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ワーケーション導入事例2026|企業・自治体・宿の三層と、長期滞在言及29万件の県別地図

投稿日 : 2026.09.05

指定なし

ワーケーション導入事例2026|企業・自治体・宿の三層と、長期滞在言及29万件の県別地図

「ワーケーション事例を探している」という検索は、いま個人よりも法人・行政の側から多く発生している。制度を作りたい企業、受け入れ体制を整えたい自治体、そして連泊需要を取りにいきたい宿泊施設——立場によって必要な事例はまったく違うにもかかわらず、公開されている事例集は2020〜2022年の情報のまま更新が止まっているものが少なくない。本稿では、2026年時点で一次情報として確認できる導入事例を「企業/自治体/宿泊施設」の三層に整理したうえで、宿泊者口コミ812万件の集計から「長期滞在」「仕事利用」が実際に語られている宿の地理を定量化する。

本記事における指標の定義

  • 言及率:対象エリアの宿泊者口コミのうち、その話題(長期滞在・仕事利用・館内Wi-Fi・ランドリー・客室コンセントなど)に言及した口コミの割合。評価スコア(★)ではなく「どれだけ話題に上がったか」を示す頻度指標で、両者は別のものです。集計期間は直近24ヶ月。
  • 集計対象:47都道府県・宿泊者口コミ 8,128,088件(ホテルバンク編集部調べ)。うち「長期滞在」言及は291,143件、「仕事利用」言及は241,152件。
  • 事例の採録基準:観光庁の公開資料、自治体の公式ページ、事業者の公式発表のうち、本稿執筆時点で実際に開いて内容を確認できたもののみを掲載。制度は年度により改廃されるため、掲載年度を併記しています。
  • データ出典:ホテルバンク編集部が集計した宿泊者口コミ/観光庁・各自治体公式資料
Key Takeaways
  • — 事例は三層で読む — 企業(制度・費用負担)/自治体(年度予算の誘致・補助)/宿泊施設(設備と連泊価格)で必要な一次情報も更新頻度も異なる。
  • — 2022年の補助金一覧は使えない — 自治体施策は年度予算に紐づく。2026年度に公式ページで現存を確認できたのは和歌山市・熱海観光局・下田市・白浜町。
  • — 長期滞在と仕事利用は別の地図 — 口コミ8,128,088件の県別言及率で両者はほぼ相関しない。沖縄県は長期滞在6.31%に対し仕事利用1.37%。
  • — 両立13県の7県が東北・北陸 — 双方が中央値(3.73%/3.63%)を超えるのは13県で、誘致で先行する沖縄県・長野県・和歌山県は入らない。
  • — Wi-Fiは横並び、差はランドリー — 館内Wi-Fi言及率は13県で0.74〜1.05%に収束。ランドリーは0.86〜2.61%と3倍の開きが残る。

結論:2026年の「事例」は三層に分けないと使えない

ワーケーションの導入事例は、しばしば「〇〇社が導入」という単一の主語で語られる。しかし実務上、参照すべき情報は立場によって三層に分かれる。制度・就業規則・費用負担のルールを扱う企業層、誘致・補助・コーディネート機能を担う自治体層、そして実際に人を泊め、設備と価格で受け止める宿泊施設層である。この三層は相互に依存しているが、公開されている情報の粒度も更新頻度もまったく異なる。

結論を先に述べる。企業層の一次情報は観光庁が公開する導入企業事例に集約されており、制度設計の型(休暇型/業務型、費用負担の切り分け、勤怠管理の方法)はここでほぼ揃う。自治体層は年度ごとの予算措置に紐づくため、2022年当時の補助金一覧をそのまま参照すると大半が失効している——本稿で2026年度に生きていることを公式ページで確認できたものだけを掲載した理由がここにある。そして宿泊施設層は、公開された「事例」がほとんど存在しない。だからこそ、宿泊者が実際に何を語っているかを集計する意味がある。

三層別に見た一次情報と実務上の使いどころ
層 2026年時点で確認できる一次情報 実務上の使いどころ
企業観光庁「ワーケーション&ブレジャー」導入企業事例(日本航空/コミクリ/海士町観光業魅力化協議会。令和5年度実証事業ベース)就業規則の改定文言、費用負担の線引き、勤怠報告フローの雛形
自治体和歌山市の令和8年度支援金(受付中)/熱海観光局の法人向け事業(2026年7月刷新)/下田市のデジタルノマド交流プログラム(2026年10〜11月)/白浜町のIT企業誘致実績(2026年7月更新)誘致スキームの設計、宿泊費補助の水準感、DMOと事業者の役割分担
宿泊施設公開事例は限定的。宿泊者口コミ8,128,088件の集計により、長期滞在・仕事利用・受入設備の語られ方を定量化自館エリアの需要実態の把握、設備投資の優先順位、連泊プランの訴求設計

