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ホテルのエレベーター更新費、準撤去で1室10万〜17万円 — 50・120・250室の試算と口コミ言及率

投稿日 : 2026.10.25

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投資・開発

ホテルのエレベーター更新費、準撤去で1室10万〜17万円 — 50・120・250室の試算と口コミ言及率

ホテルのエレベーターを機器の一部を残して入れ替える「準撤去リニューアル」で更新すると、工事費は1基あたり約700万〜1,000万円が目安だ。中央値850万円で試算すると、1基で50室を支える旅館は1室あたり17.0万円、2基で120室のビジネスホテルは14.2万円、3基で250室のシティホテルは10.2万円になる。工事中に販売を見送る客室の売上まで含めた実質の負担は1室13.2万〜22.8万円で、耐用年数の目安25年で割ると、毎年の積立額は客室売上の0.14〜0.43%に収まる。

宿泊者の口コミでエレベーターが話題になる頻度にも、規模による差がある。ホテルバンク編集部が直近24か月の宿泊者口コミ7,644,556件を集計したところ、エレベーターへの言及は182,631件(2.39%)あった。50〜99室の施設では1.98%だが、500室以上では3.91%まで上がる。施設が大きくなるほど、昇降機が客室や朝食と並んで滞在体験の一部として語られるようになるわけだ。本稿では、口コミの言及率、開業年代別の客室ストック、工法別の費用と停止期間、法定の定期検査と戸開走行保護装置の扱いを順に確認し、「いつ・いくら積んでおくか」を客室数別に試算する。

本記事のデータについて
• ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。
• エリア(都道府県・市区町村)単位のADRは、対象施設の推定成約単価の中央値(エリアの標準的な施設の水準)です。
• 掲載価格に言及する箇所は、2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
• OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。
• 出典:メトロエンジンリサーチ(国内約168,000施設のOTA公開価格を継続追跡、うち稼働確認済み約27,000施設)
本稿の集計対象
• 口コミ:口コミが20件以上ある国内の宿泊施設のうち、直近24か月(2024年10月〜2026年10月)にエレベーターへの言及が1件以上確認された15,579施設・口コミ7,644,556件。言及率=エレベーターに触れた口コミ件数÷対象施設の口コミ総数。
• 客室ストック:直近3か月に販売価格が観測できた客室10室以上の国内施設(大人専用・モーテルを除く)19,608施設・1,503,325室。開業年代別の集計は、名寄せのうえ開業日が確認できる16,401施設・1,403,755室が対象。
• 試算のADRは推定成約ADR(2025年10月〜2026年9月の47都道府県・業態別の値を施設数で加重平均)、稼働率は観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年確定値の全国・施設タイプ別の値を用いた。
Key Takeaways
  • — 準撤去リニューアルは1基約700万〜1,000万円(中央値850万円)。工事費は50室・1基で1室17.0万円、120室・2基で14.2万円、250室・3基で10.2万円になる。
  • — 工事中に販売を見送る客室の売上を加えた実質負担は1室13.2万〜22.8万円。25年で積み立てると1室年0.53万〜0.91万円、客室売上の0.14〜0.43%にあたる。
  • — 口コミ7,644,556件のうちエレベーターへの言及は2.39%。50〜99室の1.98%に対し500室以上は3.91%で、改善を求める文脈が60.9%を占める。
  • — 1970〜90年代開業は4,808施設・42.6万室で、開業年が分かる客室の30.3%。2011年以前の開業を合わせた57.2%が、今後10年以内に更新の検討時期を通る。
  • — 戸開走行保護装置は2009年9月28日以降の設置分に義務付けられ、令和3年度報告での設置率は32.1%。全撤去リニューアルでは設置が求められる。

