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名護・東江のホテル建設計画|消防跡地に9階建て140室・温泉、1km圏は9年で255→694室

投稿日 : 2026.11.05

沖縄県

投資・開発

名護・東江のホテル建設計画|消防跡地に9階建て140室・温泉、1km圏は9年で255→694室

名護市東江の旧消防庁舎跡地で、ピース企画(那覇市)が9階建て・140室規模の天然温泉付きホテルを計画していることが2025年11月に報じられた。敷地は市が2024年2月に買い戻したうえで再公募した約5,089㎡の公有地で、最短2027年度の完成を目指すとされる。本稿では、この単一案件を起点に、半径1km・3km圏の客室ストック、名護市と北部リゾート各エリアの推定成約ADR、用途地域・地価・津波浸水想定、周辺の居住・就業人口を重ね、名護市中心部に立つ温泉付き市街地型ホテルが北部市場のどの価格帯を受け持つのかを定量的に読み解く。

本記事のデータについて
• ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。
• エリア(都道府県・市区町村)単位のADRは、対象施設の推定成約単価の中央値(エリアの標準的な施設の水準)です。
• 掲載価格に言及する箇所は、2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
• OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。
• 出典:メトロエンジンリサーチ(国内約168,000施設のOTA公開価格を継続追跡、うち稼働確認済み約27,000施設)

本記事の客室ストックは、旧名護市消防庁舎跡地から半径1,000m圏内にある客室数10室以上の宿泊施設(レジャーホテルを除く)を対象とし、「稼働中」は直近3か月(2026年8月〜2026年10月)に主要予約サイトで販売価格が確認できた施設を指す(2026年10月28日時点、メトロエンジンリサーチ集計)。

計画の規模(報道)
9階・140室
天然温泉付き、2027年度完成目標
1km圏の稼働中客室
694室
11軒、2017年255室から2.7倍
名護市ADR(2026年9月)
¥11,384
前年同月比+16.2%、N=25施設
最寄り公示地価(2026年)
¥74,000/㎡
名護5-2、前年比+5.3%
市の最低売却価格
4.24億円
2025年公募要項、約5,089㎡
Key Takeaways
  • — 名護市の推定成約ADR ¥11,384(2026年9月、N=25施設、前年同月比+16.2%)は本部町の76%、恩納村の52%。温泉付き市街地型が狙う1.2万〜1.5万円帯は半径3km圏に成立例がない。
  • — 1km圏の稼働客室は2017年255室→2026年694室(2.7倍)。2021年以降ほぼ横ばいだった供給に、本件140室と日和ホテル沖縄名護156室(2027年7月開業予定)が重なる。
  • — 総投資45.7〜48.8億円(1室33〜35百万円)に対し、宿泊売上だけの簡易利回りは3.4〜5.0%。Bシナリオ(ADR¥12,500・稼働率80%)で4.2%。
  • — 近隣商業地域・容積率200%で9階建ては成立する一方、津波浸水深5〜10m区域・埋立地(非常に液状化しやすい)が設計と融資の前提条件になる。
  • — 公有地売却の条件として契約から1年以内の着手、10年間の転売制限と買戻特約が付き、出口は長期保有を前提に設計する必要がある。

結論 — 北部リゾートの「下」を受ける市街地型の価格帯に、温泉という差別化が乗る

まず結論を先に置く。名護市中心部の宿泊市場は、2026年9月の推定成約ADRが11,400円(N=25施設)と、本部町15,000円(N=22)、恩納村21,900円(N=44)、今帰仁村40,400円(N=21)の北部リゾート各エリアを大きく下回り、那覇市9,700円(N=144)に近い水準にある。つまり名護市街は、北部観光の玄関口でありながら価格帯としては都市型ビジネスホテルの市場であり、リゾートに泊まらない層、すなわち出張・合宿・キャンプ観戦・周遊の中継といった需要を受け止めてきた。

一方で、その価格帯は1年で16.2%上がった。1〜6月の前年同月比は+12.6%から+58.8%と2桁の伸びが続き、7〜8月だけがマイナスになっている。2025年7月25日のジャングリア沖縄開業直後に乗った需要の反動が夏に出た格好だが、オフシーズンの底上げはそれを打ち消して余りある。本件の敷地から半径1km圏の稼働中客室は11軒694室で、2017年の255室から9年で2.7倍に増えた。2020年に2軒293室が一度に加わって以降は目立った供給がなく、2026年に43室が加わったのみだったところへ、本件140室と、北へ約2.7kmの為又で建設中の156室(2027年7月開業予定)が重なる。

