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欧米豪の宿泊が伸びた県2026上半期|長崎+65%、単価に乗ったのは北海道・宮城

投稿日 : 2026.10.04

長崎県

愛媛県

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北海道

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インバウンド

欧米豪の宿泊が伸びた県2026上半期|長崎+65%、単価に乗ったのは北海道・宮城

欧米豪8か国(米国・カナダ・英国・ドイツ・フランス・イタリア・スペイン・オーストラリア)の2026年1〜6月の延べ宿泊者数は、観光庁「宿泊旅行統計調査」(2026年6月分第2次速報、2026年8月31日公表)で全国1,975万人泊、前年同期比+0.5%だった。訪日外国人全体の延べ宿泊が−6.7%と落ち込むなかで横ばいを保ち、外国人延べ宿泊に占める欧米豪の比率は25.0%から27.0%へ上がっている。県別にみると伸び方の差は大きく、長崎県+65.4%、愛媛県+55.2%、鹿児島県+43.8%と地方で大きく伸びた。本稿では、この伸びが宿泊単価(推定成約ADR)に乗った県はどこか、そして秋(10〜11月)の在庫進捗と連泊需要の受け皿がどうなっているかを、県ごとに整理する。

本記事における指標の定義

  • 欧米豪:米国・カナダ・英国・ドイツ・フランス・イタリア・スペイン・オーストラリアの8か国。観光庁「宿泊旅行統計調査」参考第1表(国籍(出身地)別外国人延べ宿泊者数、客室数20室以上の施設)の8区分を合算した。
  • ADR(平均客室単価):各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。
  • OCC(稼働率):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値、REIT月次公表値との整合性検証で概ね数pt 程度の精度を確認済)。本稿では「稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)」と表記する。
  • LT(リードタイム):宿泊日までの日数。LT30=宿泊日の30日前の時点。
  • 掲載価格:2名1室利用時の1室あたり料金(税込)・全プラン平均。
  • 言及率:宿泊者口コミのうち、該当する話題(コインランドリー、英語・多言語での対応)に触れた口コミの割合。
  • データ出典:観光庁、日本政府観光局(JNTO)、メトロエンジンリサーチ
Key Takeaways
  • — +0.5% — 欧米豪8か国の延べ宿泊者数は2026年1〜6月に全国1,975万人泊で横ばい。訪日外客数(+6.5%)ほどは伸びなかったが、外国人延べ宿泊に占める比率は25.0%から27.0%へ上がった
  • — 長崎+65.4%・愛媛+55.2%・鹿児島+43.8% — 県別の伸び率は地方が上位。増加数では北海道が+16.5万人泊と他県を大きく引き離す
  • — 6道県 — 上半期の推定成約ADRの前年同期比が47都道府県中央値(+3.8%)を上回ったのは宮城+8.9%・北海道+8.6%など6道県。伸び率首位の長崎は+2.5%にとどまる
  • — 10月LT30 — 在庫進捗は北海道72.1%・長崎71.7%が中央値68.3%を上回る。長崎は掲載価格の伸びが中央値を下回り、在庫の消化が単価に先行している
  • — 平均10.7〜16.5泊 — 欧米豪は観光・レジャー目的の平均泊数が全体(7.1泊)を大きく上回り、英語口コミでのコインランドリー言及率4.01%は全体の約2倍。連泊条件の発信が単価を守る手段になる

訪日は+6.5%、延べ宿泊は+0.5% — 欧米豪8か国の上半期

まず、テーマの前提となる「上半期の欧米豪+6.7%」を一次資料で確かめておきたい。日本政府観光局(JNTO)の「訪日外客数(2026年6月推計値)」によると、2026年1〜6月の訪日外客数は8か国合計で375.1万人となり、前年同期の352.2万人から+6.5%増えた。北欧地域(スウェーデン・デンマーク・ノルウェー・フィンランド)を加えた9市場では386.0万人・+6.7%となり、+6.7%という水準はこの範囲で再現できる。訪日外客数の総数が2,108.5万人・−2.0%だったことを踏まえると、欧米豪は全体を上回るペースで伸びたといえる。

