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英語対応スタッフの口コミ上位100軒、43軒は東京 — 多言語対応は大阪36軒、宿のタイプと外国人雇用の背景

投稿日 : 2026.11.07

東京都

京都府

大阪府

福岡県

沖縄県

調査

英語対応スタッフの口コミ上位100軒、43軒は東京 — 多言語対応は大阪36軒、宿のタイプと外国人雇用の背景

宿泊者の口コミ(直近24か月)をNLPで解析し、「スタッフが英語で対応してくれた」という英語対応の言及と、「中国語・韓国語など複数言語で対応してくれた」という多言語対応の言及を、施設ごとに数えた。口コミ総数100件以上の施設から言及件数の多い上位100軒ずつを抽出すると、英語対応の上位100軒は東京43軒・京都16軒・大阪13軒と都市型の市場に集まり、多言語対応は大阪36軒・福岡16軒・沖縄14軒と、韓国語・中国語の口コミ比率が高い市場に寄っていた。本稿では、この2つの分布の違いを口コミの言語構成で裏付けたうえで、上位に並ぶ宿のタイプを客室数で確かめ、宿泊業の外国人雇用(厚生労働省「外国人雇用状況」)と特定技能「宿泊」の受入れ枠を背景として、多言語スタッフの配置時間帯と翻訳ツールの役割分担を考える。

本記事のデータについて
• ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。
• エリア(都道府県・市区町村)単位のADRは、対象施設の推定成約単価の中央値(エリアの標準的な施設の水準)です。
• 掲載価格に言及する箇所は、2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
• OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。
• 出典:メトロエンジンリサーチ(国内約168,000施設のOTA公開価格を継続追跡、うち稼働確認済み約27,000施設)
本稿の口コミ指標について
• 言及率=対象施設の口コミ総数のうち、当該テーマ(英語対応/多言語対応)に肯定的に触れた口コミの割合。評価点(5点満点のスコア)とは別の指標であり、言及率が高いことは「話題になりやすい」ことを示し、満足度の高さをそのまま意味しない。
• 集計期間は直近24か月、抽出条件は口コミ総数100件以上かつ言及10件以上。順位は言及件数(絶対数)で付け、言及率を併記した。口コミ総数300件未満の施設は言及率が数件の増減で動くため注記している。
• 口コミの「言語」は投稿に使われた言語であり、投稿者の国籍とは一致しない。英語の口コミには欧米以外の旅行者も、日本語の口コミには在日外国人も含まれる。
• 出典はいずれも「ホテルバンク編集部調べ」。個別の口コミは部分引用にとどめ、投稿者を特定できる情報は掲載しない。
Key Takeaways
  • — 東京43軒・京都16軒・大阪13軒:英語対応の口コミ上位100軒は、口コミの3割が英語で書かれる都市型市場に集まる。
  • — 大阪36軒・福岡16軒・沖縄14軒:多言語対応の上位100軒は、韓国語・中国語の口コミ比率が11〜21%の市場に寄る。
  • — 客室数中央値169室(多言語対応は166室):100室以下が英語対応で30軒・多言語対応で35軒あり、大型シティホテル中心の構成ではない。
  • — 宿泊業の外国人労働者47,007人(2025年10月末):宿泊業、飲食サービス業全体では319,999人・前年比+17.1%と伸びが大きい。
  • — 特定技能「宿泊」1号の受入れ見込数23,000人に対し在留者は1割未満で、配置時間帯と翻訳ツールの分担設計が当面の現実解になる。

英語対応は東京・京都、多言語対応は大阪・福岡・沖縄 — 上位100軒の都道府県分布

まずは2つの言及を都道府県別に並べる。英語対応の言及件数で上位100軒を取ると、東京都が43軒と4割を占め、京都府16軒・大阪府13軒が続く。この3都府で72軒に達し、残りは岐阜県4軒・北海道4軒・千葉県3軒・福岡県3軒などに散らばる。千葉の3軒はいずれも成田空港周辺のホテルであり、岐阜の4軒は馬籠・高山といった欧米豪の個人旅行者が多い街道・山岳観光地の宿である。