出典:観光庁・各自治体公式資料/ホテルバンク編集部が集計した宿泊者口コミ(N=8,128,088件・直近24ヶ月)

企業層:制度の型は「休暇型」と「業務型」に収斂している

観光庁が公開する導入企業事例のうち、最も詳細に運用ルールが開示されているのが日本航空のケースである。同社は2017年に「休暇型」ワーケーションを制度化した。対象は間接部門の社員で、事前に休暇取得を申請したうえで当日の就業場所を上司に報告し、始終業時間を勤怠管理システムに登録する。休暇時間を業務時間より優先する建て付けとし、移動費・宿泊費は社員の自己負担とする——この費用負担の切り分けが、福利厚生型として制度を成立させている核心部分である。利用実績は2017年度の11人から2020年度には延べ400人以上へ拡大し、あわせて2019年5月に導入されたブレジャー制度は年度合計で約170件の利用があったと公開されている(出典:観光庁「ワーケーション&ブレジャー」導入企業事例)。

ここで運営者・自治体側が読み取るべきは、利用者数の多寡ではない。費用が社員負担である以上、宿泊施設にとってこの層は「個人予約の連泊客」として現れるという点である。法人一括契約の形をとらないため、受け入れ側は法人営業ではなく、連泊価格と館内設備の訴求で取りにいく対象になる。一方、観光庁が令和5年度に実施した「企業ニーズに即したワーケーション推進に向けた実証事業」で紹介されている株式会社コミクリ、海士町観光業魅力化協議会のような事例は、地域のテーマ解決と業務を結びつける「業務型」に近く、こちらは企業予算で動くため法人向けの提案が成立する。同じ「ワーケーション」という語でも、休暇型か業務型かで営業経路が完全に分かれる。事例を参照するときは、まずこの二分をどちらで読んでいるかを確認したい。出張の前後に滞在を延長する層を実際に受け止めている宿がどう客層を変えているかは、ブレジャー本格化2026夏 — 出張+滞在延長を許容する法人ホテル30軒の客層シフト分析で個別に追っている。

なお観光庁は、令和5年度の「企業ニーズに即したワーケーション推進実証事業」、令和6年度の「デジタルノマド受入環境整備実証事業」および「子育て世代対応業務型ワーケーション実証事業」について、それぞれナレッジ集を公開している。年度が進むにつれてテーマが「企業ニーズ」から「デジタルノマド」「子育て世代」へと細分化されている点は、政策側の関心が総論から特定セグメントの受入環境整備へ移行していることを示している。

自治体層:2026年度に生きている制度と、失効している制度

自治体の受入・補助は年度予算に紐づくため、鮮度の確認が欠かせない。本稿の執筆にあたって複数の自治体公式ページを実際に開いて確認したところ、検索上位に残っている補助金ページの一部はすでに削除されていた(例:鳥取県のワーケーション関連ページの一つは、アクセス時点で「変更、削除、掲示期間終了などの理由により表示できません」と表示された)。2022年時点の補助金まとめ記事をそのまま現行制度として引用すると、実務上の事故につながる。

以下は、2026年度分として公式ページで内容を確認できたものである。

2026年度に公式ページで内容を確認できた自治体・地域団体の施策
自治体・主体 施策名/内容 2026年時点の状況(公式確認)
和歌山市トライアル和歌山市活動費支援金。市外企業が従業員に2泊3日以上の滞在を伴うワーケーションを実施させた場合、交通費・宿泊費・施設利用料の1/2(従業員1人あたり2〜3万円、上限5人)を支援令和8年度(2026年度)受付中。申請期限は令和9年2月12日
熱海観光局(静岡県熱海市)法人向け事業を「熱海 for Biz」に刷新。JTB、PerkUP、コンシャスマネジメント等と連携し、小規模オフサイトから大規模企業研修まで受け入れ2026年7月30日に本格展開を開始
静岡県下田市海外デジタルノマド交流プログラム「TADAIMA SHIMODA」。海外・国内ノマドと地域の学生・事業者が約1ヶ月間協働2026年10月25日〜11月22日に3回目を実施予定(募集開始2026年8月20日)
和歌山県白浜町IT企業誘致。町ITビジネスオフィス(2004年1月/5社・満室)、第2ITビジネスオフィス(2018年6月/3社・満室)、ANCHOR(2020年11月/5社)、Office Cloud9(2022年10月/3社)公式ページ2026年7月10日更新。レンタルオフィス全体で約40名、町全体推計で約140名の雇用
観光庁受入推進地域事例として日向市、伊豆高原観光オフィス、信州たてしな観光協会、ワーケーションまちづくりラボ(ふろしきや)、いろは、かまいしDMC、キッチハイクの7事業者を公開(令和5年度実証事業)公開継続中。年度は令和5年度事業

