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合宿免許108校の3km圏、客室は中央値135室 — 卒業者が人口比3.6倍の山形は年28万人泊規模

投稿日 : 2026.10.01

指定なし

投資・開発

合宿免許108校の3km圏、客室は中央値135室 — 卒業者が人口比3.6倍の山形は年28万人泊規模

運転免許を取る若者の一部は、地元ではなく地方の教習所に2週間ほど泊まり込んで免許を取る。いわゆる合宿免許である。普通車AT限定なら最短14日前後で卒業でき、その間の宿泊は教習所の寮か、周辺のホテル・旅館が受け持つ。観光でも出張でもない、教育目的の長期滞在需要が、毎年決まった地域に一定量流れ込んでいることになる。

本稿では、民間の合宿免許予約サイト1社に掲載されている教習所108校(36道府県、2026年9月時点)の所在地を緯度経度化し、半径3km圏にある宿泊施設と客室数を実測した。あわせて各校が案内している宿舎の種類と、ホテル・旅館を宿舎に使う場合の距離を集計した。需要側の規模は、警察庁「運転免許統計(令和7年版)」の都道府県別卒業者数から推計している。結論から書くと、3km圏の客室数は中央値135室で、16校は3km圏にOTA等で販売される客室がない。それでも108校のうち59校はホテル・旅館などの一般の宿泊施設を宿舎に組み込んでおり、提携先までの距離は中央値3.65kmと、徒歩圏よりひと回り外に広がっていた。

本記事における指標の定義

  • ADR(平均客室単価)=各施設がOTA等で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。
  • OCC(稼働率)=本稿で引用する月別の客室稼働率は、観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年確定値の公表値(ビジネスホテル)です。
  • 3km圏客室数=教習所の所在地点から半径3km以内に立地する宿泊施設の客室数合計。対象はメトロエンジンリサーチが追跡する国内約168,000施設のうち、2025年9月〜2026年8月に販売価格を観測した施設。レジャーホテル・キャンプ場は除き、OTA等に掲載されていない旅館・民宿・簡易宿所、教習所が自ら運営する寮・宿舎は含みません。
  • 合宿免許の掲載校=民間の合宿免許予約サイト1社に2026年9月時点で掲載されていた教習所(N=108校)。合宿免許を行う教習所の全数ではありません。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング/警察庁「運転免許統計(令和7年版)」/総務省「人口推計」/観光庁「宿泊旅行統計調査」
指定自動車教習所
1,277
2025年末・全国
3km圏の客室数
135室
掲載108校の中央値
3km圏 客室ゼロ
16校
108校の14.8%
一般の宿を宿舎に使う
59校
108校の54.6%
提携宿までの距離
3.65km
114組の中央値
Key Takeaways
  • — 普通免許の教習所卒業者を人口1,000人あたりで見ると全国は8.35人。山形県は29.8人(全国比3.57倍)、鳥取県は24.3人(2.91倍)で、東京都は5.1人(0.61倍)にとどまる。卒業者の分布は都市部より一部の地方県に厚い。
  • — 全国平均を上回る分を1人13泊で置くと、山形県は約28万人泊で、同県の2025年延べ宿泊者数の6.0%に相当する。鳥取県は約11万人泊(4.3%)。
  • — 合宿免許108校の半径3km圏の客室数は中央値135室。0室が16校、100室未満が46校ある一方、1,000室以上の校も14校あり、立地の幅は大きい。圏内客室の74.0%はビジネスホテル。
  • — 59校はホテル・旅館などを宿舎に組み込んでいる。当社の宿泊施設データで照合できた提携宿114組のうち、3km以内は51組(44.7%)、5km超は43組(37.7%)。受け皿は送迎を前提に隣の町まで広がる。
  • — 合宿の繁忙期にあたる2月、山形・鳥取・福井・新潟・島根の5県はいずれもビジネスホテルの稼働率が年間値を下回っていた(新潟県は53.8%、年間値64.9%)。需要の山がホテル側の谷に重なる。

