訪日外客数とは、日本政府観光局(JNTO)が毎月発表する、日本を訪れた外国人の人数である(観光・商用・親族訪問等の一時滞在者で、永住者等を除く)。法務省の出入国管理統計を基に推計し、推計値→暫定値→確定値の順に改定される。執筆時点(2026年10月18日)で公表済みの最新月は2026年8月で、推計値は309万8,900人、前年同月比−9.6%だった(JNTO、2026年9月16日発表)。中国は41万8,000人で同−59.0%である。9月分の推計値は2026年10月21日(水)16時15分に発表される予定で、本稿の執筆時点ではまだ公表されていない。本稿では、この統計の定義と範囲、3段階の改定幅、発表スケジュール、国籍・目的別の読み方を整理したうえで、ホテルの投資家・運営者が「人数」を「宿泊需要(人泊)」に置き換えるための手順を示す。
• ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。
• エリア(都道府県・市区町村)単位のADRは、対象施設の推定成約単価の中央値(エリアの標準的な施設の水準)です。
• 掲載価格に言及する箇所は、2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
• OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。
• 出典:メトロエンジンリサーチ(国内約168,000施設のOTA公開価格を継続追跡、うち稼働確認済み約27,000施設)
• 訪日外客数:JNTOが法務省の出入国管理統計を基に算出する、日本に入国した外国人旅行者の数。入国手続き1回を1人と数える。
• 推計値・暫定値・確定値:同じ月の訪日外客数が、発表のたびに精度を上げて改定される3段階の数値。
• 外国人延べ宿泊者数(人泊):観光庁「宿泊旅行統計調査」による、調査対象の宿泊施設に泊まった外国人の延べ人数。1人が3泊すれば3人泊と数える。
• 1人あたり人泊:外国人延べ宿泊者数を同じ月の訪日外客数で割った単純比。母集団が異なる統計どうしの比であり、実際の平均泊数とは一致しない。
• 本稿の訪日外客数・延べ宿泊者数はすべてJNTO・観光庁の公表値であり、当社の集計で置き換えていない。比率・差分は公表値からの算出である。
— 2026年8月の訪日外客数(推計値)は309万8,900人・前年同月比−9.6%。韓国85万500人(+28.7%)など14市場が8月として過去最高を記録した一方、中国は41万8,000人(−59.0%)だった。
— 推計値は100人単位の概数、暫定値は2か月後に1人単位で、確定値は翌年7月以降に出る。実例で見た改定幅は総数で±0.02%以内(2025年計は推計値4,268万3,600人→確定値4,268万3,301人、−299人)。
— 9月分推計値の発表予定は2026年10月21日(水)16時15分。同日に7月分の暫定値も出る。
— 都道府県別の訪日外客数はJNTOに無い。地域別に需要を見るなら観光庁「宿泊旅行統計調査」の外国人延べ宿泊者数を使う。
— 2026年1〜8月は訪日外客数−2.7%に対し外国人延べ宿泊者数−8.7%。1人あたり人泊は4.21から3.95へ下がった。ただし8月単月では−9.6%と−10.3%で、開きは0.7ポイントまで縮んだ。
訪日外客数とは — 誰が数えられ、誰が除かれるか
JNTOの報道発表資料は、訪日外客数を「法務省集計による出入国管理統計に基づき、算出したもの」と定義している。起点は外国人の正規入国者で、そこから日本を主たる居住国とする永住者等の外国人を除き、寄港地上陸・通過上陸・船舶観光上陸の外国人を加える。つまり「日本に住んでいない外国人が、日本に入ってきた回数」に近い概念である。
読み手が誤解しやすいのは、駐在員やその家族、留学生の扱いだ。これらの人々は日本で暮らしていても永住者等には当たらないため、入国・再入国のたびに訪日外客に含まれる。一方で、航空機や船舶の乗員は含まれない。また、JNTOは数え方を「1回の入国手続きを1人」としているため、同じ人が月に2回入国すれば2人と数えられる。訪日外客数は「人の頭数」ではなく「入国の件数」として読むのが正確だといえる。
