2028年に新規開業するホテルは、現時点でどこまで見えているのか。メトロエンジンリサーチが把握する範囲の建築計画を2026年10月2日時点で集計すると、2028年に完成予定のホテル計画は106件で、2027年完成予定221件の48.0%にとどまっていた。ただしこの差は供給が半減することを意味しない。延床1万㎡以上の大型計画は2027年と同じ13件がすでに並び、少ないのは着工から1年前後で完成する小型の計画である。本稿では、2028年以降の供給パイプラインを都道府県別・規模帯別に棚卸しし、着工から完成までのラグと建築着工統計を重ねて、「まだ見えていない供給」の大きさと投資判断のタイムラインを読み解く。
本記事における指標の定義
| ホテル計画 | 主用途にホテル(宿泊施設)を含む建築計画の届出情報。国土交通省「建築物動態統計調査」などの公表情報をもとに、メトロエンジンリサーチが把握する範囲で集計した。建築計画・報道ベースで確認できた分に限られ、全数ではない。開業日・運営事業者を示すものでもない。 |
| 計画件数 | 同じ建物に複数の届出がある場合(計画変更・再届出など)は1件にまとめた。届出991件を建物単位にまとめた584件(完成予定2025年1月以降)が本稿の母集団である。完成予定は最も新しい届出の値を採った。 |
| 完成予定 | 届出に記載された完成(竣工)予定の年月。工期の延伸や計画変更で前後しうる予定値であり、開業日そのものではない。 |
| ホテル主体/複合用途 | 届出の主用途に事務所・共同住宅・商業施設・ホール・観覧場などを含むものを「複合用途」、ホテルに店舗・飲食店・駐車場などの付帯用途のみを加えたものを「ホテル主体」とした機械的な区分。 |
| 既存客室ストック | メトロエンジンリサーチが追跡するうち、稼働が確認できる施設の客室数合計(都道府県別)。登録ベースの総数より小さい。 |
| 客室数の試算 | 届出に客室数の記載がないホテル主体の計画は、延床面積÷44.9㎡/室で換算した(客室数が判明する東京都・大阪府のホテル主体計画N=34件の中央値。四分位は18.6〜54.1㎡/室で、これをレンジに用いた)。複合用途で客室数の記載がない計画は試算に含めていない。 |
| データ出典 | メトロエンジンリサーチ&コンサルティング/国土交通省「建築物動態統計調査」「建築着工統計調査」 |
出典:国土交通省「建築物動態統計調査」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(N=584件、2026年10月2日時点。調査時点での確認申請ベースであり、今後の申請追加により件数・客室数は増加する見込み。現時点での確定パイプラインの下限値として参照)
- — 2028年完成予定のホテル計画は106件で、2027年221件の48.0%(建築計画ベース、N=584件、2026年10月2日時点)。全数ではなく、現時点で判明している分の下限値である。
- — 延床3,000㎡以上は37件で2027年と同数。両年の差115件のうち113件は延床3,000㎡未満で生じており、小型計画は届出がまだ出そろっていない。
- — 着工から完成予定までの中央値は17.9ヶ月(ホテル主体17.1ヶ月・複合用途44.5ヶ月、N=559件)。延床3,000㎡未満は2027年末までの着工で2028年完成に間に合う。
- — 判明分の既存客室ストック比は東京都+2.0%(レンジ+1.7〜+4.8%)、神奈川県+2.1%、大阪府+1.3%。客室数の一部は延床面積からの試算である。
- — 計画リストの外に、2030年秋頃の開業を目指す夢洲IR約2,500室と、建築着工統計が示す地方・リゾートの着工(2024年2,836棟・約176万㎡)がある。
完成予定年別の全体像 — 2028年は106件、2029年以降は48件が判明
まずは完成予定年ごとの件数を並べる。建物単位にまとめた584件のうち、2025年完成が60件、2026年が149件、2027年が221件と増えたあと、2028年は106件、2029年は28件、2030年以降は各年1桁に細る。2028年以降の判明分は合計154件で、全体の26.4%にあたる。一方で延床面積の合計は2029年が137万㎡と、件数が4倍近い2028年の75万㎡を上回っている。先の年ほど件数は少ないが、1件あたりの規模は大きいという構図である。
出典:国土交通省「建築物動態統計調査」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(N=584件、2026年10月2日時点。調査時点での確認申請ベースであり、今後の申請追加により件数・客室数は増加する見込み。現時点での確定パイプラインの下限値として参照)
