トップ > 業界トレンド > ブッキングカーブとは|予約進捗の読み方 — 東京ビジネスホテル541軒は45日前61.6%→前日95.8%

ブッキングカーブとは|予約進捗の読み方 — 東京ビジネスホテル541軒は45日前61.6%→前日95.8%

投稿日 : 2026.11.06

東京都

ブッキングカーブとは|予約進捗の読み方 — 東京ビジネスホテル541軒は45日前61.6%→前日95.8%

ブッキングカーブとは、宿泊日までのリードタイム(日数)を横軸、予約済み比率(OCC)を縦軸にとり、1つの宿泊日に向けて予約がどう積み上がったかを1本の曲線で描いたものである。宿泊日ごとに1本描けるため、ピーク日・平日・連休でそれぞれ違う「埋まり方の形」が見える。縦軸を残室率にすれば同じ曲線を裏返しに読むこともできる。本稿は、ホテル運営者・RM担当・投資家向けに、定点(45日前・30日前・14日前・7日前・前日)の読み方、東京都ビジネスホテル541軒の2026年10月実測カーブ、業態による立ち上がりの差、前月比較によるペース管理、そして陥りやすい誤読を整理する。以後、当サイトの県別・イベント別ブッキングカーブ分析はこの記事を定義の参照先とする。

本記事のデータについて
• ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。
• エリア(都道府県・市区町村)単位のADRは、対象施設の推定成約単価の中央値(エリアの標準的な施設の水準)です。
• 掲載価格に言及する箇所は、2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
• OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。
• 出典:メトロエンジンリサーチ(国内約168,000施設のOTA公開価格を継続追跡、うち稼働確認済み約27,000施設)
本記事で使うブッキングカーブ関連の用語
• ブッキングカーブ=チェックイン日に向けたOTA等の残室数の推移を、リードタイム別の予約済み比率として描いた曲線。
• LT(リードタイム)=チェックイン日までの日数。LT45=45日前、LT1=前日。本稿のカーブはLT45からLT1までを描く。
• 稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります。
• 残室率=総客室数に対するOTA等の掲載残室数の割合。予約済み比率と足すと100%になる。
• ピックアップ=2つの定点の間で予約済み比率が何pt伸びたか。
• 完売施設率=コホート内で、その観測時点に掲載残室が0室だった施設の割合。
• 平均掲載価格=コホート施設の掲載価格(2名1室利用時・1室あたり・税込)の平均。推定成約ADRとは別の指標である。
Key Takeaways
  • — 定義:横軸=宿泊日までのリードタイム、縦軸=予約済み比率(OTA掲載在庫ベースの推定)。宿泊日ごとに1本描け、残室率とは合計100%の裏表の関係にある。
  • — 61.6%→95.8%:東京都ビジネスホテル541軒・78,615室の2026年10月(31宿泊日平均)は、45日前から前日までに34.2pt積み上がった。
  • — 掲載価格は約20%上昇、完売施設率は6.0%→34.5%:価格と完売を同じ横軸に重ねると、価格改定の判断点が見える。
  • — 業態差:シティ(76.1%)とリゾート(76.6%)は45日前から高く、ビジネスは直前の伸びで前日にシティと並ぶ(東京都・2026年10月)。
  • — 誤読に注意:45日超の点は予約進捗と読まない。OTA掲載在庫ベースの比率は実客室稼働率より高めに出る。

ブッキングカーブの定義と読み方 — 5つの定点、残室率との裏表、ピックアップ

ブッキングカーブは、宿泊日をゴールに置いた時間軸で予約の積み上がりを追う道具である。横軸は左が遠い未来(LT45)、右が宿泊日直前(LT1)で、右へ進むほど曲線は上がっていく。縦軸は予約済み比率で、OTA等の掲載在庫から描く場合はOTA掲載在庫ベースの稼働率(推定)がそれにあたる。1つの宿泊日に1本のカーブが対応するので、月間31日分を平均すれば「その月の典型的な埋まり方」が、特定の土曜日だけを取り出せば「その日の埋まり方」が見える。