| 区分 | 訪日外客数での扱い | JNTOの記載 |
|---|---|---|
| 観光・商用・親族訪問等の短期滞在者 | 含む | 外国人正規入国者が起点 |
| 駐在員・その家族、留学生 | 含む(入国・再入国のたびに計上) | 「訪日外客に含まれる」と明記 |
| 日本を主たる居住国とする永住者等 | 除く | 正規入国者から除外 |
| 寄港地上陸・通過上陸・船舶観光上陸(クルーズ客など) | 含む | 正規入国者に加算 |
| 航空機・船舶の乗員 | 除く | 「乗員は含まれない」と明記 |
| 国籍の判定 | 旅券の国籍ベース | 出発地ではなく国籍で集計 |
出典:日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数(2026年8月推計値)」報道発表資料(2026年9月16日)注記、同「よくあるご質問(統計・データ)」よりホテルバンク編集部作成
なお、出入国在留管理庁が公表する「外国人入国者数」とJNTOの訪日外客数は一致しない。JNTOの統計ページ自身が両者の違いに注意を促しており、永住者等の除外や一時上陸客の加算といった定義の差がそのまま数字の差になる。報道や資料で「訪日外国人数」と書かれている数字がどちらの統計なのかは、出典欄で必ず確かめたい。
推計値・暫定値・確定値 — 3段階で何が変わるか
同じ月の訪日外客数は、3回にわたって発表される。JNTOの「よくあるご質問」によれば、推計値は対象月の翌月に発表する概算値で100の位まで、暫定値は推計値の2か月後に発表する確定に近い数値で1の位まで、確定値は対象年の翌年7月以降に法務省の年計確定をもって算出する最終値である。発表のたびに精度が上がるだけでなく、公表される内訳の粒度も変わる点が実務上は重要だ。
| 段階 | 発表時期 | 数値の単位 | 公表される内訳 |
|---|---|---|---|
| 推計値 | 対象月の翌月(中旬〜下旬) | 100人単位の概数 | 総数と一部の国籍別 |
| 暫定値 | 推計値の2か月後 | 1人単位 | 国籍別(1の位まで)と目的別 |
| 確定値 | 対象年の翌年7月以降 | 1人単位 | 法務省の年計確定を反映した最終値 |
出典:日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数・出国日本人数 報道発表日(予定)」、同「よくあるご質問(統計・データ)」よりホテルバンク編集部作成
では、推計値と確定値はどれほど違うのか。JNTOが過去に発表した推計値と、その後の発表資料に掲載された暫定値・確定値を並べると、改定幅は総数でみて数百人規模にとどまる。2025年の年間合計は、2026年1月21日発表の推計値が4,268万3,600人、同年7月15日発表資料の暫定値が4,268万3,837人、9月16日発表資料の確定値が4,268万3,301人だった。推計値から確定値への差は−299人、率にして0.001%に満たない。
| 対象 | 推計値 | 暫定値 | 確定値 | 推計値との差 |
|---|---|---|---|---|
| 2025年9月 | 3,266,800 | 3,267,228 | 3,267,228 | +428人(+0.013%) |
| 2025年11月 | 3,518,000 | 3,518,195 | 3,517,659 | −341人(−0.010%) |
| 2025年12月 | 3,617,700 | 3,617,791 | 3,617,791 | +91人(+0.003%) |
| 2025年 年間合計 | 42,683,600 | 42,683,837 | 42,683,301 | −299人(−0.001%) |
| 2026年5月 | 3,559,900 | 3,560,256 | 未公表 | +356人(暫定値比) |
| 2026年6月 | 3,148,600 | 3,148,754 | 未公表 | +154人(暫定値比) |
