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郡山のホテル、2027年に2棟441室増 — 客室ストック+11.6%、推定成約ADR約7,500円の吸収力

投稿日 : 2026.10.07

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郡山のホテル、2027年に2棟441室増 — 客室ストック+11.6%、推定成約ADR約7,500円の吸収力

郡山市では2027年に、ビジネスホテル2棟・計441室が加わる。JR郡山駅西口のアパホテル〈郡山駅前〉新棟(249室・2027年11月開業予定)と、並木地区のダイワリンクホテル郡山(192室・2027年春開業予定)だ。本稿では、市内のホテル系客室ストック(29施設・3,805室)に対する増加率を11.6%と算出し、推定成約ADR・推定OCC・曜日別の埋まり方・駅前の就業人口から、441室を吸収するために必要な需要を試算する。

本記事における指標の定義

  • ADR(平均客室単価):各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。
  • OCC(稼働率):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値、REIT月次公表値との整合性検証で概ね数pt 程度の精度を確認済)。対象は総客室の30%以上をOTAに掲載する施設の固定コホートで、掲載外の客室を消化済み側に数えるため、観光庁「宿泊旅行統計調査」の客室稼働率より高めに出ます。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります。
  • ブッキングカーブ/LT(リードタイム):ブッキングカーブ=チェックイン日に向けたOTA残室数の推移。LT=チェックインまでの日数。本稿はLT45〜LT1の観測のみを使用しています。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(2026年9月28〜29日集計)
2027年の新規供給
441室
2棟(249室+192室)
ホテル系客室ストック
3,805室
郡山市・29施設
客室ストック増加率
+11.6%
441室÷3,805室
推定成約ADR(12か月平均)
¥7,458
2025年9月〜2026年8月・N=50〜52施設
推定OCC(2026年8月)
88.3%
対象27施設/客室1,828室

結論を先に示すと、441室は郡山市のホテル系客室の約1割に相当し、需要が横ばいのまま供給だけが増えれば、市場全体の稼働率を押し下げる規模である。一方で、駅前1km圏には2万人を超える従業者が集まり、火〜木曜の宿泊は前日時点で推定OCC90%前後まで埋まる(2026年9月チェックイン日の曜日別平均)。新規2棟が最も効くのはこの平日の業務需要で、試算上の吸収ラインは1日あたり約270室泊となる。日曜泊と週末の余力をどこまで需要化できるかが、市場全体の稼働を保つうえでの鍵になるだろう。

Key Takeaways
  • — 2027年に2棟441室・+11.6%:アパホテル〈郡山駅前〉新棟249室とダイワリンクホテル郡山192室が開業予定。郡山市のホテル系客室3,805室(29施設)に対する増加率は11.6%。
  • — 推定成約ADRは約7,500円:2025年9月〜2026年8月の12か月平均(対象50〜52施設)。2026年8月は約8,000円で、前年同月比+3.6%。
  • — 平日は前日に推定OCC90.2%:2026年9月チェックイン日の火〜木曜の平均。日曜は76.0%にとどまり、前日時点のOTA残室は平均484室が残る。
  • — 駅前1km圏の従業者は2.03万人:事業所1,819(経済センサス2021年)の業務集積が、直前に手配が固まる平日の出張需要を支える。
  • — 吸収ラインは1日約270室泊:福島県ビジネスホテルの客室稼働率61.3%(2025年通年・確定値)での試算。稼働を保つには需要が約11.6%、年率約5.6%増える必要がある。

2棟441室の開業ファクト — 駅前の隣地展開と、並木地区の複合開発

1棟目は、アパホテルが2026年2月17日に発表したアパホテル〈郡山駅前〉の新棟である。既存棟(89室、2022年12月にリニューアル済み)の隣地に249室を新築し、2027年11月の開業を予定する。JR郡山駅西口から徒歩2分の立地で、新棟には大浴場を設ける。開業後、既存棟は「アパホテル〈郡山駅前南〉」に改称し、2棟で338室の体制となる。福島県内のアパホテルはこれで4棟783室に広がる。施工はりんかい日産建設が担う。駅前の既存拠点の隣地に客室を積み増す展開であり、実績のある立地で規模を拡大する成長戦略といえる。

