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ハイアット新ブランド「吾汝 Atona」5拠点の単価地図 — 箱根2.6万円・屋久島1.2万円、2028年以降

投稿日 : 2026.09.29

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投資・開発

ハイアット新ブランド「吾汝 Atona」5拠点の単価地図 — 箱根2.6万円・屋久島1.2万円、2028年以降

ハイアットが日本で展開する新ブランド「吾汝 Atona」は、2028年以降の開業に向けて北海道・余市、神奈川・箱根、大分・由布、鹿児島・屋久島、大分・久住の5拠点が発表されている。いずれも大都市ではなく、温泉と自然を背景に持つ地方の観光地だ。開業までなお数年あり、所在地の詳細も客室数も公表されていない。では、この5つの土地は現在どのくらいの単価水準にあるのか。メトロエンジンリサーチ&コンサルティングのデータで、5拠点が属する市町村の宿泊単価を実測し、単価地図として並べた。

本記事における指標の定義

  • ADR(平均客室単価):各施設がOTA等で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。
  • 掲載価格:素泊まりから食事付きまでを含む全プランの平均価格(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)のエリア中央値。推定成約ADRとは基準が異なるため、両者を直接引き算しないでください。
  • 集計期間:2025年9月〜2026年8月の確定12ヶ月。Nは「推定成約ADRを算出できた施設数/当該市町村の掲載施設数」。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング
Key Takeaways
  • — 3.32倍の開き — 5拠点が属する市町村の推定成約ADRは箱根町26,385円から余市町7,955円まで(2025年9月〜2026年8月の確定12ヶ月平均)。
  • — 旅館業態で比べると差は1.08倍 — 箱根町25,646円・由布市23,691円。業態を揃えると上位2拠点はほぼ同水準にある。
  • — 供給の伸びは単価と逆順 — 余市町は掲載施設が2年で6→15施設(+150%)。箱根町+32%、竹田市+6%と続く。
  • — 効くのは単価より「建てにくさ」 — 5拠点すべてが自然公園の区域を抱え、由布市は条例により直近10年の新規開業が最大45室。
  • — 周辺相場の3〜5倍を取りにいく前提での想定単価レンジと、想定ADR×通年OCCの2軸感度を設例として掲載した。

確定しているのは「5拠点・2028年以降・30〜50室規模」まで

日本ハイアット株式会社の報道資料(2026年4月)によれば、国内で運営中のホテルは9ブランド・22ホテル・計5,066室。これに加えて、2025年9月時点で10ホテルの新規開業が発表されている。その10件のうち半数にあたる5件が「吾汝 Atona」である。

報道資料の記載は簡潔だ。5拠点はいずれも施設名が「(仮称)」、開業予定は「2028年以降」、客室数は「未定」と書かれている。さらに、同資料が列挙するハイアットのブランドポートフォリオ(6カテゴリ・36ブランド)に Atona の名はない。つまり Atona は既存ブランドの日本展開ではなく、日本発の新規ブランドとして立ち上がる位置づけになる。日本ハイアット代表取締役の坂村政彦氏が株式会社 Atona の共同代表を兼ねている点も、同資料に明記されている。

一方、ブランド発表時の公開情報では、Atona は温泉と地域文化に特化した小規模ラグジュアリー施設として1拠点あたり30〜50室程度が想定されており、開発パートナーとしてKiraku社の名が挙がっている。またブランドに先行する飲食店「割烹 吾汝」が2026年秋に京都・祇園白川に開業予定とされる。ただし、これらは拠点ごとの確定値ではない。本稿では拠点別の客室数・投資額・運営形態を推測せず、「その土地の現在の単価水準」だけを扱う。

表1:吾汝 Atona 5拠点の開業計画(日本ハイアット 株式会社「報道資料 2026年4月」より作成)
拠点(報道資料の表記)エリア所在市町村開業予定客室数
吾汝 Atona 余市(仮称)北海道余市町2028年以降未定
吾汝 Atona 箱根(仮称)関東箱根町2028年以降未定
吾汝 Atona 由布(仮称)九州由布市2028年以降未定
吾汝 Atona 屋久島(仮称)九州屋久島町2028年以降未定
吾汝 Atona 久住(仮称)九州竹田市2028年以降未定

出典:日本ハイアット 株式会社「報道資料 2026年4月」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(所在市町村は拠点名にもとづく当社整理。施設の所在地番は未公表)

