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内神田にアパ261室、2028年秋 — 1km圏は2020年10,067→9,313室、千代田区9月1.49万円

投稿日 : 2026.10.25

東京都

投資・開発

内神田にアパ261室、2028年秋 — 1km圏は2020年10,067→9,313室、千代田区9月1.49万円

アパグループが2026年10月13日に起工式を公表した「アパホテル〈神田大手町駅北〉」は、東京都千代田区内神田1丁目に全261室を構え、2028年秋の開業を予定する宿泊特化型ホテルである。計画地から半径1kmの圏内は大手町・神田・日本橋室町にまたがる業務地で、メトロエンジンリサーチの集計ではホテル客室が2020年の83施設10,067室をピークに2026年は79施設9,313室(2020年比-7.5%)まで減っている。一方で千代田区の推定成約ADRは2026年9月に¥14,900(前年同月比-3.5%)、直近12ヶ月平均では¥16,300(前年同期比+4.4%)で推移してきた。本稿では、この「客室が純減した都心業務地に261室の新規供給が入る」構図を、1km圏の供給10年推移、就業人口、公示地価・用途地域・浸水想定、そして261室に必要なADRの簡易試算から読み解く。

本記事における指標の定義

  • ADR(平均客室単価):各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。2026年10月以降の月は調査時点の掲載水準に基づく推定で、確定した過去月とは区別して示します。
  • OCC(稼働率):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値、REIT月次公表値との整合性検証で概ね数pt 程度の精度を確認済)。公的統計の客室稼働率を引用する箇所は観光庁「宿泊旅行統計調査」の値で、別途出典を明記します。試算に用いる稼働率は観測値ではなく本稿の想定値(通年)です。
  • 1km圏の施設数・客室数:計画地(北緯35.6905度・東経139.7665度)から半径1kmに所在し、各年末時点で開業済みかつ営業終了前の宿泊施設(ホステル・カプセル含む)を、メトロエンジンリサーチが追跡する約168,000施設のうち主要予約サイトで稼働が確認できる施設ベースで集計。2026年の値は10月17日時点。
  • 掲載価格に言及する箇所は2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(特記のない限り)
Key Takeaways
  • — 261室・2028年秋開業予定:アパホテル〈神田大手町駅北〉は千代田区内神田1丁目、4駅10路線が徒歩6分以内。千代田区内のアパホテルは16棟3,024室になる(同社公表)。
  • — 1km圏は純減:2020年83施設10,067室→2026年79施設9,313室(-7.5%)。9月に営業終了した京王プレッソイン神田を除くと9,043室で、261室を加えてもピークに届かない。
  • — 千代田区の相場:推定成約ADRは2026年9月¥14,900(N=80施設)、直近12ヶ月平均¥16,300(前年同期比+4.4%)。ビジネスホテルは¥16,100で、8月の谷と4月の山の差は約1.6倍。
  • — 必要ADR ¥12,800〜¥15,500:NOI利回り5%・通年OCC80%で、公示地価ベースの基本ケース¥12,800、建設費インフレと地価1.3倍の上振れケース¥15,500(千代田区BH平均の79%/96%)。
  • — 都心8区比較:上振れケースの¥15,500を12ヶ月平均が上回るのは渋谷・中央・港・千代田・新宿の5区。台東・墨田・文京の相場では超える水準で、余裕は大手町寄りの立地に依存する。

エグゼクティブサマリー — 減った客室の3割強を1棟で埋める規模

本件客室数
261室
2028年秋開業予定・千代田区16棟目(同社公表)
1km圏の客室数
9,313室
79施設・2020年比-7.5%(2020年10,067室)
千代田区 推定成約ADR
¥14,900
2026年9月・N=80施設・前年同月比-3.5%
1km圏の従業者数
53.2万人
15,693事業所・オフィス系45.3%(経済センサス2021)
261室の必要ADR(試算)
¥12,800
通年OCC80%・NOI利回り5%・公示地価ベース

結論を先に述べると、本件は「供給が増え続けるエリアへの参入」ではなく、「2020年をピークに客室が純減した業務地で、空いた枠を宿泊特化型が埋めに行く」案件と読める。1km圏の客室は2020年から2026年までに754室減り、さらに9月には京王プレッソイン神田(270室)が営業を終了しており、同館を除くと78施設9,043室となる。261室は2026年10月時点の減少分754室の3割強(同館を除いた減少分約1,024室に対しては約4分の1)に相当し、圏内客室数に対しては2.8%の上積みにとどまる。