実務では曲線全体を眺めるより、いくつかの定点で値を拾うほうが使いやすい。本稿では45日前(LT45)・30日前(LT30)・14日前(LT14)・7日前(LT7)・前日(LT1)の5点を基本定点とする。LT45は販売枠が出そろい予約が本格化する起点、LT30は宿泊日まで残り1か月の進捗を確認する節目、LT14とLT7は価格改定の判断点、LT1は最終到達水準という位置づけになる。ただし、同じ定点でも業態や曜日によって意味合いは変わるため、後段で業態差を確認する。

残室率との関係は単純で、予約済み比率と残室率は常に合計100%になる。言い換えれば、ブッキングカーブを上下反転させたものが残室率の曲線であり、現場の「あと何室売れるか」と経営報告の「どこまで埋まったか」は同じ数字を別の向きから見ているにすぎない。そして2つの定点の間で予約済み比率が何pt伸びたかを「ピックアップ」と呼ぶ。LT30からLT14までのピックアップが大きい市場は、宿泊日の1か月前から2週間前までが予約の主な積み上げ区間だと読める。

実測例 — 東京都ビジネスホテル541軒、2026年10月は45日前61.6%から前日95.8%へ

定義だけでは形が想像しにくいので、実測のカーブを置く。対象は東京都のビジネスホテルで、総客室の30%以上をOTA等に掲載する541軒・78,615室の固定コホート(各宿泊日で同じ施設集合)である。2026年10月の31宿泊日について、リードタイムごとに予約済み比率を平均した。メトロエンジンリサーチのデータによると、45日前の予約済み比率は61.6%で、30日前に70.7%、14日前に83.1%、7日前に88.1%、前日には95.8%へ到達していた。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(東京都ビジネスホテル固定コホート N=541軒・78,615室、2026年10月の31宿泊日平均、観測カバレッジLT45〜LT1)

曲線の形を定点で切り分けると、どの区間で予約が集中しているかが分かる。LT45からLT30までの15日間で9.1pt、LT30からLT14までの16日間で12.4pt、LT14からLT7までの7日間で5.0pt、LT7からLT1までの6日間で7.7pt伸びている。1日あたりに換算すると、LT30〜LT14の区間が約0.8pt/日、LT7〜LT1の区間が約1.3pt/日となり、直前の1週間が最も速い。一方で、45日前の時点で6割強がすでに埋まっている点も見逃せない。ただし東京都の61.6%は47都道府県のビジネスホテルの中央値60.1%に近く(19位)、カーブの「出発点」が特別に高いわけではない。前日の95.8%は3位で、東京都の特徴はむしろ直前までの積み上げの大きさにある。

東京都ビジネスホテルの定点別ブッキングカーブ(2026年10月・31宿泊日平均、N=541軒・78,615室)
定点予約済み比率残室率残室数直前定点からのピックアップ平均掲載価格完売施設率
45日前(LT45)61.6%38.4%30,168室—¥26,9396.0%
30日前(LT30)70.7%29.3%23,031室+9.1pt¥28,4388.7%
14日前(LT14)83.1%16.9%13,301室+12.4pt¥30,52914.3%
7日前(LT7)88.1%11.9%9,320室+5.0pt¥31,30318.3%
1日前(LT1)95.8%4.2%3,264室+7.7pt¥32,38934.5%

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(N=541軒・78,615室、31宿泊日平均。残室数はコホート合計)

価格と完売施設率も同じ横軸で読む — 掲載価格は約20%上昇、完売施設率は6.0%から34.5%へ

ブッキングカーブの横軸は、価格や完売施設率を重ねて読むことで初めて価格判断の道具になる。同じコホートの平均掲載価格(2名1室・税込)は、LT45の約26,900円からLT1の約32,400円へ、約20%上昇していた。予約が積み上がるにつれて安いプランから順に売り切れ、掲載に残るプランの平均が上がる効果と、施設側が残室の減少を見て価格を引き上げる効果の両方が重なっている。なお、この平均掲載価格は「その時点で売れ残っている在庫の価格」であり、成約単価ではない点に注意したい。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(N=541軒、31宿泊日平均。価格は2名1室利用時・1室あたり・税込の掲載価格)