出典:日本政府観光局(JNTO)報道発表資料(2025年10月15日、2026年1月21日、7月15日、9月16日)よりホテルバンク編集部作成。差は公表値どうしの差分
総数の改定がここまで小さいのは、推計値の段階ですでに法務省の入国データの大部分が反映されているためと考えられる。したがって、推計値の前年同月比(2026年8月なら−9.6%)は、暫定値・確定値でもほぼ同じ水準に落ち着くと読んでよい。一方で、推計値の段階では国籍別は一部の市場の概数しか出ず、目的別は暫定値まで待つ必要がある。市場構成を細かく論じる資料では、推計値ではなく暫定値を使うのが安全である。
対照的に、改定幅が大きいのは観光庁の宿泊旅行統計のほうだ。2026年7月の外国人延べ宿泊者数は、8月31日公表の第1次速報で1,358万人泊、9月30日公表の第2次速報で1,331万人泊(13,314,610人泊)となり、約27万人泊・−2.0%改定された。訪日外客数の改定が0.01%前後であるのに比べると2桁大きい。人数と人泊を突き合わせる際は、人泊側の速報値のほうが動きやすいことを前提にしておきたい。宿泊旅行統計側の第1次速報・第2次速報・確定値の仕組みと、速報と確定の差の実例は、宿泊旅行統計調査とは|観光庁の宿泊統計の読み方で整理している。
発表スケジュール — 毎月中旬〜下旬の水曜16時15分
JNTOの訪日外客数は、近年は毎月中旬から下旬の水曜日16時15分に報道発表されている。直近3か月の発表は、2026年7月15日(6月分推計値)、8月19日(7月分推計値)、9月16日(8月分推計値・6月分暫定値)だった。JNTOが公表している予定では、以降は10月21日・11月18日・12月16日に続く。同じ発表日に「当月の推計値」と「2か月前の暫定値」が同時に出る構造を押さえておくと、どの月の数字が更新されるのかを迷わずに済む。
| 発表日(時刻) | 推計値 | 暫定値 | 状態 |
|---|---|---|---|
| 2026年7月15日(水)16:15 | 2026年6月分 | 2026年4月分 | 公表済み |
| 2026年8月19日(水)16:15 | 2026年7月分 | 2026年5月分 | 公表済み |
| 2026年9月16日(水)16:15 | 2026年8月分 | 2026年6月分 | 公表済み(最新) |
| 2026年10月21日(水)16:15 | 2026年9月分 | 2026年7月分 | 予定 |
| 2026年11月18日(水)16:15 | 2026年10月分 | 2026年8月分 | 予定 |
| 2026年12月16日(水)16:15 | 2026年11月分 | 2026年9月分 | 予定 |
出典:日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数・出国日本人数 報道発表日(予定)」(2026年9月〜12月)、各月の報道発表資料よりホテルバンク編集部作成。7月・8月発表分の暫定値の対象月は「推計値の2か月後」の規則による。予定は変更となる場合がある
宿泊需要と突き合わせる立場からは、観光庁の発表日も並べておくと便利だ。観光庁の公表予定日によれば、宿泊旅行統計調査は2026年8月分の第2次速報と9月分の第1次速報が10月30日、9月分の第2次速報が11月30日に公表される。また、訪日外国人の平均泊数や消費額を扱うインバウンド消費動向調査の7〜9月期第1次速報は、JNTOの9月分推計値と同じ10月21日の予定である。人数(JNTO)が先に出て、人泊(観光庁)は1〜2週間ほど遅れて出る。このラグを前提に、9月の人数は10月21日、9月の人泊は10月30日と覚えておけばよい。
最新値:2026年8月は309万8,900人・前年同月比−9.6%
2026年8月の訪日外客数は309万8,900人で、前年同月の342万8,406人(確定値)を9.6%下回った。JNTOは、東アジアや欧米豪・中東で夏季休暇や祝日に合わせた訪日需要の高まりが見られた一方、東南アジアを中心に需要が落ち着く時期であることや、航空便の減便、台風による欠航が一部市場を押し下げたと説明している。1〜8月の累計は2,762万6,300人で、前年同期比−2.7%である。