一方、同じ期間の延べ宿泊者数(客室数20室以上の施設)は8か国合計で+0.5%にとどまった。国籍別では、カナダ(訪日+8.2%・延べ宿泊+8.8%)やスペイン(+7.9%・+5.4%)、ドイツ(+7.5%・+5.0%)が両指標とも伸びた一方、最大市場の米国は訪日+7.1%に対し延べ宿泊は−0.1%と横ばいだった。訪日外客数は「入国した人数」、延べ宿泊者数は「統計対象施設に泊まった人泊」であり、1人あたり泊数の変化、客室数20室未満の施設や統計対象外の宿泊先への分散、速報値と確定値の比較といった要因で両者はずれる。したがって本稿では、宿泊施設の実務に直結する延べ宿泊者数を主軸に置き、訪日外客数は市場全体の勢いを確かめる補助線として用いる。訪日客数が伸びても延べ宿泊者数が伸びにくい構造については、訪日客は過去最高でも延べ宿泊者数は減少 — 1人あたり3.96泊とADRの二極化で詳しく分析している。

出典:日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数(2026年6月推計値)」、観光庁「宿泊旅行統計調査」2026年1〜6月分(第2次速報)・2025年(確定値)参考第1表よりホテルバンク編集部作成。延べ宿泊は客室数20室以上の施設。

欧米豪の延べ宿泊が伸びた県 上位10 — 長崎+65%・愛媛+55%・鹿児島+44%

都道府県別に1〜6月の欧米豪延べ宿泊を前年同期と比べると、伸び率の上位には九州・四国・東北の県が並ぶ。ただし、宿泊旅行統計の国籍別・県別の値は標本調査の拡大推計であり、規模の小さい県では標準誤差率30%以上を示す「*」付きの値が多く含まれる。本稿では、前年同期の欧米豪延べ宿泊が2万人泊以上で、かつ集計に使った96セル(8か国×6か月×2年)のうち「*」付きが20セル以下の県に絞って順位を付けた。この条件で除いた県には、伸び率そのものは大きい群馬県(+52.3%、*33セル)や茨城県(+70.0%、*59セル)が含まれる。

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」2026年1〜6月分(第2次速報)・2025年(確定値)参考第1表よりホテルバンク編集部作成。客室数20室以上の施設。

表1 欧米豪8か国の延べ宿泊が伸びた県 上位10(2026年1〜6月・前年同期比)
都道府県2026年1〜6月
(人泊)
2025年1〜6月
(人泊)
前年同期比増加数全宿泊に
占める比率
*付き
セル数
長崎県60,49036,570+65.4%+23,9201.9%6/96
愛媛県32,60021,010+55.2%+11,5901.4%12/96
鹿児島県50,12034,850+43.8%+15,2701.5%1/96
山梨県178,300130,620+36.5%+47,6805.2%7/96
岩手県40,21030,510+31.8%+9,7001.7%11/96
北海道800,120635,440+25.9%+164,6804.3%0/96
青森県44,38036,250+22.4%+8,1301.9%4/96
新潟県69,65057,540+21.0%+12,1101.7%16/96
宮城県56,54048,270+17.1%+8,2701.2%0/96
大分県41,95035,930+16.8%+6,0201.5%18/96

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」参考第1表・参考第14表よりホテルバンク編集部作成。「全宿泊に占める比率」は2026年1〜6月の延べ宿泊者数(日本人を含む、客室数20室以上の施設)に対する欧米豪8か国の比率。*付きは標準誤差率30%以上の推定値。

実数でみると、北海道は80.0万人泊・+16.5万人泊と増加数で他県を大きく引き離している。これに次ぐのが山梨県(+4.8万人泊)で、長崎県(+2.4万人泊)、鹿児島県(+1.5万人泊)が続く。伸び率上位の県は母数が小さいため、率の大きさがそのまま客室需要の厚みを意味するわけではない点に留意したい。実際、全宿泊(日本人を含む)に占める欧米豪の比率は、北海道4.3%・山梨県5.2%を除けば1〜2%台にとどまる。東京都(20.5%)や京都府(23.0%)と比べると、地方の多くの県では欧米豪はまだ「量」ではなく「伸び」で語る段階の市場であり、この比率の低さはそのまま今後の伸びしろでもある。