需要側では、1km圏に53.2万人の従業者が働き、JR神田駅の1日平均乗車人員は2024年度に90,528人(前年度比+3.0%)まで戻った。千代田区の推定成約ADRは季節で¥12,600から¥20,300まで動くが、直近12ヶ月平均は¥16,300で前年同期比+4.4%と水準を切り上げている。261室に必要なADRは、2025年の建築単価と公示地価をそのまま置いた基本ケースで¥12,800、建設費インフレと実勢地価の上振れを織り込んだケースでも¥15,500であり、いずれも千代田区ビジネスホテルの12ヶ月平均¥16,100の内側に収まる。以下、順に検証する。

計画の事実 — 内神田1丁目・261室・4駅徒歩6分以内

一次資料はアパグループが2026年10月13日に配信したプレスリリース「アパホテルとして千代田区16棟目 アパホテル〈神田大手町駅北〉起工式開催」である。同リリースによると、計画地は東京都千代田区内神田1丁目8-12他(地番)、全261室、2028年秋の開業予定で、設計は日企設計、施工はピーエス・コンストラクション、デザイン監修は辻本デザイン事務所が担う。アクセスは神田駅(JR山手線・中央線・京浜東北線、東京メトロ銀座線)徒歩6分、大手町駅(東京メトロ丸ノ内線・東西線・千代田線・半蔵門線、都営三田線)徒歩6分、淡路町駅徒歩4分、小川町駅徒歩4分と、合計10路線の駅が徒歩6分以内に収まる。

同社の公表値では、千代田区内で営業中のアパホテルは15棟2,763室で、本件により16棟3,024室となる(グループ会社運営の「the b お茶の水」72室を加えると17棟3,096室)。国内の自社ブランドは367棟86,190室(建築・設計中を含む)、海外は56棟5,719室で、2026年4月に始動した中期計画「AIM5-Ⅱ」では2031年3月末までに国内自社ブランド単独で10万室を掲げている。これらはいずれも同社の公表値であり、本稿で他社との序列付けは行わない。

建築計画の届出情報(国土交通省「建築物動態統計調査」をもとに当社集計)では、同地番の計画は13階建て・延床面積4,274.9㎡・着工2026年1月31日・完了予定2027年8月15日と記録されている。完了予定は建築計画上の日付であり、開業時期はプレスリリースの「2028年秋」を採用する。延床4,274.9㎡を261室で割ると1室あたり約16.4㎡(共用部込み)で、同社の宿泊特化型フォーマットに沿った高密度の客室構成といえる。

表1 計画概要(アパホテル〈神田大手町駅北〉)
項目内容出典
名称アパホテル〈神田大手町駅北〉アパグループ PR(2026-10-13)
所在地東京都千代田区内神田1丁目8-12他(地番)同上
客室数261室同上
開業予定2028年秋同上
最寄駅神田駅6分・大手町駅6分・淡路町駅4分・小川町駅4分(徒歩)同上
設計・施工日企設計/ピーエス・コンストラクション(デザイン監修:辻本デザイン事務所)同上
規模(建築計画)13階・延床4,274.9㎡・着工2026年1月・完了予定2027年8月国土交通省「建築物動態統計調査」より当社集計
用途地域商業地域・容積率600%・建蔽率80%国土交通省 不動産情報ライブラリ
出典:アパグループ プレスリリース(2026年10月13日)/国土交通省「建築物動態統計調査」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成

1km圏の客室10年推移 — 2020年10,067室から2026年9,313室へ

まずは供給の器を確認する。計画地から半径1kmには大手町・丸の内北端・神田・日本橋室町・秋葉原南端が含まれ、メトロエンジンリサーチが把握する範囲では2012年に37施設5,419室だったホテル客室が、2017年の53施設7,270室、2019年の79施設9,590室を経て2020年に83施設10,067室でピークを打った。2012年から2020年までの8年で客室は1.86倍に増えたことになる。

