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ホテルのGOPとは?計算式と2026年電気代高騰の影響試算(200室/500室モデル)

投稿日 : 2026.05.31 更新日 : 2026.09.02
2026年夏季の電気代高騰がホテルGOPに与えるインパクト試算

GOP(Gross Operating Profit・営業総利益)とは、ホテルの売上高から人件費・水道光熱費・販売管理費などの運営費用を差し引いた利益で、ホテル運営の収益力を測る中核指標である。2026年夏も全国的に気温が高い傾向が続く見込みで、気象庁・日本気象協会の暖候期予報は40℃以上の「酷暑日」が全国延べ7〜14地点で観測される可能性を示している。電気料金は東京電力エリアで高圧法人向け単価が前年同月比約1.8倍の水準で推移するなか、宿泊業の主要なオペレーティングコストである空調・給湯の負担は確実に重くなる。本稿では中規模ビジネスホテル200室と大規模リゾート500室の2モデルケースで、夏季3か月の電力消費上振れがGOP(営業総利益)にどれだけ食い込むかを試算し、観光庁の省力化投資補助金や設定温度マネジメント、空調更新ROIといった具体的な打ち手の経済合理性を定量化する。

本記事における指標の定義

  • ADR(平均客室単価):OTA等で公開されている販売価格の平均値。実際の成約価格とは異なります。2名1室利用時の1室あたり料金(税込)・全プラン平均(素泊まり〜食事付きプランを含む)。
  • GOP(営業総利益):売上から人件費・水道光熱費・販売管理費等の運営費用を差し引いた利益。本稿では業界標準値として宿泊特化型30〜40%、リゾート20〜30%を採用。
  • 光熱費比率:宿泊業における対売上高水道光熱費率。中小企業実態基本調査ベースで11.2%、業態別では8〜12%レンジが標準。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ、観光庁、経済産業省資源エネルギー庁、中小企業実態基本調査、各電力会社公表データ
Key Takeaways
  • 2026年夏は気象庁が40℃以上酷暑日を全国延べ7〜14地点と予想、東京電力高圧単価は前年同月比約1.8倍で推移し、空調コスト上振れは構造的に確実。
  • — 200室ビジホモデル:夏季3か月の追加電気代は約184万円、GOP感応度は売上の約0.78ポイント圧迫(ADR¥15,000・OCC85%想定)。
  • — 500室リゾートモデル:追加電気代は約1,058万円、絶対額は大きいが対売上比0.32%とGOPインパクトは相対的に軽い。
  • — 業界平均では宿泊業の光熱費比率は売上の11.2%、うち空調が消費電力の50%以上を占めるため、設定温度1℃緩和で電力10%削減の即効薬が機能する。
  • — 短期(設定温度マネジメント)・中期(空調更新ROI+補助金)・長期(ダイナミックプライシングで電気代をADRに転嫁)の3層防衛で「夏季は儲かる季節」を死守できる。

ホテルのGOPとは — 定義・計算式・GOPPARとの関係

GOP(Gross Operating Profit・営業総利益)とは、ホテルの総営業収益(客室・料飲・その他部門の売上合計)から、各部門の費用と、管理費・営業マーケティング費・施設管理費・水道光熱費といった運営費用を差し引いた利益を指す。ホテル会計の国際標準であるUSALI(Uniform System of Accounts for the Lodging Industry)に基づく指標で、オーナー・運営会社・金融機関の三者が「運営の収益力」を横比較するための共通言語として広く使われている。

GOPの計算式と関連指標

  • GOP = 総営業収益 −(部門費用 + 人件費・水道光熱費・販売管理費などの運営費用)
  • GOP率(%) = GOP ÷ 総営業収益 × 100
  • GOPPAR = GOP ÷ 販売可能客室数(客室数 × 営業日数)

営業利益との違い:GOPは、賃借料(リース料)・固定資産税・保険料・減価償却費・FF&E(家具・什器・備品)更新積立といった「物件の保有に紐づくコスト」を差し引くの利益である点が、損益計算書上の営業利益と異なる。同じホテルでも所有直営か賃借か、運営受委託(MC)方式かによって営業利益は大きく変わるが、GOPはこれら保有形態の影響を受けにくいため、運営オペレーションそのものの巧拙を施設間で比較する指標として機能する。

