長野市のビジネスホテルは、2026年7〜9月の3か月間、火曜から土曜までの推定稼働率が92〜95%で推移し、月曜が88%、日曜が84%に下がる——メトロエンジンリサーチが主要予約サイトの掲載在庫から推定した曜日別の需給は、そう読める。推定成約ADRは2026年9月で¥9,200(ビジネスホテル、N=31施設)と前年同月比+15.4%、市内全業態でも¥11,000(N=78施設)と+4.5%だった。本稿は長野市に地理を限定し、業態別の客室ストックと長野駅1km圏・善光寺門前の分布、曜日別の推定OCC、13か月のADR推移、鉄道利用者数という需要の背景、施設単位の口コミ評価の分布を順に整理したうえで、2027年4月4日に始まる善光寺御開帳に向けた単価の伸びしろを考える。
• ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。
• エリア(都道府県・市区町村)単位のADRは、対象施設の推定成約単価の中央値(エリアの標準的な施設の水準)です。
• 掲載価格に言及する箇所は、2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
• OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。
• 出典:メトロエンジンリサーチ(国内約168,000施設のOTA公開価格を継続追跡、うち稼働確認済み約27,000施設)
• LT(リードタイム)=チェックイン日までの日数。ブッキングカーブと推定OCCはLT45〜LT1の観測のみを使い、45日超の点と当日(LT0)は用いない。
• 曜日別・日別の稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)は、総客室の30%以上を主要予約サイトに掲載する施設で構成した固定コホート(長野市ビジネスホテル13施設/1,602室)について、宿泊日前日(LT1)の残室から算出した。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります。
• 施設数・客室数は主要予約サイト掲載ベース。OTAに掲載のない旅館・簡易宿所は含まない。
- — 土曜95.1%・日曜84.3% — 長野市ビジネスホテル固定コホート13施設/1,602室の2026年7〜9月の推定OCC(LT1時点)。火〜土は92〜95%、月曜88.2%で、谷は日曜・月曜に集中する。
- — 推定成約ADR ¥9,210(2026年9月) — ビジネスホテルN=31施設で前年同月比+15.4%。13か月の最高は8月¥9,546、底は6月¥7,758。
- — 駅前集中 — 市内ビジネスホテル28施設・2,883室(客室の60%)。長野駅1km圏の稼働中は25軒・3,173室、善光寺1km圏は10軒・172室にとどまる。
- — 予約の積み上がりが曜日で違う — 土曜は45日前に75.8%が販売済み、水曜は54.6%から前日98.1%へ直前に積み上がる(2026年9月の例)。
- — 御開帳2027の単価余地 — 会期に当たる4〜6月の平均¥8,300を8月水準¥9,500に揃えると約15%、1月水準¥9,100なら約10%の上乗せ。
長野市の宿の全体像 — 96施設4,788室のうちビジネスホテルが6割
まずは市全体の構成から見ていく。メトロエンジンリサーチが長野市で把握する宿泊施設は、主要予約サイト掲載ベースで96施設・4,788室である。業態別ではビジネスホテルが28施設・2,883室と客室数の60%を占め、旅館は35施設と軒数こそ多いものの431室にとどまる。シティホテル5施設・595室、リゾート3施設・382室、デラックス1施設・235室が続き、県庁所在地でありながら「小規模旅館が多く、客室はビジネスホテルに集中する」という構図が明瞭だ。参考までに隣接する中信の中核都市・松本市は144施設・5,507室で、旅館が69施設・1,416室と厚く、ビジネスホテルは31施設・3,315室と長野市をわずかに上回る(本稿では松本市を比較の参照にとどめる)。
| 業態 | 施設数 | 客室数 | 客室構成比 |
|---|---|---|---|
| ビジネスホテル | 28 | 2,883 | 60.2% |
| シティホテル | 5 | 595 | 12.4% |
| 旅館 | 35 | 431 | 9.0% |
| リゾートホテル | 3 | 382 | 8.0% |
| デラックスホテル | 1 | 235 | 4.9% |
