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首位交代は米国、2位台湾・3位韓国 — 国籍別宿泊の県別受け皿マップ2026

投稿日 : 2026.08.08 更新日 : 2026.09.02

インバウンド

首位交代は米国、2位台湾・3位韓国 — 国籍別宿泊の県別受け皿マップ2026

訪日客の国籍構成が、静かに、しかし決定的に入れ替わっている。観光庁が2026年7月31日に公表した「宿泊旅行統計調査」2026年5月・第2次速報によれば、5月の国籍(出身地)別外国人延べ宿泊者数は第1位が米国(1,721,740人泊)、第2位が台湾(1,698,370人泊)、第3位が韓国(1,596,820人泊)となった。長く首位を占めてきた中国は第4位(1,127,660人泊、前年同月比−53.8%)に後退している。首位3市場の差はわずか12万人泊ほどで、事実上の三つ巴である。

本稿では、この「国籍別首位の交代」という新しい事実を、都道府県ごとの受け皿と突き合わせて読み解く。誰が来ているかが変わったとき、その客を実際に受け止めているのはどの県なのか。そして、国籍構成の違いは客室単価やレビューに現れる言語構成とどう対応しているのか。全国の合計値ではなく、47都道府県の分布として見ることで、構造の輪郭が浮かび上がる。

本記事における指標の定義

  • ADR(平均客室単価):各施設が公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(そのエリアの標準的な施設の水準)。
  • 外国人延べ宿泊者数:観光庁「宿泊旅行統計調査」による推計値。国籍(出身地)別の集計は客室数20室以上の施設を対象としており、全施設ベースの総数(2026年5月=1,451万人泊)とは母集団が異なります。
  • レビュー言語構成:宿泊者口コミの記述言語の構成比。記述言語は投稿者の国籍を示すものではありません(英語で書く非英語圏の旅行者、日本語で書く在住外国人などが含まれます)。
  • データ出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」、メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部調べ
Key Takeaways
  • 米国が2か月連続で首位。2026年5月の国籍別外国人延べ宿泊者数は米国13.5%・台湾13.3%・韓国12.5%と、上位3市場が13%前後で並ぶ事実上の三つ巴。
  • 第1次速報の「1,382万人泊・−13.4%」は上方改定済み。第2次速報では1,451万人泊・前年同月比−9.0%。速報値を引用した資料は読み直しが必要。
  • 受け皿は3類型に分かれる。米国が最大市場となるのは7都府県のみ、台湾は29道県、韓国は11府県。全国の首位と自県の主力市場は一致しない。
  • 米国比率とADRの相関は+0.46。米国比率15%以上の6都府県の推定成約ADR中央値は約¥13,000、8%未満の24道県は約¥8,900で約1.45倍の開き。
  • 宿泊構成比と言語構成にはずれがある。山口県は韓国比率44.3%に対し韓国語レビュー1.6%、岩手県は台湾比率51.7%に対し繁体字1.8%。可視化の伸びしろが残る。

まず数字を確認する — 「1,382万人泊・−13.4%」は改定された

この5月分については、7月6日公表の第1次速報段階で外国人延べ宿泊者数1,382万人泊・前年同月比−13.4%という数字が広く報じられた。ただし7月31日公表の第2次速報では1,451万人泊・前年同月比−9.0%へと上方改定されている。延べ宿泊者数全体も5,339万人泊から5,429万人泊(前年同月比−3.2%)に、客室稼働率は60.6%から61.0%に修正された。速報段階の数字を引用している資料は、この改定幅を織り込んで読み直す必要がある。

もうひとつ、比較の土台に関わる重要な変更がある。観光庁は統計精度の向上を目的として、令和8年(2026年)1月分調査から層化基準を「従業者数」から「客室数」へ変更した。同庁自身が「対前年(同月)比、対前年(同月)差については、見直しの影響が含まれている可能性がある点に留意」と注記しているとおり、2026年の前年同月比は方式変更の影響を完全には切り離せない。本稿でも前年同月比は方向性の目安として扱い、構成比(シェア)を主たる分析軸に据える。

なお三大都市圏(埼玉・千葉・東京・神奈川・愛知・京都・大阪・兵庫の8都府県)と地方部の対比では、外国人延べ宿泊者数の前年同月比は三大都市圏が−11.5%、地方部が−3.4%であった。地方部の構成比は2024年5月の29.0%、2025年5月の30.8%から、2026年5月には32.7%へ切り上がっている。総量が減るなかで、分散だけは進んでいる格好だ。