出典:日本政府観光局(JNTO)報道発表資料よりホテルバンク編集部作成。2024年・2025年は確定値、2026年1〜6月は暫定値、7・8月は推計値
月別の推移を年ごとに重ねると、2026年は2月・3月・7月に前年を上回ったものの、1月・4〜6月と8月は2025年の線の下を通り、8月で差が開いた形である。ただし水準そのものは1〜8月のすべての月で2024年を上回っている。前年が過去最高だった反動を含む数字であり、前年同月比のマイナスだけで市場の縮小と読むのは早計だろう。
| 国・地域 | 2025年8月(確定値) | 2026年8月(推計値) | 前年同月比 |
|---|---|---|---|
| 総数 | 3,428,406 | 3,098,900 | −9.6% |
| 韓国 | 660,917 | 850,500 | +28.7% |
| 台湾 | 620,753 | 666,000 | +7.3% |
| 中国 | 1,018,747 | 418,000 | −59.0% |
| 香港 | 226,069 | 247,300 | +9.4% |
| 米国 | 194,525 | 197,400 | +1.5% |
| ベトナム | 61,215 | 56,600 | −7.5% |
| カナダ | 51,513 | 50,600 | −1.8% |
| イタリア | 41,098 | 47,300 | +15.1% |
| フランス | 37,185 | 40,300 | +8.4% |
| スペイン | 31,990 | 36,500 | +14.1% |
出典:日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数(2026年8月推計値)」(2026年9月16日)よりホテルバンク編集部作成。主要市場を抜粋
市場別では、韓国が85万500人(+28.7%)で首位となり、台湾66万6,000人(+7.3%)、中国41万8,000人(−59.0%)、香港24万7,300人(+9.4%)が続く。8月として過去最高を記録したのは韓国、台湾、香港、マレーシア、インドネシア、インド、米国、メキシコ、フランス、イタリア、スペイン、ロシア、北欧地域、中東地域の14市場で、イタリアとスペインは単月として過去最高だった。中国についてJNTOは、中国政府から日本への渡航を避けるよう注意喚起があったことと、航空便の減便の影響を挙げている。中国一市場の減少(約60万人)は総数の減少幅(約33万人)を上回っており、中国以外の市場は合計で約27万人増えた計算になる。
国籍・地域別と目的別の見方 — 推計値で読めること、暫定値まで待つこと
国籍・地域別の数字を読むときに押さえたい前提は二つある。第一に、集計は旅券の国籍ベースであり、どの国・地域から出発したかではない。欧州在住の他国籍者や、第三国経由で入国した旅行者は、国籍の側に計上される。第二に、推計値で公表される国籍別は概数(100人単位)であり、1人単位の国籍別と目的別は暫定値で初めて出る。JNTOの発表資料には23の市場・地域と「その他」が並ぶが、細かな市場比較は暫定値でやり直すのが確実だ。
目的別は、暫定値の表で「総数のうち観光客数」として示される。2026年1〜6月の暫定値を合計すると、訪日外客数2,108万5,262人のうち観光客は1,916万9,708人で、比率は90.9%だった。前年同期(2,151万8,575人のうち1,963万5,967人、91.3%)とほぼ同じ構成であり、観光客数は前年同期比−2.4%、総数は−2.0%と、観光客の減り方がわずかに大きい。観光以外には商用や、留学・技能実習などを含む「その他」が入る。JNTOはベトナムについて「留学、技能実習等を含むその他客の多い市場であることに留意する」と注記しており、市場によっては訪日外客数の伸びがそのまま宿泊需要の伸びを意味しないことがわかる。
出典:日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数(2026年8月推計値)」2026年訪日外客数・出国日本人数表(暫定値)よりホテルバンク編集部作成。比率・増減率は公表値からの算出
