トップ > 投資・開発 > 近鉄四日市駅前に152室ホテル、2028年春開業 — 1km圏2,182室に+7.0%、9月連休初日は8施設完売

近鉄四日市駅前に152室ホテル、2028年春開業 — 1km圏2,182室に+7.0%、9月連休初日は8施設完売

投稿日 : 2026.10.12

三重県

投資・開発

近鉄四日市駅前に152室ホテル、2028年春開業 — 1km圏2,182室に+7.0%、9月連休初日は8施設完売

三交不動産(津市)と三交インホテルズ(名古屋市)が近鉄四日市駅東側の中央通り沿いで建設する「四日市三交ビルANNEX」は、2026年4月9日(木)に起工し、地上13階のうち2〜13階に152室のホテル「(仮称)三交イン Grande 四日市」を入れて2028年春の開業を予定している。最上階の13階に大浴場・露天風呂・サウナ、12階にフロントと朝食ラウンジを置く構成は、同社が伊勢市駅前で展開するアッパーグレード「Grande」の四日市版である。駅から1km圏の既存供給は22軒2,182室で、152室はその7.0%にあたる。本稿では、この152室が入る価格帯が駅前でどれだけ空いているのかを、直近の推定成約ADRと9月連休の残室消化の速さから定量化し、あわせて中央通り再編とバスタ四日市が進む立地を用途地域・地価・浸水想定で評価する。

本記事における指標の定義

  • ADR(平均客室単価):各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。本稿の基準は確定月である2026年8月までとし、9月以降の見込み値は本文の基準にしていません。
  • 掲載価格:主要予約サイトに公開されている全プラン平均の販売価格(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)。ADRとは別の指標です。
  • OCC(稼働率):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。本稿では総客室の30%以上を主要予約サイトに掲載する施設で構成した固定コホート(四日市市ビジネスホテル11施設・1,307室)で算出しており、施設全体の実稼働率とは異なります。
  • LT(リードタイム):チェックイン日までの日数。LT0=当日。本稿はLT45〜LT1の観測のみを使い、45日より前に残室0が続く施設は「宿泊日の45日以上前から完売」と表記します。完売LT=LT45以内で残室数が初めて0室に到達したリードタイム(値が大きいほど早く完売)。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(施設・価格・在庫データ。いずれも調査時点=2026年10月4日の集計)、国土交通省 不動産情報ライブラリ(用途地域・地価公示・都道府県地価調査・浸水想定)、国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ将来推計人口)、総務省・経済産業省 経済センサス(就業)
Key Takeaways
  • — 152室・+7.0%:2028年春開業の(仮称)三交イン Grande 四日市は、近鉄四日市駅1km圏の既存22軒2,182室に対して+7.0%の供給になる。
  • — 9,000円以上は28.9%:推定成約ADRを算出できる18施設2,108室のうち上位帯は5施設610室、1.2万円以上は2施設183室(8.7%)だけ(2026年8月確定値)。
  • — 連休初日に8/8施設完売:2026年9月19日(土)は掲載枠30%以上の四日市市ビジネスホテル8施設がすべて残室0。平日の完売は12観測中11観測がLT13以内だった。
  • — 8月ADR −10.1%:市全体の推定成約ADRは2026年8月7,500円(前年同月比)。一方、定修期の3月は9,900円(前年比+45.9%)で年間の山になった。
  • — 利回り5%に約11,800円:総事業費50億円・通年OCC85%・GOP率45%なら客室収入だけで5%に届く推定成約ADR。3シナリオの利回りは3.3〜6.0%。

エグゼクティブサマリー — 上位帯は5施設610室、連休初日は8施設が完売

新規供給
152室
2028年春・13階建て2〜13階
駅1km圏の既存供給
2,182室
22軒・152室は+7.0%
四日市市 推定成約ADR
7,500円
2026年8月確定・N=25施設
9,000円以上の客室
28.9%
圏内18施設2,108室のうち610室
9/19(土)完売施設
8/8
四日市市ビジネス・掲載30%以上

