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大箱は最後に埋まるのか — 客室規模別に見る在庫消化スピードの差

投稿日 : 2026.08.13

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大箱は最後に埋まるのか — 客室規模別に見る在庫消化スピードの差

客室数200室を超える大型ホテルは、埋まるのが遅い——業界でしばしば語られてきた経験則である。小さな宿は数室売れば満室になり、大箱は最後まで在庫が残る。直感的には正しく聞こえる。しかし、これを同一チェックイン日・同一リードタイム断面で実測すると、結論は逆転する。

本稿では、2026年のお盆(8月13日〜16日)を主対象に、全国7都道府県・4,573施設の客室在庫の推移を客室規模別6階層に分けて集計した。加えて、7月の週末とゴールデンウィークを対照期間に置き、規模と在庫消化の関係が季節を越えて再現するかを検証する。結論を先に述べれば、在庫消化率は客室規模とともに単調に上昇する。それでも「小箱が先に埋まる」ように見えるのは、まったく別の理由による。

本記事における指標の定義

  • LT(リードタイム):チェックイン日までの日数。LT90は90日前、LT0は当日を指す。本記事ではLT90以内の観測のみを用いる。
  • 在庫消化率:各施設の総客室数に対して、OTA等の販売在庫から消化された客室数の割合。(総客室数 − 残室数)÷ 総客室数で算出した推定値。個別施設の値は開示せず、規模帯ごとの中央値のみを用いる。OTA等で販売される在庫の消化状況に基づく推定であり、施設全体の実稼働率とは異なります。
  • 早期完売LT:在庫が公開されたのちに残室数が初めて0室に到達したリードタイム。値が大きいほど早い時点で完売したことを意味する。
  • OTA公開枠:観測期間中にOTA等で確認できた在庫の最大値が、総客室数に占める割合。本記事では公開枠が総客室数の30%以上の施設のみを集計対象とした。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ(観測時点:2026年8月9日)
Key Takeaways
  • — LT90(約3か月前)で25.8ポイント差 — 在庫消化率の中央値は1〜9室で25.0%、200室以上で50.8%。「大箱は最後に埋まる」は中央値のレベルでは支持されない。
  • — 残室0の発生率は約11倍 — お盆4日間で残室0を記録した施設の割合は1〜9室35.9%に対し200室以上3.2%。消化率とは正反対の像が同じデータから出る。
  • — 完売の相当部分は在庫粒度の産物 — 1〜9室のOTA公開枠は中央値3室・直近残室1室。200室以上は中央値148室を公開し直近57室が残る。分母の小ささが完売を確率的に起こしやすくする。
  • — 規模帯「内」の差のほうが大きい — LT30の規模帯間の中央値差は最大17.4ポイント。一方、200室以上の帯では上位25%と下位25%の間に約65室分、100〜199室でも約37室分の消化差がある。
  • — 7都道府県すべてで同じ向き — 200室以上が1〜9室を上回る。水準は北海道74.4%・沖縄県73.6%が高く、大阪府61.1%・神奈川県64.1%が相対的に低い(LT30・中央値)。

規模が大きいほど、どのリードタイム断面でも消化が進んでいる

まず全体像である。お盆4日間(8月13日〜16日)を対象に、7都道府県の宿泊施設を客室規模で6階層に分け、LT90・LT60・LT30・LT14・LT7・直近の各断面における在庫消化率の中央値を求めた。集計対象は延べ14,537施設日・実数4,573施設である。

結果は明快だった。LT90(5月中旬)の時点で、1〜9室の小規模施設の消化率中央値は25.0%、200室以上の大型施設は50.8%。その差は25.8ポイントある。LT30でも50.0%対67.4%、直近観測でも66.7%対79.7%と、規模が上がるほど消化率が高いという関係はすべての断面で保たれている(60〜99室が30〜59室をわずかに下回る断面はあるが、最小規模帯と最大規模帯の序列はどの断面でも逆転しない)。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

大箱は最後に埋まる、という経験則は少なくとも中央値のレベルでは支持されない。むしろ90日前の段階ですでに、200室以上の施設は小規模施設のおよそ2倍の在庫を消化している。この差はリードタイムが縮まるにつれてやや縮小するが、逆転はしない。