出典:各自治体・観光庁の公式ページよりホテルバンク編集部作成(本稿執筆時点で内容を確認)

白浜町の数値は、受入側にとって最も示唆的な一次情報のひとつである。2004年の第1号オフィス開設から20年以上を経て、レンタルオフィスの入居は16社、直接雇用は約40名。町全体推計でも約140名にとどまる。ワーケーション誘致が地域雇用に転化するまでには、10年単位の時間軸が必要になるということだ。単年度の補助金で短期の成果を測る設計にすると、この時間軸と噛み合わない。同時に、Office Cloud9に空室4、ANCHORに空室2があることも公開されており、拠点整備の供給が需要をやや先行している局面であることも読み取れる。

宿泊施設層:「長期滞在」が語られる宿は、どの県に集まっているか

公開事例が乏しい宿泊施設層について、本稿では別のアプローチを取る。宿泊者が投稿した口コミ8,128,088件(47都道府県・直近24ヶ月)を自然言語処理で分類し、「長期滞在・連泊」に言及した口コミの割合を都道府県別に集計した。実際に泊まった人が長期滞在について語っているということは、その地域に長期滞在需要が現実に流れているということの、最も直接的な証拠である。

長期滞在の言及は全国で291,143件。都道府県別の言及率を見ると、首位は沖縄県の6.31%で、2位以下に1.5ポイント近い差をつけている。以下、鹿児島県4.83%、秋田県4.75%、福島県4.63%と続く。

出典:ホテルバンク編集部が集計した宿泊者口コミ(N=8,128,088件・47都道府県・直近24ヶ月)

注目したいのは、上位15県の顔ぶれである。沖縄県・北海道・長野県・静岡県といった「ワーケーション地域」として広く知られる県が入る一方で、秋田県・福島県・岩手県・山形県・新潟県といった東北・北陸勢が同水準で並んでいる。長期滞在の言及率だけで見れば、東北はすでにリゾート系ワーケーション地域と遜色ない水準で長期滞在客を受け入れている。ただし言及率の分母は各県の口コミ総数であるため、絶対量では沖縄県18,832件、北海道22,934件、長野県10,585件が大きく、秋田県2,211件、岩手県2,919件とは一桁の差がある。率と量は分けて読む必要がある。

「長期滞在」と「仕事利用」は、別々の地図を描いている

ここからが本稿の中心的な発見である。同じ口コミ集計で「仕事・出張での利用」に言及した口コミの割合(全国241,152件)を取り、長期滞在の言及率と重ねてプロットすると、両者はほとんど相関しない。むしろ、多くの県はどちらか一方に寄っている。

出典:ホテルバンク編集部が集計した宿泊者口コミ(N=8,128,088件・47都道府県・直近24ヶ月)/破線は47都道府県の中央値(長期滞在3.73%・仕事利用3.63%)

右下に大きく外れているのが沖縄県だ。長期滞在の言及率は6.31%と全国唯一の6%台である一方、仕事利用の言及率は1.37%と全国最下位級にとどまる。長野県(4.21%/2.25%)、群馬県(4.49%/2.55%)、栃木県(4.22%/2.62%)、和歌山県(3.85%/1.84%)も同じ象限にあり、これらは「休暇の延長としての長期滞在」が主戦場の地域である。日本航空の休暇型ワーケーションのように、個人が自費で連泊する形態と親和性が高い。

逆に左上の象限には、茨城県(3.60%/6.23%)、愛知県(3.11%/5.13%)、岡山県(3.05%/4.85%)、山口県(3.69%/5.49%)が位置する。仕事利用の語られ方が突出しているが、長期滞在は中央値近辺にとどまる。出張需要は厚いが、それが連泊・長期滞在に転換していない地域と読める。ここは業務型ワーケーションや企業研修の受け皿として、滞在日数を伸ばす余地がある象限だ。