| 完成予定年 | 計画件数 | うち東京都 | うち複合用途 | 延床面積合計 | 客室数の記載あり | 着工予定日を経過 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2025年 | 60件 | 36件 | 12件 | 1,767,839㎡ | 28件・5,587室 | 56件 |
| 2026年 | 149件 | 97件 | 12件 | 1,385,538㎡ | 32件・4,891室 | 140件 |
| 2027年 | 221件 | 155件 | 18件 | 1,899,066㎡ | 39件・4,792室 | 205件 |
| 2028年 | 106件 | 74件 | 8件 | 752,178㎡ | 17件・1,752室 | 72件 |
| 2029年 | 28件 | 22件 | 8件 | 1,374,599㎡ | 4件・636室 | 10件 |
| 2030年 | 5件 | 4件 | 3件 | 238,156㎡ | — | 2件 |
| 2031年 | 5件 | 4件 | 4件 | 1,113,264㎡ | 2件・317室 | 3件 |
| 2032年 | 6件 | 6件 | 4件 | 617,540㎡ | — | 0件 |
| 2033年以降 | 4件 | 2件 | 3件 | 841,200㎡ | — | 0件 |
| 合計 | 584件 | 400件 | 72件 | 9,989,380㎡ | 122件・17,975室 | 488件 |
出典:国土交通省「建築物動態統計調査」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(N=584件、2026年10月2日時点。調査時点での確認申請ベースであり、今後の申請追加により件数・客室数は増加する見込み。現時点での確定パイプラインの下限値として参照)
この表を「2028年から供給が細る」と読むのは早計といえる。建築計画の届出は着工の少し前に出され、後述するとおり小型のホテルは着工から1年前後で完成する。つまり2028年後半に完成する小型計画の多くは、届出そのものがまだ出ていない。実際、届出上の着工予定日を調査時点(2026年10月2日)で過ぎている計画は、2027年完成分では205件あるのに対し、2028年完成分では着工予定日の記載がある103件のうち72件、2029年完成分では10件にとどまる。客室数が届出に記載されている計画も2028年は17件・1,752室に限られ、室数ベースの総量を届出だけから数えることはできない。
2028年完成予定106件の中身 — 東京都74件、台東区だけで36件
次に、2028年完成予定の106件を都道府県別に開く。東京都が74件(69.8%)で、神奈川県と大阪府が各12件、千葉県3件、北海道2件、岡山県・岐阜県・京都府が各1件と続く。東京都のなかでは台東区が36件と都内の48.6%を占め、墨田区・中央区が各9件、新宿区5件である。浅草・上野・蔵前といった観光動線上の街区に、延床1,000〜3,000㎡の中小規模のホテル計画が集まっている。神奈川県は12件のうち7件が箱根町・湯河原町にあり、箱根町の5件は客室60〜90室規模のリゾート型である。
| 都道府県 | 2028年完成予定 | ホテル主体 | 複合用途 | 延床面積合計 | 客室数の記載あり |
|---|---|---|---|---|---|
| 東京都 | 74件 | 69件 | 5件 | 474,517㎡ | 4件・136室 |
| 神奈川県 | 12件 | 11件 | 1件 | 121,635㎡ | 7件・588室 |
| 大阪府 | 12件 | 12件 | 0件 | 55,392㎡ | 1件・117室 |
| 千葉県 | 3件 | 2件 | 1件 | 15,596㎡ | 1件・238室 |
| 北海道 | 2件 | 2件 | 0件 | 19,638㎡ | 1件・200室 |
| 岡山県 | 1件 | 0件 | 1件 | 40,400㎡ | 1件・300室 |
| 岐阜県 | 1件 | 1件 | 0件 | 記載なし | 1件・120室 |
| 京都府 | 1件 | 1件 | 0件 | 25,000㎡ | 1件・53室 |
| 合計 | 106件 | 98件 | 8件 | 752,178㎡ | 17件・1,752室 |
出典:国土交通省「建築物動態統計調査」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(N=106件、2026年10月2日時点。調査時点での確認申請ベースであり、今後の申請追加により件数・客室数は増加する見込み。現時点での確定パイプラインの下限値として参照)
