北海道が2021年7月19日に公表した太平洋沿岸の津波浸水想定(日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震モデル)を、国土交通省 不動産情報ライブラリの公開データで釧路駅から半径2kmの宿泊施設に重ねると、34施設・2,752室のうち31施設・2,740室(客室ベースで99.6%)が浸水想定区域内に位置していた。浸水深5m以上10m未満の帯だけで24施設・2,645室(96.1%)を占め、40室以上の18施設はすべてこの帯に立つ。一方で釧路市の推定成約ADRは8月に12,900円と3月の1.8倍まで上がり、7〜9月の3か月で年間客室売上の約3分の1を稼ぐ港町でもある。本稿では、浸水深帯別の客室分布と夏に偏る需要の季節性を確認したうえで、建替え・新築の際に積み増す受変電設備の上層化・非常用電源・避難スペースのCapexを1室あたりで試算し、中心市街地の開発余地を読み解く。
本記事における指標の定義
- ADR(平均客室単価):各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。
- OCC(稼働率):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります。本稿では釧路市全域(阿寒湖温泉を含む)の値を用いています。
- ブッキングカーブ・LT:ブッキングカーブ=チェックイン日に向けたOTA残室数の推移。LT(リードタイム)=チェックイン日までの日数。本稿ではLT45からLT1までを用いています。
- 津波浸水想定・浸水深帯:津波防災地域づくりに関する法律に基づき北海道が設定した津波浸水想定(最大クラスの津波を想定した行政公表の想定)を、国土交通省 不動産情報ライブラリ(国土数値情報「津波浸水想定」)から取得。浸水深は同データの区分(1m以上3m未満、3m以上5m未満、5m以上10m未満 等)に従います。
- 区域内の判定:各施設の登録座標(1点)が浸水想定区域のポリゴンに含まれるかで判定。敷地の一部のみが区域にかかるケースや、建物の階数・地盤高は考慮していません。
- 集計対象:釧路駅(北緯42.9906度・東経144.3821度)から半径2km。メトロエンジンリサーチの施設データで閉館登録がなく、客室数1室以上、開業年の登録がある宿泊施設(レジャーホテルを除く)。リブランドで名称が変わった施設は同一建物として1施設に数えています。2026年時点で34施設・2,752室、うち2026年8〜10月宿泊分の販売価格を確認できたのは22施設・2,561室。
- データ出典:メトロエンジンリサーチ(施設・価格・在庫)、国土交通省 不動産情報ライブラリ(津波浸水想定・洪水浸水想定区域・用途地域・防火地域・地価・指定緊急避難場所)、北海道・釧路市の公表資料
| — 99.6%:釧路駅2km圏の34施設・2,752室のうち、北海道設定の津波浸水想定区域内は31施設・2,740室。区域外は台地側の3施設・12室のみ。 |
| — 2,645室:浸水深5m以上10m未満の帯に客室の96.1%が集まる。40室以上の18施設・2,584室はすべてこの帯にある。 |
| — 53か所中6か所:圏内の津波の指定緊急避難場所のうち6か所はホテルの建物(客室計1,014室)。中高層ホテルが垂直避難の受け皿を担う。 |
| — 12,900円 対 7,200円:釧路市の推定成約ADRは8月が3月の1.8倍。稼働率が同じなら7〜9月で年間客室売上の33.4%を稼ぐ。 |
| — −294室:2km圏の客室は2017年の3,046室から9年で9.7%減。40室以上の開業登録は2012年が最後で、建替え・新規開発の受け皿がある。 |
| — 1室48万〜111万円:150室の新築モデルで受変電の上層化・非常用発電機・上層の避難スペースを積み増す費用(建設費の3.4〜7.9%)。ADR300〜700円の上乗せで相殺できる規模。 |
要点 — 区域の外に建てる余地は小さく、論点は建物の造り方に移る
結論から述べる。第一に、釧路駅2km圏では「浸水想定区域の外に建てる」という選択肢がほとんど残っていない。区域外にあるのは幣舞橋の南側の台地(浦見地区)に立つ3施設・12室だけで、駅前・北大通・幣舞橋周辺の商業地はほぼ全域が浸水深5m以上10m未満の帯に入る。白浜温泉では新しい供給が段丘の上へ移っていたが、釧路の中心市街地にはその受け皿となる高台が徒歩圏に乏しく、論点は立地の選別から建物の造り方へ移る。
第二に、その建物はすでに地域の避難先として機能している。圏内にある津波の指定緊急避難場所53か所のうち6か所はホテルの建物で、中高層のホテルは防災インフラの一部を担ってきた。第三に、設備の積み増しは事業計画に織り込める規模に収まる。150室の新築モデルでは、受変電設備の上層化・非常用発電機・上層の避難スペースを合わせて1室あたり48万〜111万円、建設費の3.4〜7.9%と試算された。ADR9,000円のシナリオではGOP利回りへの影響が0.2〜0.5ポイントにとどまり、ADRに換算すると300〜700円の上乗せで相殺できる水準といえる。以下、公表値、集計結果、需要、供給、試算の順に確認していく。