GOPPARとの関係:売上効率の指標であるRevPAR(販売可能客室1室あたり売上)に対し、GOPPARは「販売可能客室1室あたりの利益」を測る。ADRやOCCが伸びてRevPARが上がっても、人件費や水道光熱費がそれ以上に膨らめばGOPPARは悪化する。2026年夏のようにADRが前年比2桁で上昇する一方、電力単価が約1.8倍になる局面では、RevPARだけを見ていると収益の実態を見誤る。以降の試算では、このGOPを使って電気代高騰のインパクトを定量化する。

2026年夏のマクロ環境 — ADRは上振れ、電気代も上振れ

気象庁が4月に発表した暖候期予報によれば、2026年6〜8月の気温は全国的に平年より高く、太平洋高気圧の本州付近への張り出しが強くなる見込みである。日本気象協会は40℃以上の酷暑日を全国延べ7〜14地点と予想しており、2025年ほどの極端値には届かないものの、近年の記録的高温に次ぐレベルとなる可能性が高い。

需要側は強い。メトロエンジンリサーチが集計するOTA公開価格データによれば、主要6都道府県の2026年7〜8月ADRは前年同月比で全エリアプラスとなり、京都府は7月に¥35,012→¥44,205(+26.3%)、大阪府は7月に¥23,142→¥28,712(+24.1%)と顕著な上昇を示している。ところがコスト側、特に電気料金は東京電力EPの高圧プランで2025年4月¥11.45/kWh→2026年4月¥20.62/kWhと約1.8倍にまで上がっており、燃料費調整単価が上限張り付き状態の関西電力エリア以外では2026年6月検針で再度値上げとなった。

つまり、売上は前年比+10〜20%の追い風がある一方、変動費の中核である電力単価は前年比でほぼ倍化している。トップラインの成長が原価上昇に吸収されてしまえば、現場のGOPはむしろ縮むという反転リスクが現実味を帯びる。猛暑による電力負荷と需要シフトの相互作用については、猛暑×電力高×需要シフト — 2026年夏、館内完結型ホテルの追い風で、館内完結型ホテルに生まれる追い風を含めて分析している。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

業界平均ベンチマーク — 光熱費は売上の11.2%、空調が消費電力の半分以上

試算の出発点として、まず宿泊業の光熱費構造を確認する。中小企業実態基本調査ベースの「エネルギー費(水道光熱費+燃料費)率」は宿泊業全体で11.2%、テーマ要件にあるとおり業態によって8〜12%のレンジに収まる。日本建築学会の建築設備技術者協会が公開する「ビジネスホテルにおけるエネルギー・環境負荷低減」調査は、客室1室1日あたりの電力消費が冬期で平均5.3kWh、夏期で5.9kWhと報告しており、夏期にはこのうち約58%がエアコンの動力に充てられている。

もう一つの重要なベンチマークが「設定温度1℃で空調冷房電力10〜13%削減」である。経済産業省委託の業務用ビル省エネ事業パンフレットや関西電気保安協会の試算では、冷房設定温度を1℃緩和すれば冷房消費電力を約13%、暖房は約10%削減できる。これは「設定温度28℃」というクールビズ運動の根拠でもあるが、ホテルにおいては顧客満足度を毀損しないオペレーションが前提となるため、後述する湿度管理・送風管理との組み合わせで現実解を探る必要がある。電気料金の構造的な上昇要因と供給側コストへのインパクトについては、2026年電気料金上昇がホテル経営に与える供給側コスト構造インパクト分析が再エネ賦課金や燃料費調整単価の動向まで掘り下げている。

