トップ > エリア・施設分析 > 湯めぐりが評判の宿 全国TOP30|複数の湯を楽しむ体験はどこに集まるか

湯めぐりが評判の宿 全国TOP30|複数の湯を楽しむ体験はどこに集まるか

投稿日 : 2026.07.18 更新日 : 2026.09.02

エリア・施設分析

湯めぐりが評判の宿 全国TOP30

ひとつの湯に浸かるだけでなく、露天・内湯・展望風呂・貸切風呂と「複数の湯を渡り歩く」体験は、温泉旅の満足度を大きく左右する要素になっている。宿泊者が実際に何を評価しているのか——ホテルバンク編集部が集計した宿泊者口コミ(直近24ヶ月)をNLPで解析し、「湯めぐり・複数の湯を楽しめた」という文脈で言及された宿を全国TOP30として抽出した。秋の温泉旅の予約が動き出すこの時期に、複数浴の体験がどの地域・どのタイプの宿に集まっているのかを読み解く。

本記事における指標の定義

  • 湯めぐり評価(複数浴の言及):宿泊者口コミを自然言語解析し、「お風呂の種類が多い」「いくつもの湯を楽しめた」「湯めぐりができた」といった複数の湯を渡り歩く体験に関する肯定的言及を抽出・集計したもの。言及率=当該宿の総口コミ件数に対する言及件数の割合であり、★スコア(評価点)とは異なる。源泉掛け流し・泉質の良さとは別の評価軸として切り分けている。出典:ホテルバンク編集部調べ(NLP解析)。
  • ADR(平均客室単価):各施設がOTA等で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり実際の成約価格とは異なる。本記事では補足指標として直近実績月(2026年6月)の水準を示す。出典:メトロエンジンリサーチ。
Key Takeaways
  • — 湯めぐり評価の全国トップはホテル華の湯(福島・言及率6.32%、N=886)。上位は館内に多彩な浴槽を持つ大型温泉リゾートが占める。
  • — 都道府県別では北海道が延べ256件で突出し、静岡・群馬・福島が続く。館内湯めぐり型の宿が集中するエリアだ。
  • — 「湯めぐり」は館内回遊型と街の外湯めぐり型に二極化。城崎・別府など後者は口コミに乗りにくく、発信の伸びしろが大きい。
  • — 湯めぐり・源泉掛け流し・泉質は別の評価軸で、各軸のトップの顔ぶれは大きく異なる。
  • — TOP30のADR中央値は約¥17,300。健康ランド系¥7,000台から高級旅館¥39,000台まで約5倍の価格レンジに広がる。

湯めぐりが評判の宿 全国TOP30

まず結論から。「複数の湯を楽しめた」という声が最も多く集まったのは、福島・磐梯熱海のホテル華の湯(言及率6.32%、N=886件)だった。続いて登別の第一滝本館、ホテルまほろばと、北海道の大型温泉ホテルが上位に並ぶ。これらに共通するのは、館内に多彩な浴槽群を備えた大型温泉リゾートである点だ。「温泉の種類も多く、楽しめた」「源泉湯のほか種類も豊富」といった声が、規模のある宿ほど数として積み上がりやすい構造がうかがえる。

下表は湯めぐり評価TOP30。言及率だけでなく客室数・口コミ母数(N)・直近ADRを併記した。母数の大きい宿は言及率が相対的に低く出るため、両者を合わせて読むのが実態に近い。

順位宿名エリア客室数口コミN湯めぐり言及言及率ADR(6月)
1ホテル華の湯福島県162886566.32%¥18,400
2第一滝本館北海道3952,380542.27%¥17,100
3ホテルまほろば北海道3981,441513.54%¥18,600
4クア アンド ホテル 駿河健康ランド静岡県419776465.93%¥7,400
5黒川温泉 湯峡の響き 優彩熊本県551,349453.34%¥31,600
6緑の風リゾートきたゆざわ北海道1781,018414.03%¥19,600
7萩本陣山口県91530326.04%¥18,300
8スパランドホテル内藤山梨県206582305.15%¥9,000
9高砂温泉北海道34420286.67%¥9,300
10あわらグランドホテル福井県49444276.08%¥9,300
11下呂温泉 水明館岐阜県2642,809260.93%¥17,400
12華の湯(静岡)静岡県62232410.76%—
13水上館群馬県88521234.41%¥10,800
14くつろぎ宿 新滝福島県81506214.15%¥14,200
15奥道後 壱湯の守愛媛県159971212.16%¥16,300
16結びの宿 愛隣館岩手県100517214.06%¥21,600
17石和健康ランド山梨県109411215.11%¥9,000
18ホテル天坊群馬県183559203.58%¥23,100
19四万たむら群馬県47436204.59%¥24,500
20伊香保温泉 ホテル木暮群馬県111391194.86%¥35,000
21海のホテル 島花兵庫県50441194.31%¥15,900
22伊良湖オーシャンリゾート愛知県1481,780191.07%¥12,300
23たかみや瑠璃倶楽リゾート山形県40405184.44%¥14,900
24お宿 木の葉群馬県47322185.59%¥23,800
25美輝の里岐阜県26227187.93%¥11,400
26山水荘福島県69425174.00%¥19,900
27アパホテル&リゾート〈東京ベイ幕張〉千葉県20074,914170.35%¥10,800
28ホテルニューアワジ兵庫県1171,030171.65%¥39,300
29湯元 ホロホロ山荘北海道67373174.56%¥12,400
30あさやホテル栃木県1922,297170.74%¥34,000