用途で切ると、106件のうちホテル主体が98件、事務所・住宅・商業施設などと一体の複合用途が8件(7.5%)だった。これに対し2029年以降の48件では複合用途が22件(45.8%)を占める。遠い年に見えているのは、再開発組合や大手デベロッパーが数年がかりで進める複合開発が中心で、ホテル主体の計画はこれから届出が出てくる段階にあると読める。
規模帯では、延床1,000〜3,000㎡が50件で最も多く、3,000〜10,000㎡が24件、1,000㎡未満が17件、1万㎡以上が13件である(延床面積の記載がない2件を除く)。1万㎡以上の13件を下表に示した。渋谷・西麻布・赤坂の再開発、川崎駅前のアリーナ併設計画、岡山市中心部の再開発、箱根の複数のリゾート計画など、都心の複合開発と温泉地のリゾートが同じ年に並んでいる。
| 所在地(町名まで) | 届出上の主用途 | 階数 | 延床面積 | 客室数 | 着工予定 | 完成予定 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 東京都渋谷区渋谷 | ホテル・事務所・ホール・商業施設・産業育成支援施設・駐車場等 | 33階 | 191,150㎡ | 記載なし | 2024年8月 | 2028年8月 |
| 東京都港区西麻布 | 共同住宅・店舗・事務所・ホテル・自動車車庫 | 54階 | 96,827㎡ | 記載なし | 2024年9月 | 2028年4月 |
| 神奈川県川崎市川崎区駅前本町 | 観覧場(アリーナ)、ホテル(宿泊施設)、その他(温浴施設)、店舗 | 17階 | 52,600㎡ | 記載なし | 2025年8月 | 2028年6月 |
| 岡山県岡山市北区野田屋町 | 住宅・ホテル・店舗 | 12階 | 40,400㎡ | 300室 | 2021年4月 | 2028年12月 |
| 東京都港区赤坂 | 観覧場(劇場)、ホテル、飲食店、駐車場(自動車車庫)、その他(駅舎) | 18階 | 38,143㎡ | 記載なし | 2023年11月 | 2028年3月 |
| 京都府京都市東山区三十三間堂廻り | ホテル | 4階 | 25,000㎡ | 53室 | 記載なし | 2028年12月 |
| 東京都中央区銀座 | ホテル、駐車場(自動車車庫) | 15階 | 14,495㎡ | 記載なし | 2025年11月 | 2028年12月 |
| 神奈川県足柄下郡箱根町強羅 | ホテル(68室) | 4階 | 11,800㎡ | 68室 | 2026年7月 | 2028年12月 |
| 北海道札幌市中央区北3条西 | ホテル、飲食店 | 17階 | 11,084㎡ | 記載なし | 2026年9月 | 2028年6月 |
| 大阪府大阪市生野区鶴橋 | ホテル | 11階 | 10,920㎡ | 記載なし | 2026年7月 | 2028年1月 |
| 神奈川県足柄下郡箱根町仙石原 | ホテル(60室) | 2階 | 10,280㎡ | 60室 | 2026年7月 | 2028年7月 |
| 神奈川県足柄下郡箱根町強羅 | ホテル(3棟客室計90室) | 4階 | 10,100㎡ | 90室 | 2026年10月 | 2028年9月 |
| 千葉県木更津市瓜倉 | 複合施設(商業施設・ホテル・医療福祉施設等) | 1階 | 10,000㎡ | 記載なし | 2026年8月 | 2028年2月 |
出典:国土交通省「建築物動態統計調査」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(N=13件(2028年完成予定のうち延床1万㎡以上)、2026年10月2日時点。調査時点での確認申請ベースであり、今後の申請追加により件数・客室数は増加する見込み。現時点での確定パイプラインの下限値として参照)
2028年完成予定のホテル計画の位置(N=106件、円の大きさ=延床面積、濃色=複合用途)。初期表示は東京都心で、地図を動かすと他地域も確認できる。位置は届出住所から求めた概略。出典:国土交通省「建築物動態統計調査」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成
まだ見えていない部分 — 小型は2027年の17.3%、大型は100%
ここからが本稿の中心である。2028年の106件を2027年の221件と規模帯別に比べると、延床1万㎡以上は13件に対して13件、3,000〜10,000㎡は24件に対して24件と、いずれも同数だった。ところが1,000〜3,000㎡は82件に対し50件(61.0%)、1,000㎡未満は98件に対し17件(17.3%)まで下がる。2028年と2027年の差115件のうち、113件は延床3,000㎡未満の2つの帯で生じている。