一方で多言語対応の上位100軒は、構成がはっきり入れ替わる。大阪府が36軒と最多で、福岡県16軒・沖縄県14軒・北海道10軒が続き、東京都は7軒、京都府は4軒にとどまった。英語対応で上位100軒の6割近くを占めた東京・京都が、多言語対応では合わせて11軒しかないという対比は、両市場に来る旅行者の言語構成の違いをそのまま映していると読める。

出典:ホテルバンク編集部調べ(宿泊者口コミのNLP解析、直近24か月、N=英語対応・多言語対応 各上位100軒)

言及率の水準にも差がある。英語対応の上位100軒の言及率中央値は2.55%で、5%以上の施設が16軒あった。多言語対応は中央値1.57%、5%以上が12軒である。英語対応は「口コミ100件のうち2〜3件が触れる」程度の広く薄い話題であり、多言語対応はそれより頻度が低いぶん、言及が集中する施設では強い特徴として表れる。ホテル湾 Osaka ebisu(大阪府・40室)は多言語対応の言及が114件・言及率9.68%、WPU新宿(東京都・104室)は英語対応の言及が177件・8.21%と、いずれも口コミの1割近くが「言葉が通じた」ことに触れていた。

口コミの言語構成が示す市場の違い — 英語3割の東京・京都、韓国語14%の福岡

この分布の違いは、各都道府県の口コミがどの言語で書かれているかを見ると裏付けられる。直近24か月の口コミを日本語・英語・韓国語・中国語(繁体字・簡体字)・タイ語・フランス語・ドイツ語・スペイン語の9言語で集計し、その合計に対する比率を出した。東京都は英語が30.6%、京都府は32.2%と、口コミの3割が英語で書かれている。これに対し大阪府は英語20.2%に韓国語6.2%、福岡県は英語8.3%に対して韓国語が13.8%と英語を上回り、沖縄県は中国語8.8%・英語7.6%・韓国語6.0%が横並びになる。

出典:ホテルバンク編集部調べ(宿泊者口コミのNLP解析、直近24か月)

都道府県別の口コミ投稿言語構成と上位100軒の数(直近24か月・9言語計に対する比率)
都道府県口コミ件数(9言語計)日本語英語韓国語中国語(繁・簡)韓・中 合計仏・独・西上位100軒の数
英語 / 多言語
東京都1,133,17456.4%30.6%3.5%4.4%7.9%4.7%43 / 7
京都府485,42654.3%32.2%2.7%4.0%6.7%6.5%16 / 4
大阪府647,55164.7%20.2%6.2%4.9%11.1%3.6%13 / 36
福岡県318,01969.7%8.3%13.8%7.1%20.8%0.8%3 / 16
沖縄県326,79776.2%7.6%6.0%8.8%14.9%1.3%2 / 14
北海道557,55579.9%9.4%5.1%4.5%9.6%0.6%4 / 10

出典:ホテルバンク編集部調べ(直近24か月・9言語の口コミ合計に対する比率。言語は投稿言語であり国籍ではない)

韓国語と中国語を合わせた比率は、東京7.9%・京都6.7%に対し、大阪11.1%・沖縄14.9%・福岡20.8%と、多言語対応の上位100軒が多い3府県で明確に高い。つまり「英語が通じる」ことが話題になるのは英語話者の比率が高い市場で、「中国語・韓国語も通じる」ことが話題になるのはアジア圏の近距離市場に向いた都市だという、ごく自然な対応関係が口コミの側から確認できる。付け加えると、フランス語・ドイツ語・スペイン語の合計は京都6.5%・東京4.7%で、沖縄の1.3%、福岡・北海道の1%未満と比べて数倍の開きがあり、京都では英語以外の欧州言語への目配りも需要側に存在することが分かる。投稿言語ごとに口コミが何を評価しているかの違いは、8言語345万件のタグ分析で詳しく分析している。