| 長野市 全業態 | 96 | 4,788 | 100% |
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(主要予約サイト掲載ベース、2026年10月24日時点。上記5業態に含まれない施設があるため合計と一致しない)
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(長野市96施設・4,788室、主要予約サイト掲載ベース)
次に立地である。本記事の客室ストックは、長野駅から半径1,000m圏内にある客室数10室以上の宿泊施設(レジャーホテルを除く)を対象とし、「稼働中」は直近3か月(2026年8月〜2026年10月)に主要予約サイトで販売価格が確認できた施設を指す(2026年10月25日時点、メトロエンジンリサーチ集計)。この条件で長野駅から半径1,000m圏を切り出すと、掲載ストックは36軒・4,061室、稼働中は25軒・3,173室だった。稼働中のうちビジネスホテルは18軒・2,365室で、別集計ではあるが市内ビジネスホテル客室(2,883室)の大半が駅1km圏に集まっている構図が読み取れる。一方、善光寺から半径1,000m圏は掲載17軒・269室、稼働中10軒・172室と小さく、稼働中の旅館は4軒・55室にとどまる。門前には宿坊や小規模旅館が並ぶものの、客室数10室以上という条件で見れば宿泊キャパシティは駅前のおおむね18分の1であり、参拝客の宿泊需要は門前よりも長野駅周辺のビジネスホテルが受け止めている、という地理が数字に表れている。
| 半径1,000m圏 | 掲載 軒数 | 掲載 客室数 | 稼働中 軒数 | 稼働中 客室数 | 稼働中の主な業態 |
|---|---|---|---|---|---|
| 長野駅 | 36 | 4,061 | 25 | 3,173 | ビジネス18軒2,365室/シティ4軒479室/デラックス1軒235室 |
| 善光寺 | 17 | 269 | 10 | 172 | 旅館4軒55室/ビジネス3軒69室/ゲストハウス2軒36室 |
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(客室数10室以上・レジャーホテル除く、2026年10月25日時点)
長野駅・善光寺それぞれ半径1,000m圏の稼働中施設(円の大きさ=客室数、濃い青=ビジネスホテル、紺=シティ・デラックス、淡い青=旅館、グレー=その他)。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
ビジネスホテルの曜日別推定OCC — 火〜土は92〜95%、日曜が84%の谷
ここからが本稿の中心である。長野市のビジネスホテルのうち、総客室の30%以上を主要予約サイトに掲載する固定コホート13施設・1,602室について、2026年7月・8月・9月の確定3か月分の宿泊日前日(LT1)残室から稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)を日別に求め、曜日ごとに平均した。月平均は7月88.0%、8月93.5%、9月93.0%で、夏休みと秋の行楽が重なる8〜9月は93%台と高い水準にある(7月の一部の日は観測施設が11施設に減る)。
曜日別に見ると、3か月通算で最も高いのは土曜の95.1%、次いで木曜94.7%、火曜93.2%、金曜92.5%、水曜92.4%と続き、月曜が88.2%、日曜が84.3%で谷になる。土曜と日曜の差は10.8ポイントで、長野市のビジネスホテルは「平日は出張・業務需要で埋まり、土曜は観光客で満室近くまで積み上がり、日曜の夜だけ両方の需要が薄くなる」という典型的な県庁所在地型の曜日パターンを持つ。月曜が火曜以降より5.0ポイント低いのは、週初めの出張が火曜から本格化する業務需要の性質を映しているとみられる。日曜と月曜が連続して凹むこの構造は北陸の県都でも観測されており、富山のビジネスホテルの曜日別推定OCC分析がその読み方を整理している。
| 月 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 月平均 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2026年7月 | 80.0% | 88.6% | 92.1% | 91.7% | 89.1% | 94.3% | 78.2% | 88.0% |
