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岩宿駅前にベルズイン150室、2027年4月開業 — みどり市3km圏124室が2.2倍、桐生ADR7,000円で読む

投稿日 : 2026.11.02

群馬県

投資・開発

岩宿駅前にベルズイン150室、2027年4月開業 — みどり市3km圏124室が2.2倍、桐生ADR7,000円で読む

群馬県みどり市のJR岩宿駅南口(笠懸町阿左美1491-1)で、客室150室・10階建ての宿泊特化型ホテル「(仮称)ベルズインみどり岩宿駅前」の建設が進んでいる。建築計画データ上の建築主は株式会社タイムプロヂュース(報道表記はタイムプロデュース)で、桐生市の建設会社・野村建設工業のグループ会社が土浦・前橋に続く3軒目として運営する。着工は2025年9月、完成が2027年2月、開業は2027年4月の予定とされ、みどり市にとっては初のビル型ホテルになる。本稿では、この150室が周辺の客室ストックをどれだけ押し上げるのか、桐生・みどりエリアの推定成約ADRと稼働率で吸収できるのか、そして総事業費約20億円に対してどの程度の利回りが見込めるのかを、メトロエンジンリサーチ&コンサルティングの客室ストック・価格データと公的統計で検証する。

本記事のデータについて
• ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。
• エリア(都道府県・市区町村)単位のADRは、対象施設の推定成約単価の中央値(エリアの標準的な施設の水準)です。
• 掲載価格に言及する箇所は、2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
• OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。
• 出典:メトロエンジンリサーチ(国内約168,000施設のOTA公開価格を継続追跡、うち稼働確認済み約27,000施設)
• ブッキングカーブ=チェックイン日に向けたOTA残室数の推移。LT(リードタイム)=チェックインまでの日数。本稿のカーブはLT45〜1日の観測点のみを用いる。
• 客室ストック(軒数・室数)は、対象地点から半径3,000m/5,000m圏の客室数10室以上の宿泊施設(レジャーホテルを除く)を集計したもので、「稼働中」は直近3か月に主要予約サイトで販売価格が確認できた施設を指す。
3km圏 客室ストック
124室
掲載4軒/稼働3軒103室(2026年10月時点)
150室加算後
274室
3km圏は2.2倍、5km圏は486→636室(+30.9%)
桐生市 推定成約ADR
¥7,000
2026年9月・N=10施設、前年同月比+21.9%
群馬県ビジネスホテル稼働率
71.8%
観光庁 宿泊旅行統計調査 2025年確定値
総事業費(報道)
約20億円
土地含む・1室あたり約1,330万円

結論を先に述べる。3km圏に客室数10室以上の宿泊施設が4軒124室しかない岩宿駅周辺に150室が一度に加わるため、半径3kmで見た供給は2.2倍、半径5kmで見ても営業中ベースで+30.9%という大きな段差になる。ただし、この商圏の需要は桐生市中心部(桐生駅周辺、現地から約3.6km)とほぼ連続しており、桐生市のビジネスホテル中心の推定成約ADRは2026年9月に約¥7,000と前年同月比で2割以上伸びている。群馬県のビジネスホテルは観光庁統計で稼働71.8%(2025年)、当社のOTA在庫ベース推定では2026年8〜10月に83〜89%で推移しており、単価・稼働の両面で「埋まっている市場」に新しい受け皿が入る構図といえる。総事業費約20億円に対し、ADR¥7,000・稼働80%・GOP率45%の基準ケースで想定される表面利回りは7.5%前後となり、ADRが1割下がっても6%台を維持する計算になる。

Key Takeaways
  • — 3km圏124室→274室(2.2倍)。岩宿駅前の150室で、半径5km圏の営業中客室も486→636室(+30.9%)と商圏に供給段差が生じる(2026年10月26日時点)。
  • — 桐生市の推定成約ADR ¥7,000(2026年9月・N=10施設)は前年同月比+21.9%。群馬県ビジネスホテル(N=101施設)も+11.1%と単価上昇局面にある。
  • — 群馬県ビジネスホテルの稼働率71.8%(2025年通年)(観光庁確定値)。当社のOTA在庫ベース推定でも2026年8〜10月は83〜89%で、県内でも高稼働のセグメント。
  • — 「100室超×¥6,500〜7,500」の既存施設はパークイン桐生1軒。同価格帯の駅前競合は2軒に限られ、大浴場・サウナ付きの新築ビル型100室超は5km圏に無い。
  • — 総事業費約20億円で表面利回り7.5%(基準ケース)。ADR−10%かつ稼働−5ptでも6.3%、建設費が統計ベースへ上振れした場合は5.9%。

