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浅草二丁目に野村不動産のホテル2件 — 浅草寺1km圏は10年で4,504→11,106室、台東区1.44万円

投稿日 : 2026.10.11

東京都

投資・開発

浅草二丁目に野村不動産のホテル2件 — 浅草寺1km圏は10年で4,504→11,106室、台東区1.44万円

野村不動産が台東区浅草二丁目で2件のホテル新築を進めている。建通新聞によれば、1件目は浅草2-7-21の鉄骨造10階建て・延べ3,595㎡(2026年5月着工めど・2028年3月完成予定)、2件目は伝法院通りに面した浅草2-1の鉄筋コンクリート造9階建て・延べ3,069㎡(2026年11月初旬着工めど・2029年2月末完成予定)で、いずれも客室数とブランドは公表されていない。浅草寺を中心とする半径1km圏の客室数は2016年の4,504室から2026年には11,106室へ2.47倍に増え、同じ圏内の商業地の公示地価も中央値で2.46倍になった。本稿では、2件の諸元、1km圏の供給と建築計画、台東区の推定成約ADR、用途地域・地価・浸水想定を重ね、延べ3,000㎡級のホテルが浅草で成立する客室数と単価の組み合わせを幅で読み解く。

本記事における指標の定義

  • ADR(平均客室単価):各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。
  • OCC(稼働率):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります。
  • 1km圏の客室ストック:浅草寺(北緯35.7148度・東経139.7967度)を中心とする半径1kmに立地し、各年末時点(2026年は調査時点)で開業済み・閉館前の宿泊施設の軒数と客室数。メトロエンジンリサーチが把握する範囲の集計で、全数調査ではありません。
  • 客室原単位(1室あたり延床):建物全体の延床面積÷客室数。客室の専有面積ではなく、廊下・ロビー・機械室などの共用部を含む係数です。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング、国土交通省「建築物動態統計調査」、国土交通省 不動産情報ライブラリ、建通新聞、日経不動産マーケット情報
Key Takeaways
  • — 2件・延べ約6,664㎡ 浅草2-7-21(S造10階・延べ3,595㎡・敷地517㎡)と浅草2-1(RC造9階・延べ3,069㎡・敷地660㎡)。客室数・ブランド・開業時期は未公表。
  • — 4,504室→11,106室 浅草寺1km圏の客室数は2016年から2026年で2.47倍(80軒→213軒)。増加分の8割強は2020年までに積み上がった。
  • — 46件・延べ約6.4万㎡ 同じ1km圏で2026年10月以降に完成予定のホテル建築計画。延べ1,000㎡未満が18件、3,000㎡以上は4件にとどまり、野村不動産の2件はその上位帯に入る。
  • — 約1.44万円(N=161〜177) 台東区の推定成約ADRの12か月平均(2025年9月〜2026年8月)。前の12か月比+4.2%に対し、1km圏の商業地の公示地価は2026年に中央値で+22.6%。
  • — 必要ADR 約1.38万〜1.39万円 1室あたり延床40㎡(約77〜90室)・利回り5%・GOP率45%・稼働85%で置いた簡易試算。1室60㎡まで広げると約2.1万円が必要になる。
2件の延床合計
6,664㎡
3,595㎡+3,069㎡
1km圏の客室数
11,106室
213軒・2026年
10年の増加倍率
2.47倍
2016年4,504室比
台東区ADR 12か月平均
¥14,403
前12か月比+4.2%
商業地の公示地価
165.5万円/㎡
1km圏12地点の中央値・2026年

2件の計画諸元 — 敷地517㎡と660㎡、延べ3,000㎡級が浅草寺の両側に並ぶ

まずは公表されている事実を整理する。1件目の「(仮称)浅草二丁目」は、建通新聞(2025年12月17日)によると鉄骨造10階建て・延べ3,595㎡、用途はホテルで杭基礎を採用し、2026年5月15日の着工めどで施工者を確定する段取りだった。建設地は台東区浅草2-7-21、敷地面積は517㎡、設計はINA新建築研究所、完成は2028年3月31日の予定とされている。