投資判断の軸は3つに整理できる。第一に、温泉付きで1.2万〜1.5万円のレンジを取れれば、名護市街の既存水準(1km圏の稼働施設は直近12か月中央値で6,200〜10,200円)とリゾート下限(本部町1.5万円)の間に空いている価格帯を埋められること。第二に、敷地は近隣商業地域・容積率200%・建蔽率80%で9階建てが成立する一方、沖縄県の津波浸水想定では浸水深5m以上10m未満の区域に含まれ、地形分類は「埋立地(非常に液状化しやすい)」であること。第三に、公有地売却の条件として契約から1年以内の着工、10年間の事業計画変更・転売制限と買戻特約が付くため、出口の自由度が通常の民有地より限定されることである。以下、順に検証する。

案件の輪郭 — 二度目の公募で売却された公有地と、公開されている計画の範囲

旧名護市消防庁舎等跡地は、2017年8月の新庁舎移転で用途廃止となった市有地である。市は「新たなまちのにぎわいの創出に寄与する宿泊施設又は宿泊施設及び商業施設」を条件に公募型プロポーザルで一度売却したものの、着工に至らず2024年2月に買い戻した。2024年7月から10月にかけてサウンディング型市場調査を行い、2025年1月に再公募の実施要項を公表している。要項の主な条件は下表のとおりで、最低売却価格は424,347,209円、対象は道路で分断された本庁舎跡地と訓練塔跡地の一括売却である。

表1 旧名護市消防庁舎等跡地の売却条件(2025年公募要項)
項目旧名護消防本庁舎跡地旧名護消防訓練塔跡地
所在地名護市東江五丁目2番29号名護市東江五丁目3番3号
土地面積(実測)2,720.42㎡2,368.41㎡
用途地域近隣商業地域第一種住居地域
建蔽率/容積率80%/200%60%/200%
最低売却価格424,347,209円(一括売却、約83,400円/㎡)
提案の対象宿泊施設、商業施設、または宿泊施設及び商業施設
主な契約条件契約から1年以内に開発行為へ着手/10年間は事業計画の変更・所有権移転・権利設定に市の承諾が必要/10年間の買戻特約を登記(建築着手または開発完了で解除)/融資特約付き申込不可/契約不適合責任なし、地中障害物等は買受者負担
出典:名護市「旧名護市消防庁舎等跡地売却事業プロポーザル実施要項」(2025年1月)、同「サウンディング型市場調査の実施について」(2024年7月)

計画側の公開情報は報道に限られる。沖縄タイムス(2025年11月20日)は、宿泊業のピース企画が跡地に9階建て・140室規模で天然温泉を有するホテルを建設予定で、2027年度の開業を目指すと伝え、市が同年10月に売却した約5千㎡の敷地であることを記している。琉球新報(同日)もホテルと温泉施設の建設計画を報じ、早ければ2027年度中の完成を目指すとした。売却額・総事業費・客室構成は有料部分にあり本稿では確認できていないため、以下の試算は公開情報と当社の仮定に基づくものであり、事業者の計画値ではない点を明記しておく。なお同社は敷地から約200mのホテルピースアイランド名護(138室・2020年開業)を既に運営しており、本件はその至近に温泉付きの2棟目を置く構図になる。

名護市内では同時期に、サンフロンティアホテルマネジメントが為又876-1で「日和ホテル沖縄名護」(RC造9階建・156室予定・人工温泉の大浴場、2027年7月開業予定、2025年8月27日起工)を建設中で、喜瀬では2026年6月15日にコートヤード・バイ・マリオット沖縄リゾート(170室)が開業した。本件140室を含めると、2026〜2027年度に名護市内で509室が積み上がる計算になる。

立地評価 — 国道58号と名護湾に挟まれた近隣商業地、地価は3年で+7.1%

敷地は国道58号と名護湾に挟まれ、市の要項が「国道沿いには商業施設や宿泊施設などが集積し、中心市街地にも近い」と表現する立地にある。国土交通省の不動産情報ライブラリで敷地周辺を照会すると、本庁舎跡地は近隣商業地域(容積率200%・建蔽率80%)、都市計画区域内で、9階建ての宿泊施設が用途・容積の両面で成立する。最寄りの地価公示地点「名護5-2」(東江4丁目、敷地から約120m)は2024年69,100円/㎡→2025年70,300円(+1.7%)→2026年74,000円(+5.3%)と、伸びが加速している。市の最低売却価格を実測面積で割ると約83,400円/㎡で、この公示地点を13%ほど上回る水準に置かれていたことになる。

