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源泉掛け流し温泉ランキング 都道府県別2026|口コミで語られる1,254軒と訴求余地426軒

投稿日 : 2026.10.05

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調査

源泉掛け流し温泉ランキング 都道府県別2026|口コミで語られる1,254軒と訴求余地426軒

源泉掛け流しの温泉宿は、宿泊者の口コミでどれだけ語られているのか。ホテルバンク編集部が47都道府県の宿泊者口コミ(直近24ヶ月)を集計したところ、「かけ流し」が好意的に10件以上語られている宿は1,254軒、言及は合計28,913件にのぼった。言及数の全国最多は北海道・帯広のふく井ホテル(274件)、言及率(口コミ全体に占める割合)が高いのは山梨・石和の深雪温泉(36.0%)や川浦温泉の山県館(30.8%)だった。

運営者にとって重要なのは、その先の2点である。1つは、掛け流しが何と一緒に語られるかで推定成約ADRの水準が分かれること。露天風呂と同じ口コミで語られる旅館は県の旅館水準の1.49倍、泉質とだけ語られる旅館は0.95倍だった。もう1つは、掛け流しが10件以上語られていながら、言及率が5%に届かない宿が426軒あることだ。多くは客室数の多い中〜大規模の宿で、掛け流しの湯を持ちながら、それが口コミの主役になりきっていない。本稿では都道府県別の分布、語られ方の分解、単価との関係を順に示し、訴求の伸びしろを県別に数える。

本記事における指標の定義

  • 母集団:直近24ヶ月(2024年9月〜2026年9月)の宿泊者口コミが20件以上あり、かつ「源泉掛け流し」への好意的な言及が10件以上ある施設。47都道府県すべてに該当施設があり、合計1,254軒。
  • 言及率:その施設の口コミ総数のうち、掛け流しに好意的に触れた口コミの割合。言及頻度であり、評価点(スコア)ではありません。
  • 同時言及率:掛け流しに触れた口コミのうち、同じ口コミの中で「泉質(美肌の湯・にごり湯など)」「露天風呂」「湯めぐり」にも好意的に触れている割合。
  • 語られ方の4類型:同時言及率が10%以上の要素で分類。「泉質+露天」=泉質・露天とも10%以上/「泉質セット」=泉質のみ10%以上/「露天セット」=露天のみ10%以上/「単独」=いずれも10%未満。
  • ADR(平均客室単価):各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(184物件月・2026年4〜5月)で誤差中央値は約7.5%、本稿の中心である旅館区分では約16%(34物件月)。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。本稿では2025年9月〜2026年8月のうち6ヶ月以上の推定値がある施設の月平均を施設の水準とし、グループ単位では中央値を用います。
  • 県の旅館水準:同じ12ヶ月の都道府県別・旅館カテゴリの推定成約ADR(エリアの標準的な施設の水準=対象施設の中央値)の月平均。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ(推定成約ADR)/ホテルバンク編集部調べ(NLP解析)
掛け流しが語られる宿
1,254軒
言及10件以上・47都道府県
言及率の中央値
7.7%
四分位 3.9〜13.7%
旅館の推定成約ADR
1.23倍
県の旅館水準比・中央値(N=958軒)
露天セット型の旅館
1.49倍
県の旅館水準比(N=129軒)
言及率5%未満の宿
426軒
客室数中央値 49室

出典:ホテルバンク編集部調べ(NLP解析、直近24ヶ月)/メトロエンジンリサーチ(推定成約ADR)