2件目の「(仮称)浅草二丁目(伝法院通り)計画」は、同紙(2026年6月22日)が野村不動産レジデンシャル事業本部の計画として報じたもので、鉄筋コンクリート造9階建て・延べ3,069㎡、敷地面積660㎡、設計はエンドウ・アソシエイツ、着工は11月初旬めど、完成は2029年2月末の予定である。建設地の浅草2-1は伝法院通りに面し、馬道通りと交わる浅草二丁目交差点に近い。現地では事務所や倉庫、共同住宅など5棟の既存建物の解体が10月末までの工期で進むという。

日経不動産マーケット情報も2026年3月12日に「浅草寺近くに3600m2のホテル」、8月25日に「浅草寺の西側に続き東側でもホテル」の見出しで同社の計画を伝えた。住所を国土地理院の住所検索で測位すると、浅草2-7-21は本堂のおよそ200m西、浅草2-1は本堂の南東およそ200mにあたり、2件は浅草寺を挟む位置関係になる。なお、客室数・ブランド・開業時期はいずれの報道でも明らかにされておらず、本稿でも断定しない。建通新聞は、野村不動産が「NOHGA HOTEL」「庭のホテル」を展開し、2024年度にUDSをグループ化してホテル事業を広げていると紹介している。

表1 2件の計画諸元(建通新聞・日経不動産マーケット情報の報道値)
項目(仮称)浅草二丁目(仮称)浅草二丁目(伝法院通り)計画
建設地台東区浅草2-7-21台東区浅草2-1(伝法院通り沿い)
浅草寺本堂からの位置西へ約200m南東へ約200m
構造・階数鉄骨造10階建て・杭基礎鉄筋コンクリート造9階建て・杭基礎
延床面積3,595㎡3,069㎡
敷地面積517㎡660㎡
延床÷敷地(単純比)約695%約465%
設計INA新建築研究所エンドウ・アソシエイツ
着工めど2026年5月15日2026年11月初旬
完成予定2028年3月31日2029年2月末
客室数・ブランド未公表未公表
報道建通新聞 2025年12月17日/日経不動産マーケット情報 2026年3月12日建通新聞 2026年6月22日/日経不動産マーケット情報 2026年8月25日

出典:建通新聞、日経不動産マーケット情報の各報道よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成。位置関係は国土地理院の住所検索による概略。延床÷敷地は報道値の単純比で、容積率の算定対象とは一致しない

2件を比べると、敷地は伝法院通り側のほうが143㎡広いのに、延床は逆に約530㎡小さい。延床を敷地で割った単純比は695%と465%で、同じ浅草二丁目でも敷地が使える床の量に1.5倍の開きがある。この差が1室あたりの用地費にそのまま跳ね返ることを、後段の試算で確かめる。

浅草寺1km圏の客室数 — 10年で4,504室から11,106室へ、増加の山は2017〜2020年

次に、2件が加わる市場の厚みを見ておきたい。浅草寺を中心とする半径1km圏の宿泊施設は、2015年末の69軒・4,215室から2016年に80軒・4,504室、2020年に173軒・10,061室へと増え、2026年の調査時点では213軒・11,106室に達した。2016年を起点にすると軒数は2.66倍、客室数は2.47倍である。

ただし増え方は一様ではない。2016年から2020年までの4年間で5,557室が積み上がったのに対し、2020年から2026年までの6年間の純増は1,045室にとどまる。10年間の増加6,602室のうち84%が前半に集中した計算で、後半は開業と閉館が入れ替わりながら緩やかに積み増す局面に移ったと読める。2026年は前年より10軒増えた一方で客室数は42室の純減となっており、小さな箱の開業が続いていることがうかがえる。

1軒あたりの客室数も、この流れを映している。2016年の56.3室に対し2026年は52.1室で、10年間に純増した133軒の平均は約50室だった。浅草の供給は「大きな1棟」ではなく「50室前後の小箱の集積」で伸びてきたといえる。

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(OTA掲載確認ベース、浅草寺半径1km、2026年はN=213施設)。各年末時点で開業済み・閉館前の施設。2026年は調査時点の値で、今後の掲載確認により増える可能性がある

表2 浅草寺1km圏の宿泊施設数・客室数の推移(各年末時点、2015〜2026年)
年施設数客室数1軒あたり2016年比(客室数)
2015年69軒4,215室61.1室—
2016年80軒4,504室56.3室1.00倍
2018年124軒7,420室59.8室1.65倍
2020年173軒10,061室58.2室2.23倍
2023年192軒10,443室54.4室2.32倍
2025年203軒11,148室54.9室2.48倍
2026年213軒11,106室52.1室2.47倍