ところが2020年以降は反転し、2021年82施設9,901室、2022年80施設9,540室、2024年79施設9,289室、2026年(10月17日時点)79施設9,313室と、ピーク比-7.5%の水準で推移してきた。2023年にホテルリソルステイ秋葉原(132室)、2026年2月にホステル1軒(48室)が加わっている一方で、300室級の施設を含む営業終了が続いたためである。半径0.5kmに絞るとこの傾向はより鮮明で、2020年の25施設2,759室から2026年は21施設2,072室(-24.9%)となっており、261室は0.5km圏の客室数に対して12.6%、1km圏に対して2.8%の上積みに相当する。

計画地1km圏のホテル施設数・客室数(各年末時点、2026年は10月17日時点)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(OTA掲載確認ベース・主要予約サイトで稼働が確認できる施設ベース、N=79施設、2026年10月17日時点)

施設単位で営業終了・休館を確認すると、純減の中身が見えてくる。2026年9月13日に営業を終了した京王プレッソイン神田(270室)は、京王電鉄と京王プレッソインが2025年10月16日に公表したとおり、開業から20年を経た建物の建て替えを見据えたもので、建て替え後はデザイン性の高い新ブランドのホテルとして再開する想定とされている。学士会館(24室)は神田錦町一帯の再開発に伴い2024年に休館し、国の登録有形文化財である旧館は曳家・改修を経て2030年頃の再開が見込まれる。神田駅至近のニューセントラルホテル(311室)とセントラルホテル(124室)はメトロエンジンリサーチが把握する範囲でそれぞれ2021年、2023年に掲載を終えており、ナインアワーズ大手町(129室)も2023年に掲載を終えた。なお2020年9月に運営を終えたユニゾイン神田駅西(219室)は同日から相鉄フレッサイン神田大手町として運営が引き継がれており、同一建物の運営交代であって客室の純減ではない。

表2 1km圏の主な営業終了・休館・運営交代・開業
施設(客室数)時期区分備考
京王プレッソイン神田(270室)2026年9月13日営業終了建て替え後にホテルとして再開する想定(京王電鉄・京王プレッソイン公表)
学士会館(24室)2024年休館神田錦町の再開発に伴う。2030年頃の再開見込み
ナインアワーズ大手町(129室)2023年掲載終了メトロエンジンリサーチが把握する範囲
セントラルホテル(124室)2023年掲載終了同上
ニューセントラルホテル(311室)2021年掲載終了同上
ユニゾイン神田駅西 → 相鉄フレッサイン神田大手町(219室)2020年9月運営交代同一建物で運営が継続。客室の純減ではない
ホテルリソルステイ秋葉原(132室)2023年4月開業圏内の主な新規供給
出典:京王電鉄・京王プレッソイン プレスリリース(2025年10月16日、2026年7月30日)/三井住友トラスト不動産「このまちアーカイブス」/メトロエンジンリサーチ&コンサルティング

投資家にとっての含意は二つある。第一に、1km圏では建て替えを前提にした営業終了が続いており、京王プレッソイン神田の跡地のように「将来ホテルとして戻ってくる客室」が存在する。純減は恒久的ではなく、2028年から2030年代前半にかけて再供給される局面を想定しておく必要がある。同じ神田で既存ホテルの建替えと改修のどちらが床を残すかは、トーセイによる神田157室・浅草72室の取得分析で敷地ごとに検証している。第二に、それでも現時点の器は2020年比で約750室小さく、本件261室が開業する2028年秋の時点でも、ピーク時の客室数には届かない計算になる。宿泊特化型が入るには「空いた枠」が十分に残っているエリアだと評価できる。

就業人口 — 1km圏に従業者53万人、客室1室あたり57人

宿泊特化型の平日需要を支えるのは周辺の就業人口である。総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査(2021年)」を国勢調査2020の小地域境界で集計すると、計画地から半径1kmには15,693事業所・従業者532,018人が立地し、うちオフィス系業種の従業者が45.3%を占める。これを2026年の圏内客室数9,313室で割ると、客室1室あたり従業者は約57人となる。大手町の金融・本社機能と神田の中小企業集積が同じ円に入るため、出張需要の出所が単一業種に偏りにくい点も特徴である。

