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熊本県ホテル投資マップ2026|南小国町29,800円・熊本市中央区8,600円、43市町村の単価階層と上位帯の空白

投稿日 : 2026.11.02

熊本県

投資・開発

熊本県ホテル投資マップ2026|南小国町29,800円・熊本市中央区8,600円、43市町村の単価階層と上位帯の空白

熊本県の宿泊ストックは熊本市の5区に客室の過半が集まり、ビジネスホテルが中核をなす一方で、阿蘇外輪山の内と外に広がる黒川・小国・南阿蘇・内牧の温泉地には、客室数が少なく単価の高い宿が連なっている。本稿では、メトロエンジンリサーチ&コンサルティングが集計した推定成約ADRを確定12ヶ月(2025年10月〜2026年9月)で市町村別に平均し、43市町村(熊本市は区単位)の単価階層を業態構成・供給・需給・立地条件と重ねて、県内のどの価格帯とエリアに投資の空白があるかを特定する。

本稿は当社の県別投資マップ系列(大分・高知・石川など)の熊本版にあたる。2026年7月28日の令和8年熊本地震と、10月1日に始まった九州ふっこう応援割(熊本県分)が単価と在庫に与えた影響は、既刊「黒川温泉 地震の影響は?南小国町は掲載63軒・9月ADR前年比+8.7%」で時系列を追っているため、本稿では市町村階層の構造に焦点を置き、地震後の月は注記付きで扱う。半導体工場周辺(菊陽町・大津町・合志市)の供給は「半導体4拠点のホテル市場2026」と重なるため、本稿では県内階層の中での位置づけにとどめる。

本記事のデータについて
• ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。
• エリア(都道府県・市区町村)単位のADRは、対象施設の推定成約単価の中央値(エリアの標準的な施設の水準)です。
• 掲載価格に言及する箇所は、2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
• OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。
• 出典:メトロエンジンリサーチ(国内約168,000施設のOTA公開価格を継続追跡、うち稼働確認済み約27,000施設)
  • 本稿の「12ヶ月平均」は確定した月次値(2025年10月〜2026年9月)の単純平均。推定の対象業態はビジネス・シティ・リゾート・旅館・カプセルで、貸別荘・民宿・ゲストハウス等は含みません。
  • LT(リードタイム)=宿泊日までの日数。ブッキングカーブはLT45〜LT1で描画しています。
  • 早期完売の判定=残室数(室ベース)が初めて0室に到達したリードタイム。OTA等での公開枠が総客室の30%以上の施設のみを集計対象としています。
  • 調査時点:2026年10月25日
県全体 推定成約ADR
¥10,600
確定12ヶ月平均・前年同期比−0.1%
熊本市5区の客室シェア
55.9%
推定OCC対象284施設・12,706室のうち7,100室
熊本市中心5km圏の1.8万円以上
1施設・203室
推定対象67施設・9,446室の2.1%
推定OCC(2026年9月)
88.0%
対象284施設/客室12,706・九州7県で2位
熊本市中心5km圏の客室
+39.6%
2017年7,168室→2026年10,009室
Key Takeaways
  • — 推定成約ADR 10,600円・前年同期比−0.1%:熊本県の確定12ヶ月平均(2025年10月〜2026年9月)は前年同期の10,600円と同水準。2025年11月(+5.5%)・2026年1月(+8.3%)の上振れを、2026年6〜8月(−6.0%〜−10.0%)が打ち消した形で、9月は+9.1%に戻した。
  • — 43市町村は4層:温泉・高原の高単価(南小国町29,800円・南阿蘇村25,500円・玉名市21,100円・阿蘇市19,200円)、中単価(上天草市13,500円・熊本市北区13,200円)、県都・業務中核(中央区8,600円・大津町8,300円・天草市8,200円)、価格訴求型(人吉市6,900円・八代市6,400円)。
  • — 熊本市中心5km圏は1.8万円以上が1施設・203室(2.1%):推定対象67施設・9,446室のうち8千〜1.2万円帯が3,991室と最も厚く、1.2万〜1.8万円帯(13施設・2,247室)は、お盆4日間の全日程で完売に到達した価格帯にあたる。
  • — 郡部の1.2万〜1.8万円帯は36施設・1,064室:お盆期間は38.2%の日程が宿泊日の30日以上前に完売し郡部の全価格帯で最も早く、GW期間も32.7%の日程が完売に到達して1.8万円以上の帯(13.0%・5.4%)を大きく上回った。
  • — 推定OCC 88.0%(2026年9月・N=284施設)は九州7県で福岡県(88.3%)に次ぐ。熊本市中心5km圏の客室は9年で+39.6%、半導体工場周辺3km圏は+93%と供給が積み上がる中で、熊本市は上位帯の新設・転換、郡部は10〜30室規模の中価格帯がデータと整合する。

県全体の推定成約ADRは10,600円、前年同期比−0.1% — 地震の夏を秋で取り戻した

まず県全体の水準を押さえる。推定成約ADRの確定12ヶ月(2025年10月〜2026年9月)平均は10,600円で、その前の12ヶ月(2024年10月〜2025年9月)の10,600円とほぼ同水準(−0.1%)にとどまった。月次の対象施設数は366〜404施設で推移しており、系列の途中で母集団が大きく入れ替わった月はない。ただし12ヶ月の内訳はけっして平坦ではなく、上振れした秋冬と下振れした初夏〜夏が相殺した結果と読むのが正確である。