敷地周辺の宿泊施設分布(半径1km・3km、円の大きさ=客室数)と津波浸水想定
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(施設位置・客室数)、国土交通省 国土数値情報「津波浸水想定」(沖縄県・2016年)。薄い青は稼働確認のない掲載施設。
敷地概要
所在地名護市東江五丁目2-29/3-3
面積(実測合計)5,088.83㎡
中心座標26.5847, 127.9840
主要道路国道58号沿い、名護湾に面する
公示地価 名護5-2(東江4丁目、約120m)
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(地価公示)
用途地域・建築規制(本庁舎跡地)
用途地域近隣商業地域
容積率/建蔽率200%/80%
区域区分都市計画区域
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(用途地域)

災害面は投資家が最初に確認する項目になる。沖縄県の津波浸水想定(2016年、国土数値情報収録)では、敷地の位置は浸水深5m以上10m未満の区域に含まれ、2m以上5m未満の区域との境界が約10m北にある。半径1km圏の稼働施設11軒もすべて2m以上の想定区域に立地しており(うちグリーンリッチホテル沖縄名護、アダンホテルなど4軒は敷地と同じ5m以上10m未満の区域)、この市街地では例外ではなく前提条件として扱われている。地形分類は「埋立地」で液状化傾向は「非常に液状化しやすい」に分類される。洪水浸水想定区域と土砂災害警戒区域には該当せず、最寄りの土砂災害警戒区域まで約380mある。9階建てという計画は、上層階への垂直避難と浴場・機械室の配置を設計段階から織り込める規模ともいえる。名護湾沿いから恩納村にかけてのリゾート客室がどの程度浸水想定区域に重なり、BCP投資が1室あたりいくらになるかは、恩納村〜名護湾のリゾート客室、約4割が津波浸水想定区域で集計している。

表2 敷地の立地・災害リスク評価
評価項目敷地の状況読み方
用途地域近隣商業地域(本庁舎跡地)/第一種住居地域(訓練塔跡地)適合 宿泊施設・温泉施設とも建築可
容積率・建蔽率200%・80%/200%・60%余裕 本庁舎跡地のみで延床約5,440㎡が上限
公示地価(名護5-2)74,000円/㎡(2026年、前年比+5.3%)上昇局面 3年で+7.1%
津波浸水想定浸水深5m以上10m未満の区域要対策 上層階避難・電源の上階配置
液状化傾向埋立地(非常に液状化しやすい)要対策 地盤調査は買受者負担(要項)
土砂災害警戒区域該当なし(最寄り約380m)限定的
洪水浸水想定区域該当なし限定的
高潮浸水想定本稿では未評価沖縄県の公表資料で個別確認を要する
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(用途地域・地価公示・津波浸水想定・地形分類・土砂災害警戒区域・洪水浸水想定区域)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成

1km圏・3km圏の客室ストック — 2017年255室から2026年694室、2020年以降は停滞していた

供給の歴史を年次で追うと、半径1km圏の稼働客室は2017年の4軒255室から2018年341室、2019年355室と小刻みに増え、2020年にグリーンリッチホテル沖縄名護(155室)とホテルピースアイランド名護(138室)が開業して628室へ跳ねた。その後は2021年の651室で止まり、2026年に還元ホテル名護東江(43室)が加わって11軒694室となっている。3km圏でも構図は同じで、2017年9軒594室→2020年15軒978室→2026年19軒1,092室と、増分の大半は2020年までに積み上がった。つまり名護市街の宿泊供給は、ジャングリア開業を見越した2020年の2棟で一段上がって以降、5年間ほぼ横ばいで推移し、2026〜2027年度の本件140室・日和ホテル156室が2度目の階段になる。

半径1km圏・3km圏の客室ストック推移(開業年ベース、2017〜2026年)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(OTA掲載確認ベース、N=1km圏11施設・3km圏19施設。各年は開業年が当該年以前で閉館していない施設。開業年が確認できない2軒96室は推移に含めず、既存施設として扱う)

掲載ベースでは1km圏に14軒810室、3km圏に24軒1,332室が載っているが、直近3か月に販売価格を観測できた稼働中の施設は1km圏11軒694室、3km圏18軒1,064室である。業態別に見ると1km圏の稼働客室599室(86%)がビジネスホテル、95室がホステルで、リゾートホテルは3km圏まで広げてもホテルゆがふいんおきなわ(121室・1989年開業)の1軒にとどまる。規模別では101〜200室の3軒が440室と、1km圏稼働客室の63%を占める。本件140室はこの3軒と同じ規模階級に入り、温泉を持つ点だけが既存と異なる。

