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高潮浸水想定区域の客室は大阪で81%・3府県12万室 — 受変電設備を上げる1室3万〜25万円

投稿日 : 2026.09.23

大阪府

愛知県

三重県

投資・開発

高潮浸水想定区域の客室は大阪で81%・3府県12万室 — 受変電設備を上げる1室3万〜25万円

大阪湾・伊勢湾沿岸の「想定し得る最大規模の高潮」による浸水想定区域には、どれだけのホテル客室が立地しているのか。国土数値情報の高潮浸水想定区域データを大阪府・愛知県・三重県で取得し、稼働が確認できるホテル2,345施設の所在地を区域ポリゴンと突き合わせた。その結果、浸水深0.5m以上の区域内に1,024施設・120,224室があり、判定対象の客室の61.0%を占める。大阪府に絞ると81.2%に達する。本稿では浸水深ランク別・客室規模別に客室の分布を整理し、受変電設備を想定浸水深より上に配置する場合の1室あたりCapexを、公開されている設備費相場に基づく試算として示す。

本記事における指標の定義

  • ADR(平均客室単価):各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。本稿では2025年9月〜2026年8月(確定済み12ヶ月)の中央値を用いています。
  • 高潮浸水想定区域:水防法に基づき都道府県が指定・公表する、想定し得る最大規模の高潮(堤防等の決壊を見込む)により浸水が想定される区域。浸水深はランク(例:0.5m以上3m未満)で示されます。
  • 判定対象施設:大阪府・愛知県・三重県に所在し、2025年9月〜2026年8月にOTA上で販売価格が観測され、客室数が判明しているホテル・旅館等(N=2,345施設・197,137室)。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング、国土交通省「国土数値情報(高潮浸水想定区域データ)」
Key Takeaways
  • 120,224室(61.0%) 大阪府・愛知県・三重県の判定対象197,137室のうち、浸水深0.5m以上の高潮浸水想定区域内にある客室。うち3m以上は55,681室
  • 大阪府は81.2% 北区99.3%・中央区87.0%など、梅田・なんばの都心宿泊集積地が区域に含まれ「臨海部を避ければ区域外」が成り立ちにくい
  • 愛知32.9%・三重30.4% 名古屋市中村区は93.8%が区域内の一方、栄を含む中区は1.3%。三重は四日市市・桑名市に集中
  • 150室以上に70.9% 区域内客室85,286室は高圧受電の中〜大規模施設にあり、電気設備の浸水対策が資産価値に直結する
  • 1室3.0万〜24.8万円 受変電設備を上階・屋上に移す1室あたりCapex(編集部試算)。推定成約ADRの3〜23泊分で、最も重いのは150〜299室帯

結論 — 3府県の12万室が浸水深0.5m以上の区域内、うち5.6万室は3m以上

区域内(0.5m以上)の客室
120,224室
1,024施設・判定対象の61.0%
うち浸水深3m以上
55,681室
425施設
大阪府の区域内比率
81.2%
93,973室/115,751室
受変電を上げる1室あたりCapex
3万〜25万円
50室以上・編集部試算
ADR換算
3〜23泊分
規模帯別ADR中央値で除算

要点は3つある。第一に、大阪府では判定対象客室の81.2%が浸水深0.5m以上の区域に入る。これは臨海部に限った話ではなく、大阪市中央区・北区・浪速区・淀川区といった都心の宿泊集積地の大半が想定区域に含まれるためである。第二に、愛知県(32.9%)と三重県(30.4%)は区域内比率こそ3割台だが、名古屋市中村区、四日市市、桑名市など特定の市区に客室が集中している。第三に、区域内客室の7割超(85,286室)は150室以上の施設にある。受変電設備の上階・屋上配置に要する費用は客室数で割ると1室あたり数万円〜20万円台に収まり、推定成約ADRの3〜23泊分に相当する。規模の大きい施設ほど、レジリエンス投資を1室あたり薄く配賦できる構造である。