月別に見ると、ピークは11月と1月にある。2025年11月は11,900円と前年同月(11,200円)を+5.5%上回り、2026年1月も11,800円(+8.3%)と紅葉と年始の需要が単価を押し上げた。一方で2026年6月は9,000円(−6.0%)、7月は9,200円(−10.0%)と前年を大きく下回った。7月28日に発生した令和8年熊本地震(宇城市・氷川町で震度7)の影響は7月末の数日と8月に表れ、8月は10,800円(−5.0%)にとどまった。それでも9月は11,000円(+9.1%)と前年を上回って戻しており、県全体の単価は「秋冬の行楽期に上振れし、初夏に落ち着く」季節性を保ったまま、地震後の落ち込みを1ヶ月あまりで回復したことがわかる。発災直後からの日次の戻り方は、熊本のホテル、キャンセル19万人泊の後|黒川温泉・阿蘇の回復を日次46日で測るで46日分を追っている。

業態別に12ヶ月平均を比べると、旅館が17,000円(前年同期比−3.2%)、リゾートホテルが14,300円(+11.1%)、シティホテルが9,900円(+2.3%)、ビジネスホテルが7,100円(+3.3%)である。県全体の中央値が横ばいに見える背景には、対象施設の半数超を占める旅館の単価がわずかに下がり、業務需要を受けるビジネス・シティが上がるという、業態間の逆方向の動きがある。

熊本県 推定成約ADRの月次推移(年別オーバーレイ)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(月次対象366〜404施設・確定月のみ)

43市町村の単価階層 — 南小国町29,800円から氷川町5,100円まで

それでは市町村別に分解する。推定成約ADRが算出できた43市町村(熊本市は5区)を12ヶ月平均で並べると、県内の単価は大きく4つの層に分かれる。最上位は阿蘇外輪山の内外に広がる温泉・高原地帯で、南小国町(黒川温泉)が29,800円(推定対象42〜47施設)、南阿蘇村が25,500円、玉名市(玉名温泉)が21,100円、山鹿市(山鹿・平山温泉)が19,600円、阿蘇市(内牧温泉ほか)が19,200円、小国町(わいた温泉郷)が17,100円と続く。第2層は上天草市13,500円と熊本市北区13,200円(植木温泉)、水俣市10,100円の中単価帯である。第3層は県都の業務・観光中核で、中央区8,600円(推定対象55〜60施設)、大津町8,300円、天草市8,200円、西区8,200円、菊池市8,100円が8千円台に並ぶ。第4層は価格訴求型の拠点で、菊陽町7,300円、荒尾市7,200円、人吉市6,900円、八代市6,400円、宇城市5,700円などが位置する。

ただし郡部の多くは推定対象が1〜2施設であり、1軒の構成で値が大きく振れる。西原村の101,200円は1〜2施設の一棟貸し型高級施設が構成するもので、産山村(31,200円)・美里町・高森町なども同様である。そのため下表では推定対象が2施設以下、または12ヶ月そろわない市町村を「参考値」として区別した。前年同期比では、阿蘇市+12.0%、玉名市+8.1%、南小国町+7.6%、水俣市+7.7%と温泉地の多くがプラスである一方、小国町−8.9%、大津町−6.0%、菊陽町−6.7%、北区−4.3%はマイナスで、半導体工場周辺は2025〜2026年の大型開業で供給が先行したことが単価に表れている。

市町村別 推定成約ADR(確定12ヶ月平均)— 紺=温泉・高原の高単価、薄青=中単価、青=県都・業務中核、灰=価格訴求型。枠線のみの棒は施設数が少なく参考値
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(43市町村、推定対象は各市町村1〜60施設)
熊本県 市町村別 推定成約ADR(確定12ヶ月平均・2025年10月〜2026年9月)
市町村階層推定成約ADR
12ヶ月平均
前年同期比月次の最小〜最大推定対象
施設数
掲載
施設数
備考
西原村温泉・高原の高単価¥101,190+14.9%¥72,460〜¥135,41728参考値(施設数が少ない)
産山村温泉・高原の高単価¥31,248+4.3%¥26,266〜¥36,12812参考値(施設数が少ない)
南小国町温泉・高原の高単価¥29,755+7.6%¥25,067〜¥32,2334764
南阿蘇村温泉・高原の高単価¥25,513+5.2%¥22,525〜¥27,8981875
玉名市温泉・高原の高単価¥21,147+8.1%¥15,944〜¥25,7061214
山鹿市温泉・高原の高単価¥19,624−1.3%¥17,367〜¥22,0992430
美里町温泉・高原の高単価¥19,436—¥18,092〜¥20,77912参考値(施設数が少ない)・2ヶ月のみ
阿蘇市温泉・高原の高単価¥19,164+12.0%¥16,281〜¥21,6282563
小国町温泉・高原の高単価¥17,080−8.9%¥13,769〜¥19,3132126
高森町中単価¥14,920+7.9%¥13,254〜¥18,318214参考値(施設数が少ない)
上天草市中単価¥13,459−0.6%¥10,584〜¥15,6412153
北区中単価¥13,153−4.3%¥10,695〜¥16,0541111
あさぎり町中単価¥13,147−6.9%¥11,386〜¥16,20423参考値(施設数が少ない)
南関町中単価¥11,705+4.2%¥7,549〜¥13,73611参考値(施設数が少ない)
山江村中単価¥10,975+27.2%¥7,559〜¥17,86011参考値(施設数が少ない)
水俣市中単価¥10,050+7.7%¥7,050〜¥12,206810
湯前町県都・業務中核¥9,282+13.2%¥8,010〜¥11,71411参考値(施設数が少ない)
山都町県都・業務中核¥8,862—¥8,862〜¥8,86216参考値(施設数が少ない)・1ヶ月のみ
中央区県都・業務中核¥8,624+2.0%¥7,684〜¥10,4276094
大津町県都・業務中核¥8,346−6.0%¥7,966〜¥8,9611317
天草市県都・業務中核¥8,162+1.9%¥6,823〜¥10,5023162
西区県都・業務中核¥8,151−0.5%¥7,660〜¥9,2791026
菊池市県都・業務中核¥8,125+4.7%¥7,349〜¥10,2571421
御船町県都・業務中核¥8,084+8.9%¥6,911〜¥10,53314参考値(施設数が少ない)
苓北町県都・業務中核¥8,048+42.6%¥5,060〜¥10,47522参考値(施設数が少ない)
益城町県都・業務中核¥8,039+18.4%¥7,244〜¥11,16313参考値(施設数が少ない)
錦町県都・業務中核¥8,033−20.3%¥5,542〜¥11,08823参考値(施設数が少ない)
水上村価格訴求型¥7,736+23.0%¥5,587〜¥12,17034
菊陽町価格訴求型¥7,322−6.7%¥6,844〜¥8,24843
南区価格訴求型¥7,230+6.6%¥6,464〜¥9,00023参考値(施設数が少ない)
荒尾市価格訴求型¥7,171+2.0%¥6,166〜¥8,486513
相良村価格訴求型¥6,949+14.6%¥5,352〜¥10,42623参考値(施設数が少ない)
人吉市価格訴求型¥6,911+5.0%¥6,344〜¥8,1002530
芦北町価格訴求型¥6,518+11.5%¥5,568〜¥8,75933
八代市価格訴求型¥6,442+4.1%¥6,130〜¥6,6222023
長洲町価格訴求型¥6,327+4.5%¥5,958〜¥6,54922参考値(施設数が少ない)
宇土市価格訴求型¥6,088+3.0%¥5,955〜¥6,32037
嘉島町価格訴求型¥6,055+11.7%¥5,687〜¥6,28111参考値(施設数が少ない)
東区価格訴求型¥5,930+27.4%¥5,574〜¥6,63635
合志市価格訴求型¥5,907+0.1%¥5,719〜¥6,32311参考値(施設数が少ない)
宇城市価格訴求型¥5,662+8.3%¥4,930〜¥6,28849
和水町価格訴求型¥5,559+14.0%¥5,483〜¥5,59111参考値(施設数が少ない)
氷川町価格訴求型¥5,079+19.8%¥4,621〜¥7,79611参考値(施設数が少ない)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング。推定対象施設数は12ヶ月の最大値、掲載施設数はOTA等に価格が掲載された施設数(12ヶ月の最大値)。前年同期比は12ヶ月平均どうしの比較