表3 半径1km・3km圏の客室ストック(掲載・稼働中、業態・規模別)
区分1km圏 掲載1km圏 稼働中3km圏 掲載3km圏 稼働中
合計14軒 810室11軒 694室24軒 1,332室18軒 1,064室
ビジネスホテル10軒 715室7軒 599室15軒 1,022室10軒 782室
ホステル4軒 95室4軒 95室7軒 179室6軒 151室
リゾートホテル——1軒 121室1軒 121室
ゲストハウス——1軒 10室1軒 10室
規模 101〜200室3軒 440室3軒 440室4軒 561室4軒 561室
規模 51〜100室2軒 112室1軒 53室5軒 354室3軒 216室
規模 50室以下9軒 258室7軒 201室15軒 417室11軒 287室
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(2026年10月28日時点、客室数10室以上、レジャーホテルを除く)

3km圏の稼働中18施設を一覧にすると下表になる。ADR列は各施設の推定成約ADRの直近12か月(2025年10月〜2026年9月)中央値で、推定が成立する業態(ビジネス・リゾート)のみ表示している。1km圏の中核3軒は8,700〜10,200円、小規模施設は6,200〜8,600円に収まり、1万円を超えるのはグリーンリッチホテル沖縄名護(10,200円)とUNTEN INN(20室・2025年開業)の10,500円の2軒で、1.1万円を超える施設はない。

表4 半径3km圏の稼働中施設一覧と推定成約ADR(12か月中央値)
#施設名客室数業態開業年敷地からの距離推定成約ADR 12か月中央値
1グリーンリッチホテル沖縄名護155ビジネスホテル2020235m¥10,199(12か月)
2ホテルルートイン名護147ビジネスホテル2004488m¥9,165(12か月)
3ホテルピースアイランド名護138ビジネスホテル2020203m¥8,686(12か月)
4ホテルゆがふいんおきなわ121リゾートホテル19892,104m¥8,077(12か月)
5スーパーホテル 沖縄・名護84ビジネスホテル20072,414m¥8,819(12か月)
6フェニックスパークホテル79ビジネスホテル20211,934m¥9,585(12か月)
7ホテル 山田荘53ビジネスホテル1994465m¥7,285(12か月)
8還元ホテル名護東江43ビジネスホテル2026281m¥8,572(7か月)
9名護ビジネスホテル35ビジネスホテル1999500m¥6,177(12か月)
10Mr.Kinjo in GUSUKU34ホステル2018653m—
11アダンホテル28ビジネスホテル2018802m¥8,254(12か月)
12ホテルホークレア28ホステル20192,415m—
13ニューノーマルホテルイン名護28ホステル20232,568m—
14さくらのファミリア名護24ホステル2018480m—
15コンドミニアムホテル リッカ in Nago23ホステル2021832m—
16UNTEN INN20ビジネスホテル20251,290m¥10,517(7か月)
17ホテル アイオライト14ホステル2019890m—
18白浜ホテル10ゲストハウス19681,644m—
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(半径3km圏の稼働中施設、客室数降順。ADRは推定値で各施設の実績とは異なる)

価格帯 — 名護市1.14万円は本部町の76%、恩納村の52%。温泉付き市街地型が埋める「間」

北部の宿泊市場を推定成約ADRで並べると、2026年9月は今帰仁村40,400円(N=21)、恩納村21,900円(N=44)、本部町15,000円(N=22)、名護市11,400円(N=25)、那覇市9,700円(N=144)の順になる。今帰仁村は古宇利島周辺のヴィラ型が主体でN=21の中央値が大きく出やすい点に留意が要るが、それを除いても名護市街は本部町の76%、恩納村の52%にとどまる。前年同月比では名護市+16.2%、本部町+14.3%、恩納村+9.2%、今帰仁村+7.9%、那覇市+8.6%、沖縄県全体+10.0%(N=515)で、比較した北部各エリアと那覇市の中では名護市が最も高い伸びを示した。ジャングリア開業後の北部各エリアの価格形成とオフィシャルホテルの動きについては、ジャングリア沖縄10ヶ月後の北部リゾート市場が背景を掘り下げている。

北部4エリア+那覇市の推定成約ADR(2025年9月→2026年9月、税抜相当)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(N=名護市25・本部町22・恩納村44・今帰仁村21・那覇市144施設、各エリアの中央値)