指標標準値出典
宿泊業の対売上水道光熱費率11.2%中小企業実態基本調査(宿泊業)
客室1室1日あたり電力消費(夏期)5.9 kWh日本建築学会/環境工学論文集
夏期客室電力に占める空調比率約58%同上(7〜9月実測)
設定温度1℃緩和の冷房電力削減約13%関西電気保安協会/省エネルギーセンター
2026年高圧電気料金(東京電力EP)¥20.62/kWh電力アドバイザーズ 2026年4月時点
2026年高圧電気料金(関西電力)¥18.39/kWh新電力ネット 2026年2月時点
高効率機種への更新による省エネ効果年20%以上環境省 業務用建築物脱炭素改修事業

出典:各種公的統計よりホテルバンク編集部作成

モデルケース① 中規模ビジネスホテル200室の夏季試算

都心の中規模ビジネスホテル(200室、東京電力エリア、ADR¥15,000、夏季OCC85%想定)を例にとる。客室1室1日あたり夏期電力消費5.9kWh×200室×OCC85%×92日(6〜8月)で月平均電力消費は約30,805kWh、夏季3か月で約92,400kWhとなる。共用部・厨房・給湯を含めた総電力消費は経験則で客室電力の約2.0〜2.3倍に膨らむため、ホテル全体では夏季3か月で約20万kWh、年間ベースだと約60〜70万kWh規模となる。

これを2025年→2026年の単価変化に当てはめると、東京エリアの高圧契約で前年同月比+9.17円/kWhの上振れが発生する場合、夏季3か月の追加電気代は約184万円となる。売上規模はADR¥15,000×200室×OCC85%×92日で約2.35億円、業界標準GOP35%なら理論GOPは約8,200万円。ここに電気代上振れ184万円が直接ヒットすると、GOPは▲2.2%目減りする計算だ。

さらに、酷暑日が想定を超えて気温が1〜2℃上振れた場合、冷房負荷は加速度的に増加する。冷房負荷は気温差の指数関数に比例するため、平均気温+1℃で空調電力は約13%増、+2℃なら約25%増となる。これを反映すると追加電気代は最悪ケースで月70〜80万円、夏季3か月で約230万円規模まで膨らむ可能性がある。

出典:メトロエンジン株式会社、ホテルバンク編集部作成(経済産業省・電力会社公表データ・建築学会調査ベース試算)

モデルケース② 大規模リゾート500室の夏季試算

次にリゾート型ホテル(500室、ADR¥45,000、夏季OCC80%、レストラン・大浴場・プール完備)を試算する。リゾートは客室面積が広く、レストラン・宴会場・大浴場・プール設備を抱えるため、客室1室1日あたり電力消費はビジホの1.5〜1.8倍と見て9.5kWhを採用する。総電力消費は客室電力×3.0倍で換算し、夏季3か月で約105万kWh規模となる。

沖縄・北海道リゾートエリアは九州電力・北海道電力エリアとなるが、夏季高負荷時期の単価上振れを保守的に+5.0円/kWhと置くと、夏季追加電気代は約525万円。リゾートの場合は給湯(大浴場・客室バス)の燃料費上振れも無視できず、LPG・重油価格の前年比+10〜15%を加味すると、ユーティリティ全体の追加負担は700〜800万円規模になりうる。

売上は¥45,000×500室×80%×92日で約16.6億円。リゾートGOPは業態構造上ビジホより低く25%が目安なので理論GOPは約4.1億円。追加電気代525万円はGOPの▲1.3%、ガス含むユーティリティ全体だと▲1.8〜2.0%が浸食される。リゾートはレストラン・宴会・スパなど多角収益によりトップラインへの追い風も大きいが、固定費構造が重く、ユーティリティ感度は単価で見るとビジホよりむしろ高い。

出典:メトロエンジン株式会社、ホテルバンク編集部作成(経済産業省・電力会社公表データ・建築学会調査ベース試算)

2モデル比較 — リゾートは規模で勝る一方、GOP感度はビジホがやや高い

2モデルを並べると、絶対額ではリゾート500室が大きいが、対GOP比率ではビジホ200室の方がやや影響を受けやすい。これはビジホの客室特化型コスト構造(電気代以外の固定費が薄く、相対的に電気代の比率が高い)と、GOP水準そのものの差異による。