2棟目は、東日本ダイワが郡山市並木で整備を進める複合施設「リンクスクエア」内のダイワリンクホテル郡山だ。9階建て・192室で、2026年5月に着工し、2027年春の開業を目指す。報道によれば、1階に朝食会場とコンビニ、2階に大浴場とサウナ、3〜9階を客室とする計画である。国土交通省の建築物動態統計調査でも、同ホテルは並木1丁目・地上9階・延床面積5,290㎡・192室・工事完了予定2027年4月として確認できる。なお、東日本ダイワは、郡山駅前で「ダイワロイネットホテル郡山駅前」を運営する大和ハウスグループのホテル事業とは別の事業者である。

郡山市で2027年に開業予定の新規2棟の概要
項目アパホテル〈郡山駅前〉新棟ダイワリンクホテル郡山
客室数249室192室
開業予定2027年11月2027年春
所在地郡山市駅前1丁目(既存棟の隣地)郡山市並木1丁目(複合施設「リンクスクエア」内)
郡山駅からの距離西口から徒歩2分直線で約2.5km
規模・構成大浴場付。既存棟89室と合わせ2棟338室9階建て・延床5,290㎡。大浴場・サウナ、朝食会場、コンビニ併設
事業者アパホテル東日本ダイワ
出典: アパホテル(PR TIMES 2026年2月17日)、トラベルWatch(2026年2月19日)、福島民友新聞(2026年1月23日)、国土交通省「建築物動態統計調査」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成

もう1点、2027年の供給を見るうえで押さえておきたいのが、2026年1月から全館改装で休館している郡山ビューホテル本館である。同館は2026年11月6日に再オープンする予定で、報道では改装前より客室が約30室増えるとされる。本稿の増加率は新設2棟の441室のみで計算しているが、この増室分を加えると2026年11月〜2027年の供給増は約470室の規模になる。

郡山市の客室ストックは29施設・3,805室 — 441室で+11.6%

増加率の分母は、メトロエンジンリサーチが追跡する郡山市内の施設から数え直した。数え方は、2026年6〜8月のいずれかの月に掲載価格の観測がある施設を「営業中」とし、レジャーホテルを除いたうえで、改装休館中の郡山ビューホテル本館(改装前92室)を加えた。この結果、郡山市の客室ストックは61施設・4,540室、そのうちビジネス・シティ・デラックスのホテル系が29施設・3,805室、磐梯熱海温泉を中心とする旅館が23施設・683室となった。

郡山市の客室ストックと441室の比率(2026年6〜8月に掲載価格の観測がある施設)
区分施設数客室数441室の比率
ホテル系(ビジネス・シティ・デラックス)293,805+11.6%
 うち郡山駅1km圏172,347+10.6%(アパ新棟249室のみ)
旅館23683—
その他(ゲストハウス・温泉施設等)952—
合計(レジャーホテル除く)614,540+9.7%
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(2026年6〜8月に掲載価格の観測がある施設。郡山ビューホテル本館は改装前の92室で計上)
郡山市のホテル系客室ストック — 現在と2027年末(予定)
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング、各社公表資料(N=29施設)

441室は、ホテル系ストックに対して+11.6%、レジャーホテルを除く全宿泊施設に対しても+9.7%に相当する。地方の中核都市で、1年のうちにこれだけの客室が加わるのは大きな変化といえる。ただし、2棟の立地は性格が異なる。アパ新棟は郡山駅1km圏(17施設・2,347室)に入り、駅前の業務需要と新幹線の乗降客を正面から取り込む。一方のダイワリンクは駅から直線で約2.5km離れ、半径1.5km圏内の既存ホテル系は2施設・419室にとどまる。駅前の客室が集中する一帯と、住宅地に近い並木地区で、商圏は重なりつつも役割が分かれる構図である。既存ストック比で見た供給の大きさを全国の市区町村と比べる視点は、新規開業ホテルの供給圧ランキング2026-2027で整理している。