5拠点の単価地図 — 箱根26,400円から余市8,000円まで3.3倍の開き

5拠点が属する市町村について、2025年9月〜2026年8月の確定12ヶ月の推定成約ADRを平均した。結果は箱根町が約26,400円で最も高く、由布市が約23,700円で続く。屋久島町は約11,800円、竹田市は約8,800円、余市町は約8,000円だった。最上位の箱根町と最下位の余市町では3.32倍の開きがある。

同じブランドが同じ時期に立ち上がる5拠点でありながら、足元の市場水準はこれだけ違う。ラグジュアリー業態は周辺相場から切り離された価格帯を取りにいくのが常であり、この数字がそのまま Atona の想定単価を示すわけではない。ただし、地元の人件費・仕入れ・周辺施設の顧客層といった事業環境は、この水準の上に乗る。

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング、日本ハイアット 株式会社「報道資料 2026年4月」/地図タイルの著作権表示は地図右下に掲出/円は市町村の代表地点に置いたもので、施設の所在地を示すものではありません

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(2025年9月〜2026年8月の確定12ヶ月平均)

表2:5拠点が属する市町村の推定成約ADR・掲載価格・N(2025年9月〜2026年8月の確定12ヶ月平均)
市町村推定成約ADR前年同期比掲載価格N(算出施設/掲載施設)
箱根町(神奈川県)26,385円+3.4%51,764円186/386
由布市(大分県)23,692円+0.8%45,509円142/298
屋久島町(鹿児島県)11,810円+2.1%15,971円14/103
竹田市(大分県・久住)8,771円-0.7%24,060円20/36
余市町(北海道)7,955円-0.3%30,149円3/15

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(2025年9月〜2026年8月の確定12ヶ月平均。前年同期比は2024年9月〜2025年8月との比較)

前年同期比で見ると、5市町村とも±3.5%の範囲に収まっている。箱根町の+3.4%が最も大きく、竹田市と余市町はわずかに前年を下回った。全国的なインバウンド増加局面にあっても、これらの地方観光地の単価は落ち着いた推移をたどっている。

旅館業態だけで比べ直すと、箱根と由布の差は8%に縮む

Atona は温泉旅館ブランドとして発表されている。そこで、市町村の全施設ではなく旅館カテゴリのみに絞って集計し直した。すると景色が少し変わる。

箱根町の旅館は約25,600円、由布市の旅館は約23,700円で、その差は1.08倍にすぎない。全施設ベースでは箱根が由布を1.11倍上回っていたが、旅館だけで比べると差はさらに縮む。箱根町の全施設平均が高いのは、旅館以外の業態も含めた厚みによる部分が大きいことになる。逆に由布市は、旅館の単価がほぼそのまま市全体の水準を決めている。

表3:旅館カテゴリのみと全施設の推定成約ADR比較(2025年9月〜2026年8月の確定12ヶ月平均)
市町村旅館のみ 推定成約ADR全施設 推定成約ADR旅館 N
箱根町25,646円26,385円153/175
由布市23,691円23,692円128/133
屋久島町9,671円11,810円5/5
竹田市9,243円8,771円15/15
余市町集計対象外(対象1施設)7,955円1/1

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(2025年9月〜2026年8月の確定12ヶ月平均。余市町は旅館カテゴリの対象が1施設のみのため数値を掲載していません)

屋久島町と竹田市は、旅館カテゴリのNがそれぞれ5施設・15施設と小さい。少数の施設の値動きが平均を大きく動かす規模であることは、数字を読むうえで前提として置いておきたい。

単価の順位と供給の伸びは逆順 — 余市は2年で掲載施設が2.5倍

もう一つの軸として、この2年間で各市町村の掲載施設数がどう変わったかを見る。2024年8月時点と2026年8月時点の比較である。

余市町は6施設から15施設へ2.5倍(+150%)に増えた。箱根町が+32%、由布市が+27%、屋久島町が+10%、竹田市が+6%と続く。単価の順位は箱根が先頭で余市が最後尾だったが、供給の伸びではその順序がほぼ反転する。

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(各月時点で価格が観測できた掲載施設数)

余市町のもう一つの特徴は、推定成約ADRと掲載価格の乖離が極端に大きいことだ。推定成約ADRは約8,000円で5市町村中最も低い一方、掲載価格は約30,100円と竹田市(約24,100円)や屋久島町(約16,000円)を上回る。順位が入れ替わっている。