出典:ホテルバンク編集部調べ(NLP解析、直近24ヶ月、N=各宿の口コミ母数)/ADRはメトロエンジンリサーチ(2026年6月実績月)

※言及率は口コミ母数に対する割合。母数の大きい宿ほど分母が大きく、言及率は低めに出る。ADRは補足指標であり、日帰り入浴施設を併設する宿(健康ランド系)は宿泊単価が低く出る傾向がある。

湯めぐり評価はどこに集まるか — 都道府県別の集積

全国47都道府県で、湯めぐり評価(言及5件以上の宿を対象)の総言及数を集計すると、明確な偏在が見えてくる。最も集積しているのは北海道(延べ256件)。登別・北湯沢など大型温泉地を擁するエリアだ。次いで静岡(152件)、群馬(146件)、福島(135件)、兵庫(129件)、山梨(102件)、長野(93件)と続く。群馬は水上・伊香保・四万と、館内に複数の湯を持つ宿が密に分布しており、TOP30にも5施設が入った。

出典:ホテルバンク編集部調べ(NLP解析、言及5件以上の宿を集計、直近24ヶ月)

TOP30の分布マップ

TOP30の所在地を地図上にプロットした。円の大きさは湯めぐり言及数を表す。北海道・登別と、群馬・北関東の山あいに厚い集積が確認できる一方、九州は黒川温泉(優彩)、四国は奥道後と、点在にとどまる。西日本の温泉地は、後述する「外湯めぐり文化」の存在によって、宿単体の館内湯めぐり評価としては数字に乗りにくい傾向がある。

出典:ホテルバンク編集部調べ

「複数の湯を楽しむ体験」は二極に分かれる

データを読み解くと、「湯めぐり」には性格の異なる二つのかたちがあることが見えてくる。

ひとつは「館内湯めぐり型」。ひとつの宿の中に露天・内湯・展望風呂・寝湯・サウナなど多彩な浴槽を備え、館内を回遊するだけで複数の湯を楽しめる大型温泉リゾートだ。TOP30の上位はほぼこのタイプで占められる。北海道・静岡・群馬・福島に集中しているのは、こうした規模のある温泉ホテルが多いためである。

もうひとつは「外湯めぐり型」。城崎・野沢・別府・草津・黒川といった温泉街では、湯めぐりが宿の外——共同浴場や外湯をチケットで巡るかたちで成立する。この場合、湯めぐりの主役は街全体であり、個々の宿の口コミには「館内の湯の種類」として数字が乗りにくい。実際、日本有数の外湯めぐりの街である別府を擁する大分県は、湯めぐり言及が延べ18件(2施設)にとどまる。これは湯めぐり体験が乏しいのではなく、体験の舞台が館外にあるため宿単体の評価に反映されにくいという構造の表れだ。

言い換えれば、外湯めぐり文化圏の宿には、館内の湯めぐり体験や外湯券・浴衣散策といった「街ぐるみの湯めぐり」を口コミが拾える形で打ち出す伸びしろがある。秋以降の温泉需要に向けて、体験価値を言語化して伝える余地が大きい領域といえる。とりわけ訪日客にとって、貸切風呂が共同浴のハードルを下げる効果については貸切風呂が訪日客の温泉ハードルを下げるが参考になる。

「湯めぐり」「源泉掛け流し」「泉質」は別の評価軸

温泉の口コミ評価は一括りにされがちだが、実際には評価される軸が異なる。ホテルバンク編集部の解析では、「複数の湯を楽しむ体験(湯めぐり)」「源泉掛け流し」「泉質(美肌・にごり湯など)」を別タグとして切り分けている。それぞれで上位に立つ宿の顔ぶれは大きく異なる。