推定対象が3施設以上ある23市町村に絞って月次の振れ幅を見ると、単価の安定性にも差がある。南小国町は12ヶ月を通じて25,100〜32,200円(最大/最小1.29倍)、中央区は7,700〜10,400円(1.36倍)、八代市は6,100〜6,600円(1.08倍)と、業務需要が厚い市ほど振れが小さい。対照的に玉名市は15,900〜25,700円(1.61倍)、水俣市は7,100〜12,200円(1.73倍)と、季節と催事で単価が大きく動く。投資の観点では、振れ幅の小さい市は固定費の回収計画が立てやすく、振れ幅の大きい市は繁忙期の取り切りがそのまま年間収益を左右する。

推定対象3施設以上の23市町村 — 月次の最小〜最大(棒)と12ヶ月平均(点)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(2025年10月〜2026年9月の月次値)

単価階層の地図 — 阿蘇外輪山の内外に高単価、熊本平野と八代・人吉に業務拠点

市町村別の推定成約ADRを地図に置くと、単価の地理がはっきりする。北東の阿蘇外輪山の北側斜面(南小国町・小国町・産山村)と南側のカルデラ内(阿蘇市・南阿蘇村・高森町)に高単価層が連なり、その西側の熊本平野(熊本市5区・大津町・菊陽町・合志市)と有明海沿い(玉名市・荒尾市)、八代海沿い(八代市・水俣市)、球磨川流域(人吉市)に業務拠点の単価帯が並ぶ。有明海の対岸にあたる天草(天草市・上天草市・苓北町)は、上天草市が13,500円、天草市が8,200円と島内でも性格が分かれる。

熊本県 市町村別 推定成約ADR(円の大きさ=掲載施設数、色=単価階層、枠線のみ=参考値)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(43市町村・確定12ヶ月平均)。円の位置は各市町村の代表点

業態で分解する — 熊本市5区はビジネス5,259室、郡部は旅館の小規模分散

単価階層の背景には業態構成の違いがある。2026年9月の推定OCC対象施設(OTA等での公開枠が総客室の30%以上の固定コホート、主要予約サイト掲載ベース)を市町村×業態で集計すると、県内284施設・12,706室のうち熊本市5区が58施設・7,100室で客室の55.9%を占める(市町村別の内訳は客室数上位21市町村・12,316室を集計)。そのうち中央区だけで39施設・5,538室、ビジネスホテルは5区合計で5,259室にのぼり、中央区の単価が県全体の中央値を下回る8,600円に収まるのは、この厚い業務ストックが中央値を形成しているためである。

郡部は構図が逆転する。南小国町は30施設・429室のうち旅館が28施設・390室、阿蘇市は21施設・773室のうち旅館が10施設・396室、山鹿市は17施設・364室のうち旅館が15施設・255室と、1施設あたり10〜40室の旅館が分散して高単価層をつくっている。一方、大津町は7施設・766室のうちビジネスホテルが6施設・712室、荒尾市は4施設・428室のうちビジネス2施設・295室と、業務拠点型の郡部も存在する。つまり熊本県の「郡部」は、温泉旅館の小規模分散と、工場・交通結節点に立地する大型ビジネスホテルという2つの顔を持つ。

客室数上位12市町村の業態構成(客室数に占める比率)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(2026年9月・推定OCC対象284施設・12,706室、主要予約サイト掲載ベース)