高潮浸水想定区域とは — 室戸台風級・伊勢湾台風級を前提とした最大規模の想定

高潮浸水想定区域は、2015年の水防法改正で創設された制度に基づき、都道府県が海岸ごとに指定する。大阪府は2020年8月5日に大阪湾沿岸(大阪府区間)の区域図を公表した。前提は我が国既往最大規模の台風(室戸台風級・910hPa)で、潮位偏差が最大となる経路を設定し、河川の洪水を同時に考慮したうえで、堤防等の決壊を見込んでいる。愛知県は2021年6月11日に三河湾・伊勢湾沿岸(愛知県区間)を、三重県は2023年3月24日に伊勢湾沿岸(三重県区間)を指定した。三重県の公表資料によれば、同県区間の浸水面積は約288km²、最大浸水深は約13m、最長の浸水継続時間は1週間以上とされている。

つまり、この区域図は「発生確率の高い平時の想定」ではなく、施設の能力を超える規模の高潮による最悪の事態を描いたものである。区域内に立地することは直ちに被災可能性の高さを意味しない。一方、デューデリジェンスや保険引受では、区域の内外と想定浸水深が設備配置の設計条件として参照されるのが通例であり、ホテル資産の比較軸として定量化しておく意義は大きい。水災リスクが保険料やLTVにどう反映されるかは、ホテル火災保険の水災等地で年101万円差で詳しく分析している。

集計方法は次のとおりである。国土数値情報の高潮浸水想定区域データ(大阪府・愛知県・三重県)の浸水深ポリゴンに、判定対象施設の所在地座標を重ね、ポイントインポリゴンで判定した。複数のポリゴンに該当する場合は深い方のランクを採用した。大阪府のデータは浸水深ランクが「0.5m未満/0.5m以上3m未満/3m以上5m未満/5m以上10m未満」と粗く、愛知県・三重県は「0.3m未満/0.3〜0.5m/0.5〜1m/1〜3m」とより細かい。3府県を比較できるよう、本稿では「0.5m未満/0.5〜3m/3〜5m/5m以上」の4区分に統合した。

府県別 — 大阪は区域内比率81.2%、3m以上の区域だけで51,489室

府県別に浸水深ランクごとの客室数を並べると、大阪府の構造が際立つ。0.5〜3mの区域に42,484室、3〜5mに38,904室、5m以上に12,585室がある。3m以上の合計は51,489室で、大阪府の判定対象客室の44.5%に当たる。愛知県は区域内客室19,680室の9割超(18,551室)が0.5〜3mの区域に集中し、3m以上は1,129室にとどまる。三重県は区域内6,571室のうち3m以上が3,063室と、臨海の低平地に立地する宿泊施設で深いランクの比率が高い。

出典:国土交通省「国土数値情報(高潮浸水想定区域データ)」、メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(判定対象N=2,345施設・197,137室)

府県別・浸水深ランク別の判定対象施設数と客室数(大阪府・愛知県・三重県)
府県判定対象0.5m未満0.5〜3m3〜5m5m以上0.5m以上の比率
大阪府1,030施設
115,751室
20施設
1,625室
369施設
42,484室
256施設
38,904室
96施設
12,585室
81.2%
愛知県731施設
59,775室
17施設
737室
177施設
18,551室
17施設
957室
3施設
172室
32.9%
三重県584施設
21,611室
13施設
361室
53施設
3,508室
30施設
1,843室
23施設
1,220室
30.4%
3府県計2,345施設
197,137室
50施設
2,723室
599施設
64,543室
303施設
41,704室
122施設
13,977室
61.0%

出典:国土交通省「国土数値情報(高潮浸水想定区域データ)」、メトロエンジンリサーチ&コンサルティング。浸水深ランクは3府県比較のため4区分に統合

大阪府で比率が高い理由は、区域図が大阪市内の広い低平地をカバーしている点にある。市区別に見ると、大阪市中央区は判定対象36,012室のうち31,326室(87.0%)、北区は20,928室のうち20,774室(99.3%)、浪速区と淀川区はいずれも全室が区域内に入る。梅田・なんばといった都心の宿泊集積地が区域内にあるため、大阪府では「臨海部を避ければ区域外」という単純な整理が成り立ちにくい。区域の内外で立地を選別するより、同じ区域内で設備配置と浸水深の関係をどう設計しているかが、物件間の差として現れやすい市場といえる。

