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ホテル伊豆急を東急が保有、2028年リブランド — 8月ADR4.7万円は閑散月の3.3倍、2km圏589室

投稿日 : 2026.10.26

静岡県

投資・開発

ホテル伊豆急を東急が保有、2028年リブランド — 8月ADR4.7万円は閑散月の3.3倍、2km圏589室

東急株式会社が2026年9月25日に公表したニュースリリースによれば、静岡県下田市白浜のホテル伊豆急は2026年10月1日付で建物の所有・経営を伊豆急コミュニティーから東急へ移し、運営マネジメントを東急ホテルズ&リゾーツ(東急ホテルズ)が担う体制に移行した。現地運営は引き続き伊豆急コミュニティーが受け持ち、リニューアル工事のための一時休館を経て2028年にリニューアル・リブランド開業を予定している。新ブランド名・休館期間・投資額は発表されていない。本稿では、開業58年を迎えた白浜大浜前のホテルが「鉄道グループ内の資産移管」という形で再投資の起点に立った意味を、メトロエンジンリサーチの推定成約ADR、半径2km圏の客室ストック、国土交通省の立地・ハザードデータから読み解く。

本記事のデータについて
• ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。
• エリア(都道府県・市区町村)単位のADRは、対象施設の推定成約単価の中央値(エリアの標準的な施設の水準)です。
• 掲載価格に言及する箇所は、2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
• OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。
• 出典:メトロエンジンリサーチ(国内約168,000施設のOTA公開価格を継続追跡、うち稼働確認済み約27,000施設)
本記事の客室ストックは、ホテル伊豆急から半径2,000m圏内にある客室数10室以上の宿泊施設(レジャーホテルを除く)を対象とし、「稼働中」は直近3か月(2026年8月〜2026年10月)に主要予約サイトで販売価格が確認できた施設を指す(2026年10月21日時点、メトロエンジンリサーチ集計)。
客室数(公式)
117室
本館117室+東館35室(公式発表)
2026年8月 推定成約ADR
¥46,800
前年同月比-8.9%
8月 ÷ 6月の単価差
3.3倍
下田市中央値は1.6倍
2km圏 稼働客室
589室
19軒・掲載ベースは41軒910室
津波浸水想定(当地点)
2〜3m
国土数値情報 津波浸水想定(静岡県)
Key Takeaways
  • — 3層体制へ移行 — 2026年10月1日に所有・経営は東急、運営マネジメントは東急ホテルズ、現地運営は伊豆急コミュニティーが継続。2028年リブランド開業予定で、ブランド名・投資額は未公表。
  • — 8月ADR¥46,800は6月の3.3倍 — 下田市中央値(1.6倍)を大きく上回る夏型の価格形成。直近12ヶ月平均は¥21,100(推定成約ADR・税抜相当)。
  • — 2km圏稼働589室の20%を本館117室が占める。稼働客室の60%が1970年代開業で、供給は10年近く横ばい(2026年10月21日時点)。
  • — 津波浸水想定2〜3m — 所在地点は浸水深2m以上3m未満の区分。受変電設備・機械室の配置が改修設計の論点になる。
  • — 休館の室料影響は「夏を跨ぐか」で決まる — 本館117室・通年稼働率70%仮定で9ヶ月休館は約3.9億円、翌夏を含む12ヶ月は約6.3億円(付帯収入除く・本稿試算)。

体制変更の中身 — 所有・運営マネジメント・現地運営の3層に分かれた

まずはリリースが述べている範囲を整理したい。変更前は伊豆急コミュニティーが所有・経営・運営の全てを担っていた。変更後は、建物の所有と経営が東急に、運営マネジメントが東急ホテルズに移り、現地運営業務は伊豆急コミュニティーが継続する。つまり「資産を持つ主体」「ブランドと運営システムを提供する主体」「現場で働く主体」が3層に分かれた形で、鉄道グループが伊豆の観光拠点を本体のバランスシートに引き寄せつつ、雇用と地域との関係は現地法人に残す構図といえる。リリースは同じ伊豆エリアで東急ホテルズが運営する下田東急ホテル・伊豆今井浜東急ホテルと運営機能を集約する方針も示しており、3館を1つの運営単位として捉える発想が読み取れる。