千島海溝モデルの公表値 — 釧路市(釧路地区)は浸水6,945ha、海岸線の最大津波水位5.6〜20.3m
まずは前提となる公表値を整理する。北海道は、国が2020年4月に公表した「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震モデル」を受けて、最大クラスの津波を対象とする太平洋沿岸の津波浸水想定を2021年7月19日に公表した(釧路市ホームページ)。北海道の解説資料によると、釧路市(釧路地区)の浸水想定面積は6,945ha、海岸線における最大津波水位は標高(T.P.)で5.6〜20.3mとされる。津波の影響開始(海面変動±20cm)までの時間は5〜18分、第一波の到達時間は28〜34分と示された。釧路市のうち音別地区は別掲で、浸水想定面積2,294ha、最大津波水位12.5〜18.0mとなっている。隣接する釧路町(最大津波水位4.8〜26.5m)とは別の数値であり、本稿が扱うのは釧路市(釧路地区)の中心市街地に限られる。
市の計画でも位置づけは明確だ。釧路市強靱化計画(2023年3月)によれば、釧路市は2022年3月に北海道から津波災害警戒区域の指定を受け、基準水位も公表された。同計画は、釧路沖地震と同等規模の地震が市内で発生する可能性を35年に1度と推定し、津波災害時の一時避難場所等を113か所(2021年度)、収容可能人数を138,808人と整理している。民間建物の活用や、平時の利用を兼ねた避難機能の整備を進める方針も書き込まれており、ホテルの建物が果たす役割は市の計画と重なる。なお、津波浸水想定は最大クラスの津波を前提とした想定であって、発生の時期や頻度、個別の建物の被害を示すものではない点に留意したい。
集計の対象と方法 — 2km圏の34施設・2,752室を同じ定義で数え直す
対象は釧路駅を中心とする半径2kmで、駅前、北大通、末広町の繁華街、幣舞橋周辺、釧路川河口の両岸がこの圏内に入る。メトロエンジンリサーチの施設データから、閉館登録がなく、客室数が1室以上で、開業年の登録がある宿泊施設(レジャーホテルを除く)を抽出し、リブランドで名称が変わった施設は同一建物として1施設に数えた。たとえば2024年4月にリブランドオープンしたスマイルホテル釧路(108室)は既存建物の名称変更にあたるため、新規供給には含めていない。この定義による2026年時点のストックは34施設・2,752室で、うち2026年8〜10月宿泊分の販売価格を確認できたのは22施設・2,561室(客室の93.1%)だった。
津波浸水想定は不動産情報ライブラリから地図タイル単位(ズームレベル15・36タイル)で取得し、浸水想定ポリゴン3,261件と各施設の登録座標を重ねている。複数の区分に該当する場合は深い方を採用した。白浜温泉の集計と同じ手順を用いたので、両地域の結果は同じ物差しで比べられる。
浸水深帯別の集計 — 2,645室(96.1%)が5m以上10m未満の帯に立つ
| 浸水深帯(津波浸水想定) | 施設数 | 客室数 | 客室構成比 | うち販売確認 施設 | うち販売確認 客室 |
|---|---|---|---|---|---|
| 区域外 | 3 | 12 | 0.4% | 1 | 1 |
| 1m以上 3m未満 | 4 | 55 | 2.0% | 1 | 24 |
| 3m以上 5m未満 | 3 | 40 | 1.5% | 0 | 0 |
| 5m以上 10m未満 | 24 | 2,645 | 96.1% | 20 | 2,536 |
| 区域内 計 | 31 | 2,740 | 99.6% | 21 | 2,560 |
| 合計 | 34 | 2,752 | 100.0% | 22 | 2,561 |
浸水深帯別に見ると、5m以上10m未満の帯に24施設・2,645室が集まり、対象客室の96.1%を占める。3m以上5m未満は3施設・40室、1m以上3m未満は4施設・55室で、区域外は3施設・12室にとどまった。販売を確認できた22施設・2,561室に絞ると、5m以上の帯の比率は99.0%(20施設・2,536室)まで上がる。白浜温泉では区域内が36.2%、5m以上の帯が24.9%だったのに対し、釧路の中心市街地は客室のほぼ全量が深い帯に入っている。釧路川河口の砂州の上に市街地が広がり、駅から幣舞橋まで標高差がほとんどない地形が、そのまま数字に表れた形だ。
| 客室規模\浸水深帯 | 区域外 | 1〜3m | 3〜5m | 5〜10m | 計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 150室以上 | — | — | — | 8施設・1,756室 | 8施設・1,756室 |
| 40〜149室 | — | — | — | 10施設・828室 | 10施設・828室 |
| 10〜39室 | 1施設・10室 | 2施設・39室 | 3施設・40室 | 2施設・39室 | 8施設・128室 |
| 1〜9室 | 2施設・2室 | 2施設・16室 | — | 4施設・22室 | 8施設・40室 |
| 合計 | 3施設・12室 | 4施設・55室 | 3施設・40室 | 24施設・2,645室 | 34施設・2,752室 |