群馬県のビジネスホテル単価 — 2026年9月は前年同月比+11%、桐生市は+22%で県平均を上回る

まずは受け皿となる市場の価格水準から確認したい。メトロエンジンリサーチ&コンサルティングが推定する群馬県ビジネスホテル(N=101施設)の推定成約ADRは、2026年9月に¥6,800で前年同月(¥6,200)比+11.1%だった。2024年7月から2025年9月までは¥5,900〜¥6,700の狭いレンジで推移していたのに対し、2026年は8月に¥7,100、9月に¥6,800と、夏以降の水準がひと段上がっている。全カテゴリの県中央値(N=440施設)も9月に¥11,800と前年同月比+4.4%であり、旅館・リゾートを含む県全体より、ビジネスホテルの伸びが大きいことが読み取れる。

群馬県 ビジネスホテル 推定成約ADR 月次推移(年別重ね描き・2名1室・税抜相当)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(群馬県・ビジネスホテル N=85〜104施設/月。2026年10月以降は調査時点の掲載水準に基づく推定)

次に、計画地に近い市ごとの水準を見る。2026年9月の推定成約ADRは、桐生市が¥7,000(N=10施設)で前年同月比+21.9%、前橋市¥7,500(N=30)、高崎市¥7,400(N=31)、太田市¥6,200(N=13)、伊勢崎市¥5,600(N=12)、館林市¥5,800(N=6)だった。桐生市は県内の中核都市である前橋・高崎にほぼ並ぶ単価に達しており、2026年8月も¥7,400(前年同月比+22.7%)と、2か月連続で2割を超える伸びを示している。みどり市内で集計できる施設は2軒にとどまるため市単独の単価は参考値だが、計画地から桐生駅周辺までは約3.6kmで同一商圏と見るのが自然である。本稿では桐生市の¥7,000を事業試算の基準単価として採用する。県内の市町村ごとの価格階層は群馬の宿泊単価、市町村で3.5倍差 — みなかみ・草津と県都の価格階層2026で整理している。

群馬県 主要6市 推定成約ADR(2026年9月・2名1室・税抜相当)と前年同月比
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(各市の対象施設数は棒ラベルのN=を参照)

稼働率は2つの統計で確認する。観光庁「宿泊旅行統計調査」の2025年年間値(確定値)では、群馬県の客室稼働率は全体で46.8%(全国43位、前年比+2.7pt)と低く見えるが、これは旅館(45.9%)・リゾートホテル(47.1%)・簡易宿所(16.7%)の比重が高い県の構造によるもので、ビジネスホテルに限れば71.8%(全国24位、全国平均75.3%)、シティホテルは53.6%である。一方、当社がOTA掲載在庫から推定する群馬県ビジネスホテルの稼働率(N=48〜50施設・約4,600室)は、2026年8月86.5%、9月83.4%、10月88.8%で、観光庁値より10pt以上高い。両者は定義が異なる(当社推定はOTAに総客室の30%以上を掲載する施設の固定コホートで、掲載外の客室を消化済み側に数えるため高めに出る)ため水準の直接比較はできないが、観光庁統計ではビジネスホテルが県内の施設タイプで最も高く、当社推定でも旅館(84.9%)と並ぶ高稼働のセグメントである。

群馬県 カテゴリ別の稼働率(当社OTA掲載在庫ベース推定・2026年9月)と観光庁 客室稼働率(2025年)
カテゴリ(2026年9月・群馬県)対象施設数総客室数稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)掲載価格平均(税込)観光庁 2025年 客室稼働率
全施設27812,86681.4%¥23,92046.8%
ビジネスホテル484,58883.4%¥12,13571.8%
シティホテル989773.2%¥16,99953.6%
リゾートホテル221,85573.1%¥28,17947.1%
旅館1454,88784.9%¥31,85545.9%
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(稼働率・掲載価格、2026年9月の日次平均)/観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値(確定値、2026年7月6日公表)。当社推定の稼働率はOTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります

