浜名湖・舘山寺温泉の「ホテル九重」(浜松市中央区舘山寺町2178、1987年9月6日開業・86室)は2021年10月31日に営業を終え、建物は解体された。その跡地について遠州鉄道は2025年3月28日、約50室の宿泊施設を核にレストラン・カフェ・SPA・オープンモール形式の商業施設を備えた複合施設を開発する基本構想を公表し、開業は2029年春を予定している。閉館から5年、舘山寺温泉の客室ストックは何軒・何室で、単価はどの水準にあるのか。本稿では跡地計画の現況に直答したうえで、住所に「舘山寺町」を含む22施設の掲載状況と、旧西区・旧中区の推定成約ADRをメトロエンジンリサーチのデータで読み解き、86室から約50室への転換が意味するものを単価帯から考える。宿泊者向けの現在の相場と宿の選び方はホテル九重は2021年10月31日に営業終了|跡地は2029年春に新施設、舘山寺温泉の今の相場と宿の選び方で整理しており、本稿は供給と単価の側面に絞る。
本記事における指標の定義
- ADR(平均客室単価):各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。
- 掲載価格:OTA上で公開されている全プランの価格(2名1室利用時・1室あたり・税込)。エリア単位では施設ごとの日次平均のエリア中央値を月内で平均した値。成約価格ではなく、本記事のADRとは水準が異なります。
- OCC(稼働率):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります。
- 営業中の判定:直近12か月(2025年10月〜2026年9月)または先行販売月(2026年10月以降)にOTA上の価格掲載が確認できた施設を「価格掲載あり」として数えています。掲載が確認できない施設は、公式サイト・電話予約のみの営業である可能性を含みます。
- データ出典:メトロエンジンリサーチ(2026年10月8日時点の集計)
- — 跡地は約50室のホテルを核とする複合施設へ。遠州鉄道が2025年3月28日に基本構想を公表し、開業は2029年春の予定。2026年10月時点で設計・着工の続報は確認できていない。
- — 舘山寺町の価格掲載ストックは12施設・479室(2026年10月8日時点)。97室以上の大型帯は2施設・219室に絞られ、2021年以降の追加は21室の旅館と一棟貸し1棟など小規模中心。
- — 旧西区の推定成約ADRは12か月平均1万6,000円(2025年10月〜2026年9月、N=12〜15施設)で前年同期比+3.7%。浜松駅周辺の旧中区7,300円の2.2倍にあたる。
- — 30〜65室帯の5施設は平均2万8,300円と、97室以上の2施設(1万5,200円)、30室未満の3施設(9,400円)を上回る。跡地計画の約50室はこの帯の中央に位置する。
- — 客室売上の目安は年間約3.6億円(約50室×2万8,300円×通年稼働70%の仮定)。86室×1万5,200円の約3.3億円と同規模で、室数を4割減らしても単価次第で売上規模は保てる構図。
跡地は今どうなっているか — 2029年春開業予定の約50室ホテルを核とする複合施設
結論から述べると、ホテル九重の跡地は遠州鉄道(本社・浜松市中央区旭町)が自社で再開発する。同社が2025年3月28日に公表したニュースリリースによれば、跡地には「ホテル」「レストラン」「SPA」「商業」が連動した複合施設を計画し、ホテルは「浜名湖の自然と調和しながらも象徴的な建築デザイン」で客室数は約50室、商業施設は「浜名湖の自然を感じるオープンモール形式」とされている。開業は2029年春を予定し、「今後、建物の基本設計等詳細な事業計画を策定していく」段階だと説明されていた。
この発表から1年半が経過した2026年10月時点で、設計の確定や着工、客室数の変更を伝える続報は、遠州鉄道のリリース一覧・舘山寺温泉観光協会のお知らせ・報道のいずれにも確認できなかった。したがって本稿では、2025年3月の基本構想を最新の公表値として扱う。リリース自体に「進捗がありましたら随時情報をお知らせ」とあるため、基本設計の完了や着工時期が次の公表タイミングになるだろう。
| 時期 | 出来事 | 出典 |
|---|---|---|
| 1987年9月6日 | ホテル九重 開業(舘山寺町2178・86室) | 遠州鉄道リリース(2025年3月28日) |
| 2020年4月 | 新型コロナウイルス感染拡大を受けて休館(約1年半継続) | ホテルバンク既報(2021年10月) |
| 2021年10月31日 | 営業終了。11月から約2年をかけて建物を解体 | 同上・遠州鉄道リリース |
| 2025年3月28日 | 跡地再開発の基本構想を公表(約50室のホテル+レストラン・カフェ・SPA・商業) | 遠州鉄道リリース |
| 2025年〜 | 建物の基本設計等、詳細な事業計画を策定(2026年10月時点で続報なし) | 同上 |
| 2029年春(予定) | 複合施設の開業予定 | 同上 |