愛知県では、名古屋駅を擁する中村区の判定対象12,348室のうち11,583室(93.8%)が区域内にある。中部国際空港の対岸に位置する常滑市も3,852室のうち3,817室が該当する。対照的に、栄地区を含む中区は17,624室のうち230室(1.3%)にとどまり、名古屋市内でも駅西側と栄側で立地条件が大きく分かれる。三重県は四日市市(2,776室中2,512室)と桑名市(1,482室中1,134室)で区域内比率が高い。

区域内ホテルの分布 — 50室以上の572施設を浸水深ランク別にマッピング

浸水深0.5m以上の区域内にある50室以上の施設(572施設)を地図に示す。円の大きさは客室数、色の濃さは浸水深ランクを表す。大阪湾側は此花区から住之江区、堺市堺区にかけての臨海部で濃い色(3m以上)が連続し、伊勢湾側は名古屋駅周辺の0.5〜3m帯と、桑名市・四日市市の深いランクが対照をなしている。

出典:国土交通省「国土数値情報(高潮浸水想定区域データ)」、メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(50室以上・N=572施設)

臨海10市区の区域内客室と推定成約ADR

臨海の主要10市区について、区域内の客室数と推定成約ADR(2025年9月〜2026年8月の中央値)を整理した。臨海区は施設数が少なく前年比が大きく振れるため、本稿では前年比を用いず、確定済み12ヶ月の水準で比較する。推定成約ADRの対象施設数が5未満の市区は、水準の代表性が限られるため数値を掲載していない。

臨海10市区の区域内客室数と推定成約ADR(2025年9月〜2026年8月・12ヶ月中央値)
市区判定対象0.5m以上の区域内うち3m以上推定成約ADR
(12ヶ月中央値)
大阪市此花区27施設・3,640室3,479室2,852室¥21,356(N=13)
大阪市港区21施設・1,341室1,341室1,341室¥12,080(N=9〜11)
大阪市住之江区8施設・1,795室668室300室¥12,663(N=6〜7)
大阪市大正区2施設・11室11室11室—(N=2)
堺市堺区20施設・2,416室1,936室1,548室¥7,505(N=16〜17)
泉佐野市39施設・4,050室1,956室0室¥7,830(N=21〜26)
名古屋市港区6施設・468室216室120室—(N=2〜3)
名古屋市熱田区6施設・707室210室0室—(N=4)
四日市市43施設・2,776室2,512室1,090室¥6,950(N=24〜26)
桑名市26施設・1,482室1,134室1,134室¥8,322(N=18〜19)

出典:国土交通省「国土数値情報(高潮浸水想定区域データ)」、メトロエンジンリサーチ&コンサルティング。推定成約ADRのNは月ごとの対象施設数の範囲(判定対象施設数とは母集団が異なる)

此花区は区域内3,479室のうち2,852室が3m以上の区域にあり、推定成約ADRは¥21,400と臨海10市区で最も高い。テーマパーク需要に支えられた高単価の宿泊集積地であり、1室あたりの売上規模が大きいぶん、設備の浸水対策に要する費用をADRで回収する期間は短くなる。一方、四日市市(¥7,000)や堺市堺区(¥7,500)はビジネス需要中心の価格帯で、同じ設備投資でもADR換算の負担感は相対的に大きい。浸水深ランクと価格帯の組み合わせによって、同じ「区域内」でも対策の優先順位と投資回収の見え方は変わる。他商圏のハザードとADRの組み合わせについては、全国8商圏のハザード×ADR×防災Capexも参考になる。

