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エスコンフィールド5km圏の客室481→663室 — 試合日単価+23%、2028年新駅・大学が変える宿泊需要

投稿日 : 2026.09.22

指定なし

投資・開発

エスコンフィールドHOKKAIDO 5km圏の客室ストックと2027〜2028年の開発パイプライン

北海道ボールパークFビレッジは、2023年3月の開業から3年で年間来場者459万人の集客装置になった。だが宿泊市場から見たとき、この場所はまだ「試合日だけの町」である。半径5km圏の客室ストックは481室にとどまり、その9割は既存の2棟が占める。そこへ2027年秋、182室のホテルが加わる。さらに2028年には新駅・大学・賃貸オフィス・タワー住宅が同時に立ち上がる。本稿は、この1地点に絞って「試合日需要」が「通年需要」に変わりうるかを、単価・曜日・供給の実データで検証する。

既刊記事との線引き

道央の供給を扱った既刊のうち、千歳・苫小牧を扱った道央に積み上がる「働く人の宿」は半導体関連の業務需要を、札幌『秋の開業』と客室供給2026-2029は札幌市内のストックを、プロ野球の遠征ホテル2026は全国12球場圏の横比較を扱った。本稿はいずれとも重ならず、北広島市のFビレッジ1地点に限定し、2027〜2028年に集中する複合開発が宿泊需要の曜日構造をどう変えるかに論点を絞る。

本記事における指標の定義

  • ADR(推定成約ADR):各施設が主要予約サイトで公開する最安プラン水準に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。
  • 掲載価格:2名1室利用時の1室あたり料金(税込)・全プラン平均。推定成約ADRとは別の指標であり、両者を同じ数値として比較しません。
  • OCC(稼働率):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(主要予約サイトの販売在庫に基づく推定値)。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング
5km圏の客室数
481室
7施設・2026年
2027年秋の着地
663室
DHAWA 182室加算・+37.8%
推定成約ADR(12ヶ月平均)
¥16,800
北広島市・推定対象5施設
試合日の掲載価格(平日)
+23.5%
客室272室の施設・非試合日比
公示地価(2019→2026)
+193%
北広島-1・商業地
Key Takeaways
  • 5km圏481室 — 2012〜2022年の11年間は2施設287室で不動。2023年3月の球場開業後3年で7施設481室(+67.6%)に増えた。
  • 2027年秋に663室 — DHAWA 182室の加算で+37.8%。5km圏の客室の27%が1棟で入れ替わり、価格帯構成そのものが動く。
  • 試合日プレミアム+23.5% — 月〜木曜で見た272室施設の掲載価格差。球場至近では+80〜234%、札幌駅・大通圏は+11.0%にとどまる。
  • 推定成約ADRの振幅1.87倍 — 12ヶ月平均¥16,800に対し最小¥12,300(2026年4月)〜最大¥23,000(2026年8月)。需要の薄い月の埋め方が論点。
  • 空白は20〜150室×中価格帯 — 663室を通年OCC70%で埋めるには道外来場者の約3割が毎日1泊する必要があり、球場需要だけでは届かない。

5km圏の客室は11年間287室のまま — 動いたのは球場開業後の3年

メトロエンジンリサーチ&コンサルティングの施設マスターで、エスコンフィールドHOKKAIDO(北緯42.9905度・東経141.5497度)を中心とする半径5km圏の客室ストックを年末時点で追うと、2012年から2022年までの11年間は2施設287室で一切動いていない。変化は球場開業と同時に始まった。2023年に5施設316室、2024年に6施設323室、そして2025年に7施設481室へ増える。2022年比では+67.6%である。

ただし増え方には偏りがある。2023年に加わったのは球場内・Fビレッジ内の小規模施設で、3棟合わせて29室にすぎない。481室へ跳ねたのは2025年3月に北広島駅前で158室の宿泊主体型ホテルが開業した効果であり、5km圏の客室の9割(430室)は2棟に集中している

エスコンフィールドHOKKAIDO周辺の客室ストック推移(年末時点・5km圏=棒/15km圏=線)

