1936年に竣工した横浜・海岸通の横浜郵船ビルが、全52室のホテル「THE MARITIME HOTEL YOKOHAMA BAY」として2027年1月末に開業する予定だ。延床7,163.25㎡を52室で割ると1室あたり約138㎡となり、宿泊特化型の計画ホテルの中央値(35.0㎡)の約3.9倍にあたる。本稿では、この床の大きさを婚礼・宴会・料飲の売上でどう埋めるのかを、中区の推定成約ADR・推定OCCと、国土交通省の立地データ(用途地域・浸水想定・地価・駅乗降客数)から読み解く。
本記事における指標の定義
- ADR(平均客室単価):各施設がOTA等で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。
- OCC(稼働率):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。OTA等で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります。
- LT(リードタイム):チェックイン日までの日数。本稿のブッキングカーブはLT45〜LT1の範囲のみを用いています。
- データ出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(調査時点:2026年9月29日)
結論を先に示す。52室の客室売上は、本稿の前提では年3.3億〜6.1億円のレンジに収まる。同じ延床を宿泊特化型の床効率(1室35㎡)で使った場合の客室売上の参照値は約7.0億円で、客室だけでは届かない。婚礼(年100〜200組)と料飲・一般宴会を重ねると総売上は8.1億〜15.4億円となり、客室売上の比率は約4割にとどまる。つまりこの転用は「52室のホテル」ではなく、「婚礼・料飲を主軸に客室を併設した複合施設」として読むのが実態に近い。保存と収益を両立させる設計の核心は、客室以外の床にある。
- — 1室あたり延床137.8㎡:延床7,163.25㎡を52室で割った値で、計画中ホテル(主用途ホテル単独・50室以上、N=29件)の中央値35.0㎡の約3.9倍。
- — 客室売上は年3.32億〜6.07億円:ADR2.5万〜4.0万円・通年想定OCC70〜80%の3シナリオ。同じ延床を宿泊特化型で使う参照値(約6.97億円)には届かない。
- — 総売上は8.15億〜15.36億円、うち客室は約4割:婚礼年100〜200組と料飲・一般宴会を重ねた本稿の試算で、保守シナリオでも参照値を上回る。
- — 最大の変数は婚礼件数:基準シナリオ(11.61億円)から婚礼−50組で−12.9%、ADR−10%で−3.9%、OCC−5ptで−2.6%。
- — 中区の推定成約ADRは11,600円(前年比+4.5%):2025年9月〜2026年8月平均。1.5km圏の上位5施設は2.2万〜3.3万円、推定OCCは2026年8月80.7%。
転用のファクト — 1888年から2027年までの年表と建物の諸元
日本郵船のニュースリリース(2025年5月9日)によれば、対象は横浜市中区海岸通3-9-1の横浜郵船ビルで、敷地面積5,507.14㎡、地上4階、延床面積7,163.25㎡。1936年に同社の創業50周年を記念して完成した建物で、正面に16本のコリント式列柱を持つ。工事は2025年5月7日に着工し、2026年秋に完了する予定で、設計はJPプロパティーズ、施工は岩田地崎建設、ホテル運営はPlan・Do・Seeが担う。海岸通地区の再開発(2023年〜)の一環として、歴史的・建築的・景観的な価値を残しながら内部をホテルへ転用する計画だ。
ホテルの概要は2025年12月以降に公表された。横浜市観光情報と観光経済新聞によると、名称は「THE MARITIME HOTEL YOKOHAMA BAY」、開業は2027年1月末の予定で、全52室・全室38㎡以上・7タイプの客室を持つ。客室名には日本郵船のかつての定期航路の名が付く。館内にはオールデイダイニングとバー、宴会場3室、自然光とステンドグラスを備えたチャペルを配し、婚礼の先行予約は2025年12月23日に始まっている。なお、投資額は公表されていない。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 1888年 | 日本郵船が海岸通の同地に拠点を構える(横浜市観光情報) |