層変更前(〜2026年9月30日)変更後(2026年10月1日〜)
建物の所有・経営伊豆急コミュニティー東急
運営マネジメント伊豆急コミュニティー東急ホテルズ&リゾーツ(下田東急ホテル・伊豆今井浜東急ホテルと運営機能を集約)
現地運営業務伊豆急コミュニティー伊豆急コミュニティー(継続)
今後の予定リニューアル工事のため一時休館(ホテル公式サイトの告知では「2027年秋以降」)→ 2028年にリニューアル・リブランド開業予定
未公表事項新ブランド名、休館の開始日と期間、投資額(本稿では推定しない)
出典:東急株式会社 ニュースリリース(2026年9月25日)、ホテル伊豆急 公式サイト 新着情報(2026年10月1日・10月6日)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成

客室数については一次情報で確認した。ホテル伊豆急の公式サイトが2026年10月1日に掲出した体制変更の告知には、施設内容として「本館客室117室(1974年7月開業)、東館客室35室(1968年7月開業)」と記されている。メトロエンジンリサーチが把握する客室数は117室で、これは本館の数値と一致する。リリースの「開業以来58年間」は1968年7月開業の東館を起点とした年数であり、本館は2026年時点で築52年になる。ただし、東館35室が改装後にどう扱われるかはリリース・公式サイトのいずれにも記載がないため、以降の集計と試算は公式値と一致する本館117室を対象とする。

8月の単価は閑散月の3.3倍 — 季節性が改装後の商品設計に与える意味

次に、再投資の前提となる単価構造を見ていく。メトロエンジンリサーチの推定成約ADRでは、ホテル伊豆急の2026年8月は¥46,800(前年同月比-8.9%)、7月は¥31,100(-3.1%)だった一方、6月は¥14,300、9月は¥17,200(+4.5%)にとどまる。8月と6月の比は3.3倍で、同じ月の下田市中央値(¥19,000対¥12,200、1.6倍)や静岡県中央値(1.5倍)と比べると、季節による単価の振れ幅がはるかに大きい。白浜大浜海水浴場の目の前という立地が、夏に強い価格形成力をもたらしていることが数値に表れている。

ホテル伊豆急 推定成約ADR 月別推移(2024年・2025年・2026年の重ね描き)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(施設別推定成約ADR・税抜相当。2026年10〜12月は調査時点の掲載水準に基づく推定)

一方で、通年の視点に立つと別の姿が見える。直近12ヶ月(2025年10月〜2026年9月)の月別推定成約ADRを単純平均すると¥21,100で、8月はその2.2倍、6月は0.7倍の水準にある。下田市中央値に対するホテル伊豆急の倍率も、8月は2.5倍と大きく開くのに対し、6月は1.2倍、9月は1.3倍まで縮む。夏季に積み上げたプレミアムを、海に入らない季節でも維持できる商品があるかどうかが、2028年のリブランドで問われる論点になるだろう。

2026年1〜9月 推定成約ADR — ホテル伊豆急・下田市中央値・静岡県中央値
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(下田市 N=55施設、静岡県 N=867施設・いずれも2026年8月時点の対象施設数)

この季節性はホテル固有ではなく、下田市全体の需要構造を映している。下田市の統計書によれば、令和5年度の市内宿泊人員は912,422人で、7月(108,597人)と8月(154,241人)の2ヶ月が28.8%を占めた。令和元年度の34.0%からは夏の集中度がやや和らぎ、2月(76,887人)や9月(77,128人)が伸びているのは、河津桜や秋の行楽といった夏以外の需要が育ってきた表れと読める。伊豆急下田駅の乗降人員(定期券分を除く)も令和5年に849,437人と、令和元年の76.6%まで回復している。

下田市 月別宿泊人員 — 令和元年度と令和5年度
出典:下田市「令和6年度下田市統計書」(資料:観光交流課)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成
東急ホテルズ運営の伊豆3館 推定成約ADR(2025年7月〜2026年9月)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(施設別推定成約ADR・税抜相当)

運営機能を集約する下田東急ホテル・伊豆今井浜東急ホテルも、同じ夏型の価格カーブを描いている。3館の2026年8月推定成約ADRは¥46,800・¥59,600・¥69,500と、いずれも6月の2倍を超える。季節波動の形が揃っていることは、販売・人員配置・宴会や婚礼の受け皿を3館で融通する余地があるという意味で、集約の合理性を裏付ける材料になる。