Key Takeaways
  • — 1,254軒・28,913件 掛け流しが口コミで10件以上好意的に語られる宿(47都道府県、直近24ヶ月)。静岡135軒・長野99軒・群馬97軒・北海道93軒が上位。
  • — 泉質21.1%・露天17.3% 掛け流しに触れた口コミのうち、同じ口コミで泉質・露天風呂にも触れた割合。湯めぐりは1.2%にとどまり、掛け流しは「湯そのもの」と「浴場の景色」とセットで語られる。
  • — 1.23倍 母集団の旅館(N=958)の推定成約ADRは県の旅館水準の1.23倍(中央値)。比較できる26道府県のうち23道府県で県の水準を上回った。
  • — 露天セット1.49倍/泉質セット0.95倍 単価と連動するのは言及率の高さより語られ方。言及率上位1/3は客室数中央値13.5室の小規模宿が中心で、水準は0.96倍だった。
  • — 426軒 掛け流しが10件以上語られながら言及率5%未満の宿。客室数中央値49室、旅館の単価は県水準の1.46倍。81室以上の宿では83.8%がこの帯にあり、浴槽ごとの湯使いの開示に伸びしろがある。

源泉掛け流し温泉ランキング — 口コミの言及数上位20軒

まず全国の顔ぶれを見る。下表は、掛け流しへの好意的な言及数が多い順に並べた上位20軒である。1位のふく井ホテル(北海道・帯広)は口コミ1,319件のうち274件が掛け流しに触れており、「100%源泉かけ流しモール温泉」といった声が並ぶ。駅前のビジネスホテル型の宿が首位に立つ点は、掛け流しが温泉地の旅館だけの価値ではないことを示している。2位は山梨・湯村温泉の自家源泉かけ流し天然温泉の宿 湯村ホテルB&B(199件)で、「加温・加水・循環をしていない…」と湯使いまで具体的に書く口コミが目立つ。

上位には山口・湯田温泉のユウベルホテル松政(165件)、栃木・塩原のホテルおおるり(154件)、山形・あつみ温泉の萬国屋(142件)と、口コミ件数の厚い中〜大規模の宿が並ぶ。群馬・水上の檜の宿 水上山荘(106件・18.2%)と伊香保温泉の石坂旅館(102件・29.3%)は、30室前後以下の規模で言及数・言及率とも高い。言及数は口コミ総数に比例して増えるため、下の「言及率上位」とあわせて読むと宿のタイプが見分けやすい。

表1 掛け流しへの言及数 上位20軒(N=1,254軒の母集団から)

表1 掛け流しへの言及数 上位20軒(N=1,254軒の母集団から)
順位宿名都道府県言及数口コミ数言及率泉質の同時言及露天の同時言及
1ふく井ホテル北海道274件1,319件20.8%24.5%0.0%
2自家源泉かけ流し天然温泉の宿 湯村ホテルB&B山梨199件811件24.5%18.1%15.6%
3ユウベルホテル松政山口165件1,110件14.9%15.2%50.9%
4塩原温泉 ホテルおおるり栃木154件1,084件14.2%18.8%24.0%
5萬国屋山形142件1,454件9.8%6.3%16.9%
6伊豆・伊東温泉 大東館静岡136件719件18.9%14.7%19.1%
7山県館山梨135件439件30.8%23.0%17.0%
8華やぎの章 慶山山梨129件1,295件10.0%22.5%14.0%
9神戸ベイシェラトン ホテル&タワーズ兵庫113件2,020件5.6%8.8%15.0%
10ホテルアオキ栃木112件489件22.9%38.4%37.5%
11富士野屋夕亭山梨110件990件11.1%12.7%10.0%
12ホテル紫苑岩手109件1,157件9.4%25.7%13.8%
13シルクイン鹿児島鹿児島107件743件14.4%26.2%7.5%
14檜の宿 水上山荘群馬106件581件18.2%11.3%19.8%
15石坂旅館群馬102件348件29.3%10.8%0.0%
16三朝温泉 清流荘鳥取98件705件13.9%16.3%20.4%
17くつろぎ宿 新滝福島97件1,458件6.7%4.1%9.3%
18旅館・家族湯 いまむら熊本94件793件11.9%38.3%23.4%
19熱海倶楽部 迎賓館静岡93件442件21.0%9.7%11.8%
20大江本家北海道91件958件9.5%34.1%15.4%

