊需要に対して客室の受け皿が薄かった立地だという点だ。
六ヶ所村の案件は、サンフロンティアホテルマネジメントが運営する210室・鉄骨8階建てで、全室に洗濯機・電子レンジ・2ドア冷蔵庫を備え、大浴場とコインランドリー、160台の駐車場を持つ。公式リリースが「中長期滞在型」と位置づけているとおり、エネルギー関連の工事・保守で数週間から数ヶ月単位で滞在する需要を正面から狙った設計である。これまでこの規模の滞在需要は周辺市町村に分散して吸収されていたが、村内に210室がまとまることで、発注側が宿の手配を前提に工程を組めるようになる。受け皿ができて初めて取りにいける需要の典型といえる。
愛知県豊川市のたびのホテルlit豊川(112室)も同じ構図で、半径2km圏の既存ストックは3施設・254室と薄い。東三河は製造業の集積地で出張需要が恒常的にあるが、宿泊は豊橋や名古屋へ流れやすい。112室の追加は+44.1%に相当し、エリア内で完結する宿泊の選択肢を広げる。
神奈川県の東横イン大船駅西口(122室)は+24.7%。大船駅はJR東海道線・横須賀線・根岸線と湘南モノレールが交わる乗換拠点でありながら、半径2km圏の20室以上の施設は6つ・494室と限られていた。鎌倉・江ノ島・湘南エリアの周遊拠点として、駅至近に122室がまとまる意味は小さくない。鎌倉市内の推定成約ADR中央値が2026年12月時点で約¥18,100(N=17施設)であるのに対し、同施設の同月水準は約¥10,200と、周遊の拠点としてアクセスしやすい価格帯を新たに置くかたちになる。宿泊費を抑えて滞在日数を延ばしたい層や、鎌倉・湘南を複数日かけて回る家族連れにとって、選択肢が増える構図だ。
18案件の立地マップ — 大都市と地方の二極構成
18件を地図上に置くと、大都市圏(東京・大阪・京都・広島・熊本)と、これまで大型ホテルが少なかった地方拠点(六ヶ所村・八戸・備前・鳥取・安来・豊川・小谷村)に二極化していることが見て取れる。円の大きさは客室数に対応している。
出典:メトロエンジンリサーチ(OTA掲載確認ベース、N=18施設)および各社公式リリースより、ホテルバンク編集部作成
参入価格帯はエリア中央値の0.6〜4.3倍 — 上に伸ばす案件と、裾野を広げる案件
供給の量と並んで重要なのが、新規案件がエリアのどの価格帯に入ってくるかである。すでに予約受付を開始している案件については、開業後の月の推定成約ADRが算出できる。これをエリア(市区町村)の推定成約ADR中央値と並べると、参入位置がはっきりする。
出典:メトロエンジンリサーチ(推定成約ADR、対象月2026年11〜12月、N=6案件・エリアN=9〜187施設)、ホテルバンク編集部より作成
| 新規案件 | エリア | 新規案件ADR | エリア中央値 | 倍率 | エリアN |
|---|---|---|---|---|---|
| リッチモンドホテル八戸スクエア | 八戸市 | ¥8,900 | ¥7,400 | 1.2倍 | 28施設 |
| 東横イン大船駅西口 | 鎌倉市 | ¥10,200 | ¥18,100 | 0.6倍 | 17施設 |
| コートヤード・バイ・マリオット京都駅 | 京都市南区 | ¥60,600 | ¥25,000 | 2.4倍 | 53施設 |
| THE ALPS HOTEL HAKUBA | 小谷村 | ¥46,800 | ¥14,400 | 3.2倍 | 9施設 |
| HOTEL THE MITSUI HAKONE | 箱根町 | ¥129,700 | ¥30,000 | 4.3倍 | 159施設 |
| ソラリア西鉄ホテル大阪本町 | 大阪市中央区 | ¥19,800 | ¥12,200 | 1.6倍 | 187施設 |
出典:メトロエンジンリサーチ(推定成約ADR、対象月2026年11〜12月、N=6案件)、ホテルバンク編集部より作成(開業日順)