施設客室数開業2026年8月ADR2026年6月ADR8月÷6月2026年9月ADR
ホテル伊豆急(下田市白浜)117(本館)1974年(本館)¥46,787¥14,2553.3倍¥17,205
下田東急ホテル(下田市)1121962年¥59,642¥25,8262.3倍¥33,169
伊豆今井浜東急ホテル(河津町)1341988年¥69,487¥22,0773.1倍¥31,524
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(推定成約ADR・税抜相当。客室数はホテル伊豆急が公式発表値、他2館はメトロエンジンリサーチが把握する掲載ベース。開業年はホテル伊豆急が公式発表、他2館はメトロエンジンリサーチ把握値)

通年化の土台はすでにある — 海・眺望・温泉・接客の評価

改装後の商品設計を考えるうえで、現状の強みを確認しておきたい。ホテルバンク編集部が集計した直近24ヶ月(2024年10月〜2026年9月)の宿泊者口コミ1,076件を分析すると、総合評価は4.33/5.0で、サービス(4.39、N=680件)は下田市周辺の同カテゴリ中央値を0.18ポイント上回り、バスルーム(4.53、N=569件)は同エリアの上位10%に入る。口コミ877件の意味解析では、海・ビーチへの近さに触れる声が41.5%(364件中352件が肯定的)、客室からの眺望が28.4%(249件すべてが肯定的)、露天風呂が15.3%(134件すべてが肯定的)を占めた。「お部屋のお風呂からきれいな海が見えて…」「露天風呂の大きな杉の柱が印象に…」といった声が目立つ。

ここで重要なのは、眺望・温泉・接客は季節に左右されない資産だという点である。海水浴という夏の目的需要が8月の単価を押し上げている一方、同じ海を「眺める」体験や敷地内源泉「龍神の湯」の露天風呂は冬でも価値を持つ。リリースが掲げるリニューアル・リブランドは、こうした通年資産を主役に据えて閑散月の単価を引き上げる機会であり、下田市で育ちつつある2月・9月の需要を取り込む伸びしろとも重なる。

出典:ホテルバンク編集部調べ(宿泊者口コミ1,076件・2024年10月〜2026年9月、意味解析は877件)

半径2km圏は19軒589室 — ペンション・民宿が軒数の過半、ホテル型は3軒

続いて競合環境を見る。ホテル伊豆急から半径2km圏の客室ストックは、掲載ベースで41軒910室、直近3ヶ月に販売価格が確認できた稼働中の施設では19軒589室である。業態別に見ると、軒数ではペンション15軒・民宿8軒・旅館7軒が大半を占めるが、客室数ではデラックスホテル(下田プリンスホテル133室)・シティホテル(ホテル伊豆急117室)・リゾートホテル(2軒96室)のホテル型3業態が346室と稼働客室の59%を占める。本館117室だけで圏内の稼働客室の20%にあたり、白浜地区の宿泊供給においてホテル伊豆急が持つ重みが分かる。

半径2km圏 業態別客室数(掲載/稼働中)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(2026年10月時点)
半径2km圏 開業年代別客室数(開業年が確認できる施設)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(2026年10月時点)。開業年が確認できない16軒232室は不算入

開業年代別に見ると、稼働客室の60%にあたる351室が1970年代の開業で、1960年代の50室を加えると6割を超える。2010年代以降の開業は小規模なペンション・貸別荘が中心で、開業年が確認できる施設の客室ストックは2017年の22軒631室から2026年の24軒656室へとほぼ横ばいに推移してきた。白浜大浜はこの10年、新しい大型供給が入らない一方で既存の大型施設が更新期を迎えている市場であり、ホテル伊豆急の再投資は圏内で最初に動く大型リニューアルになる可能性が高い。なお静岡県全体では伊豆・熱海を中心に小規模施設の新規開業が積み上がっており、県内の供給動向は静岡県に2026年開業67施設 — 伊豆・熱海に積み上がる小箱供給と、高単価帯への新規参入で整理している。