米国・台湾・韓国が僅差で並ぶ — 上位3市場の三つ巴

国籍別の内訳を見ると、上位3市場のシェアは米国13.5%、台湾13.3%、韓国12.5%と、いずれも13%前後に集中している。前年同月比は米国+1.9%、台湾+12.2%、韓国+5.7%で、いずれも増加。米国が首位に立ったのは2026年4月分で2023年3月以来3年1か月ぶりのことであり、5月はそれに続く2か月連続の首位となる。

伸び率で目を引くのはむしろ上位の外側だ。マレーシア+41.1%、ロシア+31.1%、インド+20.9%と、二桁後半の増加を示す市場が並ぶ。インドは239,570人泊で第13位、マレーシアは215,200人泊で第14位。総量ではまだ上位3市場の7分の1程度だが、増加率では明確に他を上回っており、今後の受け皿づくりを考えるうえで無視できない伸びしろを持つ。

一方の中国は1,127,660人泊・前年同月比−53.8%で、シェアは8.8%まで低下した。これは事実として記録しておくべき数字だが、本稿の関心は「減った分をどこが埋めたか」ではなく「いま来ている客を、どの県がどう受け止めているか」にある。中国市場の減少をどの市場が、どの県で埋めたのかについては、中国−57%の穴を誰が埋めたか|中国依存県の需要「入れ替わり地図」2026で県別に検証している。

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」(2026年5月・第2次速報)よりホテルバンク編集部作成

受け皿は3つの型に分かれる — 米国型・台湾型・韓国型

ここからが本題である。全国合計では三つ巴でも、都道府県単位で見ると3市場の分布はまったく重ならない。各県の外国人延べ宿泊者数に占める米国・台湾・韓国の比率を計算し、3市場のうちどれが最大かで色分けすると、米国が最大となるのは7都府県(東京・京都・神奈川・千葉・広島・奈良・栃木)にとどまるのに対し、台湾が最大の県は29道県、韓国が最大の県は11府県に及ぶ。

つまり米国は「全国首位でありながら、空間的にはきわめて集中している」市場である。米国の宿泊は東京都だけで814,060人泊(同国全体の47.3%)、京都府251,370人泊を加えると6割を超える。対して台湾は29道県で最大市場となっており、地方部への面的な広がりという点では最も厚い。韓国は九州・瀬戸内西部という近距離帯にはっきり束ねられている。

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」(2026年5月・第2次速報)よりホテルバンク編集部作成

代表的な県を型ごとに並べると、構成比の違いは一目でわかる。米国型の京都府では米国19.6%に対し台湾5.7%・韓国4.3%、逆に韓国型の愛媛県では韓国49.2%に対し米国4.7%、台湾型の岩手県では台湾51.7%に対し米国5.0%・韓国4.8%となる。同じ「インバウンド」でも、県によって相手にしている市場はほとんど別物だ。

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」(2026年5月・第2次速報)よりホテルバンク編集部作成

米国比率が高い10都府県

表1:米国比率が高い10都府県 — 構成比・実数・推定成約ADR(外国人延べ宿泊者数は2026年5月・第2次速報、ADRは2026年5月集計)
都道府県米国比率米国(人泊)外国人計(人泊)推定成約ADRADR算定施設数
京都府19.6%251,3701,281,710¥17,000607
神奈川県19.4%72,400372,960¥14,500584
東京都18.8%814,0604,326,020¥15,1001,145
栃木県17.7%5,48031,010¥11,400414
千葉県17.0%62,040365,850¥11,000421
広島県15.1%28,760190,100¥9,600303
沖縄県12.1%73,950609,940¥11,200501
石川県11.8%24,320205,540¥11,700239
奈良県11.5%3,92034,100¥13,000134
群馬県11.3%2,58022,880¥12,300444

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」(2026年5月・第2次速報)/メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

米国比率上位には、京都・神奈川・東京というゴールデンルートの中核に加えて、栃木県(17.7%)と広島県(15.1%)が入る。日光・鬼怒川を擁する栃木、平和記念公園と宮島を擁する広島は、いずれも欧米豪の周遊動線に組み込まれてきた地域であり、この2県が首都圏近郊と並ぶ米国比率を示している点は、周遊型の文化観光需要が実際に地方へ届いていることの裏づけといえる。