評価軸全国トップの宿(言及率)性格
湯めぐり(複数浴)ホテル華の湯(6.32%)/第一滝本館/駿河健康ランド館内に多彩な浴槽を持つ大型温泉リゾート
源泉掛け流し山県館(16.02%)/伊豆・大東館/檜の宿 水上山荘湯の鮮度を訴求する中小規模の温泉宿
泉質(美肌・湯質)下呂温泉 水明館(14.45%)/嬉野・華翠苑/美榛苑名湯・美肌の湯として泉質そのものが評価される宿

出典:ホテルバンク編集部調べ(NLP解析、各軸の全国上位、直近24ヶ月)

掛け流しでは山県館が言及率16.02%、泉質では美榛苑が32.38%と高い数字を出しており、これらは「湯めぐり」の上位とは別の宿だ。宿にとっては、自館の強みが「湯の種類の多さ」なのか「湯の鮮度」なのか「泉質」なのかを見極め、口コミが集まりやすい訴求軸を選ぶことが、体験価値の伝わり方を左右する。泉質そのもので選ばれる宿の顔ぶれは、『泉質』で選ばれる宿 全国ランキング2026で名湯と空白エリアを地図化している。加えて、直近3ヶ月の全国トレンドでは入浴関連の言及が総じて増加傾向(大浴場・サウナ言及がいずれも前年より上昇)にあり、湯そのものへの関心が高まっていることも追い風となる。なかでもサウナ単体で評価を集める宿の顔ぶれは、サウナで評判の宿 全国TOP30で詳しく分析している。

湯めぐり宿の価格帯 — 日帰り併設から高級旅館まで

補足として、TOP30の直近ADR(2026年6月実績月・推定成約単価)を並べると、複数浴が評価される宿の価格レンジの広さが際立つ。中央値は約¥17,300で、日帰り入浴を併設する健康ランド系(¥7,000〜¥9,000台)から、伊香保・四万・淡路の高級旅館(¥33,000〜¥39,000台)まで、実に5倍近い開きがある。「湯めぐり」は高価格帯だけの体験ではなく、リーズナブルな大型温泉宿の主力価値でもあることが分かる。

出典:メトロエンジンリサーチ(2026年6月実績月・推定成約ADR、N=28施設)

成長余地の大きいエリア

湯めぐり評価が相対的に薄いエリアは、裏を返せば体験価値を言語化して伝える余地が大きい。全国集計で言及が延べ20件を下回るエリアには、外湯めぐりの名所を抱える大分(別府)のほか、青森・京都・奈良・沖縄・広島などが並ぶ。とりわけ別府・城崎のような外湯文化圏では、前述のとおり湯めぐりの舞台が館外にあるため、宿が「街の湯めぐりの拠点」としての魅力を発信すれば、口コミに乗せられる伸びしろは大きい。

秋の紅葉シーズンは温泉需要が高まる時期であり、複数の湯を楽しめる体験は予約動機として強く働く。館内に多彩な湯を持つ宿は「湯めぐり」をプラン名や紹介文で明確に打ち出し、外湯文化圏の宿は「街ぐるみの湯めぐり」を提案することで、いずれも需要期の集客力を高める機会がある。

宿向け:このテーマに効くプラン名のヒント

旅館 × 温泉で公開されているプラン名(N=680)に多い訴求要素 ——

温泉露天 92% 2食付 28% 朝食付 24% 郷土・地物 16% 会席コース 16%

「湯めぐり」を主役にするなら、温泉露天や貸切風呂といった浴の要素を名前で具体化するのが有効です。実際の名前の例(匿名化):

  • 【天然温泉大浴場完備/手作り朝食バイキング付】1泊朝食プラン
  • 【2食付】活アワビの陶板焼きと地物の和食膳&温泉満喫プラン

※公開プラン名の集計にもとづく傾向で、命名が販売を生む因果を示すものではありません。市場×命名の深掘りは命名ベンチマーク/イベント記事をご参照ください。

⚠ 価格データに関する注意:本記事のADRは補足指標であり、直近実績月(2026年6月)の推定成約単価です。秋以降の宿泊料金は需要期に向けて変動するため、実際の予約時点の価格とは異なる点にご留意ください。

まとめ

「複数の湯を楽しむ体験」は、①館内に多彩な浴槽を持つ大型温泉リゾート(北海道・静岡・群馬・福島に集中)と、②外湯めぐり文化が根付く温泉街——という二つのかたちに分かれる。口コミの言及として数字に表れやすいのは前者だが、後者には体験価値を言語化して発信する伸びしろが大きい。湯めぐり・掛け流し・泉質はそれぞれ別の評価軸であり、自館の強みに合った訴求軸を選ぶことが、秋の温泉旅の予約獲得につながる。

参考資料・出典一覧

関連記事