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(OTA掲載確認ベース、浅草寺半径1km、2026年はN=213施設)

これから完成する計画は46件 — 延べ1,000㎡前後が中心で、3,000㎡級は4件

では、この先に何が控えているのか。国土交通省の建築計画データから、浅草寺のおよそ1km圏に所在し、2026年10月以降に完成を予定するホテル・旅館の新築計画を住所と延床で名寄せすると、メトロエンジンリサーチが把握する範囲で46件・延べ約63,895㎡が登録されていた。完成予定年の内訳は2026年が5件、2027年が26件、2028年が14件、2029年が1件である。

注目したいのは規模の分布だ。延床の中央値は約1,175㎡で、1,000㎡未満が18件、1,000〜2,000㎡が22件と、この2帯だけで全体の9割近くを占める。敷地面積が登録されている33件の中央値は約235㎡にすぎない。これに対し延べ3,000㎡以上は4件で、そのうち2件が野村不動産の浅草二丁目の計画にあたる。敷地500〜660㎡というまとまった土地は、浅草の中心部では希少な部類に入るといえる。

出典:国土交通省「建築物動態統計調査」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(浅草寺から約1km圏・完成予定2026年10月以降・N=46件)

表3 浅草寺1km圏で2026年10月以降に完成予定のホテル建築計画(延べ2,000㎡以上の6件)
計画名(登録名)所在地(台東区)延床階数敷地完成予定
(仮称)セクションL Asakusa浅草1-9-25,213㎡14階592㎡2027年9月
(仮称)浅草二丁目浅草2-7-213,596㎡10階517㎡2028年3月
(仮称)西浅草三丁目ホテル計画西浅草3-153,256㎡14階616㎡2027年2月
(仮称)浅草二丁目(伝法院通り)計画浅草2-13,069㎡9階660㎡2029年2月
(仮称)千束二丁目ホテル計画千束2-82,840㎡8階516㎡2027年8月
(仮称)浅草千束通り浅草4-21-92,028㎡10階—2028年3月

出典:国土交通省「建築物動態統計調査」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(延べ2,000㎡以上の6件。伝法院通り計画の階数は建通新聞の報道値)

※調査時点での確認申請ベース。今後の申請追加により件数・延床は増加する見込みであり、現時点での確定パイプラインの下限値として参照されたい。所在地は住所測位による概略で、同一敷地の重複登録は延床・階数・完成時期で1件にまとめた。

46件の大半は客室数が登録されていないため、供給インパクトは幅で捉えるしかない。仮に延べ約6.4万㎡を1室あたり30〜45㎡で割り戻すと約1,400〜2,100室となり、既存11,106室の13〜19%に相当する。2018〜2020年に年1,300〜2,100室ずつ増えた時期に比べれば緩やかだが、供給が止まっているわけでもない。この厚みの中で、野村不動産の2件は「数少ない大きめの箱」として位置づけられる。

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(既存施設は開業年が確認できる客室20室以上の121軒)、国土交通省「建築物動態統計調査」(建築計画44件+野村不動産の2件)、国土地理院(住所測位)。計画の位置は住所測位による概略

台東区の推定成約ADR — 12か月平均1.44万円、春と秋に山をつくる

単価の側はどうか。台東区の推定成約ADRは、2025年9月〜2026年8月の12か月平均で約¥14,400(各月N=161〜177施設)となり、前の12か月(2024年9月〜2025年8月)の約¥13,800から+4.2%伸びた。月別では桜の時期にあたる2026年4月が¥18,500(N=176、前年同月比+3.9%)で最も高く、2026年8月は¥11,600(N=176、前年同月比-7.2%)と谷になる。山と谷の差は約1.6倍で、年間を通じて単価が一定の市場ではない。

業態別に見ると、区内で最も施設数が多いビジネスホテルは12か月平均が約¥14,600(各月N=148〜162)で、前の12か月比は+0.7%とほぼ横ばいだった。全体の伸びが+4.2%だったことと合わせると、単価を引き上げているのは宿泊特化型の中心帯よりも、その外側の業態や新しい施設だと考えられる。延べ3,000㎡級の新築がどの価格帯を狙うかを考えるうえで、この点は示唆に富む。