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(施設マスターの開業年・閉館年に基づく各年末時点の集計)。2027年は公表済み計画(182室)を加算した試算値

15km圏まで広げると2022年42施設1,797室から2026年53施設2,165室へ増えているが、こちらの増分は北広島市外(恵庭・上野幌方面を含む札幌市東南部)が中心で、球場至近の希少性はむしろ際立つ構図になっている。

半径5km圏の宿泊施設(2026年9月時点)
施設名客室数開業立地
札幌北広島クラッセホテル272室1991年北広島市中心部
エスコンフィールドHOKKAIDOホテル 北広島駅前158室2025年3月北広島駅前
竹山高原ホテル15室1970年以前北広島市南部
tower eleven hotel12室2023年3月球場内
VILLA BRAMARE9室2023年3月Fビレッジ内
BALLPARK TAKIBI TERRACE ALLPARK8室2023年3月Fビレッジ内
KITAHIROSHIMA NEVER END LEO7室2024年6月北広島市東部
合計481室7施設

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(N=7施設、主要予約サイト掲載ベース)

2027年秋にDHAWA 182室 — そして2028年に新駅・大学・オフィス・住宅が同時に立つ

株式会社エスコンジャパンが公表したリリースによれば、Fビレッジ内にシンガポールのバンヤン・グループが展開するブランド「DHAWA」のホテルが2027年秋に開業予定である。リリース表記では鉄筋コンクリート造および鉄骨造の8階建て・182室、客室面積は約20〜100平方メートル、敷地面積4,537.60平方メートル。外野スタンドに面する立地で、レストラン、フィットネスルーム、スパ、大浴場・露天大浴場を備えるとされる。運営は、バンヤン・グループ側の日本法人と国内ホテル運営会社による合弁会社が担うとリリースに記載されている。

182室が加わると5km圏のストックは663室(+37.8%)となり、2022年の287室からは2.3倍になる。5km圏の客室の27%が1棟で入れ替わる計算で、ストックの価格帯構成そのものが動く規模である。

Fビレッジ周辺の開発パイプライン(公表ベース)
時期プロジェクト規模(公表値)出典
2027年秋DHAWA(ホテル)8階建て・182室、敷地4,537.60㎡、客室約20〜100㎡エスコンジャパン リリース
2028年春商業・オフィス施設鉄骨11階建て・延べ約1万7,000㎡(2028年1月完成予定)、Fビレッジ初の賃貸オフィス球団リリース/報道
2028年4月北海道医療大学 新キャンパス大学棟12階建て+公共棟4階建て、敷地約2万1,000㎡大学公表/報道
2028年(同上)学生寮「Dormitory F Village(仮称)」242室(うち大学生144室)、大浴場・サウナ・ラウンジ大学公表
2028年夏頃JR新駅「Fビレッジ駅」(千歳線 上野幌〜北広島間)球場から約300m・徒歩約4分、駅舎3階建て、6両対応相対式2面4線、総工費約90億円。駅名は2026年9月4日に「Fビレッジ駅」(駅ナンバリングH06-1)と決定JR北海道/報道
2028年エスコンフィールドタワー(分譲住宅)地上35階・全508邸、新駅から直線約200mエスコンジャパン 物件サイト

出典:各事業者・報道の公表値よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成。規模・時期はいずれも公表時点の予定値であり、確定値ではない。なお大学病院の移転は当面見送りと報じられている

注意すべきは、この5件がほぼ同時期(2027年秋〜2028年秋)に立ち上がることである。ホテルだけが先行して2027年秋に開くのに対し、平日の需要源となる大学・オフィス・住宅・新駅は2028年に集中する。開業初年度は「球場依存の1年」になる構造で、この1年をどう設計するかが事業計画の分かれ目になる。

球場・新駅・既存ホテルの位置関係 — 徒歩圏に集まる開発

新駅は球場から約300m、タワー住宅は新駅から直線約200m、商業・オフィス施設は新駅と球場を結ぶペデストリアンデッキの中間に位置する。既存の大型2棟はいずれも北広島駅側にあり、球場徒歩圏の客室は現状36室(Fビレッジ内4施設)にとどまる。DHAWAはこの空白を埋める位置にある。