完売施設率(掲載残室が0室の施設の割合)は、LT45の6.0%からLT14の14.3%、LT7の18.3%を経て、LT1には34.5%まで上がる。言い換えると、前日時点でコホートの約3分の1がOTA等の販売枠を使い切っており、残る3分の2の施設の在庫で4.2%の残室率が構成されている。市場平均の予約済み比率が同じ90%でも、完売施設率が高い市場と低い市場では個々の施設に残された打ち手が異なる。完売施設率が急上昇する区間(本例ではLT3以降)は、まだ在庫を持つ施設にとって市場全体の供給が細る局面であり、価格を据え置くか引き上げるかの判断点になる。

業態差 — シティとリゾートは45日前で76%、ビジネスは直前の伸びで追い抜く

同じ東京都・同じ2026年10月でも、業態が違えばカーブの形は変わる。ビジネス(541軒・78,615室)、シティ(52軒・15,995室)、リゾート(12軒・742室)の3業態を同じ横軸に並べると、立ち上がりの早さの違いが一目で分かる。LT45時点の予約済み比率はビジネス61.6%に対し、シティ76.1%、リゾート76.6%と、宿泊日から遠い段階ではシティ・リゾートのほうが15pt前後高い。レジャー・記念日・インバウンドの長期手配が厚い業態ほど、カーブは高い位置から始まる。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(東京都・2026年10月の31宿泊日平均。ビジネス N=541軒、シティ N=52軒、リゾート N=12軒・742室。リゾートはサンプルが小さく個別日の変動が平均に出やすい)

ところが宿泊日が近づくと順位は入れ替わる。ビジネスはLT45からLT1までに34.2pt積み上げて95.8%に達し、シティの95.0%とほぼ同じ水準で宿泊日を迎える。シティのピックアップは18.9pt、リゾートは10.5ptにとどまり、リゾートはLT21からLT7の2週間は83.5%前後でほぼ横ばいだった。リゾートの対象は12軒・742室と小さく、1施設の販売枠の出し入れが平均に表れやすい点は割り引く必要があるが、「早く埋まり、直前の追加需要は限られる」という業態の性格そのものは他県の分析でも繰り返し観測されている。

業態別の定点比較(東京都・2026年10月・31宿泊日平均)
業態(コホート)LT45LT30LT14LT7LT1LT45→LT1ピックアップ平均掲載価格 LT45→LT1完売施設率 LT45→LT1
ビジネス
541軒・78,615室
61.6%70.7%83.1%88.1%95.8%+34.2pt¥26,939→¥32,389
(+20.2%)
6.0%→34.5%
シティ
52軒・15,995室
76.1%82.0%88.4%90.7%95.0%+18.9pt¥54,216→¥62,098
(+14.5%)
6.0%→23.7%
リゾート
12軒・742室
76.6%80.9%83.4%83.4%87.1%+10.5pt¥40,781→¥37,646
(-7.7%)
14.9%→41.0%

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(東京都・2026年10月・31宿泊日平均。予約済み比率はOTA掲載在庫ベースの推定)

価格の動きも業態で分かれる。ビジネスの掲載価格がLT45からLT1で約20%、シティが約15%上昇した一方、リゾートは約8%の低下となった。リゾートは高額プランが先に売れ、直前に残るのが相対的に手頃なプランという構図が考えられる。業態ごとにカーブの形と価格の向きが異なるからこそ、自施設のカーブを読む際は同じ業態のコホートをベンチマークに置くことが前提になる。