訪日外客数と外国人延べ宿泊者数(観光庁)の違い
ホテルの需要分析で混同されやすいのが、JNTOの訪日外客数と観光庁の外国人延べ宿泊者数である。前者は「入国した人の数」、後者は「宿泊施設に泊まった延べ人数」であり、数え方の単位も母集団も違う。そして、都道府県別の数字が出るのは後者だけだ。JNTOの「よくあるご質問」も、都道府県別の訪日外客数の統計は用意していないとしたうえで、観光庁の宿泊旅行統計調査やインバウンド消費動向調査を案内している。
| 項目 | 訪日外客数(JNTO) | 外国人延べ宿泊者数(観光庁) |
|---|---|---|
| 数える単位 | 人(入国手続き1回=1人) | 人泊(1人2泊=2人泊) |
| 基になるデータ | 法務省の出入国管理統計 | 宿泊施設への調査(宿泊旅行統計調査) |
| 宿泊施設の利用 | 問わない(日帰り・親族宅泊・クルーズ寄港も含む) | 調査対象の宿泊施設に泊まった分のみ |
| 地域別 | なし(全国のみ) | 都道府県別あり |
| 国籍別 | あり(推計値は一部市場) | あり(客室数20室以上の施設が対象) |
| 速報の時期 | 対象月の翌月中旬〜下旬 | 対象月の翌月末(第1次速報) |
| 改定 | 推計値→暫定値→確定値 | 第1次速報→第2次速報→年の確定値 |
出典:日本政府観光局(JNTO)報道発表資料・よくあるご質問、観光庁「宿泊旅行統計調査」「観光統計公表予定日」よりホテルバンク編集部作成
実務への示唆ははっきりしている。自社のエリアに訪日客がどれだけ泊まっているかを知りたいなら、訪日外客数ではなく、観光庁の都道府県別外国人延べ宿泊者数を見る必要がある。訪日外客数は全国の「入口の流量」を早く示す先行指標として使い、地域の宿泊需要は1か月遅れで出る宿泊統計で確かめる、という二段構えが基本になる。都道府県ごとの1人あたり泊数の差は、訪日客は過去最高でも延べ宿泊者数は減少 — 1人あたり3.96泊とADRの二極化でも扱っている。
訪日外客数を宿泊需要に換算する手順
訪日外客数をホテルの需要に置き換える基本式は「人数×平均泊数=人泊」である。ただし、平均泊数を外から持ち込むと前提が増えるため、まずは公表値どうしで比をとり、そこから読み解くのが手堅い。具体的には次の4段階で進めるとよい。
| 手順 | やること | 使う数字 |
|---|---|---|
| 1 | 同じ月の訪日外客数と外国人延べ宿泊者数を並べる(月をずらさない) | JNTO推計値・暫定値、観光庁速報値 |
| 2 | 人泊÷人数で「1人あたり人泊」を出し、前年同月と比べる | 両統計の公表値の単純比 |
| 3 | 人数の前年同月比と人泊の前年同月比の差を見る(差が大きいほど泊数・構成の変化が効いている) | 前年同月比の差(ポイント) |
| 4 | 国籍別の人泊で、差がどの市場から来ているかを分解し、自エリアの都道府県別人泊で確かめる | 観光庁 国籍別・都道府県別 |
出典:ホテルバンク編集部作成
この手順を2026年1〜8月に当てはめると、人数と人泊の関係がよく見える。訪日外客数は1〜8月累計で−2.7%だったのに対し、外国人延べ宿泊者数は1億920万人泊で−8.7%(8月は第1次速報値)と、人泊の減り方が6ポイントほど大きい。月別に見ると、両者の差は1月に10.9ポイント、6月に7.2ポイント、7月に6.6ポイントと開いていたが、8月は訪日外客数−9.6%、外国人延べ宿泊者数−10.3%で、差は0.7ポイントまで縮んだ。
出典:日本政府観光局(JNTO)「訪日外客統計」、観光庁「宿泊旅行統計調査」よりホテルバンク編集部作成。訪日外客数の2026年7・8月は推計値、延べ宿泊者数の2026年1〜7月は第2次速報値・8月は第1次速報値、2025年はいずれも確定値。観光庁は2026年1月分調査から層化基準を変更している