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(施設位置)、各事業者公表資料。新駅・DHAWAの位置は公表情報に基づく概略位置

試合日の掲載価格は平日+23.5%、札幌は+11.0% — 需要は球場から半径数kmに閉じている

北広島市ボールパーク特設サイトが公表する2026年シーズンの試合開催日は年間81日(うちオープン戦9日)。月別では3月10日、4月13日、5月11日、6月12日、7月11日、8月14日、9月10日である。この開催日カレンダーと、5km圏の各施設の日別掲載価格(全プラン平均・2名1室・税込)を突き合わせた。

集計期間は2026年6月1日〜8月31日の92日間で、うち試合開催日は37日。曜日構成の偏り(試合日は週末に寄る)を除くため、月〜木曜だけで比較した結果が下図である。比較対照として、札幌駅・大通圏の150室以上の施設17棟の日別中央値を並べた。

試合日と非試合日の掲載価格中央値(月〜木曜のみ・2026年6〜8月)

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(掲載価格=全プラン平均・2名1室・税込。月〜木曜のうち試合開催日17日、非開催日36日。tower eleven hotelのみ試合日5日と観測が少ない)

球場至近ほど差が大きい。北広島駅前の158室の施設は試合日中央値が約¥88,100、非試合日が約¥26,400で3.3倍。Fビレッジ内の小規模施設も+80〜88%の差がつく。一方、市内最大規模の272室の施設は+23.5%と穏当な幅にとどまり、札幌駅・大通圏は+11.0%である。球場需要の波及は札幌都心にも及ぶが、その大きさは北広島の数分の一にとどまる。

読み方の注意:ここでの掲載価格は、その日に掲載されていた全プランの平均である。試合日は低価格帯のプランから先に販売が終了するため、掲載に残る価格帯が上方に寄る構成効果が含まれる。したがって上記の倍率は「同じ部屋の値上げ幅」ではなく、価格の高い在庫だけが残るほど需要が集中しているという需給シグナルとして読むのが正しい。実際、最安プランの掲載価格でも同施設は非試合日の約¥6,800に対し試合日は約¥26,400まで上がっており、方向は一致している。

推定成約ADRは月次で1.9倍の振幅 — 需要が薄い月をどう埋めるかが論点になる

北広島市の推定成約ADR(2025年9月〜2026年8月)は12ヶ月平均¥16,800。最小は2026年4月の¥12,300、最大は2026年8月の¥23,000で、振幅は1.87倍に達する。同期間の千歳市は¥13,100(推定対象24〜28施設)、札幌市中央区は¥14,400(同130〜139施設)、恵庭市は¥7,600(同3施設)である。

北広島市の水準が札幌市中央区を上回るのは、推定対象5施設のうち複数がFビレッジ内の小規模高単価施設であることが効いている。施設数が少なく、1〜2施設の構成で月次平均が動く点は必ず割り引いて読む必要がある(掲載7〜8施設・推定対象4〜5施設)。

推定成約ADRの月次推移(2025年9月〜2026年8月)

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(推定成約ADR。推定対象施設数=北広島市4〜5/千歳市24〜28/札幌市中央区130〜139/恵庭市3。いずれも確定月の検証済み履歴基準)

8月がピークになるのは、開催日14日という年間最多の試合数に夏季レジャー需要が重なるためである。逆に4月は開催日13日を抱えながら年間最低値をつけている。同じ試合数でも単価が1.9倍違うということは、球場の開催日数そのものが単価を決めているわけではないことを示す。決めているのは、試合以外の同時需要(夏季観光・イベント)が重なっているかどうかである。

北海道の業態別 推定OCC(2026年7月・8月)
業態対象施設数対象客室数推定OCC 7月推定OCC 8月
全施設665→671施設52,729→52,816室89.9%89.6%
ビジネス219→215施設25,665→25,537室92.6%90.9%
シティ35施設8,550室91.3%91.4%
リゾート85→86施設9,075→9,218室84.6%86.6%
旅館160→165施設7,156→7,213室85.2%86.4%