口コミの言及率 — 500室以上は3.91%、50〜99室の2.0倍

まずは宿泊者の側から見ていく。エレベーターに触れた口コミの割合を客室数の帯ごとに並べると、10〜49室の1.89%、50〜99室の1.98%から、100〜199室で2.30%、200〜299室で2.50%、300〜499室で3.09%、500室以上で3.91%と、規模が大きくなるにつれて段階的に上がっていく。客室が多い施設ほど同じ時間帯に利用が集中し、待ち時間や混み具合、眺望や乗り場の分かりやすさといった話題が口コミに出やすくなると読める。

ただし、業態をそろえると小規模帯の見え方が変わる。ビジネスホテルでは10〜49室が2.56%と、50〜99室の2.11%より高い。小規模の施設は1基で全館を支える例が多く、かごの広さや荷物を持っての乗り降り、階段との使い分けが話題になりやすい。全体で10〜49室が1.89%と最も低いのは、言及率の低い小規模旅館(10〜49室で1.65%)がこの帯の4割を占めるためとみられる。

出典:ホテルバンク編集部調べ(宿泊者口コミのNLP解析、N=15,579施設・7,644,556件、2024年10月〜2026年10月)

言及の中身を自然言語処理による分類で見ると、エレベーターに触れた182,631件のうち、改善を求める文脈(待ち時間・混雑・狭さなど)に分類されたものが111,174件(60.9%)、好意的な文脈が47,669件(26.1%)だった。客室数の帯による差は小さく、どの帯でも改善を求める文脈が56〜66%を占める。宿泊者にとってエレベーターは「動いていて当たり前」の設備であり、話題になるのは期待を下回った場面が多いことを示している。裏を返せば、更新で輸送力や待ち時間を見直せば、その分だけ口コミの改善余地が残っている設備だといえる。

業態別 — カプセル3.54%、リゾート2.73%、旅館1.83%

業態別に見ると、言及率が最も高いのはカプセルホテルの3.54%で、リゾートホテルの2.73%、ビジネスホテルの2.58%が続く。カプセルホテルは男女別フロアやフロア限定の停止階を設ける施設が多く、乗り方そのものが話題になりやすい。旅館は1.83%と最も低いが、旅館は低層の建物が多く、言及が少ないこと自体が建物の形を映しているとみられる。

業態別のエレベーター言及率(2024年10月〜2026年10月の口コミ)
業態施設数口コミ件数エレベーター言及言及率
カプセルホテル207118,7794,1993.54%
リゾートホテル1,196771,06421,0562.73%
ビジネスホテル6,7653,763,48397,2282.58%
シティホテル1,0971,060,39423,0912.18%
デラックスホテル168184,3683,6621.99%
旅館3,5471,213,42522,2311.83%
全体(その他の業態を含む)15,5797,644,556182,6312.39%

出典:ホテルバンク編集部調べ(宿泊者口コミのNLP解析、2024年10月〜2026年10月)

業態と規模を掛け合わせると、規模による差がさらにはっきりする。ビジネスホテルでは100〜199室の2.38%に対し500室以上は5.68%と2.4倍になり、リゾートホテルでは300〜499室が5.76%と全セルで最も高い。大型のリゾートは大浴場・レストラン・プールといった共用施設が別フロアにあり、1回の滞在でエレベーターに乗る回数が多い。夕食前や朝食時、チェックアウト前に利用が一斉に重なるため、更新時に台数・速度・群管理(複数台をまとめて配車する制御)をどう見直すかで、宿泊者の体験が変わりやすい帯だといえる。

出典:ホテルバンク編集部調べ(宿泊者口コミのNLP解析)。施設数30未満のセルは表示していない

開業年代別のストック — 1970〜90年代開業は4,808施設・42.6万室

次に、更新の時期がいつ巡ってくるかを建物の開業年から見ていく。横浜市のマンション管理向け情報では、エレベーターの耐用年数の目安を25〜30年、更新を検討する時期を設置後20〜30年頃としている。ホテルの昇降機も建物と同時に設置される例が多いので、開業年は更新時期の目安として使える。