予約の入り方も見ておく。2026年9月の群馬県ビジネスホテル(固定コホート50施設・4,645室)の平均ブッキングカーブでは、チェックイン45日前(LT45)の時点で稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)が52.3%、LT30で57.0%、LT14で67.3%、LT7で74.4%、前日(LT1)で83.4%に達している。45日前に半分が埋まり、最後の2週間で16pt積み上がる形で、出張需要が中心の宿泊特化型に典型的な「直前に厚い」カーブである。新規開業後の販売設計では、開業初年度にこの直前需要をどれだけOTA・直販で取り込めるかが稼働の分かれ目になる。

群馬県 ビジネスホテル 月間平均ブッキングカーブ(2026年9月チェックイン・LT45→1)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(対象50施設/客室4,645室、主要予約サイト掲載ベース。稼働率はOTA掲載在庫ベースの推定値)

立地分析 — 乗車人員1,187人/日の駅前、地価は¥24,600〜26,800/㎡で底打ち、3km圏に従業者2.7万人

計画地はJR両毛線・岩宿駅の南口ロータリーに面し、国道50号(桐生バイパス)へ道路が直結する。岩宿駅の1日平均乗車人員(JR東日本)は2019年度1,255人、2020年度888人を底に、2024年度は1,187人(定期855人・定期外331人)まで回復している。桐生駅から4.0kmの小駅で、鉄道需要そのものは大きくない。むしろこの立地の需要は、国道50号沿いの車利用(駐車場120台を計画)と、両毛地域(桐生・みどり・太田・足利)に広がる製造業の出張客、そして岩宿遺跡・桐生競艇場・ぐんま未来大学といった周辺施設の来訪者で構成されると見るべきである。

計画地と5km圏の宿泊施設分布(円の大きさ=客室数、★=計画地)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング。施設の座標は当社の施設マスターの実座標
計画概要(建築計画データ・報道)
所在地: 群馬県みどり市笠懸町阿左美1491-1(JR岩宿駅南口)
名称: (仮称)ベルズインみどり岩宿駅前
建築主: 株式会社タイムプロヂュース(野村建設工業グループ)
規模: 鉄骨造10階・150室(シングル105・ツイン6・その他39)
延床面積: 3,219.19㎡(1室あたり約21.5㎡)/敷地2,858㎡
付帯: 大浴場(屋上露天風呂)・サウナ・マッサージコーナー・食事会場・駐車場120台
工程: 2025年9月着工 → 2027年2月完成 → 2027年4月開業予定
岩宿駅 1日平均乗車人員(年度)
出典:JR東日本「各駅の乗車人員」
地価(2026年・計画地周辺)
笠懸町阿左美1905番8(住宅地・岩宿駅1.7km)¥24,600/㎡(+0.82%)
笠懸町鹿3108番外(商業地・岩宿駅1.9km)¥26,800/㎡(+0.75%)
笠懸町久宮68番34(商業地・阿左美駅1.9km)¥34,700/㎡(+1.17%)
出典:国土交通省「地価公示」・群馬県「地価調査」(2026年、土地代データ収録値)

地価は長い下落局面を抜けた段階にある。岩宿駅周辺の公示・基準地価は1991年の平均¥48,000/㎡から2015年の¥24,800/㎡まで四半世紀にわたり下げ続け、その後は¥25,000〜27,000/㎡の横ばいで、2026年は周辺地点がいずれも前年比+0.8〜1.2%の小幅上昇となった。計画地に近い住宅地(阿左美1905番8)で¥24,600/㎡、商業地(鹿3108番外)で¥26,800/㎡という水準は、敷地2,858㎡を仮に商業地の地価で評価しても8,000万円弱に収まる。報道されている総事業費約20億円の大半は建物に配分されていると考えてよく、地価の安さが150室という規模を可能にしている。

周辺の需要基盤を公的統計で押さえておく。総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査(2021年)」によると、計画地から半径3km圏の事業所数は2,279、従業者数は26,907人で、うち事務所系(オフィス)従業者の比率は10.9%である。従業者の9割近くが製造・小売・医療福祉などの現場系で、両毛地域の産業構造を反映している。出張需要は本社機能の集まる都市型とは異なり、工場や取引先への技術者訪問、保守・工事要員の連泊といった形で発生しやすい。ベルズインが計画するシングル105室(全体の7割)という構成は、まさにこの層を狙ったものと読める。