| 1936年 | 現在の横浜郵船ビルが竣工(創業50周年記念、コリント式列柱16本) |
| 2003年 | ビル1階に「日本郵船歴史博物館」が移転・開館 |
| 2023年4月 | 海岸通地区の再開発に伴い博物館が休館 |
| 2025年5月7日 | ホテルへの転用工事に着工 |
| 2025年12月23日 | 婚礼の先行予約を開始 |
| 2026年秋 | 工事完了予定 |
| 2027年1月 | 隣接地の新築「横濱ビルディング」竣工予定(2階に日本郵船博物館、開館は2027年春以降) |
| 2027年1月末 | THE MARITIME HOTEL YOKOHAMA BAY 開業予定(52室) |
1室138㎡の床構成 — 客室以外の売上が要る理由
延床7,163.25㎡を52室で割ると1室あたり137.8㎡になる。比較のため、国土交通省「建築物動態統計調査」に基づく計画中ホテルのうち、主用途がホテル単独で50室以上の29件について1室あたり延床を計算すると、中央値は35.0㎡、第1四分位18.3㎡、第3四分位65.0㎡だった。横浜郵船ビルは第3四分位の2倍を超えており、一般的な新築ホテルとは床の使い方がまったく違う。
差を生んでいるのは、客室以外に割り当てられた床である。全室38㎡以上という客室の最小値で計算すると、52室の客室部分は約1,980㎡で延床の約28%にあたり、客室を広めに取っても3割台にとどまる。残りはチャペル・宴会場3室・オールデイダイニング・バー、そして列柱のある吹き抜け的な共用空間やバックヤードが占める。1936年の構造と外観を残す以上、床を細かく割って客室を増やす選択肢は限られる。だからこそ、客室以外の床に売上を持たせる設計、すなわち婚礼・宴会・料飲の事業に強い運営会社の起用が、収益計画の前提になっている。歴史的建築物を宿に変える際の建築基準法上の扱いについては、建築基準法の適用除外条例は31自治体で整理している。
この床構成は、宿泊主体のオフィス転用とは評価の物差しが異なることを意味する。オフィスからの転用を坪収益で判定する一般論(オフィス転用の分岐点ADR)では客室の密度が決め手になるが、本件では客室1室あたりの床が約4倍あるため、客室単価だけで床の費用を回収する設計にはなっていない。以下では、客室の単価と稼働の水準をまず確かめ、次に婚礼・料飲を足した場合のシナリオを置く。
中区の推定成約ADRと推定OCC — 38㎡以上の客室が入る価格帯
メトロエンジンリサーチによれば、横浜市中区の推定成約ADR(エリア中央値)は2025年9月〜2026年8月の12か月平均で11,600円だった(対象49〜52施設)。前年同期間(2024年9月〜2025年8月)の11,100円に対して+4.5%の上昇である。月別では2026年4月の14,700円が最も高く、春に単価が上がる傾向がみられる。シティホテル区分に限ると12か月平均は22,000円(対象7〜8施設)で、前年同期間比+7.2%と全体を上回る伸びを示した。
全室38㎡以上の客室が狙う価格帯は、中区の中央値ではなく上位施設の水準で見るのが妥当だ。対象地から1.5km圏で中区に立地するフルサービス型・上位施設の推定成約ADR(12か月平均)は、ハイアット リージェンシー 横浜が32,700円、1927年開業のホテルニューグランドが28,700円、2025年開業のザ・ゲートホテル横浜 by HULICが24,700円、ローズホテル横浜が22,700円、シタディーンハーバーフロント横浜が21,700円と、2万円台前半から3万円台前半に並ぶ。歴史的建造物という固有の価値と客室の広さを持つ52室は、この上位帯を基準に価格を設計できる立ち位置にある。
| 施設・区分 | 客室数 | 推定成約ADR(12か月平均) | 備考 |
|---|---|---|---|
| ハイアット リージェンシー 横浜 | 315室 | ¥32,743 | 2020年5月開業 |
| ホテルニューグランド | 238室 | ¥28,749 | 1927年開業 |
| ザ・ゲートホテル横浜 by HULIC | 111室 | ¥24,712 | 2025年2月開業 |
| ローズホテル横浜 | 184室 | ¥22,685 | 中華街エリア |
| シタディーンハーバーフロント横浜 | 242室 | ¥21,705 | 2023年開業 |
| 中区 シティホテル区分(中央値) | 7〜8施設 | ¥22,034 | エリア中央値 |