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(2025年9月〜2026年8月の確定12ヶ月平均。2指標は基準が異なるため差額としての解釈はできません)

この乖離には読み方の注意が要る。余市町の推定成約ADRはN=3施設、掲載施設15施設の2割しかカバーしていない。この3施設が町の相場を代表しているとは言い切れず、実勢はもう少し上にあると考えるのが自然だろう。一方で掲載価格側は、余市町が2025年7月以降に30,000円台へ切り上がっていることを示している。ワイナリーや蒸溜所を核とした宿泊需要が動き始め、比較的高単価の新規施設が掲載に加わってきた時期と重なる。要するに余市は、5拠点のなかで唯一「市場が形成されつつある途中」の土地である。

季節の振れ幅 — 箱根は夏冬2山、由布は冬一山

月別の推移を2025年と2026年で重ねると、同じ温泉地でも季節のかたちが違う。

箱根町は11月(約28,900円)と8月(約28,200円)に2つの山を持ち、6月(約22,700円)が谷になる。紅葉期と夏休みの2シーズン型である。対して由布市は12月(約27,100円)が最も高く、6月(約19,200円)が最も低い。冬に一山という形だ。加えて由布市は2026年6月・7月が前年同月をそれぞれ12.8%・11.4%下回っており、繁忙期以外の月で軟化が見られる。同じ時期に掲載施設が257施設から290施設へ増えていることと、無関係ではないだろう。箱根の秋冬にどの価格帯の客室が積み上がっているかについては、箱根の秋冬に積み上がる高単価供給で価格階層別に整理している。

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(2026年は1〜8月の確定分まで)

年間を通じた振れ幅は、箱根町が最安月比+27.7%、由布市が同+41.0%。由布市のほうが季節差が大きい。30〜50室規模の小型ラグジュアリーは客室数が少ないぶん月次の固定費負担が読みやすい反面、閑散期の1室あたり負担は重くなる。通年でどう平準化するかは、立地ごとに設計が変わる論点になる。

単価より効いてくるのは、5拠点に共通する「建てにくさ」

5拠点を並べて見えてくるのは、単価の差以上に、立地の法規制が似通っているという点だ。箱根町の広い範囲は富士箱根伊豆国立公園の区域にあたり、特別地域内での建築物の新築・改築には自然公園法にもとづく許可が必要になる。久住高原を擁する竹田市は阿蘇くじゅう国立公園、屋久島町は屋久島国立公園の区域を抱え、屋久島はさらに世界自然遺産の島でもある。由布市も由布岳周辺が阿蘇くじゅう国立公園に含まれる。

制度面で特に効くのが由布市だ。当サイトの分析では、由布市で2016〜2025年に開業した宿泊施設の最大規模は45室にとどまっている。同市は独自の条例で新規開発に枠をかけており、結果として「客室が増えない町」になっている。Atona が想定するとされる30〜50室という規模は、この枠のちょうど境界線上にある。条例が客室数の上限としてどう働き、単価にどう跳ね返っているかは、由布院の新規開業は最大45室 — 独自条例の町で「増えない客室」とADR1.51倍で詳しく分析している。

表4:5拠点の自然公園区域と立地条件の整理
市町村主な自然公園区域立地条件で押さえるべき点
箱根町富士箱根伊豆国立公園特別地域内の建築は自然公園法の許可対象。既存施設の建替・用途転換が現実的な選択肢になりやすい
由布市阿蘇くじゅう国立公園(由布岳周辺)市独自の条例により新規開業の規模が抑制。直近10年の新規開業は最大45室
屋久島町屋久島国立公園/世界自然遺産離島で資材・人員の輸送費が加算。掲載施設103のうち旅館カテゴリは5施設と層が薄い
竹田市(久住)阿蘇くじゅう国立公園掲載施設36と5拠点中最少。2年間の増加も+6%で、競合の厚みが最も薄い
余市町ニセコ積丹小樽海岸国定公園(沿岸部)掲載施設が2年で2.5倍。市場形成期で、参入時点の競合像が最も変わりやすい

出典:環境省 各国立公園資料、箱根町、メトロエンジンリサーチ&コンサルティングより作成/自然公園の区域は市町村全域を指すものではなく、具体の可否は所管窓口の確認が必要です