稼働の面では、台東区の稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)が2026年6月と7月に91.8%、8月に90.1%(8月は対象145施設/客室13,435室、主要予約サイト掲載ベース)だった。単価が谷になる夏でも在庫の9割が消化されており、供給が2.47倍になった後も需要の受け皿は保たれているといえる。

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(台東区・推定成約ADR・各月N=161〜177施設)。2026年9〜12月は調査時点の掲載水準に基づく推定(先行月)で、確定月と同列には比較できない

表4 台東区の推定成約ADR(月別・全業態とビジネスホテル、2025年9月〜2026年8月)
月全業態ADR前年同月比NビジネスホテルADR前年同月比N
2025年9月12,805円+6.1%16112,930円+4.5%148
2025年10月15,802円+13.6%16316,125円+11.6%151
2025年11月16,765円+12.2%16117,196円+9.8%152
2025年12月15,623円+10.3%16315,970円+3.5%154
2026年1月12,302円+2.5%16512,385円-0.9%154
2026年2月12,953円-0.8%16713,010円-5.9%156
2026年3月16,511円+5.0%17516,665円+0.3%161
2026年4月18,516円+3.9%17618,863円-0.9%162
2026年5月15,724円+9.1%17715,860円+5.5%162
2026年6月11,988円-3.8%17612,393円-4.2%160
2026年7月12,269円-4.2%17512,719円-5.9%159
2026年8月11,579円-7.2%17611,676円-11.8%160

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(台東区・推定成約ADR・税抜相当、Nは対象施設数)

この+4.2%を東京の他の区と並べると、台東区の位置がはっきりする。同じ定義・同じ期間で比べた11区のなかで、台東区の12か月平均の伸びは最も小さかった。中央区は+9.5%、港区は+7.1%、千代田区は+6.1%で、隣の墨田区も+4.9%と台東区を上回る。単価の水準は約¥14,400で、千代田区(約¥16,300)や中央区(約¥19,100)より2〜5千円低く、文京区・荒川区(施設数の少ない参考値で、いずれも約¥13,700〜¥13,800)に近い。一方、集計対象の施設数は各月161〜177施設と、比べた11区のなかで最も多い。4月÷8月の山谷の比は1.60倍で、他区(1.33〜1.67倍)と大差はない。施設数の厚さに比べて単価の伸びが小さいことは、1km圏の客室数が10年で2.47倍に増えた供給の厚みとも整合する。新築の2件にとっては、区平均の単価だけでなく、伸びの鈍さも前提に置く必要がある。

表5 東京11区の推定成約ADR 12か月平均の比較(2025年9月〜2026年8月)
区12か月平均前の12か月伸び率4月÷8月各月N
台東区14,403円13,822円+4.2%1.60倍161〜177
墨田区15,380円14,662円+4.9%1.63倍29〜31
荒川区※13,801円12,453円+10.8%1.66倍12〜13
文京区※13,710円12,911円+6.2%1.33倍17〜18
江東区14,178円13,069円+8.5%1.42倍39〜42
豊島区12,375円11,805円+4.8%1.50倍58〜62
千代田区16,308円15,376円+6.1%1.61倍78〜84
中央区19,082円17,429円+9.5%1.67倍148〜152
港区17,666円16,500円+7.1%1.59倍121〜133
新宿区16,039円14,758円+8.7%1.66倍84〜100
渋谷区25,269円22,401円+12.8%1.48倍29〜34

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(推定成約ADR・税抜相当、区単位の中央値の12か月単純平均。前の12か月=2024年9月〜2025年8月、4月÷8月は2026年)。※は各月N20施設未満の参考値

立地条件 — 商業地域・防火地域、公示地価は10年で2.46倍

続いて、土地の条件を国土交通省 不動産情報ライブラリで確かめる。2件の建設地の街区はいずれも商業地域・建蔽率80%・防火地域に指定されている。指定容積率は街区の内側が500%で、近傍の地価公示地点では幹線道路沿いに600〜700%の指定が見られる。浅草2-7-21の計画が延床÷敷地で約695%に達しているのは、こうした高い容積の指定を受ける位置にあることを示唆するが、延床面積には容積率の算定から除かれる部分も含まれうるため、指定値との直接の比較はできない。