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(主要予約サイト掲載ベースの推定値。施設数・客室数は7月→8月の順。市区町村単位では対象施設数が少ないため北海道単位の参考値)

北海道全体のビジネス業態は7月92.6%・8月90.9%と高水準にある。道内の宿泊需要そのものは強い。したがって北広島の論点は「需要があるか」ではなく、その需要が北広島に泊まるか、札幌に泊まって日帰りするかにある。

年間459万人のうち半分は非試合日 — しかし宿泊には変換されていない

球団が公表した2025年のFビレッジ年間来場者数は459万1,357人(前年比+10%)。内訳は主催レギュラーシーズン公式戦71試合で223万2,364人(同+7%)、それ以外のイベント等で235万8,993人(同+12%)である。非試合日の来場者が試合日を上回っている点は、この施設が単なる球場ではなく通年型の集客装置になっていることを示す。平均滞在時間も2023年の4時間6分から2025年は4時間52分へ伸びた。道外からの来場者は全体の24%にあたる112万人、海外からは約3万6千人で前年から倍増した。

ところが、非試合日の宿泊需要は前節のとおり弱い。非試合日は1日平均でも約8,000人が訪れている計算になるが、その多くは札幌から30分圏の日帰り客であり、掲載価格はそれを裏づけている。来場者数と宿泊客室数の間には、依然として大きな変換ロスがある

663室を埋めるために必要な「1日あたりの宿泊転換」(試算)
前提OCC必要な販売室数/日必要な宿泊者数/日Fビレッジ来場者比道外来場者比
60%398室796人6.3%25.9%
70%464室928人7.4%30.3%
80%530室1,061人8.4%34.6%

試算の前提:5km圏663室(2027年秋時点)、1室2名利用、Fビレッジ来場者は2025年実績459万1,357人÷365日=1日平均12,579人、道外来場者は同24%(112万人)÷365日=1日平均3,068人。出典:球団公表値よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算

この表が示す含意は明快である。663室を年間OCC70%(通年・試算前提)で埋めるには、道外来場者のおよそ3割を毎日1泊させる必要がある。球場需要だけでこの水準に届かせるのは現実的ではない。DHAWA単体(182室)をOCC70%(同上)で埋めるなら必要な宿泊者は1日255人、道外来場者比8.3%であり、こちらは射程に入る。1棟であれば球場需要で成立するが、圏域全体を埋めるには球場以外の需要が要る——これが2028年の複合開発を評価する物差しになる。

平日需要の母集団は従業者8,544人 — オフィス棟1つで構造が変わる規模感

球場を中心とする半径3kmの商圏を公的統計で見ると、事業所740・従業者8,544人、うちオフィス系従業者は493人で全体の5.8%にとどまる(経済センサス・活動調査)。ただしこの調査は2021年時点であり、2023年3月の球場開業より前の数値である。開業後にFビレッジで生まれた就業は反映されていない点に留意が必要である。

それでも、オフィス系従業者493人という母集団の小ささは、現在の平日宿泊需要の薄さと整合する。ここに2028年春、Fビレッジ初の賃貸オフィスを含む延べ約1万7,000平方メートルの複合施設が加わる。仮に賃貸オフィス部分を延べ面積の半分の約8,500平方メートル、1人あたり10平方メートルで概算すると約850人の就業床にあたる。前提を置いた粗い試算だが、3km圏のオフィス系従業者を1棟でほぼ倍にしうる規模であることは示している。

居住人口側も動く。250mメッシュ推計で半径3km圏の居住人口は2025年24,948人、2040年には-14.1%(約21,400人)まで縮み、2025年時点の高齢化率はすでに38.0%である。ここに508邸の分譲タワーが加わると、世帯人数を2.2人と置けば約1,100人、3km圏人口の+4.5%にあたる。減少トレンドを反転させるほどではないが、2040年までの目減りの約3分の1を1棟で埋め戻す計算になる。

出典: 国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口・R6国政局推計)。居住人口(国勢調査ベース)であり、滞在人口・通過人口ではない