出社回帰の動きはオフィス市況にも表れている。三鬼商事の集計によると東京都心5区のオフィス空室率は2026年8月時点で1.87%まで低下し、コロナ禍で6%台に上昇した2022年の水準からコロナ禍前(2019年12月の1.55%)に近づいている(共同通信、2026年9月24日配信)。JR東日本が公表する2024年度の神田駅1日平均乗車人員は90,528人で前年度比+3.0%、うち定期外が41,353人、定期が49,174人と、通勤と来街の両方が戻ってきた。宿泊需要そのものを示す指標ではないが、平日の滞在人口が厚い業務地であることは、ビジネスホテルの基礎需要として読んでよい。

観光庁「宿泊旅行統計調査」でも東京都は2026年6月(第2次速報)の客室稼働率が75.4%で全国1位、施設タイプ別ではビジネスホテルが81.6%(全国1位)、シティホテルが76.1%(同2位)であった。全国平均(全体57.2%、ビジネスホテル71.5%)を大きく上回っており、都心業務地のビジネスホテルは稼働面で全国で最も厚い需要を持つ市場に位置づけられる。メトロエンジンリサーチの推定でも、千代田区の2026年9月の稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)は平均90.9%(対象59施設/客室8,862室、主要予約サイト掲載ベース)で、OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり施設全体の実稼働率とは異なるものの、方向感は公的統計と整合する。

千代田区の推定成約ADR — 9月¥14,900と季節で1.6倍動く相場

次に単価を見る。千代田区の推定成約ADR(全カテゴリ中央値、N=80施設)は2026年9月に¥14,900で、前年同月の¥15,400から-3.5%とやや下がった。ただし単月の増減より季節の振れ幅に注目したい。2026年は4月に¥20,300(前年同月比+7.0%)の高値をつけた後、8月に¥12,600(同-10.9%)まで下がっており、ピークとボトムの比は約1.61倍に達する。春の訪日・国内レジャーと秋冬の商用が重なる月に単価が立ち、夏場の平日が相対的に緩む構造である。

12ヶ月平均で均すと、2025年10月から2026年9月の平均は¥16,300で、前年同期(¥15,600)に対して+4.4%である。ビジネスホテル(N=63施設)に限ると12ヶ月平均は¥16,100(前年同期比+3.3%)、2026年9月は¥14,700で全カテゴリ中央値とほぼ同じ水準にあり、千代田区の中央値を形づくっているのが宿泊特化型であることが分かる。なお2026年10月以降の値は調査時点の掲載水準からの推定(10月¥22,600、11月¥21,300、12月¥19,300)で、チェックイン日に近づくにつれ変動するため、過去月の確定値とは分けて示す。

千代田区 推定成約ADR 月次(年別重ね描き・全カテゴリ中央値、N=78〜84施設)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング。2026年10月〜12月は調査時点(2026年10月17日)の掲載水準に基づく推定で、今後変動します

261室の収支を考えるうえで重要なのは、相場が「年平均¥16,300前後、谷で¥12,600台、山で¥20,300超」という形をしていることだ。後述する必要ADRの試算は年平均に対して評価するが、稼働を落とさずに谷の月を乗り切るには、平日の商用需要と週末のレジャー需要を別々の価格で取りに行く運用が前提になる。千代田区は春と秋冬に単価が立つため、通年の平均を押し上げる余地は季節商品の設計次第で広がる。

立地評価 — 商業地域600%、公示地価は2年連続+14.9%

国土交通省「不動産情報ライブラリ」で計画地の用途地域を確認すると、商業地域・容積率600%・建蔽率80%である。計画地周辺の1km圏は商業地域の500〜900%が大半を占め、大手町側は900〜1,300%、神田側は500〜600%という容積の勾配がある。延床4,274.9㎡を容積率600%で割り戻すと敷地は約712㎡と逆算でき(容積を使い切った場合の目安)、後述の土地コストはこの前提で置く。

公示地価(2026年1月1日時点)は、計画地に最も近い標準地「内神田1-31-6」(大手町駅から300m、容積800%)が1㎡あたり657万円で前年比+14.9%、2025年に続く2年連続の2桁上昇である。2021年の456万円から5年で44%上がった計算になる。神田駅側の「内神田2-9-15」(神田駅200m、容積600%)も433万円(前年比+19.0%)で、2021年比+59%と上昇率はむしろ高い。地価の上昇は用地取得のハードルであると同時に、既に土地を押さえた事業者にとっては後続の新規供給を抑える要因でもあり、本件のように自社グループが建築主となる計画では後者の側面が強く働く。