ただし、この言語構成は「どの言語で口コミを書く人が多いか」であって、宿泊者数の国籍構成そのものではない。英語で投稿する旅行者には東南アジアやインドの旅行者も含まれ、日本語で投稿する在日外国人もいる。国籍別の宿泊実態は観光庁「宿泊旅行統計調査」や韓国市場の宿泊先分析のような一次統計と併せて読む必要がある。

上位に並ぶ宿のタイプ — 中央値169室、100室以下が3割

次に、どのような宿が上位に来ているかを客室数で確かめる。英語対応の上位100軒の客室数中央値は169室、多言語対応は166室で、どちらも大型のシティホテル中心という構成ではない。100室以下の施設が英語対応で30軒、多言語対応で35軒を占め、301室以上はそれぞれ27軒・19軒にとどまる。区分別に見ると、英語対応ではビジネスホテル48軒・シティホテル21軒に加えてホステル12軒・町家2軒・ゲストハウス2軒・旅館3軒が入り、多言語対応ではビジネスホテル62軒・リゾートホテル7軒・旅館7軒・ホステル5軒・貸別荘2軒という構成になった(区分は当社マスター上の分類で、アパートメント型ホテルはホステルまたはビジネスホテルに含まれている)。

出典:ホテルバンク編集部調べ(宿泊者口コミのNLP解析、直近24か月、N=英語対応・多言語対応 各上位100軒)

英語対応の上位に並ぶ宿を見ると、タイプの幅が広いことがよく分かる。WPU新宿(104室)、MIMARU東京 錦糸町(82室)、MIMARU東京 新宿WEST(76室)といったキッチン付きのアパートメント型、京町家旅館さくら うるし邸(32室)のような町家、KABIN TAKA(85室)・KABIN Kyoto(75室)・TUNE STAY KYOTO(140室)といった京都の中規模ホテルが並ぶ一方、メルキュール東京羽田エアポート(363室)、成田東武ホテルエアポート(484室)、ホテル日航成田(685室)という空港ホテル、京王プラザホテル(1,438室)・ホテルメトロポリタン(800室)という大型シティホテルも入っている。空港ホテルは乗継ぎや早朝便の利用者が多く、チェックイン・チェックアウトの場面で言葉が通じたことが口コミに残りやすい。大型ホテルは言及件数こそ多いが、口コミ総数が5,000〜1万件規模のため言及率は1〜2%台に収まり、小規模施設の4〜8%とは性格が異なる。

英語対応の言及が多い宿 上位15軒(言及件数順)
順位施設名都道府県区分客室数言及件数言及率口コミ総数
1WPU新宿東京都ホステル1041778.21%2,155
2HOTEL THE FLAG 心斎橋大阪府ビジネスホテル1621284.00%3,202
3メルキュール東京羽田エアポート東京都シティホテル3631192.85%4,176
4成田東武ホテルエアポート千葉県シティホテル4841031.00%10,335
5ホテルサンルートプラザ新宿東京都ビジネスホテル6241031.77%5,803
6東京ベイ潮見プリンスホテル東京都ビジネスホテル605821.91%4,298
7ホテルメトロポリタン東京都シティホテル800792.57%3,074
8KABIN TAKA京都府ビジネスホテル85785.38%1,449
9MIMARU東京 錦糸町東京都ホステル82773.82%2,016
10京王プラザホテル東京都デラックスホテル1,438761.38%5,490
11京町家旅館さくら うるし邸京都府町家32744.24%1,747
12ホテル日航成田千葉県シティホテル685711.26%5,622
13MIMARU東京 新宿WEST東京都ホステル76694.63%1,490
14Hotel Noum OSAKA大阪府ビジネスホテル50686.39%1,064
15ニッコースタイル名古屋愛知県ビジネスホテル191682.66%2,556

出典:ホテルバンク編集部調べ(宿泊者口コミのNLP解析、直近24か月)