居住人口も見ておく。国土交通省「国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口)」によると、計画地から半径3km圏の居住人口は2020年に59,203人、2025年推計で55,878人、2040年には46,863人へ減少する見込みで、2020年比では−20.8%にあたる。2025年時点の高齢者比率は31.8%である。地図で見ると、人口は駅の北側と笠懸町の住宅地に帯状に分布しており、駅南側の計画地周辺は比較的疎である。居住人口の減少は宿泊需要の直接の減少要因ではないが、冠婚葬祭・帰省といった地元発の宿泊需要の伸びは限定的で、域外からの出張・観光需要を取り込む設計が前提になる。

計画地 半径3km圏の居住人口分布(250mメッシュ・2020年国勢調査ベース)
出典: 国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口・R6国政局推計)。居住人口(国勢調査ベース)であり、滞在・通過人口ではない

競合と供給 — 3km圏は4軒124室、5km圏は15軒623室。150室で5km圏の営業中客室は+30.9%

本記事の客室ストックは、みどり市笠懸町阿左美から半径3,000m圏内にある客室数10室以上の宿泊施設(レジャーホテルを除く)を対象とし、「稼働中」は直近3か月(2026年8月〜2026年10月)に主要予約サイトで販売価格が確認できた施設を指す(2026年10月26日時点、メトロエンジンリサーチ集計)。

この条件で数えると、計画地から半径3km圏には掲載ベースで4軒124室、うち稼働中が3軒103室ある。内訳はビジネスホテル3軒94室(HOTEL R9 The Yard みどり32室・HOTEL R9 The Yard 桐生41室・ビジネスホテル シティ21室)とシティホテル1軒30室(桐生グランドホテル)で、いずれも50室以下、100室を超える施設は1軒もない。ここに150室が加わると3km圏の客室ストックは274室と2.2倍になり、稼働中ベースでは103室から253室へ2.5倍となる。一方、半径5km圏に広げると桐生駅周辺の施設群が入り、掲載ベースで15軒623室、営業中ベースで12軒486室、稼働中ベースで10軒453室となる。150室の加算で営業中ベースは636室(+30.9%)、稼働中ベースは603室(+33.1%)であり、半径の取り方で供給増加率は2.2倍から+31%まで変わるが、いずれにしても1棟で商圏の供給段差を作る規模である。

半径3km圏・5km圏の営業中客室ストック推移(各年末時点)と150室加算後
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(OTA掲載確認ベース。客室数10室以上・レジャーホテル除く、開業年が確認できる施設。2027年は2026年の値に計画150室を単純加算)

供給の時系列を見ると、3km圏は2017年から2022年まで2軒51室で動きがなく、2023年にHOTEL R9 The Yard みどり(32室)、2025年に同 桐生(41室)が加わって124室になった。いずれもコンテナ型の宿泊特化施設で、この商圏に「泊まる場所がない」という需要の空白を小規模・短工期の供給で埋めてきた経緯がある(コンテナホテルとは?141拠点5,615室の料金水準と投資利回り)。5km圏は2017年の528室から2022年には413室まで減った後、2025年に486室へ戻しており、桐生市中心部では施設の入れ替わりが続いてきた。150室のビル型ホテルは、この10年の供給の流れを一段飛ばしで塗り替える。1棟で駅3km圏の客室が倍近くになる構図は、大牟田に328室のルートイン開業、駅3km圏は455→841室で検証した事例とも重なる。

半径5km圏で稼働中の宿泊施設10軒と計画地(客室ストック2026年10月26日時点・推定成約ADRは2026年9月)
#施設名(半径5km圏・稼働中10軒)区分客室数開業年計画地から推定成約ADR 2026年9月
1パークイン桐生ビジネス14719953.6km¥6,500
2東横INN桐生駅南口ビジネス9820083.6km¥7,500
3HOTEL R9 The Yard 桐生ビジネス4120252.8km¥6,000
4桐生エースホテルビジネス3819843.6km¥9,600
5HOTEL R9 The Yard みどりビジネス3220231.7km¥6,300
6桐生グランドホテルシティ3019721.5km¥19,400
7ホテル桐盛館ビジネス2019903.9km¥3,400
8ビジネスホテル 西桐生ビジネス1920093.9km¥4,700
9藪塚館旅館1619904.1km¥5,300
10パールホテルビジネス1219903.9km¥4,900
★(仮称)ベルズインみどり岩宿駅前宿泊特化1502027—(基準¥7,000で試算)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(客室ストック 2026年10月26日時点、推定成約ADRは2026年9月の施設別推定値。ADRは本文中100円単位で丸め)。番号は地図のマーカーと対応