出典:国土交通省「建築物動態統計調査」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(N=321件(延床面積の記載がない計画を除く)、2026年10月2日時点。調査時点での確認申請ベースであり、今後の申請追加により件数・客室数は増加する見込み。現時点での確定パイプラインの下限値として参照)
同じことは完成予定の四半期別にも表れる。2027年は各四半期53〜60件でほぼ横ばいだが、2028年は1〜3月の47件から4〜6月24件、7〜9月22件、10〜12月13件へと期を追って減っていく。2028年下期の35件は、2027年下期107件の32.7%にすぎない。需要が2028年前半に偏る理由は見当たらないため、この右下がりは「届出が出そろっている度合い」をそのまま映したものと考えられる。
出典:国土交通省「建築物動態統計調査」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(N=355件(2027年1月〜2029年12月完成予定)、2026年10月2日時点。調査時点での確認申請ベースであり、今後の申請追加により件数・客室数は増加する見込み。現時点での確定パイプラインの下限値として参照)
ラグの実測 — 着工から完成予定まで中央値17.9ヶ月、複合用途は44.5ヶ月
なぜ小型だけが見えていないのか。背景にあるのは、着工から完成までの時間の違いである。着工予定日と完成予定日の両方が分かる559件で期間を測ると、中央値は17.9ヶ月だった。ホテル主体(N=491)は17.1ヶ月(四分位12.8〜21.0ヶ月)、複合用途(N=68)は44.5ヶ月(同25.2〜58.6ヶ月)と、用途で2.6倍の開きがある。規模帯別では延床1,000㎡未満が12.5ヶ月、1,000〜3,000㎡が18.0ヶ月、3,000〜10,000㎡が24.0ヶ月、1万㎡以上が43.0ヶ月だった。延床1万㎡未満では規模帯が上がるごとに半年ほど延び、1万㎡以上では複合用途が増えるぶん一気に長くなる。
出典:国土交通省「建築物動態統計調査」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(N=559件(着工予定日・完成予定日の両方が判明する計画)、2026年10月2日時点。調査時点での確認申請ベースであり、今後の申請追加により件数・客室数は増加する見込み。現時点での確定パイプラインの下限値として参照)
この期間を逆算に使うと、2028年12月の完成に間に合う着工時期の目安が出る。延床1万㎡以上なら2025年5月ごろ、3,000〜10,000㎡なら2026年12月ごろ、1,000〜3,000㎡なら2027年6月ごろ、1,000㎡未満なら2027年12月ごろである。大型と中型はすでに着工時期を迎えているか目前にあり、届出が出そろっていることと整合する。逆に3,000㎡未満の計画は、2028年完成分であってもこれから2027年末までに着工すれば間に合う。小型の届出が2027年並みに積み上がるかどうかは、今後1年あまりの届出で決まるといえる。
| 延床面積帯 | 2027年完成予定 | 2028年完成予定 | 2028年/2027年 | 着工〜完成予定の中央値 | 2028年末完成に必要な着工時期の目安 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1,000㎡未満 | 98件 | 17件 | 17.3% | 12.5ヶ月(N=212) | 2027年12月ごろ |
| 1,000〜3,000㎡ | 82件 | 50件 | 61.0% | 18.0ヶ月(N=176) | 2027年6月ごろ |
| 3,000〜10,000㎡ | 24件 | 24件 | 100.0% | 24.0ヶ月(N=82) | 2026年12月ごろ |
| 10,000㎡以上 | 13件 | 13件 | 100.0% | 43.0ヶ月(N=81) | 2025年5月ごろ(経過済み) |
出典:国土交通省「建築物動態統計調査」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(N=559件(中央値の算出対象)、2026年10月2日時点。調査時点での確認申請ベースであり、今後の申請追加により件数・客室数は増加する見込み。現時点での確定パイプラインの下限値として参照)
届出が今後積み上がった場合の読み替え — 3つのケース