公示地価の推移(万円/㎡、各年1月1日時点)
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(地価公示)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成
用途地域・建築規制(計画地)
用途地域商業地域
容積率/建蔽率600%/80%
周辺1km圏の容積帯商業地域500〜1,300%
浸水想定(神田川・想定最大規模)

計画地は神田川の想定最大規模降雨による浸水想定区域のうち浸水深0.5m未満の区分に接し、300m圏には0.5〜3.0m未満の区分も含まれる。都心低地の一般的な水準で、地下階の有無と電気設備の設置階を設計段階で確認する対象。

出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(洪水浸水想定区域)

交通面では4駅10路線が徒歩6分以内にあり、羽田空港へは大手町駅から東京駅経由、成田空港へは神田駅から日暮里経由または東京駅経由で乗り換え1回で到達できる。宿泊特化型の価値を左右するのは駅からの距離よりも「どの駅に何本の路線が入っているか」であり、大手町(5路線)と神田(4路線)を同時に徒歩圏に収める立地は、商用・訪日の双方で予約サイト上の検索に乗りやすい。

1km圏の競合構造 — 50室以上51施設8,069室、価格帯は5層

2026年10月時点で営業中かつ50室以上の宿泊施設は圏内に51施設8,069室ある。地図上の円の大きさは客室数、色は推定成約ADR(直近12ヶ月平均)の価格帯を示し、営業終了・休館した5施設は破線の円で位置だけを残した。大手町・丸の内側にパレスホテル東京、シャングリ・ラ 東京、フォーシーズンズホテル東京大手町、マンダリン オリエンタル 東京、アマン東京、星のや東京のラグジュアリー6施設1,030室が集まり、神田駅周辺に宿泊特化型が密集するという二極構造である。本件はその中間、内神田1丁目の大手町寄りに入る。

計画地1km圏の宿泊施設分布(50室以上・2026年10月時点、円=客室数、色=推定成約ADR価格帯)
■ 計画地(アパホテル〈神田大手町駅北〉261室)ラグジュアリー/アッパーミドル(推定成約ADR5万円以上またはラグジュアリー業態)ミドル(2.5〜5万円)エコノミー(1.5〜2.5万円)バジェット(1.5万円未満)・その他 ○破線=営業終了・休館
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(50室以上・2026年10月時点、推定成約ADRは2025年10月〜2026年9月平均)

推定成約ADRが算出できる39施設(ビジネス・シティ業態。ラグジュアリー業態と1名利用が基本のカプセルは除く)を客室数×ADRの平面に置くと、下表のとおり5つの価格帯に分かれる。1室あたり5万円を超えるアッパーミドルはサービスアパートメント型を含む3施設にとどまり、2.5〜5万円のミドル帯も4施設と層が薄い。一方で1.5〜2.5万円のエコノミー帯と1.5万円未満のバジェット帯に合わせて32施設4,850室が集中しており、本件が競合する主戦場はこの2層である。

表3 1km圏の価格帯構造(推定成約ADR・2025年10月〜2026年9月平均、N=39施設+ラグジュアリー業態6施設)
価格帯(推定成約ADR・直近12ヶ月平均)施設数客室数ADR中央値
アッパーミドル3458¥92,367
ミドル4927¥36,520
エコノミー203,200¥17,028
バジェット121,650¥13,022
ラグジュアリー業態(推定成約ADR対象外)61,030—
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(N=39施設、2025年10月〜2026年9月の推定成約ADR平均)
客室規模 × 推定成約ADR ポジショニング(1km圏・N=39施設、円=客室数、青枠=本件261室の必要ADR帯)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(推定成約ADRは2025年10月〜2026年9月平均・税抜相当)

