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週末プレミアム、東京ビジネス24%・箱根旅館10% — 659施設の分布に眠る値付けの伸びしろ

投稿日 : 2026.08.12

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レベニューマネジメント

週末プレミアム、東京ビジネス24%・箱根旅館10% — 659施設の分布に眠る値付けの伸びしろ

宿泊料金は曜日で動く。だが「どれだけ動かしているか」は、同じ市場のなかでも施設ごとに大きく違う。メトロエンジンリサーチのデータから、東京都のビジネスホテル、大阪府のシティホテル、神奈川県箱根町の旅館、沖縄県のリゾートホテルという4つの市場について、施設単位の「週末プレミアム率」を算出した。対象は観測条件を満たした659施設。中央値は東京のビジネスホテルで24.0%、箱根の旅館で9.6%と2.5倍の開きがあり、同じ市場のなかでも上位25%と下位25%で3倍前後の差がついている。この分布のばらつきそのものが、値付けに残された伸びしろの地図になる。

Key Takeaways
  • — 4市場659施設の週末プレミアム率の中央値は、東京都のビジネスホテル24.0%に対し箱根町の旅館9.6%。市場間で2.5倍の開きがある。
  • — 同一市場のなかでも下位25%と上位25%で3倍前後の差。東京都は20〜40%の帯に41.1%が集中する一方、0〜5%の帯にも14.5%が残る「二こぶ」型。
  • — 神奈川県の旅館は週末の推定稼働が平日を7.6pt上回るのに、価格の上乗せは9.6%にとどまる。需要の山と価格の山のズレが最大の伸びしろ。
  • — 平日ベースが高い施設ほど週末を動かしていない傾向が4市場すべてで一致。箱根町では低プレミアム群の平日価格が¥46,500と1.6倍高い。
  • — 市場中央値の水準まで揃えた場合の上乗せ余地は1室・週末1泊で¥600〜¥2,100、1室あたり年間¥54,000〜¥191,000(掲載価格ベースの上限イメージ)。

本記事における指標の定義

  • 掲載価格:各施設がOTA等で公開している最安プランの価格(リードイン価格)。2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。本記事は曜日間の相対差を扱うため、プラン構成の入れ替わりの影響を受けにくい最安プラン水準を基準としています。成約価格そのものではありません。
  • 週末プレミアム率:各施設について、金曜・土曜チェックイン日の掲載価格の中央値 ÷ 日曜〜木曜チェックイン日の掲載価格の中央値 − 1。
  • 土曜プレミアム率:同じ算式で、分子を土曜チェックイン日のみとしたもの。
  • OCC(稼働率):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。本記事では都道府県単位のマクロ集計にのみ用い、個別施設の稼働率は算出していません。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ

測り方 — 平常週だけを取り出して、施設ごとに割り算する

集計期間は2026年9月1日から10月31日までの61日間。このうち9月19日〜23日(敬老の日・秋分の日をはさむ5連休)と10月10日〜12日(スポーツの日の3連休)は、曜日ではなく連休が価格を押し上げるため除外し、平常週の53日のみを対象とした。

そのうえで、各施設について金曜・土曜の掲載価格の中央値を、日曜〜木曜の中央値で割る。平均ではなく中央値を使うのは、一部の日だけ突出した価格が出ても分布の中心が引きずられないようにするためである。観測日数が20日に満たない施設、または金土・平日いずれかの観測が薄い施設は除外した。

表1:4市場の母集団・価格観測数・集計対象施設数と曜日別の掲載価格中央値(2026年9〜10月の平常週53日、2名1室・税込)
市場母集団価格観測あり集計対象平日中央値金土中央値土曜中央値
東京都・ビジネスホテル525444441¥13,700¥18,100¥22,700
大阪府・シティホテル705555¥10,400¥12,700¥17,100
箱根町・旅館705757¥37,700¥41,800¥54,200
沖縄県・リゾートホテル126106106¥18,300¥20,400¥21,800

母集団はメトロエンジンリサーチが運営中として把握する施設数。価格はいずれも2名1室・1室あたり・税込の最安プラン水準の中央値。集計対象合計 N=659施設。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

分布は市場ごとに形が違う — 東京は「二こぶ」、箱根と沖縄は「低位に密集」

施設単位の週末プレミアム率をヒストグラムにすると、市場ごとに輪郭がはっきり分かれる。

縦軸は各市場の集計対象施設に占める割合(%)。東京都・ビジネスホテル N=441、大阪府・シティホテル N=55、箱根町・旅館 N=57、沖縄県・リゾートホテル N=106。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