供給の性格 — 熊本市中心5km圏は9年で+39.6%、半導体工場周辺3km圏は+93%

供給側の動きは速い。通町筋を中心とする半径5km圏の客室数は、2017年の64施設・7,168室から2026年は85施設・10,009室へ、9年で+39.6%増えた(開業年が確認できない7施設・451室は不算入)。2021年の8,149室から2022年の9,100室へ1年で+951室と増えた局面が最大の山で、2026年も85施設・10,009室と前年比+510室の増加である。掲載ベースのストックは108施設・11,651室、うち直近3ヶ月に販売価格が確認できた稼働中の施設は76施設・9,760室で、掲載ベースの規模別では101〜200室が30施設・4,643室、201室以上が16施設・3,982室と、101室以上の中大型施設が客室の7割超を占める。

半導体工場周辺の伸びはさらに急である。菊陽町(TSMC周辺)から半径3km圏の客室数は2017〜2024年の7施設・772室から2025年に9施設・1,184室、2026年に12施設・1,493室へ2年で+93%増えた。対照的に黒川温泉3km圏は34〜35施設・659〜674室で9年間ほぼ不変、阿蘇市内牧温泉3km圏は15施設・599室から14施設・581室へ微減と、温泉地の供給は動いていない。単価階層の上位にある温泉地で供給が固定され、下位にある業務拠点で供給が積み上がる構図は、県内の単価差を今後も維持する方向に働く。

4地点の客室ストック推移(各年末時点・開業年が確認できる施設)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(OTA掲載確認ベース、2026年10月時点。各地点とも半径圏内の客室数10室以上の施設、レジャーホテルを除く)

新規開業をOTA等の掲載確認ベースで数えると、2025年は37施設・831室、2026年は10月下旬までに70施設・1,515室が県内で開業した。大型は2025年6月の東横INN熊本空港(208室)とスーパーホテルPremier阿蘇熊本空港(203室)、8月の御宿 野乃熊本(191室、中央区)、2026年2月のワーカーズホテル熊本大津(202室、大津町)と4月のたびのホテル阿蘇熊本空港(213室)、7月のヴィアインプライム熊本〈雲雀の湯〉(232室、西区・熊本駅前)、10月のホテルアマネク熊本(176室、中央区)で、空港・工場周辺と熊本駅・中心市街地に集中する。11月に134室でリブランド開業する亀の湯 by HATAGO INN(東区)は既存建物の転換であり純増ではない。郡部では10月のラビスタ南阿蘇(90室)と7月のTAOYA阿蘇(59室)、上天草市・山鹿市・大津町のHOTEL R9 The Yard(42〜54室)が目立つ。

2027年以降の公表済み計画としては、熊本市中央区下通2丁目の(仮称)三交インGrande熊本(140室、2027年秋開業予定)、玉名市の新幹線新玉名駅前に東横インが2027年4月開業予定、荒尾市の競馬場跡地西側にリブ・マックスが11階建てホテルを2028年春開業予定で立地協定を結んでいる。熊本日日新聞は2025年9月、熊本市中心部で2027年までに少なくとも4施設・計約800室が開業または開業予定と報じた。これらは建築計画・発表ベースであり、掲載確認ベースの集計には含まれていない。

熊本県の主な新規開業(2025年以降の掲載確認分)と公表済み計画
開業時期施設名所在地客室数業態・備考
2025年6月東横INN熊本空港空港周辺208ビジネスホテル
2025年6月スーパーホテルPremier阿蘇熊本空港空港周辺203ビジネスホテル
2025年8月天然温泉 肥後の湯 御宿 野乃熊本熊本市中央区191ビジネスホテル
2026年2月ワーカーズホテル熊本大津大津町202ビジネスホテル
2026年4月たびのホテル阿蘇熊本空港空港周辺213ビジネスホテル
2026年7月ヴィアインプライム熊本〈雲雀の湯〉熊本市西区(熊本駅前)232ビジネスホテル
2026年7月TAOYA阿蘇阿蘇59リゾートホテル
2026年10月ホテルアマネク熊本熊本市中央区176ビジネスホテル
2026年10月ラビスタ南阿蘇南阿蘇村90リゾートホテル
2026年11月亀の湯 by HATAGO INN熊本市東区134リゾートホテル・既存建物のリブランド
2027年4月(予定)東横イン(新玉名駅前)玉名市—ビジネスホテル・玉名市発表
2027年秋(予定)(仮称)三交インGrande熊本熊本市中央区下通2丁目140ビジネスホテル・九州1号店
2028年春(予定)リブ・マックス(荒尾競馬場跡地西側)荒尾市—11階建て本館・立地協定
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(OTA掲載確認ベース、2025年N=37施設・2026年N=70施設)/各社発表・熊本日日新聞・玉名市・荒尾市の公表資料。客室数「—」は公表資料に記載なし

需給 — 2026年9月の推定OCCは88.0%、九州7県で福岡県に次ぐ

需給の締まり具合を推定OCCで比べる。2026年9月の熊本県は88.0%(対象284施設/客室12,706、主要予約サイト掲載ベース)で、福岡県88.3%(381施設/客室28,935)に次ぎ、佐賀県80.3%、大分県78.8%、宮崎県78.4%、長崎県77.2%、鹿児島県71.4%を上回った。8月は89.6%(312施設/客室13,262)と福岡県と並ぶ水準で、6月77.5%、7月80.7%から夏にかけて上昇した。地震後の8月に推定OCCが高く出た点は、観光のキャンセルが報じられる一方で、ビジネスホテルの推定OCCが95.4%(59施設/客室7,399)、シティホテルが95.1%と業務系の在庫が埋まっていたことによる。復旧・支援関連の滞在が寄与した可能性はあるが、本稿のデータからその内訳は特定できない。ビジネスと旅館の推定OCCがここまで開く構図は、熊本の宿泊は業態で15pt差 — ビジネス95%・旅館78%、応援割が効く業態でも業態別に検証している。