教習所1,277校・卒業者150.5万人 — 学校は10年で55校減、卒業者は150万人台を維持

まず需要の母数を確認する。警察庁「運転免許統計(令和7年版)」によれば、公安委員会が指定する指定自動車教習所は2025年末時点で1,277校、2025年中の卒業者は150万5,044人だった。このうち普通免許(第一種)の卒業者が103万3,525人で、全体の68.7%を占める。運転免許試験の合格者に占める指定教習所卒業者の割合は97.8%で、免許取得のほぼすべてが教習所を経由している。

10年前と比べると、教習所の数は2016年末の1,332校から55校(4.1%)減った。一方で卒業者数は2021年の172万人をピークに減少したものの、2023年以降は150万人台で推移している。教習所1校あたりの卒業者は2016年の1,172人から2025年は1,179人で、ほぼ横ばいである。合宿免許は、こうした教習所の分布のもとで、遠方から教習生を受け入れる仕組みとして定着している。

指定自動車教習所数と卒業者数の推移(2016〜2025年)
出典:警察庁「運転免許統計(令和7年版)」よりホテルバンク編集部作成。教習所数は各年末現在。

では、その卒業者はどこで免許を取っているのか。都道府県別の卒業者数を総務省「人口推計」(2024年10月1日現在)の人口で割ると、地域差がはっきり出る。普通免許の卒業者は全国で人口1,000人あたり8.35人だが、山形県は29.8人と全国の3.57倍に達し、鳥取県が24.3人(2.91倍)、福井県が16.9人(2.02倍)、新潟県と島根県が15.1人(1.81倍・1.80倍)と続く。反対に東京都は5.1人(0.61倍)、神奈川県は5.5人(0.65倍)、大阪府は6.3人(0.76倍)である(人口比の下位3都県は東京都・神奈川県・奈良県〈0.67倍〉)。

卒業者の数は、教習所の所在地で数えられる。したがって人口比で全国平均を大きく上回る県は、他県から来た教習生を受け入れている県と読むのが自然だろう。もちろん、地方ほど自動車の保有率が高く免許取得率も高いこと、若年人口の比率に差があることも効いている。ただし秋田県(0.90倍)や青森県(0.89倍)のように全国平均を下回る地方県もあるため、倍率の大きさを地方性だけで説明するのは難しい。

普通免許の教習所卒業者数(人口1,000人あたり、2025年)— 上位12県と東京都・神奈川県・大阪府
出典:警察庁「運転免許統計(令和7年版)」、総務省「人口推計(2024年10月1日現在)」よりホテルバンク編集部作成。卒業者数は教習所所在地ベース、普通免許(第一種、AT限定を含む)。

規模感 — 山形県は全国平均を2.2万人上回り、1人13泊で年28万人泊

受け入れの規模を宿泊の単位に置き換えてみる。各県の普通免許卒業者数から「人口に全国平均の卒業率を掛けた値」を引き、上回った人数を超過卒業者とした。これに1人あたりの宿泊数を掛ければ、合宿需要の規模感がつかめる。宿泊数は、掲載108校の普通車AT最短日数の中央値が14日であることから、入校日から卒業日までの13泊を置いた。

山形県の超過卒業者は2万1,723人で、13泊を掛けると約28.2万人泊になる。観光庁「宿泊旅行統計調査」による山形県の2025年の延べ宿泊者数は473万9,560人泊なので、その6.0%に相当する規模である。鳥取県は超過8,485人・約11.0万人泊で、延べ宿泊者数の4.3%にあたる。人口の多い静岡県も超過2万577人と大きく、人泊換算では約26.8万人泊になる。

表1 合宿需要の規模感 — 普通免許卒業者の人口比上位8県(2025年)
都道府県普通免許卒業者人口1,000人あたり全国比超過卒業者13泊換算(人泊)延べ宿泊者数比掲載校
山形県30,16329.83.57倍21,723282,3996.0%7校
鳥取県12,91824.32.91倍8,485110,3054.3%3校
福井県12,49116.92.02倍6,32282,1862.1%2校
新潟県31,67515.11.81倍14,152183,9761.8%11校
島根県9,66515.11.80倍4,30555,9651.6%1校
静岡県50,02114.21.70倍20,577267,5011.2%4校
徳島県9,50413.91.66倍3,78549,2051.8%2校
香川県12,33913.51.61倍4,68460,8921.2%2校
出典:警察庁「運転免許統計(令和7年版)」、総務省「人口推計(2024年10月1日現在)」、観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年確定値、メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(掲載校数)よりホテルバンク編集部作成。超過卒業者=卒業者数−人口×全国の卒業率(8.35人/1,000人)。延べ宿泊者数比は13泊換算値を各県の2025年延べ宿泊者数で割った規模感の目安。