同じ月どうしで割った1人あたり人泊は、2025年1〜8月の4.21から2026年同期は3.95へ下がった。仮に2026年も4.21のままだったとすれば、1〜8月の外国人延べ宿泊者数は約1億1,640万人泊になっていた計算で、実績との差は約720万人泊にのぼる。人数の減少分以上に人泊が減った、その「上乗せ分」の大きさを示す数字である。
出典:日本政府観光局(JNTO)「訪日外客統計」、観光庁「宿泊旅行統計調査」よりホテルバンク編集部作成。1人あたり人泊は両統計の公表値の単純比で、実際の平均泊数とは一致しない
この比は、宿泊施設を使わない入国者(クルーズの寄港客、親族・知人宅に泊まる人、調査対象外の施設に泊まる人)も分母に入るため、実際の平均泊数そのものではない。それでも同じ定義で前年と比べれば、訪日客1人がホテル・旅館に落とす泊数の変化は追える。月ごとの水準でいえば、2026年8月は4.08と前年同月の4.11にほぼ並び、7月の3.87(前年4.14)から戻している。
人数と人泊が割れる年の読み方 — 市場構成で泊数が変わる
人数と人泊が逆方向に動く現象は、2026年夏にすでに表れていた。当サイトの7月の外国人延べ宿泊−4.6%、減少の93%は中国では、7月の訪日外客数が344万2,100人で7月として過去最高を更新した一方、外国人延べ宿泊者数は第1次速報で前年同月比−4.6%だったことを示した(第2次速報では−6.5%に改定)。人数は前年並みでも人泊が減るのは、どの市場の旅行者が来ているかによって1人あたりの泊数が大きく異なるためである。
| 国・地域 | 訪日外客数(人) | 外国人延べ宿泊者数(人泊) | 1人あたり人泊(参考) |
|---|---|---|---|
| 韓国 | 850,500 | 1,614,370 | 1.90 |
| 香港 | 247,300 | 626,290 | 2.53 |
| 台湾 | 666,000 | 2,030,690 | 3.05 |
| タイ | 32,200 | 105,730 | 3.28 |
| 中国 | 418,000 | 1,701,140 | 4.07 |
| 米国 | 197,400 | 983,530 | 4.98 |
| 豪州 | 38,200 | 191,210 | 5.01 |
| フランス | 40,300 | 292,290 | 7.25 |
| イタリア | 47,300 | 380,540 | 8.05 |
| スペイン | 36,500 | 310,310 | 8.50 |
出典:日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数(2026年8月推計値)」、観光庁「宿泊旅行統計調査」2026年8月第1次速報 第2表(国籍別外国人延べ宿泊者数、客室数20室以上の施設、合計1,115万1,890人泊)よりホテルバンク編集部作成。両統計は母集団が異なり、人泊側は20室以上の施設のみのため、比は参考値
2026年8月の公表値で市場別の比をとると、韓国は1.90、香港は2.53、台湾は3.05と近距離市場ほど小さく、米国4.98、豪州5.01、フランス7.25、イタリア8.05、スペイン8.50と長距離市場ほど大きい。人泊側は客室数20室以上の施設に限った集計であり、全施設ベースでは比はこれより大きくなる点に留意が必要だが、市場間の差の向きは読み取れる。同じ10万人の増加でも、韓国なら約19万人泊、欧州主要国なら70万人泊を超える宿泊需要に相当する計算だ。
2026年に人数と人泊が割れた理由は、この構成の入れ替わりで大半が説明できる。1人あたり4泊台の中国が前年同月比で6割近く減り、その分を1〜3泊台の韓国・台湾・香港が人数で埋めた。人数の総数は前年に近づくが、泊数の短い市場への置き換えが進むため、人泊は人数ほど戻らない。8月に差が0.7ポイントまで縮んだのは、欧州・中東など長期滞在型の市場が8月として過去最高を記録し、近距離市場の増加と合わせて泊数の目減りを相殺した結果と読める。
読み方のうえでもう一つ外せないのが、観光庁の調査設計の変更である。観光庁は2026年1月分調査から層化基準を「従業者数」から「客室数」へ変更したとしており、前年同月比にはその影響が含まれる可能性があると注記している。また、最新月の人泊は第1次速報で、7月の例のように翌月の第2次速報で数%動くことがある。人数と人泊の差を議論するときは、差が数ポイントの範囲であれば統計側の要因も含みうる、という幅を持って扱いたい。