そして右上——長期滞在・仕事利用の両方が47都道府県の中央値を上回る県は、13県ある。

長期滞在・仕事利用の言及率がともに47都道府県の中央値を上回る13県
都道府県 長期滞在
言及率
仕事利用
言及率
館内Wi-Fi
言及率
ランドリー
言及率
長期滞在が
語られた施設数
口コミ
集計件数
宮崎県4.10%5.89%1.02%—23144,234
埼玉県4.02%5.96%0.97%1.12%29773,338
秋田県4.75%4.82%0.91%1.15%22946,527
岩手県4.25%4.65%0.91%1.11%30368,758
福島県4.63%4.24%1.05%0.86%550112,507
鹿児島県4.83%4.03%0.86%2.61%60394,656
青森県3.92%4.80%1.00%1.35%22561,095
高知県3.98%4.68%0.74%1.61%20742,561
新潟県4.26%4.30%0.99%1.13%641112,408
宮城県3.73%4.59%0.95%1.07%369140,179
山形県4.14%3.73%0.77%0.95%34170,846
島根県3.95%3.90%0.95%1.31%25154,222
鳥取県3.89%3.86%0.89%1.07%18551,344

出典:ホテルバンク編集部が集計した宿泊者口コミ(N=8,128,088件・47都道府県・直近24ヶ月)/中央値:長期滞在3.73%・仕事利用3.63%。宮崎県のランドリー言及率は集計閾値に達しなかったため「—」

この13県のうち、7県が東北・北陸(秋田・岩手・福島・青森・宮城・山形・新潟)である。ワーケーション誘致で先行してきた沖縄県・長野県・和歌山県は、いずれもこの象限に入らない。「仕事の需要」と「長く泊まる需要」の両方がすでに口コミに現れている地域は、政策的に有名なワーケーション地域とは一致していない——これが8,128,088件の集計から見える構図である。

解釈は慎重にしたい。東北・山陰・南九州で仕事利用の言及率が高いのは、県内の宿泊需要に占める出張の比重がもともと大きいためであり、それ自体がワーケーションを意味するわけではない。しかし受入側の視点で言えば、すでに平日の仕事客と週末の長期滞在客の双方が来館している宿が集積しているということであり、業務型ワーケーションや企業のオフサイトを提案するときの土台としては、むしろ有利な条件である。誘致施策を設計する自治体にとっては、ゼロから需要を作るのではなく、既存の二層をつなぐという発想が取れる。

受入設備は、口コミでどう語られているか

長期滞在の需要が来ているとして、宿の側で何が語られているのか。ワーケーション受入の必須要素とされる館内Wi-Fi、コインランドリー、客室のコンセントについて、先の13県で言及率を比較した。

出典:ホテルバンク編集部が集計した宿泊者口コミ(N=8,128,088件・直近24ヶ月)/宮崎県のランドリー言及率は集計閾値未満のため非表示

三つの設備で語られ方の性質が明確に分かれる。館内Wi-Fiの言及率は13県すべてで0.74〜1.05%の狭い帯に収まっており、県による差がほとんどない。すでに「あって当たり前」の水準に達しており、Wi-Fiの有無で差別化する段階は終わっていると読める。客室コンセントも0.73〜1.09%と同様に横並びである。

対照的に、ランドリーの言及率は0.86%(福島県)から2.61%(鹿児島県)まで3倍の開きがある。全国で見ても沖縄県5.38%、京都府3.95%、東京都2.84%と、地域差が大きい。ランドリーは滞在日数が伸びたときにはじめて話題になる設備であり、言及率の高さはその地域で実際に長い滞在が起きていることの傍証になる。鹿児島県は長期滞在言及率4.83%(全国2位)とランドリー言及率2.61%が同時に高く、離島を含む周遊・長期滞在の構造がそのまま口コミに現れている。洗濯設備が連泊需要とどう結びついているかについては、夏の連泊を制す『コインランドリー完備』の宿が施設単位で掘り下げている。