名護市の月別推移を年ごとに重ねると、季節性の輪郭がはっきりする。2026年は2月が15,600円で年間の頂点になり、1月12,500円、8月12,500円が続く。2月の山はプロ野球キャンプ期に当たり、2025年2月の11,600円から34.0%上がった。前年同月比を1月から順に並べると1月+58.8%、2月+34.0%、3月+23.1%、4月+21.2%、5月+12.7%、6月+12.6%、7月-2.8%、8月-10.2%、9月+16.2%となり、7〜8月のマイナスは2025年7月25日のジャングリア開業直後に名護市街の単価が先に跳ねた反動と読める。10月以降は調査時点の掲載水準に基づく推定で、2027年2月は15,400円(N=20)と前年並みの山が既に見えている。

名護市 推定成約ADRの月別推移(2024〜2026年、2026年10月以降は調査時点の掲載水準に基づく推定)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(N=20〜26施設/月、税抜相当。破線は掲載スナップショット基準の推定)

この価格構造を施設単位に落としたのが次の散布図である。横軸に客室数、縦軸に推定成約ADRの12か月中央値を置くと、3km圏の稼働施設は、20室のUNTEN INN(10,500円)を除くと「53室以下×6,200〜8,600円」と「79〜155室×8,100〜10,200円」の2つの塊に分かれ、100室超で1万1,000円を超える施設は存在しない。本件が温泉を武器に1.2万〜1.5万円帯を取りに行くなら、点線で示した140室の位置の上方は空白であり、同時に本部町のリゾート下限(1.5万円)の手前で止まることになる。リゾートの価格に届かない代わりに市街地の利便性と温泉を組み合わせる、という位置取りが数字の上でも成立する。

客室規模 × 推定成約ADR ポジショニングマップ(半径3km圏の稼働施設、円の大きさ=客室数)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(N=11施設、2025年10月〜2026年9月の中央値) ■青の枠=温泉付き市街地型が狙える空白帯

密集 埋まっている領域

¥6,000〜¥10,500 × 20〜155室
市街地のビジネスホテルとホステルが集中。素泊まり・出張需要の価格競争が起きやすい帯。

WS① 温泉付き市街地型

¥11,000〜¥15,000 × 100〜160室
3km圏に該当施設なし。本部町の1.5万円を上限に、温泉・大浴場で単価を取る帯。日和ホテル沖縄名護(156室)も同じ帯を狙う。

参考 リゾート帯

¥15,000超
名護市街には成立例がなく、恩納村・本部町・今帰仁村のビーチ立地が担う。市街地型が無理に追う帯ではない。

需要 — 県のビジネスホテル稼働86.7%、ジャングリア2年目、周辺1.5km圏の居住人口1.38万人

需要側は3層で確認する。第一にOTA掲載在庫ベースの稼働率で、沖縄県のビジネスホテル(対象132〜135施設/客室12,490〜12,746室、主要予約サイト掲載ベース)は2026年7月90.7%、8月84.7%、9月86.7%、リゾートホテル(174〜184施設/16,351〜16,683室)は90.3%、87.2%、87.7%と、夏から秋にかけて高水準を保った。8月の落ち込みは台風13号・18号の接近で航空便の欠航が相次いだ月に当たる。9月の予約進捗を見ると、県のビジネスホテル(固定コホート138施設/12,884室)は宿泊45日前で在庫消化61.0%、14日前77.9%、当日前日86.7%と、全施設(898施設/37,118室)の64.6%→77.1%→86.7%より出足が遅く直前で追いつく形をとる。市街地型は直前需要への依存が相対的に大きく、温泉という「泊まる理由」が早期予約を引き寄せる余地がある。

表5 沖縄県の業態別稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定、2026年7〜9月)
区分対象施設客室数2026年7月8月9月
沖縄県 全施設708〜71335,632〜36,48289.3%85.5%86.7%
ビジネスホテル132〜13512,490〜12,74690.7%84.7%86.7%
リゾートホテル174〜18416,351〜16,68390.3%87.2%87.7%
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング。稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)はOTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります。対象は総客室の30%以上を主要予約サイトに掲載する施設の固定コホート。
沖縄県 ブッキングカーブ(2026年9月宿泊分の月間平均、在庫消化率、LT45→1)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(ビジネスホテル138施設/12,884室、全施設898施設/37,118室、主要予約サイト掲載ベース)