東京都のビジネスホテルは20〜40%の帯に41.1%(181施設)が集中する一方、0〜5%の帯にも14.5%(64施設)が残る。中央値24.0%をはさんで山が二つある形で、同じ都内・同じ業態でありながら値付けの流儀が二分されている。

これに対し箱根町の旅館は0〜10%に49.2%(28施設)が集まり、沖縄県のリゾートホテルも同じ帯に48.1%(51施設)が入る。レジャー色の強い市場ほど、週末の上乗せ幅が小さい側に寄っている。大阪府のシティホテルは15〜20%を中心とした単峰型で、4市場のなかでもっとも分布が締まっている。

表2:週末プレミアム率の分位数・土曜プレミアム率・ほぼ一定価格で販売している施設の比率(施設単位、N=659施設)
市場下位25%中央値上位25%上位10%土曜プレミアム中央値2%未満の施設
東京都・ビジネスホテル11.7%24.0%36.0%48.1%51.4%56施設(12.7%)
大阪府・シティホテル14.0%18.7%30.5%46.5%47.9%1施設(1.8%)
箱根町・旅館4.8%9.6%17.1%49.2%31.4%12施設(21.1%)
沖縄県・リゾートホテル4.7%10.0%16.6%22.7%13.8%19施設(17.9%)

「2%未満の施設」=週末プレミアム率が2%未満、すなわち曜日にほぼ連動しない一定価格で販売している施設。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

「週末」の中身は市場で違う — 都市は木金土の逓増、リゾートは土曜一点

週末プレミアム率を金曜・土曜でまとめて測ると、市場ごとの形の違いが見えなくなる。そこで各施設の日曜〜木曜中央値を1.000として、曜日別の掲載価格指数を取り直した。

各施設の日曜〜木曜中央値を1.000に正規化したうえでの市場中央値。2026年9〜10月の平常週53日、N=659施設。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

東京都のビジネスホテルは水曜1.046、木曜1.103、金曜1.143、土曜1.515と、週の後半に向かって階段状に上がっていく。大阪府のシティホテルもほぼ同型で、金曜1.103・土曜1.479。出張需要と観光需要が重なる都市部では、木曜から値付けが動き始めている。この木曜ピークという形は価格だけでなく稼働側にも現れており、愛知・広島のビジネスホテル 曜日別稼働の形が日曜の谷と木曜ピークの構造を稼働率の側から検証している。

一方、箱根町の旅館は月曜から金曜までが1.000〜1.010でほぼ平坦、土曜だけが1.294に跳ねる。沖縄県のリゾートホテルも金曜1.077・土曜1.138にとどまる。旅館・リゾートは「休前日一点集中型」であり、金曜を週末に含めて測ると上乗せ幅が実態より小さく見える。土曜プレミアム率で測り直すと、箱根の旅館は31.4%、東京のビジネスホテルは51.4%となり、市場の性格の違いがより素直に出る。

需要のギャップと値付けのギャップは一致していない

では、この値付けの形は需要の形と噛み合っているのか。ここからは都道府県単位のマクロ集計に切り替え、直近で実績が確定している2026年6月・7月(海の日の連休を除く)の曜日別稼働率を見る。

OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。集計施設数は東京都ビジネス N=873、大阪府シティ N=91、神奈川県旅館 N=249、沖縄県リゾート N=245(各月の最大値)。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

表3:曜日別の推定稼働率(2026年6〜7月)と週末プレミアム率の中央値(2026年9〜10月)の対照。地理スコープが一致しない点に留意
市場平日OCC金土OCC需要ギャップ土曜−平日週末プレミアム中央値
東京都・ビジネスホテル93.2%95.2%+2.0pt+2.9pt24.0%
大阪府・シティホテル89.3%92.2%+2.9pt+3.9pt18.7%
神奈川県・旅館(箱根を含む県全体)81.0%88.6%+7.6pt+10.5pt9.6%
沖縄県・リゾートホテル91.8%92.5%+0.7pt+0.7pt10.0%

稼働率は2026年6月・7月(7月18〜20日の連休を除く)の日次平均を曜日別に集計した都道府県単位の推定値。週末プレミアム中央値は9〜10月の施設単位集計(箱根町の旅館は町単位)であり、地理スコープが一致しない点に留意。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