最も明快なのが箱根である。三井不動産グループのラグジュアリーブランドとして2026年12月15日に開業するHOTEL THE MITSUI HAKONEは、富士箱根伊豆国立公園内の約14haに全126室、全室に天然温泉の専用風呂とバルコニーまたはテラスを備える。開業月の推定成約ADRは約¥129,700で、箱根町の中央値約¥30,000(N=159施設)の4.3倍にあたる。これは既存の価格帯を取りにいく参入ではなく、箱根に新しい上限レンジを置く動きだ。国内ラグジュアリーの上限が引き上がれば、その下に位置する¥50,000〜¥80,000帯の宿にとっては相対的な割安感が生まれ、比較検討の土俵が広がる。箱根町の秋冬の価格階層と、この126室が入る上位帯の厚みについては、箱根の秋冬に積み上がる高単価供給で詳しく分析している。
京都駅八条東口に11月16日開業するコートヤード・バイ・マリオット京都駅は、JR東海グループが旧ホテルセントノーム京都の跡地に建設した地上9階・延床約15,900㎡、スイートを含む全270室。開業月の推定成約ADRは約¥60,600で、京都市南区の中央値約¥25,000(N=53施設)の2.4倍にあたる。京都駅周辺は半径2km圏に325施設・33,499室が集積する国内屈指の密集エリアで、270室の追加は+0.8%と量的インパクトは小さい。むしろ意味があるのは、八条口側に国際ブランドのアッパーミドル帯がまとまって入ることだ。京都駅南側は北側(烏丸口)に比べてブランドホテルの厚みが薄く、グローバルチェーンのロイヤルティ会員や、法人のトラベルポリシーでブランド指定がある出張者を取り込む余地が広がる。
対照的に、鎌倉市では東横イン大船駅西口が中央値の0.6倍の水準に入る。エリアの価格帯を上に伸ばすのではなく、下の裾野を広げる参入である。鎌倉・湘南は日帰り比率が高い観光地だが、宿泊単価が上がるほど日帰りに流れやすい。手が届きやすい価格帯が駅前に増えることは、滞在の長期化と周遊エリアの拡大につながる。同じ「新規供給」でも、上に伸ばす案件と裾野を広げる案件では、既存施設にとっての意味がまったく異なる。
大阪市本町のソラリア西鉄ホテル大阪本町は中央値の1.6倍。西日本鉄道の「SOLARIA」ブランドとしては10店舗目、大阪初進出となる202室で、Osaka Metro本町駅2番出口直結という立地に加え、公式リリースによればトリプル・クアッドの客室や、ミニキッチンと洗濯機を備えた中長期滞在向けの客室を用意している。大阪市中央区は2026年6月以降、推定成約ADRが¥9,300〜¥13,500のレンジで推移しており、そのなかで¥19,800前後の水準に立つ。連泊・多人数という、既存のシングル中心の客室構成では受けきれていなかった需要を取りにいく設計だ。
492室は「純増」ではない — リブランドと改装開業の見分け方
供給分析で最も誤読が起きやすいのが、リブランド・改装開業の扱いである。今回の18件のうち、客室数で最大のザ グランドキャッスル 那覇 首里城 by ヒューイットリゾート(333室)は、コアグローバルマネジメントの公式リリースによれば、現在のダブルツリーbyヒルトン那覇首里城の運営契約終了後にリノベーションを行い、2027年1月1日にリブランドオープンするものだ。建物も客室も既存のものであり、那覇市の客室ストックは1室も増えない。首里エリアの半径2km圏には44施設・5,169室があり、機械的に計算すれば+6.4%のインパクトになるが、実際の純増は0室である。
長野県小谷村のTHE ALPS HOTEL HAKUBA(159室)も同様で、Plan・Do・Seeが2026年4月1日から運営を開始した既存の白馬アルプスホテルを改装し、12月に新ブランドとして開業するという建て付けだ。白馬乗鞍スキー場に直結する立地で、温泉大浴場・サウナ・屋外プール・託児所・スキースクールを備え、客室は27〜100㎡。半径2km圏の既存ストックは28施設・1,156室と薄く、機械計算では+13.8%となるが、これも純増ではない。
この2件を差し引くと、18件3,054室のうち市場に積み増される純増分は2,562室となる。供給圧力を見積もる際、リストの合計室数をそのまま使うと、純増分(2,562室)に対して約2割過大に見積もることになる。
