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ホテルの蛍光灯LED化、1室3.6万〜5.4万円 — 2027年1月から製造禁止、2010年以前開業は96.5万室

投稿日 : 2026.10.01

指定なし

投資・開発

ホテルの蛍光灯LED化、1室3.6万〜5.4万円 — 2027年1月から製造禁止、2010年以前開業は96.5万室

一般照明用の蛍光ランプは、水銀に関する水俣条約にもとづき種類ごとに製造と輸出入が止まる。ホテルの客室や廊下のダウンライトに多いコンパクト形は2027年1月1日、事務所で話題になりやすい直管形・環形は2028年1月1日が期限で、宿泊施設のほうが1年早く期限を迎える。本稿は「製造・輸出入の禁止という期限が決める更新時期」に論点を絞り、メトロエンジンリサーチ&コンサルティングの施設マスターから2010年以前に開業した客室ストックを数え、100室モデルでLED化の1室あたりCapexと回収年数を試算する。

光熱費の水準や省エネ投資全般の回収年数は、既刊の「ホテルの電気代、1室あたり年9.6万円 — 100室モデルで見る光熱費と省エネ投資の回収年数」で扱った。そこではLED化は複数ある施策の一つという位置づけだった。本稿は電気代の水準論には立ち入らず、取得DDで設備更新費を見積もるアセットマネージャー・ファンド、保有中の修繕計画を組むオーナー、改装融資を審査する地域金融機関に向けて、「いつまでに、どこを、いくらで」を整理する。

本記事における指標の定義

  • 客室ストック:メトロエンジンリサーチが追跡する国内施設のうち、稼働が確認できる27,248施設・1,266,597室(2026年9月時点)。うち開業日が判明している24,720施設・1,233,032室を開業年別に集計した。稼働が確認できる施設に限った集計のため、実際の供給よりやや少なく出る「下限の目安」として読んでいただきたい。
  • 開業年:施設マスター上の開業日。LED化の有無そのものではなく、「竣工時に蛍光灯器具を前提に照明計画が組まれた可能性が高い」ことを示す代理変数として使う。旅館では建物の竣工ではなく創業年が登録されている場合がある。開業日が1990年1月1日で登録された4,032施設・75,057室は、除いた値も本文で併記した。
  • 改装記録あり:施設マスターに2015年1月以降の改装日が登録されている施設。改装時に照明が更新された可能性があるため、試算の母数から別掲して除いた。
  • 単純回収年数:初期投資額 ÷(年間の電力削減額+ランプ交換費の削減額)。補助金・税効果・金利は含めない。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(施設マスター)、環境省、経済産業省、一般社団法人日本照明工業会
コンパクト形の製造禁止
2027/1/1
客室・廊下のダウンライトに多い
直管形・環形の製造禁止
2028/1/1
ハロりん酸塩系は2027/1/1
2010年以前開業の客室
96.5万室
開業日判明分の78.3%
うち2015年以降の改装記録なし
71.6万室
15,904施設
LED化の1室あたりCapex
3.6万〜5.4万円
100室モデル・3台/室

結論を先に示す。第一に、宿泊施設の照明で多いコンパクト形蛍光ランプは約3か月後の2027年1月1日に製造・輸出入が止まり、直管形も2027年末が最終となる。使用・販売・購入は禁止されないため「使えなくなる」わけではないが、交換用ランプは市中在庫に依存していく。第二に、2010年以前に開業した客室は96.5万室あり、2015年以降の改装記録がある施設を除いても71.6万室が残る。第三に、100室モデルでのLED化は1室あたり3.6万〜5.4万円、単純回収は施設全体で4.9〜7.3年と試算される。ただし24時間点灯の共用部は3年前後で回収できる一方、客室内は17.9年かかる。客室内の更新は回収年数ではなく期限と器具の経年で時期が決まる投資であり、計画的に予算化するかどうかで取得・保有時のCapexの読み方が変わる。