出典:ホテルバンク編集部調べ(宿泊者口コミのNLP解析、直近24ヶ月・2024年9月〜2026年9月、口コミ20件以上かつ掛け流しへの好意的言及10件以上の施設)。同時言及は掛け流し言及に占める割合(下限値)

言及率で並べると、山梨・石和の深雪温泉(36.0%)、静岡・伊東のゲストハウス倭荘(32.5%)、山梨・川浦温泉の山県館(30.8%)が上位に来る。山県館の口コミには「湯船からお湯が溢れ出ているのは圧巻」という描写があり、宿泊者の3人に1人前後が湯使いに触れている。上位15軒のうち13軒は客室数40室以下で、湯そのものが宿選びの理由になっている宿といえる。

表2 掛け流しの言及率 上位15軒(口コミ150件以上の宿に限定)

表2 掛け流しの言及率 上位15軒(口コミ150件以上の宿に限定)
順位宿名都道府県言及率言及数口コミ数客室数
1深雪温泉山梨36.0%85件236件15室
2ゲストハウス倭荘静岡32.5%49件151件9室
3山県館山梨30.8%135件439件34室
4ホテル河内屋静岡29.4%57件194件22室
5石坂旅館群馬29.3%102件348件33室
6那須パレスホテル栃木28.7%72件251件44室
7白兎福岡28.4%50件176件15室
8四季の宿こよみ栃木25.1%44件175件4室
9南紀勝浦温泉 海のホテル一の滝和歌山24.9%50件201件21室
10汐彩の宿 月崎和歌山24.7%49件198件4室
11自家源泉かけ流し天然温泉の宿 湯村ホテルB&B山梨24.5%199件811件99室
12龍リゾート アンド スパ岐阜23.5%79件336件23室
13ホテルアオキ栃木22.9%112件489件24室
14伊豆長岡温泉京急ホテル静岡21.6%46件213件31室
15熱海倶楽部 迎賓館静岡21.0%93件442件20室

出典:ホテルバンク編集部調べ(宿泊者口コミのNLP解析、直近24ヶ月・2024年9月〜2026年9月、口コミ20件以上かつ掛け流しへの好意的言及10件以上の施設)。客室数はメトロエンジンリサーチの施設マスターによる

都道府県別 — 静岡135軒・長野99軒・群馬97軒、47都道府県すべてに分布

母集団1,254軒を都道府県別に数えると、伊豆・熱海を抱える静岡が135軒で最も多く、長野99軒、群馬97軒、北海道93軒、栃木81軒、福島75軒と続く。上位6道県で全体の46%を占める一方、東京・大阪・京都・愛知といった都市圏でも数軒ずつ該当があり、47都道府県すべてに掛け流しが語られる宿が存在した。

棒の色は後述する語られ方の4類型を示す。上位の多くの県で「泉質+露天」型が最大の塊だが、神奈川・山形・福島では「泉質セット」型が3割を超え、静岡・大分では「露天セット」型が2割を超える。同じ掛け流しでも、湯の個性で語られる温泉地と、露天風呂や海の眺めと一緒に語られる温泉地に分かれている。

出典:ホテルバンク編集部調べ(宿泊者口コミのNLP解析、直近24ヶ月・2024年9月〜2026年9月、口コミ20件以上かつ掛け流しへの好意的言及10件以上の施設)。上位25都道府県

表3 都道府県別の母集団(47都道府県、N=1,254軒)

