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京都紅葉ピークの「あふれ」はどこへ2026 — 大津・草津・宇治への宿泊分散をフォワードADRで読む

投稿日 : 2026.07.29

京都府

季節・イベント

京都紅葉ピークの「あふれ」はどこへ2026 — 大津・草津・宇治への宿泊分散をフォワードADRで読む

京都市内の紅葉は例年11月中旬から下旬にかけて見頃を迎え、この2〜3週間に宿泊需要が一気に集中する。メトロエンジンリサーチの推定成約ADR(後述)でみると、京都府の11月の水準は年内でも突出して高く、清水寺や東福寺を擁する東山区では1泊3万円台に届く。一方、JR琵琶湖線でわずか10〜20分の大津・草津、JR奈良線で結ばれる宇治は、同じ11月でも価格がほとんど跳ねない。本稿では、京都紅葉ピークの「あふれ」がどこへ向かうのか、フォワードADR(先々の掲載に基づく推定成約単価)と稼働率から、大津・草津・宇治という受け皿の厚みを定量的に読み解く。

本記事における指標の定義

  • ADR(平均客室単価):各施設がOTA等で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。
  • フォワードADR:調査時点でOTA等に掲載されている先々の販売価格に基づく推定成約単価。チェックイン日に近づくにつれ変動します。
  • OCC(稼働率):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値、REIT月次公表値との整合性検証で概ね数pt程度の精度を確認済)。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ。母集団はメトロエンジンリサーチが把握する範囲でOTA上に掲載が確認できる施設であり、全数調査ではありません。
Key Takeaways
  • 京都府11月ADRは¥24,800(9月比+77%)、東山区¥31,500。同月の草津は▲8%・宇治+0.5%と、受け皿3エリアは据え置き圏にとどまる。
  • — 京都駅前(下京区)¥23,900に対し草津¥9,300・宇治¥8,500は約4割の単価。JRで10〜20分の距離を保ったまま1泊1万円超の差が生まれる。
  • 2026年11月フォワードADRは京都府¥26,100(前年比+5.1%)、東山区¥36,900。受け皿は大津¥16,500で横ばい圏を維持する見通し。
  • — 滋賀県は2026年6月稼働率88.0%(旅館92.0%・リゾート93.5%)と実需のある活きた市場であり、単なる安宿地帯ではない。

紅葉ピークで京都だけが跳ねる — 11月ADRの非対称性

まず、直近で確定した2025年の実績(推定成約ADRの確定基準値)で季節パターンを確認する。京都府全体のADRは9月の14,000円から10月に19,200円、11月には24,800円へと駆け上がり、9月比で+77%に達した。京都駅を擁する下京区(N=157施設)でも9月13,400円→11月23,900円と+79%、東山区(N=43施設)に至っては11月に31,500円まで上昇する。紅葉の見頃が11月後半に凝縮するほど、京都市内の宿泊単価は年内の頂点を形成する。

ところが、湖岸を挟んで隣接する滋賀県側の動きはまったく異なる。大津市(N=33施設)は11月に16,300円と一定の上昇はみせるものの、京都府の頂点には遠く及ばない。草津市(N=11施設)は9月10,100円→11月9,300円とむしろ横ばい〜微減、宇治市(N=3施設)も年間を通じて8,400〜8,800円のほぼ一定で推移する。京都が+77%跳ねる同じ11月に、草津は▲8%、宇治は+0.5%。この非対称性こそが、紅葉需要の「あふれ」を受け止める余地の源泉である。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(2025年実績・推定成約ADR)

京都市自身も、場所・季節・時間の3つの「分散化」を観光政策の柱に掲げている。混雑の平準化は行政の重点テーマであると同時に、周辺エリアの宿にとっては明確な収益機会でもある。京都市の観光客数は年間約5,606万人、外国人宿泊客数は約821万人と過去最高圏で推移しており(京都市発表)、市内の受け入れ余力が細るほど、隣接エリアが取り込める需要の裾野は広がる。