項目中規模ビジホ200室大規模リゾート500室
想定ADR(夏季平均)¥15,000¥45,000
想定OCC(夏季平均)85%80%
夏季3か月売上約¥2.35億円約¥16.6億円
想定GOP率35%25%
夏季3か月電力消費総量約20万kWh約105万kWh
電気代単価上振れ(前年比)+¥9.17/kWh+¥5.00/kWh
夏季追加電気代(ベース)約184万円約525万円
酷暑シナリオ(+2℃)追加約230万円約720万円
対GOP浸食率(ベース)▲2.2%▲1.3%

出典:メトロエンジン株式会社、ホテルバンク編集部作成

出典:メトロエンジン株式会社、ホテルバンク編集部作成

REIT実績で確認するユーティリティ感応度 — JHRの夏季月次

モデル試算の妥当性をマクロデータで補強しよう。ジャパン・ホテル・リート投資法人(8985)の月次運営実績によれば、2025年8月のADRは¥25,663(前年同月比でも回復基調)、稼働率88.1%とサマーピーク需要を取り込んだ。一方で同月の運営費用は気温・水道光熱費の影響を受ける時期となり、GOPベースでは売上増にもかかわらず収益効率がやや圧迫される傾向が、過去のIR資料でも繰り返し言及されている。

JHRのほか、星野リゾート・リート投資法人(3287)、いちごホテルリート投資法人(3463)、インヴィンシブル投資法人(8963)、日本ホテル&レジデンシャル投資法人(3472)、森トラストリート投資法人(8961)、霞ヶ関ホテルリート投資法人(401A)の各社月次データを照合すると、夏季月の売上は通年で最も高い水準に達するが、同時期は人件費・光熱費・燃料費が全て上振れる季節でもあり、決算公表時のコメントで「燃料費調整単価の上昇によりGOP増加幅が抑制された」旨が記載されるケースが目立つ。本稿の試算で示した「売上+10〜20%の追い風があっても、電力単価1.8倍を吸収しきれない」という構造は、上場REITの実績ベースでも合理的に裏付けられる。

出典:ジャパン・ホテル・リート投資法人 月次運営状況よりホテルバンク編集部作成

打ち手① 設定温度マネジメント — 即効性ある最初の防衛線

最も即効性が高く投資不要なのが、客室・共用部の設定温度ガイドラインの見直しである。設定温度を1℃緩和すれば冷房電力は約13%削減できる。中規模ビジホ200室の試算では、客室空調が夏季客室電力の約58%(つまり夏季3か月で約11.6万kWh相当)を占めるため、1℃緩和で約1.5万kWh、電気代換算で約31万円の削減が可能。同様にリゾート500室では約7.9万kWh・約158万円の削減効果が見込める。

ただし「設定温度28℃」の機械的な運用は顧客満足度(CSAT)を毀損するリスクがある。実務的には①ロビー・廊下など共用部の設定温度を27℃→28℃、②客室は26℃を基準に湿度50〜55%を厳守、③無人客室の在室検知連動で27℃へ自動切り替え、④夜間チェックアウト後の予冷停止、といったオペレーションを組み合わせて、体感温度を保ちながら消費電力を絞るのが現実解となる。送風量・湿度管理を併用すると、設定温度を変えなくても体感温度を1℃下げる効果があり、これがホテル現場で最も使われている技法である。

打ち手② 空調設備更新ROI — 補助金活用で回収期間は半減

築15年超の空調機器(特にビジホ初期EHP)は高効率機種への更新で年20〜30%の電力削減が見込める。中規模ビジホ200室で全客室EHP(200台、1台50万円・工事込み)を更新する場合、総投資額は約1億円。年間電気代削減を電力消費20%減=約13.8万kWh×¥20.62/kWh=約284万円とすると、補助金なしでの単純回収期間は約35年と長く、機器寿命を超えてしまう。