台湾比率が高い10道県

表2:台湾比率が高い10道県 — 構成比・実数・推定成約ADR(同上)
都道府県台湾比率台湾(人泊)外国人計(人泊)推定成約ADRADR算定施設数
岩手県51.7%12,84024,830¥7,500257
岡山県40.5%23,42057,760¥8,700192
福島県40.5%8,31020,520¥7,700448
香川県39.9%34,60086,770¥8,300160
宮城県39.1%29,22074,700¥9,400293
青森県37.8%15,32040,550¥8,200188
沖縄県34.9%212,780609,940¥11,200501
大分県32.0%34,380107,330¥15,300468
宮崎県31.0%6,38020,560¥6,800164
鳥取県30.0%4,75015,850¥8,700151

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」(2026年5月・第2次速報)/メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

台湾型の顔ぶれは東北・山陰・四国・九州にまたがる。岩手県51.7%、岡山県40.5%、福島県40.5%、香川県39.9%、宮城県39.1%と、外国人宿泊の4割から5割を単一市場が占める県が並ぶ。台湾からの直行便・チャーター便が地方空港に就航してきた蓄積が、そのまま宿泊の構成比に現れている。総量が数万人泊規模の県にとって、台湾は事実上の主力市場である。

韓国比率が高い10県

表3:韓国比率が高い10県 — 構成比・実数・推定成約ADR(同上)
都道府県韓国比率韓国(人泊)外国人計(人泊)推定成約ADRADR算定施設数
愛媛県49.2%28,53058,000¥7,400211
山口県44.3%7,88017,790¥7,900199
佐賀県43.3%7,62017,590¥12,300157
福岡県38.5%243,620633,570¥12,400475
熊本県37.2%41,060110,390¥10,900399
長崎県35.1%20,32057,910¥8,100257
大分県33.2%35,620107,330¥15,300468
徳島県29.2%4,99017,080¥6,800141
香川県28.2%24,44086,770¥8,300160
鹿児島県26.4%14,71055,810¥7,000320

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」(2026年5月・第2次速報)/メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

韓国比率の上位10県のうち6県(佐賀・福岡・熊本・長崎・大分・鹿児島)を九州が占め、これに四国の愛媛・徳島・香川と本州西端の山口が続く。愛媛県は49.2%と、単一市場への集中度としては全国最高水準にある。福岡県は243,620人泊と、韓国市場の絶対量でも東京都(312,570人泊)、大阪府(308,050人泊)に次ぐ全国3位。比率38.5%と実数の両方で厚みを持つ、数少ない県である。

国籍構成と単価水準 — 米国比率が高い県ほどADRは高い

では、この3つの型は宿泊単価とどう対応しているか。メトロエンジンリサーチのデータから、2026年5月の都道府県別の推定成約ADRを取り、外国人延べ宿泊者数15,000人泊以上の42都道府県について米国比率との関係を見た。結果は相関係数+0.46で、米国比率が高い県ほどADRが高い傾向がはっきり出る。台湾比率は−0.39、韓国比率は−0.23と、いずれも逆向きだった。

米国比率で3つの帯に分けると差はさらに明快になる。米国比率15%以上の6都府県(東京・京都・神奈川・千葉・広島・栃木)の推定成約ADR中央値は約¥13,000、8〜15%の12都府県では約¥10,600、8%未満の24道県では約¥8,900。上位帯と下位帯で約1.45倍の開きがある。

ただし、これを「米国客が単価を押し上げている」と読むのは早い。米国比率が高い県は東京・京都・神奈川といった、そもそも構造的にADRが高い大都市・国際観光地に偏っている。因果の向きはむしろ逆で、単価水準の高い都市型・文化観光型のマーケットに米国需要が集まりやすい、と考えるほうが自然だ。国籍構成はADRの原因というより、マーケットの性格を映す指標として読むのが妥当だろう。県別の外国人宿泊とADR水準がどう連動してきたかは、外国人宿泊が底入れ反転した2026年春 — 都道府県別ADRとの連動を読むで時系列に沿って追っている。

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」(2026年5月・第2次速報)/メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

この視点で見ると、散布図の右下・左上に位置する県が興味深い。広島県は米国比率15.1%と上位帯にありながら推定成約ADRは約¥9,600で、都市型の上位帯より低い水準にある。米国需要の厚みに対して単価帯にはまだ幅を持たせる余地があるという見方ができる。逆に大分県は米国比率2.9%と低いが推定成約ADRは約¥15,300で全国上位にあり、これは別府・湯布院という高付加価値の旅館・リゾート供給が単価を形づくっているためだ。国籍構成と単価は、供給側の業態構成というもうひとつの軸を挟んで結びついている。