客室規模で分けても傾向は変わらない。40室以上の18施設・2,584室はすべて5m以上10m未満の帯にあり、区域外や浅い帯に位置するのは39室以下の小規模宿に限られる。つまり、中心市街地で一定規模のホテルを保有する、あるいは建てるという判断は、5m以上の想定浸水深を設計条件として受け入れることとほぼ同義になる。
地図で見る — 駅前と幣舞橋のたもと、2つの集積がともに5m以上の帯にある
下の地図は、津波浸水想定を約100mメッシュに区切って浸水深帯で塗り分け、集計対象の34施設(円の大きさは客室規模)と、津波に対応する指定緊急避難場所(灰色の菱形)を重ねたものである。濃い色の帯は駅の周辺から北大通、末広町、釧路川河口にかけて連続し、陸上で色のない区域外は幣舞橋を渡った南から東にかけての台地にほぼ限られる。ホテルの集積は駅前と北大通の南端(幣舞橋のたもと)の2か所に分かれるが、どちらも5m以上の帯の中に収まっている。
| 中心 | JR釧路駅 |
| 集計範囲 | 半径2km |
| 宿泊施設 | 34施設・2,752室 |
| うち40室以上 | 18施設・2,584室 |
| 津波の指定緊急避難場所 | 53か所 |
| 2017年 | 56,500円/㎡ |
| 2021年 | 53,500円/㎡ |
| 2026年 | 53,000円/㎡(前年比0.0%) |
| 商業地域(容積率600%) | 1,608室 |
| 商業地域(容積率400%) | 973室 |
| 防火地域 | 12施設・1,608室 |
| 準防火地域 | 16施設・1,047室 |
ホテルが避難先を担う — 指定緊急避難場所53か所のうち6か所はホテルの建物
半径2km内で津波に対応する指定緊急避難場所は53か所ある。このうち46か所は浸水想定区域の内側にあり、公営住宅や学校、庁舎の上層階を指定した垂直避難の拠点が中心となっている。注目したいのは、53か所のうち6か所がホテルの建物である点だ。
| 施設 | 登録されている階 | 客室数 |
|---|---|---|
| 釧路ロイヤルイン | 10階〜11階 | 153室 |
| ホテルクラウンヒルズ釧路 | 10階 | 150室 |
| ラスティングホテル | 3階〜8階 | 84室 |
| 釧路プリンスホテル | 3階・5階 | 400室 |
| ANAクラウンプラザホテル釧路 | 3階・5階 | 179室 |
| 釧路センチュリーキャッスルホテル | 3階 | 48室 |
| 6棟 計 | — | 1,014室 |
6棟の客室数は合計1,014室で、集計対象の客室の36.8%にあたる。登録されている階は3階から11階までと幅があり、中高層のホテルが上層階を地域に開く形で避難体制を支えていることがわかる。区域外にある最も近い指定緊急避難場所でも駅から約1.4km離れている中心市街地では、徒歩圏にある中高層建物の上層階が現実的な避難先になりやすい。ホテルにとっては、上層階の構造と非常用電源を維持することが、宿泊客の安全と地域での役割の両方につながる。
用途地域・地価・ほかのハザード — 客室の94%が商業地域、駅前の地価は1㎡5.3万円
| 用途地域(容積率) | 施設数 | 客室数 | 客室構成比 | 防火指定 |
|---|---|---|---|---|
| 商業地域(600%) | 12 | 1,608 | 58.4% | 防火地域 |
| 商業地域(400%) | 10 | 973 | 35.4% | 準防火地域 |
| 近隣商業地域(200〜300%) | 6 | 74 | 2.7% | 準防火地域 |
| 住居系・準住居・工業地域(200%) | 6 | 97 | 3.5% | 指定なし |
| 合計 | 34 | 2,752 | 100.0% | — |
用途地域では、容積率600%の商業地域に12施設・1,608室、同400%の商業地域に10施設・973室があり、商業地域だけで客室の93.8%を占める。600%の区域は防火地域、400%の区域は準防火地域の指定と重なり、耐火性能の高い建物が前提となる。容積率に余裕があることは、低層階を駐車場やロビーに充てて客室を上層に積む設計を取りやすい条件といえる。
地価はどうか。駅前の商業地(北大通13丁目・地価公示)は2026年に1㎡あたり53,000円で、2017年の56,500円から6.2%下がったのち、2023年以降は横ばいが続いている。繁華街に近い栄町6丁目は44,400円、区域外の高台にある浦見3丁目の住宅地(都道府県地価調査)は18,700円で9年間動いていない。浸水想定の公表(2021年)をはさんでも駅前商業地の変動は年1%未満にとどまり、中心市街地の立地価値は市場で保たれていると読める。150室規模のホテルに1,000㎡の敷地を充てても土地代は5,300万円、1室あたり35万円で、総投資に占める比率は2%台にすぎない。釧路の中心市街地で事業性を決めるのは、土地ではなく建設費と単価だといえる。地価と単価の関係を借地・取得の両面から比べた試算はホテル用地は借地か取得かに詳しい。
ほかのハザードも同じ低地に重なる。洪水浸水想定区域(想定最大規模)には26施設・2,293室(83.3%)が入り、地形区分に基づく液状化の発生傾向図では31施設・2,740室が「やや液状化しやすい」以上の区分にあたる。津波・洪水・液状化の3つが同じ範囲に重なるため、基礎形式や設備の設置階は3つのハザードを一度に検討するのが効率的だろう。液状化と単価の関係は新潟市中央区の集計でも確認している。