もっとも、リブランド・改装がマーケットに与える影響がゼロというわけではない。むしろ価格帯の移動という点では純増よりインパクトが大きい場合がある。THE ALPS HOTEL HAKUBAの開業後の推定成約ADRは2026年12月で約¥46,800、2027年1月で約¥56,400と、小谷村の中央値約¥14,400(N=9施設)を大きく上回る水準に設定されている。同じ159室が、これまでとは異なる価格帯・異なる客層に向けて売られることになる。白馬エリアはインバウンドのスキー需要が厚く、1泊あたりの支払い意思額が国内客より高い層を取り込める土壌がある。既存の宿にとっては、エリア全体の単価水準が引き上がることで、自館の価格改定を検討しやすくなる環境が整うという読み方ができる。
リブランドか新築かは、公式リリースの本文を読まないと判別できない。施設名が新しくなり、客室数だけが記録されると、データ上は「新規開業」として積み上がってしまう。供給の議論をするときは、少なくとも200室超の案件については建て付けを1件ずつ確認する価値がある。
その先のパイプライン — 2027年は13件3,195室、ただし下限値として読む
今回の4ヶ月の先を見るために、国土交通省「建築物動態統計調査」をもとにした建築計画データから、100室以上の宿泊施設プロジェクトを年別に集計した。2025年18件4,554室、2026年14件3,851室、2027年13件3,195室、2028年6件1,175室という分布になる。
出典:国土交通省「建築物動態統計調査」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(100室以上・重複除外、N=52件・2025〜2029年)
ここで注意が必要なのは、2028年以降の減少を「計画が枯れる」と読んではならない点だ。建築確認申請は通常、開業の1〜2年前に行われる。したがって2028年・2029年の件数は、現時点で申請が出ている案件だけを数えた下限値であり、今後の申請追加によって必ず増える。※調査時点での確認申請ベースであり、今後の申請追加により件数・客室数は増加する見込みで、現時点での確定パイプラインの下限値として参照されたい。
同じ構造は、本稿のリストそのものにも当てはまる。OTA掲載は開業の数ヶ月前から出るため、2027年2月以降の開業案件は現時点ではほとんど捕捉されていない。2027年1月に2件しか計上されていないのは、その月の開業が実際に2件しかないという意味ではなく、まだ掲載・公表が出そろっていないという意味である。
受け皿が増えることで取りにいける需要
供給増を既存施設の視点から見るとき、量の議論だけでは打ち手につながらない。今回の18件を整理すると、既存施設が新たに取りにいける需要が3つの層で見えてくる。
第一に、団体・グループ需要である。エリアの総客室数が薄いと、20室・30室をまとめて押さえる予約は物理的に受けられない。六ヶ所村の+78.7%、豊川の+44.1%のように既存ストックの半分以上を積み増す規模の追加が入ると、エリアとして団体を受けられるキャパシティラインを越える。これは新規施設だけの利益ではなく、周辺の既存施設にとっても、あふれた分の受け皿として送客を受ける機会になる。エリアで大型案件が立ち上がるタイミングは、自館の団体プランやグループ向け客室の整備を見直す好機といえる。
第二に、連泊・中長期滞在である。今回のリストには、中長期滞在を明示的に設計に織り込んだ案件が複数含まれる。たびのホテル青森六ヶ所村は全室に洗濯機・電子レンジ・2ドア冷蔵庫を備え、ソラリア西鉄ホテル大阪本町はミニキッチンと洗濯機を備えた客室を用意する。連泊需要は1泊あたりの単価こそ低めになるが、稼働の底を支え、清掃コストを平準化する。こうした案件がエリアに入ることで連泊の選択肢が可視化され、市場としての連泊需要そのものが顕在化しやすくなる。既存施設にとっては、3泊以上のプラン設計やランドリー導線の整備で取りにいける層が広がる。
第三に、インバウンドの上位価格帯である。箱根のHOTEL THE MITSUI HAKONE、白馬のTHE ALPS HOTEL HAKUBA、京都駅のコートヤード・バイ・マリオット京都駅はいずれも、エリア中央値の2.4〜4.3倍という水準で参入する。この帯は国内レジャー客だけでは埋まりにくく、外貨ベースで支払い意思額の高いインバウンド層が主たるターゲットになる。上限レンジが引き上がると、エリア全体の価格の基準点が動く。中位帯の施設にとっては、上に大きな価格の錨が置かれることで、自館の水準が「割高」ではなく「中位」として認識されやすくなる。価格改定を検討するうえでの追い風になる構図だ。