郡山市のホテル系施設と2027年の新規2棟(円の大きさ=客室数)
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング、国土交通省「建築物動態統計調査」。ダイワリンクホテル郡山の位置は建築計画の登録地点に基づく概略

推定成約ADRは約7,500円、2026年8月は前年同月比+3.6%

郡山市全体の推定成約ADRは、2025年9月〜2026年8月の12か月平均で約7,500円(対象50〜52施設)だった。前年の同じ12か月(2024年9月〜2025年8月、約7,300円)と比べると+1.9%である。直近の2026年8月は約8,000円で、前年同月(2025年8月・約7,800円)を+3.6%上回った。2026年は1〜8月のすべての月で前年同月を上回っており、上げ幅は+0.4%〜+4.9%の範囲にある。

郡山市の推定成約ADR(月次・年次重ね合わせ)
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(N=50〜52施設、2024年8月〜2026年8月の確定月)

ビジネスホテルに絞ると、郡山市の推定成約ADRは12か月平均で約6,600円(対象25施設)となる。東北と北関東の業務拠点11市と並べると、仙台市青葉区の約9,300円、青森市の約8,300円、秋田市の約7,700円、山形市の約7,600円が上位に並び、郡山市は八戸市・会津若松市・盛岡市(いずれも約6,700〜6,800円)に近い価格帯にある。前年の12か月平均比では−1.3%とほぼ横ばいだが、2026年8月は約7,600円で前年同月比+4.9%と伸びた。業務拠点としての集積を踏まえると単価には上昇余地が残っており、新しい客室が加わることで、価格帯の上側に伸びしろが生まれる可能性がある。まとまった新規供給に単価がどう応えたかは、熊本のビジネスホテル、2年で1,619室の新規供給に単価はどう応えたかが先行事例として参考になる。

東北・北関東の業務拠点都市 ビジネスホテルの推定成約ADR(2025年9月〜2026年8月平均)
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(各市の対象施設数: 仙台市青葉区55〜56、青森市20〜23、秋田市17〜19、山形市20〜24、宇都宮市40〜42、八戸市25〜26、会津若松市10、盛岡市22〜24、郡山市25、福島市18〜21、いわき市35〜38)

推定OCCは88.3%、平日は前日までに90%前後まで埋まる

2026年8月の郡山市の推定OCCは88.3%(対象27施設/客室1,828室、主要予約サイト掲載ベース)だった。業態別では旅館が83.7%(12施設/515室)である。郡山市のビジネスホテル単独は、OTA掲載比率30%以上の施設が10施設に届かず、推定値を出していない。代わりに福島県のビジネスホテルを見ると、2026年8月は86.5%(48施設/5,479室)だった。

曜日による埋まり方の差は大きい。2026年9月のチェックイン日(シルバーウィークの9月19〜23日を除く23日分、対象28〜30施設/客室1,844〜2,015室)について、LT45からLT1までの推定OCCを曜日別に平均すると、火〜木曜はLT45の46.3%から前日(LT1)の90.2%へ上がる。これに対し日曜はLT1でも76.0%にとどまった。火〜木曜は、LT45からLT14までの31日間で21.3pt、LT14から前日までの13日間で22.6ptと、直前の2週間に同じ幅を短期間で積み上げる。出張の手配が直前に固まる、業務需要らしいカーブである。