| 2026年8月 | 91.6% | 97.8% | 95.8% | 96.2% | 94.5% | 95.0% | 85.8% | 93.5% |
| 2026年9月 | 92.2% | 93.2% | 89.9% | 96.9% | 94.8% | 96.0% | 88.4% | 93.0% |
| 7〜9月通算 | 88.2% | 93.2% | 92.4% | 94.7% | 92.5% | 95.1% | 84.3% | — |
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(長野市ビジネスホテル 対象13施設/客室1,602、主要予約サイト掲載ベース、LT1時点の推定)
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(対象13施設/客室1,602、主要予約サイト掲載ベース)
月ごとの動きも補足しておきたい。7月は月曜80.0%・日曜78.2%と谷が深く、平日と週末の差が最も大きい月だった。8月はお盆前の8月3日(月)〜8月14日(金)に連日93〜99%で推移し、曜日差がほぼ消える一方、8月15日(土)以降は日曜が76〜84%に戻り、8月30日(日)76.1%・8月31日(月)75.7%が8〜9月で最も低い2日になった(7〜9月の最低は7月5日(日)の63.1%)。9月は木曜96.9%・土曜96.0%と再び曜日の山が立ち、日曜88.4%との差が広がる。つまり長野市ビジネスホテルの日曜の谷は、夏休み期間中は観光需要で埋まるが、通常期には8〜10ポイントの余地として残る、ということになる。
業態別の推定OCCを並べると、固定コホートで比較できるのはビジネスホテルと旅館で、旅館(12施設・121〜149室)は7月91.2%、8月92.4%、9月93.9%とビジネスホテルと同水準かやや高い。全業態コホート(34〜36施設・2,308〜2,318室)は7月88.2%、8月93.2%、9月92.5%だった。
需要の性質は、予約の積み上がり方にも現れる。9月の典型的な水曜(9月9日)、土曜(9月12日)、日曜(9月13日)について、LT45からLT1までの残室推移を比べると、土曜は45日前の時点で既に75.8%が販売済みで、14日前には89.7%に達していた。これに対し水曜は45日前の販売済みが54.6%と半分程度にとどまり、14日前で79.7%、前日には98.1%まで一気に積み上がる。日曜は45日前58.7%から前日84.9%と、伸びが緩やかだった。土曜の早い予約は観光客の計画的な手配、水曜の直前の積み上がりは出張の直前手配という需要の違いを示しており、平日はLT14〜LT1の間に総客室の2割近くが動く以上、この期間の価格コントロールがRevPARを左右する、と読める。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(長野市ビジネスホテル 対象13施設/客室1,602、主要予約サイト掲載ベース、LT45〜LT1)
推定成約ADRの13か月推移 — ビジネスホテルは9月+15.4%、8月が最高で6月が底
単価はどう動いたか。長野市ビジネスホテルの推定成約ADR(推定値・月中央値、N=29〜31施設)は、2025年9月¥8,000から11月¥9,000へ上がり、2026年1月には¥9,100と冬の山をつくった。志賀高原や白馬など県内スキー場への玄関口として、冬の長野駅前は出張需要に加えてスキー客の前泊・後泊を受けるためだろう。その後は3月¥8,000、6月¥7,800と下がって6月が底になり、8月は¥9,500と13か月で最も高く、9月も¥9,200と高い水準を保った。前年同月比は13か月すべてでプラスで、2026年1月+26.4%、9月+15.4%が大きく、8月+2.8%が最も小さい。8月は前年も¥9,300と高かったため、伸び率としては落ち着いて見える。
市内全業態(N=70〜78施設)の推定成約ADRは、2025年9月¥10,600→11月¥12,100→2026年1月¥12,200→3月¥10,200→6月¥9,200→8月¥11,600→9月¥11,000と推移し、前年同月比は2025年11月〜2026年1月に+30.7%〜+35.0%と大きく、2026年7月-1.2%・8月-3.8%と前年並みに戻ったあと、9月は+4.5%だった。全業態の伸びが冬に集中するのは、旅館とシティホテルの冬季単価が上がった影響を含む。なおビジネスホテルの推定成約ADRは、松本市の2026年9月¥10,600(N=31施設)と比べると¥1,400ほど低い水準にある。第2都市の単価が県都を上回るこの逆転は長野県に限らず、県都を上回る第2都市5市の供給密度比較で16市を横断して確認している。