使い方① — 定点で前月・前年の同じ点と比べる「ペース管理」

ブッキングカーブの最も基本的な使い方は、定点の値を過去の同じ定点と比べることである。本来の比較相手は前年同月の同じ定点だが、OTA掲載在庫ベースのカーブは2026年3月からの蓄積で前年分がまだ揃わないため、ここでは前月(2026年9月、550軒・79,533室・30宿泊日)の同定点をベンチマークに置いて読み方を示す。9月は秋の繁忙期に入る前で10月とは需要水準そのものが異なるため、絶対水準の差を「好調・不調」と読むのではなく、カーブの形(どの区間で伸びたか)を比べる例として見てほしい。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(東京都ビジネスホテル。2026年9月 N=550軒・30宿泊日、2026年10月 N=541軒・31宿泊日。コホートは月ごとに構成)

東京都ビジネスホテルの定点比較 — 2026年9月と10月
定点2026年9月2026年10月差完売施設率(9月/10月)
LT4551.9%61.6%+9.7pt2.6% / 6.0%
LT3060.2%70.7%+10.5pt3.4% / 8.7%
LT1472.9%83.1%+10.2pt5.5% / 14.3%
LT779.3%88.1%+8.8pt6.5% / 18.3%
LT190.3%95.8%+5.5pt17.6% / 34.5%

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

10月のカーブは9月に対して全定点で上に位置し、LT45で9.7pt、LT1で5.5ptの差があった。注目したいのは差の縮まり方で、差はLT30の10.5ptを頂点に、宿泊日に近づくほど縮む。10月は早期に予約が入る分、直前のピックアップ(LT7→LT1)は7.7ptと9月の11.0ptより小さい。これがペース管理で読むべき情報である。たとえば自施設のLT30が同業態コホートの定点を上回っていれば、直前に残す在庫を絞って価格を維持する余地があり、下回っていれば販路やプランの追加を前倒しする判断材料になる。前年同月が蓄積された後は、同じ手順で前年同月の定点を比較相手に据えればよい。

使い方② — 価格改定のタイミングと、イベント日が前後日に「染み出すか」の判定

価格改定の判断にブッキングカーブを使うなら、見るべきは「定点の予約済み比率」と「その時点の完売施設率」の組み合わせになる。東京都ビジネスホテル10月の例では、LT14で予約済み比率83.1%・完売施設率14.3%、LT7で88.1%・18.3%だった。自施設の予約済み比率がこの定点を上回り、かつ市場の完売施設率が上がり始めているなら、残る在庫の価格を引き上げても需要が逃げにくい局面と読める。逆に、市場が高い定点にあるのに自施設だけが低いなら、価格ではなく露出(プラン構成・販路)の見直しが先になる。改定の良し悪しはカーブ単独では決まらず、同業態コホートとの相対位置で決まる。

もう1つの実務的な用途が、イベント日の需要が前後の日に「染み出すか」の判定である。マラソンや公演、全国大会のある日は、その宿泊日のカーブだけが早い段階から高い位置を走る。前夜と当日夜、前々夜のカーブを並べると、需要が1日に集中しているのか、連泊として前後に広がっているのかが分かる。当サイトではおかやまマラソン2026の前夜と当日夜、下関海響マラソンの前夜・当日夜・前々夜、さんフェアSAGA2026の初日と2日目をこの方法で比較している。前夜に需要が集中し当日夜が弱い型なら、当日夜の価格設計とプラン訴求を前倒しで組む、という判断につながる。

曜日や連休の比較にも同じ道具が使える。同じ土曜日でも10月24日泊と10月31日泊で需要が反転する5都府県、県民の日の金曜泊を11月の4金曜で45日前から比較した分析、紅葉期の香嵐渓もみじまつりに向けた豊田市のカーブは、いずれも本稿の定義にもとづいて定点を読んでいる。福岡県の10月24日泊を施設分布で分けた分析は、市場平均のカーブの裏側で個々の施設の在庫消化がどれほど散らばるかを示しており、平均カーブと分布をセットで読む参考になる。