需要の季節性 — 8月12,900円は3月の1.8倍、7〜9月で年間客室売上の33%
次に需要の側を見る。釧路市の推定成約ADRは、2025年10月〜2026年9月の12か月平均で8,900円だった(対象29〜31施設)。月別では2026年8月の12,900円が最も高く、3月の7,200円が最も低い。8月は3月の1.8倍にあたり、前年同月比でも+7.3%と伸びた。7月は前年同月比−1.0%、9月は同+2.4%で、12か月平均は前年同期間(8,500円)を4.4%上回っている。稼働率が年間を通じて同じと仮定すると、7〜9月の92日間(年間日数の25.2%)で年間客室売上の33.4%を稼ぐ計算になる。冷涼な夏を求める避暑・長期滞在と、道東周遊の起点としての宿泊が重なる時期に、単価が集中的に上がる構造である。
| 規模帯 | 施設数・客室数 | 12か月平均 | 2026年8月 | 2026年3月 | 8月÷3月 |
|---|---|---|---|---|---|
| 150室以上 | 8施設・1,756室 | 9,896円 | 14,420円 | 7,732円 | 1.9倍 |
| 40〜149室 | 9施設・766室 | 8,055円 | 12,572円 | 5,815円 | 2.2倍 |
釧路市全域の値には阿寒湖温泉の旅館・リゾートも含まれるため、2km圏の施設だけでも確認した。12か月すべてで施設別の推定成約ADRが得られた40室以上の17施設を規模で分けると、150室以上の8施設は12か月平均9,900円に対し8月が14,400円、40〜149室の9施設は同8,100円に対し8月が12,600円だった。8月と3月の開きは1.9〜2.2倍で、市全域(1.8倍)より大きい。市街地のホテルは夏の単価の伸びしろが大きく、冬は出張などの平日需要が単価を下支えする二層の構造と考えられる。
予約の進み方も夏の強さを裏づける。釧路市全域で在庫を確認できる19〜20施設(客室2,341〜2,407室、主要予約サイト掲載ベース)のブッキングカーブをLT45からLT1まで追うと、8月8日(土)宿泊分はLT45時点で稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)が71.9%、LT14で89.5%、LT1で95.3%だった。連休初日の9月19日(土)宿泊分はLT45で78.6%、LT21で95.6%に達し、LT1は98.2%である。平日の7月15日(水)でもLT1で91.4%まで進み、10月3日(土)はLT1で91.9%だった。月平均の稼働率(同・推定)は2026年7月が89.3%、8月が91.8%、9月が92.5%(対象19施設・客室2,341室、主要予約サイト掲載ベース)で、夏から初秋にかけて在庫が高い水準で消化されている。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なる点には注意したい。
地域全体の入込も底堅い。北海道新聞(2026年5月20日)によると、釧路市の2025年度の観光入込客数は445万人で、外国人宿泊客はコロナ禍前の水準近くまで回復しているという。
供給の推移 — 9年で−294室、40室以上の開業登録は2012年が最後
同じ定義で過去にさかのぼると、2km圏のストックは2017年の38施設・3,046室から2019年に31施設・2,749室へ減り、その後は2026年の34施設・2,752室までほぼ横ばいで推移している。9年間の変化は−294室(−9.7%)である。減少は2017〜2018年に閉館が登録された8施設・305室によるもので、2018年以降に圏内で新たに登録されたのは4施設・11室(ゲストハウスと一棟貸し)にとどまる。販売を確認できた40室以上の17施設に限ると、2010年以降の開業登録は2012年の1施設・74室のみだった。
駅前の客室が9年で1割近く減り、まとまった規模の新しい建物が10年以上加わっていないという事実は、裏返せば建替えと新規開発が市場に吸収されやすい状態を意味する。夏の稼働率(推定)が9割前後に達していることを踏まえると、更新期を迎える建物を津波と寒冷地の条件に合わせて造り直す余地は大きい。市内の新規供給は、駅から約6km西の星が浦地区で2024年7月にワークマンハウス釧路(30室)、2025年8月に同プレミアム(45室)が加わっており、これまでのところ中心市街地の外に向かっている。
中心市街地にも動きはある。2006年に閉店した旧丸井今井釧路店の建物について、所有権の整理を進めるレダグループホールディングス(東京)が早ければ2027年春に解体へ着手し、跡地に外資系ホテルを誘致する方針だと北海道新聞が報じている(2026年4月14日、9月12日)。幣舞橋に近い旧日本銀行釧路支店は、2025年6月にホテル・レストランへの活用を提案した事業者が選定されたものの、物価高騰を背景に協議が進まず、2026年3月に計画はいったん白紙となった(同紙)。建設費の上昇が事業化の時期を左右している様子がうかがえ、浸水想定に対応する設備費まで含めた総投資の見通しが、案件を前に進める鍵になる。国土交通省「建築物動態統計調査」に基づく計画データでは、調査時点で釧路市内の宿泊施設の建築計画は確認されなかった。