| 月 | ビジネスホテル 推定成約ADR | 前年同月比 | N | 全業態 推定成約ADR | 前年同月比 | N |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2025年9月 | ¥7,979 | +5.3% | 29 | ¥10,574 | +16.6% | 75 |
| 2025年10月 | ¥8,040 | +3.1% | 29 | ¥11,214 | +18.7% | 75 |
| 2025年11月 | ¥9,023 | +15.3% | 29 | ¥12,124 | +30.7% | 72 |
| 2025年12月 | ¥8,396 | +13.5% | 29 | ¥11,948 | +32.7% | 70 |
| 2026年1月 | ¥9,136 | +26.4% | 29 | ¥12,209 | +35.0% | 70 |
| 2026年2月 | ¥8,337 | +8.9% | 30 | ¥10,776 | +17.8% | 74 |
| 2026年3月 | ¥7,979 | +14.1% | 31 | ¥10,155 | +15.3% | 75 |
| 2026年4月 | ¥8,454 | +8.4% | 31 | ¥11,030 | +13.8% | 77 |
| 2026年5月 | ¥8,601 | +7.2% | 31 | ¥11,774 | +20.7% | 77 |
| 2026年6月 | ¥7,758 | +4.9% | 31 | ¥9,207 | +2.9% | 77 |
| 2026年7月 | ¥8,342 | +8.9% | 31 | ¥10,050 | -1.2% | 78 |
| 2026年8月 | ¥9,546 | +2.8% | 31 | ¥11,629 | -3.8% | 78 |
| 2026年9月 | ¥9,210 | +15.4% | 31 | ¥11,050 | +4.5% | 78 |
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(長野市、推定成約ADR=確定月の履歴基準、前年同月も同基準)
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(長野市ビジネスホテル、N=29〜31施設、確定月のみ)
ちなみに調査時点(2026年10月24日)の掲載水準から推定した2026年10月のビジネスホテル推定成約ADRは¥13,500前後と、9月を大きく上回る。紅葉シーズンと秋の連休が重なる月で、確定値ではないため本稿のトレンド比較には含めないが、冬に向けて単価の山が早まっている兆しとして記しておく。
需要の背景 — 長野駅の乗車人員は1日20,762人、県庁・企業の平日需要と新幹線
平日92%前後という稼働の土台は、鉄道利用者数の回復に裏付けられる。JR東日本が公表する2024年度の長野駅の1日平均乗車人員は20,762人(定期外10,626人・定期10,136人)で、定期外が半数を超える点に新幹線を使った出張・観光の往来の厚みが表れている。国土交通省の国土数値情報(駅別乗降客数)でJR長野駅の乗降客数を遡ると、2019年の41,724人/日から2020年27,662人へ落ち込んだあと、2021年29,858人、2022年35,610人、2023年38,572人と回復し、2023年時点で2019年の92%まで戻っていた。長野電鉄長野駅も2019年10,655人から2023年9,480人と同じ軌跡を描く。
出典:国土交通省 国土数値情報「駅別乗降客数データ」(JR長野駅・長野電鉄長野駅、1日あたり乗降客数)よりホテルバンク編集部作成
北陸新幹線は東京—長野間を最短約1時間20分で結び、2024年3月の金沢—敦賀間延伸で北陸・関西方面からの到達性も高まった。長野市には県庁・市役所のほか、地方裁判所、金融機関の支店を含む行政・金融の拠点、精密機器・電子部品メーカーの事業所や支店が集まり、火曜から木曜にかけて稼働が最も高くなる曜日パターンは、こうした業務来訪が平日の客室を埋めている様子と整合する。土曜の95%は善光寺・戸隠・志賀高原・野沢温泉など周辺観光地への玄関口としての機能であり、ビジネスホテルが週末だけレジャー需要へ切り替わる二面性が長野駅前の特徴といえる。