第二に広域の来訪者数である。沖縄県の入域観光客数は2026年1月83万5,800人(前年同月比+6.7%)、2月86万200人(+10.1%)、3月97万8,300人(+7.2%)と年初は伸び、5月83万2,500人(−1.2%)、6月80万5,700人(−4.0%)で一服したのち、7月は96万3,900人(+1.7%)と7月として過去最高を記録、8月は台風の影響で92万3,900人(−14.0%)に落ちた。北部の需要を左右するジャングリア沖縄については、運営会社が2026年7月25日の会見で開業初年度の来場者数を100万人、売上を100億円超とする見通しを示し、開業半年時点の65万人から後半に鈍化したと報じられている。2年目の集客がどこで安定するかは本件の開業時期(2027年度)と重なるため、名護市街のADRがジャングリア開業前の水準(2025年1〜6月7,500〜8,100円、2月を除く)へ戻らずに1万円台を維持できるかが、収支前提の分水嶺になる。

第三に足元の商圏である。国土数値情報の250mメッシュ推計で敷地から半径1.5km圏の居住人口は2020年13,697人、2025年13,842人、2040年13,239人で、2020年比−3.3%と沖縄本島北部としては緩やかな減少にとどまる。65歳以上比率は26.1%、生産年齢人口比率は59.4%である。就業側は経済センサス(2021年)ベースで半径1km圏に702事業所・従業者4,570人、うちオフィス系は10.9%と、出張需要の厚みは那覇の中心業務地区ほどではない。市街地型ホテルの稼働は、居住・就業よりも観光・スポーツ・周遊の通過需要に支えられる構造であり、温泉施設の日帰り利用を地元需要として取り込めるかが、宿泊以外の収入を左右する。

敷地から半径1.5km圏の居住人口(250mメッシュ、2020年)
出典: 国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口・R6国政局推計)。居住人口(国勢調査ベース)であり滞在・通過人口ではない。
居住人口(半径1.5km・55メッシュ)
2020年13,697人
2025年13,842人
2040年推計13,239人(2020年比−3.3%)
65歳以上比率(2025年)26.1%
生産年齢比率(2025年)59.4%
出典:国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口)
就業人口(半径1km)
事業所数702
従業者数4,570人
オフィス系比率10.9%
出典:総務省・経済産業省 経済センサス-活動調査(2021年)

開発シナリオ試算 — 140室・温泉付きの総投資46〜49億円、宿泊売上だけの簡易利回りは3〜5%

公開情報から置ける前提で簡易試算を行う。延床面積は本庁舎跡地の容積率上限(2,720.42㎡×200%=約5,441㎡、約1,646坪)とし、140室なら1室あたり約39㎡の延床で温泉・浴場を含むビジネスホテルの一般的な構成に収まる。建築費は国土交通省 建築着工統計の2025年「ホテル又は旅館」全国平均217.8万円/坪を基準に、建設期間のインフレ(Turner & Townsend予測:2026年+5.3%と2027年+5.0%の半年分、計約8%)を織り込んだ約235万円/坪を上限側の前提とした。温泉掘削・浴場設備は公開情報がないため2.0億円を仮置きし、設計・諸経費を建築費の10%とする。土地は実際の売却額が確認できないため市の最低売却価格4.24億円を下限として用いた。

表6 総投資額の試算(140室・温泉付き)
項目2025年単価ベース建設期間インフレ織込み根拠
土地4.24億円4.24億円市の最低売却価格(実際の売却額は未確認)
建築費(約1,646坪)35.8億円38.7億円217.8万円/坪→約235万円/坪
温泉掘削・浴場設備2.0億円2.0億円当社仮定
設計・諸経費3.6億円3.9億円建築費の10%
総投資額45.7億円48.8億円1室あたり33〜35百万円
出典:国土交通省「建築着工統計調査」(2025年計、ホテル又は旅館)、Turner & Townsend 建設コスト予測、名護市公募要項よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算

売上側は宿泊売上のみを140室×ADR×稼働率×365日で置き、GOP率は宿泊特化型の業界目安(50〜60%)より保守的に40%とした。温泉施設の運営費と日帰り利用収入は相殺とみなして含めていない。ADRは前節の価格帯分析から、A「市街地ビジネス水準」10,000円、B「温泉付き市街地型」12,500円、C「北部リゾート下限」15,000円の3シナリオを置く。

表7 開発シナリオ別の宿泊売上と簡易利回り
シナリオADR稼働率宿泊売上GOP(40%)利回り(45.7億円)利回り(48.8億円)
A 市街地ビジネス水準¥10,00080%4.1億円1.6億円3.6%3.4%
B 温泉付き市街地¥12,50080%5.1億円2.0億円4.5%4.2%
C 北部リゾート下限¥15,00075%5.7億円2.3億円5.0%4.7%
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算。簡易試算であり、実際の投資判断には詳細なフィージビリティ・スタディが必要です。