※施設数・客室数の推移はOTA掲載確認ベースで、掲載は開業の前後に時間差をもって反映されるため、直近の年は今後の掲載で増加する可能性がある。建築計画は調査時点での確認申請ベースであり、今後の申請追加により件数・客室数は増加する見込みで、現時点での確定パイプラインの下限値として参照されたい。
既存館のBCP設備 — 受変電の上層化と非常用発電機で1室12万〜39万円
ここからは費用の側に移る。国土交通省と経済産業省の「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」(2020年6月)は、想定される浸水深を踏まえて受変電設備などを浸水しにくい場所へ配置することを対策の柱に挙げている。5m以上の帯では1階や屋外地上に置いたままの対応が難しく、上層階・屋上への配置が現実的な選択肢となる。そこで、2km圏で施設別ADRが得られた40室以上の17施設を対象に、受変電設備の上層化と非常用発電機の上層・屋上設置にかかる費用を、公開されている設備費の相場から1室あたりに換算した。算定方法は高潮浸水想定区域の試算と同じである。
| 項目 | 40〜149室 | 150室以上 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 受変電設備の設備費(工事費込み) | 200万〜600万円 | 1,000万〜2,000万円 | 公開されているキュービクル式高圧受電設備の相場 |
| 移設係数 | 1.5〜2.5倍 | 1.5〜2.5倍 | 構造補強・ケーブル延長・揚重・既存撤去・停電作業(編集部仮定) |
| 非常用発電機の本体 | 500万〜800万円(60〜100kVA) | 800万〜1,500万円(100〜200kVA) | 公開されているディーゼル式の価格相場。容量の対応は編集部仮定 |
| 発電機の設置工事(屋外設置) | 330万〜1,000万円 | 330万〜1,000万円 | 同上。屋内設置の場合は650万〜2,000万円 |
| 1室あたりへの換算 | 中央値84室で除算 | 中央値214室で除算 | 2km圏の規模帯別の客室数中央値 |
| 規模帯 | 施設数・客室数 | 受変電の上層化 | 非常用発電機 | 1室あたり合計 | ADR換算 |
|---|---|---|---|---|---|
| 40〜149室(中央値84室) | 9施設・766室 | 300万〜1,500万円 (1室3.6万〜17.9万円) | 830万〜1,800万円 (1室9.9万〜21.4万円) | 13.5万〜39.3万円 | 16.7〜48.8泊分 (ADR 8,055円) |
| 150室以上(中央値214室) | 8施設・1,756室 | 1,500万〜5,000万円 (1室7.0万〜23.4万円) | 1,130万〜2,500万円 (1室5.3万〜11.7万円) | 12.3万〜35.0万円 | 12.4〜35.4泊分 (ADR 9,896円) |
| 17施設 計 | 17施設・2,522室 | — | — | 12.4万〜35.6万円 | 総額 約3.1億〜9.0億円 |
試算では、1室あたりの費用は40〜149室の帯で13.5万〜39.3万円、150室以上で12.3万〜35.0万円となった。規模の大きい施設ほど発電機の費用を多くの客室に配賦できるため、1室あたりの負担はやや軽くなる。17施設すべてが同じ対策を取ると仮定した総額は約3.1億〜9.0億円で、1室あたり12.4万〜35.6万円である。大阪湾・伊勢湾沿岸の試算(受変電のみで1室3万〜25万円)より幅が上に出るのは、非常用発電機を加えたことと、釧路の施設が相対的に小ぶりであることによる。
釧路で非常用電源の重みが増すのは、冬の停電が暖房の停止に直結するためである。釧路市強靱化計画も、津波の一時避難場所の指定にあたって積雪寒冷地の避難速度や準備時間の指針を用いるとしている。屋外の高台まで長い距離を歩く避難は冬季に負担が大きく、暖房を維持できる建物の上層階が持つ価値は温暖な地域より高い。設備費の相場を示した資料でも、屋外設置の発電機は積雪や塩害への対策項目が増えるほど費用が上がるとされており、港に近い釧路では上限寄りで見積もっておきたい。寒冷地の運営原価については豪雪地帯のホテル原価でも整理している。
工事の時期には季節性を生かせる。受変電設備の更新には全館停電を伴う作業日が生じるが、推定成約ADRが7,200〜8,000円台に下がる12〜3月に寄せれば、8月(12,900円)に行う場合と比べて1日あたりの売上機会への影響は4割ほど小さく済む。屋内と屋上の作業が中心で、躯体工事ほど冬期施工の制約を受けにくい点も、寒冷地の改修計画には都合がよい。夏に稼ぎ、冬に備えるという年間の組み立てが、この市場では自然に成り立つ。
新築150室モデル — BCP込みの総投資は22.9億円、GOP利回りは6.4〜10.7%