出典:遠州鉄道「『ホテル九重』跡地再開発についてのお知らせ」(2025年3月28日)、ホテルバンク編集部作成
ホテル九重の経緯 — 団体型の大箱が34年の営業を終えるまで
ホテル九重は遠鉄グループの遠鉄観光開発が運営し、浜名湖を一望する高級旅館として1987年に開業した。当社の2021年の既報によれば、開業当初は団体客を中心に全国から集客し、1989年には最大400人を収容する大宴会場を増設している。バブル崩壊後に旅行の主体が個人や家族連れへ移ると、露天風呂の設置や個人向け客室の拡充などのリニューアルで対応してきた。
そこに2020年春からの新型コロナウイルス感染拡大が重なり、同年4月から約1年半にわたって休館した。旅行需要が戻る見通しが立たないことに加えて建物の老朽化が進んでいたことから、遠州鉄道の取締役会で営業終了と建物の取り壊しが決まり、2021年10月31日に34年の歴史を閉じたとされる。舘山寺温泉観光協会によれば、温泉街における大型宿泊施設の閉鎖は1989年以降で初めてだった。なお遠州鉄道は2025年のリリースで、再開発の背景を「国内外からの観光客の需要の変化が顕著」で「競争力を維持するために新たな価値を提供することが求められている」と説明している。本稿ではこの公表どおりの事実関係にとどめ、以下では閉館後5年の温泉街のストックと単価を見ていく。
閉館5年の客室ストック — 舘山寺町は価格掲載ベースで12施設・479室
メトロエンジンリサーチが追跡する施設のうち、住所に「舘山寺町」を含むものは22施設である(舘山寺町3302の97室の施設は2026年5月以降「サンロイヤルホテル浜名湖」の名称で掲載されており、本稿では旧名称と合わせて1施設として数えた)。このうち直近12か月または先行販売月にOTA上の価格掲載が確認できたのは12施設・479室で、残る10施設・239室(閉館したホテル九重の86室を含む)は掲載が確認できなかった。ホテル九重を除く9施設・153室は、小規模な旅館・民宿・コンドミニアムが中心であり、公式サイトや電話予約のみで営業している可能性もあるため「閉館」とは判定していない。
なお本稿は住所で切っているため、隣接する呉松町の「KAReN HaMaNaKo かんざんじ荘」(28室・2021年12月掲載開始)は対象に含めていない。浜松市は2024年1月1日に7区から3区へ行政区を再編しており、舘山寺町は旧西区から中央区になった。以下のエリア集計は再編前の区割りに基づき、「旧西区」「旧中区」の表記を用いる。
| 施設名 | 客室数 | 業態 | 登録上の開業年 | 価格掲載 |
|---|---|---|---|---|
| ホテルウェルシーズン浜名湖 | 122 | 旅館 | 1978年 | あり(2027年3月分まで先行掲載) |
| サンロイヤルホテル浜名湖(舘山寺町3302) | 97 | リゾート | 1970年(現名称での掲載は2026年5月〜) | あり |
| 時わすれ 開華亭 | 60 | 旅館 | 1973年 | あり(2027年3月分まで) |
| ホテル鞠水亭 | 50 | 旅館 | 1970年 | あり(2027年2月分まで) |
| わんわんパラダイス 浜名湖 | 42 | 旅館 | 1994年 | あり(2027年3月分まで) |
| 山水館欣龍 | 34 | 旅館 | 1910年 | あり(2027年3月分まで) |
| 星野リゾート 界 遠州 | 36 | リゾート | 2013年 | あり(2027年3月分まで) |
| 嵐の館 | 21 | 旅館 | 2024年6月 | あり(2027年3月分まで) |
| 日の出 | 9 | 旅館 | — | あり(2026年6月〜12月分) |
| 旅館ふじや | 6 | 旅館 | — | あり(2026年12月分まで) |
| 貸別荘リザーブ(一棟貸し) | 1 | 貸別荘 | 2019年 | あり(2027年3月分まで) |
| UMI&kanzanji(一棟貸し) | 1 | 貸別荘 | 2025年10月 | あり(2027年3月分まで) |
| 価格掲載あり 小計 | 479 | 12施設 | ||
| ホテル九重(閉館・解体済) | 86 | 旅館 | 1987年 | なし(2021年10月31日営業終了) |
| 掲載が確認できない9施設(旅館・民宿・コンドミニアム) | 153 | 5〜65室(最大は65室の旅館1軒) | なし(直近12か月・先行販売月とも) | |
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(住所に「舘山寺町」を含む22施設、2026年10月8日時点。開業年は登録上の年で、不明は「—」)