前年同月比の伸びは、国籍構成だけでは説明できない

興味深いことに、県別の外国人延べ宿泊者数の前年同月比と国籍構成の相関はほとんどない。台湾比率との相関係数は+0.19、韓国比率は+0.02、米国比率は−0.04、中国比率は−0.01(いずれもN=47)。「台湾が強い県が伸びた」「中国依存が高い県が落ちた」といった単純な図式は、少なくとも2026年5月の一断面では成り立たない。

実際、前年同月比の上位は愛媛県+47.6%、茨城県+46.2%、山口県+33.8%、青森県+33.0%、福井県+30.3%、岩手県+29.1%と並び、韓国型(愛媛・山口)と台湾型(青森・岩手)が混在する。減少側も奈良県−27.9%、愛知県−20.4%、大阪府−16.8%、香川県−16.5%、京都府−15.9%と、米国型・台湾型・韓国型が入り混じる。伸びを決めているのは国籍構成そのものではなく、航空便の増減、イベント、前年の反動といった県ごとの個別事情の合成であることがうかがえる。

言い換えれば、国籍構成は「どの市場向けに受け皿を整えるか」を決める設計図としては有効だが、短期の増減を予測する変数としては弱い。前年同月比を追うより、自県がどの型に属し、その市場の総量が中期的にどう動くかを見るほうが、投資や商品設計の判断には結びつきやすい。

レビュー言語で見る受け皿の厚み

最後に、受け入れ側の実態をレビューから見る。ホテルバンク編集部が集計した宿泊者口コミ(直近24ヶ月)について、記述言語別の件数構成を21都道府県で比較した。ここで記述言語は投稿者の国籍ではないという点を改めて強調しておきたい。英語は非英語圏の旅行者にとっても共通語として使われ、逆に韓国語・繁体字中国語で書かれた口コミはその言語圏の旅行者に強く紐づく傾向がある。あくまで「どの言語で語られる宿泊体験がどれだけ蓄積されているか」を示す指標として読む必要がある。

出典:ホテルバンク編集部調べ

表4:宿泊者口コミの記述言語別構成比(直近24ヶ月・21都道府県)
都道府県分析件数英語繁体字中国語韓国語
京都府158,48249.3%3.2%1.5%
東京都462,88145.5%3.5%2.0%
大阪府228,87928.6%3.9%3.3%
広島県71,71226.9%1.3%1.0%
千葉県131,86122.5%1.7%0.7%
神奈川県149,67921.2%1.4%0.8%
石川県42,89120.9%2.0%0.4%
北海道223,62513.7%4.5%4.2%
沖縄県103,43513.4%9.0%3.6%
福岡県116,73812.5%6.4%7.9%
愛知県98,26411.4%3.9%1.8%
大分県52,91010.8%4.4%6.7%
岡山県34,52210.4%4.4%0.8%
香川県29,19110.1%3.6%2.6%
青森県29,9429.4%3.3%0.9%
熊本県50,0859.4%5.0%4.0%
愛媛県35,9777.4%1.8%5.3%
岩手県29,6925.4%1.8%0.4%
宮城県72,5174.7%2.7%0.4%
佐賀県19,6494.1%2.2%4.7%
山口県24,6123.1%0.5%1.6%

出典:ホテルバンク編集部調べ

英語で書かれた口コミの比率は、京都府49.3%、東京都45.5%、大阪府28.6%、広島県26.9%、千葉県22.5%、神奈川県21.2%、石川県20.9%と続く。宿泊統計の米国比率上位(京都19.6%、神奈川19.4%、東京18.8%、千葉17.0%、広島15.1%、石川11.8%)とほぼ同じ顔ぶれが並んでおり、英語で語られる宿泊体験の蓄積と、米国需要の厚みは強く対応している。とりわけ広島県と石川県は、宿泊の絶対量では大都市に及ばないにもかかわらず英語比率が20%を超えており、英語での情報発信・接客の蓄積という点では上位圏に位置している。

韓国語比率は福岡県7.9%、大分県6.7%、愛媛県5.3%、佐賀県4.7%、北海道4.2%、熊本県4.0%が上位で、これも宿泊統計の韓国型クラスタと重なる。繁体字中国語比率は沖縄県9.0%が突出し、福岡県6.4%、熊本県5.0%、北海道4.5%、大分県4.4%、岡山県4.4%が続く。