単価に乗った県 — 上半期の推定成約ADRが全国中央値を上回ったのは6道県

では、欧米豪の伸びは宿泊単価に反映されたのか。メトロエンジンリサーチの推定成約ADRを、統計と同じ1〜6月で前年同期と比べた。47都道府県の前年同期比の中央値は+3.8%である。上位10県のうち、これを上回ったのは宮城県(+8.9%)、北海道(+8.6%)、新潟県(+5.7%)、青森県(+5.5%)、大分県(+5.4%)、愛媛県(+5.1%)の6道県だった。北海道の推定成約ADRは1〜6月平均で¥9,600(前年同期¥8,800)、宮城県は¥9,100(同¥8,400)と、いずれも全国中央値の倍以上のペースで上がっている。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成。推定成約ADRの2026年1〜6月平均と2025年1〜6月平均の比較(検証済み履歴基準)。点線は47都道府県の中央値(+3.8%)。

反対に、欧米豪の伸び率が最も大きかった長崎県(+65.4%)の推定成約ADRは+2.5%、鹿児島県・山梨県・岩手県は+3.6〜3.7%と、全国中央値前後にとどまった。前述のとおり、これらの県では欧米豪が全宿泊の1〜2%程度(山梨県は5.2%)であり、県全体の単価中央値を押し上げるほどの量にはまだ届いていない。言い換えれば、欧米豪の伸びを単価に乗せる余地が、県平均の数字には表れていない形で残っているということだ。欧米豪が泊まる施設・エリアは県内でも偏りがあるため、単価への転化は「県全体」ではなく、受け入れている施設の価格設計から始まると考えられる。

なお、単価の上昇には欧米豪以外の要因も重なっている。宿泊単価は国内客の需要、アジア市場の動向、コスト転嫁などの影響を同時に受けるため、この比較は「欧米豪の伸びと単価の伸びが同時に観測された県」を示すものであり、因果関係を示すものではない。

秋のフォワード在庫 — 10月はLT30で北海道72.1%・長崎71.7%が全国中央値を上回る

次に、2026年10〜11月の在庫進捗をブッキングカーブで確認する。10月は1〜27日の宿泊日についてLT30時点の稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)を比べた。47都道府県の中央値は68.3%で、上位10県のうち青森県(88.9%)、北海道(72.1%)、長崎県(71.7%)、岩手県(70.0%)、宮城県(68.9%)がこれを上回る。青森県の突出には、10月10〜20日に本会期を迎える「青の煌めきあおもり国スポ」(第80回国民スポーツ大会)の需要が重なっており、欧米豪の伸びとは切り分けて読む必要がある。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成。2026年10月宿泊分のブッキングカーブ(LT45は10月1〜31日の31日分、LT30は10月1〜27日の27日分の平均)。対象は総客室の30%以上をOTAに掲載する施設の固定コホート(10県合計で3,275施設/客室155,446室、47都道府県合計で15,685施設/客室823,989室)。点線は47都道府県の中央値(LT30:68.3%)。

表2 上位10県の2026年10〜11月の在庫進捗と掲載価格の前年同月比(2026年9月28日時点)
都道府県対象(10月)10月
LT45
10月
LT30
11月1〜11日
LT45
掲載価格
10月 前年比
掲載価格
11月 前年比
長崎県266施設/11,507室68.3%71.7%68.7%+7.1%+1.9%
愛媛県188施設/9,195室62.8%67.8%59.0%+10.4%+7.8%
鹿児島県372施設/12,066室33.7%40.3%36.7%+8.0%+6.9%
山梨県401施設/10,340室60.5%65.5%60.3%+11.0%+16.0%
岩手県185施設/10,230室63.7%70.0%61.2%+12.1%+9.3%
北海道803施設/56,084室67.0%72.1%60.3%+11.1%+13.1%
青森県104施設/7,467室85.4%88.9%66.1%+35.9%+9.6%
新潟県288施設/13,431室61.4%66.2%57.7%+8.6%+10.0%
宮城県209施設/14,314室62.3%68.9%67.6%+7.5%+4.8%
大分県459施設/10,812室60.2%65.7%63.6%+7.6%+7.5%
47都道府県中央値—62.5%68.3%60.3%+9.8%+9.6%

