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婚礼2,292億円・組単価363万円|ホテル非客室売上の61%は9-11月と3-5月

投稿日 : 2026.09.19

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婚礼2,292億円・組単価363万円|ホテル非客室売上の61%は9-11月と3-5月

ホテルの収益を語るとき、議論はほぼ客室に集中する。稼働率、ADR、RevPAR——月次で開示される指標はどれも客室の指標だ。だが婚礼・宴会・レストランといった非客室部門は、フルサービス型のホテルでは客室と同等か、それ以上の売上を生んでいる。本稿では、経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」の結婚式場業の月次系列と、上場ホテル運営会社のIR開示、そして当社が追跡する施設分布データを重ね、非客室売上の規模と季節性を数値で整理する。

本記事における指標の定義

  • ADR(平均客室単価):各施設が予約サイト上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。
  • 組単価:結婚式場業の売上高を取扱件数で除した1件あたり単価。経済産業省の統計原表から算出した値であり、消費税の取扱いは原統計に準じます。
  • 季節指数:各年の月別値を当該年の月平均(=100)で基準化し、複数年で平均した値。水準の年較差を取り除いて月の形だけを比較するための指標です。
  • データ出典:経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」、各社IR開示、メトロエンジンリサーチ
Key Takeaways
  • 2,292億円・63,190件:結婚式場業(専業企業ベース)の2024年売上高と取扱件数。組単価は約363万円で、2015年比で件数28.7%減・組単価32.8%上昇
  • 60.9%:2024年の年間売上のうち9〜11月(34.0%)と3〜5月(27.0%)に集まる割合。最大月は2023・2024年が11月、2022年が10月
  • 64.8%/82.4%:非客室の構成比。ホテル、ニューグランドの開示3部門(2025年12月〜2026年5月)と藤田観光ラグジュアリー&バンケット事業(2025年12月期)
  • +44.8pt:10月の婚礼売上指数145.0とシティホテル推定成約ADR指数100.2の差。8月は逆にADR指数109.0に対し婚礼64.9
  • シティ1,153施設・リゾート1,728施設(2026年8月時点)。表の12都道府県では、県内全施設に占めるシティの構成比は大阪府7.9%が最も高い

結婚式場業2,292億円の月次リズム — 年間売上の61%が6ヶ月に集まる

まず市場の暦を確認する。経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」の結婚式場業(企業調査)によれば、2024年の年間売上高は2,292億円、取扱件数は63,190件だった。調査対象企業(事業所数ベース)は2024年12月時点で398、従業者数は19,608人である。

ここで前提をひとつ確認しておきたい。この統計の「結婚式場業」は、結婚式場業を主業とする企業を対象としており、ホテルや料飲店が併営する婚礼部門は含まれない(2015年1月調査から調査単位が事業所から企業へ変更されている)。つまりこの系列は、ホテルの婚礼売上そのものではなく、ホテルの宴会場が向き合っているのと同じ需要カレンダーを、専業事業者の側から観測したものと読むのが正確だ。ホテル側の数値は後段でIR開示から拾う。

月次に落とすと、形はきわめて明瞭である。2024年の月別売上高は11月の297.9億円が最大で、最小は1月の111.1億円。2022〜2024年の3年平均で季節指数を取ると、11月154.5に対して1月50.2と、3.1倍の開きがある。

出典:経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」(結婚式場業・企業調査)よりホテルバンク編集部作成

二山構造がはっきり出る。第一の山は9〜11月で、2024年はこの3ヶ月だけで778.7億円、年間の34.0%を占めた。第二の山は3〜5月で618.2億円、年間の27.0%。合計すると、6ヶ月で年間売上の60.9%が集まる計算になる。残る6ヶ月——1月、2月、6月、7月、8月、12月——で残り39.1%を分け合う形だ。

3年分の線を重ねても、山の位置はほとんど動かない。2023年と2024年は11月、2022年は10月が年間最大月であり、最小月は3年とも1月である。水準は年ごとに違っても、形は安定している。宴会場という固定資産の稼働計画を立てるうえで、この安定性は扱いやすい性質だといえる。