届出が出そろっていない延床3,000㎡未満の2つの帯について、2027年完成予定と同じ件数まで届出が積み上がると仮に置いた場合の件数を、3つのケースで並べた。判明分の104件(延床面積の記載がある計画)は、1,000〜3,000㎡の帯だけが2027年並みになれば136件、3,000㎡未満の2つの帯がともに2027年並みになれば217件となる。これは規模帯ごとの件数を機械的に置き換えた読み替えであり、予測ではない。2027年完成予定分にも今後の届出で上積みが出る余地がある点にも留意したい。
| ケース | 前提 | 1,000㎡未満 | 1,000〜3,000㎡ | 3,000〜10,000㎡ | 10,000㎡以上 | 2028年完成予定 計 | 2027年比 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 判明分(下限) | 2026年10月2日時点の届出のみ | 17件 | 50件 | 24件 | 13件 | 104件 | 47.9% |
| 中間 | 1,000〜3,000㎡が2027年並み(82件) | 17件 | 82件 | 24件 | 13件 | 136件 | 62.7% |
| 上限の目安 | 3,000㎡未満の2帯が2027年並み(98件・82件) | 98件 | 82件 | 24件 | 13件 | 217件 | 100.0% |
出典:国土交通省「建築物動態統計調査」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(延床面積の記載がある計画、2027年完成予定N=217件・2028年完成予定N=104件、2026年10月2日時点。件数の置き換えによる簡易試算であり予測ではない)
完成予定と実際の開業日の関係も確かめた。2025年1月〜2026年9月に完成予定だった計画のうち、所在地が開業済み施設と一致し、着工予定日と開業日の両方が分かるものは12件あった。着工から開業までの中央値は32.0ヶ月で、ホテル主体8件が26.4ヶ月、複合用途4件が約48ヶ月である。12件中10件は開業日が完成予定日の前後1ヶ月以内に収まり、残る2件は3.4ヶ月前と7.2ヶ月後だった。突き合わせできたのは客室数150室以上が中心の大きめの計画であり、Nも12件と小さいため、参考値として扱いたい。なお、客室50室以上の計画に絞った工期の実測は既刊『ホテル工期の実測 — 計画67件の着工〜竣工2.80年』で扱っており、本稿は小規模計画を含むぶん中央値が短く出ている。
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(OTA掲載確認ベース、N=12施設)/国土交通省「建築物動態統計調査」
着工統計で補う — 計画リストに載らない供給の厚み
計画リストは「どこに何が建つか」を教えてくれるが、供給の総量を測る物差しにはならない。そこで国土交通省「建築着工統計調査」の宿泊業用建築物を重ねる。全国の着工は2018年の2,118棟・3,039,844㎡から2023年に2,222棟・902,844㎡まで床面積が縮んだあと、2024年は2,836棟・1,756,286㎡と、床面積で前年比+94.5%まで戻した。2018年比では57.8%の水準である。前節の工期を当てれば、2024年着工分は2025年後半から2028年にかけて順次完成する計算になる。
出典:国土交通省「建築着工統計調査」(用途別・建築主別、宿泊業用、建築主計、全国、2011〜2024年)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成
ここで計画リストとの差を測っておく。計画リストで着工予定が2024年の計画は48件、ホテル主体の延床面積は166,959㎡で、同年の着工統計(2,836棟・1,756,286㎡)に対して件数で1.7%、床面積で9.5%にあたる。集計の単位も時点も違うため厳密な比較ではないが、計画リストが捉えているのは供給全体の一部、とくに都市部の中〜大型だという規模感はつかめる。開業実績の側から見ても同じで、OTA掲載確認ベースの2025年の新規開業は1,768軒(1軒平均23室)あり、計画リストの2025年完成60件を大きく上回る。貸別荘やコテージといった小規模な宿泊施設は、計画リストにほとんど現れない。
都道府県別に2022〜2024年の着工床面積を並べると、東京都が664,710㎡(全国の17.2%)で最も厚く、北海道、沖縄県、大阪府、長崎県が続く。沖縄県は441棟・296,914㎡、長野県は436棟・138,722㎡の着工があるのに対し、計画リスト上の件数は沖縄県1件、長野県1件、長崎県0件である。リゾート地・地方の供給は、計画リストよりも着工統計のほうが厚みを示している。2028年の供給を地方で読む際は、計画リストの空白を「供給がない」と解釈せず、着工統計と事業者発表を併用したい。