表3 都道府県別の母集団(47都道府県、N=1,254軒)
都道府県該当施設数言及数言及率中央値言及率5%未満県内で言及数が最も多い宿
静岡1353,5947.7%44伊豆・伊東温泉 大東館(136件)
長野992,0049.2%28ホテル亀屋本店(73件)
群馬972,1676.5%41檜の宿 水上山荘(106件)
北海道932,1805.3%43ふく井ホテル(274件)
栃木811,9767.7%19塩原温泉 ホテルおおるり(154件)
福島751,63410.7%16くつろぎ宿 新滝(97件)
山形621,2768.1%21萬国屋(142件)
神奈川611,3097.7%21源泉かけ流しと創作イタリアンの宿 Albergo湯楽(71件)
大分541,0255.7%25別府ステーションホテル(57件)
熊本459109.6%15旅館・家族湯 いまむら(94件)
新潟3967210.5%8大和屋旅館(38件)
和歌山357977.2%12ホテル天山閣 海ゆぅ庭(74件)
岐阜3484010.1%12龍リゾート アンド スパ(79件)
鹿児島317209.5%7シルクイン鹿児島(107件)
岩手297328.2%6ホテル紫苑(109件)
山梨291,37311.0%7自家源泉かけ流し天然温泉の宿 湯村ホテルB&B(199件)
鳥取215585.5%10三朝温泉 清流荘(98件)
秋田203797.1%8亀の井ホテル 田沢湖(53件)
宮城193325.3%9星灯りの宿 まほろば(34件)
島根1742011.0%2湯陣 千代の湯(81件)
石川173986.4%8ちりはま ホテルゆ華(57件)
兵庫163923.3%12神戸ベイシェラトン ホテル&タワーズ(113件)
青森152276.7%6山田温泉(23件)
長崎152837.9%4雲仙小地獄温泉 白濁源泉掛け流し美肌露天風呂 青雲荘(46件)
福岡143448.2%3白兎(50件)
富山102225.7%4ホテルおがわ(38件)
岡山1016417.3%2湯原温泉 旅館 かじか荘(22件)
福井817411.3%1鷹巣荘(33件)
愛媛81885.8%4たかのこのホテル(45件)
佐賀71918.4%2嬉野八十八(77件)
奈良716224.3%0静響の宿 山水(49件)
山口72499.0%2ユウベルホテル松政(165件)
千葉61643.1%5成田空港温泉 空の湯(33件)
京都5866.1%1いっぺん庵(21件)
三重41529.8%0湯の山温泉 湯元 グリーンホテル(76件)
沖縄4591.3%3ユインチホテル南城(27件)
宮崎33912.8%0北郷温泉旅館 べっぴんの湯の宿 丸新荘(16件)
広島3693.4%3リブマックスリゾート宮浜温泉 Ocean(34件)
茨城3703.4%2袋田温泉 思い出浪漫館(34件)
東京3584.2%2SPA&HOTEL 和(28件)
愛知3775.4%1名古屋クラウンホテル(42件)
滋賀3593.5%3八風の湯(24件)
徳島2594.2%1—
埼玉27310.1%0—
高知1144.2%1—
香川1313.7%1—
大阪1110.3%1—

出典:ホテルバンク編集部調べ(宿泊者口コミのNLP解析、直近24ヶ月・2024年9月〜2026年9月、口コミ20件以上かつ掛け流しへの好意的言及10件以上の施設)。該当施設が2軒以下の県は宿名を省略

掛け流しは単独で語られるか — 泉質と21.1%、露天と17.3%が同じ口コミに

次に、掛け流しがどんな文脈で語られているかを分解する。母集団の掛け流し言及28,913件のうち、同じ口コミの中で泉質(美肌の湯・にごり湯・とろみなど)にも好意的に触れていたのは21.1%、露天風呂にも触れていたのは17.3%だった。一方、湯めぐり(複数の湯を巡る体験)と同時に語られたのは1.2%にとどまる。宿泊者は掛け流しを「湯の質」や「露天での体験」と結びつけて書いており、湯の種類の多さとはあまり結びつけていない。泉質そのものが評価される宿の顔ぶれは、「泉質」で選ばれる宿 全国TOP30で詳しく分析している。

出典:ホテルバンク編集部調べ(宿泊者口コミのNLP解析、直近24ヶ月・2024年9月〜2026年9月、口コミ20件以上かつ掛け流しへの好意的言及10件以上の施設)。N=掛け流し言及28,913件。同時言及は県別集計の下位施設に上限3件の取りこぼしがあり得るため下限値