業態掲載稼働中稼働客室シェア
デラックスホテル1軒 / 133室1軒 / 133室22.6%
シティホテル1軒 / 117室1軒 / 117室19.9%
ペンション15軒 / 211室8軒 / 113室19.2%
旅館7軒 / 142室4軒 / 97室16.5%
リゾートホテル2軒 / 96室2軒 / 96室16.3%
民宿8軒 / 122室2軒 / 22室3.7%
貸別荘2軒 / 22室1軒 / 11室1.9%
オーベルジュ3軒 / 35室0軒 / 0室0.0%
コテージ2軒 / 32室0軒 / 0室0.0%
合計41軒 / 910室19軒 / 589室100%
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(2026年10月時点)
半径2km圏の宿泊施設と津波浸水想定(円の大きさ=客室数、塗り=稼働中)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(施設位置・客室数)、国土交通省 国土数値情報「津波浸水想定」(静岡県)
稼働中の主要施設(客室数順・上位10)
施設業態客室開業距離
下田プリンスホテルデラックスホテル133室1973883m
ホテル伊豆急シティホテル117室19740m
下田ビューホテルリゾートホテル80室19721,215m
下田聚楽ホテル旅館50室19631,699m
下田オーシャンパークホテル旅館26室20161,901m
伊豆 白浜の宿 ペンション 白浜 エクシード・プレイヤーズ・クラブペンション25室19861,670m
ホテル クリフサイドリゾートホテル16室20101,170m
ガーデンヴィラ白浜ペンション15室1986709m
ペンション ライム 白浜ペンション14室1990514m
ビーチサイドイン白浜ペンション13室—514m

白浜大浜前という立地 — 津波浸水想定2〜3m、受変電設備と機械室の配置が改修の論点になる

投資判断の基礎情報として、国土交通省 不動産情報ライブラリのデータで立地条件を確認した。国土数値情報の津波浸水想定(静岡県)では、ホテル伊豆急の所在地点は浸水深「2m以上3m未満」の区分に含まれ、海側に隣接する区画は「3m以上5m未満」である。白浜地区について静岡県と下田市が2018年10月にまとめた「下田市白浜地区における津波対策の方針」は、比較的発生頻度の高いレベル1津波(大正型関東地震)に対する必要堤防高をT.P.+5.5m、最大クラスのレベル2津波(南海トラフ沿い)の平均・最高津波高をT.P.+15.0mとし、現況の地盤高や既存施設の高さが必要堤防高を満たしていない箇所があることを認めつつ、観光産業を中心とする地区の実情を踏まえて住民・観光客の迅速な避難を軸に据えている。こうしたハザード情報を立地評価の軸として単価や防災投資と並べて読む枠組みは、ホテル立地評価の第4軸「災害リスク」を定量化する — 全国8商圏のハザード×ADR×防災Capexで全国8商圏を対象に整理した。

項目当地点の状況出典
津波浸水想定(最大クラス)浸水深 2m以上3m未満。海側隣接区画は3m以上5m未満。半径約1km内には5m以上10m未満、10m以上20m未満の区画も分布する国土数値情報「津波浸水想定」静岡県(2016年)
白浜地区の津波高レベル1必要堤防高 T.P.+5.5m/レベル2 平均・最高津波高 T.P.+15.0m静岡県・下田市「下田市白浜地区における津波対策の方針」(2018年10月)
液状化傾向当地点のメッシュは地形分類「丘陵」で「液状化しにくい」。海側約90mの「砂州・砂礫州」は「やや液状化しやすい」国土交通省 不動産情報ライブラリ(液状化傾向図)
土砂災害警戒区域当地点は区域外。白浜地区内には2011年指定の警戒区域(梶浦ほか)がある国土交通省 不動産情報ライブラリ(土砂災害警戒区域)
都市計画下田市の都市計画区域内。同ライブラリの都市計画データで当地点に用途地域の表示はない国土交通省 不動産情報ライブラリ(都市計画決定GIS)
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ、国土数値情報、静岡県・下田市公表資料よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成

浸水深2〜3mという想定は、1階の床上から天井付近までが浸水域に入る水準である。宿泊施設の改修でこの条件が意味を持つのは、受変電設備・非常用発電機・ポンプ・ボイラーといった機械設備の配置である。国土交通省と経済産業省が2020年6月にまとめた「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」は、想定浸水深に対して電気設備を上階や屋上に設置する、マウンドアップや止水板・防水扉で浸水経路を塞ぐ、浸水時の機能停止と復旧のタイムラインをあらかじめ定める、といった対策を整理している。既存建物の改修では新築より制約が多いが、一時休館を伴う全面リニューアルは、こうした設備更新を客室・温泉・レストランの再設計と同時に行える機会である。1974年開業の建物では石綿の事前調査も改修の工程に加わるが、その費用が改修費に上乗せされる幅は改装の前に石綿調査 — 1975年・2006年の2本線と、1室1万〜57万円の上乗せ試算で試算している。ここで述べた配置論は一般論であり、ホテル伊豆急の実際の設備配置や改修内容は公表されていない。