半径3km圏の人口・商圏指標(250mメッシュ推計・経済センサス)
指標(半径3km圏)数値備考
居住人口(2025年推計)24,948人250mメッシュ187セルの合計
居住人口(2040年推計)21,426人2025年比 -14.1%
高齢化率(2025年)38.0%65歳以上9,478人
生産年齢人口(2025年)13,151人52.7%
事業所数740経済センサス2021年時点
従業者数8,544人同上
うちオフィス系従業者493人(5.8%)同上・球場開業前の数値

出典:国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口)、総務省・経済産業省「経済センサス・活動調査」(2021年)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成

公示地価は7年で+193% — 球場開業年の+30.0%がピーク、伸びは次の局面へ

国土交通省 不動産情報ライブラリの地価公示データで、北広島市内の基準地点を2019年から追うと、市中心部の地点(北広島-1)は2019年の26,600円/平方メートルから2026年78,000円/平方メートルへ、7年で+193%となった。年次の前年比は2020年+16.5%、2021年+17.7%、2022年+26.0%、そして球場が開業した2023年に+30.0%でピークをつけ、2024年+12.0%、2025年+7.5%、2026年+8.3%と推移している。

周辺地点も同様で、北広島-6は2019年19,200円から2026年45,200円(+135%)、北広島-12は21,700円から46,000円(+112%)である。ただし北広島-6は2024年以降3年連続で横ばい、北広島-12も2026年は+2.2%にとどまり、上昇は地点によって選別が始まっている。2025年に新設された地点(北広島-17)は2026年に74,000円・前年比+10.4%と高い伸びを示しており、新駅・Fビレッジ寄りの地点に上昇余地が残っていることを示唆する。

北広島市の公示地価推移(2019〜2026年・円/㎡)

出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(地価公示)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成

用途規制の面では、球場地点の用途地域は商業地域・容積率400%・建蔽率80%である。同じタイル内には第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域(いずれも容積率200%・建蔽率60%)、工業専用地域が混在しており、高容積で宿泊施設を成立させられる区画は限定的である。DHAWAが8階建てにとどまり、35階のタワー住宅が新駅寄りに立地するのは、この規制分布と整合する。

出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(都市計画決定情報・用途地域)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成

空いているのは「20〜150室×中価格帯」 — 平日を埋める業態に余地

5km圏の各施設を、客室数(横軸)と非試合日の掲載価格中央値(縦軸)でマッピングすると、市場は明確に二極化している。272室と158室の2棟が¥28,000〜¥37,000のレンジに位置し、Fビレッジ内の8〜12室の小規模施設が¥62,000〜¥108,000の高価格帯に位置する。その間、20室から150室の規模帯には施設が存在しない

客室規模 × 非試合日の掲載価格中央値(2026年6〜8月・5km圏)

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(N=5施設。掲載価格=全プラン平均・2名1室・税込、非試合日55日の中央値。竹山高原ホテルは期間中の掲載観測が得られず対象外)

この帯に新規参入する場合、収益がどの水準に着地するかは推定成約ADRと通年OCCの2変数でほぼ決まる。両者を振った年間客室売上(1室あたり)を示す。

年間客室売上/室の感度分析(推定成約ADR × 通年OCC・単位:万円・試算)
推定成約ADR \ 通年OCC55%60%65%70%75%
¥12,000241263285307328
¥15,000301328356383411
¥18,000361394427460493
¥21,000422460498537575
¥24,000482526569613657

試算:年間客室売上/室=推定成約ADR×通年OCC×365日。網掛けは中位シナリオ(¥18,000×65%)。ADRの振り幅は北広島市の推定成約ADR実績レンジ(2025年9月〜2026年8月・¥12,286〜¥22,997)に合わせた。通年OCCは新規参入施設の事業計画レンジとして置いた前提値であり、本記事の業態別推定OCC(掲載在庫ベース・北海道単位)とは基準が異なる。費用・NOI・利回りは本稿の範囲外。