建替え・新築ではどうなるか。商業地域(容積率600%)の駅前で150室のホテルを新築する場合を想定し、BCP設備を積み増したときの総投資とGOP利回りを試算した。避難スペースは、内閣府の「津波避難ビル等に係るガイドライン」(2005年6月)が目安とする1人あたり1㎡で面積を見込んでいる。国土交通省の技術的助言(2011年)は、想定浸水深に相当する階の2階上に避難スペースを設ければ安全側としており、階高を3mとすると5〜10mの浸水深に相当する階は2〜4階、その2階上は4〜6階にあたる。低層階を駐車場やロビーに充て、客室と避難スペースを上層に置く断面が基本形になる。個別の敷地では、北海道が公表している基準水位を確認して階の設定を決めることになる。
| 項目 | 前提 | 根拠 |
|---|---|---|
| 規模 | 150室・延床3,462㎡(1,047坪) | 客室15㎡、客室部分比率65% |
| 建設費(2025年実績ベース) | 21.2億円(1室1,414万円) | RC造 202.6万円/坪(国土交通省 建築着工統計ベース) |
| 建設費(インフレ織込み) | 24.5億円(234.1万円/坪) | 2026年+5.3%、2027年+5.0%(Turner & Townsend予測)、2028年+4.5%(編集部仮定) |
| 土地 | 5,300万円(1室35万円) | 駅前商業地の地価公示53,000円/㎡×1,000㎡ |
| 受変電設備の上層化 | 1,500万〜5,000万円 | 表6の150室以上と同じ |
| 非常用発電機 | 1,130万〜2,500万円 | 表6の150室以上と同じ |
| 上層の避難スペース | 4,600万〜9,190万円(75〜150㎡) | 1人1㎡×客室数の0.5〜1.0倍の人数(編集部仮定)×61.3万円/㎡ |
| BCP積み増し 計 | 7,230万〜1億6,690万円(1室48.2万〜111.3万円) | 建設費の3.4〜7.9%。中位は1億1,960万円 |
| 売上・利益 | 通年稼働率75%、GOP率40% | 稼働率は編集部仮定。GOP率はインヴィンシブル投資法人のMHM運営91物件の実績38.9%(2024年12月期)を参考 |
| 項目 | A. 宿泊特化 | B. 上位ビジネス帯推奨 | C. 上位帯 |
|---|---|---|---|
| 想定ADR(通年) | 9,000円 | 12,000円 | 15,000円 |
| ADRの位置づけ | 釧路市の12か月平均並み | 圏内に施設がない1.2万円台 | 圏内上位2施設の水準 |
| 客室売上(年) | 3.70億円 | 4.93億円 | 6.16億円 |
| GOP(年) | 1.48億円 | 1.97億円 | 2.46億円 |
| GOP利回り(BCPなし・総投資21.75億円) | 6.80% | 9.06% | 11.33% |
| GOP利回り(BCP中位・総投資22.94億円) | 6.44% | 8.59% | 10.74% |
| 投資回収年数(BCP中位) | 15.5年 | 11.6年 | 9.3年 |
| インフレ織込み後の利回り(BCP中位・総投資26.42億円) | 5.59% | 7.46% | 9.32% |
| インフレ織込み後の回収年数 | 17.9年 | 13.4年 | 10.7年 |
試算の読みどころは3点ある。1点目は、BCP積み増しが利回りを動かす幅の小ささだ。シナリオAでは、積み増しなしの6.80%が低位で6.58%、高位で6.31%となり、低下は0.2〜0.5ポイントにとどまる。これを単価で取り返すには、通年ADRで300〜700円(3.3〜7.7%)の上乗せがあれば足りる。7〜9月の推定成約ADRが年平均を2,900円ほど上回る市場であることを考えると、十分に視野に入る水準といえる。
2点目は、利回りを大きく動かすのが設備費ではなく単価帯の選択だという点である。圏内の施設別ADR(12か月平均)は5,800〜16,100円に分布するが、1.2万円台には施設がない。この空白にあたるシナリオBは、BCP中位でも8.59%、インフレ織込み後で7.46%となった。上層の避難スペースを平時は朝食会場やラウンジ、温浴後の休憩スペースとして使えば、収益を生む床と避難機能を兼ねられる。釧路市強靱化計画が掲げる「平時の有効活用の視点を持った整備」とも方向が合う。
3点目は建設費の上昇である。インフレ織込み後は総投資が22.94億円から26.42億円へ15%増え、利回りは各シナリオで0.9〜1.4ポイント下がる。BCP積み増しの影響よりはるかに大きく、着工時期と発注方式の検討が事業性を左右する。一方で、建設費の上昇は新規供給を抑える方向にも働くため、先に更新を終えた施設にとっては競合の増加が緩やかになるというアップサイドもある。寒冷地では断熱や凍結対策、冬期施工の養生が加わるため、全国平均の建設単価は下限寄りの目安として扱いたい。
| ケース | 客室売上 | GOP | GOP利回り |
|---|---|---|---|
| ベース(ADR9,000円・通年稼働率75%) | 3.70億円 | 1.48億円 | 6.44% |
| ADR −10%(8,100円) | 3.33億円 | 1.33億円 | 5.80% |
| 稼働率 −5ポイント(70%) | 3.45億円 | 1.38億円 | 6.01% |