この数字は、合宿需要の正確な推計ではなく規模感の目安として読んでほしい。超過分には隣県から通学する教習生も含まれうるし、教習所の寮に泊まる教習生が宿泊旅行統計の集計対象に入るかどうかは、寮の許可形態によって異なる。それでも、観光客数の変動とは別の要因で動く数十万人泊単位の需要が、特定の県に毎年立っていることは確かである。

13泊・超過分すべてを合宿由来とみなす置き方は、泊数の面では控えめで、需要の帰属の面では強めの仮定である。そこで、超過卒業者のうち合宿由来とみなす割合(100%・75%・50%)と1人あたりの泊数(AT最短の13泊、MT並みの15泊、延長保証の上限まで使う18泊)の2軸で振ってみた。

表2 人泊換算の感度 — 合宿由来の割合 × 1人あたり泊数(山形県・鳥取県)
都道府県合宿由来の割合13泊15泊18泊
山形県100%28.2万人泊(6.0%)32.6万人泊(6.9%)39.1万人泊(8.3%)
山形県75%21.2万人泊(4.5%)24.4万人泊(5.2%)29.3万人泊(6.2%)
山形県50%14.1万人泊(3.0%)16.3万人泊(3.4%)19.6万人泊(4.1%)
鳥取県100%11.0万人泊(4.3%)12.7万人泊(4.9%)15.3万人泊(5.9%)
鳥取県75%8.3万人泊(3.2%)9.5万人泊(3.7%)11.5万人泊(4.5%)
鳥取県50%5.5万人泊(2.1%)6.4万人泊(2.5%)7.6万人泊(3.0%)
出典:表1と同じ。値は超過卒業者×割合×泊数、括弧内は2025年の延べ宿泊者数に対する比率。太字は本文の基準ケース。15泊はMTの最短日数(ATより2日前後長い)、18泊は最短13泊に延長保証の上限5泊を足した値。

合宿由来を半分、泊数を最短の13泊に置く最も保守的なケースでも、山形県は約14.1万人泊(3.0%)、鳥取県は約5.5万人泊(2.1%)の規模が残る。逆に延長保証の上限まで泊まる場合、山形県は約39.1万人泊(8.3%)まで広がる。どの置き方でも、山形県では延べ宿泊者数の3.0〜8.3%、鳥取県では2.1〜5.9%の規模にあたり、県単位で見て無視できない需要であることは変わらない。

108校の3km圏 — 客室は中央値135室、0室が16校・1,000室以上が14校

次に、合宿免許を提供する教習所の周辺にどれだけ客室があるかを測った。対象は民間の合宿免許予約サイト1社の掲載校108校で、新潟県が11校、山形県と群馬県が各7校、岩手県と宮崎県が各6校と、東日本の日本海側と北関東に多い。各校の所在地点から半径3km以内にある宿泊施設を集計すると、108校の圏内にはのべ940施設・64,353室があり(重複を除く)、1校あたりの客室数は中央値135室だった。

分布の幅は大きい。3km圏に販売中の客室が1室もない学校が16校、1〜99室が30校で、あわせて46校(42.6%)は100室未満である。一方で1,000室以上の学校も14校あり、広島市・新潟市・高知市・宮崎市・長崎市など県庁所在地の市街地に立つ学校がこの層に入る。教習所は広いコースを必要とするため郊外や農村部に立地しやすく、多くの学校は宿泊施設の集積から離れた場所にある。特定の施設を中心に圏内の客室を実測する同じ手法は、がん拠点病院468施設の2km圏の集計でも用いている。

合宿免許108校の半径3km圏の客室数(宿舎の種類別、校数)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(N=108校、圏内940施設)。宿舎の種類は各校の掲載ページで案内されている宿泊施設の表記による分類。

圏内の客室の中身を見ると、74.0%がビジネスホテルの客室である。3km圏に販売価格を観測した施設が3施設以上ある56校について推定成約ADRの中央値をとると7,200円(四分位は6,400円〜8,400円)で、56校中39校が8,000円未満だった。温泉地に近い学校(赤湯温泉の近くなど)では旅館が入って水準が上がるが、多くの学校の周辺にあるのは、地方都市のエコノミー価格帯のビジネスホテルである。