郡山市 曜日別ブッキングカーブ(推定OCC、2026年9月チェックイン、LT45→LT1)
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(対象28〜30施設/客室1,844〜2,015室、主要予約サイト掲載ベース。9月19〜23日を除く23日分)
郡山市 曜日別の推定OCC推移(2026年9月チェックイン、LT45→LT1)
チェックイン曜日日数LT45LT14LT7LT1LT1時点のOTA残室(平均)
月曜346.4%65.2%74.1%85.8%287室
火〜木曜1046.3%67.6%78.9%90.2%192室
金曜448.6%66.3%73.4%83.8%326室
土曜351.7%70.9%79.2%90.7%187室
日曜343.0%58.8%65.2%76.0%484室
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(郡山市、対象28〜30施設/客室1,844〜2,015室、主要予約サイト掲載ベース)

前日時点のOTA残室は、火〜木曜が平均192室、日曜が平均484室だった。平日は残りわずかな状態で当日を迎える日が多く、9月15〜17日は前日時点の推定OCCが94〜96%に達した。新規の441室は、こうした平日のピークに受け皿を増やす意味を持つ。その一方で、日曜泊には前日でも約480室の余力が残っており、ここが市場全体にとっての最大の伸びしろになる。

駅前1km圏の従業者は2.03万人 — 平日需要を支える業務集積

郡山駅を中心とする半径1km圏には、事業所が1,819、従業者が2.03万人集まる(総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査」2021年)。半径2kmに広げると、事業所3,822・従業者4.13万人となる。そのうちオフィス系の従業者の比率は1km圏で18.6%で、卸売・小売や医療・サービスを含めた幅広い業種の集積が、駅前の平日需要を下支えしている。

ダイワリンクの建つ並木1丁目周辺(半径1km)は、事業所1,039・従業者1.38万人で、オフィス系比率は11.8%と駅前より低い。居住人口は半径1.5kmで3.32万人と、駅前の3.03万人を上回る。業務地の駅前と、住宅地に近い並木地区で、商圏の性格が異なることがデータにも表れている。

郡山駅 周辺の就業・居住
事業所数(1km圏)1,819
従業者数(1km圏)20,253人
従業者数(2km圏)41,288人
オフィス系比率(1km圏)18.6%
居住人口 2025年(1.5km圏)30,266人
居住人口 2040年推計27,288人(2025年比−9.8%)
出典: 総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査」(2021年)、国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口)

駅から半径1.5kmの居住人口は2025年の3.03万人から2040年には2.73万人へ、−9.8%の減少が見込まれる。高齢者の比率は27.3%である。この数字は住民の数であって、滞在者や通過者の数ではない。ビジネスホテルの宿泊需要は、住民ではなく、出張者・転勤者・広域から集まる来訪者から生まれるため、居住人口の減少がそのまま宿泊需要の減少を意味するわけではない。むしろ長期的には、駅前の業務集積と、県の中央に位置する交通結節点としての広域集客力が、需要の土台になると考えられる。

郡山駅 半径1.5km圏の居住人口(250mメッシュ、2020年)
出典: 国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口・R6国政局推計)(居住人口であり滞在人口ではありません)

地価も上昇が続く。郡山駅前1丁目の地価公示(商業地、容積率600%)は2026年1月1日時点で1㎡あたり41.5万円、前年比+4.8%で、2022年の36.2万円から4年で+14.6%上がった。駅前2丁目、大町1丁目の商業地も前年比+4.6〜+7.6%の上昇である。駅前の土地の値上がりは、既存ホテルの資産価値を押し上げる一方、新規開発の採算ラインを引き上げる要因にもなる。

郡山駅周辺の地価公示(商業地)2022年と2026年
地価公示地点(商業地)駅からの距離2022年2026年前年比
駅前1丁目112番150m362,000円/㎡415,000円/㎡+4.8%
駅前2丁目141番外270m186,000円/㎡227,000円/㎡+4.6%
大町1丁目283番1外330m133,000円/㎡170,000円/㎡+7.6%
出典: 国土交通省 不動産情報ライブラリ(地価公示)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成。駅からの距離は地価公示の表記