地価の動きは供給の増え方とよく似ている。浅草寺1km圏にある商業地の地価公示12地点の中央値は、2016年の67.3万円/㎡から2026年には165.5万円/㎡へと2.46倍になった。客室数の2.47倍とほぼ同じ倍率である。直近の伸びはさらに大きく、2026年は12地点すべてが前年比+18%を超え、中央値で+22.6%だった。本堂に最も近い浅草2-34-11の地点(指定容積率700%)は71.8万円/㎡から249.0万円/㎡へ3.47倍になっている。

一方で、単価の伸びは前述のとおり年+4.2%である。用地の値上がりが単価の伸びを大きく上回る局面では、同じ土地から得る床をどう配分するか、つまり1室あたりの延床をどこに置くかが、事業の成否を左右する変数になる。

出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(地価公示・商業地、浅草寺半径1kmの12地点)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成

表6 浅草寺1km圏の地価公示(商業地12地点、2016年と2026年)
地点所在(住居表示)浅草寺から指定容積率2016年(/㎡)2026年(/㎡)10年倍率2026年前年比
台東5-28浅草2-34-11131m700%71.8万円249.0万円3.47倍+23.9%
台東5-22浅草2-14-13296m600%54.5万円124.0万円2.28倍+24.2%
台東5-4浅草1-1-2428m700%217.0万円915.0万円4.22倍+27.6%
台東5-5西浅草2-13-10511m700%94.8万円323.0万円3.41倍+25.2%
台東5-39西浅草3-4-2532m600%61.5万円161.0万円2.62倍+23.8%
台東5-43雷門1-2-11604m500%72.5万円170.0万円2.34倍+21.4%
台東5-40西浅草3-29-19652m600%62.8万円141.0万円2.25倍+22.6%
台東5-14雷門1-5-1673m700%87.5万円204.0万円2.33倍+21.4%
台東5-11西浅草3-9-3681m600%78.5万円189.0万円2.41倍+21.2%
台東5-34浅草5-37-6715m500%44.3万円98.8万円2.23倍+23.8%
台東5-41寿4-6-1825m500%56.8万円120.0万円2.11倍+18.8%
台東5-38今戸1-4-4842m400%39.3万円77.2万円1.96倍+18.6%

出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(地価公示)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成

水害については、洪水浸水想定区域(想定最大規模)のデータで建設地の街区付近を確認した。隅田川の想定ではいずれも0.5m未満、荒川の想定では浅草2-7-21付近が3.0m以上5.0m未満、浅草2-1付近が0.5m以上3.0m未満の区分に入る。浅草一帯に共通する条件であり、受変電設備の上階配置や止水板といった備えを設計段階で織り込む余地がある、という読み方が実務的だろう。なお、台東区は2026年10月1日に旅館業法施行条例の改正を施行しており、制度面の整理は東京6区の旅館業条例改正の記事で扱っている。

延べ3,000㎡級は何室になるか — 原単位で読む64〜219室の幅

客室数が公表されていない以上、延床から逆算できるのは「幅」だけである。ホテル1室あたりの延床を実測した記事では、単独用途のホテル計画45件の客室原単位は13〜196㎡に分布し、20㎡未満帯の中央値が16.4㎡、8〜12階建ての中央値が41.2㎡、40〜80㎡帯の中央値が56.6㎡だった。これを2件の延床に当てはめたのが下の表である。

表7 客室原単位別に見た2件の想定客室数(延床÷原単位の機械換算)
客室原単位想定の根拠浅草2-7-21(3,595㎡)浅草2-1(3,069㎡)
16.4㎡20㎡未満帯の中央値(都心・政令市駅前の宿泊特化型)約219室約187室
26.3㎡20〜40㎡帯の中央値約137室約117室
41.2㎡8〜12階建て計画の中央値約87室約74室
56.6㎡40〜80㎡帯の中央値(共用機能を厚く持つ型)約64室約54室

出典:国土交通省「建築物動態統計調査」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成。客室数は延床÷原単位の機械的な換算であり、実際の計画客室数を示すものではない

都心の宿泊特化型と同じ16.4㎡で割れば219室と187室、共用機能を厚く持つ56.6㎡なら64室と54室になり、同じ建物でも3倍以上の開きが出る。浅草では多人数で泊まれる広めの客室やアパートメント型の計画も目立つため、1室あたりの床が都心の宿泊特化型より大きくなる傾向がある点は押さえておきたい。