5km圏で稼働中の10軒を見ると、客室数は12〜147室、2026年9月の推定成約ADRは¥3,400〜¥19,400と幅があり、中央値は¥6,200である。100室を超える施設はパークイン桐生(147室)の1軒、50室超を含めても東横INN桐生駅南口(98室)を加えた2軒で、どちらも桐生駅前にある。桐生駅前の2軒はそれぞれ¥6,500・¥7,500と、桐生市の市中央値¥7,000を挟む水準で安定した集客を続けており、駅前のビジネス需要の厚さを示している。開業年で見ると、1970〜1990年代開業が6軒、2000年代が2軒、2020年代がコンテナ型の2軒という構成で、「大浴場・サウナ付きの新築ビル型・100室超」という組み合わせは5km圏に存在しない。

供給パイプラインの面では、国土交通省「建築物動態統計調査」の確認申請ベースで群馬県内に確認できる10室以上のホテル建築計画は、2026年10月時点でこの岩宿駅前の1件のみである(※調査時点での確認申請ベース。今後の申請追加で件数は増加する見込みであり、現時点での確定パイプラインの下限値として参照)。隣接する栃木県では宇都宮市に300室(2028年10月完成予定)が確認できるが、両毛地域の内側に競合する大型計画は今のところ見当たらない。OTA掲載確認ベースで群馬県内の2025年の新規開業は15軒、2026年は10軒(掲載は開業の数か月前からが中心のため、2026年分は今後の掲載で軒数が増加する可能性がある)で、太田駅北の127室、高崎駅東口の199室、前橋のルートインGrand(243室)など大型案件は前橋・高崎・太田に集中しており、桐生・みどりへの波及は限定的である(2026年10〜12月開業ホテル32軒4,755室の立地別供給増加率も参照)。都道府県別の着工パイプラインはホテル着工は2024年に倍増しピークの57% — 今後9.7万室、京都12%・群馬380%の供給地図で全国を俯瞰しているので、県単位の位置づけはそちらを参照されたい。

ポジショニング — 「100室超×¥6,500〜7,500」の帯に競合は1軒、新築・大浴場付きは空白

客室数と推定成約ADRの2軸で5km圏の施設を並べると、市場の構造が見える。横軸に客室数、縦軸にADRを取ったとき、施設の大半は「50室以下×¥3,000〜¥7,000」の左下に集まり、右側(100室超)はパークイン桐生の1点、上側(¥9,000超)は桐生エースホテルと桐生グランドホテルの2点しかない。計画中の150室を桐生市の中央値¥7,000に置くと、横軸では最も右に、縦軸では駅前2軒の間に位置する。つまり価格帯では既存の桐生駅前施設と同じ土俵に立ちつつ、規模と設備(新築・大浴場・サウナ)で差をつける配置である。

客室規模 × 推定成約ADR ポジショニングマップ(半径5km圏・稼働中10軒+計画地)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(n=10施設、ADRは2026年9月の施設別推定成約単価。★計画地のADRは桐生市中央値¥7,000を仮置き)

密集 小規模×¥3,000〜7,000

12〜41室 × ¥3,400〜¥6,300に6軒。1990年前後開業の小規模ビジネスホテルとコンテナ型が中心で、価格で差別化する層。新規150室の直接競合ではなく、連泊・工事要員需要を分け合う関係になる。

WS① 100室超×¥6,500〜7,500

桐生駅前のパークイン桐生(147室)・東横INN桐生駅南口(98室)が占める帯。ここに150室が加わると、この価格帯の客室は245室から395室へ1.6倍になる。駐車場120台・大浴場・新築という設備差で、駅前2軒と同単価を確保できるかが論点。

WS② ¥9,000超×中規模

桐生エースホテル(38室・¥9,600)、桐生グランドホテル(30室・¥19,400)の2軒のみ。ツイン6室・その他39室の構成を活かし、観光・記念日需要で上位プランを作れれば、平均単価を桐生市中央値より上に押し上げる余地がある。