地価については、白浜地区に地価公示の標準地はなく、下田市内の標準地は市街地(伊豆急下田駅周辺・蓮台寺)に置かれている。令和7年(2025年)1月1日時点の公示価格は、商業地の下田5-1(二丁目)が62,300円/㎡(前年比-1.4%)、下田5-2(西本郷1丁目)が59,200円/㎡(-0.3%)、住宅地の下田-2(東中)が57,800円/㎡(0.0%)、下田-1(三丁目)が44,700円/㎡(-1.5%)、下田-3(蓮台寺)が39,700円/㎡(-0.5%)である。市街地の地価が横ばいから微減で推移するなかで、既存建物を保有する主体が改修で価値を作る今回の形は、土地取得コストを伴わない再投資という点で地方リゾートの典型的な選択肢といえる。

出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(地価公示 令和7年)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成

休館期間の室料はどの程度か — 本稿の仮定による試算

最後に、一時休館が伴う室料の一時的な減少を試算する。休館の開始時期は公式サイトの告知で「2027年秋以降」とされているだけで、期間は公表されていない。そこで本稿では、本館117室、直近12ヶ月(2025年10月〜2026年9月)の月別推定成約ADR、稼働率60%・70%・80%の3水準を仮定し、月ごとの室料を「客室数×日数×ADR×稼働率」で機械的に求めた。食事・宴会・温泉などの付帯収入は含まない。稼働率は本稿の仮定値であり、施設の実績ではない。

月別の室料試算(本館117室・通年稼働率70%仮定・直近12ヶ月の推定成約ADR)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(試算。ADRは推定値・稼働率は仮定)

稼働率70%を仮定した場合、12ヶ月合計の室料は約6.3億円、そのうち7月・8月の2ヶ月だけで31%を占める。試算上は、休館の「長さ」よりも「夏季を跨ぐかどうか」が室料への影響を大きく左右する。たとえば2027年10月から2028年6月までの9ヶ月間(シナリオA)の室料は稼働率70%仮定で約3.9億円に相当するのに対し、翌夏を含む12ヶ月間(シナリオC)では約6.3億円と、3ヶ月の差で金額は61%増える。2028年開業というリリースの時間軸は、翌年の夏を新しい商品で迎えることを視野に入れた設定と読むことができる。

休館期間の仮定稼働率60%稼働率70%稼働率80%年間比(70%時)
A. 2027年10月〜2028年6月(9ヶ月)
夏季前に再開する想定
33839445062%
B. 2027年9月〜2028年3月(7ヶ月)
秋口に閉じ春に再開する想定
27732437051%
C. 2027年10月〜2028年9月(12ヶ月)
翌夏を跨ぐ想定
544634725100%
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(単位:百万円。本館117室×日数×月別推定成約ADR×仮定稼働率。付帯収入を含まない)
月推定成約ADR室料 60%(百万円)室料 70%(百万円)室料 80%(百万円)
10月¥16,93736.943.049.1
11月¥18,70639.446.052.5
12月¥20,44744.551.959.3
1月¥22,91549.958.266.5
2月¥17,76734.940.746.6
3月¥16,40735.741.747.6
4月¥14,06229.634.639.5
5月¥16,97236.943.149.2
6月¥14,25530.035.040.0
7月¥31,14467.879.190.4
8月¥46,787101.8118.8135.8
9月¥17,20536.242.348.3
12ヶ月合計平均 ¥21,134544634725
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(ADRは2025年10月〜2026年9月の施設別推定成約ADR・税抜相当)

なお、改修費そのものは公表されておらず本稿でも推定しないが、コスト環境は押さえておきたい。国土交通省の建築着工統計によると、2024年の宿泊業用建築物の工事費予定額は全構造平均で195万円/坪と、2022年の138万円から2年で41%上昇している。建設費の上昇は新規供給を抑える方向にも働くため、既存建物を持つ主体にとっては、改修で商品力を更新した施設が供給の増えにくい市場で優位に立てる環境ともいえる。

鉄道系デベロッパー・リゾート投資家・地銀への示唆

所有と運営の分離 グループ内移管の型

所有・経営を本体へ、運営マネジメントをホテル会社へ、現地運営を地域法人に残す3層構造は、鉄道会社が沿線のリゾート資産を再投資する際の一つの型になる。雇用と地域関係を維持しながら、ブランドと販売網を本体側で更新できる。