用地費の感度 — 伝法院通り側は1室あたりの土地負担が約1.5倍

ここからは簡易試算である。用地の単価は公表されていないため、1km圏の公示地価を手がかりに、近傍の低位地点に近い125万円/㎡、12地点の中央値165.5万円/㎡、本堂至近の地点に近い250万円/㎡、実勢がさらに上振れた場合の350万円/㎡の4水準を置いた。敷地全体の用地費は、浅草2-7-21(517㎡)で約6.5億〜12.9億円、浅草2-1(660㎡)で約8.3億〜16.5億円(いずれも125万〜250万円/㎡の場合)となる。公示地価と実際の取引価格の開きについては、商業地の取引価格と公示地価を10商圏394件で照合した記事で詳しく検証している。

表8 浅草2-7-21の1室あたり用地費(用地単価×1室あたり延床)
浅草2-7-21(敷地517㎡・延床3,595㎡)の1室あたり用地費
用地単価1室20㎡(約180室)1室30㎡(約120室)1室40㎡(約90室)1室60㎡(約60室)
125万円/㎡360万円539万円719万円1,079万円
165.5万円/㎡476万円714万円952万円1,428万円
250万円/㎡719万円1,079万円1,438万円2,157万円
350万円/㎡1,007万円1,510万円2,013万円3,020万円
表9 浅草2-1の1室あたり用地費(用地単価×1室あたり延床)
浅草2-1(敷地660㎡・延床3,069㎡)の1室あたり用地費
用地単価1室20㎡(約153室)1室30㎡(約102室)1室40㎡(約77室)1室60㎡(約51室)
125万円/㎡538万円806万円1,075万円1,613万円
165.5万円/㎡712万円1,068万円1,424万円2,135万円
250万円/㎡1,075万円1,613万円2,150万円3,226万円
350万円/㎡1,505万円2,258万円3,011万円4,516万円

出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(地価公示)、建通新聞の報道値よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算。用地単価は公示地価を参考にした仮定で、実際の取得価格ではない

同じ用地単価・同じ原単位で比べると、1室あたりの用地費は浅草2-1のほうが約1.5倍重い。たとえば165.5万円/㎡・1室40㎡の場合、浅草2-7-21が約952万円なのに対し、浅草2-1は約1,424万円になる。延床÷敷地の比が695%と465%で違うためで、観光客の動線に面した伝法院通り側は、低層部の店舗的な使い方や客室単価で土地負担を吸収する設計が有効といえる。

開発採算の簡易試算 — 1室40㎡なら必要ADRは区平均とほぼ同水準

建物の工事費は2段階で置く。第1段階は2025年の実績水準で、鉄骨造を坪240.5万円、鉄筋コンクリート造を坪202.6万円とすると、浅草2-7-21は約26.2億円、浅草2-1は約18.8億円になる。第2段階として、2025年から工期の中間時点まで(浅草2-7-21は約1.75年、浅草2-1は約2.5年)年+5%の上昇を複利で織り込むと、それぞれ約28.5億円、約21.3億円である。工事費の上昇は事業費を押し上げる一方で、周辺の新規供給を絞る方向にも働くため、既存・計画中の施設にとっては競合環境が緩むという面もある。

そのうえで、1室あたりの総事業費(工事費+用地費)から必要なADRを逆算した。前提は、事業費に対する利回り5%、GOP率45%、稼働率85%(通年・試算前提)である。GOP率は、インヴィンシブル投資法人が開示する運営実績(2024年12月期・91物件で38.9%)と宿泊特化型の目安とされる50〜60%の間に置いた。稼働率は前述の推定値(90〜92%)より低めに設定している。

表10 1室あたり延床別の総事業費と必要ADR(基準ケース・用地165.5万円/㎡)
1室あたり延床浅草2-7-21(S造・坪240.5万円)浅草2-1(RC造・坪202.6万円)
想定室数工事費/室用地費/室必要ADR想定室数工事費/室用地費/室必要ADR
20㎡約180室1,455万円476万円6,916円約153室1,226万円712万円6,939円
30㎡約120室2,183万円714万円10,373円約102室1,839万円1,068万円10,408円
40㎡約90室2,910万円952万円13,831円約77室2,451万円1,424万円13,878円
60㎡約60室4,365万円1,428万円20,747円約51室3,677万円2,135万円20,817円

出典:国土交通省「建築着工統計調査」、不動産情報ライブラリ、インヴィンシブル投資法人の開示資料よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算(用地単価165.5万円/㎡・利回り5%・GOP率45%・稼働率85%〔通年・試算前提〕)