運営会社の既存2軒の実績は、この配置の現実性を測る材料になる。メトロエンジンリサーチ&コンサルティングの推定では、ベルズイン前橋(120室)の推定成約ADRは2026年9月に¥7,300、直近12か月(2025年10月〜2026年9月)の平均で約¥6,900、ベルズイン土浦(2006年開業)は同9月¥6,800、12か月平均で約¥7,200だった。いずれも立地する前橋市(¥7,500)・茨城県土浦市の市場水準に沿った価格設定で、安定的に運営されている。ホテルバンク編集部が集計した宿泊者口コミでは、ベルズイン前橋の総合評価は3.87(N=3,484件)でサービス部門が4.15と高く、ベルズイン土浦は総合3.95(N=4,714件)である。大浴場・朝食会場を備えた駅前の宿泊特化型という同社の型は、岩宿でも桐生市中央値¥7,000の確保に十分な実績といえる。

事業試算 — 総事業費20億円、ADR¥7,000×稼働80%で表面利回り7.5%、ADR−10%でも6.7%

ここからは報道と公的統計の数値を前提に、150室の収益性を簡易試算する。総事業費は地元メディアが報じた約20億円(土地含む)を採用した。1室あたりでは約1,330万円で、宿泊特化型ビジネスホテルの1室あたり投資目安(500〜1,500万円、HOTELISM)の上限近くにあたる。これは大浴場・露天風呂・サウナ・食事会場という付帯施設と、鉄骨造10階という構造を反映した水準と考えられる。

建設費の妥当性を建築着工統計ベースの坪単価で照合する。国土交通省「建築着工統計」をもとにしたarchi-book(2025年版)の集計では、2025年のホテル建築の坪単価は全構造平均195.2万円、鉄骨造(S造)は240.5万円で、建築着工統計の宿泊業用(全構造)2022年の138万円から3年で4割以上上昇した水準にある。建築計画データの延床3,219.19㎡は974坪に相当し、S造の全国平均単価を当てると建設費は約23.4億円、2025〜2026年の建設期インフレ(年+5.3%と仮定し、着工から工期中間点までの約0.7年分。Turner & Townsendは2026年の国内5都市で年+5.6〜6.2%と予測)を織り込むと約24.3億円となる。報道の総事業費約20億円(土地含む)はこの統計ベース試算を下回っており、グループ内の建設会社(野村建設工業)が自社施工する利点が出ていると読める。以下の試算では、報道値の20億円を基準とし、統計ベースで建設費が上振れした場合(土地8,000万円を加えて約25.1億円)を併記する。

150室の事業試算 — 保守・基準・強気の3シナリオ(年間)
前提・結果(年間)A. 保守B. 基準 採用C. 強気
ADR(推定成約・税抜相当)¥6,500¥7,000¥7,500
稼働率72%(観光庁 群馬県BH 2025年 71.8%)80%85%(当社推定 2026年8〜10月 83〜89%)
客室売上(150室×365日)2.56億円3.07億円3.49億円
総売上(付帯売上 客室の8%)2.77億円3.31億円3.77億円
GOP(GOP率45%)1.25億円1.49億円1.70億円
表面利回り(総事業費20.0億円・報道値)6.2%7.5%8.5%
単純回収年数(同上)16.1年13.4年11.8年
表面利回り(建設費を建築着工統計S造ベース+インフレで試算・総額25.1億円)5.0%5.9%6.8%
前提の出典:ADRは桐生市の推定成約ADR(メトロエンジンリサーチ&コンサルティング)、稼働率は観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年確定値と当社推定、GOP率はインヴィンシブル投資法人が開示するMHM運営91物件の実績38.9%(2024年12月期)と宿泊特化型の業界目安50〜60%(リロホテルソリューションズ)の中間を保守的に採用、建設費はarchi-book(2025年版・国土交通省「建築着工統計」ベースの集計)のS造240.5万円/坪。簡易試算であり、実際の投資判断には詳細なフィージビリティ・スタディが必要です

基準ケースBでは、客室売上約3.07億円に付帯売上を加えた総売上約3.31億円、GOP約1.49億円で、総事業費20億円に対する表面利回りは7.5%、単純回収年数は13.4年となる。GOP率45%は、インヴィンシブル投資法人が開示する運営91物件の実績38.9%(2024年12月期)よりは高いが、宿泊特化型の業界目安50〜60%よりは低い水準で、大浴場・サウナ・食事会場の運営コストを織り込んだ設定である。保守ケースAでも6.2%、建設費が統計ベースまで上振れした場合の基準ケースでも5.9%であり、地価が安く用地費が総事業費の数%にとどまる地方駅前の案件として、妥当な収益構造といえる。