施設単位で見ると、同時言及率10%以上を基準にした4類型は「泉質+露天」568軒、「泉質セット」331軒、「単独」180軒、「露天セット」175軒となった。掛け流しを単独で語られる宿は全体の14%で、多くの宿では湯の質か浴場の景色とセットで記憶されている。口コミの書きぶりにも特徴がある。水上山荘には「加水、加温なしで塩素消毒なし」、湯村ホテルB&Bには「加温・加水・循環をしていない…」という声があり、宿泊者は宿が掲示・案内した湯使いの情報をそのまま言葉にしている。

温泉法では、加水・加温・循環ろ過・入浴剤や消毒の有無とその理由を浴場に掲示することが定められている(温泉法第18条、同法施行規則第10条)。掲示の内容は宿によって「全浴槽」「露天のみ」「貸切湯のみ」と範囲が異なるため、どの浴槽がどういう湯使いなのかを公式サイトや館内で具体的に示している宿ほど、宿泊者がそれを言葉にしやすいと考えられる。

単価との関係 — 母集団の旅館は県水準の1.23倍、露天セット型は1.49倍

ここからは推定成約ADRとの関係を見る。業態の違いを揃えるため旅館カテゴリに絞ると、推定成約ADRが得られた母集団の旅館は958軒、中央値は¥17,600だった。各施設を所在県の旅館水準と比べると中央値で1.23倍となり、該当旅館が8軒以上ある26道府県のうち23道府県で県の水準を上回った。掛け流しが語られる旅館は、県内の旅館の中でおおむね上位の価格帯にある。

ただし、言及率が高いほど単価が高いわけではない。言及率で3等分すると、下位1/3(0.4〜5.2%)の旅館は県水準の1.45倍、中位1/3は1.27倍、上位1/3(10.9%以上)は0.96倍と、むしろ逆の並びになる。客室数の中央値は下位が42室、上位が13.5室で、言及率の高い群は湯そのものを看板にする小規模な宿、低い群は料理や眺望、館内施設など語られる要素の多い中〜大規模の宿が中心である。言及率は「湯がどれだけ宿の主役か」を表す物差しであり、単価の物差しとは別物と読むのが妥当だろう。

単価の差がはっきり出るのは語られ方の類型である。露天風呂と一緒に語られる「露天セット」型の旅館は県水準の1.49倍(N=129)、「泉質+露天」型は1.30倍(N=462)、「単独」型は1.22倍(N=117)、「泉質セット」型は0.95倍(N=250)だった。泉質セット型は客室数中央値17室・言及率中央値11.1%と、湯治の伝統を持つ小さな宿が多い。露天とセットで語られる宿は、掛け流しを「景色の中で過ごす時間」として売っている宿であり、その体験が単価に乗りやすいと考えられる。露天風呂の眺めが口コミでどう評価されているかは、口コミが映す「絶景露天風呂」が地域別に掘り下げている。

出典:メトロエンジンリサーチ(推定成約ADR、2025年9月〜2026年8月)/ホテルバンク編集部調べ(NLP解析)。旅館カテゴリ・推定成約ADRが得られた958軒。県の旅館水準=同期間の都道府県別・旅館の推定成約ADRの月平均

表4 語られ方・言及率別の推定成約ADR(旅館、N=958軒)

表4 語られ方・言及率別の推定成約ADR(旅館、N=958軒)
区分軒数推定成約ADR(中央値)県の旅館水準比客室数中央値言及率中央値
露天セット129¥20,9001.49倍23室5.2%
泉質+露天462¥18,0001.30倍25室7.1%
単独117¥19,6001.22倍17室7.5%
泉質セット250¥14,5000.95倍17室11.1%
言及率 下位1/3(0.4〜5.2%)319¥20,5001.45倍42室—
中位1/3(5.2〜10.9%)319¥18,9001.27倍20室—
上位1/3(10.9〜46.8%)320¥14,5000.96倍14室—

出典:メトロエンジンリサーチ(推定成約ADR、2025年9月〜2026年8月)/ホテルバンク編集部調べ(NLP解析)