個別施設のレベルでも同じ傾向が確認できる。以下は、これらの設備について宿泊者から肯定的に語られた件数が多い施設の一部である。

受入設備が宿泊者から肯定的に語られた施設(言及件数上位)
施設名 所在 肯定的に語られた設備(言及件数・言及率) 口コミ件数
饗家岐阜県ビジネス設備 35件(1.67%)/会議・宴会場 18件(0.86%)2,096
ホテルサンリバー四万十高知県ランドリー 28件(3.18%)880
松江ユニバーサルホテル島根県館内Wi-Fi 26件(1.40%)1,860
ドーミーイン前橋群馬県ランドリー 24件(2.10%)1,144
スマイルホテル静岡静岡県客室コンセント 24件(1.81%)1,327
JRホテルクレメント徳島徳島県ランドリー 23件(1.25%)1,837
コンフォートホテル高知高知県客室コンセント 22件(1.63%)/ランドリー 19件(1.40%)1,353
いろはグランホテル松本駅前長野県客室コンセント 21件(1.38%)1,518
神戸ポートピアホテル兵庫県会議・宴会場 20件(0.47%)/ビジネス設備 11件(0.26%)4,284
岡山グリーンホテル岡山県客室コンセント 19件(3.46%)549
ホテル シーラックパル高崎群馬県客室コンセント 18件(2.89%)/ランドリー 12件(1.93%)622
ザ・スクエアホテル金沢石川県客室コンセント 18件(0.81%)2,216
倉敷駅前ユニバーサルホテル岡山県客室コンセント 13件(0.82%)/館内Wi-Fi 11件(0.69%)1,589
かごしまプラザホテル天文館鹿児島県客室コンセント 12件(0.85%)/館内Wi-Fi 10件(0.71%)1,413

出典:ホテルバンク編集部が集計した宿泊者口コミ(直近24ヶ月・肯定的な言及のみ/同一設備について10件以上の言及がある施設を対象に集計、全国134施設が該当)

この表から読み取れる共通項は三つある。第一に、設備が語られる施設は特定のグレード帯に偏っていない。宿泊主体のビジネスホテルからフルサービスのシティホテル、地方の温泉旅館まで幅広く分布している。第二に、複数の設備が同時に語られる施設が存在する(客室コンセントとランドリーの併記など)。滞在の長さに応じて「電源」と「洗濯」がセットで意識されるという、素直な因果が現れている。第三に、会議・宴会場やビジネス設備が語られるのは相対的に規模の大きい施設に集中しており、こちらは業務型ワーケーション・企業オフサイトの受け皿になりうる層である。

運営者・自治体への示唆

宿泊施設の運営者へ。Wi-Fiは13県すべてで言及率が1%前後に収束しており、投資の伸びしろは別のところにある。差が開いているのはランドリー(0.86〜2.61%)で、これは滞在日数が伸びたときに初めて意識される設備だ。すでに自館エリアの長期滞在言及率が中央値(3.73%)を上回っているなら、洗濯・電源・作業面といった「滞在が長くなるほど効く」要素への投資が、連泊比率を押し上げる可能性が高い。ワークスペースを新設せずとも、既存のロビーやラウンジに電源と照明を足すだけで語られ方は変わりうる。泊まる側が連泊プラン・サブスク・ワーケーションプランをどう選び分けているかは、テレワークしながらホテル暮らしはできる?方法は3系統で整理されており、訴求設計の参考になる。

また、会議・宴会場が肯定的に語られている施設は、企業のオフサイト・研修の受け皿としてすでに評価の土台がある。熱海観光局が「熱海 for Biz」で構築しているように、宿単独ではなく地域のプレーヤーと組んで法人向けの受け皿を作る動きは、2026年に入って具体化しているアプローチである。

自治体の観光担当者へ。誘致設計の前に、自地域が「長期滞在型」「仕事利用型」「両立型」のどこにいるかを確認したい。長期滞在に寄っている地域(沖縄県・長野県・群馬県・栃木県・和歌山県など)は個人の休暇型ワーケーションが主戦場であり、施策は宿泊費補助や滞在拠点の情報発信と相性が良い。仕事利用に寄っている地域(茨城県・愛知県・岡山県・山口県など)は法人予算で動く業務型に伸びしろがあり、既存の出張需要を滞在日数の延伸につなげる設計が取れる。両方が中央値を超える13県は、その両輪をつなぐ施策が最も効きやすい位置にある。