一方で、宿泊の構成比と言語構成の間に開きがある県もある。山口県は韓国比率44.3%と全国2位でありながら韓国語レビュー比率は1.6%、岩手県は台湾比率51.7%で全国1位ながら繁体字中国語レビュー比率は1.8%にとどまる。宮城県も台湾比率39.1%に対し繁体字2.7%である。これは受け入れ体制の厚みをそのまま示す数字ではない。団体・パッケージ経由の比率、施設規模、口コミ投稿の慣習といった要因で、外国語での口コミ蓄積は宿泊実績に比べて遅れて立ち上がる性質がある。裏を返せば、これらの県にはすでに来ている客の声を自国語で可視化するという、手つかずの伸びしろが残っているということでもある。

言語ごとの評価軸の違いも押さえておきたい。東京都のレビューを言語別に見ると、上位に挙がる話題は日本語が「駅近(25.9%)」「客室の清潔感(21.9%)」「丁寧な接客(17.1%)」であるのに対し、英語は「駅近(30.3%)」「中心街立地(26.8%)」「客室の清潔感(23.8%)」、繁体字中国語は「駅近(41.6%)」「中心街立地(25.8%)」「客室の広さ(16.6%)」、韓国語は「駅近(34.7%)」「客室の清潔感(27.8%)」「丁寧な接客(24.8%)」となる。繁体字中国語では立地への言及が突出し、韓国語では清潔感と接客の比重が高い。同じ館でも、市場によって評価されるポイントの重心は動く(言語別の評価軸の差は東京の人気ホテル 言語別レビュー評価ギャップ分析でさらに細かく分解している)。

まとめ — 「全国の首位」より「自県の型」を見る

2026年5月の宿泊統計が示したのは、単に首位が中国から米国に移ったという事実だけではない。上位3市場が13%前後で拮抗し、それぞれがまったく異なる地理的分布を持つ、という多極構造そのものである。米国は7都府県に集中し単価の高い都市・文化観光型マーケットと結びつく。台湾は29道県で最大市場となり地方分散の主役を担う。韓国は九州・瀬戸内西部という近距離帯を厚く支える。

この構造のもとでは、「全国の首位が誰か」より「自県がどの型に属するか」のほうが、はるかに実務的な意味を持つ。米国型の県であれば、英語圏の周遊動線に乗る商品設計と単価帯の幅出しが軸になる。台湾型・韓国型の県であれば、すでに来ている主力市場の言語で体験を可視化し、リピートを厚くする余地が大きい。そして全国レベルでは、インド+20.9%、マレーシア+41.1%といった伸びの速い市場が、次の受け皿づくりのテーマとして立ち上がりつつある。

総量が前年を下回る局面は、量を追うより構成を整える局面でもある。国籍別の分布と自館・自地域の受け皿を突き合わせる作業は、いまこそ手を付ける価値がある。

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参考資料・出典一覧

■ 政府統計

■ データソース

国籍(出身地)別×都道府県別の外国人延べ宿泊者数は観光庁「宿泊旅行統計調査」2026年5月・第2次速報(2026年7月31日公表)の集計結果(参考第1表)。都道府県別の推定成約ADRはメトロエンジンリサーチの2026年5月集計(算定施設数は各表に記載)。レビュー言語構成および言語別の言及傾向はホテルバンク編集部が集計した直近24ヶ月の宿泊者口コミ(21都道府県)。

■ 試算前提

国籍別の構成比は各都道府県の外国人延べ宿泊者数を分母とする単純比。米国比率とADRの相関係数は外国人延べ宿泊者数15,000人泊以上の42都道府県、前年同月比との相関はN=47を母集団とする。ADR帯別の水準は各帯に属する都道府県の推定成約ADRの中央値。「最大市場」は米国・台湾・韓国の3市場のうち構成比が最も高いものを指す。

■ 限界・留意点

(1) 国籍別集計は客室数20室以上の施設が対象で、全施設ベースの総数(1,451万人泊)とは母集団が異なる。(2) 2026年1月分調査から層化基準が従業者数から客室数へ変更されており、前年同月比には見直しの影響が含まれる可能性がある。(3) 推定成約ADRは公開価格に基づく推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なる。(4) レビューの記述言語は投稿者の国籍を示さない。(5) 本稿は2026年5月の一断面の分析であり、将来の需要を予測するものではない。

■ 市場データ

  • メトロエンジンリサーチ — 都道府県別の推定成約ADR(2026年5月、算定施設数は表中に記載)
  • ホテルバンク編集部調べ — 宿泊者口コミの記述言語別構成および言語別の言及傾向(直近24ヶ月、21都道府県・分析件数は表中に記載)

■ 報道

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