感度分析 — 基準ケースBからADR・稼働率を個別/同時に変動
感度分析(基準ケースBから)ベースADR −10%(¥6,300)稼働 −5pt(75%)両方
総売上3.31億円2.98億円3.10億円2.79億円
GOP(45%)1.49億円1.34億円1.40億円1.26億円
表面利回り(20.0億円)7.5%6.7%7.0%6.3%
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算。GOP率は売上規模にかかわらず45%で固定した単純感度であり、固定費の下方硬直性は考慮していない

ADRと稼働率を同時に動かした場合の表面利回りを、基準ケースBの前提(150室・付帯売上8%・GOP率45%・総事業費20.0億円)のまま5×5のグリッドで示す。表面利回りが6%を割り込むのはADR¥6,000×稼働70%(5.6%)の1マスのみで、ADR¥6,000でも稼働75%を確保すれば6.0%を保つ。¥6,000は桐生市の2025年9月水準(約¥5,800)に近く、単価が前年水準へ戻ったうえで稼働も70%まで落ちる局面に相当する。逆に¥7,500×80%、¥7,000×90%の組み合わせで8%台に届く。

ADR × 稼働率 2軸感度 — 表面利回り(総事業費20.0億円・通年想定)
稼働(通年)\ADR¥6,000¥6,500¥7,000¥7,500¥8,000
稼働 70%5.6%6.1%6.5%7.0%7.5%
稼働 75%6.0%6.5%7.0%7.5%8.0%
稼働 80%6.4%6.9%7.5%8.0%8.5%
稼働 85%6.8%7.4%7.9%8.5%9.0%
稼働 90%7.2%7.8%8.4%9.0%9.6%
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算。表面利回り=GOP÷総事業費。太字は基準ケースB(¥7,000×80%)。青=8%以上、橙=6%未満。GOP率45%固定の単純感度

感度の読み方として重要なのは、ADR−10%と稼働−5ptが同時に起きても表面利回りは6.3%を保つ点である。桐生市の推定成約ADRは2025年9月の¥5,800から2026年9月の¥7,000へ上がってきたが、仮に2025年の水準に戻った場合でも6%台で着地する計算になる。逆に、群馬県のビジネスホテル推定成約ADRが2026年9月に前年同月比+11%まで伸びを強めた流れが続けば、強気ケースCの¥7,500は開業時点で現実的な水準になる。開業初年度の立ち上がりで稼働を落とさず、2年目以降に単価を市中央値の上に持っていく順序が、この規模の宿泊特化型では一般的な成長の道筋である。

投資判断の整理 — 供給段差は大きいが、単価上昇局面の商圏に初のビル型という優位

投資判断の整理 — 7つの観点の評価
観点評価根拠
供給インパクト大きい3km圏124→274室(2.2倍)、5km圏486→636室(+30.9%)。ただし同帯域の競合は桐生駅前2軒のみ
単価環境追い風桐生市 推定成約ADR ¥7,000(2026年9月、前年同月比+21.9%)、群馬県BH +11.1%
稼働環境良好観光庁 群馬県BH 71.8%(2025年)、当社推定 83〜89%(2026年8〜10月)
用地・建設有利地価¥24,600〜26,800/㎡で用地費は総事業費の数%、グループ内施工
需要基盤出張中心3km圏 従業者26,907人(事務所系10.9%)、乗車人員1,187人/日、国道50号・駐車場120台
人口動態留意3km圏 居住人口 2020→2040年 −20.8%。域外需要の取り込みが前提
パイプライン限定的群馬県内の確認申請ベース計画は本件のみ(下限値)。大型開業は前橋・高崎・太田に集中
出典:本文各節の出典に同じ

今回の150室は、半径3kmで供給を2倍にする一方、5kmまで広げれば桐生駅前の既存市場と一体で+31%の増加にあたる。桐生市の推定成約ADRが1年で2割上がり、群馬県のビジネスホテルが観光庁統計では県内の施設タイプで最も高く、当社推定でも旅館と並ぶ高い稼働を保っている局面で、商圏初のビル型・大浴場付き・駐車場120台という設備を持つ施設が入ることになる。供給段差の大きさは論点だが、価格帯で競合する施設が2軒に限られ、1室あたり投資が業界目安の範囲に収まっていることを考えれば、基準ケースで7%台半ばの表面利回りは十分に射程内といえる。開業は2027年4月で、着工から完成まで1年半の工程は既に半ばを過ぎている。開業後の初月ADRと、桐生駅前2軒の単価がどう動くかを、引き続きデータで追っていく。