この比較は記述的な関連であり、掛け流しや露天風呂そのものが単価をいくら押し上げるかを示すものではない。立地、客室の広さ、料理、露天風呂付客室の有無なども同時に効いている。設備単体の上乗せを同じ宿の中で測る方法は、露天風呂付客室の同一施設比較(792軒)で扱っている。

掛け流しが希少な都府県 — 県内の口コミの0.1%未満、語られる宿は差別化になる

県全体で見ると、掛け流しへの言及そのものが極めて少ない地域がある。県内の全口コミに占める掛け流し言及の割合は、大阪府0.010%、東京都0.012%、沖縄県0.029%、京都府0.054%、愛知県0.065%、広島県0.072%、高知県0.090%と、いずれも0.1%に届かない。こうした地域では宿泊需要の大半が都市観光やビジネスで、温泉そのものの選択肢が少ないぶん、掛け流しが語られる宿は県内で際立った存在になる。

表5 掛け流し言及が希少な都府県と、語られている宿の例

表5 掛け流し言及が希少な都府県と、語られている宿の例
都府県県内口コミに占める言及割合母集団の該当施設掛け流しが語られている宿の例(言及数)
東京都0.012%3軒蒲田の黒湯「SPA&HOTEL 和」(28件)、あきる野の「秋川渓谷 瀬音の湯」(17件)
沖縄県0.029%4軒南城市の「ユインチホテル南城」(27件)
京都府0.054%5軒京丹後の「久美浜温泉 湯元館」(18件・言及率15.8%)、伊根の「奥伊根温泉 油屋別館 和亭」(20件)
愛知県0.065%3軒湯谷温泉の「湯の風 HAZU」(18件)、「はづ別館」(17件)
広島県0.072%3軒廿日市の「リブマックスリゾート宮浜温泉 Ocean」(34件)、「江田島荘」(19件)
高知県0.090%1軒須崎市の「そうだ山温泉 和」(14件)

出典:ホテルバンク編集部調べ(NLP解析、直近24ヶ月)。言及割合は県内の全口コミに対する割合。大阪府(0.010%・該当1軒)は表から省略

都市圏の宿にとって、掛け流しは「温泉地の宿と同じ土俵で戦う武器」ではなく、「県内で代わりの効かない特徴」として働く。蒲田の黒湯のように駅からの近さと合わせて語られる例もあり、ビジネス需要とレジャー需要の両方に訴求できる特徴といえる。

訴求の伸びしろ — 掛け流しを持ちながら言及率5%未満の宿は426軒

最後に、運営者向けの本題である。母集団はすべて、掛け流しを好意的に語る口コミが10件以上ある宿、つまり宿泊者が掛け流しの湯を実際に体験し、評価している宿である。そのうち言及率が5%未満の宿は426軒(全体の34%)あり、口コミ総数は合計336,445件と母集団全体の63%を占める。言及率の中央値は2.9%で、宿泊者のおよそ35人に1人しか掛け流しに触れていない計算になる。

この426軒は客室数の中央値が49室と、言及率5%以上の宿(16室)の約3倍の規模で、旅館の推定成約ADRは県水準の1.46倍(中央値¥20,600、N=310)と高い価格帯にある。客室数別に見ると、10室以下の宿では言及率中央値が14.5%、5%未満の宿は8.6%にとどまるのに対し、81室以上では言及率中央値2.1%、83.8%が5%未満の帯にある。規模が大きい宿ほど料理・眺望・館内施設など語られる要素が多く、掛け流しの湯が口コミの中で相対的に埋もれやすい構造が読み取れる。

出典:ホテルバンク編集部調べ(宿泊者口コミのNLP解析、直近24ヶ月・2024年9月〜2026年9月、口コミ20件以上かつ掛け流しへの好意的言及10件以上の施設)。客室数が判明する1,253軒