結婚式場業の月別売上高・取扱件数・組単価(2024年)
売上高(百万円) 取扱件数(件) 組単価(万円) 季節指数
(2022-24年平均)
2024年1月11,1112,791398.150.2
2月18,7985,067371.074.7
3月22,1416,498340.7107.7
4月17,7445,385329.5100.7
5月21,9346,052362.4124.2
6月17,5374,754368.988.0
7月13,4513,806353.479.8
8月11,2903,038371.664.9
9月22,1375,836379.3117.6
10月25,9417,191360.7145.0
11月29,7948,274360.1154.5
12月17,3754,498386.392.8
2024年合計229,25363,190362.8

出典:経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」(結婚式場業・企業調査、N=398事業所/2024年12月時点)よりホテルバンク編集部作成

組数63,190件・組単価363万円 — 10年間の動き方

次に、件数と単価の内訳を長期で見る。2015年から2024年までの10年間で、取扱件数は88,590件から63,190件へ、組単価は約273万円から約363万円へ動いた。件数は28.7%減、組単価は32.8%上昇し、売上高は2,420億円から2,292億円へと5.2%の変化にとどまっている。

出典:経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」(結婚式場業・企業調査)よりホテルバンク編集部作成

コロナ禍の2020年(年間1,116億円・36,783件)を挟んで系列は一度大きく振れているが、2022年以降は件数と単価が逆方向に動く形で推移している。2019年と2024年を比べると、件数は86,304件から63,190件へ26.8%減、組単価は約294万円から約363万円へ23.4%上昇し、売上高は2,538億円から2,292億円へ9.7%の変化となった。

1件あたりの単価が上がっているという事実は、宴会場という床の使い方にとって直接的な意味を持つ。同じ1件を受けたときに落ちる金額が10年前より3割強大きいということであり、床あたりの回転数ではなく単価で稼ぐ構造に寄っている。月別に見ても、2024年は12月が約386万円、1月が約398万円と、件数の少ない月ほど組単価が高い傾向が読み取れる。

統計の年次と公表状況について:経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」は、結婚式場業を含む20業種すべてについて2024年12月分調査をもって終了している。本稿で用いた長期時系列表(月次・実数)の最終更新は2025年3月31日、収録最終月は2024年12月であり、これが同調査における最新の月次データである。後継となる総務省「サービス産業動態統計調査」は2025年1月分から実施されているが、公表は産業中分類単位(「その他の生活関連サービス業」など)であり、結婚式場業単独の月次系列は公表されていない(2026年6月分・速報まで確認)。したがって本稿の「直近12ヶ月」は2024年1月〜12月を指す。

ホテル側のIR開示 — 宴会部門が宿泊部門を上回るケース

では、ホテルの側では非客室売上はどれだけの規模になるのか。部門別の実額まで開示している上場ホテル運営会社は限られるが、拾えるものを並べると輪郭が見えてくる。

ホテル、ニューグランド(9720)の2026年11月期第2四半期(2025年12月1日〜2026年5月31日)の部門別売上高は、宿泊部門11億1,466万円(前年同期比9.5%増)、レストラン部門8億1,817万円(同10.4%増)、宴会部門12億3,584万円(同6.3%増)である。開示された3部門の合計31億6,866万円に対し、宴会部門は39.0%を占め、宿泊部門の35.2%を上回る。ホテル事業セグメント全体では35億2,390万円(同7.9%増)だった。なお同社の宴会部門について、婚礼と一般宴会の内訳は開示されていない。

藤田観光(9722)の2025年12月期(2025年1月1日〜12月31日)は、連結売上高820億400万円、営業利益137億9,500万円。同社は収益の分解情報を公表しており、宿泊581億2,100万円(前期538億4,000万円)、婚礼77億1,300万円(同70億9,500万円)、宴会36億3,100万円(同30億7,000万円)、料飲33億7,800万円(同32億9,700万円)、日帰り・レジャー18億6,900万円(同16億9,700万円)と、全区分が前期を上回った。婚礼・宴会・料飲の3区分の合計147億2,200万円は連結売上高の18.0%にあたる。