多言語対応の上位15軒は、より大阪・九州・沖縄に寄り、客室数も小さい。ホテル湾 Osaka ebisu(40室)、プラムホテル(54室)、ホテル88心斎橋(51室)、Megu Fuji2021(31室)、TokyoNEST Nippori(22室)といった小規模施設が上位に入り、沖縄逸の彩ホテル(201室)・大阪逸の彩ホテル(354室)・ザ ブリッジホテル心斎橋(195室)・ホテルトリフィート那覇旭橋(136室)がその間を埋める。口コミを原文で確かめると、沖縄逸の彩ホテルには「フロントのスタッフは英語が堪能で…」「フロントには中国語を話せるスタッフがいて…」(2025年8月・2026年4月投稿)という声が英語・中国語の双方で残っており、ホテル湾 Osaka ebisuでは深夜帯の受付スタッフが中国語に対応している旨の投稿が2025年9月から2026年5月にかけて複数確認できた。WPU新宿には「多言語対応のスタッフがいて外国人も日本人も安心してステイできる」(2024年11月投稿)という日本語の口コミもある。

多言語対応の言及が多い宿 上位15軒(言及件数順)
順位施設名都道府県区分客室数言及件数言及率口コミ総数
1ホテル湾 Osaka ebisu大阪府ビジネスホテル401149.68%1,178
2沖縄逸の彩ホテル沖縄県リゾートホテル2011115.04%2,202
3ザ ブリッジホテル心斎橋大阪府ビジネスホテル195843.71%2,266
4Megu Fuji2021山梨県ゲストハウス31805.20%1,537
5大阪逸の彩ホテル大阪府ビジネスホテル354682.97%2,289
6プラムホテル大阪府ビジネスホテル54667.01%941
7相鉄グランドフレッサ 大阪なんば大阪府ビジネスホテル698601.87%3,214
8ホテルトリフィート那覇旭橋沖縄県ビジネスホテル136563.91%1,431
9もみじの宿別府 ※口コミ総数300件未満大分県貸別荘14621.00%219
10TokyoNEST Nippori東京都ホステル22459.51%473
11ホテル88心斎橋大阪府ビジネスホテル51414.43%926
12からくさホテル札幌北海道ビジネスホテル177392.45%1,592
13東急ステイ福岡天神福岡県ビジネスホテル252361.67%2,154
14カンデオホテルズ 大阪なんば大阪府シティホテル496331.42%2,319
15hotel MONday東京西葛西東京都ビジネスホテル129323.13%1,022

出典:ホテルバンク編集部調べ(宿泊者口コミのNLP解析、直近24か月)

言及件数と言及率は分けて読む — 口コミ総数が少ない宿の注記

順位を言及件数で付けたのは、言及率だけで並べると口コミ総数の少ない施設が上位を独占するからである。実際、言及率で見た最上位は英語対応ではブリティッシュヒルズ(福島県・107室)の28.99%、多言語対応ではもみじの宿別府(大分県・貸別荘1棟)の21.0%だが、口コミ総数はそれぞれ207件・219件と少なく、数件の増減で言及率が数ポイント動く。ブリティッシュヒルズは英国の街並みを再現した研修・宿泊施設で館内の共通語が英語という特殊な業態であり、英語対応が話題になるのは当然ともいえる。多言語対応の上位100軒には口コミ総数300件未満の施設が7軒含まれており、表では該当施設に注記を付けた。

逆に、言及件数が多くても言及率が低い大型ホテルを「言葉が通じにくい」と読むのは誤りである。成田東武ホテルエアポートは英語対応の言及が103件で全体4位だが、口コミ総数が1万件を超えるため言及率は1.00%にとどまる。口コミに「英語で対応してくれた」と書くのは、それが期待を上回る体験だったときであり、国際空港のホテルで英語が通じることは期待の範囲内で、わざわざ書かれにくい。言及率は「話題になりやすさ」の指標であって、対応力の指標ではないという前提で読んでほしい。