表1:客室規模帯別の在庫消化率(お盆2026・8月13日〜16日/中央値)
規模帯施設数延べ観測中央客室数OTA公開枠LT90LT60LT30LT14直近直近残室
1-9室1,1793,559480.0%(3室)25.0%37.5%50.0%60.0%66.7%1室
10-29室1,0143,2581862.5%(11室)40.0%50.0%60.0%68.8%75.0%4室
30-59室6422,0544261.2%(26室)41.4%50.0%61.3%69.5%75.0%10室
60-99室4761,5407959.0%(45室)46.3%51.5%62.8%69.7%74.7%20室
100-199室8082,69414057.5%(79室)47.2%53.8%64.7%72.8%77.9%30室
200室以上4541,43225753.8%(148室)50.8%56.6%67.4%74.8%79.7%57室

※在庫が公開される前の期間(掲載開始前)の観測は各断面から除外。中央値はいずれも規模帯内の施設単位の値の中央値。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

それでも「小箱は早く完売する」——完売の発生率は11倍の開き

では、なぜ現場の実感は逆なのか。答えは、消化率ではなく「残室0を観測したかどうか」という別の指標にある。

お盆4日間で、在庫が公開されたのちに残室0を一度でも記録した施設の割合は、1〜9室で35.9%、10〜29室で20.2%。これが30〜59室で9.5%、100〜199室で4.0%、200室以上では3.2%まで落ちる。小規模と大規模で約11倍の開きである。消化率の中央値では大箱が上回るのに、完売の発生率では小箱が圧倒する。同じデータから、正反対に見える2つの事実が出てくる。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

この矛盾を解く鍵が、右軸に重ねたOTA公開枠の絶対量である。1〜9室の施設がOTA等に出している在庫は中央値でわずか3室。直近時点の残室は中央値1室にすぎない。あと1室売れれば残室は0になる。対して200室以上の施設は中央値148室を公開し、直近でも57室が残る。ここから0に到達するには、残り全室が売れなければならない。

つまり「完売」という事象は、需要の強さだけでなく分母の小ささによって確率的に発生しやすくなる。小箱の完売率の高さの相当部分は、実需の先行ではなく在庫粒度の産物と考えられる。

4室の宿の消化率は、4段階しか動かない

在庫粒度の影響は、個別施設の推移を並べると視覚的に確認できる。下図は同一チェックイン日(8月13日)における、都内の2,384室の大型ホテルと、同じ都内の4室・5室の小規模施設の残室推移を重ねたものである(施設名は伏せ、規模のみを示す)。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

2,384室の大型ホテルは83回の観測で75通りの消化率を記録した。残室は1,391室から徐々に減り、LT44付近で一度150室ほど積み増され、その後ふたたび消化が進む。需要の強弱も在庫の追加投入も、連続量として読み取れる。

一方、4室の宿は83回の観測で消化率が4通り、5室の宿にいたっては84回の観測で2通りしか値を取らない。4室の宿の残室は3室から始まり、LT65で0、LT61で1に戻り、LT56で再び0——と0と2の間を往復する。この0は「完売」であると同時に「1件のキャンセルで解消する状態」でもある。小規模施設の在庫シグナルは、本質的に離散的であり、1件の予約・キャンセルで100%と75%を行き来する。この揺れを需要の強さと読み替えると、判断を誤りやすい。

裏を返せば、大箱の在庫推移は情報量が桁違いに多い。日次の消化ペースから需要の傾きを読み、値付けに反映させる余地は、規模が大きいほど広いということでもある。この連続的な在庫推移を施設ごとの型に落とし込む作業は、東京のビジネスホテル434施設、8月14日の在庫消化を分解するで先行型と直前追い上げ型の見分け方として整理している。

季節を変えても序列は再現する

この関係がお盆特有のものかを確かめるため、対照期間として2026年7月の週末2日(7月18日・25日)と、ゴールデンウィークの2日(5月2日・3日)を同じ手順で集計した。いずれもチェックイン日が過ぎた確定日である。