同社のセグメント別で見ると、「ホテル椿山荘東京」などを含むラグジュアリー&バンケット事業の外部顧客売上高201億2,400万円の内訳は、宿泊35億3,300万円(17.6%)、婚礼77億1,300万円(38.3%)、宴会36億3,100万円(18.0%)、料飲33億7,800万円(16.8%)、その他18億6,800万円(9.3%)。非客室が82.4%を構成する。婚礼部門については「宴会場改装や提案力の向上など、ハード・ソフト両面の強化により、施行件数が増加」と同社は説明している。

出典:各社IR開示(ホテル、ニューグランド 2026年11月期第2四半期決算短信/藤田観光 2025年12月期決算短信)よりホテルバンク編集部作成

帝国ホテル(9708)は部門別の実額を決算短信では開示していないが、2026年3月期のホテル事業売上高は558億6,500万円(前期比6.7%増)、連結売上高は562億6,700万円(同7.0%増)。宴会については「一般宴会は総利用人数が減少したものの、単価の上昇により、一案件当たりの収益性が向上し、売上増」、婚礼については「少人数婚礼を中心とした件数の獲得に努めたことにより、売上増」と記載している。件数ではなく単価と案件構成で伸ばした、という説明である。

上場ホテル運営会社の部門別売上構成(IR開示ベース)
開示主体 対象期間 客室(宿泊) 非客室 開示区分
ホテル、ニューグランド
(開示3部門合計)
2025年12月〜
2026年5月
35.2%
11億1,466万円
64.8%
20億5,401万円
宿泊/レストラン/宴会
藤田観光
(ラグジュアリー&バンケット事業)
2025年1月〜
12月
17.6%
35億3,300万円
82.4%
165億9,100万円
宿泊/婚礼/宴会/料飲/その他
藤田観光
(連結全社)
2025年1月〜
12月
70.9%
581億2,100万円
29.1%
238億8,300万円
同上(宿泊特化型を含む全社)
帝国ホテル
(ホテル事業)
2025年4月〜
2026年3月
部門別実額は短信では非開示
ホテル事業売上高 558億6,500万円(前期比6.7%増)
定性記述のみ

出典:各社IR開示よりホテルバンク編集部作成。構成比は、ホテル、ニューグランドと藤田観光ラグジュアリー&バンケット事業は開示区分の合計、藤田観光連結全社は連結売上高(820億400万円)を分母として算出

3つの数字の並びが示しているのは、非客室売上の厚みは「ホテルかどうか」ではなく「どの床を持っているか」で決まる、ということだ。宿泊特化型を多数抱える藤田観光の連結では宿泊が70.9%を担う宿泊主導の構成である一方、大規模宴会場を持つラグジュアリー&バンケット事業単独では非客室が82.4%に達する。同じ企業の中でも、床の構成が変われば収益の性格はここまで変わる。

REIT月次からは非客室が見えない — 補足として

投資家が最も高頻度で触れるホテルの実績データは、上場ホテルREITの月次運営実績だろう。ただしそこで開示されるのは客室の3指標が中心で、宴会・婚礼の売上は含まれない。参考までに直近の公表値を挙げると、インヴィンシブル投資法人が公表した2026年7月の国内ホテル101物件の実績は稼働率86.3%、ADR15,100円、RevPAR13,039円、売上高100億2,700万円(前年同月比で稼働率+1.9pt、ADR-1.0%、RevPAR+1.2%)。ジャパン・ホテル・リート投資法人の2026年7月・変動賃料等導入29ホテルは稼働率83.1%、ADR21,806円、RevPAR18,119円、売上高70億2,300万円(同 稼働率+4.0pt、ADR+0.1%、RevPAR+5.1%)である。

ここで注意したいのは集計範囲の表記だ。「国内ホテル101物件」「変動賃料等導入29ホテル」というように、各投資法人が見出しとして示す母集団の定義は揃っていない。「全ポートフォリオ」と書かれていても、改装休館中の物件を除外している旨が注記されている場合がある。したがって投資法人間でADRやRevPARの絶対水準を横並びで比べる読み方は成立しにくく、本稿でもREITの数値は客室側の足元を確認するための補足にとどめる。非客室売上の規模を測るには、前節のような運営会社の部門別開示に戻る必要がある。