都道府県別に数えると、言及率5%未満の宿が多いのは静岡44軒、北海道43軒、群馬41軒、長野28軒、大分25軒、山形・神奈川各21軒、栃木19軒の順である。北海道・群馬・大分は母集団の4〜5割がこの帯に入り、大型の温泉旅館・リゾートホテルが集まる温泉地ほど伸びしろが大きい。

出典:ホテルバンク編集部調べ(宿泊者口コミのNLP解析、直近24ヶ月・2024年9月〜2026年9月、口コミ20件以上かつ掛け流しへの好意的言及10件以上の施設)。言及率5%未満の宿が多い上位15道県

伸びしろを取りにいく打ち手は、大きく3つに整理できる。第一に、浴槽ごとの湯使いを具体的に示すこと。大規模な宿では大浴場の一部だけが掛け流しというケースも多く、「どの浴槽が源泉掛け流しで、加水・加温はどうしているか」を公式サイトの浴場ページやプラン説明に書き分けると、宿泊者がそれを言葉にしやすくなる。第二に、露天風呂や泉質とセットで見せること。前章のとおり、露天とセットで語られる宿ほど単価水準が高く、掛け流しを「景色と湯の時間」として打ち出す設計は単価の維持と相性がよい。第三に、湯を目的にした宿泊プランを用意すること。湯上がりの時間帯を長くとれるチェックイン・アウト設定や、夜通し入浴できる浴場の案内は、口コミで「24時間入れる掛け流し」「夜通し…」と語られている例がある。

なお、言及率が低いことは湯の評価が低いことを意味しない。母集団の掛け流し言及のうち、好意的な文脈は99.5%を占めていた(言及の内訳が得られた1,120軒・26,657件)。宿泊者が掛け流しに触れたときは、ほぼ例外なく好意的に語っている。語られる回数を増やすことが、そのまま宿の評価の厚みにつながる余地がある。

地図で見る — 掛け流しが語られる宿1,253軒の分布

母集団の宿を地図に落とすと、伊豆半島、箱根、草津・伊香保・四万の群馬北部、那須・塩原、信州、東北の奥羽山脈沿い、別府・由布院、南九州に濃い帯が現れる。点の色は語られ方の類型、大きさは言及率を表す(言及率5%以上の宿のみ宿名を表示)。

出典:ホテルバンク編集部調べ(NLP解析、直近24ヶ月)、メトロエンジンリサーチ

まとめ

源泉掛け流しが宿泊者の口コミで10件以上語られる宿は全国に1,254軒あり、47都道府県すべてに分布する。掛け流しは泉質(21.1%)や露天風呂(17.3%)と同じ口コミで語られることが多く、露天とセットで語られる旅館の推定成約ADRは県の旅館水準の1.49倍だった。言及率そのものは小規模な湯治系の宿ほど高く、単価とは逆の並びになるため、言及率は「湯が宿の主役である度合い」として読むのがよい。

運営者にとっての伸びしろは、掛け流しの湯を持ち、宿泊者にも評価されていながら、口コミの中で語られる割合が5%に届かない426軒にある。多くは客室数の多い中〜大規模の宿で、単価は県の旅館水準を上回る価格帯にある。浴槽ごとの湯使いの開示、露天・泉質とセットにした見せ方、湯を目的にしたプラン設計の3点は、既存の設備のまま取り組める打ち手である。

よくある質問

Q. 源泉掛け流しが口コミで語られる宿は全国に何軒ありますか?

直近24ヶ月(2024年9月〜2026年9月)の口コミが20件以上あり、掛け流しへの好意的な言及が10件以上ある宿は47都道府県で1,254軒、言及は合計28,913件でした。都道府県別では静岡135軒、長野99軒、群馬97軒、北海道93軒の順に多く、東京・大阪・京都・愛知などの都市圏にも数軒ずつ該当があります。

Q. 言及数と言及率はどちらで見ればよいですか?

目的によって使い分けます。言及数は口コミ総数に比例して増えるため、口コミ件数の多い中〜大規模の宿が上位に来やすい指標です。言及率は口コミ全体のうち掛け流しに触れた割合で、母集団の中央値は7.7%(四分位3.9〜13.7%)。言及率の上位は客室数40室以下の小規模な宿が中心で、湯そのものが宿選びの理由になっている宿を見つけるのに向いています。

