ホテルの収益最大化を行うために必要なもの、それはレベニューマネジメント戦略の実践を可能にするKey Performance Indicator（KPI・重要業績評価指標）だ。

ホテル業界において、レベニューマネジメントとは適切な部屋を、適切な顧客に、適切な時期に、適切価格で、適切な流通経路で販売し、最もコスト効率を高めることを指す。
レベニューマネジメントKPIでは、事業主がその都度の事業業績を算定できるほか、価格設定や事業戦略などの調整や修正に活用できる指標となる。
ここでは、ホテルの収益最大化を目的として現在広く活用されている9つのレベニューマネジメントKPIを取り上げる。
 

収益最大化・９つのレベニューマネジメントKPIとは

1. 稼働率
稼働率とは、ホテルの全客室数に対する実際の利用率をいう。ホテルが客室をいかに有効利用しているかを算定できるほか、他の指標と組み合わせて収益最大化の一助となることも可能。稼働率は、全客室数を使用中の客室数で割った数値をパーセントで示す。
2. ADR
Average daily rate、略してADRとは、平均客室単価のこと。ルームサービスなどによる副収入を含まない客室の総売上高を販売した客室数で割って算出する。最も有効なレベニューマネジメントKPIの1つで、近隣の競合ホテルなどとの比較にも有効だ。
3. RevPAR
Revenue per available room、RevPARは、ホテルの販売可能な客室の平均的売り上げを指すが、販売の有無は考慮に入れない。RevPARは、客室の売上高を販売可能な客室数で除算するか、1日の平均客室単価に占有率を掛けて計算。このKPIは、ホテル全室のパフォーマンスが生み出す総体的収益を査定する際に特に役立つ。
4. RevPOR
revenue per occupied room、略してRevPORはADRと同様、使用中の客室による収益に関する数値。しかしながら、RevPORはルームサービスやランドリーサービスなどを含んだ1つの客室が創出するすべての収入を考慮に入れる点で、ADRとは異なる。RevPORは、販売した客室による総収入を、販売した客室数で除算する。
5. GOPPAR
GOPPAR、Gross operating profit per available roomとは、レベニューマネジメントにおける業績指数の最も重要なものの1つ。というのも、販売の有無に関わらず、全客室が創出する売上総利益に関与する数値だからだ。GOPPARは、売上総利益を全客室数で割って算出。あらゆる収入源に渡る事業業績を算定できる確実な指標である。
6. TRevPAR
Total revenue per available room、TRevPARは、RevPARと類似し、客室が利用されているかどうかを換算せずに、使用可能な客室がもたらす収益に焦点を当てる。RevPARと異なるのは、レストランやバー、ルームサービスなどを含んだ客室の売り上げを包括する点。全収益を全客室数で除算して出す。
7. NRevPAR
Net revenue per available room、NRevPARとは、販売可能な客室が創出する収益を見る指標。NRevPARは純収益に着目し、諸経費を控除した部屋の売り上げを総客室数で割って算出する。客室販売によって得られる収益について、より正確な実態を知ることができる。
8. ARPA
Average revenue per account、ARPAとは、ある一定の期間における顧客ごとの総収益を示すレベニューマネジメントの指標。一般的に月間、または年間ベースで算出され、既存客や新規客の平均収益を知ることができる。ARPAは、月々の経常収益を顧客総数で除算して出す。
9. EBITDA
Earnings before interest, tax, depreciation and amortization、略してEBITDAは重要性を増している指標で、ローンの利子や税金、減価償却費などを差し引いたホテルの一日の収益を示す。異なる地域や業種における企業の財務業績を比較する際にとりわけ役立つ。全収益からすべてのコストを差し引いて算出する。
ここに挙げたレベニューマネジメントKPIはそれぞれ個々に役立つものだが、互いの指標を組み合わせることで一層有用となる。これらの指標を活用すれば、ホテルオーナーは事業業績を把握でき、データに基づいた価格設定や戦略の立て直しができるだろう。