メトロエンジンリサーチの施設データで、開業日が確認できる16,401施設・1,403,755室を開業年代別に集計すると、1970年代開業が1,106施設・88,020室、1980年代が1,817施設・155,518室、1990年代が1,885施設・182,433室だった。この30年間に開業した4,808施設・425,971室は、開業年が分かる客室の30.3%にあたる。いずれも開業から27年以上が経過しており、建物と同時に入れた昇降機であれば、すでに耐用年数の目安を過ぎている。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(直近3か月に販売価格が観測できた客室10室以上の施設のうち開業日が確認できる16,401施設・1,403,755室)。開業年ベースであり、昇降機をすでに更新済みの施設を含む

これから10年のあいだに開業25年を迎えるのは、2002〜2011年開業の2,626施設・260,107室だ。2001年以前の開業は6,687施設・542,590室あり、両者を合わせると開業年が分かる客室の57.2%が、今後10年以内に一度は更新の検討時期を通ることになる。2005〜2009年は5年で1,594施設・166,359室と開業が多かった時期で、この世代の更新検討が2030年代前半に集中する点は、資金計画の上で押さえておきたい。

1970〜90年代開業の425,971室を業態別に分けると、ビジネスホテルが1,755施設・176,209室、シティホテルが602施設・111,091室、リゾートホテルが491施設・56,109室、旅館が1,407施設・49,075室だった。客室数の帯では100〜199室が874施設・121,743室と最も多く、1基あたりの負担が大きくなる50〜99室の帯にも1,163施設・83,082室がある。エレベーター以外の設備も含めて更新周期が重なる築25〜35年の客室ストックは、築25〜35年のホテル・旅館は21.4万室で都道府県別・業態別に数えている。

工法別の費用と停止期間 — 制御3〜15日、準撤去15〜25日、全撤去25〜40日

エレベーターの更新は、どこまで機器を入れ替えるかで3つの工法に分かれる。制御盤など制御系だけを替える「制御リニューアル」、かごや巻上機を替えて既設の一部(レールや乗り場の枠など)を残す「準撤去リニューアル」、すべてを撤去して新設する「全撤去リニューアル」である。費用と使えない期間は工法でおおきく変わる。

エレベーター更新の工法別 費用と使えない期間(1基あたりの目安)
工法主な入替範囲費用目安(1基)使えない期間試算の中央値
制御リニューアル制御盤など制御系約400万〜700万円約3〜15日550万円・9日
準撤去リニューアルかご・巻上機・制御盤など(既設の一部を流用)約700万〜1,000万円約15〜25日850万円・20日
全撤去リニューアル機器一式を撤去・新設約1,200万〜1,500万円約25〜40日1,350万円・32日

出典:比較ビズ「エレベーターリニューアルの費用相場」(2024年9月13日更新)、横浜市「マンション管理コラム」(2026年9月9日更新)よりホテルバンク編集部作成。費用・期間は一般的な目安で、仕様・階床数・メーカーにより異なる

停止期間が長くなる理由は、発注から機器の製作に約50〜120日かかり、その後に現場で既設機器の撤去と据付を行うためだ。発注から着工まで数か月〜半年以上を要するので、閑散期に工事を合わせるには、着工の1年近く前から段取りを始める必要がある。メーカー各社は、新旧の機器を同時に制御できる盤を使って工事を分割し、作業のない時間帯は運転を続けられる工法も用意している。客室を止めたくない施設は、工事費だけでなく停止日数を比べて工法を選ぶことになる。

更新までの毎年の固定費として、保守契約もある。部品交換まで含むフルメンテナンス契約は月額約3万〜6万円、点検と消耗品の補充が中心のPOG契約は月額約2万〜5万円が目安とされ、メーカー系か独立系かで幅が出る。年額に直すとフルメンテナンスは1基約36万〜72万円で、1基で50室の施設なら1室あたり年0.72万〜1.44万円、3基で250室なら年0.43万〜0.86万円になる。