客室規模別 — 区域内客室の7割超は150室以上の施設

浸水深0.5m以上の区域内にある1,024施設を客室規模で4区分すると、施設数では49室以下が452施設と最多だが、客室数では7,659室(6.4%)にとどまる。300室以上の89施設が44,285室(36.8%)、150〜299室の198施設が41,001室(34.1%)を占め、150室以上の施設だけで区域内客室の70.9%に達する。高圧受電で受変電設備を持つ中〜大規模施設に客室が集中していることは、電気設備の浸水対策を論じるうえで重要な前提となる。

出典:国土交通省「国土数値情報(高潮浸水想定区域データ)」、メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(浸水深0.5m以上の区域内N=1,024施設)

ガイドラインの考え方 — 受変電設備は想定浸水深より上に置く

2019年の東日本台風では、高層マンションの地下に設置されていた高圧受変電設備が冠水し、停電によってエレベーターや給水設備が一定期間使用できなくなった。これを受けて国土交通省と経済産業省は2020年6月に「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」を取りまとめた。対象は特別高圧・高圧で受電する大規模建築物で、ホテルも同じ設備構成をとる。ガイドラインは、ハザードマップ等で想定される浸水深を踏まえて浸水リスクの低い場所に電気設備を配置すること、建物出入口や地下との接続部に止水板・水密扉を設けて「水防ライン」を形成することを対策の柱として示している。

対策の選択肢は大きく2つに分かれる。1つは受変電設備・非常用発電設備を2階以上や屋上へ配置する方法、もう1つは設備の位置は変えずに水防ラインで浸水そのものを防ぐ方法である。事例集には、2019年7月に竣工した地上8階建ての中規模オフィスビルで、高圧受変電設備・非常用発電設備・太陽光発電設備・蓄電池をすべて浸水リスクの少ない屋上に設置した例が紹介されている。浸水深0.5〜3mの区域では嵩上げと水防ラインの組み合わせで対応できる余地が大きい一方、3m以上の区域では1階床上や屋外地上に置いたままでは想定浸水深を上回ることが難しく、上階・屋上配置が現実的な選択肢になる。区域内客室の46.3%(55,681室)がこの3m以上の帯にある。

被災後の復旧費との比較も、Capexの妥当性を測る材料になる。報道では、マンション地下の電気設備等が浸水した事例で「復旧に2000万円かかることも」と伝えられている。ホテルの場合はこれに休館期間の客室売上が加わるため、事前の配置見直しは修繕費だけでなく営業継続の観点からも評価できる。休館に伴う逸失売上をCapexに織り込む考え方は、ホテル改装の逸失売上は工事費の32.6%が掘り下げている。

受変電設備を上げる1室あたりCapex — 規模帯別に3万〜25万円(編集部試算)

受変電設備を想定浸水深より上に配置する費用を、客室規模帯ごとに1室あたりへ換算した。設備費は公開されているキュービクル式高圧受電設備の工事費込み相場を用い、上階・屋上への移設に伴う追加費用を係数で反映した。個別物件の受電容量・構造・搬入条件によって費用は大きく変わるため、以下はあくまで規模感をつかむための簡易試算である。

■ 試算前提

  • 設備費(工事費込みの公開相場):中規模(50kVA〜300kVA)200万〜600万円、大規模(300kVA以上)1,000万〜2,000万円以上
  • 規模帯と設備容量の対応(編集部仮定):50〜149室=中規模帯、150〜299室および300室以上=大規模帯。300室以上は相場が「以上」表記のため、費用が過小に出る可能性がある
  • 移設係数(編集部仮定):低位1.5倍〜高位2.5倍。上階・屋上配置に伴う基礎・構造補強、高圧ケーブル延長、揚重・搬入、既存設備の撤去、停電作業を設備費に上乗せする想定
  • 1室あたりCapex=設備費×移設係数÷規模帯の客室数中央値(50〜149室:100室、150〜299室:202室、300室以上:397室)
  • ADR換算=1室あたりCapex÷規模帯の推定成約ADR中央値(区域内施設・2025年9月〜2026年8月)
  • 49室以下の施設は低圧受電が多く、受変電設備を持たない場合があるため試算対象外(分電盤等の嵩上げが中心となる)
規模帯別 受変電設備を上げる1室あたりCapexとADR換算(編集部試算)
規模帯(区域内)施設数・客室数設備費×係数1室あたりCapex推定成約ADR中央値ADR換算
50〜149室(中央値100室)285施設・27,279室300万〜1,500万円3.0万〜15.0万円¥9,160(N=242)3.3〜16.4泊
150〜299室(中央値202室)198施設・41,001室1,500万〜5,000万円7.4万〜24.8万円¥10,618(N=181)7.0〜23.3泊
300室以上(中央値397室)89施設・44,285室1,500万〜5,000万円3.8万〜12.6万円¥12,494(N=75)3.0〜10.1泊