LT30断面の中央値を並べると、7月週末は1〜9室の66.7%から200室以上の76.1%へ、ゴールデンウィークは66.7%(10〜29室)から70.1%へと、いずれも最小規模帯から最大規模帯にかけて上昇する(ゴールデンウィークは30〜99室でいったん65%台に緩む)。お盆と同じ形である。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

ゴールデンウィークについては、在庫の観測開始が2026年3月10日であるため、LT90断面のデータが存在しない。表示はLT60以降に限っている。それでも規模と消化の関係は3期間すべてで同方向に出ており、特定シーズンの偶然ではないと考えられる。

7都道府県すべてで、大箱が小箱を上回る

地域差も確認しておきたい。LT30断面の在庫消化率を都道府県×規模帯で分解したのが表2である。

表2:都道府県×規模帯のLT30在庫消化率(お盆2026・中央値)
都道府県1-9室10-29室30-59室60-99室100-199室200室以上施設数
東京都50.0%
N=240
55.6%
N=362
56.0%
N=447
60.5%
N=406
62.5%
N=923
67.7%
N=411
885
神奈川県50.0%
N=362
58.3%
N=460
58.5%
N=170
56.0%
N=162
61.0%
N=259
64.1%
N=151
522
大阪府50.0%
N=142
57.1%
N=167
58.9%
N=248
61.9%
N=196
62.5%
N=452
61.1%
N=299
477
京都府57.1%
N=448
61.5%
N=606
62.8%
N=249
61.9%
N=126
66.0%
N=255
68.8%
N=112
648
北海道50.0%
N=532
66.7%
N=564
69.8%
N=399
66.5%
N=280
70.9%
N=367
74.4%
N=202
890
沖縄県62.5%
N=645
54.5%
N=654
61.9%
N=281
71.0%
N=167
72.7%
N=181
73.6%
N=99
715
福岡県55.6%
N=312
58.5%
N=298
56.2%
N=178
63.7%
N=168
65.7%
N=234
67.7%
N=157
436

※Nは延べ観測数(施設日)。観測数15未満のセルは表示していない。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

7都道府県のいずれでも、200室以上の消化率は1〜9室を上回っている。水準そのものには地域差があり、北海道(200室以上74.4%)と沖縄県(同73.6%)が高く、神奈川県(同64.1%)と大阪府(同61.1%)が相対的に低い。航空各社が発表したお盆期間の予約状況でも沖縄方面・北海道方面の予約率が高く、宿泊在庫の消化とおおむね整合する。県単位で消化水準がどこまで割れるかについては、お盆T-7の在庫消化、九州6県で31.7pt差が同じお盆期間の断面で詳しく分解している。

一方、規模帯の並びが単調でない地域もある。沖縄県では1〜9室が62.5%と10〜29室(54.5%)を上回り、離島・リゾートエリアの小規模宿に固有の動きがうかがえる。大阪府では200室以上(61.1%)が100〜199室(62.5%)をやや下回る。地域単位では、規模以外の要因が序列に影響する余地があるということだ。

本当の論点は規模間の差ではなく、規模帯の中の差にある

ここまでは規模帯の中央値を比べてきた。しかし経営判断にとってより重要なのは、同じ規模帯の中で施設間にどれだけ幅があるかである。LT30断面で各規模帯の第1四分位(下位25%の水準)と第3四分位(上位25%の水準)を取ると、次のようになる。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

表3:規模帯内のばらつきと、それが意味する客室数(LT30・お盆2026)
規模帯下位25%中央値上位25%幅中央客室数客室数換算
1-9室25.0%50.0%77.8%52.8pt4室約2室
10-29室40.0%60.0%75.9%35.9pt18室約6室
30-59室44.4%61.3%74.4%30.0pt42室約13室
60-99室48.1%62.8%75.0%26.9pt79室約21室
100-199室50.0%64.7%76.7%26.7pt140室約37室
200室以上53.2%67.4%78.5%25.3pt257室約65室