よくある誤読 — 45日超の点と、OTA掲載在庫ベースOCCの定義

第一の誤読は、45日より前の観測点を「予約が入っていない」と読むことである。OTA等の掲載在庫は、施設側が販売枠を段階的に出す運用が一般的で、宿泊日から遠い時期の残室数は「予約が入った結果」ではなく「まだ掲載されていない枠」を含む。このため本稿のカーブはLT45からLT1までに限定している。データ提供側の注記をそのまま掲げると、「リードタイム45日超の点は掲載枠が積まれる前の観測を含み、予約進捗を表さないことがある。45日超を利用する場合は、対象施設数・観測カバレッジ・掲載在庫ベースの推定である旨を必ず利用者に説明すること。推奨はリードタイム45日以内のみの利用。」とされており、当サイトの分析記事もこの方針に従って45日以内のみを使う。

第二の誤読は、本稿の予約済み比率を観光庁や施設の決算が示す客室稼働率と同じものとして扱うことである。本稿の縦軸の定義は次のとおりである。「OTA掲載在庫ベース稼働率 = 100 − 100 × OTA掲載残室数 ÷ 総客室数。対象は総客室の30%以上をOTAに掲載する施設で構成した固定コホート(各宿泊日で同じ施設集合。対象施設数は各業態の軒数として示す)。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、実客室稼働率とは定義が異なる(掲載外の客室を消化済み側に数えるため高めに出る)。」。つまり、OTA等に掲載していない客室(直販・法人契約・団体で押さえている枠)は掲載残室に現れないため、消化済みとして数えられる。その結果、同じ月の実客室稼働率より高めに出る。観光庁「宿泊旅行統計調査」の客室稼働率は施設から回収した実績ベースで、定義が異なる。当サイトでは沖縄県を例に観光庁の稼働率とOTA在庫ベースの推定値が同月で27.5pt離れた理由を整理しているので、両者を並べる際はそちらも参照してほしい。

第三に、平均掲載価格を成約単価と混同しないことである。カーブ上の価格は「その時点で売れ残っている掲載在庫の平均」であり、売れた客室の平均ではない。推定成約ADRは別の手順で算出する指標であり、本記事の定義ブロックに示した。第四に、市場平均のカーブを自施設の予測にそのまま当てないことである。カーブは業態・曜日・立地で形が変わるため、比較相手は同じ業態・同じエリアのコホートに限る。JNTO「訪日外客統計」のような需要側のマクロ指標と組み合わせると、カーブの「出発点」が高い理由を需要の構成から説明しやすくなる。

よくある質問

Q. ブッキングカーブとブッキングペースの違いは何か

ブッキングカーブは、ある宿泊日(または宿泊日群の平均)について、リードタイムごとの予約済み比率を1本の曲線として描いた「形」そのものを指す。ブッキングペースは、その曲線上の特定の定点(たとえば30日前)の値を、前年同日や前月の同じ定点と比べたときの「差」や「速さ」を指す。カーブが地図で、ペースが現在地の読み取りだと考えると分かりやすい。本稿の東京都ビジネスホテル2026年10月の例では、カーブはLT45の61.6%からLT1の95.8%へ至る形であり、ペースは「LT30で70.7%、前月の同定点60.2%より10.5pt先行」といった読み方になる。

Q. ブッキングカーブは何日前から見るべきか

OTA等の掲載在庫から描くカーブでは、宿泊日の45日前(LT45)以内が実務上の起点になる。45日より前の観測点は、施設側がまだ販売枠を出し切っていない時期を含み、残室が少なく見えても予約が進んだとは言えないためである。定点は45日前・30日前・14日前・7日前・前日の5点を基本に置き、週1回の確認なら45日前と30日前、価格改定の判断なら14日前と7日前を重く見るとよい。本稿の東京都ビジネスホテルの例では30日前から14日前の16日間で定点間のピックアップが最も大きく(+12.4pt)、この区間を見逃さないことが要点になる。ただし最大の区間は地域で異なる。