Key Takeaways
  • — 2027年1月1日にコンパクト形(客室・廊下のダウンライトに多い)、2028年1月1日に直管形・環形の製造・輸出入が止まる。使用と在庫の売買は引き続き可能。
  • — 2010年以前開業の客室は96.5万室(開業日判明分の78.3%)。開業日が1990年1月1日で登録された7.5万室を除いても89.0万室。
  • — 2015年以降の改装記録がない施設に絞っても71.6万室が残り、業態別ではビジネスホテルの36.5万室が最も多い。
  • — 100室モデルのLED化は1室3.6万〜5.4万円、施設全体の単純回収は4.9〜7.3年(電力単価27円/kWh・削減率40%の前提)。
  • — 共用部は3.0年で回収できる一方、客室内は17.9年。客室内は期限と器具の経年で時期を決め、客室改装との同時施工で予算化する。

何がいつ止まるか — 種類別の製造・輸出入禁止期限

環境省「一般照明用蛍光ランプの規制について」によると、期限は蛍光ランプの形状と蛍光体の種類で分かれている。電球形はすでに2026年1月1日から製造・輸出入が止まっており(30W超は2027年1月1日)、コンパクト形は2027年1月1日、直管形と環形は2028年1月1日が期限となる。直管形・環形のうち、ハロりん酸塩を主成分とする蛍光体を使う製品は1年早い2027年1月1日に止まる。

一般照明用蛍光ランプの種類別 製造・輸出入禁止期限
ランプの種類製造・輸出入の禁止開始宿泊施設で使われやすい場所(一般的な例)
電球形蛍光ランプ(30W以下)2026年1月1日(開始済み)客室のスタンド・ブラケット、廊下の電球ソケット器具
電球形蛍光ランプ(30W超)2027年1月1日ロビー・宴会場の一部器具
コンパクト形蛍光ランプ2027年1月1日客室・廊下・エレベーターホールのダウンライト
直管形・環形(ハロりん酸塩系蛍光体)2027年1月1日バックヤード・駐車場など古い器具
直管形・環形(三波長形など上記以外)2028年1月1日洗面ミラー灯、事務所・厨房・リネン室、看板
出典:環境省「一般照明用蛍光ランプの規制について」、経済産業省「水俣条約における蛍光ランプ製造等廃止と今後の措置」(令和6年12月13日)。使われやすい場所はホテルバンク編集部による一般的な整理

経済産業省の資料は「年末」、環境省は「翌年1月1日から禁止」と表記しているが、指している時点は同じである。いずれの資料も、規制開始後も製品の継続使用、在庫の売買とその使用は可能だと明記している。そのうえで経済産業省は、LED照明への計画的な更新、切り替えが難しい場合は交換用の蛍光ランプの確保を呼びかけている。

業界側の進捗も押さえておく。日本照明工業会の2026年度事業計画書によると、照明器具ストックのLED化率は2026年3月末時点で67.5%で、2030年のストックSSL化率100%という目標に対してまだ差がある。蛍光ランプの製造終了に関する認知度も42.4%にとどまっている。つまり国内の照明器具の約3分の1はまだLED化されておらず、期限が近づくほど工事業者の手配が集中しやすい局面に入る。

宿のどこに蛍光灯が残るか — 客室・廊下・宴会場・後方

宿泊施設の照明計画では、客室のダウンライトや廊下・エレベーターホールの天井照明にコンパクト形、洗面ミラー灯やバックヤードに直管形が使われてきた例が多い。つまり、宿泊施設の照明は2つの期限に分かれて更新時期を迎える。客室と共用部の天井照明が中心のコンパクト形は2027年1月、後方の直管形は2028年1月である。事務所ビルの直管形を念頭に置いた「2027年末まで」という理解だと、宿泊施設では1年読み違えることになる。

点灯時間の違いも投資判断を分ける。廊下・エレベーターホール・ロビーは24時間点灯が一般的で、一般財団法人省エネルギーセンターが経済産業省資源エネルギー庁の委託で作成したホテル向けパンフレットでも、常時点灯の共用部照明は更新による省エネ効果が大きく、投資を短期に回収しやすいとされている。一方、客室の照明は滞在中しか点かないため、電力削減額は小さい。宴会場は一般照明とシャンデリアなどの演出照明に分かれ、演出照明は器具のデザインと一体で更新を考える必要がある。