3規模の試算 — 準撤去の実質負担は1室13.2万〜22.8万円

ここまでの数字を使い、客室数の異なる3つのモデル施設で1室あたりの負担を試算する。工事費は1基あたりの費用を客室数で割り、工事中に販売を見送る客室の売上は「対象客室数×販売を見送る割合×稼働率×ADR×停止日数」で見積もった。複数基の施設は1基ずつ順番に工事する前提とした。基数そのものをどう見積もるか(客用は100〜200室に1台が目安)は、ホテルのエレベーターは何基いるかで整理している。

3規模のモデル施設 — 準撤去リニューアルの1室あたり負担
試算前提50室・1基120室・2基250室・3基
想定業態旅館ビジネスホテルシティホテル
ADR(推定成約・全国)¥15,170(N=6,814)¥8,865(N=7,427)¥13,639(N=1,134)
稼働率(観光庁・2025年)38.2%75.3%74.1%
工事中に販売を見送る客室の割合(仮置き)50%10%5%
準撤去の工事費(1室あたり)17.0万円14.2万円10.2万円
販売を見送る客室の売上(施設計)約290万円(20日)約320万円(40日)約758万円(60日)
同・1室あたり5.8万円2.7万円3.0万円
準撤去の実質負担(1室あたり)22.8万円16.8万円13.2万円
25年で積み立てる場合(1室・年)0.91万円0.67万円0.53万円
年間の客室売上に対する割合0.43%0.28%0.14%

出典:メトロエンジン株式会社、ホテルバンク編集部作成(ADRはメトロエンジンリサーチの推定成約ADR、稼働率は観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年確定値、工事費・停止期間は比較ビズ・横浜市の目安の中央値)。基数と販売を見送る割合は試算上の仮置き

1基で全館を支える50室の施設は、工事中に階段しか使えなくなるため、上層階の客室の販売を絞らざるを得ない。ここでは客室の半分の販売を見送る前提を置いたが、それでも1室あたりの実質負担は22.8万円で、工事費17.0万円に販売機会の5.8万円が上乗せされる形になる。2基・3基の施設は1基ずつ順番に工事を進められるので、販売への影響は輸送力が落ちる分の一部にとどまり、1室あたりの実質負担は16.8万円、13.2万円まで下がる。

出典:メトロエンジン株式会社、ホテルバンク編集部作成(工事費は1基あたりの目安の中央値、販売を見送る客室の売上は上表の前提による)

工法を変えた場合の幅も確かめておく。制御リニューアルで済む場合の実質負担は50室で13.6万円、120室で10.4万円、250室で8.0万円に下がり、全撤去では36.3万円、26.8万円、21.1万円に上がる。同じ規模でも工法の選び方で負担はおよそ2.6倍の幅を持つ。どの工法を選べるかは、既設機器の状態や交換部品の供給状況で決まるので、保守会社の劣化診断を更新予定の数年前から受けておくと、選べる工法の幅を保ちやすい。

販売を見送る客室の割合は試算上の仮置きなので、工事費の幅と合わせて動かしておく。120室・2基のビジネスホテルで、準撤去の1基あたり工事費(目安の下限700万円・中央値850万円・上限1,000万円)と販売を見送る割合(5〜30%)を掛け合わせると、1室あたりの実質負担は13.0万〜24.7万円の範囲になる。工事費が目安の下限から上限まで動くと負担は5.0万円変わり、見送る割合を10%から30%に広げると5.3万円上乗せされる。1基で全館を支える50室の旅館は見送る割合の影響がより大きく、仮置きの50%を30%に下げると実質負担は20.5万円、全館の販売を止めると28.6万円になる。

感応度 — 準撤去の実質負担(120室・2基、1室あたり): 1基あたり工事費 × 販売を見送る割合
1基あたり工事費見送り5%見送り10%(基本)見送り20%見送り30%
700万円(下限)13.0万円14.3万円17.0万円19.7万円
850万円(中央値)15.5万円16.8万円19.5万円22.2万円
1,000万円(上限)18.0万円19.3万円22.0万円24.7万円