ポジショニング図から読める機会は三つある。第一に、200室超の宿泊特化型でエコノミー帯に位置する施設は京王プレッソイン大手町(386室)、秋葉原ワシントンホテル(369室)、ヴィアイン秋葉原(284室)など数えるほどで、本件261室はこの「大型×エコノミー」の列に加わる。第二に、2028年開業の新築客室は、同じ価格帯の中で設備面の新しさを差別化要素にできる。第三に、アパグループは圏内で既にアパホテル〈神田神保町駅東〉(187室)、〈神田駅東〉(158室)、〈神田駅前〉(142室)の3棟487室を運営しており、本件で4棟748室となる。同一商圏に複数棟を持つことで、満室時の相互送客や会員基盤の共有という宿泊特化型チェーン特有の集客力が働きやすい。

261室の必要ADR簡易試算 — 公示地価ベースで¥12,800、上振れケースで¥15,500

最後に、本件規模の宿泊特化型が千代田区の相場の中で成立するかを、前提を明示した簡易試算で確認する。事業者の実際の取得価格・建設費は非公表のため、本稿では公開データから「もし今この条件で用地を取得して建てるなら」という第三者の視点で投資額を置く。精緻なフィージビリティ・スタディの代替ではない。

建設費(Stage 1:2025年実績ベース)。国土交通省「建築着工統計」に基づく2025年のホテル建築単価はS造で坪240.5万円、RC造で202.6万円(archi-book 2025年版)。本件は13階建ての中層で鉄骨造を想定し、延床4,274.9㎡(1,293坪)×240.5万円で建設費は約31.1億円、1室あたり1,192万円となる。Stage 2:建設期間のインフレ織り込み。Turner & Townsendは日本の建設コスト上昇率を2026年+5.3%、2027年+5.0%と予測しており、2026年1月着工・2027年後半竣工の工期中間点(2027年前半)まで複利で織り込むと約33.6億円(1室1,286万円)に上がる。

土地。敷地を約712㎡(延床÷容積率600%)、単価を最寄標準地の公示地価657万円/㎡と置くと約46.8億円。公示地価は実勢より低く出る傾向があるため、上振れケースでは1.3倍の約60.9億円を置く(公示地価と取引価格の乖離は商業地の取引価格は公示地価の0.86倍、上位25%で1.19倍で10商圏394件を検証している)。合計投資額は基本ケース(Stage 1建設費+公示地価)で約77.9億円(1室2,985万円)、上振れケース(Stage 2建設費+地価1.3倍)で約94.4億円(1室3,618万円)となる。設計料・FF&E・開業準備費・金利は含まない。

必要ADR。本稿は固定資産税・保険・FF&E積立を差し引いた営業利益率(NOI率)を40%と置き、目標NOI利回り(投資額に対するNOI)と通年OCCを動かして必要ADRを逆算した。計算式は「必要ADR=投資額×目標利回り÷NOI率÷(261室×365日×通年OCC)」である。

表4 261室の必要ADR感度(目標NOI利回り×通年OCC×投資額ケース)
目標NOI利回り基本ケース(投資額77.9億円)
2025年建築単価・公示地価
上振れケース(投資額94.4億円)
建設費インフレ後・地価1.3倍
通年OCC75%通年OCC80%通年OCC85%通年OCC75%通年OCC80%通年OCC85%
4.0%¥10,900¥10,200¥9,600¥13,200¥12,400¥11,700
5.0% 基準¥13,600¥12,800¥12,000¥16,500¥15,500¥14,600
6.0%¥16,400¥15,300¥14,400¥19,800¥18,600¥17,500
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算。建築単価は国土交通省「建築着工統計」(archi-book 2025年版)、インフレ率はTurner & Townsend(2026年3月)、地価は国土交通省 地価公示(2026年)。稼働率は観測値ではなく試算上の想定値(通年)

基準ケース(NOI利回り5%・通年OCC80%)の必要ADRは基本ケースで¥12,800、上振れケースで¥15,500である。千代田区ビジネスホテルの直近12ヶ月平均¥16,100(税抜相当)と比べると、基本ケースは平均の79%、上振れケースでも96%の水準で、年平均で見れば相場の内側に収まる。観光庁統計で東京都のビジネスホテル稼働率が81.6%(2026年6月)であることを踏まえると、通年OCC80%は都心業務地として無理のない想定といえる。