業態別では、9月のビジネスホテルが91.8%(58施設/客室7,123)、シティホテルが93.0%、旅館が83.4%(137施設/客室2,675)、リゾートホテルが79.4%である。郡部の旅館は8月78.7%から9月83.4%へ上がっており、応援割の受付開始(9月15日)を前に10月以降の予約が動いたことと整合する。市町村別に9月を見ると、中央区93.0%(39施設/客室5,538)、西区92.6%、菊池市87.6%、上天草市87.4%、小国町85.8%、山鹿市85.3%、阿蘇市80.7%、南小国町79.1%、南阿蘇村69.2%で、県都の業務需要が最も高く、温泉地は7〜8割台に収まる。

九州7県の推定OCC(2026年8月・9月)と業態別内訳
県2026年8月2026年9月8月 ビジネス9月 旅館9月の対象
熊本県89.6%88.0%95.4%83.4%284施設/客室12,706
福岡県89.6%88.3%90.6%72.6%381施設/客室28,935
佐賀県82.5%80.3%87.4%75.5%101施設/客室3,589
大分県79.8%78.8%81.3%81.0%337施設/客室9,817
宮崎県80.8%78.4%79.4%82.6%112施設/客室6,173
長崎県78.3%77.2%78.5%69.3%203施設/客室10,998
鹿児島県63.4%71.4%48.0%74.9%301施設/客室11,313
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(推定OCC=OTA掲載在庫ベース、公開枠30%以上の固定コホート。施設全体の実稼働率とは異なります)

予約の積み上がり方をブッキングカーブで見ると、連休の初日と中盤で埋まり方が異なる。敬老の日の2026年9月21日(月・祝)は秋分の日(23日)と合わせた大型連休の中盤にあたり、LT45時点で推定OCC77.1%、LT30で86.5%、LT14で94.0%、LT1で99.0%とほぼ満室まで到達した。スポーツの日3連休初日の10月10日(土)はLT45で65.1%とスタートが低いものの、LT14で90.7%、LT1で96.9%まで伸びた。お盆の8月14日(金)は地震から2週間余りの日程で、LT45の71.3%からLT1の90.4%へ、連休の2日程より緩やかな伸びにとどまった。LT30〜LT14の間に6〜12ポイント埋まる点は3日程に共通しており、県内の多くの施設にとって宿泊日の2〜4週間前が単価を決める局面になる。

熊本県 ブッキングカーブ(推定OCC、LT45→LT1)— 8/14(金・お盆)、9/21(月・祝・敬老の日)、10/10(土・3連休初日)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(各宿泊日の対象300〜368施設/客室12,796〜14,053、主要予約サイト掲載ベース)

空白帯の特定 — 郡部の1.2万〜1.8万円帯は1,064室、お盆は38%が30日以上前に完売

ここではピーク期間の在庫推移から、完売が早いのに室数が限られている価格帯を探す。対象はお盆(2026年8月13日〜16日の4泊)とGW(2026年5月2日〜5日の4泊)の2つで、いずれも宿泊日が過ぎて結果が確定している。在庫データがあり、OTA等での公開枠が総客室の30%以上の施設(お盆452施設、GW386施設)のうち、推定成約ADRが算出できたお盆305施設・14,373室、GW262施設・12,940室を、各施設の12ヶ月平均ADRで5つの価格帯に区分した。なおお盆の4日間は地震発生の約2週間後にあたり、キャンセルと再販を経た後の在庫状態を反映している。

郡部では、1.2万〜1.8万円帯が36施設・1,064室と、1.8万〜3万円帯(56施設・977室)や3万円以上(45施設・577室)に比べて1施設あたりの客室が多い割に総室数は薄い。この帯はお盆4日間の全日程(144日程)で完売に到達し、そのうち38.2%の日程は宿泊日の30日以上前に残室0に達した。同じ郡部の1.8万〜3万円帯は30.9%、3万円以上は32.2%、8千〜1.2万円帯は24.7%で、1.2万〜1.8万円帯が最も早い。GWでも郡部の1.2万〜1.8万円帯は32.7%の日程が完売に到達し、1.8万〜3万円帯の13.0%、3万円以上の5.4%、8千〜1.2万円帯の19.7%を大きく上回った。高単価の旅館が繁忙期でも在庫を残す一方、その下の中価格帯から先に埋まる構図である。

熊本市5区では、1.2万〜1.8万円帯が16施設・1,976室で、お盆の全日程(64日程)で完売に到達し、21.9%の日程は30日以上前に残室0となった。8千〜1.2万円帯(21施設・3,146室)も全日程で完売したが30日以上前の完売は21.4%、8千円未満(24施設・2,732室)は95.8%・15.6%と、単価が高い帯ほど早く埋まる。1.8万円以上の帯は市内でわずか3施設・23室しかなく、GWでも1.2万〜1.8万円帯は35.0%の日程が完売に到達した(8千〜1.2万円帯38.8%、8千円未満36.5%)。市内の上位帯は、受け皿そのものが存在しないために完売の統計に表れない。

価格帯別 客室数(棒)と、お盆期間に宿泊日の30日以上前に完売した日程の割合(線)— 郡部と熊本市5区
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(お盆2026年8月13〜16日・305施設、公開枠30%以上、価格帯は各施設の推定成約ADR12ヶ月平均で区分)
価格帯別 お盆・GW期間の完売到達状況(2026年・熊本市5区と郡部)
エリア価格帯お盆 施設数客室数完売到達
日程比率
30日以上前
完売比率
GW 施設数GW 完売到達
日程比率
熊本市〜8千円242,73295.8%15.6%2436.5%
熊本市8千〜1.2万円213,146100.0%21.4%2038.8%
熊本市1.2万〜1.8万円161,976100.0%21.9%1535.0%
熊本市1.8万〜3万円217100.0%12.5%10.0%
熊本市3万円〜16100.0%0.0%10.0%
郡部〜8千円652,50188.4%30.1%6921.8%
郡部8千〜1.2万円391,37795.5%24.7%3619.7%
郡部1.2万〜1.8万円361,064100.0%38.2%2932.7%
郡部1.8万〜3万円5697799.6%30.9%3913.0%
郡部3万円〜45577100.0%32.2%285.4%
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(完売到達=4日程のうち残室が一度でも0室に到達した日程の割合。30日以上前完売=早期完売LTが30以上の日程の割合)