更新の方法は大きく2つある。器具ごとLED器具に取り替える「器具交換」と、既存器具を残して安定器を外す配線工事(バイパス工事)を行い直管LEDランプなどを取り付ける「ランプ交換」だ。経済産業省は、適合しないランプの取り付けや、長期間使った器具にLEDランプを付けて使い続けることによる火災などの事故パターンを示し、工事の要否が不明な場合や器具の劣化が心配な場合は専門業者へ相談するよう求めている。日本照明工業会によると、照明器具は10年を過ぎると故障率が上がる。2010年以前開業で照明を更新していない施設では、器具は15年以上経っている計算になり、器具交換を基本ケースとして見積もるのが実務的だろう。

古い建物では安定器そのものも確認が要る。環境省・経済産業省によると、1957年1月から1972年8月までに国内で製造された照明器具の安定器にはPCBを使用したものがあり、1977年3月までに建築・改修された建物では確認が求められる。高濃度PCB廃棄物の処分期間は2023年3月31日で終了しており、見つかった場合は自治体への届出など所定の手続きが必要になる。照明更新の現地調査は、安定器の銘板を確認する機会にもなる。

2010年以前開業の客室96.5万室 — 改装記録を除いても71.6万室

メトロエンジンリサーチ&コンサルティングの施設マスターで、稼働が確認できる27,248施設・1,266,597室のうち、開業日が判明している24,720施設・1,233,032室を開業年別に数えた。2010年以前に開業した施設は18,062施設・965,450室で、開業日判明分の78.3%を占める。LED照明器具が施設向けに広く出回り始めたのは2010年前後であり、それ以前に竣工した施設は蛍光灯器具を前提に照明計画が組まれた可能性が高い。

開業年帯別の客室数 — 2015年以降の改装記録の有無
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(施設マスター、開業日判明 N=24,720施設・1,233,032室、2026年9月時点)

ただし、開業後に改装で照明を入れ替えた施設もある。そこで、2015年1月以降の改装日が登録されている2,158施設・249,672室を別掲した。これを除いても、2010年以前開業で改装記録のない客室は15,904施設・715,778室が残る。本稿ではこの71.6万室を、照明更新がまだ計画に入っていない可能性がある母数として扱う。改装日が登録されていない施設でも部分的なLED化を済ませている例はあるため、71.6万室は上限側の目安である。

開業年帯別の施設数・客室数と2015年以降の改装記録
開業年帯施設数客室数うち2015年以降の改装記録あり(室)改装記録なし(室)
1980年以前4,547223,66563,692159,973
1981〜1990年6,541246,12357,700188,423
1991〜2000年2,745207,80362,365145,438
2001〜2010年4,229287,85965,915221,944
2010年以前 計18,062965,450249,672715,778
2011〜2015年2,680105,64510,30495,341
2016〜2020年3,825147,7617,608140,153
2021年以降15314,17683813,338
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(施設マスター、開業日判明 N=24,720施設・1,233,032室、2026年9月時点)。稼働が確認できる施設に限った集計のため、実際の供給より少なく出る下限の目安

なお、1981〜1990年の帯には、開業日が1990年1月1日で登録されている4,032施設・75,057室が含まれる。前後の年(1989年391施設、1991年292施設)と比べて突出して多く、登録日付が実際の開業年を示さない施設を含む可能性がある。そこでこの群を除いた値も併記すると、2010年以前開業は14,030施設・890,393室(開業日判明分の76.9%)となる。改装記録のない71.6万室も、この群を除けば最小で64.1万室である。この群は1施設あたり平均18.6室と小規模施設が中心で、客室数ベースでは母数の規模感を大きく変えない。

業態別に見ると、2010年以前開業の比率はシティホテルと旅館で9割を超える。ビジネスホテルは客室数が最も多く、2010年以前開業は46.4万室にのぼる。シティホテルは2015年以降の改装記録がある客室が6.9万室と多く、大規模改装の周期の中で照明がすでに更新されている例が相対的に多いと読める。改装記録のない客室の規模では、ビジネスホテル36.5万室、旅館13.3万室、シティホテル9.1万室の順となる。