| 両方 | 3.10億円 | 1.24億円 | 5.41% |
単価×稼働率の2軸感度 — 利回り8%の線は通年ADR約1.1万円
| 通年ADR\通年稼働率 | 65% | 70% | 75% | 80% | 85% |
|---|---|---|---|---|---|
| 8,000円 | 4.96% | 5.35% | 5.73% | 6.11% | 6.49% |
| 9,000円 | 5.58% | 6.01% | 6.44% | 6.87% | 7.30% |
| 10,000円 | 6.21% | 6.68% | 7.16% | 7.64% | 8.11% |
| 12,000円 | 7.45% | 8.02% | 8.59% | 9.16% | 9.74% |
| 15,000円 | 9.31% | 10.02% | 10.74% | 11.46% | 12.17% |
表10の4ケースを、通年ADR5段階×通年稼働率5段階(いずれも編集部の仮定値)に広げたのが表11である。シナリオAの9,000円帯では、通年稼働率を85%まで上げてもGOP利回りは7.30%にとどまり、通年稼働率75%で7%に届くには通年ADR約9,800円、8%には約11,200円が要る。一方、シナリオBの12,000円帯は通年稼働率65%でも7.45%を確保できる。稼働率を1割動かすより単価帯を1段上げる方が利回りへの効き目が大きく、BCP積み増し(0.2〜0.5ポイント)は表の1マス分にも満たない。2026年7〜9月の釧路市の稼働率(推定・主要予約サイト掲載ベース)は9割前後だが、通年値は冬に下がるため、通年稼働率は65〜75%の列を中心に読むのが妥当だろう。
※本章は公開されている相場と仮定に基づく簡易試算であり、実際の投資判断には詳細なフィージビリティ・スタディが必要です。受電容量、構造、搬入条件、基準水位、補助制度の適用可否によって費用は大きく変わります。
投資判断の整理 — 浸水深を前提条件に据えた3つの進め方
既存館の設備更新
17施設・2,522室/1室12万〜36万円
受変電設備と非常用発電機を上層へ。全館停電を伴う作業は単価の低い12〜3月に寄せる。上層階が指定緊急避難場所を担う建物では、地域での役割を保つ投資にもなる。
建替え・新築
150室モデル/1室48万〜111万円
低層階を駐車場・ロビーに充て、客室と避難スペースを4〜6階以上に。容積率600%と1㎡5.3万円の地価が、上へ積む設計を支える。単価帯は1.2万円台の空白が有力。
区域外の高台
3施設・12室/住宅地1㎡1.8万〜1.9万円
幣舞橋の南側の台地は区域外で液状化もしにくい区分。用途地域は住居系が中心のため、小規模な宿や一棟貸しが受け皿になる。駅・繁華街からの距離が検討点となる。
| 区分 | 確認する内容 | 本稿のデータとの接続 |
|---|---|---|
| 市場 | 夏と冬の単価差、冬季の平日需要 | 8月12,900円・3月7,200円(1.8倍)。7〜9月で年間客室売上の33.4% |
| 規制・指定 | 津波災害警戒区域、基準水位、防火地域 | 2022年3月に警戒区域指定。客室の58.4%が防火地域 |
| 建物・設備 | 受変電設備と発電機の設置階、避難スペースの階 | 5〜10mの帯では4〜6階以上が目安。1室48万〜111万円 |
| 建設 | 着工時期、冬期施工、建設費の上昇率 | インフレ織込みで総投資+15%、利回り−0.9〜−1.4ポイント |
| 地域連携 | 指定緊急避難場所としての登録、備蓄、暖房の維持 | 53か所のうち6か所がホテル。客室計1,014室 |
ここまでを整理すると、釧路の中心市街地では、浸水想定への対応は立地を避ける話ではなく、建物の断面と設備の配置を決める設計条件として扱うのが実態に合う。レンダーや保険会社との協議でも、区域の内外ではなく、設備の設置階、避難スペースの階、非常用電源の運転時間といった具体的な仕様が比較の軸になるだろう。複数のハザードを単価と防災投資に結びつけて商圏ごとに比べる考え方はホテル立地評価の第4軸「災害リスク」を定量化するで、条例による建築制限の実例は災害危険区域で宿は建てられるかで取り上げている。受け入れ機能を整えるホテルへの補助の設計例としては、帰宅困難者受入ホテルの整備補助も参考になる。
まとめ
釧路駅2km圏では、34施設・2,752室のうち31施設・2,740室(99.6%)が北海道設定の津波浸水想定区域内にあり、96.1%にあたる2,645室が浸水深5m以上10m未満の帯に立つ。40室以上の施設はすべてこの帯にあり、圏内の指定緊急避難場所53か所のうち6か所はホテルの建物だった。中心市街地のホテルは、想定浸水深を前提に上層階を生かすことで、宿泊と地域の避難の両方を支えている。
需要は夏に厚い。釧路市の推定成約ADRは8月に12,900円と3月の1.8倍に上がり、7〜9月の稼働率(推定)は9割前後で推移した。一方、2km圏の客室は9年で294室減り、40室以上の開業登録は2012年が最後である。受変電設備の上層化と非常用発電機は既存館で1室12万〜39万円、避難スペースを加えた新築150室モデルでは1室48万〜111万円と試算され、通年ADRで300〜700円の上乗せがあれば利回りを保てる。夏の収益力を冬の備えに振り向け、更新期の建物を寒冷地と津波の条件に合わせて造り直すことが、道東の拠点都市としての受け入れ力を高める機会になる。