もっとも需要の曜日差が大きいのは神奈川県の旅館で、平日81.0%に対し金土は88.6%、土曜だけを取れば平日比+10.5ptに達する。ところが施設単位の週末プレミアム率の中央値は9.6%と4市場で最小の部類にある。需要の山は大きいのに、価格の山は小さい。この非対称が、箱根の旅館市場に残された値付けのアップサイドを最も端的に示している。曜日でできた稼働の凹凸をどう扱うかという論点は、観光白書2026「稼働の谷を閉じる」が休館日の設計という別の角度から掘り下げている。

逆に沖縄県のリゾートホテルは、需要ギャップが+0.7ptとほぼ存在しない。滞在日数が長く、平日発着の旅程も多いため、曜日で需要が動きにくい構造にある。この市場で週末プレミアムが10.0%にとどまるのは、需要構造に忠実な値付けだと読める。沖縄のように曜日で需要が動かない市場では、一定価格での運営そのものが合理的な戦略であり、予測しやすさという強みにもなる。

東京都のビジネスホテルは需要ギャップ+2.0ptに対してプレミアム24.0%。稼働がすでに9割台で天井に近いため、上積みの余地は稼働ではなく単価側にあり、実際に単価側で取りにいっている市場だといえる。

平日ベースが高い施設ほど、週末を動かしていない

次に、各市場を週末プレミアム率の中央値で2群に分け、それぞれの平日ベース掲載価格を比べた。結果は4市場すべてで同じ方向を向いた。プレミアム率が低い側の群のほうが、平日の掲載価格そのものは高い。

表4:週末プレミアム率の中央値で2分した群ごとの平日掲載価格中央値と客室数中央値(2026年9〜10月)
市場群施設数プレミアム中央値平日掲載価格中央値客室数中央値
東京都・ビジネスホテル中央値未満22011.7%¥15,800144室
中央値以上22135.9%¥13,300141室
大阪府・シティホテル中央値未満2714.0%¥11,600217室
中央値以上2830.2%¥9,800260室
箱根町・旅館中央値未満284.8%¥46,50023室
中央値以上2916.6%¥28,60025室
沖縄県・リゾートホテル中央値未満534.8%¥18,500121室
中央値以上5316.6%¥17,70085室

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

横軸は平日(日〜木)掲載価格の中央値(対数目盛・2名1室・税込)、縦軸は週末プレミアム率。1点=1施設、N=655施設(横軸¥4,000未満の4施設を除く)。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

もっとも差が大きいのは箱根町の旅館で、プレミアム率が中央値未満の群は平日でも¥46,500、中央値以上の群は¥28,600。1.6倍の開きがある。高単価帯の宿は平日から高い水準を維持しており、曜日で価格を動かさなくても年間を通じた単価が確保できている。これは弱さではなく、通年で価格を約束できる商品設計が成立しているという強みである。常連客やギフト需要のように、価格の予測可能性そのものが選ばれる理由になる層を抱えている場合、値動きを抑える判断には合理性がある。

そのうえで、需要の山が明確に土曜にある市場では、平日の水準を維持したまま土曜だけに上乗せを乗せる余地が残る。散布図を見ると、平日¥30,000〜¥60,000の帯にはプレミアム率0〜10%の点と30%超の点が同居している。同じ価格帯で両方の値付けが成立しているということは、上乗せを乗せても需要が離れない水準が存在することを意味する。

週末プレミアムはリードタイムとともに育つ

ここで一つ重要な注意点がある。今回の集計期間である9〜10月は、調査時点(2026年8月上旬)から見て25日〜85日先にあたる。将来日程の掲載価格は、チェックイン日に近づくにつれて変わる。

そこで、同じ算式を10月分(リードタイム55〜85日)、9月分(同25〜55日)、そして販売が終了している2026年6月1日〜7月17日の実績分に分けて計算した。

10月分・9月分は2026年8月上旬時点の掲載価格に基づく推定。6〜7月分は販売終了後の観測値。各市場の施設単位中央値。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