結論から述べると、152室が狙う9,000円以上の価格帯は、駅1km圏で推定成約ADRを算出できる18施設2,108室のうち5施設610室(28.9%)にとどまり、そのうち1.2万円以上は2施設183室しかない。市全体の推定成約ADRは2026年8月が7,500円(前年同月比−10.1%)と、2026年3月に200室の大型施設が開業した年の夏は単価ではなく稼働で供給を吸収した形になっている。一方で、9月19日(土)の3連休初日は、主要予約サイトに客室の30%以上を掲載する四日市市のビジネスホテル8施設すべてが残室0に達し、連休中日の9月20日(日)は11施設1,307室のコホートがLT15で稼働率(推定)100%(2026年9月・同コホート集計)に到達した。平日は当日まで販売枠が残る施設が多いため、152室の収益は「連休・定修期の上位帯」と「平日の業務需要」の二層で組み立てることになる。

立地は商業地域・指定容積率600%の駅前街区で、2026年の地価公示は駅前地点が495,000円/㎡(前年比+6.9%)と4年で+22.5%上げてきた。中央通り再編とバスタ四日市(12バース)の整備が進み、近鉄四日市駅の1日乗降人員は40,407人(近鉄名古屋線で近鉄名古屋に次ぐ)である。ただし同じ街区は高潮浸水想定3m以上5m未満・液状化しやすい地形区分に入っており、フロントと浴場を12〜13階に置く商品設計は、立地の価値とこのハザードの両方を見た読み方ができる。

計画の概要 — 駅前ツインタワーの2棟目、総事業費約50億円

一次情報を整理しておく。YOUよっかいち(2026年3月26日・4月9日)と日本経済新聞(2026年4月9日)によると、四日市三交ビルANNEXは浜田町の四日市三交ビル(2025年8月7日開業・地上14階・三重県最大級の賃貸オフィス)の東隣に建つ地上13階・高さ64mの複合ビルで、敷地面積は約1,120㎡、1階が店舗、2〜13階がホテルである。ホテルは三交インホテルズが運営し、客室は152室・最小15㎡・バストイレ別、12階にフロント・ロビー・朝食ラウンジ、13階に大浴場・露天風呂・サウナ・湯上り処を置く。総事業費は約50億円、設計は石本建築事務所、施工は中野土建、2028年春開業予定である。既存の四日市三交ビルが「大楠」、ANNEXは「明るい若木」をモチーフにしたツインタワーとして中央通りのランドマークを狙う。

ブランドの位置づけも明確で、三交インホテルズは東京・静岡・愛知・三重・京都・大阪に15ホテル2,092室を展開し(同社公式サイト)、「Grande」は2023年7月に伊勢市駅前の別館で始めたアッパーグレードである。既存の三交イン四日市駅前(140室・2010年開業)が業務需要の受け皿であるのに対し、日経の報道では観光・レジャー・インバウンドをより快適に受け入れるホテルを目指すとしており、同じ駅前に価格帯の異なる2軒を並べる構えになる。

近鉄四日市駅1km圏の客室供給推移(各年末時点・2028年は計画値)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(主要予約サイト掲載ベース、中心 lat34.9667/lng136.6186・半径1km、2026年10月4日時点)
四日市市 推定成約ADRの月次推移(年別重ね描き・確定月のみ)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(全業態、N=22〜26施設、2024年7月〜2026年8月の確定月)

供給の側から見ると、駅1km圏は2016年の18軒1,680室から2019年に21軒1,995室へ増え、2024年3月の1軒閉館を挟んで2026年に22軒2,182室となった。2026年3月の200室開業が直近の増分であり、152室が加わる2028年には閉館がなければ2,334室、2016年比で+38.9%に達する。地方中核都市の駅前で10年に約650室の純増は小さくない。

単価の側は、この供給増を受け止める過程にある。四日市市の推定成約ADR(全業態、N=25施設)は2025年8月の8,300円から2026年8月は7,500円へ前年同月比−10.1%、ビジネスホテルに限っても8,600円から8,100円へ−5.2%で、200室の新規供給が入った年の夏は単価が前年を下回った。ただし同じ期間の6〜8月を見ると、6月6,300円、7月7,100円、8月7,500円と夏に向けて切り上がっており、9月の稼働率(推定)は後述のとおり92.5%まで上がっている。供給を稼働で吸収しながら、単価の回復は次の局面に持ち越したと読むのが妥当だろう。