客室の季節性と非客室の季節性は、9〜10月で44pt開く

非客室売上を「客室以外のアップサイド」として評価するなら、両者の暦が重なるのかズレるのかが実務上いちばん効いてくる。そこで、前節までの婚礼の季節指数と、当社が算出するシティホテルの推定成約ADRの季節指数を同じ物差しで並べた。

客室側の指数は、シティホテルの施設数が多い12都道府県(東京・大阪・神奈川・愛知・福岡・京都・北海道・兵庫・千葉・埼玉・宮城・広島)のシティホテル推定成約ADRについて、2023年9月〜2026年8月の36ヶ月を対象に、各都道府県の期間平均を100として基準化し平均したものである(各月N=36観測)。

出典:婚礼=経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」(2022-2024年平均)/客室=メトロエンジンリサーチ(シティホテル推定成約ADR、12都道府県・2023年9月〜2026年8月、各月N=36観測)よりホテルバンク編集部作成

2本の線は、ぴったり重なるわけでも、きれいに逆位相になるわけでもない。特徴が出るのは次の4つの局面である。

客室ADR指数と婚礼売上指数の差が大きい局面
局面 客室ADR指数 婚礼売上指数 読み方
10月100.2145.0+44.8pt客室が平年並みの月に非客室が年間2番目の山
9月95.5117.6+22.1pt客室が年間平均を下回る月を非客室が補う
11月106.0154.5+48.5pt双方が同時にピーク。人員と厨房の同時負荷が最大
8月109.064.9−44.1pt客室が年間最高、非客室は年間で下から2番目
1月93.050.2−42.8pt双方が年間最低帯。固定費の負担が相対的に重い月
5月104.0124.2+20.2pt春の山。連休の客室需要と婚礼が並走

出典:経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」/メトロエンジンリサーチ よりホテルバンク編集部作成

要点は3つに整理できる。第一に、9〜10月は客室単価が年間平均の前後にとどまる一方で、非客室は年間の山に入る。フルサービス型の施設にとって、この2ヶ月は非客室の寄与が相対的に最も大きくなる期間である。第二に、8月は正反対で、客室が年間最高水準(指数109.0)まで上がるのに対し非客室は指数64.9。夏の収益は客室に大きく依存する形になる。第三に、11月は両方が同時にピークを迎える。売上の観点では最も厚い月だが、宴会場と客室の運営が同時に立ち上がるため、人員配置と厨房キャパシティの制約が最も表面化しやすい月でもある。

投資・アセットマネジメントの視点に置き換えるなら、非客室の床を持つ施設は、客室単体の月次カーブでは説明できない収益の波を1本余計に抱えている、ということになる。客室のRevPARだけでキャッシュフローの月次分布を推計すると、9〜10月を過小に、8月を過大に見積もる方向にズレが出やすい。客室指標のRevPARと、非客室を含めた総売上ベースのTRevPARやGOPPARとの使い分けについては、RevPARとは|計算式はADR×客室稼働率で整理している。

フルサービス型が厚いのはどこか — シティ1,153施設・リゾート1,728施設

最後に、こうした非客室の床を持ちうる施設が全国のどこに分布しているかを、当社データで確認する。メトロエンジンリサーチが追跡する国内約168,000施設のうち、予約サイト上で稼働が確認できる約27,000施設・約126万室を母集団として、2026年8月時点でシティホテルに分類される施設は全国1,153施設、リゾートホテルは1,728施設だった。

都道府県別 シティホテル・リゾートホテルの施設数と推定成約ADR(2026年8月時点)
都道府県 シティ
施設数
シティ
推定成約ADR
リゾート
施設数
リゾート
推定成約ADR
県内全施設数 シティ
構成比
東京都120¥21,265(N=109)22¥18,885(21)2,4065.0%
大阪府98¥13,078(N=97)7¥19,697(7)1,2427.9%
北海道76¥17,801(N=75)154¥19,240(147)2,1853.5%
京都府65¥19,662(N=59)17¥18,260(14)2,2572.9%
千葉県53¥10,699(N=53)76¥20,646(72)1,1404.6%
兵庫県49¥13,366(N=47)51¥24,538(51)1,2184.0%
神奈川県43¥14,683(N=42)57¥28,639(51)1,1303.8%
福岡県42¥18,479(N=41)16¥22,355(14)9494.4%
愛知県32¥12,030(N=31)11¥15,967(11)7564.2%
静岡県31¥13,522(N=31)154¥22,524(150)1,9051.6%
長野県18¥13,891(N=16)139¥21,662(124)2,1200.8%
沖縄県15¥20,654(N=15)303¥22,291(282)2,2290.7%