背景 — 宿泊業で働く外国人4.7万人、特定技能「宿泊」の受入れ枠は2.3万人

口コミの側で「言葉が通じた」という声が増える背景には、宿泊現場の働き手の構成変化がある。厚生労働省が2026年1月30日に公表した「外国人雇用状況」の届出状況(2025年10月末時点)によると、外国人労働者は全産業で2,571,037人(前年比+268,450人・+11.7%)と届出義務化以降の最多を更新した。産業別では「宿泊業、飲食サービス業」が319,999人で全体の12.4%を占め、前年比+17.1%と主要産業の中で高い伸びを示している。5年前の2021年10月末(203,492人)からは約1.6倍になった。

出典:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況(各年10月末時点)よりホテルバンク編集部作成

このうち「宿泊業」に限ると外国人労働者は47,007人(全産業の1.8%)、外国人を雇用する宿泊業の事業所は6,311か所である。飲食店(268,769人)と比べれば規模は小さいが、フロント・接客という宿泊者と直接向き合う職種に集まりやすいため、口コミに現れる存在感は人数以上に大きい。多言語対応の言及が多い大阪・福岡・沖縄のホテルで、韓国語・中国語を母語とするスタッフが夜間や繁忙時間帯のフロントに立っている事例が口コミに現れるのは、この雇用構造の変化と整合的である。

制度面では、在留資格「特定技能」の宿泊分野が受け皿になっている。出入国在留管理庁の分野別情報によると、宿泊分野の1号特定技能外国人が従事できる業務は「フロント、企画・広報、接客、レストランサービス等の宿泊サービスの提供」で、受入れ機関は旅館業法の「旅館・ホテル営業」許可を受けていることと、観光庁が設置する宿泊分野特定技能協議会の構成員になることが条件とされる。1号の受入れ見込数(5年間の最大値)は23,000人である。観光庁が2025年2月の第10回協議会に提出した資料では、宿泊分野の特定技能1号の累計在留者数は2019年12月末の15人から2024年11月末の614人まで増え、2023年8月31日に運用が始まった2号(複数の従業員を指導する立場)は3人であった。制度解説を行う民間サイトが出入国在留管理庁の2025年6月末公表値として引く数値では1号1,265人・2号17人の計1,282人とされ、半年強で倍増した計算になるが、見込数23,000人に対してはなお1割に満たない。枠の大きさからみれば、宿泊業の外国人材受入れはこれから本格化する段階にあるといえる。2号創設の経緯と5年制限撤廃が人手不足の構造に与える影響については、特定技能「宿泊」2号創設の分析が背景を掘り下げている。

運営への示唆 — 多言語スタッフの配置時間帯と、翻訳ツールとの役割分担

以上を運営の視点で整理すると、2つの実務的な示唆が導ける。1つ目は配置の時間帯である。口コミで「言葉が通じた」と書かれる場面は、チェックイン・チェックアウト、深夜の問い合わせ、トラブル対応に集中している。ホテル湾 Osaka ebisuの口コミで深夜帯の受付スタッフが名指しで感謝されているように、多言語スタッフを置く効果が最も大きいのは、翻訳アプリを開いて説明する余裕がない時間帯と場面である。チェックインが集中する15〜19時と、夜勤帯の最初の数時間に言語対応の厚みを持たせ、日中の清掃・準備時間帯は日本語中心の体制でよいという設計は、人員を増やさずに言及率を高める現実的な選択肢になる。

2つ目は翻訳ツールと人の役割分担である。館内案内、設備の使い方、周辺の飲食店情報、チェックアウト手順といった定型情報は、多言語の案内カード・QRコード・翻訳端末で十分に補える。逆に、人が担うべきなのは「予約内容の相違」「体調不良」「忘れ物」「交通機関の遅延に伴う変更」のような例外処理であり、ここで母語に近い言語で対応できるスタッフがいると口コミに残りやすい。沖縄逸の彩ホテルで英語と中国語の両方の口コミに「フロントに話せるスタッフがいた」と書かれているのは、定型は仕組みで、例外は人で、という分担が機能している例と読める。