2021年以降の供給の動きを整理すると、減少側はホテル九重の86室が唯一の大型案件で、追加側は2024年6月の「嵐の館」(21室)、2025年10月の一棟貸し「UMI&kanzanji」(1棟)、そして2026年5月から新名称で掲載が始まった97室の「サンロイヤルホテル浜名湖」にとどまる。つまり閉館5年で温泉街に戻ってきた客室は小規模中心であり、97室以上の大型帯は2施設(計219室)に絞られた。2029年春に約50室が加われば、価格掲載ベースのストックは現状の12施設・479室から13施設・約529室へ、九重閉館前の水準に対して客室数では約36室少ない構成になる計算だ。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成。円の大きさは客室数、青=価格掲載あり、灰=掲載が確認できない施設、紺=ホテル九重跡地
単価 — 旧西区の推定成約ADRは12か月平均1万6,000円、浜松都心の2.2倍
次に単価を見る。舘山寺側にあたる旧西区の推定成約ADRは、直近12か月(2025年10月〜2026年9月)の平均で1万6,000円(各月のN=12〜15施設)と、前年同期の1万5,400円に対して前年同期比+3.7%だった。月別では2026年9月が1万6,500円(N=15)で前年同月比+26.7%と伸びた一方、2026年8月は1万8,900円で前年同月比−11.6%、7月は1万3,200円で−10.6%と、夏場は前年を下回っている。2025年8月の2万1,400円が突出していたため、2026年の夏は「前年の山が高かった」分の反動と読むのが妥当だろう。
これに対し浜松駅周辺を含む旧中区は、同じ12か月平均で7,300円(N=33〜35施設)と前年同期比−4.1%であり、旧西区はその2.2倍の水準にある。北側の旧北区(三ヶ日・細江など浜名湖北岸)は1万5,500円(N=8〜9施設)で+19.8%、浜名湖西岸の湖西市は7,300円(N=5〜6施設)で−2.9%だった。浜名湖周辺は、温泉・リゾート帯(旧西区・旧北区の1万5,000〜1万6,000円)と、ビジネス帯(旧中区・湖西市の7,000円台)という2層構造がはっきりしている。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(推定成約ADR・エリア中央値。旧西区N=12〜15施設/月、旧中区N=29〜35施設/月。2026年10月以降は調査時点の掲載水準に基づく推定)
月次の推移を年ごとに重ねると、旧西区は8月と年末年始に山をつくる季節性が明瞭で、2026年は8月の1万8,900円が年内の高値で、1月の1万8,600円がそれに次いだ。旧中区は年間を通じて6,500〜9,700円の狭いレンジに収まり、5月の連休と10月以降にわずかな山がある程度である。両者の差は季節によって1万円前後まで広がるが、閑散期でも旧西区が旧中区を下回る月は一度もない。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(2025年10月〜2026年9月の各月中央値の平均。Nは各月の対象施設数の範囲)
| エリア | 推定成約ADR 12か月平均 | 前年同期比 | 2026年9月 掲載価格(中央値) | 対象施設数 |
|---|---|---|---|---|
| 旧西区(舘山寺・雄踏・舞阪など) | ¥15,989 | +3.7% | ¥31,630 | N=12〜15(掲載価格はN=25) |
| 旧北区(三ヶ日・細江など) | ¥15,489 | +19.8% | ¥38,926 | N=8〜9(同N=13) |
| 旧中区(浜松駅周辺) | ¥7,298 | −4.1% | ¥14,630 | N=33〜35(同N=40) |
| 湖西市 | ¥7,306 | −2.9% | ¥19,747 | N=5〜6(同N=12) |
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(推定成約ADRは2025年10月〜2026年9月、前年同期は2024年10月〜2025年9月。掲載価格は全プラン・税込のエリア中央値)
対象施設数は月によって変動する点に注意が必要である。旧西区の推定成約ADRの対象は2025年11月〜2026年3月が12〜13施設、2026年5月以降が15施設であり、掲載価格の対象(全業態)も2025年11月の16施設から2026年6月以降は25施設まで増えた。小規模な施設の掲載が加わると中央値はやや下に振れやすく、2026年6〜7月の1万2,700〜1万3,200円にはその影響も含まれていると考えられる。稼働面では、旧西区の推定OCCは2026年7月が85.8%(対象13施設・836室)、8月が93.3%(13施設・841室)、9月が87.9%(12施設・714室)と、夏から初秋にかけて高い水準を保っていた(いずれも主要予約サイト掲載ベース・OTA販売在庫に基づく推定)。
紅葉・年末年始の先行掲載 — 12月・1月の掲載中央値は9月比+22〜28%
2026年10月8日時点で先行掲載されている価格を見ると、旧西区の掲載価格(全プラン・中央値)は2026年11月が3万2,500円(N=24)で9月比+2.7%、12月が3万8,700円(N=23)で+22.4%、2027年1月が4万600円(N=18)で+28.3%と、年末年始に向けて段階的に切り上がっている。一方、同じ期間の推定成約ADRは11月1万6,600円、12月1万6,700円、1月1万6,900円とほぼ横ばいで、掲載側の上振れは高価格帯プランの先行投入によるものと読める。紅葉シーズンの11月については、掲載中央値が9月とほぼ同水準にとどまっており、浜名湖周辺では紅葉需要よりも年末年始の方が価格に表れやすいといえる。