運営者・投資家の実務に落とすなら、次の三点が有効といえる。第一に、自エリアの外国人宿泊を国籍別に分解し、泊数の長い市場と短い市場の構成比を把握すること。第二に、訪日外客数の速報(毎月中旬〜下旬)で全国の市場構成の変化を先読みし、その1〜2週間後に出る観光庁の都道府県別人泊で自エリアへの波及を確かめること。第三に、近距離市場の比率が上がる局面では、連泊を促すプランや週末の短期需要を前提にした販売設計で、泊数の短さを客室あたりの回転で補う発想を持つことである。
よくある質問
Q. 推計値と確定値はどれくらい違いますか?
A. 総数で見ると差はごく小さいです。2025年の年間合計は推計値4,268万3,600人に対し確定値4,268万3,301人で、差は−299人(0.001%未満)でした。月別でも2025年9月が+428人、12月が+91人と、数百人規模にとどまります。ただし推計値の国籍別は一部市場の概数で、目的別は暫定値まで公表されません。
Q. 訪日外客数の発表日はいつですか?
A. JNTOが毎月中旬〜下旬の水曜日16時15分に発表しています。2026年は9月16日に8月分推計値が出ており、9月分推計値は10月21日、10月分は11月18日、11月分は12月16日の予定です。同じ日に2か月前の月の暫定値も発表されます。
Q. 都道府県別の訪日外客数はありますか?
A. JNTOの訪日外客数に都道府県別の統計はありません。地域別に訪日客の需要を見る場合は、観光庁「宿泊旅行統計調査」の都道府県別外国人延べ宿泊者数(人泊)を使います。訪問率など旅行者側の行動は、観光庁「インバウンド消費動向調査」で補えます。
まとめ
訪日外客数は、法務省の出入国管理統計を基にJNTOが算出する「日本に住んでいない外国人の入国件数」であり、推計値・暫定値・確定値の3段階で改定される。総数の改定幅は実例で±0.02%以内と小さく、推計値の段階で全体の方向は読める。最新の2026年8月は309万8,900人・前年同月比−9.6%で、9月分は10月21日に発表される予定である。
一方で、ホテルの需要に直結するのは人数ではなく人泊だ。2026年1〜8月は人数−2.7%に対し人泊−8.7%と差が開いたが、その大半は泊数の長い市場から短い市場への構成の入れ替わりで説明でき、8月には差が0.7ポイントまで縮んだ。訪日外客数を先行指標として毎月確かめ、観光庁の都道府県別・国籍別の人泊で自エリアへの波及を確認する。この二つの統計を組み合わせることで、インバウンド需要の変化をより早く、より正確に販売計画へ反映できるだろう。
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参考資料・出典一覧
- 日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数(2026年8月推計値)」(2026年9月16日)
- 日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数(2026年6月推計値)」(2026年7月15日)
- 日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数(2025年12月推計値)」(2026年1月21日)
- 日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数(2025年9月推計値)」(2025年10月15日)
- 日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数・出国日本人数 報道発表日(予定)」(2026年9月〜12月)
- 日本政府観光局(JNTO)「訪日外客統計」
- 日本政府観光局(JNTO)「よくあるご質問(統計・データ)」
- 観光庁「宿泊旅行統計調査」(2026年8月第1次速報・7月第2次速報、推移表)
- 観光庁「観光統計公表予定日」