市場別に言語の優先順位を付けることも有効である。東京・京都では英語が口コミの3割を占めるため英語対応の底上げが先で、フランス語・スペイン語などの欧州言語は翻訳ツールで補完する。大阪・福岡では韓国語、沖縄では中国語(繁体字圏)と韓国語の比率が高く、英語に加えてこれらの言語を話せるスタッフを採用・配置する余地が大きい。特定技能「宿泊」の受入れ枠が見込数に対して1割未満という現状は、これからアジア圏出身のスタッフをフロントに迎える施設にとって、制度上の受入れ余地が十分に残されていることを意味する。自社の口コミに「英語で」「中国語で」という語がどの程度出ているかを定期的に数え、言及率の変化を採用・配置の効果測定に使うことも、投資額を伴わずに始められる。

まとめ

英語対応の口コミ上位100軒は東京43軒・京都16軒・大阪13軒と英語の口コミ比率が3割に達する都市型市場に集まり、多言語対応の上位100軒は大阪36軒・福岡16軒・沖縄14軒と、韓国語・中国語の口コミ比率が11〜21%の市場に寄っていた。上位の宿は客室数中央値が160〜170室で、100室以下のアパートメント型・町家・ホステル・小規模ホテルが3割を占める一方、空港ホテルや大型シティホテルは言及件数で上位に入りつつ言及率は1〜2%台にとどまる。背景には宿泊業の外国人労働者4.7万人、宿泊業・飲食サービス業で前年比+17.1%という雇用構造の変化と、特定技能「宿泊」の受入れ枠23,000人に対して在留者が1割未満という制度の余地がある。配置時間帯を絞り、定型情報はツールに、例外対応は人に、という分担を市場の言語構成に合わせて設計することが、口コミに残る「言葉が通じた」体験を増やす近道だろう。

よくある質問

Q. 言及率が高いほどスタッフの語学力が高いということですか。
いいえ。言及率は口コミのうち英語対応・多言語対応に肯定的に触れた割合で、「話題になりやすさ」を示す指標です。空港ホテルのように英語対応が期待の範囲内の施設では、通じても書かれにくいため言及率は低く出ます。

Q. 口コミの言語は宿泊者の国籍と同じですか。
異なります。英語の口コミには東南アジアやインドなど英語を使う旅行者が含まれ、日本語の口コミには在日外国人も含まれます。本稿の言語構成は投稿言語の比率であり、国籍別の宿泊者数は観光庁「宿泊旅行統計調査」で確認してください。

Q. 特定技能「宿泊」ではどんな業務ができますか。
出入国在留管理庁の分野別情報では、1号はフロント、企画・広報、接客、レストランサービス等の宿泊サービスの提供に従事し、2号は複数の従業員を指導しながら同じ業務に従事するとされています。受入れ機関には旅館・ホテル営業の許可と、宿泊分野特定技能協議会への加入が求められます。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

宿泊者口コミ(直近24か月・9言語)をNLPで解析し、スタッフの英語対応・多言語対応に肯定的に触れた口コミを施設ごとに数えた(ホテルバンク編集部調べ、2026年11月1日集計)。外国人労働者数・特定技能の数値は厚生労働省・出入国在留管理庁・観光庁の公表資料による。

■ 試算前提

抽出条件は口コミ総数100件以上かつ言及10件以上で、言及件数(絶対数)の上位100軒を英語対応・多言語対応それぞれで抽出した。言及率=言及件数÷口コミ総数。言語構成は9言語の口コミ合計に対する投稿言語の比率。客室数・区分は編集部の施設データ上の値。

■ 限界・留意点

言及率は「話題になりやすさ」の指標で、スタッフの語学力や満足度を直接示すものではない。投稿言語は投稿者の国籍と一致しない。口コミ総数300件未満の施設は数件の増減で言及率が大きく動く。特定技能の2025年6月末値は民間制度解説サイトによる公表値の引用で、一次資料で確認できるのは2024年11月末値までである。

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