供給が増えること自体は、需要の総量が変わらなければ1施設あたりの取り分を薄める(新規供給と既存施設の単価の関係を4市場で実測した結果は新規開業はADRを下げない — 2026年夏4市場を参照)。しかし今回のリストを見る限り、増える客室の多くは既存の価格帯・既存の客層をそのまま奪いにいく設計にはなっていない。上の帯を新設するか、これまで受け皿がなかった滞在形態を拾いにいくか、あるいは受け皿の薄い地方拠点にキャパシティを置くかのいずれかである。エリア内の既存施設にとっては、自館がどの帯にいて、新規案件がどの帯に入ってくるのかを重ねて見ることが、次の一手を考える出発点になる。
⚠ 将来日程のADRに関する注意:本記事の2026年9月以降のADRは、調査時点でOTA等に公開されている販売価格をもとにした推定値であり、チェックイン日に近づくにつれて変動します。開業前の施設は販売プランの追加・改定が続く段階にあるため、現時点の水準がそのまま開業後の実績になるとは限りません。また小谷村(N=9施設)、鎌倉市(N=17施設)、八戸市(N=28施設)は対象施設数が限られるため、エリア中央値のぶれが大きい点にもご留意ください。
まとめ
メトロエンジンリサーチが把握する範囲で、2026年10月〜2027年1月に開業する100室以上の宿泊施設は18件・3,054室。公式リリースと1件ずつ照合した結果、うち492室(2件)は既存施設のリブランドと改装開業であり、市場への純増は2,562室である。開業日についても1件で公式との差異が見つかった。供給の総量を語るときは、リストの合計値をそのまま使わず、建て付けを確認する手順が要る。
半径2km圏の供給インパクトは+0.3%から+78.7%まで大きく開き、大都市圏の案件は厚い既存ストックのなかに収まる一方、地方拠点の案件はエリアの宿泊キャパシティを一段引き上げる規模になる。参入価格帯もエリア中央値の0.6倍から4.3倍まで分布し、上限レンジを新設する案件と、裾野を広げる案件が混在する。量と価格帯の両方を重ねて見ることで、はじめて「自館にとって何が起きるのか」が読める。
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参考資料・出典一覧
■ 市場データ
- メトロエンジンリサーチ — 施設・客室数(OTA掲載確認ベース)、推定成約ADR、半径2km圏の既存供給集計
- 国土交通省「建築物動態統計調査」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成 — 100室以上の宿泊施設建築計画
■ 各社公式リリース(開業日・客室数の照合)
- 三井不動産「『HOTEL THE MITSUI HAKONE』2026年12月15日開業」(2026年7月13日)
- 西日本鉄道「『ソラリア西鉄ホテル大阪本町』2026年12月18日開業」(2026年4月17日)
- 東海旅客鉄道「『コートヤード・バイ・マリオット京都駅』2026年11月16日開業」
- アパホテル「アパホテル〈渋谷駅前〉2026年12月24日(木)開業予定」
- コアグローバルマネジメント「『ザ グランドキャッスル 那覇 首里城 by ヒューイットリゾート』2027年1月1日リブランドオープン」
- Plan・Do・See「2026年12月オープン『THE ALPS HOTEL HAKUBA』の宿泊予約を開始」
- サンフロンティア不動産「たびのホテル青森六ヶ所村 宿泊予約受付開始」(2026年)
- ロイヤルホールディングス「『リッチモンドホテル八戸スクエア』2026年秋開業」
- スーパーホテル「スーパーホテル東広島八本松天然温泉」公式ページ
- アメイズ「HOTEL AZ 島根安来店」公式ページ(2027年1月15日オープン)
■ 報道
- トラベル Watch「コートヤード・バイ・マリオット京都駅 11月16日開業」
- 沖縄タイムス「『グランドキャッスル』名称が復活 那覇市首里で2027年1月に改装予定」
- 中国新聞デジタル「東広島市八本松東にスーパーホテル進出」
■ 公的統計
- 国土交通省「建築物動態統計調査」(建築着工・確認申請ベースの宿泊施設計画)