ただし先行月の対象施設数は1月18施設、2月17施設、3月16施設と減っていく。販売開始が遅い施設が加わると中央値は動くため、これらの数値は「調査時点で先行販売している施設の掲載水準」として扱うのが適切だろう。
86室から約50室へ — 舘山寺で最も単価が立っている規模帯に入る
ホテル九重の86室から跡地計画の約50室への転換は、客室数だけを見れば縮小に映る。しかし舘山寺町で価格掲載のある施設を客室規模で3つの帯に分け、推定成約ADR(2025年10月〜2026年9月の施設別平均)を比べると、この約50室という規模が温泉街の中でどこに位置するかがはっきりする。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(舘山寺町の価格掲載施設10軒、2025年10月〜2026年9月の施設別推定成約ADRの帯内平均。97室以上N=2、30〜65室N=5、30室未満N=3。一棟貸し2棟は推定対象外)
97室以上の2施設の平均は1万5,200円、30室未満の3施設は9,400円であるのに対し、30〜65室の5施設は平均2万8,300円(中央値2万8,600円)と、他の2帯を大きく上回る。この帯には湖畔の老舗旅館や34〜60室の温泉旅館・リゾートが並び、個人・記念日・食を目的にした滞在を取り込んでいる。約50室という跡地計画の規模は、まさにこの帯の中央にあたる。全国のビジネス系ホテルでは30〜59室帯のADRがむしろ底になることをホテル客室数は何室が最適か — ビジネス系ADRは30〜59室が底、250室以上で+52%で示しているが、温泉地の舘山寺では逆に中規模帯が最も単価の立つ帯になっている。なお集計対象の一部には12か月に満たない施設(97室以上帯の1施設は5か月、30〜65室帯の1施設は7か月、30室未満帯の1施設は2か月分)が含まれる点は留意されたい。
簡単な目安として、通年の稼働率を仮に70%と置くと、約50室×ADR2万8,300円×稼働70%×365日の客室売上は年間約3.6億円になる。同じ稼働率で86室×1万5,200円(97室以上帯の平均ADR)を計算すると約3.3億円であり、客室数を4割減らしても、30〜65室帯の単価が実現できれば客室売上の規模は維持できる構図が見える。もちろん跡地計画にはレストラン・SPA・商業施設が併設される予定であり、宿泊以外の収入が加わる。団体型の大箱から、地域の食と温泉を軸にした小規模・高単価型へという転換は、舘山寺の実勢からみて合理的な方向性だと考えられる。この試算は当社データによる簡易なもので、跡地計画の客室単価や稼働率は公表されていない。ホテル九重の営業当時(2021年以前)の単価は本稿の集計期間外であり、比較していない。
供給パイプライン — 公的統計ベースでは舘山寺に新規計画の収載なし
国土交通省「建築物動態統計調査」の確認申請をもとにした当社の計画ホテルデータでは、2026年10月時点で静岡県内の収載は熱海市の1件(277室・2025年4月完了予定)のみで、浜松市・舘山寺の案件は収載されていない(確認申請ベースの収載は現時点での下限値であり、今後の申請追加で増える)。跡地計画は2025年3月の基本構想段階であり、基本設計・確認申請の段階に進んだ時点で初めて統計に表れる。したがって本稿の跡地計画に関する記述は遠州鉄道の公式発表のみを根拠にしており、当社の計画ホテルデータには含まれていないことを明記しておく。確認申請は通常開業の1〜2年前に行われるため、2029年春開業であれば2027年前後に動きが出ると見込まれる。
舘山寺温泉の投資家・運営者にとっての示唆を整理すると、第一に、2029年春までの約2年半は温泉街の大型帯が2施設に絞られたまま推移し、旧西区の推定成約ADRは前年同期比プラスを保っている。第二に、跡地計画はレストラン・SPA・商業を伴うため、宿泊客だけでなく日帰り客の回遊が温泉街全体に広がる可能性がある。第三に、30〜65室帯の単価水準が2万8,000円前後で成立している事実は、既存施設にとっても客室の個人化・高付加価値化を進める際の参考値になるだろう。閉館5年の跡地が宿泊以外の用途に転じた宇都宮グランドホテル跡地は今|全146区画の分譲地へ、閉館5年で宿泊施設は53→68軒の事例とは対照的に、舘山寺では同じ事業者が宿泊用途で再開発する。舘山寺の次の5年は、閉館による減少局面から、小規模・高単価型の再構築局面へ移っていくと読める。
⚠ 将来日程の価格に関する注意:本記事の2026年10月以降の掲載価格・推定成約ADRは、調査時点(2026年10月8日)でOTAに公開されている販売価格に基づく推定であり、チェックイン日に近づくにつれて新規プランの追加や価格調整で変動します。先行月は対象施設数が少ないため、中央値は販売開始の遅い施設が加わることで動く可能性があります。