背景として触れておくべきなのが、四日市コンビナートの定期修理(定修)である。2026年3月の推定成約ADRは市全体で9,900円、ビジネスホテルで10,200円と、前年3月(6,800円・7,200円)に対してそれぞれ+45.9%・+42.4%に跳ね、年間で最も高い月になった。定修年の作業員宿泊は駅前の低〜中価格帯を一斉に埋めるため、上位帯の施設にも波及して市全体の中央値を押し上げる。152室の事業計画でも、この「3月の山」と連休の山を年間収益のどこに置くかが単価設計の前提になる。定修期の単価の動きを四日市・市原・水島・大分の4拠点で比べた結果は、コンビナート定修年2026、四日市の宿単価3月+45.9%で詳しく分析している。

立地評価 — 商業地域600%・駅前地価+6.9%、高潮3〜5mの街区

立地は中央通りの南側、近鉄四日市駅から徒歩3分の街区である。国土交通省 不動産情報ライブラリの用途地域データでは、駅東側の中央通り沿いは商業地域・指定容積率600%・建蔽率80%で、敷地約1,120㎡に地上13階・152室を積む計画はこの容積の範囲で成立する。中央通りは四日市市が「ニワミチよっかいち」の名で歩行者中心の空間に再編しており、2025年12月20日に円形デッキ「よんまるテラス」が完成、2026年6月13日に近鉄四日市駅との連絡通路が開通した。駅東側では国直轄のバスタ四日市(路線・高速バス計12バース)の整備が進むが、運営事業者の指定が取り消され現時点では未定である(バスマガジン 2026年6月6日)。

駅1km圏の施設分布(円の大きさ=客室数、色=2026年8月の推定成約ADR帯)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(施設位置・客室数、N=18施設)。計画地は報道の所在地からのおおよその位置
計画地の概要
所在地:四日市市浜田町(四日市三交ビル東隣・中央通り南側)
アクセス:近鉄四日市駅から徒歩3分
敷地面積:約1,120㎡
規模:地上13階・高さ64m・152室
総事業費:約50億円(日本経済新聞)
近鉄四日市駅 1日乗降人員
40,407人
近鉄名古屋線で近鉄名古屋(94,632人)に次ぐ2位、津(24,129人)の1.7倍。調査日 2025年11月11日
出典:近畿日本鉄道「駅別乗降人員 名古屋線」
用途地域・建築規制
用途地域商業地域
指定容積率/建蔽率600%/80%
高潮浸水想定(想定最大規模)3m以上5m未満
液状化傾向液状化しやすい(三角州・海岸低地)
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(用途地域・高潮浸水想定区域・地形区分に基づく液状化の発生傾向図)
地価公示 駅前地点(諏訪栄町212番・商業地・容積率600%)の推移
2022年
404,000円/㎡
前年比+1.0%
2023年
416,000円/㎡
前年比+3.0%
2024年
436,000円/㎡
前年比+4.8%
2025年
463,000円/㎡
前年比+6.2%
2026年
495,000円/㎡
前年比+6.9%
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(地価公示・各年1月1日時点)

地価は駅前の1点に集中して上がっている。地価公示の駅前地点(諏訪栄町212番)は2022年の404,000円/㎡から2026年は495,000円/㎡へ4年で+22.5%、2026年単年で+6.9%と、計画地から400m圏の浜田町262番(85,900円/㎡・+2.8%)や鵜の森1丁目238番(123,000円/㎡・+4.2%)に比べて上昇率が際立つ。都道府県地価調査でも駅西側の安島1丁目124番が362,000円/㎡(2026年7月1日・前年比+5.5%)で、駅の両側で中心地点だけが年+5〜7%で動いている。中央通り再編とオフィスビルの開業が駅前の地価に織り込まれ始めた局面であり、三交不動産が自社保有地の上に2棟目を建てる構図は、この地価上昇を建設費ではなく資産価値の側で受け取る選択といえる。

ハザードは正面から見ておく必要がある。駅東側の街区は三重県の高潮浸水想定区域(想定最大規模・2021年)で浸水深3m以上5m未満、三滝川・天白川の洪水浸水想定(想定最大規模)で0.5m未満、津波浸水想定で0.3m以上1m未満に入り、地形区分は三角州・海岸低地で「液状化しやすい」とされる。四日市市は高潮浸水想定区域の客室比率が高い市で、既報では判定対象2,776室のうち2,512室が浸水深0.5m以上の区域内にあった。ANNEXの計画はフロント・ロビーを12階、浴場を13階に置き、低層の1階を店舗にあてる。設計意図は報道に明記されていないが、宿泊機能の中枢を高層に集める構成は、浸水深3m以上の区域で受変電設備や宿泊者動線を上階に置くという既報の整理と整合する。