出典:ホテルバンク編集部作成(ADR ¥8,865は推定成約ADR、稼働率75.3%は観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年1〜12月の確定値、停止日数は1基20日×2基の計40日、工事費は比較ビズの目安)。販売を見送る割合は仮置き

25年で割り戻すと、準撤去の積立額は1室あたり年0.53万〜0.91万円になる。年間の客室売上に対しては0.14〜0.43%で、1泊あたりに直すと、120室のビジネスホテル(稼働率75.3%、観光庁・2025年1〜12月の確定値)で1室1泊約25円だ。金額としては大きくないが、小規模な施設ほど1室あたりの負担が重く、しかも1回の工事でまとまった金額が出ていく。長期修繕計画のなかで年ごとの積立額として見える化しておくことが、資金繰りを平準化するうえで効いてくる。

定期検査と戸開走行保護装置 — 更新のタイミングで既存不適格を解消できる

費用の試算と並んで、制度面の時期も押さえておきたい。建築基準法第12条第3項により、昇降機の所有者は有資格者に定期検査をさせ、その結果を特定行政庁に報告することが義務付けられている。検査の間隔は、おおむね6か月〜1年の範囲で特定行政庁が定める。更新工事の前後も検査報告は続くので、工事の時期を検査の時期と重ねて段取りすると、点検・報告と工事の重複を減らせる。定期報告を含む法定点検の年額は、ホテルの法定点検費用は1室あたり年3,400〜12,600円で1室あたりに直して試算している。

もう一つの節目が、戸開走行保護装置である。扉が開いたままかごが動き出す事故を防ぐ装置で、地震時管制運転装置とともに2009年(平成21年)9月28日から設置が義務付けられた。国土交通省によると、それより前に設置されたエレベーターは、全面的な撤去・新設を行うまでは設置義務がなく、既存不適格として扱われる。2023年1月の同省の発表では、令和3年度に定期検査報告のあったエレベーター742,934台のうち、装置が設置されていたのは238,154台(32.1%)だった。

昇降機の定期検査報告と戸開走行保護装置の扱い
項目内容
定期検査報告建築基準法第12条第3項。有資格者が検査し、特定行政庁に報告(おおむね6か月〜1年の範囲で特定行政庁が時期を定める)
戸開走行保護装置・地震時管制運転装置2009年9月28日以降に設置するエレベーターに義務付け
それ以前の設置分全面的な撤去・新設まで設置義務なし(既存不適格)。後付けした場合は、以後の定期検査報告で設置日と大臣認定番号等を記載
設置状況(令和3年度報告分)742,934台のうち238,154台(32.1%)、うち任意設置59,898台

出典:国土交通省「戸開走行保護装置の設置状況について」(2023年1月10日)、札幌市「昇降機の安全について」、近畿地方整備局資料よりホテルバンク編集部作成

メトロエンジンリサーチの施設データで2008年以前に開業した施設は8,467施設・728,769室あり、開業年が分かる客室の51.9%を占める。建物と同時に設置したエレベーターをそのまま使っていれば、装置は任意設置の扱いになる。全撤去リニューアルを選べば装置の設置が求められ、準撤去や制御リニューアルでも装置を後付けする選択肢がある。宿泊者の安全性を説明しやすくなる点も含めて、更新の時期を装置の設置と同じ計画に載せておくとよい。

運営への示唆 — 「いつ・いくら」を長期修繕計画に載せる

ここまでの数字を、運営者の段取りに置き直してみる。第一に、時期の目安は開業年から逆算できる。開業25年前後で保守会社の劣化診断を受け、工法の候補と停止日数の見積もりを取っておけば、発注から着工まで半年以上かかる段取りを閑散期に合わせやすい。2002〜2011年開業の260,107室はこれから10年で、2001年以前開業の542,590室はすでにこの時期に入っている。