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算。基準ケース=2025年工事費水準・用地165.5万円/㎡、上振れケース=工事費の上昇織り込み・用地250万円/㎡。台東区平均は推定成約ADRの12か月平均

基準ケースで1室40㎡とした場合、1室あたりの総事業費は浅草2-7-21が約3,862万円、浅草2-1が約3,875万円、必要ADRは約¥13,800と約¥13,900で、台東区の12か月平均(約¥14,400)とほぼ同じ水準に収まる。構造と敷地条件が異なる2件が、結果としてよく似た必要単価に落ち着くのは興味深い。1室30㎡なら約¥10,400まで下がり、区平均の単価でも余裕が生まれる。逆に1室60㎡まで広げると約¥20,700〜¥20,800が必要になり、区平均の1.4倍強の単価を通年で取る設計が前提になる。

上振れケース(工事費の上昇織り込み・用地250万円/㎡)では、1室40㎡の必要ADRは約¥16,500〜¥17,600、1室30㎡で約¥12,400〜¥13,200に上がる。台東区の4月(¥18,500)や先行月の10〜11月の水準に近く、春秋のピーク単価を年間に広げられるかどうかが分かれ目になる。つまり、地価が年2割のペースで上がる市場では、区平均並みの単価で成立するのは1室30〜40㎡の設計までで、それより広い客室を選ぶ場合はグループ・ファミリー向けの1室単価を高く取る業態が視野に入る、という整理になる。

※簡易試算であり、実際の投資判断には詳細なフィージビリティ・スタディが必要です。FF&E(家具・備品)、開業前費用、設計監理料、解体費、消費税、金利は含めていません。GOPは賃料・NOIとは異なる概念で、利回りは事業費に対するGOPの比として単純化しています。

表11 必要ADRの1項目感度(浅草2-7-21・1室40㎡)
感度(浅草2-7-21・1室40㎡)必要ADR台東区12か月平均との比
基準ケース13,831円0.96倍
用地単価250万円/㎡15,572円1.08倍
用地単価350万円/㎡17,632円1.22倍
工事費の上昇織り込み(+8.9%)14,760円1.02倍
利回り4.5%12,448円0.86倍
利回り5.5%15,214円1.06倍
GOP率40%15,560円1.08倍
GOP率50%12,448円0.86倍
稼働率90%(通年)13,063円0.91倍

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算(基準=用地165.5万円/㎡・工事費坪240.5万円・利回り5%・GOP率45%・稼働率85%〔通年〕。各行は1項目のみ変更)

上の感度は1項目ずつ動かしたものだが、用地単価と1室あたり延床は同時に決まる。2つを掛け合わせた必要ADRが下の表で、各セルは「浅草2-7-21/浅草2-1」の順に並べた(工事費は2025年水準、利回り5%・GOP率45%・稼働率85%〔通年・試算前提〕で固定)。2件とも台東区の12か月平均(約¥14,400)を超えるセルは赤字で示した。1室40㎡の場合、区平均で成り立つ用地単価の上限は浅草2-7-21で約193万円/㎡、浅草2-1で約183万円/㎡となり、12地点中央値の165.5万円/㎡からの余地は浅草2-7-21のほうが大きい。1室30㎡なら上限は約338万円/㎡まで上がり、本堂至近の地点(249.0万円/㎡)の水準でも区平均を下回る。

表12 必要ADRの2軸感度(用地単価×1室あたり延床、浅草2-7-21/浅草2-1)
用地単価1室20㎡1室30㎡1室40㎡1室60㎡
125万円/㎡6,499/6,315円9,748/9,473円12,997/12,630円19,496/18,946円
165.5万円/㎡6,916/6,939円10,374/10,409円13,831/13,878円20,747/20,817円
250万円/㎡7,786/8,241円11,679/12,361円15,572/16,481円23,358/24,722円
350万円/㎡8,816/9,781円13,224/14,672円17,632/19,562円26,449/29,343円

出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(地価公示)、建通新聞の報道値よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算(工事費=S造坪240.5万円・RC造坪202.6万円、利回り5%・GOP率45%・稼働率85%〔通年〕)。赤字=両計画とも台東区12か月平均を上回るセル