出典:メトロエンジンリサーチ(2026年8月時点。推定成約ADRの括弧内は算定対象施設数)よりホテルバンク編集部作成

シティホテルの実数では東京都120施設、大阪府98施設、北海道76施設、京都府65施設が上位に並ぶ。一方、県内の全施設に占める構成比で見ると、表の12都道府県では大阪府が7.9%と最も高く、東京都5.0%、千葉県4.6%、福岡県4.4%、愛知県4.2%が続く。都市部でも、シティホテルの密度は府県ごとに倍近い開きがある。

推定成約ADRは、2026年8月時点で表の12都道府県のうちシティホテルが東京都¥21,300、沖縄県¥20,700、京都府¥19,700、福岡県¥18,500。リゾートホテルは神奈川県¥28,600、兵庫県¥24,500、静岡県¥22,500、福岡県¥22,400が上位となる。ここで示しているのはあくまで客室単価であり、宴会場を含む非客室の売上はこの数値には反映されていない点に留意したい。同じADR水準の施設でも、宴会場と婚礼施行の有無によって1施設あたりの年間売上は大きく変わる。レストランなど非宿泊のF&B収益が宿泊単価にどう波及するかは、ルーフトップダイニング併設シティホテルの夏季ADRリフト構造2026が別の角度から掘り下げている。

リゾートホテルの厚いエリア(沖縄303、北海道154、静岡154、長野139)と、シティホテルの厚いエリア(東京、大阪、北海道、京都)は重なり方が異なる。婚礼・宴会の需要は基本的に居住人口と企業集積に紐づくため、前者はリゾートウェディングという別の需要層、後者は地元の婚礼・法人宴会という需要層と向き合うことになる。北海道は両方が厚い、やや特殊な位置にある。

まとめ — 非客室売上は「もう1本の季節カーブ」

本稿で確認した数値を整理する。専業事業者ベースの結婚式場業は2024年に年間2,292億円・63,190件、組単価は約363万円。年間売上の34.0%が9〜11月、27.0%が3〜5月に集まり、6ヶ月で60.9%を占める二山構造を持つ。10年間で件数は28.7%減、組単価は32.8%上昇し、1件あたりで稼ぐ構造に寄っている。

ホテル側では、部門別の実額を開示している運営会社の数値を見る限り、非客室の比率は床の構成次第で大きく振れる。開示3部門ベースで非客室が64.8%を占める例(ホテル、ニューグランド)、宴会場を中核とするセグメント単独で82.4%に達する例(藤田観光 ラグジュアリー&バンケット事業)、宿泊特化型を含む連結全社では宿泊が70.9%を担う例(同社連結)が、同じ資料の中に並存している。

そして季節性は、客室のそれと完全には重ならない。9〜10月は客室単価が年間平均前後にとどまる一方で非客室が年間の山に入り、指数差は10月に44.8ptまで開く(両者が同時にピークを迎える11月は48.5pt)。逆に8月は客室が年間最高(指数109.0)で非客室が64.9と、関係が反転する。客室のRevPARだけで年間キャッシュフローの月次分布を組むと、この2つの局面でズレが生じる。

床をどう再配分するか——宴会場を客室に転換すべきか否か——という論点は、当メディアの既刊「ホテル宴会場の客室転換が成立する20都道府県」で扱っている。本稿はその手前、非客室売上そのものがどれだけの規模と季節の形を持っているかを確認するところまでを対象とした。転換の是非を判断する前に、いま床が生んでいる売上の暦を押さえておくことが、評価の前提になる。

あわせて読みたい

参考資料・出典一覧

■ 政府統計

■ 上場企業IR開示

■ 市場データ

  • メトロエンジンリサーチ — シティホテル・リゾートホテルの施設分布および推定成約ADR(2026年8月時点、および2023年9月〜2026年8月の月次系列)

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