業態別・2010年以前開業の客室数(2015年以降の改装記録の有無)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(施設マスター、4業態の開業日判明客室 N=1,077,820室、2026年9月時点)
業態別・2010年以前開業の客室数と改装記録
業態開業日判明の客室うち2010年以前開業比率うち改装記録なし
ビジネスホテル634,220464,23973.2%365,388
旅館174,227159,62091.6%132,894
シティホテル176,103160,22291.0%91,245
リゾートホテル93,27081,65187.5%56,101
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(施設マスター、4業態の開業日判明客室 N=1,077,820室、2026年9月時点)。旅館は創業年で登録されている場合があり、建物の築年より古く出ることがある

規模別では、2010年以前開業の客室の45%にあたる43.3万室が100〜299室の施設に集まる(2,655施設)。30室未満の小規模施設は10,589施設と数は多いが客室は12.7万室にとどまる。施設数ベースでは小さな宿が、客室数ベースでは中規模のホテルが更新需要の中心になる構図だ。

都道府県別に、2010年以前開業かつ改装記録のない客室を地図に落とした。東京都5.9万室、北海道5.0万室、長野県3.4万室、大阪府3.3万室、静岡県3.0万室の順に多い。北海道・長野県・静岡県は2010年以前開業の比率が8割台半ばと高く、温泉地・リゾート地の旅館が母数を押し上げている。

都道府県別・2010年以前開業かつ改装記録なしの客室数(円の大きさ=客室数)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(施設マスター、N=15,904施設・715,778室、2026年9月時点)。円の位置は各都道府県の対象施設の平均座標

1室あたり更新費と回収年数 — 100室モデルの試算

1室あたりの器具数は、一般財団法人省エネルギーセンターの省エネ診断事例(関東のビジネスホテル、140室規模)で、客室・共用部の照明更新対象が427台だったことを手がかりにした。1室あたり約3.0台である。この事例では投資額2,519千円に対し年間削減額1,246千円、回収年数2.0年とされたが、対象には白熱電球やハロゲンランプも含まれており、蛍光灯からLEDへの更新だけを見た場合より削減効果は大きく出ている点に注意が要る。

本稿の100室モデルは、客室内2.0台/室、廊下・エレベーターホール・ロビー0.7台/室、バックヤード0.3台/室の計3.0台/室(300台)とした。工事単価は、施工会社が公表する相場(40W2灯の直付け器具で器具交換は約2.2万円/台、バイパス工事は約1.65万円/台など、ランプ代込みの相場として1台8千〜2.2万円程度の幅がある)を参考に、器具交換1.8万円/台、ランプ交換(バイパス工事)1.2万円/台を基本値に置いた。これらは施工会社の公表値であり、器具の種類・天井の仕様・夜間工事の有無で大きく変わる。

100室モデルの区分別 電力量・投資額・単純回収年数(器具交換)
区分台数1台の消費電力点灯時間年間電力量器具交換の投資額単純回収年数
客室内20030W6時間/日×稼働率80%(通年)10,512kWh360万円17.9年
廊下・EVホール・ロビー7040W24時間24,528kWh126万円3.0年
バックヤード3060W12時間7,884kWh54万円4.6年
施設合計300——42,924kWh540万円7.3年
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算。前提:電力削減率40%、電力単価27円/kWh(試算上の前提値)、蛍光ランプの定格寿命1万2,000時間・交換1回3,000円(ランプ代+作業費)をLED化で削減。補助金・税効果は含まない

施設全体では、年間の電力削減額が約46万円、ランプ交換費の削減が約27万円で、器具交換540万円(1室5.4万円)の単純回収は7.3年となる。バイパス工事による360万円(1室3.6万円)なら4.9年だ。電力削減額だけで見ると器具交換の回収は11.6年まで延びるため、24時間点灯の共用部ではランプ交換の手間が減る効果を無視できない。

区分別の単純回収年数(器具交換・100室モデル)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算(前提は上表のとおり)