感度の読み方も整理しておく。目標利回りを6%に引き上げると上振れケースの必要ADRは¥18,600となり、12ヶ月平均を上回る。通年OCCを85%まで積めば¥17,500まで下がるものの、なお平均は超える。一方、基本ケース(公示地価ベース)なら利回り6%・通年OCC85%でも¥14,400に収まるため、6%水準を狙う場合の分岐点は単価ではなく用地コストと稼働にある。つまり本件規模の宿泊特化型は「単価を無理に上げる」より「稼働を85%近くで安定させる」ほうが利回りへの効きが大きく、4駅10路線の立地と同一商圏3棟の既存ネットワークはその稼働確保に直接効く要素である。なお事業者が用地を以前から保有している場合、土地の機会費用は上記より小さくなり、必要ADRはさらに下がる。開業前に用地を寝かせるコストの置き方については、ホテル用地の保有コストは年5.9%が1室あたりの負担額を試算している。

都心8区との比較 — 上振れケースの¥15,500を12ヶ月平均が上回るのは5区

必要ADRが千代田区の相場の内側に収まるとして、その余裕は都心の中でどの程度の位置にあるのか。千代田区と、同区に接する中央・港・新宿・文京・台東の5区、比較対象として渋谷区と東側の宿泊特化型集積地である墨田区を加えた都心8区について、ビジネスホテル業態の推定成約ADR(直近12ヶ月平均)を並べ、表4の基準ケース(NOI利回り5%・通年OCC80%)の必要ADRがそれぞれの相場の何%に当たるかを見た(表5)。投資額は千代田区の計画地で置いたものであり、各区で同じ条件の用地が取得できることを意味しない点に留意したい。

表5 都心8区のビジネスホテル推定成約ADR(2025年10月〜2026年9月)と261室の必要ADR
区対象施設数(N)12ヶ月平均前年同期比最安月基本ケース¥12,800の水準上振れケース¥15,500の水準月次で¥15,500を下回る月
渋谷区25〜28¥23,700+3.5%¥18,700(8月)54%65%0ヶ月
中央区127〜129¥17,900+7.9%¥13,600(8月)71%87%3ヶ月
港区95〜98¥16,700+3.6%¥13,100(8月)76%92%4ヶ月
千代田区63〜65¥16,100+3.3%¥12,200(8月)79%96%6ヶ月
新宿区69〜79¥15,600+6.4%¥12,300(8月)82%99%6ヶ月
台東区151〜162¥14,700+0.8%¥11,700(8月)87%105%6ヶ月
墨田区23〜24¥14,600+2.7%¥11,700(8月)87%106%7ヶ月
文京区14¥13,500+3.8%¥11,100(6月)95%115%11ヶ月
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(ビジネスホテル業態の推定成約ADR・各区の対象施設中央値、税抜相当、2025年10月〜2026年9月)。必要ADRは表4の基準ケース(NOI利回り5%・通年OCC80%)で、千代田区計画地の投資額を各区の相場に当てた参考比較。各区の用地費の違いは反映していない

千代田区のビジネスホテル相場(12ヶ月平均¥16,100、N=63〜65施設)は8区の中で渋谷区・中央区・港区に次ぐ4番目で、前年同期比は+3.3%と中央区(+7.9%)や新宿区(+6.4%)より伸びは小さい。上振れケースの必要ADR¥15,500を12ヶ月平均が上回るのは渋谷・中央・港・千代田・新宿の5区で、台東区(¥14,700)・墨田区(¥14,600)・文京区(¥13,500)では¥15,500がいずれも12ヶ月平均を上回る。同じ投資額を置いた場合、採算の余裕は都心上位の相場水準に依存しており、台東区・墨田区並みの価格水準にとどまると、上振れケースでは余裕がなくなる計算である。

季節の谷も見ておく。8区のうち文京区を除く7区は最安月が2026年8月で、千代田区の8月は¥12,200と基本ケースの必要ADR¥12,800をわずかに下回る。上振れケースの¥15,500を月次で下回るのは千代田区で12ヶ月中6ヶ月(2026年1〜2月と6〜9月)、中央区で3ヶ月、港区で4ヶ月である。年平均で採算が合っていても、夏場と年明けの谷の月を平日の商用需要でどこまで埋められるかが、上振れケースの利回りを左右する。前述のとおり、本件規模では単価よりも稼働の安定が効くという読みは、区別比較でも変わらない。