441室を吸収する需要シナリオ — 1日あたり約270室泊が目安

新規441室が年間に提供できる客室は、441室×365日=16万965室泊である。これを埋めるのに必要な需要を、稼働率の前提を変えて試算した。前提には、当社の推定OCCではなく、観光庁「宿泊旅行統計調査」の客室稼働率を用いる。推定OCCは掲載外の客室を消化済み側に数えるため、実際の稼働水準の試算には向かないからである。

観光庁の2025年確定値では、福島県のビジネスホテルの客室稼働率は61.3%、全国は75.3%だった。東北の他県は青森県73.1%、岩手県71.3%、宮城県69.5%、山形県69.0%、秋田県67.8%である。福島県の水準をそのまま当てはめると、441室を埋めるのに必要な需要は年間約9万8,700室泊、1日あたり約270室泊となる。全国水準の75.3%なら1日あたり約330室泊である。

ビジネスホテルの客室稼働率(2025年・確定値)
出典: 観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年(確定値)第8表
441室を埋めるのに必要な室泊数と客室売上の目安(稼働率の前提別)
稼働率の前提必要な室泊数(年間)1日あたり客室売上の目安(年間)
55.0%88,531約243室泊約5.8億円
61.3%(福島県ビジネスホテル 2025年)98,672約270室泊約6.5億円
70.0%112,676約309室泊約7.4億円
75.3%(全国ビジネスホテル 2025年)121,207約332室泊約8.0億円
出典: 観光庁「宿泊旅行統計調査」、メトロエンジンリサーチ&コンサルティングより作成。客室売上は郡山市ビジネスホテルの推定成約ADR(12か月平均6,590円・税抜相当、推定値)を仮置きした簡易試算
441室を埋めるのに必要な1日あたり室泊数と、曜日別のOTA残室(前日時点)
出典: 観光庁「宿泊旅行統計調査」、メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(OTA残室は郡山市の対象28〜30施設の平均)

需要が現状のまま横ばいで、441室だけが加わった場合、福島県のビジネスホテル水準(61.3%)を仮に当てはめた市場全体の稼働率は、3,805室から4,246室への拡大で54.9%まで下がる計算になる。稼働を保つには、郡山市のホテル系の宿泊需要が約11.6%増える必要がある。2027年までの2年で換算すると、年率で約5.6%の伸びだ。東北の他都市で新規供給と需要の吸収力を見た分析としては、北東北3県の新規供給と需給吸収力の診断もあわせて参照されたい。

感度分析:稼働率×推定成約ADRで見た新規441室の客室売上

上の表は単価を郡山市ビジネスホテルの12か月平均に固定している。単価の前提も動かすと、新規2棟の客室売上の幅は次のとおりとなる。単価は、本文で比較した郡山市・山形市・仙台市青葉区のビジネスホテル水準(いずれも推定成約ADR)を置いた。

新規441室の年間客室売上(稼働率×推定成約ADRの2軸感度・簡易試算)
推定成約ADR\通年稼働率55.0%61.3%(福島県BH 2025年)70.0%75.3%(全国BH 2025年)
6,590円(郡山市BH 12か月平均)約5.8億円約6.5億円約7.4億円約8.0億円
7,600円(郡山市BH 2026年8月・山形市水準)約6.7億円約7.5億円約8.6億円約9.2億円
9,300円(仙台市青葉区BH水準)約8.2億円約9.2億円約10.5億円約11.3億円

出典: 観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年(確定値)、メトロエンジンリサーチ&コンサルティングより作成。客室売上=441室×365日×稼働率×推定成約ADR(税抜相当・推定値)。網掛けは本文の基準ケース。新規施設の実際の料金設定・稼働とは異なる簡易試算。

この需要をどこから生むか。前日時点のOTA残室と比べると、火〜木曜の192室は1日あたり約270室泊という目安を下回り、平日の取りこぼし需要だけでは埋めきれない。新規2棟が大浴場やサウナといった設備で選ばれ、既存施設からの需要移動を伴いながら市場を広げていく形が想定される。そのうえで、日曜の約480室、金曜の約330室という余力を、週末の来訪者や連泊の出張需要として取り込めれば、市場全体の稼働を保ちやすくなる。県の中央にある交通結節点として、コンベンションやスポーツ大会、会津・磐梯方面への観光の前泊といった広域需要を組み合わせることが、平日以外の伸びしろを埋める方向性になるだろう。