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

数値の幅そのものは規模が大きいほど狭い(1〜9室の52.8ポイントに対し200室以上は25.3ポイント)。だがこれを客室数に換算すると印象が反転する。200室以上の規模帯では、同じ規模・同じ日でありながら、上位25%と下位25%の間に約65室分の消化差がある。100〜199室でも約37室、60〜99室で約21室だ。1〜9室では約2室にとどまる。

言い換えれば、規模帯どうしの中央値の差(LT30で最大17.4ポイント)よりも、同一規模帯の中の差のほうがはるかに大きい。大箱が遅い・小箱が速いという規模の議論は、実は説明力が小さい。同じ箱のサイズで隣の施設と何十室分も違いが出ているのなら、そこにこそ値付けと在庫配分の設計余地がある。

同じ消化率でも、動く客室数は規模で桁が変わる

ここまでの数値を、規模帯ごとの到達水準として並べ直しておく。下表は予測ではなく、表3の実測四分位(LT30・お盆2026)を中央客室数で客室数に換算した対照表である。悲観ケースは同一規模帯の下位25%、中位ケースは中央値、楽観ケースは上位25%の水準にあたる。

表5:規模帯別の到達水準3ケース対照(LT30・お盆2026/表3の実測四分位を客室数換算)
規模帯中央客室数悲観(下位25%)中位(中央値)楽観(上位25%)楽観−悲観
1-9室4室25.0%
1室
50.0%
2室
77.8%
3室
約2室
10-29室18室40.0%
7室
60.0%
11室
75.9%
14室
約7室
30-59室42室44.4%
19室
61.3%
26室
74.4%
31室
約12室
60-99室79室48.1%
38室
62.8%
50室
75.0%
59室
約21室
100-199室140室50.0%
70室
64.7%
91室
76.7%
107室
約37室
200室以上257室53.2%
137室
67.4%
173室
78.5%
202室
約65室

※各セルの下段は「中央客室数 × 当該消化率」で求めた消化客室数(四捨五入)。消化率はいずれも表3に掲載した実測値であり、新たな推計は行っていない。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

同じ換算を、規模と消化率の2軸に広げたのが表6である。列に置いた消化率は、表3で実測された下位25%の最小値(25.0%)から上位25%の最大値(78.5%)までの範囲に収めている。消化率が同じでも、動く客室数は規模で桁が変わる——1ポイントの差は1〜9室では0.04室にすぎないが、200室以上では2.6室に相当する。これが、同一規模帯内の四分位幅を客室数で読むべき理由である。

表6:客室規模 × 在庫消化率の2軸換算グリッド(消化客室数/LT30・お盆2026)
規模帯(中央客室数)25.0%40.0%55.0%65.0%78.0%
1-9室
4室
1室2室2室3室3室
10-29室
18室
4室7室10室12室14室
30-59室
42室
10室17室23室27室33室
60-99室
79室
20室32室43室51室62室
100-199室
140室
35室56室77室91室109室
200室以上
257室
64室103室141室167室200室

※セルは「中央客室数 × 消化率」の単純換算(四捨五入)。網掛けは当該規模帯の実測四分位レンジ(下位25%〜上位25%)に入るセル。将来の消化率を推計したものではない。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

100室超で早期に売り切った施設——実需で埋めた大箱

大箱の完売率が低いということは、裏返せば大箱で早期完売が起きたときの意味が重いということでもある。分母が大きいぶん、確率的な偶然では説明できないからだ。

お盆4日間について、総客室数100室以上かつOTA公開枠が総客室数の50%以上の施設に限り、在庫が公開されたのちに残室0へ到達した時点が早い順に並べたのが表4である。

表4:100室以上で早期完売を観測した施設(お盆2026)
所在施設名総客室数対象日早期完売LT完売観測日数直近残室
東京都東横INN山手線大塚駅北口2139室08/16LT8978日18室
北海道ドーミーインPREMIUM札幌168室08/13LT6645日26室
北海道ドーミーイン札幌ANNEX134室08/13LT6645日26室
東京都カプセルランド湯島112室08/15LT5343日0室
京都府ホテルサンルート福知山102室08/15LT5034日0室
北海道コンフォートホテル帯広126室08/13LT5046日0室
東京都サウナ&カプセルホテル北欧198室08/14LT4439日0室
神奈川県ウィスタリアンライフクラブ ヴェルデの森100室08/13LT4131日0室
福岡県ホテルリブマックス小倉駅前124室08/13LT4131日0室
北海道the b 札幌130室08/13LT3632日0室
京都府三井ガーデンホテル京都駅前136室08/16LT347日4室
沖縄県The BREAKFAST HOTEL PORTO石垣島119室08/15LT3311日1室
東京都エスペリアイン日本橋箱崎114室08/14LT3312日9室
北海道きたゆざわ森のソラニワ197室08/16LT3220日0室