なお、5拠点のうち屋久島町は離島、竹田市は人口減少が進む内陸部にあたる。こうした地域では、割増償却や固定資産税の減免といった設備投資向けの優遇措置が投資判断の前提に入ってくる場合がある。単価が低い土地ほど、制度面の条件で事業性が動きやすい(離島の宿泊単価がどう階層化しているかは島に泊まる秋 — 主要離島10市町村の宿泊単価は2.37倍差を参照)。

周辺相場の何倍を取りにいくのか — 想定単価レンジと2軸感度(設例)

拠点ごとの客室数・投資額は未公表であり、事業計画を組み立てられる材料はまだない。それでも、前節までに実測した市町村の単価水準を出発点に、ラグジュアリー業態が周辺相場の何倍を取りにいく前提なら数字がどう動くのかは置いておける。以下は当社の設例であり、吾汝 Atona 各拠点の計画値ではない。

本文で触れたとおり、5拠点はいずれも周辺相場から3〜5倍離れた価格帯を新たに立ち上げる事業になる。そこで市町村の推定成約ADRに対し、悲観2.0倍・中位3.0倍・楽観5.0倍を掛けた想定単価レンジを並べた。

表5:市町村の推定成約ADRを起点とした想定単価レンジの設例(倍率は当社設定。各拠点の計画値ではありません)
市町村 市町村の推定成約ADR 悲観(2.0倍) 中位(3.0倍) 楽観(5.0倍)
箱根町(神奈川県)26,400円52,800円79,200円131,900円
由布市(大分県)23,700円47,400円71,100円118,500円
屋久島町(鹿児島県)11,800円23,600円35,400円59,000円
竹田市(大分県・久住)8,800円17,500円26,300円43,900円
余市町(北海道)8,000円15,900円23,900円39,800円

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(2025年9月〜2026年8月の確定12ヶ月平均)に当社設定の倍率を適用

中位ケースで見ると、箱根町は約79,200円、由布市は約71,100円で、国内のラグジュアリー旅館としては現実的な帯に入る。一方で竹田市は約26,300円、余市町は約23,900円にとどまり、同じブランド水準の単価を置くなら周辺相場との距離はさらに開く。低単価の土地ほど、倍率を何倍で置くかが事業性の前提を大きく動かすことになる。

次に、想定ADRと通年OCCの2軸で、1室あたりの年間客室売上がどう変わるかを見る。運営費・付帯収入は含めていない単純な客室売上であり、30〜50室規模の小型施設を念頭に1室あたりで示している。

表6:想定ADR×通年OCCによる1室あたり年間客室売上の感度(設例・想定ADR×通年OCC×365日、運営費および付帯収入を含まず)
 通年OCC 50%通年OCC 55%通年OCC 60%通年OCC 65%通年OCC 70%
想定ADR 20,000円365万円402万円438万円474万円511万円
想定ADR 40,000円730万円803万円876万円949万円1022万円
想定ADR 60,000円1095万円1204万円1314万円1424万円1533万円
想定ADR 80,000円1460万円1606万円1752万円1898万円2044万円
想定ADR 100,000円1825万円2008万円2190万円2372万円2555万円

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(当社設例。特定拠点の収支予測ではありません)

読み取れるのは、単価と稼働のどちらが効くかという感度の非対称である。想定ADR60,000円・通年OCC60%の中央セルは1室あたり年間約1,314万円。ここから単価を1段(20,000円)引き上げると約438万円増えるのに対し、通年OCCを5ポイント動かしても約110万円しか動かない。小型ラグジュアリーは客室数が少なく、稼働で積み上げられる幅が構造的に狭い。単価をどこに置けるかが、事業性をほぼ決める。

裏を返せば、単価前提が崩れたときの下振れも同じ勾配で効く。想定ADRを60,000円から40,000円へ落とすと、通年OCC60%でも1室あたり年間876万円まで下がる。前節までに見た市町村の実勢と、開業時点で想定する単価の距離をどう埋めるかが、5拠点それぞれで最初に詰めるべき論点になる。

開発事業者・用地保有者が今のうちに見ておくべき3点

第一に、箱根町はハイアットにとって「既存施設と同一自治体に新ブランドを重ねる」唯一の拠点である。報道資料によれば、同社はすでに箱根町でハイアット リージェンシー 箱根 リゾート&スパ(80室・2006年12月開業)を運営している。同じ町に異なるブランドで2軒を置く構図は、Atona が既存のリゾート業態とは別の客層を想定していることを示唆する。