合宿免許108校の位置と半径3km圏の客室数(円の大きさ=客室数)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(N=108校)。位置は各校の掲載ページの地図情報による。

宿舎の実態 — 59校がホテル・旅館を組み込み、提携先の中央値は3.65km

合宿免許の宿泊は、学校によって受け皿が違う。各校の掲載ページで案内されている宿泊施設を分類すると、49校は自校の寮・専用宿舎だけで宿泊を完結させ、59校はホテル・旅館・ペンション・ゲストハウスなど一般の宿泊施設を宿舎の選択肢に含めていた。一般の宿泊施設を使う学校の3km圏客室数は中央値186室で、寮・専用宿舎のみの学校(中央値112室)より多い。周辺に客室の集積がある学校ほど、外部の宿泊施設を宿舎として組み込みやすいと考えられる。

ただし、3km圏に客室がない学校でも一般の宿泊施設を使っている例は多い。一般の宿泊施設を宿舎に含む59校のうち11校は、3km圏の客室が0室である。そこで、各校が宿舎として案内している施設名を当社の宿泊施設データと照合したところ、57校・114組の「学校と提携宿」の組み合わせが特定できた。学校から提携宿までの直線距離は中央値3.65kmで、3km以内が51組(44.7%)、3〜5kmが20組、5〜10kmが36組、10km超が7組だった。送迎バスを前提に、隣接する市街地や温泉地の宿を使う運用が一般的であることがわかる。

学校から提携宿までの直線距離(114組)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング。各校の掲載ページで宿舎として案内されている施設名を当社の宿泊施設データと照合できた57校・114組。直線距離。

提携宿114組のうち90組はビジネスホテルで、客室数の中央値は99室だった。合宿の教習生は平日も週末も同じ部屋に泊まり続け、日中は教習所で過ごす。シングルやツインを2週間単位でまとめて使う滞在は、ビジネスホテルの客室と運用にそのまま乗りやすい。掲載ページの案内では、最短日数から3〜5泊の延長を保証する学校が多く(保証泊数の記載がある47校のうち44校)、検定の再受験などで滞在が延びる分も宿泊側の需要になる。連泊を前提にした客室の単価と運営コストの組み立て方は、長期滞在ホテルのビジネスモデルで詳しく分析している。

もう一つ特徴的なのは、需要が構造的に域外から来ることである。108校のうち75校は、学校の周辺市町村に住民票や実家がある人の入校を受け付けていないと案内している。地元の人は通学で取れるため、合宿枠は遠方の教習生に振り向けられている。宿泊側から見れば、地元の観光の人気やイベントの有無とは別の要因で動く需要である。観光とは別の要因で立つ長期滞在需要としては、洋上風力の基地港湾7港の周辺客室も参考になる。

受け入れ上位4県の13校 — 市街地型と郊外型で宿の使い方が分かれる

人口比の卒業者数が大きい山形・鳥取・福井・島根の4県について、掲載13校の周辺環境を並べた。市街地に近い学校(鶴岡・福井・米子)は3km圏に1,000室以上を抱え、ビジネスホテルを宿舎に組み込みやすい。郊外の学校は、3km圏の客室が数十室程度でも、5〜9km先の市街地のホテルを送迎で使う形が見られる。

表3 受け入れ上位4県の掲載13校 — 3km圏の客室と宿舎の種類(2026年9月時点)
都道府県教習所3km圏施設3km圏客室宿舎の種類最寄りの提携宿
山形県鶴岡自動車学園131,373室寮+一般の宿0.3km
山形県マツキドライビングスクール米沢松岬校14977室寮・専用宿舎—
山形県マツキドライビングスクール赤湯校15226室寮・専用宿舎—
山形県マツキドライビングスクール 山形中央校292室寮+一般の宿5.3km
山形県マツキドライビングスクール長井校381室寮・専用宿舎—
山形県関東自動車学校庄内余目112室寮+一般の宿9.1km
山形県マツキドライビングスクールさくらんぼ校00室寮+一般の宿7.5km
鳥取県山陰中央自動車学校261,226室寮+一般の宿4.0km
鳥取県鳥取県自動車学校859室寮+一般の宿5.3km
鳥取県倉吉自動車学校00室寮+一般の宿9.3km
福井県福井自動車学校222,294室一般の宿2.2km
福井県大野自動車学校788室寮・専用宿舎—
島根県Mランド益田校113室寮・専用宿舎—
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティングよりホテルバンク編集部作成。宿舎の種類は2026年9月時点の掲載ページの案内による。「最寄りの提携宿」は宿舎として案内される一般の宿泊施設のうち当社の宿泊施設データと照合できた施設までの直線距離。