計画地周辺の用途地域・ハザード評価
項目計画地周辺(駅東側・中央通り沿い)読み方
用途地域・容積率商業地域・600%/80%高層ホテルに適合
高潮浸水想定(想定最大規模)3m以上5m未満電気設備・動線を上階へ
洪水浸水想定(三滝川・天白川)0.5m未満止水板・引込口の止水で対応
津波浸水想定0.3m以上1m未満垂直避難の計画
液状化傾向(地形区分)三角州・海岸低地・液状化しやすい基礎・地盤改良の前提
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(用途地域、高潮浸水想定区域、洪水浸水想定区域、津波浸水想定、地形区分に基づく液状化の発生傾向図)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成

需要の土台となる居住・就業も見ておく。駅1km圏の居住人口は20,963人(2020年国勢調査ベース)で、2025年推計20,861人、2040年推計19,445人と2020年比で−7.2%(2025年比では−6.8%)、高齢比率は23.7%である。就業側は半径1kmに2,446事業所・従業者28,786人、うちオフィス系が22.4%で、客室1室あたり13.2人の従業者を抱える業務集積になる。居住人口が緩やかに減る一方で、駅前のオフィス供給(四日市三交ビル・延床約13,660㎡)が加わる構図であり、平日の業務需要はオフィス側の入居進捗に連動すると考えられる。

出典: 国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口・R6国政局推計)。居住人口(国勢調査ベース)であり滞在・通過人口ではない。就業データは総務省・経済産業省 経済センサス-活動調査(2021)

競合動向 — 駅1km圏18施設2,108室、9,000円以上は5施設

駅1km圏で稼働が確認でき、2026年8月の推定成約ADRを算出できるホテルは18施設2,108室である(圏内22軒2,182室には小規模な宿泊所・婚礼施設等を含む)。業態はビジネスホテルが16施設、シティホテルが2施設で、開業年は1974年から2026年まで幅広い。2000年以前の開業が9施設1,033室と施設数の半数を占め、直近では2022年12月の149室、2026年3月の200室が加わった。

駅1km圏の競合18施設(推定成約ADR帯は2026年8月確定値)
施設客室数業態開業年推定成約ADR帯(2026年8月)
都ホテル 四日市118シティ19911.2万円以上
ヒールイン四日市65ビジネス19801.2万円以上
天然温泉緋衣の湯ドーミーイン四日市200ビジネス20269,000〜12,000円
コンフォートホテル四日市149ビジネス20229,000〜12,000円
ホテルリブマックス四日市駅前78ビジネス20189,000〜12,000円
三交イン四日市駅前140ビジネス20107,000〜9,000円
スーパーホテル近鉄四日市駅前禁煙館80ビジネス20027,000〜9,000円
スーパーホテル 四日市・国道1号沿105ビジネス20107,000〜9,000円
東横INN近鉄四日市駅北口220ビジネス20177,000〜9,000円
四日市アーバンホテル141ビジネス19997,000〜9,000円
プラトンホテル四日市144シティ19797,000〜9,000円
四日市シティホテルアネックス152ビジネス19947,000〜9,000円
ホテルエコノ四日市144ビジネス19997,000円未満
レイアホテル四日市86ビジネス20147,000円未満
トウエイホテル73ビジネス19907,000円未満
ビジネスホテル西浦17ビジネス20197,000円未満
アポアホテル四日市88ビジネス19747,000円未満
ホテルキャッスルイン四日市108ビジネス19867,000円未満
合計2,10818施設
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(中心 lat34.9667/lng136.6186・半径1km、推定成約ADRは2026年8月確定値、2026年10月4日時点)

価格帯別に客室を数え直すと、152室が入る上位帯の薄さがはっきりする。

推定成約ADR帯別の施設数・客室構成(駅1km圏・2026年8月)
推定成約ADR帯(2026年8月)施設数客室数構成比特徴
1.2万円以上21838.7%シティホテル1施設と小規模施設1施設。大型の宿泊特化型はない
9,000〜12,000円342720.3%2022年・2026年開業の新しい大型施設と駅前の小規模施設
7,000〜9,000円798246.6%駅前の宿泊特化型チェーンが集中する中核帯。市のビジネスホテル中央値8,100円もここ
7,000円未満651624.5%開業20年超の施設が中心。定修期の受け皿
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(N=18施設2,108室)