投資判断の整理 — 純減局面の都心業務地で宿泊特化型が成立する条件

供給の器

1km圏の客室は2020年10,067室→2026年9,313室(京王プレッソイン神田を除くと9,043室)。261室を加えてもピークに届かず、建て替え前提の営業終了が続く「純減局面」での参入。

需要の厚み

従業者53.2万人・オフィス系45.3%、神田駅乗車人員9.05万人/日(+3.0%)。東京都ビジネスホテル稼働81.6%(観光庁、2026年6月)と全国で最も厚い市場。

単価と採算

千代田区ビジネスホテル推定成約ADR12ヶ月平均¥16,100。必要ADRは基本¥12,800・上振れ¥15,500(通年OCC80%・利回り5%)で相場の内側。稼働85%の確保が利回りへの効きが大きい。

都心で宿泊特化型の開発・取得を検討するデベロッパーやレンダーにとって、本件が示す条件は明快である。第一に、圏内供給の増減を「施設単位の営業終了・建て替え・運営交代」まで分解して見ること。1km圏で2020年以降に営業を終えた客室の多くは建て替えを前提にしており、2030年前後の再供給を織り込んだうえで、それでも2020年ピークに戻らない器の大きさを確認できる。第二に、就業人口と公的統計の稼働率を需要の土台に置き、推定成約ADRの季節レンジ(¥12,600〜¥20,300)の中で年平均に対して採算を評価すること。第三に、地価が2年連続で2桁上昇する局面では、建設費インフレと土地の上振れを同時に織り込んだ感度表で必要ADRを把握し、相場に対する余裕幅を確かめることだ。本件はその三点のいずれにおいても、宿泊特化型が都心業務地に入る合理性を公開データで裏づけられる案件である。

⚠ 将来日程のADRと試算に関する注意:本記事の2026年10月以降の推定成約ADRは調査時点(2026年10月17日)でOTAに公開されている販売価格に基づく推定であり、チェックイン日に近づくにつれて変動します。必要ADRの試算は公開情報のみを用いた簡易試算であり、事業者の実際の取得価格・建設費・資金調達条件とは異なります。実際の投資判断には詳細なフィージビリティ・スタディが必要です。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

1km圏の施設数・客室数は、メトロエンジンリサーチが追跡する約168,000施設のうち主要予約サイトで稼働が確認できる施設を各年末時点(2026年は10月17日時点)で集計。推定成約ADRは区別・月次の対象施設中央値(千代田区 全カテゴリN=78〜84施設、ビジネスホテルN=61〜65施設、都心8区比較は2025年10月〜2026年9月)、施設別は39施設の直近12ヶ月平均。稼働率は千代田区59施設のOTA掲載在庫ベース推定(2026年9月)。公的データは観光庁「宿泊旅行統計調査」、経済センサス-活動調査(2021年)、国土交通省 不動産情報ライブラリ・建築物動態統計調査。

■ 試算前提

建設費はS造の2025年ホテル建築単価 坪240.5万円×延床4,274.9㎡(Stage 2はTurner & Townsendの2026年+5.3%・2027年+5.0%を工期中間点まで複利)。敷地は延床÷容積率600%=約712㎡、地価は最寄標準地の公示地価657万円/㎡(上振れケースは1.3倍)。NOI率40%、目標NOI利回り4〜6%、通年OCC75〜85%はいずれも本稿の想定値。設計料・FF&E・開業準備費・金利は含まない。

■ 限界・留意点

事業者の実際の取得価格・建設費・資金調達条件は非公表で、本試算は公開情報による第三者視点の簡易試算である。推定成約ADRは上場ホテルREITの物件別実績との照合で誤差中央値約7%の推定値で、2026年10月以降の月は掲載水準に基づく推定。都心8区比較は千代田区計画地の投資額を各区の相場に当てた参考で、各区の用地費の違いは反映していない。1km圏の集計は予約サイトでの稼働確認ベースのため、掲載のない施設は含まない。

■ 一次資料(事業者公表)

■ 市場データ

  • メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — 推定成約ADR(千代田区 N=78〜84施設、ビジネスホテル N=61〜65施設、都心8区のビジネスホテル)、1km圏の施設数・客室数、施設別推定成約ADR(N=39施設)、稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定、千代田区59施設8,862室)

■ 政府統計・公的データ

■ 業界レポート・ベンチマーク

■ ニュース・その他

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