山形県では、7校中4校が寮・専用宿舎を持ちながら一般の宿泊施設も併用している。同じ学校グループの中でも、寮で完結させる学校と市街地のホテルを組み込む学校があり、宿の使い方は学校ごとに異なる。また、108校全体を見ると、学校が校内宿舎・専用宿舎として案内する施設の中にも「ホテル」「ペンション」を名乗る施設が複数ある。宿泊施設の建物が教習所の宿舎として使われる経路も存在するということである。

季節の重なり方 — 合宿が混む2月、受け入れ5県のビジネスホテル稼働は年間値を下回る

合宿免許の予約サイトは、高校3年生の卒業期にあたる2〜3月入校を最も混み合う時期として案内している。夏休みの8〜9月がこれに次ぐ。一方、宿泊側の繁閑はどうか。観光庁「宿泊旅行統計調査」の2025年確定値から、受け入れの多い5県のビジネスホテルの月別客室稼働率を並べた。

ビジネスホテルの月別客室稼働率(2025年)— 合宿の受け入れ上位5県と全国
出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年(令和7年)1〜12月 確定値(第8表)よりホテルバンク編集部作成。本文の「年間値」は同表の年計(1〜12月)の客室稼働率。

2月の稼働率は、5県すべてで年間値を下回った。新潟県は2025年2月が53.8%で年間値64.9%より11.1pt低く、島根県は57.5%(年間値67.7%)、鳥取県は60.6%(同68.5%)、福井県は68.8%(同74.0%)、山形県は67.1%(同69.0%)だった。全国のビジネスホテルは2月に74.3%あり、地方の日本海側で冬場に稼働が落ちる構図が読み取れる。合宿の繁忙期は、これらの県のホテルが空室を抱えやすい時期に重なっている。

夏の8〜9月は事情が異なる。8月の稼働率は5県とも年間値を上回っており、観光需要とぶつかる時期である。合宿需要の受け入れを検討する宿にとっては、冬から春先のまとまった連泊を取り込み、夏の観光ピークは通常の販売に回す、という年間の組み合わせ方が考えやすい。

宿泊事業者にとっての3つの立地類型

ここまでの集計を、宿泊事業者と投資家の視点で3つの類型に整理した。区分は3km圏の客室数と宿舎の使い方によるホテルバンク編集部の分類である。

類型A市街地の受け皿型

3km圏300室以上・一般の宿を併用(25校)
学校の近くにビジネスホテルの集積があり、提携宿の多くが3km以内にある。2週間単位の連泊を冬〜春の稼働の下支えとして取り込みやすい。学校側の宿舎が埋まる繁忙期に、追加の受け皿として声がかかる余地がある。

類型B送迎でつながる隣町型

3km圏100室未満・一般の宿を併用(23校)
学校の周辺に客室はほとんどないが、5〜10km先の市街地や温泉地の宿が送迎で宿舎になっている。距離があっても需要は届くため、教習所の所在地が商圏の外に見える宿にも取り込みの機会がある。

類型C寮で完結する郊外型

寮・専用宿舎のみ(49校)
宿泊は学校の寮で完結しており、一般の宿泊施設への流入は小さい。宿舎の建て替えや運営の外部委託、既存の宿泊施設の転用が論点になりやすく、遊休施設を持つ事業者にとっては別の形の機会になる。

類型Aの学校周辺では、ビジネスホテルのシングル・ツインを長期連泊向けに仕立てたプランがそのまま受け皿になる。類型Bでは、送迎ルート上にある宿が学校と直接つながることが入口になる。いずれの類型でも、需要は毎年ほぼ同じ時期に、ほぼ同じ規模で立つ。観光や出張と違って予測が立てやすいことが、この需要のいちばんの特徴だろう。