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(客室数・推定成約ADR)、設備費は公開相場より編集部試算

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング、設備費は公開相場より編集部試算(試算前提は上記のとおり)

試算からは、1室あたりCapexが最も重くなるのは150〜299室の帯であることがわかる。大規模帯の設備費がかかる一方、客室数が300室以上ほど多くないため、配賦先が限られるからだ。300室以上では同じ設備費を397室で割るため、1室あたり3.8万〜12.6万円に収まり、ADRも高いのでADR換算では3.0〜10.1泊分となる。50〜149室は設備費自体が小さく、1室あたり3.0万〜15.0万円である。

区域内の50室以上572施設がすべて同様の配置見直しを行うと仮定すると、総額は約52億〜186億円、区域内112,565室で割ると1室あたり4.6万〜16.5万円となる。新築時の設計段階で受変電室を上階に計画すれば、移設係数に相当する撤去・停電作業の費用はかからず、既存物件の改修より低い水準で対策を組み込める。臨海部で開発を検討する場合、この差は企画段階で織り込むほど大きくなる。

シナリオ別・感度分析 — 設備費と移設係数の組み合わせで1室あたり負担はどう変わるか

上の試算は設備費の下限×係数1.5倍を低位、上限×係数2.5倍を高位とした幅である。実務で中心となる水準をつかむため、設備費の中間値(中規模400万円、大規模1,500万円)×係数2.0倍を中位として加え、3シナリオで整理した。中位では区域内の50室以上572施設の総額が約109億円、1室あたり9.7万円となり、150〜299室帯でもADR換算で14泊前後に収まる。

3シナリオ別 1室あたりCapex(上段)とADR換算(下段)— 編集部試算
シナリオ50〜149室150〜299室300室以上572施設の総額
低位(設備費下限×係数1.5)3.0万円
(3.3泊)
7.4万円
(7.0泊)
3.8万円
(3.0泊)
約52億円
(4.6万円/室)
中位(設備費中間値×係数2.0)8.0万円
(8.7泊)
14.9万円
(14.0泊)
7.6万円
(6.0泊)
約109億円
(9.7万円/室)
高位(設備費上限×係数2.5)15.0万円
(16.4泊)
24.8万円
(23.3泊)
12.6万円
(10.1泊)
約186億円
(16.5万円/室)

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(客室数・推定成約ADR、区域内50室以上N=572施設)、設備費は公開相場より編集部試算。中位の設備費中間値・係数2.0倍は編集部仮定

1室あたり負担が最も重い150〜299室帯について、設備費と移設係数の2軸で感度を見ると、負担は7.4万円から24.8万円まで約3.3倍の幅で動く。設備費が上限の2,000万円でも係数を1.5倍に抑えられれば14.9万円(14.0泊)にとどまり、搬入経路や構造補強の条件が1室あたり負担を大きく左右することがわかる。デューデリジェンスでは、受電容量と並んで上階・屋上への揚重条件を早期に確認することが試算精度を高める。