9,000円以上は5施設610室で構成比28.9%、1.2万円以上に絞ると2施設183室(8.7%)しかない。152室が9,000円以上の帯に入れば、同帯は762室・2,260室中33.7%に広がる。開業後に同帯が3分の1を占めるかどうかは、既存の上位帯がすでに連休でどこまで売れているかで決まる。次章ではその消化速度を見る。

ポジショニング — 連休3日間の平均完売LTは11〜43日、平日はLT13以内に集中

まず市全体の予約の入り方を見る。四日市市のビジネスホテルで総客室の30%以上を主要予約サイトに掲載する11施設・1,307室のコホートで、宿泊日ごとの稼働率(推定)をLT45からLT1まで追った。

四日市市 ビジネスホテルのブッキングカーブ(稼働率・推定、対象11施設/客室1,307室・主要予約サイト掲載ベース)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(LT45〜LT1、2026年9月16日・19日・20日・30日宿泊分)

連休初日の9月19日(土)はLT45の時点で稼働率(推定)67.1%、LT30で76.2%、LT14で92.2%、LT7で97.9%と早い段階から積み上がり、連休中日の9月20日(日)はLT30で85.4%、LT20で99.5%、LT15で100%に達した。これに対して平日の9月16日(水)はLT30で59.9%、LT14で78.8%、LT7で87.3%、9月30日(水)もLT14で84.0%、LT7で92.2%と、最後の1週間で埋まる形である。平日も最終的にはLT1で99%前後まで到達するものの、連休は2週間前、平日は1週間前という差が、価格を上げられる期間の長さの差になる。月間でも9月の平均稼働率(推定)は92.5%(8月85.2%、同コホート)と高い水準にあり、駅前のビジネスホテルは需要が供給に追いついている状態といえる。

次に施設単位で、9月19日(土)に完売を観測した四日市市の8施設について、同じ週の宿泊日ごとに完売LT(LT45以内で残室が初めて0になったリードタイム)を並べた。三重県のビジネスホテル189施設のうち在庫データがあるのは92施設、掲載枠30%以上の条件を通過したのは45施設で、そのうち四日市市の8施設すべてが9月19日に残室0を記録している。N=8と小さい点、および個別施設の残室は主要予約サイトの公開枠の中での残数であって施設全体の満室を意味しない点は、あらかじめ断っておく。

四日市市ビジネスホテル8施設の宿泊日別完売LT(2026年9月)
施設(匿名)客室数ADR帯9/16(水)9/19(土)9/20(日)9/21(月祝)9/22(火)9/23(水祝)9/30(水)
施設A2001万円台残7室LT16LT21LT18残12室残43室残8室
施設B1491万円台LT845日以上前45日以上前LT40LT41残17室残1室
施設C789千円台LT1LT1LT18LT13残22室残25室残4室
施設D1408千円台LT1LT7LT20LT18LT1残6室LT4
施設E808千円台LT1LT12LT28LT18残10室残4室LT20
施設F1058千円台LT9LT12LT28LT19残12室LT1LT13
施設G1446千円台LT2LT18LT23LT25LT5残3室LT12
施設H1085千円台LT2LT22LT33LT26LT12残8室LT5
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング。三重県ビジネスホテル189施設中、在庫データあり92施設・掲載枠30%以上45施設のうち四日市市の8施設。「残N室」はLT1時点の残室。ADR帯は2026年8月の推定成約ADR

表の読み方は二つある。第一に、連休3日間(9月19〜21日)の完売LTは施設によって1日から45日以上まで幅があり、単価の高い施設ほど早く完売するという単純な関係にはなっていない。1万円台の施設Bは9月19日・20日とも45日以上前から残室0が続き(9月19日はLT25に24室の在庫戻りを観測しLT4で再完売)、5千円台の施設Hも連休3日間はLT22〜33で完売した。完売の早さは単価よりも、主要予約サイトに出している枠の大きさと販売方針で決まっている。第二に、平日の9月16日(水)と9月30日(水)は、完売した12観測のうち11観測がLT13以内(最長でもLT20)と直前に集中し、200室の施設Aや1万円台の施設Bを含む複数の施設で当日まで残室があった。大型施設ほど平日にラストミニッツの受け皿として販売枠を残しており、連休と平日で市場の性格が切り替わる。