Q. 掛け流しが語られる旅館は単価が高いのですか?

推定成約ADRが得られた母集団の旅館958軒は、中央値で所在県の旅館水準の1.23倍でした。ただし言及率が高いほど高いわけではなく、言及率上位1/3は0.96倍です。差がはっきり出るのは語られ方で、露天風呂と一緒に語られる露天セット型は1.49倍(N=129)、泉質とだけ語られる泉質セット型は0.95倍(N=250)でした。記述的な関連であり、掛け流しや露天風呂そのものが単価をいくら押し上げるかを示すものではありません。

Q. 「訴求の伸びしろ」がある426軒とはどのような宿ですか?

掛け流しを好意的に語る口コミが10件以上ありながら、言及率が5%に届かない宿です。客室数の中央値は49室と中〜大規模の宿が中心で、旅館の推定成約ADRは県水準の1.46倍(N=310)。81室以上の宿では83.8%がこの帯に入ります。都道府県別では静岡44軒、北海道43軒、群馬41軒が多くなっています。

Q. 口コミで掛け流しが語られるようにするには、何から始めればよいですか?

既存の設備のまま取り組める打ち手は3つです。浴槽ごとの湯使い(加水・加温・循環ろ過の有無)を公式サイトの浴場ページやプラン説明で具体的に示すこと、露天風呂や泉質とセットで見せること、湯を目的にした宿泊プランを用意することです。温泉法は浴場への湯使いの掲示を定めており(第18条、同法施行規則第10条)、その情報を予約前の接点にも出すと、宿泊者が言葉にしやすくなります。

集計方法と出典

  • 宿泊者口コミは、ホテルバンク編集部が自然言語解析で79の評価項目に分類した直近24ヶ月(2024年9月〜2026年9月)のデータを用いた。都道府県ごとに「源泉掛け流し」への好意的な言及数を集計し、口コミ20件以上・言及10件以上の施設を母集団とした(1,254軒)。
  • 同時言及は、同じ口コミの中で掛け流しと「泉質」「露天風呂」「湯めぐり」の双方に好意的に触れた口コミ数を施設ごとに数え、掛け流し言及数で割った。県別の集計範囲の下位では最大3件の取りこぼしがあり得るため下限値として扱っている。
  • 推定成約ADRは2025年9月〜2026年8月のうち6ヶ月以上の推定値がある施設(1,117軒、うち旅館958軒)の月平均。県の旅館水準は同期間の都道府県別・旅館カテゴリの推定成約ADRの月平均。
  • 県内口コミに占める掛け流し言及の割合は、都道府県内の全口コミ(口コミ件数の少ない施設を含む)に対する割合で、希少度の高い評価項目から順に集計した結果に掛け流しが含まれた都府県について記載した。
  • 口コミの引用は部分引用とし、投稿者の属性は扱っていない。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

ホテルバンク編集部が宿泊者口コミを自然言語解析で79の評価項目に分類したデータ(直近24ヶ月・2024年9月〜2026年9月)と、メトロエンジンリサーチの推定成約ADR(2025年9月〜2026年8月、施設別および都道府県×旅館カテゴリ)。

■ 試算前提

母集団は口コミ20件以上かつ掛け流しへの好意的な言及10件以上の1,254軒。語られ方の4類型は同時言及率10%を閾値に分類。単価の比較は、旅館カテゴリで6ヶ月以上の推定値がある958軒の月平均を所在県の旅館水準(同期間の月平均)で割った比の中央値。

■ 限界・留意点

同時言及率は県別集計の範囲で最大3件の取りこぼしがあり得るため下限値。推定成約ADRはOTA公開価格からの推定値で、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なる。単価との関係は記述的な関連で、掛け流しや露天風呂が単価をいくら押し上げるかの因果は示さない。言及率の低さは湯の評価の低さを意味しない。

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