東京都のビジネスホテルでは、10月分15.5% → 9月分21.6% → 6〜7月実績24.4%と、チェックイン日が近いほどプレミアムが大きい。箱根町の旅館も10月分6.3%に対し9月分15.0%と倍以上に開く。週末プレミアムは販売開始時点で完成しているのではなく、需要が見えてきた段階で積み上げられている。したがって、今回示した9〜10月の分布は最終的な水準の下限に近い。リードタイムに沿って在庫と価格がどう積み上がるかについては、東京のブッキングカーブは3類型が業態別の上積み幅を整理している。

あわせて、値付けの姿勢が施設ごとにどれだけ持続するかも確認した。6〜7月実績と9〜10月のプレミアム率を同一施設で突き合わせると、順位相関は東京都0.54、沖縄県0.49、大阪府と箱根町がそれぞれ0.24。6〜7月に中央値未満だった施設が9〜10月も中央値未満にとどまる割合は60〜67%だった。値付けの流儀はある程度その施設の運営スタイルとして持続するが、期間によって入れ替わる余地も残っているということになる。

上乗せ余地の試算 — 1室あたり年間で見るとどれくらいか

週末プレミアム率が市場中央値を下回っている施設群について、仮に市場中央値の水準まで週末の掲載価格を引き上げた場合の上乗せ幅を試算する。算式は「平日掲載価格の中央値 × (市場中央値のプレミアム率 − 当該施設のプレミアム率)」で、これを金土の年間104泊に掛け合わせ、さらに当該市場の金土推定稼働率を乗じたものである。

表5:週末の掲載価格を市場中央値の水準まで引き上げた場合の上乗せ余地(掲載価格ベースの上限イメージ)
市場対象施設対象客室数1室・週末1泊の上乗せ幅金土推定稼働1室あたり年間市場合計(参考)
東京都・ビジネスホテル220施設36,709室¥1,90095.2%¥183,000約93億円
大阪府・シティホテル27施設7,503室¥60092.2%¥54,000約7億円
箱根町・旅館28施設1,096室¥2,10088.6%¥191,000約3億円
沖縄県・リゾートホテル53施設9,167室¥90092.5%¥86,000約10億円

「1室・週末1泊の上乗せ幅」は対象施設群の中央値。市場合計は各施設の客室数で加重した理論値であり、掲載価格ベースの上限イメージ。実際の成約単価、需要弾力性、既存予約の構成は考慮していない。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

1室あたり年間で見ると、東京都のビジネスホテルで約¥183,000、箱根町の旅館で約¥191,000。客室数の中央値(東京144室、箱根23室)を掛ければ、1施設あたりでは東京で年間2,600万円規模、箱根で440万円規模の理論値になる。

もちろん、これはあくまで掲載価格を市場中央値の形に揃えた場合の上限イメージであり、そのまま収益に転化するものではない。重要なのは金額そのものより、「週末に何もしていない状態」と「市場の標準的な上げ方をした状態」の距離が、1室・1泊あたりで¥600〜¥2,100という具体的な数字として測れるという点である。この距離を把握したうえで、自館の商品設計や顧客構成に照らして取りにいくかどうかを決められるようになる。

上乗せ幅を分位差と価格帯で換算する — 3断面と2軸グリッド

前節の試算は「市場中央値まで引き上げた場合」の1点だけを示している。同じ算式は本文で示した分位数のどれを目標に置いても成り立つため、到達水準を変えた3つの断面に広げておく。いずれも予測ではなく、本文に記載した分位数と平日掲載価格中央値を算式に入れ直した単位換算である。

算式は前節と同じく 上乗せ幅(1室・週末1泊)= 平日掲載価格中央値 ×(目標プレミアム率 − 現状プレミアム率)、年間換算は 上乗せ幅 × 金土の年間104泊 × 金土の推定稼働率。金土の推定稼働率は本文表の値(東京都95.2%、大阪府92.2%、神奈川県88.6%、沖縄県92.5%/いずれも2026年6〜7月の集計)を用いた。