熊本市中心5km圏のポジショニング — 1.8万円以上は1施設・203室、8千〜1.2万円帯に3,991室

県都の空白を施設単位で確かめる。通町筋から半径5km圏で稼働中かつ推定成約ADRが算出できた67施設・9,446室を客室数×ADRで配置すると、8千〜1.2万円帯に27施設・3,991室、8千円未満に26施設・3,005室、1.2万〜1.8万円帯に13施設・2,247室が集まり、1.8万円以上はTHE BLOSSOM KUMAMOTO(203室・21,000円)の1施設にとどまる。業態別の中央値はビジネスホテル49施設で8,100円、シティホテル11施設で13,500円、旅館4施設で9,900円である。380室のカンデオホテルズ熊本新市街(13,700円)、290室のドーミーイン熊本(12,300円)、229室のレフ熊本 by ベッセルホテルズ(12,500円)、180室のダイワロイネットホテル熊本銀座通り PREMIER(13,900円)など、2019〜2022年開業組を中心とする大型ビジネスホテル(ドーミーイン熊本は2008年竣工)が1.2万〜1.4万円帯を形成し、ホテル日航熊本(191室・15,600円)と熊本ホテルキャッスル(179室・14,400円)がその上に位置する。

この分布は、熊本市の上位帯が「1.4万〜1.6万円で頭打ち」になっていることを示す。熊本県の外国人延べ宿泊者数は2025年に176万3千人(前年比+19.8%、観光庁速報値)と2年連続で過去最多を更新し、熊本市単独でも初めて100万人を超えた。熊本市は台湾路線の増便と半導体関連の長期出張が重なる市場である。1.2万〜1.8万円帯がお盆の全日程で完売し、GWでも市内で最も高い完売率を示した事実と合わせると、1.8万〜3万円の上位帯に受け皿を置く余地がある。

熊本市中心5km圏 客室数 × 推定成約ADR(円の大きさ=客室数)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(稼働中かつ推定対象の67施設・9,446室。推定成約ADRは2025年10月〜2026年9月の平均)
熊本市中心(通町筋)半径5km圏の宿泊施設分布(円の大きさ=客室数、色=推定成約ADRの価格帯)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(掲載108施設・11,651室、2026年10月時点)

上場REITの保有は熊本市に5物件・850室 — 1室あたり取得価格は6.4〜40.6百万円

投資市場での位置づけを上場ホテルREITの保有物件で確認する。ホテル特化型・複合型7投資法人(いちごホテルリート投資法人(3463)、インヴィンシブル投資法人(8963)、日本ホテル&レジデンシャル投資法人(3472)、ジャパン・ホテル・リート投資法人(8985)、星野リゾート・リート投資法人(3287)、森トラストリート投資法人(8961)、霞ヶ関ホテルリート投資法人(401A))の国内保有物件のうち、熊本県内は5物件・850室で、いずれも熊本市内にある(保有関係マスター 2026年10月19日時点、N=300物件)。取得価格の合計は¥14,721百万円である。

1室あたりの取得価格は、2025年8月に霞ヶ関ホテルリートが取得したfav 熊本(67室・¥2,720百万円)が40.6百万円、2024年7月にインヴィンシブルが取得したホテルマイステイズ熊本 リバーサイド(194室・¥6,831百万円)が35.2百万円と、直近2年の取得が高い。2019年4月にいちごホテルリートが取得したネストホテル熊本(201室・¥2,220百万円)は11.0百万円、ジャパン・ホテル・リートのドーミーイン熊本(291室・¥2,334百万円)は8.0百万円、2014年5月に星野リゾート・リートが取得したコンフォートイン 熊本御幸笛田(97室・¥616百万円)は6.4百万円で、取得時期によって1室単価は6倍以上の開きがある。ジャパン・ホテル・リートはポートフォリオ一覧で物件別の取得日を公表していないため、取得年の比較には含めていない。

上場REITが熊本市で保有するホテル(2026年10月19日時点)
物件名保有REIT取得時期客室数取得価格1室あたり
ホテルマイステイズ熊本 リバーサイドインヴィンシブル投資法人2024年7月194¥6,831百万円35.2百万円
fav 熊本霞ヶ関ホテルリート投資法人2025年8月67¥2,720百万円40.6百万円
ドーミーイン熊本ジャパン・ホテル・リート投資法人非公表291¥2,334百万円8.0百万円
ネストホテル熊本いちごホテルリート投資法人2019年4月201¥2,220百万円11.0百万円
コンフォートイン 熊本御幸笛田星野リゾート・リート投資法人2014年5月97¥616百万円6.4百万円
合計5物件850¥14,721百万円17.3百万円
出典:各投資法人のポートフォリオ一覧(IR)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(保有関係マスター 2026年10月19日時点、N=300物件・国内のみ)