口コミ評価の分布 — 33施設の中央値は4.03、朝食評価が市場の強み
需給と並んで、長野駅1km圏・善光寺1km圏で稼働中の施設について、ホテルバンク編集部が集計した直近24か月(2024年11月〜2026年10月)の宿泊者口コミ32,765件を施設単位で見ていく。口コミデータのある33施設の総合スコア(5点満点)の中央値は4.03で、4.3以上が8施設、4.0〜4.3未満が9施設、3.5〜4.0未満が13施設、3.5未満が3施設という分布だった。口コミ件数が1,000件を超える駅前の主要施設に限ると、上位はチサン グランド 長野(4.45、N=2,200件)、ホテルメトロポリタン 長野(4.43、N=2,208件)、ホテルニューナガノ ネクスト(4.40、N=1,803件)、天然温泉 善光の湯 ドーミーイン長野(4.38、N=1,729件)、相鉄フレッサイン 長野駅善光寺口(4.32、N=2,125件)と続き、善光寺門前では地蔵館 松屋旅館が4.68(N=850件)と圏内で最も高い評価を集めている。
出典:ホテルバンク編集部調べ(長野駅・善光寺各1km圏の稼働中33施設、直近24か月の口コミ32,765件)
カテゴリ別では朝食の評価が市場全体の強みになっている。口コミ500件以上の施設で朝食スコアを比べると、ホテルJALシティ長野4.74、チサン グランド 長野4.73、ホテルナガノアベニュー4.63、シャトレーゼホテル長野4.55が上位に並び、信州の食材を生かした朝食が駅前ビジネスホテルの差別化軸として機能している。立地評価はホテルアベスト長野駅前4.78、ホテルメトロポリタン 長野4.70、森と水バックパッカーズ4.67など駅直結・駅前立地の施設で高く、清潔感はホテルメトロポリタン 長野4.59、長野東急REIホテル4.57、ホテルニューナガノ ネクスト4.56が高い。総合4.0以上が17施設と半数を超えるこの評価水準は、単価を引き上げる局面で宿泊者の納得を得やすい土台でもある。
善光寺御開帳2027に向けた単価の伸びしろ — 4〜6月のADRは年間の底
最後に2027年の話をしたい。善光寺前立本尊御開帳は2027年4月4日(日)から6月19日(土)までの77日間で(信州善光寺宿坊 蓮華院の2026年9月28日付プレスリリース、長野市「御開帳にぎわい創出実行委員会」資料より)、長野市は令和9年の御開帳に向けたにぎわい創出事業を進めている。この会期に当たる2026年4〜6月の長野市ビジネスホテル推定成約ADRは¥8,500・¥8,600・¥7,800で、13か月の中では2〜3月とともに年間の底に当たる。7〜9月の曜日別推定OCCで見たとおり平日は92%前後、土曜は95%と既に高く、埋まっていないのは日曜と月曜の8〜10ポイントだけである。御開帳の参拝は週末に集中しやすいため、通常期の谷である日曜の宿泊を参拝客が埋め、平日は出張需要がそのまま残る、という需要の重なりが見込める。
単価面の機会を数字にすると、4〜6月の平均¥8,300を、同じ固定コホートが93%台の稼働で消化した2026年8月の¥9,500の水準に揃えるだけで¥1,300前後、15%の上乗せになる。1月の¥9,100を参照すれば10%で、いずれも長野市の市場が別の季節に実際に成立させた水準であり、御開帳という7年に一度の需要を前提にすれば現実的なレンジといえる。平日の積み上がりがLT14〜LT1に集中する長野市の予約特性を踏まえると、会期中は早期の団体・旅行会社枠で土日を確保しつつ、平日は直前需要に向けて段階的に単価を上げる設計が収益機会を最大化する。門前3km圏の客室ストックと新規開発の必要ADRについては既存記事「善光寺御開帳2027は4月4日から77日間 — 門前3km圏4,234室と新規開発の必要ADR試算」で整理しているので、本稿では再掲しない。
| 参照水準 | 推定成約ADR | 4〜6月平均との差 | 上乗せ率 |
|---|---|---|---|
| 据え置き(2026年4〜6月の単純平均) | ¥8,271 | — | — |
| 1月水準(2026年1月) | ¥9,136 | +¥865 | +10.5% |
| 8月水準(2026年8月・13か月の最高) | ¥9,546 | +¥1,275 | +15.4% |
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(長野市ビジネスホテル、推定成約ADR=確定月の履歴基準。4〜6月平均は3か月の月中央値の単純平均。いずれも市場が実際に成立させた月の水準で、2027年の予測値ではない)