| 中区 全施設(中央値) | 49〜52施設 | ¥11,605 | エリア中央値 |
1.5km圏で推定値を算出できた41施設を客室数と推定成約ADRで並べると、2.5万円以上の6施設はいずれも146室以上の規模で、80室以下で2万円を超える施設は34室の1施設(約2.5万円)にとどまった。小規模で高単価という帯は、この商圏ではまだ薄い。52室という規模は大型ホテルの宴会・婚礼と正面から競うよりも、少人数婚礼と滞在型の宿泊を組み合わせる立ち位置と整合する。
稼働の面では、中区の推定OCCは2026年7月が78.0%(対象48施設/客室9,962室、主要予約サイト掲載ベース)、8月が80.7%(対象49施設/客室9,971室、同)だった。ビジネスホテル区分は7月84.1%・8月84.3%(対象29施設/客室5,437室、同)と高い。曜日別に見ると、8月は土曜平均が85.1%、月〜木曜平均が79.7%で、平日の出張需要と週末の観光・婚礼関連需要の両方が客室を埋めている。
予約の積み上がり方も確認しておく。2026年9月12日(土)と9月16日(水)の宿泊日について、LT45からLT1までの推定OCCの推移を比べると、土曜はLT45の50.1%からLT1の81.8%へ、水曜は47.8%から84.1%へと上がった(いずれも対象50施設/客室9,972室、主要予約サイト掲載ベース)。直前2週間で20pt前後が埋まる動きは、週末・平日で大きく変わらない。婚礼は一般に宿泊よりはるかに長いリードタイムで予約が入るため、婚礼が週末の客室を先に押さえ、直前の個人予約で平日を埋めるという2層の構造を組みやすい市場だといえる。
客室単価×稼働×婚礼件数の簡易シナリオ — 客室売上は全体の約4割
ここでは、客室・婚礼・料飲(婚礼以外のレストラン・バー・一般宴会)の3つの売上を、前提を明示した上で重ねる。投資額は公表されていないため、利回りや回収年数は算出しない。本試算は売上の構成比を把握するための簡易モデルであり、運営会社の計画値ではない。
| 項目 | A. 保守 | B. 基準 | C. 上振れ |
|---|---|---|---|
| ADR(推定成約ベース) | ¥25,000 | ¥32,000 | ¥40,000 |
| OCC(通年想定) | 70% | 75% | 80% |
| RevPAR | ¥17,500 | ¥24,000 | ¥32,000 |
| 客室売上 | 3.32億円 | 4.56億円 | 6.07億円 |
| 婚礼件数/売上 | 100組/3.00億円 | 150組/4.50億円 | 200組/6.00億円 |
| 料飲・一般宴会売上 | 1.83億円 | 2.56億円 | 3.29億円 |
| 総売上 | 8.15億円 | 11.61億円 | 15.36億円 |
| うち客室売上の比率 | 40.8% | 39.2% | 39.5% |
| 延床1㎡あたり売上 | 11.4万円 | 16.2万円 | 21.4万円 |
3つのシナリオとも、客室売上の比率は約4割で安定する。客室売上だけを見ると、上振れシナリオの6.07億円でも宿泊特化型の参照値(約6.97億円、延床1㎡あたり9.7万円)に届かない。一方で婚礼と料飲を加えると、保守シナリオでも総売上8.15億円と参照値を上回る。延床あたりの売上効率で見ても、保守11.4万円/㎡に対して参照値9.7万円/㎡であり、客室以外の床が売上を生む前提に立てば、保存建物を低層のまま使う選択は床効率の面でも十分に成り立つ。
感度も確認しておく。基準シナリオから婚礼を50組減らすと総売上は10.11億円、ADRを10%下げると11.15億円、OCCを5pt下げると11.31億円、婚礼50組減とADR10%減が重なると9.65億円となる。客室の単価・稼働の変動よりも、婚礼件数の変動のほうが総売上への影響が大きい。婚礼の販売力が、この施設の収益を最も大きく左右する変数である。なお、チャペル1室で年200組は、土日だけで賄うと1日あたり約2組のペースに相当する水準であり、上振れシナリオの婚礼件数は運営側の販売力に依存する上限値として読むのが妥当だ。
| 基準シナリオ(B)からの変化 | 総売上 | 基準比 |
|---|---|---|
| 基準シナリオ | 11.61億円 | — |
| ADR −10%(¥28,800) | 11.15億円 | −3.9% |
| OCC −5pt(70%) | 11.31億円 | −2.6% |