なお、3km圏に客室がない16校のうち11校は一般の宿泊施設を宿舎に含めている。受け皿は既に隣町に存在しており、これらの学校の近くに新たな客室を置く場合には、送迎を含めた現状の運用との比較で需要を見積もる必要がある。

宿向け:このテーマに効くプラン名のヒント

ビジネスホテル × 連泊で公開されているプラン名(N=650)に多い訴求要素 ——

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※公開プラン名の集計にもとづく傾向で、命名が販売を生む因果を示すものではありません。市場×命名の深掘りは命名ベンチマーク/イベント記事をご参照ください。

よくある質問

Q. 合宿免許の教習生は1人何泊するのか。
A. 掲載108校の普通車AT限定の最短日数は中央値14日で、入校日から卒業日までおおむね13泊になる。MTはさらに2日前後長い。検定の再受験などで延びた場合に3〜5泊の延長を保証する学校が多い。

Q. 合宿免許を受け入れている教習所は全国に何校あるのか。
A. 全数を示す公的統計はない。指定自動車教習所は全国に1,277校(2025年末)あり、本稿はそのうち民間の合宿免許予約サイト1社に掲載されていた108校を対象にした。複数のサイトを合わせると対象校はさらに増える。

Q. 教習所の近くにホテルがないと合宿需要は取り込めないのか。
A. 提携宿114組の距離は中央値3.65kmで、5km超が37.7%ある。送迎を前提に隣の市街地や温泉地の宿が宿舎になっている例が多く、3km圏の外でも受け皿になりうる。

Q. 合宿需要が大きいのはどの県か。
A. 普通免許の卒業者を人口比で見ると、山形県(全国比3.57倍)、鳥取県(2.91倍)、福井県(2.02倍)、新潟県(1.81倍)、島根県(1.80倍)が上位になる。

参考資料・出典一覧

■ データソース

合宿免許の教習所は、民間の合宿免許予約サイト1社に2026年9月時点で掲載されていた108校を対象とし、各校の掲載ページにある所在地・地図情報・宿舎の案内・最短日数・延長保証・入校条件を集計した。位置は掲載ページの地図情報を用い、国土地理院のジオコーディング結果と照合した。宿泊施設はメトロエンジンリサーチ&コンサルティングが追跡する施設のうち、2025年9月〜2026年8月に販売価格を観測した施設の所在地・客室数を用い、各校の半径3km圏を集計した(レジャーホテル・キャンプ場を除く)。推定成約ADRは同期間の施設別月次値の平均を、3施設以上ある56校について中央値にしたもの。提携宿は、宿舎として案内されている施設名を当社の宿泊施設データの施設名と照合できた57校・114組。

■ 試算前提

超過卒業者は、各都道府県の普通免許(第一種)の教習所卒業者数から、人口に全国の卒業率(人口1,000人あたり8.35人)を掛けた値を引いたもの。人泊換算は超過卒業者×13泊(掲載108校の普通車AT最短日数の中央値14日から入校日〜卒業日の泊数を置いた)で、延べ宿泊者数比は観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年確定値の各県延べ宿泊者数に対する比率。いずれも規模感の目安であり、合宿需要そのものの推計値ではない。表2の感度分析では、超過卒業者のうち合宿由来とみなす割合を100%・75%・50%、1人あたり泊数を13泊・15泊・18泊の3段階で振った。ビジネスホテルの「年間値」は宿泊旅行統計調査 第8表の年計(1〜12月)の客室稼働率。立地類型の区分はホテルバンク編集部による。

■ 限界・留意点

掲載108校は合宿免許を行う教習所の一部で、他の予約サイトのみに掲載される学校や学校独自の募集は含まない。圏内客室数は直線距離による集計で、道路距離や送迎の所要時間は考慮していない。OTA等に掲載されていない旅館・民宿や、教習所が運営する寮・宿舎は圏内客室数に含まない。提携宿は施設名の照合によるため、照合できなかった宿舎や、同名の別施設との取り違えの可能性が残る。卒業者の人口比は、自動車依存度や若年人口の構成の違いも反映する。

■ 市場データ

■ 政府統計・公的データ

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