| 都道府県 | 宿泊業用 着工床面積(2022〜2024年計) | 同 棟数 | 全国比(床面積) | 計画リスト上の件数(2025年以降完成・全期間) | うち2028年完成予定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 東京都 | 664,710㎡ | 147棟 | 17.2% | 400件 | 74件 |
| 北海道 | 352,023㎡ | 425棟 | 9.1% | 27件 | 2件 |
| 沖縄県 | 296,914㎡ | 441棟 | 7.7% | 1件 | 0件 |
| 大阪府 | 234,896㎡ | 56棟 | 6.1% | 47件 | 12件 |
| 長崎県 | 197,235㎡ | 93棟 | 5.1% | 0件 | 0件 |
| 京都府 | 147,872㎡ | 157棟 | 3.8% | 11件 | 1件 |
| 長野県 | 138,722㎡ | 436棟 | 3.6% | 1件 | 0件 |
| 千葉県 | 136,080㎡ | 559棟 | 3.5% | 12件 | 3件 |
| 神奈川県 | 107,052㎡ | 109棟 | 2.8% | 39件 | 12件 |
| 福岡県 | 101,251㎡ | 77棟 | 2.6% | 1件 | 0件 |
出典:国土交通省「建築着工統計調査」(宿泊業用、建築主計、2022〜2024年)/国土交通省「建築物動態統計調査」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(計画リストはN=584件、2026年10月2日時点。確認申請ベースの下限値)/メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(OTA掲載確認ベース、2025年開業N=1,768施設)
読み替え — 2028年完成は「2028〜2029年の供給」、既存ストック比は東京+2.0%
完成予定を供給に読み替えるときは、年をまたぐ幅を持たせたい。突き合わせできた12件では開業日が完成予定日の前後に散らばり、最大で7.2ヶ月後ろにずれた例があった。2028年下期に完成予定の35件は、開業準備や工期の延伸があれば2029年の供給になる。したがって2028年完成予定の106件は「2028〜2029年に市場に出てくる供給」と読むのが実務的である。
そのうえで、主要6都道府県について既存客室ストックに対する増加率を試算した。東京都は2028年完成予定74件のうち客室数の記載があるのは4件・136室にとどまるため、ホテル主体で客室数の記載がない計画を延床面積から換算して加えると約3,266室(レンジ2,731〜7,705室)になる。稼働が確認できる既存ストック1,506施設・160,239室に対して+2.0%(+1.7〜+4.8%)である。大阪府は約1,223室で+1.3%、神奈川県は約883室で+2.1%、北海道・千葉県・京都府は+1%未満だった。2027年完成予定分(東京都+3.1%、千葉県+2.3%)と比べると、2028年分は東京都で3分の2程度の厚みまで見えていることになる。なお、東京都を区単位に分けた既存ストック比は東京23区ホテル供給圧2026で扱っており、都道府県単位の本稿の試算とあわせて参照されたい。
出典:国土交通省「建築物動態統計調査」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(確認申請ベースの下限値、客室数は一部試算)/既存客室ストックはメトロエンジンリサーチ&コンサルティング(稼働が確認できる施設、6都道府県計N=7,450施設)
| 都道府県 | 既存客室ストック | 2027年完成予定(試算) | ストック比 | 2028年完成予定(試算) | ストック比 | 同レンジ | 客室数不明の複合用途(試算外) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 東京都 | 1,506施設・160,239室 | 155件・約4,966室 | +3.1% | 74件・約3,266室 | +2.0% | +1.7〜+4.8% | 5件 |
| 大阪府 | 1,006施設・93,041室 | 23件・約978室 | +1.1% | 12件・約1,223室 | +1.3% | +1.1〜+3.0% | — |