※各施設について、お盆4日間のうち最も早く完売した日を代表値として掲載。完売観測日数は当該日の在庫推移で残室0を記録した観測回数。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

最も早いのは139室の施設でLT89、つまり約3ヶ月前の時点である。以降、168室・134室の施設がLT66、112室・102室・126室の施設がLT50前後で続く。いずれも100室を超える規模で、OTA公開枠も総客室数の半分以上を出しながら、直前を待たずに枠を売り切っている。前掲の完売発生率で見たとおり、100室以上の規模帯で残室0を観測する施設は全体の4.0%前後にすぎない。ここに名前が並ぶのは、規模のハンデを需要が上回った施設群だといえる。

大箱の早期完売は「値付けが需要に追いつく前に枠が消えた」可能性も示す。分母が大きい施設ほど、完売の到達点を1日でも遅らせられれば、その間の単価上昇が積み上がる客室数も多い。表3で見た約65室分の幅は、そのまま単価設計の可動域と重なる。

規模帯ごとに、伸びしろの置き場所は違う

ここまでの結果を、規模帯ごとの機会として整理しておきたい。

1〜29室の小規模施設——完売の発生率は高いが、その多くは在庫粒度によるものだ。残室1室の状態を「完売間近」と読むのではなく、公開枠そのものを見直す余地がある。総客室数に対するOTA公開枠が中央値80.0%(3室)というのは、裏を返せば残りをどの販路にどう配るかという設計自由度が大きいということでもある。予約が早い時期に入る施設ほど、その1室の価値を高く設定できる余地がある。

30〜99室の中規模施設——消化率の中央値は大箱とほぼ同水準(LT30で61.3%〜62.8%)でありながら、規模帯内の幅は30.0〜26.9ポイント、客室数にして13〜21室分ある。上位25%の水準(75.0%)まで到達している施設が現に存在するのだから、同規模帯内のペース比較は実行可能な目標設定になる。

100室以上の大型施設——LT90の段階ですでに47.2〜50.8%を消化しており、需要の立ち上がりはむしろ早い。日次で連続的に読める在庫推移という強みを活かし、消化ペースが上位水準に乗っている日は段階的に単価を引き上げる、という運用が最も効きやすい規模帯である。45日前・30日前・直前という定点で進捗を点検する具体的な手順は、大阪ビジネスホテルのお盆2026 — 45日前・30日前・直前で読む在庫進捗も参考になる。約65室という規模帯内の幅は、そのまま上積みのポテンシャルとして読める。

大箱は最後に埋まるのか、という問いに対する答えは「否」である。だが、より実務的な含意は別のところにある。規模は在庫シグナルの読み方を変えるが、成果を決めているのは規模ではない。同じ規模帯の隣の施設との差こそが、値付けの伸びしろが眠っている場所だといえる。

データの取得方法と、集計上の制約

本記事の集計手順と、読者が結果を評価するうえで必要な制約を開示しておく。

集計対象:東京都・神奈川県・大阪府・京都府・北海道・沖縄県・福岡県の7都道府県。チェックイン日はお盆4日間(8月13日〜16日)を主対象、対照として7月18日・25日、5月2日・3日を用いた。集計は都道府県×施設カテゴリ×市区の単位に分割して行い、1回の照会で取得できる件数の上限による取りこぼしが生じないようにしている。