表7:到達水準を変えた3断面の上乗せ余地。各セルは上段が引き上げ幅(pt)、下段が「1室・週末1泊の上乗せ額 / 1室あたり年間換算」。予測ではなく本文記載値の単位換算
市場平日掲載価格中央値断面A 下位25%→中央値断面B 中央値→上位25%断面C 中央値→上位10%
東京都・ビジネスホテル¥13,700+12.3pt
¥1,685 / ¥166,828
+12.0pt
¥1,644 / ¥162,769
+24.1pt
¥3,302 / ¥326,924
大阪府・シティホテル¥10,400+4.7pt
¥489 / ¥46,889
+11.8pt
¥1,227 / ¥117,655
+27.8pt
¥2,891 / ¥277,212
箱根町・旅館¥37,700+4.8pt
¥1,810 / ¥166,781
+7.5pt
¥2,828 / ¥260,583
+39.6pt
¥14,929 / ¥1,375,618
沖縄県・リゾートホテル¥18,300+5.3pt
¥970 / ¥93,314
+6.6pt
¥1,208 / ¥116,210
+12.7pt
¥2,324 / ¥223,569

分位数・平日掲載価格中央値・金土の推定稼働率はいずれも本文の表に記載した実測値。年間104泊は金土の年間日数。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

断面Aは「下位25%の施設が市場の真ん中に並ぶ」場合で、東京都で¥1,685、箱根町で¥1,810。断面Cの上位10%水準は箱根町で+39.6ptと極端に開くが、これは同市場に実際にその水準で販売している施設群が存在するという観測事実であって、推奨水準ではない。

価格帯 × 引き上げ幅の2軸グリッド

自館の位置を当てはめやすいよう、平日掲載価格の水準と引き上げ幅の2軸で1室・週末1泊の上乗せ額を並べた。縦軸の5水準は本文の表に出てくる平日掲載価格中央値、横軸の+5〜+25ptは本文で観測された分位差のレンジ(+4.7pt〜+39.6pt)の内側に収めている。外挿は行っていない。

表8:平日掲載価格中央値 × 週末プレミアム率の引き上げ幅(pt)= 1室・週末1泊の上乗せ額。収益予測ではなく掛け算による単位換算
平日掲載価格中央値\引き上げ幅+5pt+10pt+15pt+20pt+25pt
¥9,800
大阪・上位群
¥490¥980¥1,470¥1,960¥2,450
¥13,700
東京・市場中央値
¥685¥1,370¥2,055¥2,740¥3,425
¥18,300
沖縄・市場中央値
¥915¥1,830¥2,745¥3,660¥4,575
¥28,600
箱根・上位群
¥1,430¥2,860¥4,290¥5,720¥7,150
¥46,500
箱根・下位群
¥2,325¥4,650¥6,975¥9,300¥11,625

セルは 平日掲載価格中央値 × 引き上げ幅 の積。年間換算する場合は 104泊 と自館の金土の販売実績を掛ける。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

グリッドの中心(平日¥18,300・+15pt)は¥2,745。同じ+15ptでも平日¥9,800の施設では¥1,470、平日¥46,500の施設では¥6,975と4.7倍の差がつく。逆に言えば、低単価帯の施設が高単価帯と同じ金額を取りに行くには、より大きな引き上げ幅が要る。「何ポイント上げるか」より先に「自館の平日ベースがいくらか」が上乗せ額の大きさを決めているということであり、本文で見た「平日ベースが高い施設ほど週末を動かしていない」という4市場共通のパターンは、金額ベースで見ると余地の偏りをさらに大きくしている。

実務チェックリスト — 自館の週末プレミアムを測る4ステップ

表6:自館の週末プレミアムを測る4ステップと判断の目安
ステップやること判断の目安
① 平常週を切り出す直近3ヶ月の販売実績から、連休・イベント日・繁忙期を除外して平常週だけを残す連休を混ぜたまま測ると、曜日効果と季節効果が分離できない
② 自館の指数を作る日〜木の中央値を1.000として、月〜日の7曜日それぞれの指数を計算する金曜が1.00近辺なら「土曜一点集中型」。木金が1.05以上なら「都市型の逓増」
③ 市場中央値と並べる同一エリア・同一業態の中央値(本記事の表)と自館の指数を重ねる中央値を10pt以上下回る曜日があれば、そこが最初に触る候補
④ 土曜から段階的に試すいきなり全曜日を動かさず、土曜だけを数週間、5%刻みで動かして反応を見るリードタイム別に見て、45日前より手前で在庫消化が速い日は上げ幅を広げられる

特に②は、自館が「都市型の逓増」なのか「休前日一点集中」なのかを見極める工程として重要になる。箱根の旅館市場のように金曜がほぼ平日と同じ水準で推移している場合、金曜に上乗せを乗せるより、土曜の上げ幅を広げるほうが需要の形に沿っている。逆に東京や大阪のように木曜からすでに需要が立ち上がっている市場では、木曜・金曜が手つかずのまま残っていないかを確認する価値がある。