同様に地方都市の駅前で100〜250室規模の新規供給と吸収力を検証した記事として、郡山のホテル、2027年に2棟441室増 — 客室ストック+11.6%、推定成約ADR約7,500円の吸収力、秋田駅前に233室、2027年1月開業 — 駅1km圏2,907室が+8%、建設費の読み方については建築着工統計調査とは|ホテル着工の読み方をあわせて参照されたい。

⚠ 将来日程のADRに関する注意:本記事のADRのうち2026年10月以降の月は、調査時点でOTAに公開されている販売価格に基づく推定であり、チェックイン日に近づくにつれて変動します。現時点で高く設定されている価格が直前値下げで下落する可能性がある点にご留意ください。事業試算のADR・稼働率・GOP率・建設費はいずれも前提値であり、実際の計画数値とは異なります。

よくある質問

Q. (仮称)ベルズインみどり岩宿駅前はいつ開業しますか。
A. 報道では2025年9月に着工、2027年2月に完成、2027年4月に開業する予定とされています。建築計画データ上の完成予定日も2027年4月1日です。正式な開業日は運営会社の発表をご確認ください。

Q. 客室数や設備の内訳は。
A. 鉄骨造10階建て・150室で、シングル105室・ツイン6室・その他39室の構成です。大浴場(屋上露天風呂)・サウナ・マッサージコーナー・食事会場と、敷地内外に駐車場120台が計画されています。

Q. 周辺の供給はどれくらい増えますか。
A. メトロエンジンリサーチ&コンサルティングの集計では、計画地から半径3km圏の客室数10室以上の宿泊施設は4軒124室(2026年10月時点)で、150室の加算で274室と2.2倍になります。半径5km圏では営業中ベースで486室から636室へ+30.9%です。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

メトロエンジンリサーチ&コンサルティングが継続追跡するOTA公開価格・在庫データ(推定成約ADR=最安プラン水準×業態別補正、2名1室・1室あたり・税抜相当、エリア値は対象施設の中央値)と、計画地から半径3km/5km圏の客室ストック(客室数10室以上・レジャーホテル除く、2026年10月26日時点)。建築計画は国土交通省「建築物動態統計調査」、稼働率の公的値は観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年確定値、需要基盤は経済センサス・国土数値情報・地価公示/地価調査、計画概要は地元報道による。

■ 試算前提

150室×365日。ADRは¥6,500/¥7,000/¥7,500(桐生市の推定成約ADR 2026年9月を基準)、稼働率は72%/80%/85%(いずれも通年想定)、付帯売上は客室売上の8%、GOP率は45%で固定。総事業費は報道値の20.0億円(土地含む)を基準とし、建築着工統計ベースのS造坪単価に建設期インフレを加えた25.1億円を上振れケースとして併記。表面利回り=GOP÷総事業費。

■ 限界・留意点

推定成約ADR・推定稼働率はOTA掲載在庫に基づく推定値で、各施設の実績・会計数値とは異なる(上場ホテルREITの物件別開示との照合で誤差中央値約7%)。2026年10月以降の月は調査時点の掲載価格に基づき変動しうる。試算はGOP率固定の簡易モデルで、開業初年度の立ち上がり、固定費の下方硬直性、公租公課・保険・修繕積立・金利は織り込んでいない。建築計画は確認申請ベースで、今後の申請追加により競合計画が増える可能性がある。

■ 市場データ

  • メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — 推定成約ADR(群馬県ビジネスホテル N=85〜104施設/月、桐生市 N=10施設、施設別推定値)、稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定、群馬県ビジネスホテル N=48〜50施設)、ブッキングカーブ(50施設・4,645室)、半径3km/5km圏の客室ストック(2026年10月26日時点)
  • ホテルバンク編集部調べ — 宿泊者口コミ(ベルズイン前橋 N=3,484件、ベルズイン土浦 N=4,714件)

■ 政府統計・公的データ

■ REIT・業界レポート

■ ニュース・プレスリリース

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