3段階の絞り込み:お盆4日間で在庫推移を取得できた延べ15,892施設日のうち、客室数マスターと在庫観測が整合しない記録(観測在庫が総客室数を超えるもの/1,355施設日)を除外し、14,537施設日・実数4,573施設を集計対象とした。さらにすべての集計で、OTA公開枠が総客室数の30%未満の施設を除外している。公開枠が小さい施設は、直販中心のチャネル運用、在庫を小出しに追加していく運用、OTA等への割当そのものを少なく設定している契約など複数の可能性が考えられ、残室数の少なさが施設全体の満室を意味しないためである。参考までに、都道府県単位の照会(8月13日)では走査枠800施設に対し在庫推移を取得できたのが東京都454施設・大阪府304施設・京都府204施設・北海道445施設・沖縄県285施設・神奈川県401施設・福岡県303施設、公開枠30%以上の条件を満たしたのが同順に230・144・109・171・153・239・173施設であった。分割取得によって、これを上回る施設を捕捉している。

在庫公開前の除外:LT90時点で残室0と観測された337施設日はすべて、それ以降のリードタイムで在庫が出現している。これは完売ではなく在庫が未投入であった状態であり、各断面の集計から除外した。LT60では残室0の446施設日のうち196施設日が同様であった。この補正を行わない場合、LT90の消化率は規模帯によって最大8.3ポイント過大に出る。

観測時点:お盆4日間の在庫状態は2026年8月9日時点の観測にもとづく(当該日の観測が13,551施設日)。在庫はホテル側の販売停止・再開により日内でも変動するため、記事公開後に残室が復活している場合がある。表4の「直近残室」も同時点の値である。

その他の制約:在庫データの収集開始が2026年3月10日であるため、ゴールデンウィークのLT90断面は取得できない。また客室規模はマスター上の総客室数であり、稼働可能客室数とは一致しない場合がある。規模帯別の値はすべて中央値であり、個別施設の在庫消化率は開示していない。

⚠ 在庫データの観測時点について:本記事のお盆期間(2026年8月13日〜16日)の在庫状態は、2026年8月9日時点で確認できた販売在庫にもとづく推定値です。在庫はホテル側の販売停止・再開や予約のキャンセルにより日内でも変動するため、記事公開後に残室が復活している場合があります。また規模帯別の値はいずれも中央値であり、個別施設の在庫消化率は算出・開示していません。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

メトロエンジンリサーチが観測した宿泊施設の客室在庫推移(東京都・神奈川県・大阪府・京都府・北海道・沖縄県・福岡県の7都道府県、実数4,573施設・延べ14,537施設日、観測時点2026年8月9日)。主対象はお盆4日間(8月13日〜16日)、対照期間として2026年7月18日・25日と5月2日・3日を同一手順で集計した。需給の外部参照として観光庁「宿泊旅行統計調査」およびANAグループ・JALが公表したお盆期間の予約状況を用いている。

■ 試算前提

在庫消化率は(総客室数 − 残室数)÷ 総客室数で算出した推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なる。規模帯別の値はすべて施設単位の中央値で、個別施設の値は開示していない。集計対象はOTA公開枠が総客室数の30%以上の施設に限り、観測在庫が総客室数を超える1,355施設日を除外した。LT90時点で残室0かつ以降に在庫が出現した337施設日は在庫未投入として各断面から除外している。表5・表6は表3に掲載した実測四分位と中央客室数を客室数に換算した対照表であり、将来の消化率を予測するものではない。

■ 限界・留意点

在庫データの収集開始が2026年3月10日であるため、ゴールデンウィークのLT90断面は取得できない。客室規模はマスター上の総客室数であり、稼働可能客室数とは一致しない場合がある。残室数はホテル側の販売停止・再開や予約のキャンセルにより日内でも変動するため、記事公開後に値が動くことがある。また、OTA公開枠30%以上という条件を満たす施設数は観測が積み上がるにつれて増えるため、後日同じ条件で集計すると本記事に掲載した施設数を上回る場合がある。観測数が15未満のセルおよび施設数が10未満の規模帯については断定的な解釈を避けている。

■ 在庫・価格データ

  • メトロエンジンリサーチ — 宿泊施設の客室在庫推移(7都道府県・4,573施設・延べ14,537施設日、観測時点2026年8月9日)

■ 政府統計

■ プレスリリース

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