よくある質問
Q. ホテル九重の跡地は今どうなっていますか?
A. 建物は解体済みで、遠州鉄道が2025年3月28日に公表した基本構想に基づき、約50室の宿泊施設を核とする複合施設(レストラン・カフェ・SPA・商業)として2029年春の開業を予定しています。2026年10月時点で設計・着工・客室数に関する続報は確認できていません。
Q. ホテル九重はなぜ営業を終えたのですか?
A. 新型コロナウイルスの感染拡大で2020年4月から約1年半休館し、旅行需要の回復が見通せないことと建物の老朽化から営業終了と解体が決まり、2021年10月31日に34年の営業を終えました。
Q. 閉館後の舘山寺温泉の宿泊施設はどれくらいありますか?
A. メトロエンジンリサーチが追跡する住所「舘山寺町」の施設のうち、2026年10月時点で価格掲載が確認できるのは12施設・479室で、97室以上の大型施設は2軒です。
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参考資料・出典一覧
■ データソース
メトロエンジンリサーチが継続的に収集するOTA公開価格・販売在庫をもとにした推定成約ADR、掲載価格、推定OCC(浜松市の旧西区・旧中区・旧北区および湖西市、2024年7月〜2027年3月)と、住所に「舘山寺町」を含む22施設の客室数・価格掲載状況(2026年10月8日時点)。跡地計画は遠州鉄道の2025年3月28日付リリースに基づく。
■ 試算前提
客室売上の目安は「客室数×推定成約ADR×稼働率×365日」で算出。稼働率は通年70%の仮定値で、実績や計画値ではない。ADRは舘山寺町の規模帯別平均(30〜65室帯2万8,300円、97室以上帯1万5,200円、2025年10月〜2026年9月)を用い、レストラン・SPA・商業施設など宿泊以外の収入は含めていない。
■ 限界・留意点
規模帯別の対象はN=2〜5施設と少なく、12か月分の実績がそろわない施設を含むため、帯内平均は1施設の動きで変わりやすい。価格掲載が確認できない施設は公式サイト・電話予約のみで営業している可能性があり、閉館とは判定していない。2026年10月以降の数値は調査時点の先行掲載に基づく推定で、今後変動する。エリア区分は2024年1月の行政区再編前の区割りによる。
- 遠州鉄道株式会社「『ホテル九重』跡地再開発についてのお知らせ」(2025年3月28日)
- 舘山寺温泉観光協会「『ホテル九重』跡地再開発について」(2025年3月28日)
- 日本経済新聞「遠州鉄道、浜名湖畔ホテル跡に複合施設 29年春にも開業」(2025年3月31日)
- マイナビニュース「静岡県浜松市・舘山寺温泉『ホテル九重』跡地に新たな複合施設、2029年春開業へ」(2025年3月31日)
- ホテルバンク「舘山寺温泉『ホテル九重』が10月末で営業終了」(2021年10月19日)
- 浜松市(2024年1月1日 行政区再編:7区から中央区・浜名区・天竜区の3区へ)
- 国土交通省「建築物動態統計調査」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(計画ホテルデータ・静岡県)
- メトロエンジンリサーチ — 推定成約ADR・掲載価格(浜松市旧西区・旧中区・旧北区・湖西市、2024年7月〜2027年3月)、推定OCC(旧西区・2026年7〜9月)、施設マスター(住所「舘山寺町」22施設、2026年10月8日時点)