⚠ 将来日程の価格に関する注意:本記事の主分析期間である2026年9〜10月は、調査時点(2026年8月上旬)から見て25〜85日先の将来日程です。掲載価格は調査時点でOTA等に公開されている水準であり、チェックイン日に近づくにつれて変動します。本文で示したとおり、週末プレミアム率はリードタイムの短縮とともに拡大する傾向があるため、ここで示した分布は最終的な水準の下限に近いものとしてお読みください。

まとめ

4市場659施設の週末プレミアム率を測ると、中央値は東京都のビジネスホテル24.0%、大阪府のシティホテル18.7%、沖縄県のリゾートホテル10.0%、箱根町の旅館9.6%。市場間で2.5倍の差があるだけでなく、同一市場のなかでも下位25%と上位25%で3倍前後の開きがある。

需要側と重ねると、神奈川県の旅館は週末の稼働が平日を7.6pt上回るのに対し、価格の上乗せは9.6%にとどまる。逆に沖縄県は需要の曜日差が+0.7ptしかなく、一定価格での運営が構造に合っている。値付けの伸びしろは「プレミアムが小さいこと」そのものではなく、「需要の山と価格の山がずれていること」に宿る。

そして、平日ベースが高い施設ほど週末を動かしていないという4市場共通のパターンは、価格の安定を価値として提供している商品設計の裏返しでもある。通年で予測可能な価格は、それ自体が選ばれる理由になる。そのうえで、土曜という一点に限って市場の標準的な上げ方に近づけるだけでも、1室・1泊あたり¥600〜¥2,100の幅が視野に入る。まずは自館の曜日別指数を作り、市場中央値と重ねてみることから始めたい。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

施設単位の掲載価格はメトロエンジンリサーチが収集する日次の公開価格(2名1室・1室あたり・税込の最安プラン水準)。対象は2026年9月1日〜10月31日のうち平常週53日と、販売終了後の実績として2026年6月1日〜7月17日。曜日別の推定稼働率は都道府県・業態単位の日次集計(2026年6〜7月)を用いた。母集団は運営中施設マスターに基づき、東京都のビジネスホテル525施設、大阪府のシティホテル70施設、神奈川県箱根町の旅館70施設、沖縄県のリゾートホテル126施設。

■ 試算前提

週末プレミアム率は「金土チェックイン日の掲載価格中央値 ÷ 日〜木チェックイン日の掲載価格中央値 − 1」。観測日数20日未満の施設、および金土・平日いずれかの観測が薄い施設は除外し、集計対象は659施設。上乗せ余地は「平日掲載価格中央値 ×(目標プレミアム率 − 現状プレミアム率)」で算出し、年間換算では金土の年間104泊と本文表の金土の推定稼働率を乗じた。3断面表・2軸グリッドは同じ算式に本文記載の分位数と価格水準を入れ直した単位換算であり、需要予測ではない。グリッドの両軸はいずれも本文で観測された値のレンジ内に収め、外挿は行っていない。

■ 限界・留意点

掲載価格は成約価格ではなく、上乗せ余地の試算は掲載価格ベースの上限イメージ。需要弾力性・既存予約の構成・OTA手数料・チャネル別の販売実績は考慮していない。主分析期間の2026年9〜10月は調査時点(2026年8月上旬)から25〜85日先の将来日程であり、週末プレミアム率はリードタイムの短縮とともに拡大する傾向があるため、示した分布は最終水準の下限に近い。曜日別の推定稼働率は都道府県単位、週末プレミアム率は施設単位(箱根町は町単位)で地理スコープが一致しない。稼働率はOTA販売在庫に基づく推定値であり実稼働より高めに出る性質があるため、水準の絶対値ではなく市場間の相対比較として読む。

■ 市場データ

  • メトロエンジンリサーチ — 施設別の日次掲載価格(2026年6月1日〜7月17日、2026年9月1日〜10月31日、2名1室・税込)、都道府県別の日次推定稼働率(2026年5〜7月)、運営中施設マスター
  • メトロエンジンリサーチ — 運営中施設マスターに基づく市場別母集団(東京都のビジネスホテル525施設、大阪府のシティホテル70施設、沖縄県のリゾートホテル126施設)

■ 政府統計

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