運営・開発の視点 — 小箱の街で「大きめの箱」が持つ選択肢

規模の希少性

1km圏の計画46件の延床中央値は約1,175㎡。延べ3,000㎡以上は4件で、ロビー・飲食・物販といった共用機能を持てる規模そのものが差別化の材料になる。

床の配分が単価を決める

1室30〜40㎡なら区平均並みの単価で成立し、60㎡なら約2.1万円が必要。客室数を先に決めるのではなく、狙う単価帯から原単位を決める順番が有効といえる。

季節の山を広げる

4月¥18,500と8月¥11,600の差は約1.6倍。夏でも推定稼働は9割前後あり、谷の月に単価を伸ばす余地が収益機会として残っている。

デベロッパーの用地取得担当にとっては、浅草の中心部で500㎡を超える敷地がどれほど出にくいかを46件の分布が示している。敷地の中央値が約235㎡の街では、複数の建物をまとめて更地にする伝法院通り側のような進め方が、規模を確保するための現実的な手段になるだろう。出店を検討する運営会社の側からは、1km圏で2027年に26件、2028年に14件の計画が完成を予定しており、2028年3月と2029年2月という2件の完成時期はその後半から終盤にあたる点を見ておきたい。周辺の小箱の多くが先に開業し、価格帯の地図が見えてきた段階で、大きめの2棟がどの帯に入るかを決められる順番である。

まとめ

ここまでを整理すると、野村不動産の浅草二丁目2件は、10年で客室数が2.47倍・地価が2.46倍になった市場に、延べ3,000㎡級という希少な規模で加わる計画だといえる。1km圏では46件・延べ約6.4万㎡の計画が進むが、その大半は延べ2,000㎡未満の小箱で、敷地500㎡超の案件は数えるほどしかない。台東区の推定成約ADRは12か月平均で約¥14,400、前の12か月比+4.2%と底堅いが、比べた東京11区のなかでは最も小さい伸びで、稼働も夏場で9割前後を保っている。

一方で、用地の値上がりは単価の伸びを上回っており、1室あたりの延床をどこに置くかが採算を分ける。簡易試算では、1室40㎡前後であれば区平均並みの単価で成立し、それより広い客室を選ぶなら約2万円台の単価を通年で取る設計が前提になった。客室数とブランドの公表を待ちつつ、原単位と単価帯の組み合わせとして2件を読むことが、浅草でこれから用地を探す事業者にとっての物差しになるだろう。

⚠ 将来日程のADRに関する注意:本記事のADRのうち2026年9月以降の月は、調査時点(2026年10月3日)で主要予約サイトに公開されている販売価格にもとづく推定であり、チェックイン日に近づくにつれて変動します。現時点で高く設定されている価格が直前の調整で下がる可能性がある点にご留意ください。確定月(2026年8月まで)と先行月は同列に比較していません。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

浅草寺半径1kmの施設数・客室数と台東区ほか東京11区の推定成約ADR・稼働率(OTA掲載在庫ベースの推定)はメトロエンジンリサーチ&コンサルティングの集計。ホテル建築計画は国土交通省「建築物動態統計調査」を住所・延床で名寄せし、地価公示・用途地域・洪水浸水想定は国土交通省 不動産情報ライブラリ、2件の諸元は建通新聞・日経不動産マーケット情報の報道による。

■ 試算前提

工事費は2025年水準でS造坪240.5万円・RC造坪202.6万円(上振れケースは工期の中間まで年+5%を複利で加算)。用地単価は公示地価を参考に125万〜350万円/㎡の4水準。必要ADR=1室あたり総事業費(工事費+用地費)×利回り5%÷GOP率45%÷(365日×稼働率85%〔通年〕)。客室数は延床÷客室原単位の機械換算。

■ 限界・留意点

2件の客室数・ブランド・用地取得価格は未公表で、試算はすべて仮定にもとづく。FF&E、開業前費用、設計監理料、解体費、消費税、金利は含めていない。推定成約ADRと稼働率はOTA掲載情報からの推定値で、施設の実績とは異なる。建築計画は確認申請ベースで、今後の申請追加により件数・延床は増えうる。

■ 市場データ

  • メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — 浅草寺半径1kmの施設数・客室数(2026年 N=213施設)、台東区の推定成約ADR(各月N=161〜177施設)と東京11区の比較、稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定、2026年8月 対象145施設/13,435室)

■ 政府統計・公的データ

■ REIT・業界資料

■ ニュース

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