この2軸を、本稿が示した供給・需要の構造に当てはめると3つのシナリオになる。

悲観 — 球場依存が続く

2028年の新駅・大学・オフィスが遅延し、平日需要が形成されない場合。推定成約ADR¥15,000×通年OCC55%で年間客室売上は301万円/室。試合日に売上が集中し、非試合日の在庫が恒常的に残る。

中位 — 複合開発が予定どおり

2028年に新駅・大学・賃貸オフィス・タワー住宅が立ち上がり、平日の母集団が形成される場合。推定成約ADR¥18,000×通年OCC65%で427万円/室。北広島市の12ヶ月平均¥16,800をやや上回る水準にあたる。

楽観 — 平日と試合日の両取り

平日を大学・オフィス需要で埋めたうえで、試合日プレミアムを取り切る場合。推定成約ADR¥21,000×通年OCC75%で575万円/室。悲観比1.91倍で、同じ立地・同じ室数でも収益は倍近く開く。

悲観と楽観の差1.91倍のうち、ADR側の寄与は1.40倍、OCC側は1.36倍でほぼ拮抗する。球場需要だけで取りにいける試合日プレミアムはADR側に効くが、通年OCCを動かせるのは2028年の平日需要だけである。2027年秋に先行開業する事業者にとって、この1年は平日在庫の価格弾力性を実測できる唯一の期間になる。

DHAWA(182室)はこの空白の右端に入る位置にあり、規模としては既存の大型2棟と同じ帯に乗る。残るのは50〜120室規模で、推定成約ADR1.5万〜2.5万円帯を狙う業態である。この帯は投資機会として次の3点で成立余地がある。

機会① 長期滞在・アパートメント型

2028年の大学キャンパス・賃貸オフィス・タワー住宅は、いずれも建設期間中から工事関係者需要を生み、開業後は実習・学会・研修・着任前滞在といった中期滞在を生む。キッチン付き・ランドリー付きの滞在型は、試合日集中の波を平準化できる数少ない業態である。

機会② 平日ビジネス特化の中規模

3km圏のオフィス系従業者は現在493人(2021年時点)だが、オフィス棟1棟でほぼ倍増しうる。札幌都心より土地コストが低く、新駅で札幌駅方面へのアクセスが改善する2028年以降、「札幌に泊まらない選択肢」を提示できる条件が整う。

機会③ 球場体験を商品化する小規模高単価

Fビレッジ内の小規模施設は、非試合日でも¥62,000〜¥108,000の掲載価格を維持している。球場という体験そのものが単価を支えており、試合日プレミアムに依存しない収益構造をすでに実証している。

札幌都心では2026年から2029年にかけて外資系ブランドの供給が積み上がる。ハイアット系ではハイアット セントリック 札幌(2026年・216室)パーク ハイアット 札幌(2029年・157室)が開業予定として公表されている(出典:日本ハイアット 株式会社「報道資料 2026年4月」)。ヒルトン系ではヒルトン札幌パークホテル(約350室)が開業予定として挙げられているが、開業時期は資料上「未定」である(出典:ヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新))。北広島がこれらと同じ土俵で競うのではなく、球場体験と新駅アクセスという別軸の商品価値を持つ点が、道央圏での出店判断における差別化要素になる。

まとめ — 2027年の1年をどう渡るかが、2028年以降の収益構造を決める

データから読み取れる構造は3点に整理できる。

第一に、現在の北広島は「試合日に単価が跳ね、非試合日は札幌に流れる」構造である。月〜木曜で見た試合日の掲載価格プレミアムは、球場至近の施設で+80〜234%、市内最大規模の施設で+23.5%に達する一方、札幌駅・大通圏は+11.0%にとどまる。需要は球場から半径数kmに強く閉じており、その分だけ非試合日の落差が大きい。年間459万人の来場者のうち半分以上が非試合日に訪れているにもかかわらず、それが宿泊に変換されていないことが、推定成約ADRの1.87倍の月次振幅に表れている。