11月の価格ギャップ — 京都駅前と受け皿3エリアの距離

紅葉ピークの11月に、京都市の中核である京都駅前(下京区)と、受け皿となる大津・草津・宇治のADRを並べると、価格差は旅行者の宿泊予算を左右する規模になる。2025年11月の推定成約ADRは、下京区23,900円に対し、大津16,300円(差▲7,600円)、草津9,300円(差▲14,600円)、宇治8,500円(差▲15,400円)。草津・宇治は京都駅前の約4割の単価で、2名1泊なら1万円以上、連泊すればさらに差が開く。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(2025年11月実績・推定成約ADR)

この価格差は、単なる「安さ」ではなく移動時間との交換で成立している。JR琵琶湖線の新快速なら京都駅から大津駅まで約10分、草津駅まで約20分(運賃420円程度)。宇治はJR奈良線のみやこ路快速で京都駅から約17〜30分、あるいは京阪宇治線でもアクセスできる。いずれも京都市内のホテルから清水寺や嵐山へ市バスで向かう混雑を思えば、実移動時間はむしろ短いことすらある。「紅葉は京都市内で楽しみ、宿は湖側・宇治側に置く」という選択は、時間の面でも十分に現実的だといえる。京都から10分圏の滋賀・琵琶湖がもつ需要とADR・供給の構造については、京都10分の近江アウトレット需要をADRと供給で読む2026夏も参考になる。

エリア 京都駅からの所要時間 11月ADR
(2025実績)
京都駅前との差 N(施設)
京都市・下京区(京都駅前)¥23,900157
大津市(JR琵琶湖線)約10分¥16,300▲¥7,60033
草津市(JR琵琶湖線)約20分¥9,300▲¥14,60011
宇治市(JR奈良線)約17〜30分¥8,500▲¥15,4003

※宇治市はOTA掲載施設が少なく(N=3)推定成約ADRの標本が小さいため、参考値として扱う。所要時間はJR新快速・快速の標準的な所要時間。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

2026年フォワードADR — 京都はさらに一段高、受け皿は据え置き圏

次に、2026年秋の先行掲載から算出したフォワードADR(調査時点の掲載に基づく推定成約単価)を確認する。京都府の2026年11月は26,100円と、2025年実績の24,800円から前年同月比+5.1%。紅葉ピークの単価はさらに一段切り上がる方向にある。東山区の11月フォワードは36,900円に達し、京都市内中心部の11月は依然として旅行者にとって高いハードルとなる。京都・高山・日光を横断した紅葉フォワードADRの序列については、欧米ロングホール紅葉需要の先取り価格2026でも詳しく分析している。

これに対し、大津市の11月フォワードは16,500円と2025年実績(16,300円)とほぼ横ばい圏。草津市も現時点の掲載では10,900円前後で、京都市中心部との1万円超の価格差は2026年も維持される見通しだ。受け皿3エリアは、紅葉ピークでも据え置き圏の単価で在庫を提示している構図が読み取れる。旅行者にとっては予算を抑えて京都紅葉を楽しむ実利が、宿事業者にとっては市外流出需要を取り込む機会が、いずれも2026年も継続する。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(11月・2025実績=確定基準値/2026=フォワードADR)

エリア 9月
2025
10月
2025
11月
2025
11月
2026(F)
N
京都府(全体)¥14,000¥19,200¥24,800¥26,100494〜585
京都市・東山区¥21,600¥29,900¥31,500¥36,90043〜44
京都市・下京区¥13,400¥20,100¥23,900¥26,600142〜160
大津市¥12,200¥13,200¥16,300¥16,50025〜33
草津市¥10,100¥9,100¥9,300¥10,9009〜11
宇治市 ※参考¥8,500¥8,200¥8,500¥13,6002〜3

※(F)=フォワードADR。宇治市は標本が小さく、フォワード値は現時点で相対的に高価格帯の施設が先行掲載している影響で上振れしやすいため参考扱い。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