第二に、余市町の供給動向は今後2年で大きく変わる可能性が高い。2年で掲載施設が6から15に増えている土地では、開業する2028年以降の競合像が現時点の姿と一致しない。用地を保有する側にとっては、いま競合が少ないことをそのまま優位性として評価しない慎重さが要る。逆に言えば、市場が固まる前の参入余地が残っている土地でもある。

第三に、規模の制約が明確な由布市と、競合の層が薄い竹田市・屋久島町では、取るべき打ち手が違う。由布市は45室という実績上の上限があるため、既存施設の取得・建替が現実的な選択肢になる。一方で竹田市(掲載36施設)と屋久島町(旅館5施設)は、そもそも比較対象が少ない。参照できる先行事例が乏しいぶん、需要想定は周辺の広域圏から組み立てる必要がある。

5拠点に共通するのは、いずれも「既存の宿泊市場の平均単価が、ラグジュアリー業態の想定単価から大きく離れている」という構造だ。箱根町と由布市はそれでも2万円台の下地があるが、屋久島町・竹田市・余市町は1万円前後である。周辺相場から3〜5倍離れた価格帯を新たに立ち上げる事業になる以上、人材の確保と育成、そして地域の食材・体験をどう単価に織り込むかが、立地選定と同じ重さで効いてくる。

まとめ

ハイアットの新ブランド「吾汝 Atona」5拠点が属する市町村の推定成約ADRは、箱根町が約26,400円、由布市が約23,700円、屋久島町が約11,800円、竹田市が約8,800円、余市町が約8,000円(いずれも2025年9月〜2026年8月の確定12ヶ月平均、正確な値は本文中の表を参照)。上下で3.32倍の開きがある。旅館カテゴリに絞ると箱根と由布の差は1.08倍まで縮み、両者は近い市場水準にあることがわかる。

一方で供給の伸びは単価の順位とほぼ逆順で、余市町が2年で2.5倍と突出する。そして5拠点はいずれも自然公園の区域を抱え、由布市には規模を抑える条例がある。単価の高低よりも、建てられる規模と建てられるまでの手続きが、この5拠点の性格を決めている。開業予定は2028年以降であり、客室数も所在地も未公表のままだ。数字が出そろうまでには、まだ時間がある。

本記事の数値の扱いについて:掲載した推定成約ADR・掲載価格は、いずれも当該市町村の宿泊市場全体の水準であり、吾汝 Atona 各拠点の想定単価を示すものではありません。拠点ごとの客室数・投資額・運営形態は公表されていないため、本記事では扱っていません。開業予定は「2028年以降」であり、確定した開業日ではありません。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

市町村別の推定成約ADR・掲載価格・掲載施設数はメトロエンジンリサーチ&コンサルティングの集計(2024年9月〜2026年8月)。推定成約ADRは各施設がOTA等で公開する最安プラン水準に業態別の補正係数を適用した推定値で、エリア単位の値は対象施設の中央値。ブランド・開業計画は日本ハイアット 株式会社「報道資料 2026年4月」および各社プレスリリース、法規制は環境省および箱根町の公開資料による。

■ 試算前提

集計期間は2025年9月〜2026年8月の確定12ヶ月で、ADRは各月値の単純平均。前年同期比は2024年9月〜2025年8月との比較。Nは集計期間末月(2026年8月)時点の「推定成約ADRを算出できた施設数/当該市町村の掲載施設数」。想定単価レンジは市町村の推定成約ADRに悲観2.0倍・中位3.0倍・楽観5.0倍を掛けた当社設例。2軸感度の年間客室売上は「想定ADR×通年OCC×365日」で求めた1室あたりの客室売上であり、運営費・付帯収入・季節変動は含みません。

■ 限界・留意点

掲載した推定成約ADR・掲載価格は当該市町村の宿泊市場全体の水準であり、吾汝 Atona 各拠点の想定単価を示すものではありません。拠点ごとの客室数・投資額・運営形態・所在地番は未公表のため本記事では扱っていません。屋久島町・竹田市・余市町は推定成約ADRの算出対象が数施設規模で、少数施設の値動きが平均を動かします。想定単価レンジおよび2軸感度は当社設例であり、特定拠点の計画値・収支予測ではありません。開業予定は「2028年以降」で、確定した開業日ではありません。

■ 市場データ

■ ブランド・開業計画に関する一次情報

■ 法規制・自然公園

出典: 日本ハイアット 株式会社「報道資料 2026年4月」

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