感度分析:150〜299室帯(中央値202室)の1室あたりCapex — 設備費×移設係数(括弧内はADR¥10,618換算の泊数)
設備費\移設係数1.5倍2.0倍2.5倍
設備費1,000万円7.4万円(7.0泊)9.9万円(9.3泊)12.4万円(11.7泊)
設備費1,500万円11.1万円(10.5泊)14.9万円(14.0泊)18.6万円(17.5泊)
設備費2,000万円14.9万円(14.0泊)19.8万円(18.6泊)24.8万円(23.3泊)

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(推定成約ADR N=181施設)、設備費は公開相場より編集部試算

デューデリジェンス・レンダー・損保の実務で確認したい4項目

デューデリジェンス・レンダー・損保の実務確認項目
確認項目見るべき内容本稿データとの接続
想定浸水深区域図のランク、浸水継続時間3m以上の帯は区域内客室の46.3%
受変電設備の設置階地下・1階・屋外地上か、上階・屋上か150室以上に区域内客室の70.9%が集中
水防ライン止水板・水密扉、地下接続部・ケーブル引込口の止水0.5〜3m帯(64,543室)で対策の選択肢が広い
対策費の配賦1室あたりCapex、ADR換算の回収規模規模帯別に3.0万〜24.8万円・3〜23泊分

出典:国土交通省・経済産業省「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」を参考にメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成

まとめ

大阪府・愛知県・三重県で稼働が確認できるホテル2,345施設・197,137室のうち、浸水深0.5m以上の高潮浸水想定区域内には1,024施設・120,224室(61.0%)がある。大阪府では都心の宿泊集積地が広く区域に含まれ、比率は81.2%に達する。愛知県・三重県は3割台だが、名古屋市中村区、常滑市、四日市市、桑名市に集中している。

区域内客室の7割超は150室以上の施設にあり、受変電設備を想定浸水深より上に配置する費用は、1室あたり3万〜25万円(推定成約ADRの3〜23泊分)という規模感で整理できる。区域図は最大規模の高潮を前提とした最悪ケースの想定であり、区域内立地そのものを減点要素として扱うより、設備の設置階と水防ラインの有無を物件ごとに確認し、対策費を客室あたりで評価することが、臨海部ホテル資産の比較を精緻にする。新規開発では設計段階で上階配置を組み込むことで、既存改修より低いコストで耐水性を高める機会がある。

※本稿の区域判定は所在地座標によるポイント判定であり、敷地形状や建物の地盤高、実際の設備設置階は反映していません。高潮浸水想定区域は想定し得る最大規模の高潮を前提とした想定であり、発生確率や個別物件の被災可能性を示すものではありません。Capex試算は公開相場と編集部仮定に基づく簡易試算で、実際の投資判断には個別の設備調査と見積もりが必要です。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(施設所在地・客室数、推定成約ADRの2025年9月〜2026年8月・確定済み12ヶ月中央値。判定対象N=2,345施設・197,137室)、国土交通省「国土数値情報(高潮浸水想定区域データ)」大阪府・愛知県・三重県分。所在地座標によるポイントインポリゴン判定で、複数区域に該当する場合は深いランクを採用し、浸水深は3府県比較のため4区分に統合。

■ 試算前提

設備費はキュービクル式高圧受電設備の工事費込み公開相場(中規模200万〜600万円、大規模1,000万〜2,000万円以上)。上階・屋上配置の移設係数は低位1.5倍・中位2.0倍・高位2.5倍(編集部仮定)。1室あたりCapex=設備費×係数÷規模帯の客室数中央値(100室/202室/397室)、ADR換算は規模帯別の推定成約ADR中央値で除算。49室以下は低圧受電が多いため対象外。

■ 限界・留意点

区域判定は所在地のポイント判定で、敷地形状・地盤高・実際の設備設置階は反映していない。区域図は想定し得る最大規模の高潮を前提とし、発生確率や個別物件の被災可能性を示さない。300室以上は相場が「以上」表記のため費用が過小に出る可能性がある。推定成約ADRは推定値で、対象施設数が5未満の市区は非掲載。

■ 市場データ

■ 政府・自治体資料

■ 設備費相場・報道

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