区分別に分けると、投資の性格がはっきり分かれる。廊下・エレベーターホール・ロビーは3.0年、バックヤードは4.6年で回収でき、省エネ投資として単独で成り立つ。客室内は17.9年で、LED器具の設計寿命の目安(4万時間)の範囲には収まるものの、回収年数だけで判断すると先送りされやすい。だが、客室のダウンライトに多いコンパクト形は2027年1月1日で製造・輸出入が止まる。客室内の更新は「回収するかどうか」ではなく、「いずれ必要になる更新をいつ、どの工事と一緒に行うか」で決まる投資と捉えるのが実態に近い。客室改装や水回り更新と同じ工程に組み込めば、足場・養生・販売停止日数を共有でき、単独工事より実質的な負担を抑えられる。改装に伴う販売停止がどれだけのコストになるかは、ホテル改装の逸失売上は工事費の32.6%で試算している。

前提を動かした感度も示す。電力単価は20・27・35円/kWh、電力削減率は30・40・50%の3段階とした。電力削減率は、メーカー各社が公表する32形Hf蛍光灯2灯器具との比較で3〜5割程度の値が示されていることから置いた。電力単価の水準そのものは既刊の電気代記事を参照いただきたい。

電力単価×電力削減率の感度(施設合計の単純回収年数)
単純回収年数(施設合計)削減率30%削減率40%削減率50%
器具交換(1.8万円/台・1室5.4万円)
電力単価20円/kWh10.2年8.8年7.7年
電力単価27円/kWh8.7年7.3年6.3年
電力単価35円/kWh7.5年6.2年5.3年
ランプ交換+バイパス工事(1.2万円/台・1室3.6万円)
電力単価20円/kWh6.8年5.8年5.1年
電力単価27円/kWh5.8年4.9年4.2年
電力単価35円/kWh5.0年4.1年3.5年
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算。ランプ交換費の削減を含む。補助金・税効果・金利は含まない

1室あたりの器具数も施設によって幅がある。客室の広い旅館やシティホテルでは1室5台以上、宿泊特化型の狭い客室では2台程度のこともある。器具数と工事単価の組み合わせで1室あたりのCapexを並べると、1.6万円(2台×8千円)から11万円(5台×2.2万円)まで広がる。取得DDでは、図面や現地調査で器具数を数え、この幅のどこに位置するかを先に確定させることが見積もり精度を左右する。

1室あたり器具数×工事方法別のLED化Capex(1室あたり)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算(工事単価は施工会社の公表相場を参考にした前提値)

マクロの規模感も試算しておく。2010年以前開業で改装記録のない71.6万室に1室3.0台を掛けると約215万台で、すべてが蛍光灯器具のまま残っていると仮定した上限的な総額は、バイパス工事で約258億円、器具交換で約387億円となる。日本照明工業会が示すストック全体の未LED化率(100%−67.5%=32.5%)を当てはめると、約84億〜126億円の更新需要に相当する。いずれも仮定を重ねた目安だが、期限前後の数年に宿泊業界だけで数十億〜数百億円規模の照明更新が動く可能性を示している。

取得DDでの見方 — CapEx予備費への織り込み

取得DDでは、エンジニアリング・レポートの長期修繕計画に照明器具の更新が入っているか、入っている場合は時期と単価が期限と整合しているかを確認したい。長期修繕計画では照明器具は15〜20年程度の周期で計上されることが多いが、製造・輸出入の禁止は器具の寿命とは別の理由で更新を前倒しさせる。保守用ランプの在庫を確保して器具寿命まで使い続けるか、期限を機に更新するかは運営方針の選択であり、どちらを選ぶかでCapexの計上年が変わる。上場REITが開示する資本的支出の水準は、ホテルの資本的支出は1室あたり年13万〜62万円で読み解いている。

取得DDでの照明更新の確認項目
確認項目見るポイントCapexへの反映
照明器具の種類と台数客室・共用部・後方ごとのコンパクト形/直管形の台数期限が2027年1月か2028年1月かで計上年を分ける
器具の製造年10年超の器具はランプ交換より器具交換を基本に単価を器具交換側で置く
安定器の銘板1957〜1972年製の安定器はPCB使用の可能性処分手続きの費用・期間を別枠で確認
過去の改装履歴改装時に照明が更新された範囲更新済み範囲を母数から除く
保守用ランプの在庫期限後も使い続ける場合の在庫量と保管場所更新を先送りする場合の運営費として見る
他工事との同時施工客室改装・天井更新・防災設備更新の予定同時施工で工事費・販売停止日数を圧縮
出典:ホテルバンク編集部作成(環境省・経済産業省・日本照明工業会の公表資料をもとに整理)