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成。稼働率はOTA掲載在庫ベースの推定値(対象=総客室の30%以上をOTAに掲載する施設の固定コホート、主要予約サイト掲載ベース)。11月は1〜11日宿泊分のみLT45を観測済み(観測途中)。掲載価格は2名1室・税込・全プラン平均で、2026年分は調査時点(9月28日)の掲載水準、2025年分は実績期間の掲載水準。青字は47都道府県中央値を上回る県。

単価のフォワード(先行き)はどうか。推定成約ADRは、未来月が調査時点の掲載スナップショット、過去月が検証済みの履歴という別々の基準で算出されるため、10〜11月を前年同月と直接比べると基準差が混ざる。そこで表では、同じ条件で比べられる掲載価格(全プラン平均)の前年同月比を参考として示し、47都道府県の中央値(10月+9.8%、11月+9.6%)との相対で読む。中央値自体にも「先の日程ほど高めに掲載される」傾向が含まれるため、絶対値ではなく中央値との差に意味がある。

この物差しで中央値を10月・11月とも上回るのは、北海道(+11.1%・+13.1%)、山梨県(+11.0%・+16.0%)、青森県(+35.9%・+9.6%)の3道県である。北海道は上半期の推定成約ADRでも+8.6%と上位にあり、在庫の進み(10月LT30で72.1%)とあわせて、需要の伸びが単価と稼働の両方に表れている県と整理できる。山梨県は10月の在庫進捗こそ65.5%と中央値をやや下回るが、11月の掲載価格が+16.0%と高く、紅葉期に向けて単価を先に引き上げる動きが見える。長崎県は10月の在庫進捗が71.7%と上位にある一方、掲載価格の伸びは10月+7.1%・11月+1.9%と中央値を下回っており、在庫の消化が単価に先行している。ここは値付けで取り込める余地が最も分かりやすく残っている県といえる。

鹿児島県は10月LT30の稼働率が40.3%と、47都道府県のなかでも残室の多い状態にある。欧米豪の延べ宿泊は+43.8%と伸びており、秋以降も受け入れ余地の大きい県として位置づけられる。11月の値はいずれも1〜11日宿泊分のLT45時点の途中経過であり、今後の予約で変わる点に留意されたい。

県別の整理 — 「単価と稼働に表れた県」と「在庫が先行する県」

ここまでの3つの物差し(上半期の推定成約ADR、10月の在庫進捗、秋の掲載価格)を県ごとに並べると、欧米豪の伸びがどの段階まで転化しているかによって、次のように整理できる。

表3 欧米豪の伸びがどの段階まで転化しているか — 県別の整理
段階県根拠
単価と稼働の両方に表れている北海道・宮城県上半期ADRが+8.6%・+8.9%と上位。10月LT30の在庫進捗も中央値超。受け入れ体制が整った状態での価格維持と、閑散日の連泊需要の取り込みが次の焦点。
単価に表れ、秋はイベントが重なる青森県上半期ADR+5.5%。10月は国スポ需要で在庫進捗88.9%・掲載価格+35.9%。イベント後の10月下旬〜11月に欧米豪の紅葉需要をどう受けるかが焦点。
単価に表れ、秋の在庫は伸びしろ新潟県・大分県・愛媛県上半期ADRは+5.1〜5.7%と中央値超。10月LT30は65.7〜67.8%と中央値付近で、秋の在庫にはまだ受け入れ余地がある。
単価を先に引き上げている山梨県上半期ADRは+3.6%だが、11月の掲載価格は+16.0%と10県で最も高い。欧米豪比率5.2%と地方で最も厚い市場を持つ。
在庫の消化が単価に先行長崎県・岩手県欧米豪+65.4%・+31.8%、10月LT30は71.7%・70.0%と中央値超。上半期ADRは+2.5%・+3.6%で、値付けで取り込める余地が大きい。
受け入れ余地が大きい鹿児島県欧米豪+43.8%。10月LT30は40.3%と残室が多く、連泊・周遊の受け皿としてのポテンシャルが大きい。