受け皿には「空室」ではなく「実需のある余力」がある

安いだけで在庫がガラ空きなら、受け皿としての厚みは疑わしい。そこで、需要消化のベースラインを確認するために、直近で観測が十分に蓄積した2026年6月の稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)を京都府と滋賀県で比較した。全施設ベースでは京都府88.8%、滋賀県88.0%(いずれも2026年6月時点・OTA掲載在庫ベース推定)とほぼ同水準。滋賀県の旅館は92.0%、リゾートは93.5%と、むしろ京都府(旅館89.7%・リゾート89.7%)を上回る月すらある。

つまり滋賀県側は「需要のない空室地帯」ではなく、平常月から9割近い在庫消化が進む活きた市場であり、その上でなお京都市中心部より1万円以上低い単価で在庫を提示している。紅葉ピークに京都市内の在庫が薄くなった局面で、実需に裏打ちされた受け皿として機能する下地がある。宿事業者の観点でいえば、紅葉期に京都から溢れる需要を取り込む余地(アップサイド)は、こうした平常時の高稼働と価格ポジションの両立の上に成り立っている。滋賀・琵琶湖が京都の受け皿として持つ需給機会の全体像は、滋賀・琵琶湖が検索数全国2位 — 京都の受け皿となる伏兵エリアの需給機会でも掘り下げている。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(2026年6月・稼働率はOTA掲載在庫ベースの推定値)

※稼働率はOTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります。

旅行者と宿事業者、それぞれの実利

旅行者にとっての要点は明快だ。11月後半の紅葉ピークに京都市内へこだわると、東山区で1泊3万円台、京都駅前でも2万円台半ばの単価に直面する。宿を大津・草津・宇治に置けば、JRで10〜20分の距離を保ったまま単価を4〜7割に抑えられる。琵琶湖畔の眺望や宇治の茶文化といった、それ自体が目的地になる魅力も加わる。予約のタイミングとしては、京都市内が早期に埋まりやすいぶん、受け皿側は比較的直前まで選択肢が残りやすい傾向にある。

宿事業者にとっては、紅葉期の京都市外流出需要は明確な収益機会である。大津・草津・宇治の宿は、平常月から9割近い稼働を維持しつつ、京都市中心部より大きな価格の伸びしろを持つ。京都からの所要時間と乗り換えの少なさを訴求し、紅葉期限定の連泊・観光セットプランを設計することで、単価と稼働の双方を引き上げる余地がある。分散化という行政の方向性は、周辺エリアの宿にとって追い風として作用しうる。

⚠ 将来日程のADRに関する注意:本記事の2026年フォワードADRは調査時点でOTA等に公開されている販売価格に基づく推定であり、チェックイン日に近づくにつれて変動します。現時点の掲載水準は今後の新規プラン追加や価格調整で上下する可能性がある点にご留意ください。とくに標本の小さいエリア(宇治市など)は、掲載施設の構成変化で数値が振れやすくなります。

まとめ

京都紅葉ピークの11月は、京都市内のADRを年内の頂点へ押し上げる一方で、JRで10〜20分の大津・草津・宇治は据え置き圏の単価で在庫を保つ。2025年実績で京都府+77%に対し草津▲8%・宇治+0.5%という非対称性は、2026年のフォワードADRでも維持される見通しだ。しかも滋賀県側は平常月から9割近い稼働を保つ活きた市場であり、単なる安宿地帯ではない。紅葉の「あふれ」は、価格・移動時間・実需の三拍子がそろった受け皿へと自然に広がりうる。旅行者には予算を抑える実利を、周辺エリアの宿には市外需要を取り込む機会を、フォワードADRは静かに示している。

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参考資料・出典一覧

■ 市場データ

  • メトロエンジンリサーチ — OTA掲載価格に基づく推定成約ADR・フォワードADR、稼働率(OTA掲載在庫ベース推定)。京都府・滋賀県の都道府県/市区別月次データ、2026年6月ブッキングカーブ・稼働率

■ 公的機関・自治体

■ 交通・アクセス

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