推定成約ADR × 連休3日間の平均完売LT(円の大きさ=客室数、N=8施設)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング。X軸は2026年8月の推定成約ADR、Y軸は9月19〜21日の完売LT平均(45日以上前は45として計算)。青の破線枠は152室の想定帯(編集部)

散布図に落とすと、9,000円以上の帯は施設A・B・Cの3点しかなく、しかも完売LTは10.7日から43.3日まで散っている。ここに152室の想定帯(1万〜1.3万円)を重ねると、同じ帯で連休に早く完売している施設Bのような実績が1点あり、9,000円台の施設Cは連休でも平均10.7日と直前型である。つまり上位帯には「早く売り切る施設」と「直前まで高値で待つ施設」が共存しており、152室がどちらの売り方を選ぶかで必要なADRの実現可能性が変わる。

掲載価格の動きも補助線になる。連休初日の9月19日(土)の掲載価格(全プラン平均・税込)は1万円台の施設Bで43,600円、施設Aで40,200円、9千円台の施設Cで51,700円と、平日の9月16日(水)(それぞれ18,000円・23,800円・17,400円)の1.7〜3.0倍で推移したうえで残室0に達した。連休の上位帯は4〜5万円の掲載水準でも売り切れる需要があり、ここが152室の単価設計で最も厚い収益源になる。

密集 7,000〜9,000円 × 80〜220室

7施設982室(46.6%)。駅前の宿泊特化型チェーンが並び、平日は当日〜LT13で埋まる業務需要の中核帯。152室が同じ帯に入ると既存と正面から重なる。

空白① 1万〜1.3万円 × 100〜200室の宿泊特化型

現状は3施設427室。連休は4〜5万円の掲載水準で完売する実績があり、大浴場・サウナ・バストイレ別の商品設計はこの帯の上端を狙える。

空白② 1.2万円以上 × 大型

2施設183室のみで、大型の宿泊特化型は存在しない。定修期(3月)と連休に限って到達可能な帯で、通年の基準単価には置きにくい。

大浴場・露天風呂・サウナを最上階に置く商品設計は、この帯への上乗せを支える根拠になる。既報のビジネスホテルの大浴場と単価差の分析(4,925施設)では、同一市区町村・規模・築年代・ブランドをそろえたうえで、温泉とサウナがそろう温浴フル型の大浴場は+9.3%(95%区間+6.5%〜+12.1%)、ビジネスホテルの中央値が7,000〜9,000円の中位都市に限ると+14.8%の差があった。四日市市のビジネスホテル中央値は8,100円で、この中位都市の条件に当てはまる。8,100円に+14.8%を乗せると約9,300円、さらに最小15㎡・バストイレ別という客室仕様の上乗せが加わると、1万円前後が商品設計から導ける通年の基準単価になる。1.2万円以上は連休・定修期の上振れ帯として別に置くのが現実的だろう。

開発シナリオ試算 — 総事業費50億円で利回り5%に必要な単価

報道の総事業費約50億円を所与として、152室の客室収入だけで投資利回り(GOP÷総事業費)がどこまで届くかを簡易に試算した。1室あたりの事業費は約3,300万円で、1階店舗と浴場階を含む数字である。GOP率は45%を置いた。インヴィンシブル投資法人が開示する運営91物件のGOP実績は38.9%(2024年12月期)、宿泊特化型の目安は50〜60%とされるため、大浴場を抱える宿泊特化型の中間値として45%を採用している。店舗賃料と朝食・温浴の付帯収入、土地の自社保有分は含めていないため、実際の事業採算はこの表より上に出る。

推定成約ADR×通年OCC別の客室売上と利回り(GOP率45%・総事業費50億円)
推定成約ADR(税抜相当)客室売上(通年OCC80%)利回り客室売上(通年OCC85%)利回り客室売上(通年OCC90%)利回り
9,000円399百万円3.6%424百万円3.8%449百万円4.0%
10,500円 想定帯466百万円4.2%495百万円4.5%524百万円4.7%
12,000円 想定帯533百万円4.8%566百万円5.1%599百万円5.4%
13,500円599百万円5.4%637百万円5.7%674百万円6.1%
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算。152室×365日、GOP率45%、総事業費50億円(日本経済新聞報道値)。店舗賃料・付帯収入・土地は含まない簡易試算