| 婚礼 −50組(100組) | 10.11億円 | −12.9% |
| 婚礼 −50組 かつ ADR −10% | 9.65億円 | −16.8% |
2つの変数を同時に動かした場合も確認する。OCCを通年想定75%、料飲・一般宴会を1日70万円に固定し、ADRと婚礼件数の組み合わせで総売上を並べると、婚礼が年25組増減したときの総売上の変化(0.75億円)は、ADRを1段(3,200〜4,000円)動かしたときの変化(0.46億〜0.57億円)より大きい。ADR2.5万円・婚礼100組の最も厳しい組み合わせでも総売上は9.11億円で、宿泊特化型の参照値(約6.97億円)を上回る。
| ADR\婚礼件数(年) | 100組 | 125組 | 150組 | 175組 | 200組 |
|---|---|---|---|---|---|
| ¥25,000 | 9.11 | 9.86 | 10.61 | 11.36 | 12.11 |
| ¥28,800 | 9.65 | 10.40 | 11.15 | 11.90 | 12.65 |
| ¥32,000 | 10.11 | 10.86 | 11.61 | 12.36 | 13.11 |
| ¥36,000 | 10.68 | 11.43 | 12.18 | 12.93 | 13.68 |
| ¥40,000 | 11.25 | 12.00 | 12.75 | 13.50 | 14.25 |
婚礼・宴会はホテルの非客室売上の中でも季節性が大きく、秋と春に集中する(婚礼・宴会の非客室売上と季節性)。中区の推定成約ADRが春(4月)に最も高くなる傾向とも重なるため、客室と婚礼の繁忙期が一致する点は、価格設計の面ではアップサイドになる。婚礼ゲストの宿泊を客室の需要源として取り込めれば、週末の客室単価をさらに引き上げる余地も生まれる。
立地条件 — 商業地域・容積率400%、馬車道・日本大通りの2駅徒歩圏
国土交通省 不動産情報ライブラリで対象地(海岸通3丁目9番)の都市計画情報を確認すると、用途地域は商業地域、指定建蔽率80%・指定容積率400%である。敷地5,507.14㎡に対して延床は7,163.25㎡で、延床は敷地の約1.3倍にとどまる。4階建ての保存建物は指定容積率の3分の1程度しか床を使っていない計算になり、所有者にとっては「未利用の容積」をどう評価するかが、保存と建替えを比べる際の論点になる。
| 高潮浸水想定 | 0.5m以上1m未満 |
| 津波浸水想定 | 1m以上2m未満 |
| 洪水(想定最大規模) | 区域外 |
浸水想定は、高潮で0.5m以上1m未満、津波で1m以上2m未満の区域に入る。大岡川の洪水浸水想定(想定最大規模)の区域には含まれない。港に面した海岸通の立地として、この想定深は突出したものではなく、論点は想定深そのものより、受変電設備・厨房・宴会の音響照明設備などをどの階に置くかという設備配置にある。とりわけ婚礼・宴会を主軸にする施設では、地階・1階に設備や食材の保管を集めがちなため、転用設計の段階で設備の上階配置や止水板の運用を織り込めるかが、稼働を継続させる力になる。
地価は上昇が続く。対象地に最も近い地価公示地点(横浜中5-17、対象地から約150m)は2026年1月1日時点で1㎡あたり140万円、前年比+16.7%だった。2023年の97.2万円からの3年間で約1.44倍になっている。周辺の横浜中5-19(約300m)は248万円(+18.1%)、横浜中5-2(約360m)は197万円(+12.6%)で、関内・馬車道一帯の商業地は2桁の上昇が3年続いている。
交通面では、みなとみらい線の馬車道駅(2023年の1日あたり乗降客数41,286人)と日本大通り駅(同26,788人)が徒歩圏にある。馬車道駅は2019年の41,627人に対してほぼ回復し、JR関内駅も100,954人まで戻った。1km圏の就業は事業所7,220・従業者12.7万人、うちオフィス系が31.2%を占め、平日の宿泊・会食・宴会需要の母数は厚い。
供給面では、対象地から1km圏に客室数を把握できる施設が62施設・13,358室あり、このうち60室以下の施設は13施設・413室にとどまる。1.5km圏では2025年1月以降に7施設・743室の開業を確認した。港町1丁目の旧市庁舎街区ではホテル(約280室)が2026年4月に開業し、北仲通6丁目では共同住宅併設のホテル272室が2027年5月の完成を予定している。大型・新築の供給が続く中で、52室の歴史的建造物は規模でも性格でも重ならない位置にある。