立地評価 — 居住・就業・地価で4地点を比べる

最後に、単価階層の代表地点を立地条件で比べる。熊本市中心(通町筋)の半径1.5km圏には居住人口54,632人(2020年国勢調査ベース)が住み、2040年の推計は−4.0%と減少幅は小さい。半径1km圏の従業者数は51,810人、うちオフィス系が22.0%で、九州の県都として業務需要の基盤が厚い。地価公示(2026年1月1日時点)の中央区商業地平均は552,625円/㎡(前年比+6.17%)で、2021年の504,956円から5年で+9.4%上昇した。なお熊本市では2026年7月1日から宿泊税(1人1泊200円)が課されており、県内の課税範囲と施行時期は熊本県の宿泊税は熊本市のみ1人1泊200円|県税なし・2026年7月施行、大津町は2027年12月からで整理している。

菊陽町(TSMC周辺)の半径1.5km圏は居住人口9,284人で、2040年推計は+8.8%と県内では例外的に増加する地点である。菊陽町の商業地平均は140,000円/㎡(前年比+12.0%)、隣接する大津町は104,000円/㎡(+8.9%)で、2021年比ではそれぞれ2.43倍、2.17倍と地価の上昇が先行している。ホテルの単価(菊陽町7,300円・大津町8,300円、ともに前年同期比マイナス)が地価の上昇に追いついていない点は、用地コストと客室単価の間に開きがあることを示す。

黒川温泉(南小国町)の半径1.5km圏は居住人口585人、阿蘇市内牧温泉の同圏は4,163人で、内牧は2040年推計−29.3%、高齢比率42.5%と人口基盤は細い。南小国町の基準地価(全用途平均)は9,633円/㎡(前年比−0.38%)、阿蘇市の商業地(基準地価)は24,000円/㎡(+0.84%)で、地価は横ばいである。温泉地は居住・就業ではなく来訪需要で成り立つ市場であり、ホテル単価(南小国町29,800円・阿蘇市19,200円)と地価の比率は県都と逆転している。なお熊本県は2016年4月と2026年7月に震度7の地震を経験しており、耐震性能と事業継続計画は4地点に共通する立地評価の前提条件になる。

立地評価 — 4地点の居住・就業・地価・単価の比較
項目熊本市中心(通町筋)菊陽町(TSMC周辺)黒川温泉(南小国町)阿蘇市(内牧温泉)
推定成約ADR(12ヶ月平均)中央区 8,600円菊陽町 7,300円南小国町 29,800円阿蘇市 19,200円
推定OCC(2026年9月)中央区 93.0%—(対象1施設)南小国町 79.1%阿蘇市 80.7%
半径圏の客室ストック5km圏 10,009室(9年で+39.6%)3km圏 1,493室(+93%)3km圏 674室(横ばい)3km圏 581室(微減)
居住人口(1.5km圏・2020年)54,632人/2040年−4.0%9,284人/2040年+8.8%585人/2040年−6.2%4,163人/2040年−29.3%
従業者数(1km圏)51,810人(オフィス系22.0%)———
地価(2026年)商業地 552,625円/㎡(+6.17%)商業地 140,000円/㎡(+12.0%)全用途 9,633円/㎡(−0.38%・基準地価)商業地 24,000円/㎡(+0.84%・基準地価)
用途地域(代表点周辺)商業地域(容積率400〜600%)準工業・工業地域と住居系が混在——
宿泊税熊本市 1人1泊200円(2026年7月1日導入)大津町も条例案を議会に提案——
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング/国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口)/総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査」(2021年)/国土交通省「地価公示」「都道府県地価調査」(2026年)/国土交通省 不動産情報ライブラリ(用途地域)/熊本市。「—」は該当データなし、または収録が薄く掲載を見送った項目
熊本市中心(通町筋)半径1,500m圏の居住人口メッシュ
出典: 国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口・R6国政局推計)。居住人口(国勢調査ベース)であり滞在・通過人口ではありません
地価の推移 — 2021年=100(中央区・菊陽町・大津町は地価公示の商業地平均、阿蘇市は基準地価の商業地平均)
出典:国土交通省「地価公示」「都道府県地価調査」(各年)をもとにメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成

投資の空白 — 熊本市の上位帯と、郡部の中価格帯

ここまでの業態・供給・需給・立地のデータを重ねると、県内のストックは「熊本市の8千〜1.4万円のビジネス帯」と「郡部の1.8万円以上の温泉旅館帯」に厚く、その間と上に2つの空白がある。

密集 埋まっている領域

熊本市5区の1.2万円未満 × 100〜400室
5km圏で53施設・6,996室。2019〜2022年開業組を中心とする大型ビジネスホテルが1.2万〜1.4万円帯を形成し、2025〜2026年も空港・工場周辺と熊本駅前で200室級が相次ぐ。
郡部の1.8万円以上 × 10〜40室
101施設・1,554室の温泉旅館。お盆は全日程で完売するがGWは13.0%・5.4%の日程しか完売せず、繁忙期の取り切りに収益が依存する。

空白① 熊本市の1.8万〜3万円帯

5km圏で1施設・203室(2.1%)
1.2万〜1.8万円帯(5km圏13施設・2,247室)はお盆の全日程で完売に到達し、GWも市内で最も高い完売率。外国人延べ宿泊者176万人(2025年・県)と半導体関連の長期出張が重なる市場で、既存の大型ビジネスホテルの上に受け皿がない。中心市街地の取得・改装による上位客室の新設、または120〜200室規模のアッパーミドル新築が整合する。

空白② 郡部の1.2万〜1.8万円帯

36施設・1,064室
お盆は38.2%の日程が30日以上前に完売し郡部で最速、GWも32.7%が完売に到達して1.8万円以上の帯を上回る。阿蘇市(+12.0%)・玉名市(+8.1%)・山鹿市など温泉地の中価格帯で、10〜30室規模の新築や既存旅館の客室改装が、1.8万円以上の旅館と8千円以下のビジネスの間を埋める。