| 神奈川県 | 760施設・42,982室 | 10件・約702室 | +1.6% | 12件・約883室 | +2.1% | +1.9〜+3.0% | 1件 |
| 北海道 | 1,432施設・82,854室 | 13件・約1,116室 | +1.3% | 2件・約447室 | +0.5% | +0.5〜+1.0% | — |
| 千葉県 | 634施設・44,241室 | 3件・約1,000室 | +2.3% | 3件・約266室 | +0.6% | +0.6〜+0.7% | 1件 |
| 京都府 | 2,112施設・43,967室 | 2件・約160室 | +0.4% | 1件・約53室 | +0.1% | +0.1〜+0.1% | — |
出典:同上。試算は延床面積÷44.9㎡/室(レンジ18.6〜54.1㎡/室)。客室数の記載がない複合用途は試算に含めていない
年1〜2%台という増加率は、いずれも届出が出ている分だけを数えた下限値である。前節までに見たとおり、延床3,000㎡未満の計画はこれから届出が積み上がる余地が大きく、複合用途のうち客室数が未公表の計画(東京都で5件)も試算の外にある。裏を返せば、2028年の東京都心で大型の客室供給として確定しているのは限られた数の再開発であり、中小規模のホテル主体計画にとっては、着工の判断をこれから下しても2028年の市場に間に合う時間が残されている。
夢洲IRの約2,500室 — 建築計画データに載らない大型枠
計画リストの外にある大型枠として、大阪・夢洲の統合型リゾート(IR)を並べておく。大阪市の公表資料によれば、大阪IRは2030年秋頃の開業を目指しており、3つのホテルの総客室数は約2,500室とされている。本稿の計画リストでは、大阪府の2028年完成予定は12件・約1,223室(試算)、2029年以降は客室数が判明した計画がなく、IRの約2,500室は2028年判明分のおよそ2.0倍にあたる。本稿の既存ストック(稼働が確認できる1,006施設・93,041室)に対しては約2.7%の上乗せとなる。大阪の2028〜2030年を読むなら、中小規模のホテル計画が年1%台で積み上がる流れと、2030年に1件で2%台後半が加わる大型枠とを、別々の時間軸で見ておくのが有効といえる。大阪府全体の供給と価格帯については『大阪の客室16.7万室、夢洲IRで+2,500室』が登録ベースのストックで詳しく扱っている。
出典:大阪市「統合型リゾート 大阪IR」/国土交通省「建築物動態統計調査」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成
投資判断のタイムライン — いつ、どのデータを見直すか
ここまでを整理すると、2028年以降のパイプラインは「見えている大型」と「これから見えてくる中小型」の二層でできている。投資家・開発事業者の立場では、案件の規模に応じて見直すデータと時期を分けておきたい。竣工前に買い手を確定させる契約の実務と2027〜2028年竣工案件の対応関係は、2027-28年ホテル竣工26件5,243室、竣工前に買い手を決める契約の実務が整理している。
| 時期 | 見えてくる供給 | 確認したいデータ | 読み方 |
|---|---|---|---|
| 2026年10月〜2027年3月 | 2028年上期完成の延床3,000㎡未満 | 建築計画の届出(月次) | 2028年1〜6月の71件に上積みが出る時期。台東区・墨田区・大阪市中央区などの届出動向が先行指標になる |
| 2027年4月〜12月 | 2028年下期〜2029年上期完成の中小型 | 建築計画の届出/2025年・2026年分の建築着工統計 | 2028年下期の35件が2027年下期(107件)にどこまで近づくかで、2028〜2029年の供給の厚みが定まる |
| 2028年 | 2028年完成分の開業、2029〜2030年完成の複合開発の客室数公表 | OTA掲載確認ベースの開業実績/事業者発表 | 完成予定から開業まで数ヶ月の幅を見込む。2029年以降の複合用途22件の客室数・運営者の公表が進む |
| 2030年秋頃 | 夢洲IR 約2,500室 | 大阪市・事業者の公表資料 | 計画リストとは別枠の大型供給として、大阪ベイエリアの価格帯とあわせて読む |
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成
地方・リゾートでは、計画リストの件数が少ないこと自体が機会の所在を示している可能性がある。2028年完成予定が確認できたのは8都道府県で、残る39県は現時点で届出ベースの計画が見えていない。着工統計が示すとおり地方の着工は続いているものの、延床3,000㎡以上の計画が2028年に向けて確認できる県は限られる。新規供給の競合が相対的に薄い市場で、需要の伸びを取り込む余地が残っていると読むこともできるだろう。