結果は宿泊売上だけで見ると3.4〜5.0%のレンジに収まる。これは建築費に全国平均の上限寄りの単価を当て、宿泊以外の収入をゼロと置いた保守的な数字であり、上乗せ要因は複数ある。温泉の日帰り利用と飲食、観光地形成促進地域の投資税額控除(沖縄振興特別措置法)、インバウンド比率の上昇に伴う単価の押し上げ、そして建設費高騰そのものが新規供給を抑え既存施設との競争を和らげる効果である。逆に感度を見ると、Bシナリオを基準にADRが10%下がると利回りは3.8%、稼働が5pt下がると3.9%、両方で3.5%まで下がる。温泉付きで1.25万円を取れるかどうかが、この案件の収支を決める最大の変数といえる(税額控除の延長要望と利回りへの効き方は観光地形成促進地域の投資税額控除は3年延びるかを参照)。

表8 1軸感度(Bシナリオ基準、総投資48.8億円)
感度(Bシナリオ基準、総投資48.8億円)宿泊売上GOP利回り
ベース5.1億円2.0億円4.2%
ADR −10%4.6億円1.8億円3.8%
OCC −5pt4.8億円1.9億円3.9%
両方4.3億円1.7億円3.5%
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算

1軸の感度に加えて、ADRと稼働率を同時に動かした2軸の表を置く。総投資48.8億円・GOP率40%・宿泊売上のみという前提は上表と同じで、太字がBシナリオ(ADR¥12,500・稼働率80%)である。ADR¥11,250・稼働率75%まで下がると利回りは3.5%、温泉の付加価値でADR¥13,750・稼働率85%を取れれば4.9%となり、同じ建物でもADRと稼働率の組み合わせで利回りが1.4pt以上動く。

表9 ADR×稼働率の2軸感度(簡易利回り、総投資48.8億円)
ADR\稼働率70%75%80%85%90%
¥10,0002.9%3.1%3.4%3.6%3.8%
¥11,2503.3%3.5%3.8%4.0%4.2%
¥12,5003.7%3.9%4.2%4.5%4.7%
¥13,7504.0%4.3%4.6%4.9%5.2%
¥15,0004.4%4.7%5.0%5.3%5.7%
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算(140室×ADR×稼働率×365日、GOP率40%、総投資48.8億円。宿泊売上のみの簡易利回りで、実際の投資判断には詳細なフィージビリティ・スタディが必要です)
表10 主要リスクと評価
リスク要因内容評価
供給名護市内で2026〜2027年度に509室(還元43・コートヤード170・日和156・本件140)が加わる中 市街地型の直接競合は日和156室
需要ジャングリア2年目の集客水準、台風による欠航(2026年8月−14.0%)中 冬のキャンプ期・オフシーズンの底上げが支え
災害津波浸水深5〜10m区域、埋立地の液状化傾向高 設計段階での垂直避難・地盤対策が前提
建設坪単価の上昇、温泉掘削の不確実性中 2027年度完成なら契約時点で概ね確定
規制・契約10年間の事業計画変更・転売制限と買戻特約、2027年2月開始の沖縄県宿泊税(2%)中 出口は長期保有前提で設計する
出典:名護市公募要項、沖縄県、国土交通省 不動産情報ライブラリよりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成

事業者・自治体・金融機関それぞれの読み方

開発側にとって本件が示すのは、北部リゾートの価格帯に届かない市街地立地でも、温泉と大浴場を核にすれば1.2万〜1.5万円帯という空白が狙えるという点である。名護市街で1万円を超える成立例はグリーンリッチホテル沖縄名護(155室・10,200円)と小規模のUNTEN INN(10,500円)の2軒にとどまり、1.1万円を超える施設は3km圏にない。既存の同社運営ホテルが200m圏にあることは、営業・清掃・フロントの共通化と、価格帯の異なる2棟で需要を分け合う運用を可能にする条件でもある。

自治体の公有地活用担当にとっては、一度売却した土地を買い戻して再公募し、宿泊・商業の用途指定と10年の買戻特約で事業の継続性を担保したうえで、民間が温泉付きの宿泊施設を提案した事例として参照価値が高い。最低売却価格を近傍の公示地価より1割強高い水準に置いても応募が成立した背景には、2020年以降5年間止まっていた市街地供給と、1年で16%上がった市の推定成約ADRがある。