改装融資の審査では、照明更新を単独の省エネ投資として扱うより、客室改装パッケージの一部として組み込み、共用部の短期回収分と客室内の期限対応分を分けて説明するほうが、資金使途と返済原資の対応が明確になる。保有中のオーナーにとっては、2027年度の修繕予算を組む秋のうちに更新範囲と工事時期を決めることが、工事業者の手配集中を避ける現実的な選択肢となる。

共用部・後方:単独でも回収できる投資

24時間点灯の廊下・EVホールは100室モデルで回収3.0年。ランプ交換の手間も減り、期限を待たずに進める余地が大きい。

客室内:期限と器具の経年で決まる更新

回収17.9年だが、ダウンライトに多いコンパクト形は2027年1月1日に製造終了。客室改装と同じ工程に組み込むのが効率的。

取得DD:計上年と単価の確認

2010年以前開業の71.6万室は器具が15年超。器具交換単価で置き、期限別に計上年を分けて予備費に織り込む。

まとめ — 期限を起点にした計画的更新の投資機会

一般照明用蛍光ランプの製造・輸出入は、宿泊施設で多いコンパクト形が2027年1月1日、直管形・環形が2028年1月1日に止まる。使用は禁止されないが、交換用ランプの供給は市中在庫に依存していく。2010年以前に開業した客室は96.5万室、改装記録のない施設に絞っても71.6万室あり、100室モデルでのLED化は1室あたり3.6万〜5.4万円、施設全体の単純回収は4.9〜7.3年と試算された。

投資判断の軸は区分ごとに異なる。共用部と後方は省エネ投資として単独で回収でき、客室内は期限と器具の経年が時期を決める更新投資である。この2つを分けて予算化し、客室改装など他の工事と組み合わせれば、期限対応の負担を抑えながら照明の質も引き上げられる。取得・保有・融資のいずれの立場でも、期限を起点にした照明更新は、Capex計画を前倒しで確定させる機会として位置づけられるだろう。

試算に関する注意:本稿の回収年数・Capexは、器具数・消費電力・点灯時間・工事単価・電力単価・電力削減率を仮定した簡易試算であり、個別施設の実際の費用や効果とは異なります。補助金・税制・金利・工事に伴う販売停止の影響は含めていません。実際の投資判断には現地調査にもとづく詳細な見積もりが必要です。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

客室ストックはメトロエンジンリサーチ&コンサルティングの施設マスター(稼働が確認できる国内27,248施設・1,266,597室、うち開業日判明24,720施設・1,233,032室、2026年9月時点)。規制期限は環境省・経済産業省、照明器具ストックのLED化率は日本照明工業会、1室あたり器具数の手がかりは省エネルギーセンターの省エネ診断事例、工事単価は施工会社の公表相場による。

■ 試算前提

100室モデル・照明器具300台(客室内200台・30W・6時間/日×客室稼働率80%(通年)、廊下・EVホール・ロビー70台・40W・24時間、バックヤード30台・60W・12時間)。電力削減率40%、電力単価27円/kWh、蛍光ランプの定格寿命1万2,000時間・交換1回3,000円。工事単価は器具交換1.8万円/台、ランプ交換(バイパス工事)1.2万円/台。感度分析は電力単価20〜35円/kWh×削減率30〜50%の3×3。

■ 限界・留意点

開業年は施設マスター上の登録日で、照明器具の製造年やLED化の有無を直接示すものではない。開業日が1990年1月1日で登録された4,032施設・75,057室は登録日付が実際の開業年を示さない可能性があるため、除いた値を本文に併記した。改装記録のない施設でも部分的にLED化を済ませた例があり、71.6万室は上限側の目安である。回収年数は補助金・税効果・金利・販売停止の影響を含まない単純回収で、個別施設の見積もりに代わるものではない。

■ 市場データ

■ 規制・公的資料

■ 業界資料

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