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」、メトロエンジンリサーチよりホテルバンク編集部作成。

欧米豪は平均10泊以上・個別手配9割 — 連泊需要を受けられる宿が単価を守る

欧米豪がなぜ単価と稼働の両面で効く市場なのかは、滞在の長さに表れている。観光庁「インバウンド消費動向調査 2025年 年次報告書」によると、観光・レジャー目的の訪日外国人の平均泊数は全体で7.1泊だった。これに対し、フランス16.5泊、ドイツ15.2泊、イタリア13.4泊、オーストラリア13.2泊、スペイン13.1泊、英国12.8泊、カナダ12.5泊、米国10.7泊と、欧米豪8か国はいずれも10泊を超える。滞在日数14日間以上の割合も、ドイツ67.1%、フランス67.4%、スペイン・オーストラリア55.3%、英国52.2%と5割を超えている。

出典:観光庁「インバウンド消費動向調査 2025年 年次報告書」図表1-12(観光・レジャー目的の平均泊数)よりホテルバンク編集部作成。点線は全国籍・地域の平均(7.1泊)。

旅行の手配方法でも欧米豪は個人手配が中心である。同報告書(全目的)で航空券や宿泊を個別に手配した旅行者の比率は、カナダ95.5%、ドイツ94.7%、米国94.4%、フランス92.5%、英国91.9%、オーストラリア88.4%で、全国籍・地域の87.2%を上回る。団体ツアーの行程に組み込まれるのではなく、旅行者自身が宿を比べて選ぶ市場であるため、口コミに表れる「連泊しやすさ」「言葉の通じやすさ」が選ばれる理由になりやすい。1か所に数泊する旅程が多ければ、1泊あたりの単価だけでなく、滞在全体の売上と清掃・リネン回数の効率も変わってくる。訪日客の平均泊数が都道府県でどれだけ違うかは、訪日客の平均泊数、都道府県で2.0倍差が県別に掘り下げている。

連泊を受ける条件 — コインランドリーと英語対応の言及率を県別に見る

連泊需要を受ける条件として、ここではコインランドリー(館内の洗濯設備)と、英語・多言語での対応の2点を取り上げる。ホテルバンク編集部が集計した宿泊者口コミ852万7,120件(2024年10月〜2026年9月の期間)を分析すると、口コミ全体に占める言及率は、コインランドリーが2.04%、英語・多言語での対応が1.12%だった。英語で書かれた口コミ(115万9,873件)に限ると、それぞれ4.01%、2.60%と約2倍に上がる。欧米豪の旅行者にとって、洗濯設備と言葉の通じやすさが滞在評価の話題になりやすいことがうかがえる。

表4 連泊条件に関する口コミ言及率(2024年10月〜2026年9月、全言語・英語)
都道府県口コミ件数
(全言語)
コイン
ランドリー
英語・
多言語対応
口コミ件数
(英語)
コイン
ランドリー
英語・
多言語対応
長崎県103,6671.84%0.63%6,4363.92%2.53%
愛媛県79,0911.72%0.78%4,5103.06%3.10%
鹿児島県98,2182.68%0.60%4,8684.29%3.16%
山梨県165,1100.98%1.34%27,4471.68%2.44%
岩手県72,1301.13%0.37%2,4362.71%2.63%
北海道555,8152.16%1.13%53,8693.69%2.72%
青森県62,9231.39%0.64%3,5312.89%3.20%
新潟県116,2541.17%0.58%5,2762.39%3.15%
宮城県145,0191.14%0.52%5,6563.18%3.36%
大分県137,4720.97%1.20%9,0352.10%3.80%
全国8,527,1202.04%1.12%1,159,8734.01%2.60%

出典:ホテルバンク編集部調べ(宿泊者口コミの話題分析、2024年10月〜2026年9月、N=8,527,120件)。言及率は口コミ件数に対する該当話題の言及件数の割合。「英語・多言語対応」はスタッフの英語対応または多言語対応に触れた口コミ。青字は全国値を上回る県。