Q. ブッキングカーブと残室率はどういう関係か

同じ事実の裏表である。縦軸を予約済み比率(OTA掲載在庫ベースのOCC)で描けば右肩上がりの曲線、残室率で描けば右肩下がりの曲線になり、両者は常に合計100%になる。東京都ビジネスホテルの例では、LT45の予約済み比率61.6%は残室率38.4%(30,168室)と同義であり、LT1の95.8%は残室率4.2%(3,264室)に対応する。現場では「あと何室売れるか」を直感的に把握できる残室率、経営報告では到達水準を示す予約済み比率が使われることが多い。

まとめ

ブッキングカーブは、宿泊日までのリードタイムを横軸、予約済み比率を縦軸に描く予約進捗の曲線で、残室率と裏表の関係にある。東京都ビジネスホテル541軒・78,615室の2026年10月実測では、45日前61.6%、30日前70.7%、14日前83.1%、7日前88.1%、前日95.8%と積み上がり、掲載価格は約20%上昇、完売施設率は6.0%から34.5%へ高まった。同じ月でもシティ・リゾートは45日前に76%台から始まり直前の伸びは小さく、業態ごとに形が異なる。実務では5つの定点を同業態コホートの同定点と比べるペース管理、定点と完売施設率の組み合わせによる価格改定の判断、イベント日の前後日への染み出し判定に使える。45日超の点を進捗と読まないこと、OTA掲載在庫ベースの比率が実客室稼働率より高めに出ることの2点を押さえれば、県別・イベント別の分析記事はこの定義のうえで読み解ける。

関連記事

ブッキングカーブを使った関連分析記事
テーマ記事
イベント日の前後日比較おかやまマラソン2026 — 岡山市北区の前夜と当日夜のブッキングカーブ
イベント日の前後日比較下関海響マラソン前夜(2026年10月31日泊)は45日前に推定OCC90.4% — 当日夜と前々夜の売り方
全国大会の初日・2日目さんフェアSAGA2026の佐賀県 — 初日98.4%・2日目74.1%
県別・業態別の在庫消化分布福岡県の10/24(土)、14日前の残り枠と在庫消化の型
同じ曜日の需要反転10/31泊と10/24泊で需要が反転する5都府県
紅葉期のカーブ香嵐渓もみじまつり2026、豊田市のブッキングカーブと11月ADR
連休・記念日のカーブ県民の日の金曜泊は宿に現れるか — 11月の4金曜を45日前で比較
稼働率の定義差沖縄 稼働率 2026|観光庁とOTA在庫ベースの定義差

参考資料・出典一覧

■ データソース

メトロエンジンリサーチのOTA掲載在庫データにもとづくブッキングカーブ集計(2026年10月31日取得)。東京都の都道府県単位で、ビジネス・シティ・リゾートの業態別に構成した固定コホートを使用した。

■ 試算前提

予約済み比率=100−100×OTA掲載残室数÷総客室数。総客室の30%以上をOTAに掲載する施設で固定コホートを構成し、2026年10月の31宿泊日(9月は30宿泊日)の値をリードタイム別に平均した。平均掲載価格は2名1室利用時・1室あたり・税込。ピックアップは2つの定点間の予約済み比率の差(pt)。

■ 限界・留意点

OTAに掲載していない客室は消化済み側に数えられるため、実客室稼働率より高めに出る。リードタイム45日超は対象外とした。前年同月の比較相手がまだないため、本稿では前月比較で読み方を示した。リゾートは12軒・742室と小さく、個別施設の販売枠の出し入れが平均に表れやすい。個別施設の予約進捗は扱わない。

  • メトロエンジンリサーチ — OTA掲載在庫ベースのブッキングカーブ(東京都・2026年10月、ビジネス541軒・78,615室/シティ52軒・15,995室/リゾート12軒・742室の固定コホート、31宿泊日平均。2026年9月ビジネス550軒・79,533室、30宿泊日平均。2026年10月31日取得)
  • 観光庁「宿泊旅行統計調査」(客室稼働率の公式統計。本稿の推定値とは定義が異なる)
  • JNTO「訪日外客統計」

関連記事