そして予算設計の時間軸について。白浜町のIT企業誘致は2004年の第1号オフィス開設から20年以上を経て、レンタルオフィス入居16社・直接雇用約40名・町全体推計約140名という段階にある。この規模に到達するまでに20年かかっているという事実は、単年度の指標で成否を判定する設計の限界を示している。同時に、拠点の空室が公開されていることからも、箱の整備だけでは埋まらないことがわかる。企業側の制度(費用負担のルール)と受入側の設備、そして両者をつなぐコーディネート機能——三層が揃ってはじめて動く領域である。

宿向け:このテーマに効くプラン名のヒント

ワーケーション関連で公開されているプラン名(N=1,424)に多い訴求要素 ——

連泊割 96%朝食付 32%素泊まり 29%エコ 20%割引 15%ビジネス 10%長期滞在・暮らす 10%

実際の名前の例(匿名化):

  • 【ビジネスパック】2連泊以上でお得!天然温泉大浴場&朝食バイキング無料
  • 【得割×素泊まり】お日にち限定大特価!テレワーク・一人旅応援
  • 【連泊割/朝食付】和洋折衷バイキングが好評◆ビジネス&観光拠点に

※公開プラン名の集計にもとづく傾向で、命名が販売を生む因果を示すものではありません。

まとめ

2026年のワーケーション事例は、企業・自治体・宿泊施設の三層に分けて読む必要がある。企業層の一次情報は観光庁の導入企業事例に集約され、休暇型と業務型で営業経路が分かれる。自治体層は年度予算に紐づくため鮮度の確認が不可欠で、本稿では和歌山市の令和8年度支援金、熱海観光局の法人向け事業(2026年7月刷新)、下田市のデジタルノマド交流プログラム(2026年10〜11月実施予定)を公式ページで確認できたものとして掲載した。

そして宿泊施設層については、8,128,088件の宿泊者口コミの集計から、これまで語られてこなかった構図が見えた。長期滞在の言及率が高い地域と仕事利用の言及率が高い地域は別々の地図を描いており、両方が中央値を上回る13県のうち7県は東北・北陸である。誘致で先行してきた沖縄県・長野県・和歌山県はこの象限に入らない。受入設備については、館内Wi-Fiがすでに全国的に横並びに達している一方、ランドリーの言及率には最大3倍の地域差が残っている。「事例に学ぶ」段階から、「自地域・自館の位置を測って設計する」段階へ——それが2026年時点でこのテーマに向き合う実務的な構えである。

あわせて読みたい

参考資料・出典一覧

■ 政府・公的資料

■ データソース

宿泊者口コミ 8,128,088件(47都道府県・直近24ヶ月・ホテルバンク編集部調べ)。うち「長期滞在」言及 291,143件、「仕事利用」言及 241,152件。設備別の施設集計は、同一設備について肯定的な言及が10件以上ある施設のみを対象とし、全国134施設が該当した。事例情報は観光庁の公開資料・自治体の公式ページ・事業者の公式発表のうち、本稿執筆時点で実際に開いて内容を確認できたもののみを採録している。

■ 試算前提

言及率は「その話題に言及した口コミ数 ÷ 当該エリアの口コミ総数」で算出した頻度指標であり、評価スコア(★)でも客室稼働率でもない。県別の中央値は47都道府県の単純中央値(長期滞在3.73%・仕事利用3.63%)を用い、散布図の破線として表示している。施設別の言及率は当該施設の口コミ総数を分母とする。集計期間はいずれも直近24ヶ月で統一した。

■ 限界・留意点

第一に、言及率は分母が各エリアの口コミ総数であるため、率と絶対量は分けて読む必要がある(沖縄県18,832件・北海道22,934件に対し秋田県2,211件など一桁の差がある)。口コミ総数が小さい県ほど率は不安定になる。第二に、宮崎県のランドリー言及率は集計閾値(10件)に達しなかったため「—」として非表示にしている。第三に、仕事利用の言及率が高いことは県内宿泊需要に占める出張比重の大きさを反映したもので、それ自体がワーケーションの実施を意味するものではない。第四に、自治体施策は年度により改廃されるため、掲載内容は本稿執筆時点の公式ページの記載にもとづく。

■ 自治体・地域団体の公式情報

■ 当社データ

  • ホテルバンク編集部が集計した宿泊者口コミ — 47都道府県・8,128,088件・直近24ヶ月。長期滞在言及291,143件、仕事利用言及241,152件。設備別の施設集計は同一設備について10件以上の肯定的言及がある施設を対象(全国134施設)
  • 公開されている宿泊プラン名の集計 — ワーケーション関連 N=1,424件

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