集計に関する注記:本稿の津波浸水想定は、津波防災地域づくりに関する法律に基づき北海道が設定した想定(最大クラスの津波を想定したもの)を、国土交通省 不動産情報ライブラリ経由で取得したものです。発生の時期・頻度や個別建物の被害を示すものではありません。区域内外の判定は施設の登録座標1点で行っており、建物の階数・地盤高・敷地形状は考慮していません。最新のハザードマップ・避難情報は釧路市・北海道の公式情報をご確認ください。推定成約ADRは確定月(2025年10月〜2026年9月)のみを使用し、2026年10月以降は調査時点の掲載水準に基づく推定のため本稿の比較には用いていません。稼働率は主要予約サイト掲載ベースの推定値で、リードタイム45日以内の観測のみを用いています。
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参考資料・出典一覧
■ データソース
施設・客室数・推定成約ADR・ブッキングカーブ・推定稼働率はメトロエンジンリサーチ&コンサルティングの集計(釧路駅 半径2km・34施設/2,752室、推定成約ADRは釧路市・月29〜31施設および2km圏の施設別N=17、推定稼働率は釧路市全域19〜20施設・客室2,341〜2,407室)。津波・洪水・液状化・用途地域・防火指定・地価・指定緊急避難場所は国土交通省 不動産情報ライブラリ、浸水想定の公表値は北海道・釧路市の公表資料、建設単価・設備費・GOP率は参考資料欄の公開資料による。
■ 試算前提
既存館の改修は、公開されている受変電設備・非常用発電機の相場に移設係数1.5〜2.5倍と容量の対応(編集部仮定)を適用し、規模帯別の客室数中央値(84室・214室)で除した。新築モデルは150室・延床3,462㎡、RC造202.6万円/坪(2025年実績ベース)、土地5,300万円、避難スペース1人1㎡×客室数の0.5〜1.0倍、通年稼働率75%・GOP率40%(編集部仮定)。GOP利回りは運営委託料・固定資産税・FF&E積立の控除前。
■ 限界・留意点
区域内外と浸水深帯は各施設の登録座標1点がズームレベル15の地図タイル単位で取得した浸水想定ポリゴン(3,261件)のどの区分に含まれるかで判定しており、建物の階数・地盤高・敷地形状は考慮していない。施設数・客室数の推移は施設データ上の開業日・閉館日ベースで、客室数は現時点の登録値を各年に適用しているため増改築による変化は反映されない。推定稼働率は主要予約サイト掲載ベースの推定値(2026年7〜9月・リードタイム45日以内の観測)で、実稼働率とは定義が異なる。設備費は個別物件の受電容量・構造・搬入条件・基準水位で大きく変わる簡易試算である。
■ 市場データ
- メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — 施設データ(釧路駅 半径2km・34施設/2,752室、販売確認22施設/2,561室)、推定成約ADR(釧路市・月29〜31施設、施設別N=17)、ブッキングカーブ・推定稼働率(釧路市全域19〜20施設・客室2,341〜2,407室、主要予約サイト掲載ベース)
■ 政府統計・公的データ
- 国土交通省 不動産情報ライブラリ — 津波浸水想定(北海道設定)、洪水浸水想定区域(想定最大規模)、液状化の発生傾向図、用途地域、防火・準防火地域、地価公示・都道府県地価調査、指定緊急避難場所
- 釧路市「北海道太平洋沿岸における津波浸水想定の公表(令和3年7月19日)」
- 北海道「津波浸水想定(太平洋沿岸)」・「北海道太平洋沿岸の津波浸水想定について(解説)」(令和3年7月第一版・令和5年2月第二版)
- 釧路市「釧路市強靱化計画(国土強靱化地域計画)2023年度〜2027年度」(2023年3月)
- 国土交通省・経済産業省「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」(2020年6月)
- 内閣府「津波避難ビル等に係るガイドライン」(2005年6月)
- 国土交通省「津波に対し構造耐力上安全な建築物の設計法等に係る技術的助言について」(2011年)
- 国土交通省「津波防災地域づくりに関する法律について」
- 国土交通省「建築着工統計調査」・「建築物動態統計調査」(建築計画データ)
■ REIT・業界資料
- インヴィンシブル投資法人(8963)ホテルポートフォリオ・運営実績 — GOP率の参考値(MHM運営91物件・2024年12月期38.9%)
- archi-book「ホテルの建築費は坪単価でどの程度の水準か?【2026年版】」 — RC造202.6万円/坪
- 中小企業のための省エネ補助金サポートセンター「キュービクルの設置・交換・増設費用はいくら?」(2025年7月28日)
- 関西電力 法人向けソリューション「キュービクル式高圧受電設備とは?」
- 電気設備ドットコム(小川電機)「非常用発電機の設置費用は?各作業内容別にわかりやすく解説」
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