利回り5.0%を客室収入だけで達成するには、通年OCC85%の前提で推定成約ADR約11,800円が必要になり、GOP率を40%に置くと約13,300円まで上がる。これは駅前の上位帯(1万〜1.2万円)の上端から、シティホテル1施設だけが到達している1.2万円以上の帯にかかる水準である。逆に、商品設計から導いた通年基準の1万円前後では利回りが4%台前半にとどまり、連休・定修期の上振れと店舗・付帯収入で埋める構造になる。建設費の側から照合すると、国土交通省 建築着工統計ベースの2025年実績(S造240.5万円/坪)に1室あたり延床40㎡(共用部込み)を掛けた152室の建築費は約44億円で、浴場階と2027〜28年の工事費上昇を織り込めば総事業費50億円は妥当な範囲にある。建設費が上がり続ける局面では、同じ帯に後から参入する供給が抑えられるという意味で、既存上位帯との競合緩和も織り込める。

3シナリオと、利回り5%に必要な単価の幅

上の表はGOP率を45%に固定している。単価・稼働・GOP率の三つを同時に振ると、客室収入だけの利回りは次の幅に収まる。悲観は大浴場の上乗せだけを見込んだ約9,300円(ビジネスホテル中央値8,100円×1.148)に通年OCC80%・GOP率40%、中位は想定帯の下端10,500円に通年OCC85%・GOP率45%、楽観は12,000円に通年OCC90%・GOP率50%(宿泊特化型の目安の下限)を置いた。

3シナリオ別の客室収入・GOP・利回り(152室×365日・総事業費50億円)
シナリオ推定成約ADR通年OCCGOP率客室売上GOP利回り
悲観9,300円80%40%413百万円165百万円3.3%
中位10,500円85%45%495百万円223百万円4.5%
楽観12,000円90%50%599百万円300百万円6.0%
利回り5%に必要な推定成約ADR(通年OCC×GOP率、客室収入のみ)
GOP率通年OCC80%通年OCC85%通年OCC90%
40%約14,100円約13,300円約12,500円
45%約12,500円約11,800円約11,100円
50%約11,300円約10,600円約10,000円
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算。152室×365日、総事業費50億円(日本経済新聞報道値)、利回り=GOP÷総事業費。店舗賃料・付帯収入・土地は含まない

中位でも4.5%と5%には届かず、悲観では3.3%まで下がる。必要単価はGOP率が5pt動くごとに約1,100〜1,600円動き、通年OCC85%なら40%で約13,300円、50%で約10,600円になる。つまり5%到達の可否は単価よりも先に、大浴場・サウナを抱えたままGOP率を50%近くまで引き上げられる運営体制かどうかで分かれる。楽観の6.0%は、連休と定修期の上振れが通年平均を1.2万円まで押し上げ、かつ平日の稼働を90%で固めた場合の上限と読むのが妥当だろう。

以上は報道値と業界ベンチマークに基づく簡易試算であり、実際の投資判断には詳細なフィージビリティ・スタディが必要である。

投資判断の整理 — 地方業務都市の上位帯に入る条件

四日市は、県都の津より乗降人員が1.7倍多く、コンビナートの定修と駅前オフィスの供給で業務需要が厚い一方、宿泊特化型の上位帯が薄い。152室の計画は、この帯を「大浴場・サウナ・バストイレ別」という商品設計で埋めにいく案件であり、同じ構図の地方中核都市(県都を上回る第2都市や豊橋・豊川の327室)を検討するデベロッパー・鉄道系不動産・地銀にとっての参照例になる。リスク要因と機会要因を並べる。

152室計画のリスク要因・機会要因
項目内容評価
需要(連休・定修)9/19(土)は8施設完売、9/20(日)はLT15で稼働率(推定)100%(2026年9月集計)。3月は推定成約ADR+45.9%上位帯の上振れ余地
需要(平日)完売はLT1〜13に集中し、当日まで残室のある施設が複数。平日の基準単価は7,000〜9,000円帯が中心通年ADRは1万円前後が現実的
供給2026年に+200室、2028年に+152室で1km圏は2,334室(2016年比+38.9%)。2026年8月のADRは前年比−10.1%吸収には稼働先行の期間が要る
立地商業地域600%、駅前地価+6.9%、中央通り再編・バスタ四日市(運営事業者は未定)駅前集中の恩恵
ハザード高潮3〜5m・液状化しやすい地形。フロント・浴場を12〜13階に配置電気設備の上階配置と地盤対策
採算総事業費50億円、利回り5%には推定成約ADR約1.2万円(通年OCC85%・GOP45%)。店舗・付帯収入で補完単価と付帯の二本立て
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング、国土交通省 不動産情報ライブラリ、近畿日本鉄道、YOUよっかいち、日本経済新聞よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成