2つの投資空白の要件整理
項目空白① 熊本市の上位帯空白② 郡部の中価格帯
狙う価格帯1.2万〜1.8万円帯(5km圏13施設・2,247室)から1.8万〜3万円帯への引き上げ1.2万〜1.8万円帯(現状36施設・1,064室)
需要の根拠従業者51,810人(1km圏)、お盆に1.2万〜1.8万円帯の全日程が完売、推定OCC93.0%(中央区・2026年9月)お盆に38.2%の日程が30日以上前に完売、GWも32.7%が完売に到達
単価の安定性中央区 月次7,700〜10,400円(1.36倍)阿蘇市1.33倍、山鹿市1.27倍、玉名市1.61倍
用地・入口価格商業地 552,625円/㎡(中央区平均、+6.17%)、容積率400〜600%阿蘇市 商業地24,000円/㎡(+0.84%)、南小国町 全用途9,633円/㎡(−0.38%)
立地の留意点宿泊税1人1泊200円(2026年7月〜)、2016年・2026年の地震を経験した市街地人口基盤が細く来訪需要に依存(内牧1.5km圏は2040年−29.3%)、阿蘇山の噴火警戒レベルの変動
成立のポイント既存の業務需要を維持しつつ、上位客室とレストラン・ラウンジで週末・インバウンドの単価を伸ばす10〜30室規模で繁忙期の在庫を確保し、閑散期は食・温泉・体験の組み合わせで中価格帯を維持する
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング。本稿では利回り・IRR等の収益試算は行っていない

まとめ

熊本県の宿泊単価は、阿蘇外輪山の内外に広がる温泉・高原の高単価層(南小国町29,800円・南阿蘇村25,500円・玉名市21,100円・阿蘇市19,200円)、天草と植木の中単価層(上天草市13,500円・北区13,200円)、県都と工場・交通結節点の業務中核層(中央区8,600円・大津町8,300円・天草市8,200円)、球磨川・八代海沿いの価格訴求型の拠点(人吉市6,900円・八代市6,400円)の4層に分かれる。県全体の12ヶ月平均は10,600円で前年同期と同水準だが、その内側では旅館が−3.2%、リゾートが+11.1%、ビジネスが+3.3%と業態ごとに逆方向に動いた。

供給は熊本市中心5km圏で9年+39.6%、半導体工場周辺3km圏で2年+93%と業務拠点に積み上がり、温泉地はほぼ不変である。需給は2026年9月の推定OCCが88.0%と九州7県で福岡県に次ぎ、中央区は93.0%に達する。業態×価格帯で見ると、熊本市中心5km圏は1.8万円以上が1施設・203室(2.1%)にとどまり、1.2万〜1.8万円帯がお盆の全日程で完売した。郡部では1.2万〜1.8万円帯が36施設・1,064室と薄く、お盆は38.2%の日程が30日以上前に完売して全価格帯で最も早かった。投資手法としては、熊本市では中心市街地の取得・改装や120〜200室規模の新築による上位帯の新設、郡部では10〜30室規模の中価格帯の新築・改装が、それぞれのデータと整合する。

データに関する注記:本記事の推定成約ADRは確定済みの月(2025年10月〜2026年9月)の値で、調査時点(2026年10月25日)のデータに基づきます。郡部の市町村値は推定対象が1〜2施設の場合があり、1施設の構成で値が大きく変わります。2026年7月28日の令和8年熊本地震以降の月(7月末〜9月)は、キャンセルと再販、復旧関連の滞在を含む数値です。推定OCC・ブッキングカーブ・完売判定はOTA等の販売在庫に基づく推定であり、施設全体の実稼働率とは異なります。完売判定はOTA等での公開枠が総客室の30%以上の施設に限って集計しています。新規開業はOTA等の掲載確認ベースで、掲載前の施設は含みません。2027年以降の開業計画は各社・自治体の発表と報道に基づく予定であり、変更される場合があります。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

メトロエンジンリサーチ&コンサルティングの集計データ(推定成約ADR:熊本県43市町村・確定12ヶ月〈2025年10月〜2026年9月〉、業態構成:2026年9月の推定OCC対象284施設・12,706室、推定OCC:2026年6〜9月・九州7県、ピーク期間の在庫推移:お盆452施設・GW386施設、客室ストック:4地点の半径圏、新規開業のOTA掲載確認、REIT保有関係マスター:2026年10月19日時点)。立地評価は国土交通省 国土数値情報・不動産情報ライブラリ、総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査」(2021年)、国土交通省「地価公示」「都道府県地価調査」。調査時点は2026年10月25日。

■ 試算前提

市町村の推定成約ADRは、各月の対象施設の中央値を確定12ヶ月で単純平均した値。価格帯(〜8千円/8千〜1.2万円/1.2万〜1.8万円/1.8万〜3万円/3万円〜)は各施設の12ヶ月平均で区分した。完売判定は残室が初めて0室に到達したリードタイムで行い、OTA等での公開枠が総客室の30%以上の施設に限定。客室ストックは各地点の半径圏内にある客室数10室以上の施設(レジャーホテルを除く)で、「稼働中」は直近3ヶ月に主要予約サイトで販売価格が確認できた施設。居住人口は半径1,500m、従業者数は半径1,000mで集計した。本稿では利回り・IRR等の収益試算は行っていない。

■ 限界・留意点

推定成約ADR・推定OCCはOTA等の販売在庫に基づく推定値で、各施設の実際の成約価格・実稼働率とは異なる。郡部の市町村値は推定対象が1〜2施設の場合があり参考値として扱う。新規開業は掲載前の施設を含まない。地価の市町村平均は不動産情報サイトが国土交通省データを集計した値を参照しており、地点構成の変化を含む。地震の影響の時系列分析は既刊記事に委ね、本稿では構造分析に限定した。

■ 市場データ

■ 政府統計・公的データ

■ ニュース・プレスリリース

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