第二に、積立額は客室数と基数で大きく変わる。準撤去を前提にすると1室あたり年0.53万〜0.91万円が目安で、1基で全館を支える小規模な施設ほど1室あたりの負担が重い。工事中に販売を見送る客室の売上は工事費のおよそ2〜3割に相当するため、工事費だけでなく販売機会まで含めた金額で積み立てておくと、計画と実際のずれが小さくなる。

第三に、更新は宿泊者の体験を上げる機会でもある。口コミの言及率は500室以上で3.91%、大型リゾートでは5.76%と高く、改善を求める文脈が約6割を占めた。台数・速度・群管理を見直す更新は、待ち時間という目に見える体験を変えられるので、口コミの評価を伸ばす余地が大きい投資になりうる。工事の告知と代替動線の案内を丁寧に行えば、工事期間そのものを「設備を新しくしている宿」という前向きな情報として伝えることもできるだろう。

試算に関する注意:工事費・停止期間・保守費用は公開されている一般的な目安のレンジで、実際の金額は昇降機の仕様、停止階数、メーカー、地域、工事時期によって変わる。基数と工事中に販売を見送る客室の割合は試算上の仮置きである。ADRは推定値(REIT開示実績との照合で誤差中央値約7%・税抜相当)で、稼働率は観光庁の全国・施設タイプ別の年間値を用いた。開業年代別のストックは建物の開業年ベースで、昇降機をすでに更新済みの施設を含む。実際の更新判断には保守会社の劣化診断と見積もりが必要である。

よくある質問

Q. ホテルのエレベーター更新費は1室あたりいくらか。
A. 準撤去リニューアル(1基約700万〜1,000万円、中央値850万円)で試算すると、50室・1基で1室17.0万円、120室・2基で14.2万円、250室・3基で10.2万円になる。工事中に販売を見送る客室の売上を含めた実質負担は1室13.2万〜22.8万円である。

Q. エレベーターの更新時期の目安はいつか。
A. 耐用年数の目安は25〜30年で、設置後20〜30年頃が更新を検討する時期とされる。発注から着工まで数か月〜半年以上かかるため、開業25年前後で劣化診断を受けておくと段取りを組みやすい。

Q. 古いエレベーターに戸開走行保護装置を付ける義務はあるか。
A. 2009年9月28日より前に設置されたエレベーターは、全面的な撤去・新設を行うまで設置義務はなく、既存不適格として扱われる。全撤去リニューアルでは設置が求められ、それ以外の工法でも後付けを選べる。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

宿泊者口コミはホテルバンク編集部による口コミのNLP解析(口コミ20件以上・直近24か月にエレベーターへの言及が1件以上ある15,579施設・7,644,556件、2024年10月〜2026年10月)。客室ストックと開業年はメトロエンジンリサーチの施設データ(直近3か月に販売価格が観測できた客室10室以上の19,608施設・1,503,325室、うち開業日が確認できる16,401施設・1,403,755室)。ADRはメトロエンジンリサーチの推定成約ADR(2025年10月〜2026年9月)、稼働率は観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年確定値。

■ 試算前提

50室・1基(旅館)、120室・2基(ビジネスホテル)、250室・3基(シティホテル)の3モデル。工事費は1基あたり目安の中央値(制御550万円・準撤去850万円・全撤去1,350万円)、使えない期間は1基あたり9日・20日・32日とし、複数基は1基ずつ順番に工事する。販売を見送る客室の売上=客室数×販売を見送る割合(50%・10%・5%の仮置き)×稼働率×ADR×停止日数。積立額は耐用年数の目安25年で均等に割った。

■ 限界・留意点

工事費・停止期間・保守費用は公開されている一般的な目安で、昇降機の仕様・停止階数・メーカー・地域・工事時期で変わる。基数と販売を見送る割合は仮置き。ADRは推定値(税抜相当)、稼働率は全国・施設タイプ別の年間値。開業年代別のストックは建物の開業年ベースで、昇降機を更新済みの施設を含む。口コミの言及率は言及の有無と文脈の分類であり、設備の性能や安全性を評価したものではない。

■ 出典

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