地銀・沖縄の金融機関にとっての論点は、津波浸水想定5〜10m区域と液状化傾向の高い埋立地という物理条件を、担保評価とBCP条件にどう織り込むかに移る。既存の大型3軒もすべて2m以上の津波浸水想定区域に立地している以上、名護市街で宿泊施設に融資する限り避けて通れない前提であり、上層階への電源・受水槽の配置、保険の付保条件、台風・津波時の営業停止日数を収支に織り込んだストレスシナリオを求めるのが現実的な対応といえる。

まとめ

名護市東江の旧消防庁舎跡地に計画される9階建て・140室規模の温泉付きホテルは、半径1km圏の稼働客室が2017年255室から2026年694室へ2.7倍になった後、5年間ほぼ止まっていた名護市街の供給を再び動かす案件である。名護市の推定成約ADRは2026年9月11,400円で前年同月比+16.2%と北部で最も伸びたが、水準は本部町の76%、恩納村の52%にとどまり、温泉付き市街地型が狙う1.2万〜1.5万円帯は3km圏に成立例がない。近隣商業地域・容積率200%で建物は成立する一方、津波浸水想定5〜10m区域と液状化しやすい埋立地という条件は設計と融資の双方で前提になる。宿泊売上だけの簡易利回りは3〜5%で、温泉の日帰り利用・税額控除・ジャングリア2年目の需要水準が上乗せ要因となる。2027年度の開業までに名護市街の単価が1万円台を維持できるかを、月次の推定成約ADRで追い続けることが、このエリアに関わる事業者・自治体・金融機関に共通する次の作業になる。

よくある質問

Q. 名護市東江のホテル建設計画の規模と時期は?
報道(沖縄タイムス・琉球新報、2025年11月20日)によれば、ピース企画が旧消防庁舎跡地に9階建て・140室規模の天然温泉付きホテルを計画し、最短2027年度の完成を目指すとされる。売却額や総事業費は本稿では確認できていない。

Q. 名護市のホテル単価は北部リゾートとどれくらい違うのか?
2026年9月の推定成約ADRは名護市11,400円に対し、本部町15,000円、恩納村21,900円、今帰仁村40,400円で、名護市街は本部町の76%、恩納村の52%の水準にある。前年同月比では、この4エリアの中で名護市が+16.2%と最も高い伸びを示した。

Q. 敷地の災害リスクはどう評価されるか?
沖縄県の津波浸水想定では浸水深5m以上10m未満の区域に含まれ、地形分類は埋立地で液状化傾向が高い。洪水浸水想定区域と土砂災害警戒区域には該当しない。9階建ての計画は上層階への垂直避難を設計に織り込める規模といえる。

⚠ 将来日程のADRに関する注意:本記事のうち2026年10月以降の推定成約ADRは調査時点でOTAに公開されている販売価格に基づく推定であり、チェックイン日に近づくにつれて新規プランの追加や価格調整で変動します。現時点で高く設定されている価格が直前値下げで下落する可能性がある点にご留意ください。開発シナリオの試算は公開情報と当社の仮定に基づく簡易なものであり、事業者の計画値ではありません。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

メトロエンジンリサーチ&コンサルティングの推定成約ADR(市区町村別中央値・施設別12か月中央値)、旧名護市消防庁舎跡地から半径1km・3km圏の客室ストック(2026年10月28日時点、客室数10室以上、レジャーホテルを除く)、沖縄県の稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定、2026年7〜9月)とブッキングカーブ。用途地域・地価・災害想定は国土交通省 不動産情報ライブラリ、居住人口は国土数値情報250mメッシュ、就業人口は経済センサス-活動調査(2021年)、計画概要は名護市の公募要項と報道による。

■ 試算前提

延床は本庁舎跡地の容積率上限(約5,441㎡)、建築費は2025年「ホテル又は旅館」全国平均217.8万円/坪〜建設期間インフレ織込みの約235万円/坪、温泉掘削・浴場設備2.0億円と設計・諸経費(建築費の10%)は当社仮定、土地は市の最低売却価格4.24億円。売上は宿泊売上のみ(140室×ADR×稼働率×365日)、GOP率40%、利回り=GOP÷総投資額。

■ 限界・留意点

事業者の計画値・実際の売却額・客室構成は公開されておらず試算に反映していない。推定成約ADRはOTA公開価格からの推定値であり、2026年10月以降は調査時点の掲載水準に基づく。稼働率は沖縄県単位の推定値で、名護市街の個別施設の実稼働率とは異なる。高潮浸水想定、投資税額控除、日帰り温泉・飲食収入は試算に含めていない。

■ 市場データ

■ 政府統計・公的データ

■ 自治体資料

■ ニュース・プレスリリース

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