開業までの2年半で確認したいのは三点である。一つ目は、2026年3月に開業した200室の消化が2027年の夏にどこまで単価を戻すか。2026年8月の−10.1%が翌年に反転していれば、152室はより高い基準単価で入れる。二つ目は、バスタ四日市の運営事業者と供用時期で、高速バスの発着が駅東側に集約されれば、名古屋・大阪方面からのレジャー・インバウンドの動線が計画地の目の前に通る。三つ目は定修の周期で、2026年が定修年なら2028〜29年の次の山が開業直後の収益を左右する。

まとめ

近鉄四日市駅前の152室は、駅1km圏2,182室に+7.0%の供給であると同時に、現状5施設610室しかない9,000円以上の帯に大型の宿泊特化型を初めて持ち込む計画である。9月の3連休は掲載枠30%以上の8施設すべてが初日に完売し、上位帯でも4〜5万円の掲載水準で売り切れた一方、平日は当日まで販売枠が残る施設が多く、2026年8月の市内ADRは前年同月比−10.1%と供給増を稼働で吸収している途中にある。商品設計から導ける通年の基準単価は1万円前後、総事業費50億円で利回り5%に届く単価は約1.2万円で、その差を連休・定修期の上振れと店舗・付帯収入で埋める構造になる。立地は商業地域600%・駅前地価+6.9%の中心街区で、高潮3〜5mのハザードに対してフロントと浴場を12〜13階に置く設計を選んだ。地方の業務都市で上位帯を検討する事業者にとって、「平日の業務需要で稼働を固め、連休と定修で単価を取る」二層の収益設計を数字で確認できる案件といえる。

あわせて読みたい

参考資料・出典一覧

■ データソース

施設・価格・在庫はメトロエンジンリサーチ&コンサルティングの集計(主要予約サイト掲載ベース、2026年10月4日時点)。駅1km圏は近鉄四日市駅(lat34.9667/lng136.6186)を中心とする半径1km、推定成約ADRは確定月(2024年7月〜2026年8月)のみを使用。稼働率(推定)とブッキングカーブは総客室の30%以上を掲載する四日市市ビジネスホテル11施設1,307室の固定コホート(LT45〜LT1)。用途地域・地価・浸水想定は国土交通省 不動産情報ライブラリ、計画概要は日本経済新聞・YOUよっかいちの報道による。

■ 試算前提

152室×365日、総事業費約50億円(報道値)、利回り=GOP÷総事業費。基本ケースはGOP率45%、3シナリオでは悲観40%・楽観50%、通年OCCは80〜90%。店舗賃料・朝食・温浴の付帯収入と土地の自社保有分は含めない。通年基準単価の起点は四日市市ビジネスホテル中央値8,100円に温浴フル型大浴場の差+14.8%(既報)を乗せた約9,300円。建築費はS造240.5万円/坪(2025年建築着工統計)×1室あたり延床40㎡で照合した。

■ 限界・留意点

推定成約ADRはOTA公開価格からの推定値で、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なる。完売観測はN=8と小さく、残室は主要予約サイトの公開枠内の数値で施設全体の満室を意味しない。計画地の位置と階構成は報道ベースの概略。試算は客室収入のみの簡易試算で、開業時(2028年)の工事費・人件費・金利の変動や、賃貸借・運営委託といった運営形態の違いは反映していない。

■ 市場データ

  • メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — 駅1km圏の客室供給時系列(主要予約サイト掲載ベース)、四日市市の推定成約ADR(全業態N=25施設・ビジネスホテルN=18施設、2024年7月〜2026年8月確定月)、施設別推定成約ADR(N=18施設)、ブッキングカーブ・稼働率(推定)(四日市市ビジネスホテル11施設1,307室)、施設別残室推移(三重県ビジネスホテル189施設中、在庫データあり92施設・掲載枠30%以上45施設)、掲載価格(2026年9月14〜23日宿泊分)。いずれも2026年10月4日時点

■ 政府統計・公的データ

■ REIT・業界レポート

■ ニュース・プレスリリース

関連記事