歴史的建造物を持つ所有者への示唆 — 保存と収益を両立させる3つの条件
① 客室以外の床に売上を持たせる
1室あたり延床が新築の約4倍になる建物では、客室売上は総売上の約4割にとどまる。婚礼・宴会・料飲の運営力を持つ事業者の起用が、保存転用の収益計画の起点になる。
② 小規模×高単価の空き帯を狙う
対象地1.5km圏では、80室以下で推定成約ADR2万円を超える施設は1施設にとどまる。大型ホテルと規模で競わず、少人数婚礼と滞在型の宿泊を組み合わせる立ち位置が取れる。
③ 未利用容積と設備配置を評価に入れる
延床は敷地の約1.3倍で、指定容積率400%に対して余力を残す。保存を選ぶ価値を比較するときは、未利用容積の扱いと、浸水想定に応じた設備配置のコストを同じ表に載せる。
横浜郵船ビルの転用は、築90年の建物を「客室を詰めて稼ぐ」のではなく「床の広さを婚礼と料飲で稼ぐ」形でホテルに変える事例である。中区の推定成約ADRは12か月平均11,600円と前年比+4.5%で推移し、上位施設は2万円台前半〜3万円台前半の単価を実現している。この市場環境の中で、52室・全室38㎡以上の客室と、列柱を持つ歴史的空間での婚礼を組み合わせる設計は、保存と収益を両立させる一つの型を示す。
築古・歴史的建造物を保有する事業会社や不動産会社にとっては、転用の可否を客室単価だけで判断しないことが出発点になる。延床のうち何割を客室以外に充てるのか、その床を誰がどの事業で埋めるのかを先に決め、その上で客室単価と稼働を置く順番で収支を組み立てると、保存建物の価値を収益に変える道筋が見えやすくなる。地銀の不動産ファイナンスの観点でも、客室RevPARだけでなく婚礼件数の感度を審査の軸に加えることで、この種の案件の評価精度を高められるだろう。
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参考資料・出典一覧
■ データソース
推定成約ADR・推定OCC・ブッキングカーブ・周辺供給はメトロエンジンリサーチ&コンサルティング(中区・各月49〜52施設、1.5km圏41施設、調査時点2026年9月29日)。建物諸元・開業計画は日本郵船のニュースリリースと横浜市観光情報・観光経済新聞、立地条件は国土交通省 不動産情報ライブラリ、計画ホテルの延床・客室数は国土交通省「建築物動態統計調査」による。
■ 試算前提
客室売上=52室×ADR×OCC×365日(ADRは2.5万・3.2万・4.0万円、OCCは通年の想定値として70%・75%・80%)。婚礼は1組あたり施設売上300万円×年100〜200組、料飲・一般宴会は1日50万〜90万円と仮定した。投資額が公表されていないため、利回り・回収年数・NOIは算出していない。
■ 限界・留意点
推定成約ADR・推定OCCはOTA等の掲載在庫に基づく推定値で、各施設の実績値とは異なる。52室の客室単価・婚礼件数・料飲売上は運営会社の計画値ではなく本稿の仮定であり、婚礼単価は首都圏平均からの推計のため施設の価格帯によって上下する。計画中ホテルとの比較は確認申請ベースで、今後の申請追加により分布は変わりうる。
■ 市場データ
- メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — 推定成約ADR(中区・各月49〜55施設、1.5km圏41施設)、推定OCC(中区49施設/9,971室ほか、主要予約サイト掲載ベース)、ブッキングカーブ(LT45〜LT1)、周辺供給
■ 政府統計・公的データ
- 国土交通省 不動産情報ライブラリ — 用途地域、地価公示(2023〜2026年)、高潮・津波・洪水浸水想定区域、駅別乗降客数
- 国土交通省「建築物動態統計調査」(計画中ホテルの延床・客室数)
- 総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査(2021)」(e-Stat)
■ 事業者・業界資料
- 日本郵船「横浜郵船ビルのホテルへのコンバージョン工事着工について」(2025年5月9日)
- 日本郵船「『日本郵船博物館』来年春にリニューアルオープン」(2026年4月6日)
- リクルート「ゼクシィ結婚トレンド調査2024 首都圏」
- ゼクシィ「結婚式のお金 全国エリア別相場」
- 日本ハイアット 株式会社「報道資料 2026年4月」
■ ニュース・観光情報