全言語の口コミでコインランドリーの言及率が全国(2.04%)を上回るのは、鹿児島県(2.68%)と北海道(2.16%)である。英語の口コミに限ると、鹿児島県(4.29%)が全国(4.01%)を上回り、長崎県(3.92%)もほぼ全国並みとなる。英語・多言語対応では、英語の口コミで大分県3.80%、宮城県3.36%、青森県3.20%、鹿児島県3.16%、新潟県3.15%、愛媛県3.10%、北海道2.72%、岩手県2.63%と、10県中8県が全国(2.60%)を上回る。欧米豪の伸び率が大きい県で、英語の口コミが言葉の対応に触れる割合が高いことは、受け入れの手応えが口コミにも表れ始めているサインといえる。

他方、山梨県は英語の口コミが2万7,447件と10県で北海道に次いで多いものの、コインランドリーの言及率は1.68%と全国を下回る。富士山麓の短期周遊型の旅程が多いことが背景にあると考えられ、連泊客向けの設備を打ち出せば、滞在を1泊延ばす提案の余地がある。大分県も英語口コミでのコインランドリー言及率は2.10%にとどまっており、温泉地での長期滞在需要を受ける設備面の伸びしろが見て取れる。

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まとめ — 伸びた県ほど、単価に乗せる余地が残っている

2026年1〜6月の欧米豪8か国の延べ宿泊者数は全国で+0.5%と横ばいながら、長崎県+65.4%、愛媛県+55.2%、鹿児島県+43.8%、山梨県+36.5%、岩手県+31.8%、北海道+25.9%と、地方で大きく伸びた。この伸びが推定成約ADRに表れたのは、北海道(+8.6%)・宮城県(+8.9%)を筆頭とする6道県で、長崎県・岩手県・鹿児島県・山梨県は全国中央値(+3.8%)前後にとどまった。欧米豪は全宿泊の1〜5%にすぎない県が多く、単価への転化は県全体ではなく、受け入れている施設の値付けから始まる段階にある。

秋のフォワードでは、北海道が在庫進捗(10月LT30で72.1%)と掲載価格(10月+11.1%・11月+13.1%)の両方で全国中央値を上回り、長崎県は在庫の消化が単価に先行している。欧米豪は平均10泊を超え、9割前後が個人手配で宿を選ぶ市場である。連泊プランの設計、コインランドリーや英語対応といった滞在条件の発信は、伸びた需要を「泊数」と「単価」の両方で受け止めるための具体的な手段になるだろう。7〜9月分の国籍別・県別の公表(第2次速報)を待って、秋の実績とあわせて再点検したい(7月の外国人延べ宿泊全体の動きは7月の外国人延べ宿泊−4.6%、減少の93%は中国を参照)。

⚠ 将来日程のデータに関する注意:本記事の2026年10〜11月の稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)と掲載価格は、調査時点(2026年9月28日)にOTAに公開されている在庫と販売価格に基づく推定であり、宿泊日に近づくにつれて変動します。稼働率はOTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります。宿泊日の45日超前の観測は使用していません。

集計方法と注記

延べ宿泊者数は観光庁「宿泊旅行統計調査」の参考第1表(施設所在地・国籍(出身地)別外国人延べ宿泊者数、客室数20室以上の施設)を用いた。2026年1〜6月は各月の第2次速報値(6月分は2026年8月31日公表)、2025年1〜6月は年の確定値であり、速報値は今後改定される可能性がある。2026年の推計は令和8年1月1日現在の施設を母集団としている。7月分は第1次速報のみの公表で国籍別・県別の表が含まれないため、本稿は1〜6月で集計した。県別の順位は、前年同期の欧米豪延べ宿泊が2万人泊以上、かつ「*」付き(標準誤差率30%以上)のセルが96セル中20以下の県を対象とした。推定成約ADRの県別対象施設数は各月178〜949施設(青森県178〜190施設、北海道885〜949施設)。稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)は、総客室の30%以上をOTAに掲載する施設で構成した固定コホートで算出しており、掲載外の客室を消化済み側に数えるため実稼働率より高めに出る。口コミの言及率は宿泊者口コミの話題分析にもとづく割合で、評価点ではない。

よくある質問

Q. 2026年上半期、欧米豪の宿泊はどれくらい伸びたのですか?

観光庁「宿泊旅行統計調査」(2026年6月分第2次速報)では、欧米豪8か国の2026年1〜6月の延べ宿泊者数は全国1,975万人泊、前年同期比+0.5%でした。同じ期間の訪日外客数(JNTO推計値)は8か国で+6.5%、北欧4か国を加えると+6.7%です。訪日外国人全体の延べ宿泊が−6.7%のなかで横ばいを保ち、外国人延べ宿泊に占める欧米豪の比率は25.0%から27.0%へ上がりました。