まとめ
2028年に完成予定のホテル計画は106件で、2027年の48.0%だった。ただし延床3,000㎡以上の37件は2027年と同数がすでに並んでおり、差のほとんどは着工から12〜18ヶ月で完成する延床3,000㎡未満の計画で生じている。着工から完成予定までの中央値はホテル主体17.1ヶ月、複合用途44.5ヶ月であり、2028年完成分の中小型は2027年末までに着工すれば間に合う。2028年の数字は今後1年あまりの届出で上積みされていく下限値である。
既存ストック比では、判明分だけで東京都+2.0%、神奈川県+2.1%、大阪府+1.3%と試算された。これに着工統計が示す地方・リゾートの着工、2030年秋頃の夢洲IR約2,500室が別枠で加わる。2028年以降の供給を読むうえでは、完成予定年の件数をそのまま比べるのではなく、規模帯ごとの「届出が出そろう時期」を踏まえて四半期ごとに更新していく姿勢が有効だろう。2029年以降に完成する計画の個別の顔ぶれは、既刊の2029年以降に完成するホテル計画(2026年9月23日時点・集約基準が異なるため件数は43件)もあわせて参照されたい。
よくある質問
Q. 2028年に新規開業するホテルは何軒ありますか。
A. メトロエンジンリサーチが把握する範囲では、2028年に完成予定のホテル計画は106件です(2026年10月2日時点、建築計画ベース)。全数ではなく、小規模な計画は今後の届出で増える見込みです。
Q. 2028年の計画が2027年より少ないのはなぜですか。
A. 延床3,000㎡未満のホテルは着工から12〜18ヶ月ほどで完成するため、2028年完成分の届出がまだ出そろっていないためです。延床3,000㎡以上は2027年と同数でした。
Q. 2029年以降はどうですか。
A. 2029年以降の完成予定は48件で、うち22件が事務所・住宅などと一体の複合用途です。客室数が届出に記載されている計画は一部に限られます。
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参考資料・出典一覧
■ データソース
国土交通省「建築物動態統計調査」などの公表情報をもとに、メトロエンジンリサーチ&コンサルティングが把握する範囲で集計したホテル建築計画の届出情報(届出991件を建物単位にまとめた584件、完成予定2025年1月以降、2026年10月2日時点)。供給総量の補完には国土交通省「建築着工統計調査」(宿泊業用、2011〜2024年)、既存客室ストックには稼働が確認できる施設の客室数(6都道府県計N=7,450施設)、開業実績にはOTA掲載確認ベースの新規開業(2025年N=1,768施設)を用いた。
■ 試算前提
客室数の記載がないホテル主体の計画は、延床面積÷44.9㎡/室で換算した(客室数が判明する東京都・大阪府のホテル主体計画N=34件の中央値。レンジは四分位の18.6〜54.1㎡/室)。複合用途で客室数の記載がない計画は試算に含めていない。着工〜完成予定の期間は、両方の日付が判明する559件の中央値である。届出件数の3ケースは、延床面積の記載がある計画(2027年完成予定217件・2028年完成予定104件)を規模帯ごとに置き換えた読み替えであり、予測ではない。
■ 限界・留意点
計画データは建築計画・報道ベースで確認できた分に限られ、全数ではない。把握できた計画は東京都が68.5%を占め、東京都以外は一定規模以上の計画が中心である。完成予定・着工予定は届出上の予定値で、工期の延伸や計画変更により変動しうるほか、開業日を示すものではない。着工から開業までの実測はN=12件と小さく、参考値にとどまる。既存ストック比は判明分のみを数えた下限値であり、個別案件の投資判断には案件ごとの精査が必要である。
■ 市場データ
| メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — ホテル建築計画の集計(N=584件、2026年10月2日時点)、既存客室ストック(稼働が確認できる施設)、新規開業実績(OTA掲載確認ベース、2025年N=1,768施設) |
■ 政府統計・公的データ
| 国土交通省「建築物動態統計調査」(建築計画の届出情報) |
| 国土交通省「建築着工統計調査」(e-Stat、用途別・建築主別、宿泊業用、2011〜2024年) |
| 大阪市「統合型リゾート 大阪IR」(開業時期・総客室数) |
| 国土地理院 住所検索(地図の位置算出) |