第二に、2028年の複合開発は「平日需要の母集団」を初めてつくる。賃貸オフィスは3km圏のオフィス系従業者をほぼ倍にしうる規模であり、大学キャンパスは通年・平日の来訪を生み、508邸のタワー住宅は2040年までの人口減の約3分の1を1棟で埋め戻す。ただし新駅は両刃である。札幌駅方面へのアクセス改善は日帰りをさらに容易にする面も持つため、新駅そのものが宿泊需要を増やすとは限らない。増やすのは、新駅ではなく新駅の周りに立つ大学・オフィス・住宅のほうである。

第三に、供給余地は「20〜150室×中価格帯」に残る。DHAWA開業後の5km圏663室は、大型2棟+DHAWA+小規模高単価という構成になり、50〜120室規模で推定成約ADR1.5万〜2.5万円帯を狙う長期滞在型・平日特化型の空白が残る。圏域全体を年間OCC70%(同上)で埋めるには道外来場者の3割を毎日1泊させる必要があり、球場需要だけでは届かない。逆に言えば、球場以外の需要を取りに行く業態にこそ、この圏域の伸びしろが集中している

2027年秋のDHAWA開業から2028年の新駅・大学・オフィス・住宅の立ち上がりまで、約1年のタイムラグがある。この1年は球場依存度が最も高くなる期間であり、同時に、平日在庫をどう売るかの実験ができる唯一の期間でもある。道央で出店を検討する事業者にとって、2027年の北広島は市場データが最も早く手に入る場所になる。

⚠ 将来の計画値に関する注意:本記事に記載した2027年・2028年の施設規模・開業時期は、いずれも各事業者・行政の公表時点における予定値である。2027年の客室ストック663室は公表済み計画を加算した試算値であり、確定値ではない。また供給の集計は主要予約サイトへの掲載が確認できた施設に基づくため、掲載前の施設は含まれない。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

供給時系列は当社施設マスターの開業年・閉館年に基づく各年末時点の集計(5km圏N=7施設/15km圏N=53施設)。推定成約ADRは主要予約サイトの最安プランに業態別の補正係数を適用した推定値で、上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。掲載価格は2名1室・税込・全プラン平均の日次中央値で、試合日比較は2026年6月1日〜8月31日の92日間(月〜木曜のうち試合開催日17日・非開催日36日)。業態別推定OCCは主要予約サイトの掲載在庫に基づく推定値(北海道単位・2026年7月/8月)。人口・商圏は250mメッシュ別将来推計人口(半径3km・187セル)と経済センサス・活動調査(2021年)、地価は地価公示。

■ 試算前提

2027年の5km圏663室は、2026年実績481室に公表済み計画182室を加算した試算値。宿泊転換の試算は1室2名利用、Fビレッジ来場者は2025年実績459万1,357人÷365日=1日平均12,579人、道外来場者は同24%(112万人)÷365日=1日平均3,068人。感度分析は年間客室売上/室=推定成約ADR×通年OCC×365日で算出し、通年OCCは新規参入施設の事業計画レンジとして置いた前提値。オフィス就業床は延べ床の半分・1人あたり10平方メートル、タワー住宅は1世帯2.2人で概算した。

■ 限界・留意点

北広島市の推定成約ADRは推定対象4〜5施設と母数が小さく、1〜2施設の構成変化で月次平均が動く。掲載価格はその日に掲載中だった全プランの平均であり、低価格帯から売り切れる構成効果を含むため「同一客室の値上げ幅」ではない。推定OCCは掲載在庫ベースの推定値で実績稼働率とは異なり、市区町村単位では母数不足のため北海道単位の参考値を用いた。経済センサスは2021年時点の調査で、2023年3月の球場開業後に生まれた就業は反映されていない。2027年・2028年の施設規模・開業時期はいずれも各事業者・行政の公表時点における予定値であり、確定値ではない。費用・NOI・利回り・投資判断は本稿の範囲外。

■ 市場データ

  • メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — 施設マスターによる供給時系列(5km圏N=7施設/15km圏N=53施設)、推定成約ADR、掲載価格の日別集計、業態別推定OCC

■ 政府統計・公的データ

■ 事業者公表資料・IR

■ ニュース・報道

出典: 日本ハイアット 株式会社「報道資料 2026年4月」

出典: ヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)

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