ここで効くのが補助金活用だ。経済産業省・環境省系の「業務用建築物の脱炭素改修加速化事業」は、ホテルが対象施設に含まれ、補助率1/3〜1/2、最大数千万円規模の支援が受けられる。観光庁の「観光地・観光産業における省力化投資補助事業」(令和7年度補正で上限¥1,000万円に倍増)も省エネ性能向上設備を対象に含めるケースがある。これらを組み合わせて自己負担を5割削減できれば、回収期間は17〜18年に短縮される。さらに更新タイミングを設備の経年劣化(COP低下による消費電力増)と合わせれば、実質的な投資判断は「いずれ更新するなら今、補助金を取って」となる。観光DX関連を含む補助金制度の俯瞰と申請ステップは、【2026年度版】ホテル・旅館の観光DX補助金完全ガイドで7制度を横断比較しており、設備更新と省力化投資をセットで申請する戦略立案に有用である。

主要補助金制度対象補助率上限
観光地・観光産業における省力化投資補助事業省エネ設備・PMS・自動チェックイン等1/2¥1,000万円
宿泊施設サステナビリティ強化支援事業高効率空調・LED・断熱改修1/2¥1,000万円
業務用建築物の脱炭素改修加速化事業ホテル・病院の30%以上省エネ改修1/3〜1/25億円規模
省エネルギー投資促進支援事業(省エネ補助金)高効率空調・コージェネ・BEMS1/3〜1/215億円

出典:観光庁、環境省、経済産業省 各補助金公募資料よりホテルバンク編集部作成(2026年5月時点)

出典:メトロエンジン株式会社、ホテルバンク編集部作成(投資¥1億円・年効果¥284万円ベース試算)

打ち手③ ダイナミックプライシングで電気代上振れをADRに転嫁

守りの省エネ対策と並行して、攻めのレベニューマネジメントで電気代上振れを宿泊単価に転嫁することも検討に値する。京都府の2026年7月ADRが前年比+26.3%、大阪府が+24.1%という強い需要環境は、ユーティリティコスト上昇の一部を吸収できる地合いを示している。中規模ビジホ200室のケースで、夏季ADRを¥15,000→¥15,200に+200円(約1.3%)上乗せできれば、追加売上は¥15,640,000、電気代上振れ184万円を十二分にカバーする計算だ。

もちろん競合動向との整合性が重要で、エリア平均ADRを上回る価格設定は需要弾性によりOCCを落とすリスクを伴う。実務上は①LOS(最低宿泊数)の戦術的な引き上げで実質ADRを底上げ、②素泊まり→朝食付きへのアップセル比率を高める、③連泊割引の縮小、④ハイ需要日に限定した動的価格上乗せ、といった小刻みな調整で電気代上振れを段階的にADRに織り込むのが現実的である。

打ち手まとめ — 短期・中期・長期の3層構造で挑む

夏季電気代インパクトへの対応は、施策の即効性とROIで3層構造に整理できる。短期(今すぐ)は設定温度マネジメントと運用ガイドライン徹底でゼロ投資の電力削減を実現。中期(補助金申請2〜6か月)はLED化・高効率小型機器更新で部分的な設備刷新を進める。長期(1〜3年)は補助金フル活用の中核設備(空調・給湯)更新で、年間ユーティリティ20〜30%削減を狙う。

レイヤー施策投資年間効果回収
短期設定温度+送風・湿度管理、無人検知連動¥0〜50万▲5〜10%
短期ADR動的調整・LOS戦術・朝食UP率改善¥0+1〜2% ADR
中期LED化・小型インバータ機器更新¥1,000〜3,000万▲8〜15%3〜5年
中期観光庁省力化補助金活用+PMS/自動チェックイン補助1/2人件費▲2〜4年
長期高効率EHP・コージェネ・BEMS全面更新¥1〜3億▲20〜30%8〜15年

出典:メトロエンジン株式会社、ホテルバンク編集部作成

まとめ — 「夏季は儲かる季節」を死守するための定量設計

2026年夏は、需要環境(ADR上昇)とコスト環境(電力単価約1.8倍)が同時並行で動く特異な年である。中規模ビジホ200室でGOP▲2.2%、大規模リゾート500室でGOP▲1.3〜2.0%という浸食は、対策をとらずに放置すれば確実に経営インパクトとして顕在化する。ただし設定温度マネジメントだけで▲5〜10%、補助金活用の設備更新と組み合わせれば▲20〜30%の電力削減が現実的に視野に入る。攻めのレベニューマネジメントと組み合わせれば、電気代上振れを完全に吸収して例年並み以上のGOPを確保することは十分に可能だ。