宿向け:このテーマに効くプラン名のヒント
長野県 × ビジネスホテルで公開されているプラン名(N=752)に多い訴求要素 ——
朝食付 49%素泊まり 29%早割 13%割引 12%ビュッフェ 11%ビジネス 11%
実際の名前の例(匿名化):
- 【ビジネス・一人旅・カップル・ファミリー・グループに!】朝食ブッフェ付きプラン
- 【ビジネス・一人旅・カップル・ファミリー・グループに!】朝食付きプラン
- 【ビジネス・一人旅・カップル・ファミリー・グループに!】素泊まりプラン
※公開プラン名の集計にもとづく傾向で、命名が販売を生む因果を示すものではありません。市場×命名の深掘りは命名ベンチマーク/イベント記事をご参照ください。
まとめ
長野市の宿泊市場は96施設・4,788室のうちビジネスホテルが2,883室と6割を占め、その大半が長野駅1km圏(稼働中25軒・3,173室)に集中する。善光寺門前の客室は稼働中172室と小さく、参拝客の宿泊も駅前が受け止める地理にある。ビジネスホテル固定コホート13施設・1,602室の2026年7〜9月の推定OCCは火〜土が92〜95%、月曜88.2%、日曜84.3%で、土曜は45日前に4分の3が売れ、平日は直前2週間で2割が動く。推定成約ADRは2026年9月¥9,200(前年同月比+15.4%)で、1月が高く6月が底という季節性を持つ。長野駅の乗車人員は2024年度に1日20,762人まで戻り、口コミ総合4.0以上が33施設中17施設と評価の土台も厚い。2027年4月4日からの御開帳77日間は、年間の底である4〜6月の単価を8月並みに引き上げるだけで15%の上乗せ余地がある市場だと整理できる。
⚠ 将来日程のADRに関する注意:本記事で2026年10月に言及した推定成約ADRは、調査時点(2026年10月24日)で主要予約サイトに公開されている販売価格に基づく推定であり、チェックイン日に近づくにつれて変動します。確定月(2026年9月まで)の値とは基準が異なる点にご留意ください。
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参考資料・出典一覧
■ データソース
メトロエンジンリサーチが継続追跡する主要予約サイトの公開価格・残室データ(長野市の業態別施設数・客室数、長野駅・善光寺半径1,000m圏の客室ストック、ビジネスホテル固定コホート13施設/1,602室の残室推移、推定成約ADR)、ホテルバンク編集部が集計した宿泊者口コミ(33施設・32,765件)、JR東日本・国土交通省の駅別利用者数、長野市・蓮華院の御開帳公表資料。
■ 試算前提
推定OCCは総客室の30%以上を主要予約サイトに掲載する施設の固定コホートで、宿泊日前日(LT1)の残室から算出し曜日ごとに単純平均した。推定成約ADRは月ごとの施設中央値で、確定月(2026年9月まで)は履歴基準、2026年10月のみ調査時点の掲載水準による推定。御開帳の上乗せ幅は2026年4〜6月の月中央値の単純平均(¥8,271)を基準に、同じ市場が1月・8月に成立させた水準との差として示した。
■ 限界・留意点
OCCはOTA販売在庫の消化に基づく推定で、施設全体の実稼働率や団体・直販分は反映しない。コホートは13施設と小さく、7月の一部の日は11施設に減る。施設数・客室数は主要予約サイト掲載ベースで、未掲載の宿坊・簡易宿所は含まない。上乗せ幅は過去の月の水準比較であり、2027年会期中のADRの予測ではない。
- JR東日本「各駅の乗車人員 2024年度」(長野駅 1日平均乗車人員 20,762人)
- 国土交通省 国土数値情報「駅別乗降客数データ」(不動産情報ライブラリ経由で取得)
- 信州善光寺宿坊 蓮華院「七年に一度の『善光寺御開帳』へ。2027年御開帳期間の宿泊予約開始」(PR TIMES、2026年9月28日)
- 長野市「善光寺御開帳2027 祈りとにぎわいが息づくまちNAGANO」御開帳にぎわい創出実行委員会 報道資料(2026年9月29日)
- メトロエンジンリサーチ — 長野市の業態別施設数・客室数、長野駅・善光寺半径1,000m圏の客室ストック、ビジネスホテル固定コホート13施設/1,602室の推定OCC・ブッキングカーブ(LT45〜LT1)、推定成約ADR(長野市 N=29〜31施設/70〜78施設、松本市 N=31施設)
- ホテルバンク編集部調べ — 長野駅・善光寺各1km圏 稼働中33施設の宿泊者口コミ32,765件(直近24か月)