単価の通年化 8月に偏る価格形成

8月の推定成約ADRは閑散月の3.3倍、下田市中央値の2.5倍。眺望・温泉・接客の評価は季節を問わないため、リブランドで閑散月の単価を引き上げる余地が大きい。下田市で伸びる2月・9月の需要が受け皿になる。

立地とBCP 浸水想定2〜3m

白浜大浜前の立地は夏の単価の源泉であると同時に、受変電設備・機械室の配置を改修設計に組み込む必要がある条件でもある。一時休館を伴う全面改修は、設備更新と商品再設計を同時に進められる機会になる。

ここまでを整理すると、ホテル伊豆急の体制変更は「58年の運営実績を持つ資産を、グループ本体が引き取って更新する」案件である。半径2km圏の供給は10年近く横ばいで大型の新規参入がなく、圏内稼働客室の20%を占める本館117室の更新は、白浜地区の宿泊商品の水準そのものを引き上げる可能性を持つ。地銀やリゾート投資家にとっては、地方の老舗リゾートで所有・運営・現場を切り分けながら再投資する一つの参考例として、2027年秋以降とされる休館の詳細と新ブランドの発表を追う価値があるだろう。

⚠ 将来日程のADRに関する注意:本記事のチャートに含まれる2026年10月以降の推定成約ADRは、調査時点でOTA等に公開されている販売価格から推定した水準であり、チェックイン日に近づくにつれて変動する。現時点で高く設定されている価格が直前の調整で下落する可能性がある点に留意されたい。休館期間の室料試算は本稿が仮定した期間・稼働率に基づく機械的な計算であり、施設の実績・計画を示すものではない。

よくある質問

Q. ホテル伊豆急の客室数は何室ですか。
A. ホテル公式サイトの告知(2026年10月1日)では本館117室(1974年7月開業)と東館35室(1968年7月開業)と記載されています。メトロエンジンリサーチが把握する117室は本館の数値と一致します。

Q. 新しいブランド名や休館の時期は決まっていますか。
A. 東急のリリース(2026年9月25日)は2028年のリニューアル・リブランド開業を予定とするのみで、ブランド名・投資額は公表されていません。休館時期はホテル公式サイトが「2027年秋以降」と告知しています。

Q. 本記事のADRは実際の販売価格ですか。
A. 推定値です。OTA等に公開された最安プラン水準に業態別の補正係数を適用した推定成約単価(税抜相当)で、上場ホテルREITの開示実績との照合で誤差中央値は約7%です。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

メトロエンジンリサーチの施設別・市区町村別・都道府県別の推定成約ADR(税抜相当、2024年7月〜2026年9月の実績月と、2026年10〜12月は調査時点の掲載水準に基づく推定)、ホテル伊豆急から半径2,000m圏の客室ストック(客室数10室以上・レジャーホテル除く、2026年10月21日時点)、宿泊者口コミ(2024年10月〜2026年9月の1,076件)。立地・ハザード・地価は国土交通省 不動産情報ライブラリと国土数値情報、需要は下田市統計書、体制変更は東急のニュースリリースとホテル公式サイトによる。

■ 試算前提

休館期間の室料は「本館117室×各月の日数×直近12ヶ月(2025年10月〜2026年9月)の月別推定成約ADR×通年一律の仮定稼働率(60%・70%・80%)」で算出した。食事・宴会・温泉などの付帯収入、東館35室は含まない。休館期間のシナリオA〜Cは本稿が置いた仮定であり、公表された計画ではない。

■ 限界・留意点

推定成約ADRは推定値で、上場ホテルREITの開示実績との照合で誤差中央値は約7%。稼働率は仮定値で施設の実績ではない。改修費・新ブランド・休館期間は未公表のため推定していない。津波浸水想定は最大クラスの想定で、建物ごとの設備配置は公表されていない。2km圏の「稼働中」は直近3か月に販売価格が確認できた施設で、販売を休止している施設は含まれない。

■ 一次情報(企業発表)

■ 市場データ

  • メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — 施設別・市区町村別・都道府県別の推定成約ADR(下田市 N=55施設、静岡県 N=867施設、2026年8月時点)、半径2km圏の客室ストック(掲載41軒910室・稼働19軒589室、2026年10月21日時点)
  • ホテルバンク編集部調べ — 宿泊者口コミ1,076件(2024年10月〜2026年9月)の評価集計、877件の意味解析

■ 政府統計・公的データ

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