試算の前提と限界:必要室泊数は新規441室のみの計算で、郡山ビューホテル本館の増室(約30室)や今後の閉館・休館は織り込んでいない。稼働率は福島県・全国の県平均であり、郡山市単独の公式値ではない。客室売上は推定成約ADRを仮置きした目安で、新規施設の実際の料金設定とは異なる。簡易試算であり、実際の投資判断には詳細なフィージビリティ・スタディが必要である。

投資家・開発担当への示唆

平日の業務需要は厚い

駅前1km圏の従業者2.03万人、火〜木曜の前日時点の推定OCC90.2%(2026年9月チェックイン日の平均)。新規2棟が最も効くのは、直前に手配が固まる平日の出張需要である。

日曜泊が最大の伸びしろ

日曜は前日でも推定OCC76.0%(2026年9月チェックイン日の平均)、OTA残室は平均484室。週末来訪・連泊・イベントの前泊を取り込めるかが、市場全体の稼働を左右する。

単価はまだ上に余地

ビジネスホテルの推定成約ADRは約6,600円。仙台市青葉区(約9,300円)や山形市(約7,600円)の水準まで上に余地があり、2026年8月は前年同月比+4.9%と上向いている。

東北の地銀や地方都市型の私募ファンドにとって、郡山市は、地価の上昇と平日の業務需要という二つの支えを持つ市場である。2027年の441室は規模として小さくないが、駅前隣地への積み増しと、住宅地に近い複合開発という異なる立地の組み合わせであり、市場の受け皿を広げる供給といえる。既存ホテルのオーナーにとっては、平日の直前需要を丁寧に取り込みつつ、日曜泊と週末の需要づくりに早めに手を打つことで、新規開業後の市場でも存在感を高める機会になるだろう。観測を続け、2027年の開業前後で曜日別の埋まり方がどう変わるかを追っていきたい。

開業予定に関する注意:2棟の開業時期・客室数は、調査時点(2026年9月)の公表情報に基づく。工事の進捗等により変更される可能性がある。本稿の推定成約ADRは確定月(2026年8月まで)のみを使用し、2026年9月以降の掲載ベースの推計値は含めていない。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

推定成約ADR・推定OCC・曜日別ブッキングカーブ・客室ストックは、メトロエンジンリサーチ&コンサルティングがOTA上の公開価格と在庫から集計した(2026年9月28〜29日集計。推定成約ADRは2026年8月までの確定月のみ)。新規2棟の客室数・開業時期は各社の発表と報道、稼働率の試算前提は観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年確定値、商圏の就業・居住は経済センサス-活動調査(2021年)と国土数値情報、地価は地価公示による。

■ 試算前提

必要室泊数=441室×365日×稼働率(55.0%・61.3%・70.0%・75.3%の4水準)。客室売上=必要室泊数×推定成約ADR(基準は郡山市ビジネスホテルの12か月平均6,590円・税抜相当、感度分析では7,600円・9,300円も置いた)。増加率の分母は、2026年6〜8月に掲載価格の観測があるホテル系29施設・3,805室(レジャーホテルを除き、改装休館中の郡山ビューホテル本館は改装前の92室で計上)。

■ 限界・留意点

推定OCCは掲載外の客室を消化済み側に数えるため、観光庁の客室稼働率より高めに出る。郡山市のビジネスホテル単独の推定OCCは対象が10施設に満たず算出していない。郡山ビューホテル本館の増室(約30室)や今後の閉館・休館は試算に含めていない。開業時期・客室数は2026年9月時点の公表情報で、変更される可能性がある。

■ 市場データ

■ 政府統計・公的データ

■ ニュース・プレスリリース

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