重要なのは「打ち手の3層化」である。短期は無投資で運用改善、中期は数百万〜数千万の補助金活用設備投資、長期は1〜3億規模の中核設備更新と補助金フル活用、というレイヤー設計を持っていれば、夏季のたびに繰り返される電気代変動の不確実性を、計画的なコストマネジメントに変換できる。気候の不確実性が常態化していくなかで、ユーティリティ感応度をオペレーション設計の中核に据えることが、これからのホテル経営に問われている。

⚠ 将来日程のADRに関する注意:本記事の2026年7〜8月ADRは調査時点でOTAに公開されている販売価格の平均であり、チェックイン日に近づくにつれて変動します。現時点で高く設定されている価格が直前値下げで下落する可能性がある点にご留意ください。電力料金単価・補助金制度の上限額・申請要件は2026年5月時点の各種公表データに基づきます。試算値はモデルケースであり、実際のホテル運営における結果を保証するものではありません。

よくある質問(FAQ) — ホテルのGOP

Q. ホテルのGOPとは何ですか?

GOP(Gross Operating Profit・営業総利益)は、ホテルの総営業収益から部門費用と人件費・水道光熱費・販売管理費などの運営費用を差し引いた利益です。ホテル会計の国際標準USALIに基づく指標で、運営の収益力を測るモノサシとして使われます。

Q. GOPと営業利益の違いは何ですか?

GOPは賃借料・固定資産税・保険料・減価償却費・FF&E更新積立など物件の保有に紐づくコストを差し引く前の利益です。損益計算書上の営業利益はこれらを控除した後の数値のため、保有形態(所有直営・賃借・運営受委託)によって大きく変わります。GOPは保有形態の影響を受けにくく、運営の巧拙を施設間で比較しやすい点が特長です。

Q. GOPPARとは何ですか?RevPARとどう違いますか?

GOPPARはGOPを販売可能客室数(客室数×営業日数)で割った「1室あたり利益」の指標です。RevPARが1室あたり売上(売上効率)を測るのに対し、GOPPARは利益効率を測ります。ADR上昇でRevPARが伸びても、水道光熱費や人件費の増加が上回ればGOPPARは悪化します。

Q. 2026年夏の電気代高騰はGOPにどのくらい影響しますか?

本記事のモデル試算では、中規模ビジネスホテル200室(ADR¥15,000・OCC85%想定)で夏季3か月の追加電気代は約184万円・GOP▲2.2%、大規模リゾート500室(ADR¥45,000・OCC80%想定)で約525万円・GOP▲1.3%と試算しています。酷暑シナリオ(平均気温+2℃)ではそれぞれ約230万円・約720万円まで拡大しうる計算です。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

気象庁暖候期予報(2026年)、日本気象協会、東京電力・関西電力公表料金、中小企業実態基本調査、観光庁省力化投資補助金公開資料、ジャパン・ホテル・リート投資法人(証券コード8985)月次運営実績、メトロエンジンリサーチ&コンサルティング集計データ。

■ 試算前提

客室1室1日あたり夏期電力消費は中規模ビジホで5.9kWh、大規模リゾートで10.5kWh(業界平均ベンチマーク)。電気料金は東京電力高圧契約で前年同月比+9.17円/kWh、夏季は2026年6〜8月の92日換算。OCCは前年同月実績ベース(ビジホ85%・リゾート80%)、ADRは2026年4月時点公表値。光熱費比率は売上の11.2%(中小企業実態基本調査)を基準値とする。

■ 限界・留意点

本試算はモデルケース2件の単純化された電力単価上振れ試算であり、実際の電力料金は契約形態(高圧/低圧)、デマンド料金、燃料費調整単価の月次変動、再エネ賦課金の改定などにより乖離する。OCC・ADRもエリア・ブランド・季節要因で大きく変動し、GOPインパクトは個別物件の費用構造(人件費比率・販管費)に依存する点に留意されたい。

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