Q. 欧米豪の延べ宿泊が最も伸びた県はどこですか?

前年同期の欧米豪延べ宿泊が2万人泊以上で、標準誤差率30%以上の「*」付きセルが96セル中20以下の県に絞ると、長崎県+65.4%、愛媛県+55.2%、鹿児島県+43.8%、山梨県+36.5%、岩手県+31.8%の順です。実数の増加では北海道が+16.5万人泊(80.0万人泊)と突出しています。

Q. 欧米豪の伸びが宿泊単価に乗った県はどこですか?

推定成約ADRの2026年1〜6月の前年同期比が47都道府県中央値(+3.8%)を上回ったのは、宮城県+8.9%、北海道+8.6%、新潟県+5.7%、青森県+5.5%、大分県+5.4%、愛媛県+5.1%の6道県です。伸び率首位の長崎県は+2.5%でした。単価には国内客やコストなど他の要因も重なるため、この比較は同時に観測された動きを示すもので、因果関係を示すものではありません。

Q. 2026年秋の在庫の進み具合はどうですか?

10月1〜27日宿泊分のLT30時点で、稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)の47都道府県中央値は68.3%です。上位10県では青森県88.9%(国スポ期間)、北海道72.1%、長崎県71.7%、岩手県70.0%、宮城県68.9%が中央値を上回り、鹿児島県は40.3%と残室が多い状態です。いずれも2026年9月28日時点の途中経過で、今後の予約で変わります。

Q. 欧米豪の連泊需要を受けるには何が効きますか?

観光庁「インバウンド消費動向調査 2025年 年次報告書」では、観光・レジャー目的の平均泊数は全体7.1泊に対し欧米豪8か国は10.7〜16.5泊で、個別手配の比率も9割前後です。宿泊者口コミ(N=8,527,120件)では、英語の口コミに限るとコインランドリーの言及率が4.01%(全体2.04%)、英語・多言語対応が2.60%(同1.12%)と約2倍に上がります。洗濯設備や言語対応といった滞在条件をプラン名や施設案内で明示することが、泊数と単価の両方を受け止める手段になります。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

観光庁「宿泊旅行統計調査」参考第1表・参考第14表(2026年1〜6月は各月の第2次速報、2025年は年の確定値、客室数20室以上の施設)、日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数(2026年6月推計値)」、観光庁「インバウンド消費動向調査 2025年 年次報告書」、メトロエンジンリサーチの推定成約ADR(47都道府県、県別に各月178〜949施設)・ブッキングカーブ(固定コホート、47都道府県で15,685施設/823,989室)・掲載価格、ホテルバンク編集部による宿泊者口コミの話題分析(2024年10月〜2026年9月、N=8,527,120件)。

■ 試算前提

欧米豪は米国・カナダ・英国・ドイツ・フランス・イタリア・スペイン・オーストラリアの8か国を合算。県別順位は前年同期の欧米豪延べ宿泊が2万人泊以上、かつ「*」付きセルが96セル中20以下の県に限定。単価は推定成約ADRの1〜6月平均を前年同期と比べ、47都道府県の中央値(+3.8%)との相対で読む。10月の在庫進捗は10月1〜27日宿泊分のLT30平均、11月は1〜11日宿泊分のLT45。秋の単価は基準をそろえるため掲載価格(2名1室・税込・全プラン平均)の前年同月比を用い、中央値(10月+9.8%、11月+9.6%)との差で評価した。

■ 限界・留意点

2026年の延べ宿泊者数は速報値で、確定値で改定されうる。国籍別・県別の値は標本調査の拡大推計で、規模の小さい県ほど誤差が大きい。単価の上昇には国内客・アジア市場・コスト転嫁などの要因も重なり、欧米豪の伸びとの因果関係は示さない。稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)は掲載外の客室を消化済み側に数えるため実稼働率より高めに出る。10〜11月の値は2026年9月28日時点の途中経過で、宿泊日までに変動する。

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