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英ホテル市場が景気後退局面入りかー2018年5月RevPARが前年同月比で20ヶ月ぶりに減少

投稿日 : 2018.07.04

ホテル関連ニュース

イギリスのホテル市場におけるRevPARが本年5月、前年同月比で1.3%の減少に転じた。好調を続けたイギリスホテル市場で、前年同月比でマイナスとなるのは2016年10月以来のこと。イングランド北部でツールドイベントを開催したリーズでは好調な業績を示し、昨年のテロから客足が戻らないマンチェスターとは対照的となった。英ホテルは労働コストの上昇にも直面している。

 
王室結婚の催事も、RevPAR、OCC、ADR全てが減少に
ホスピタリティー産業データを扱うHOTSTATSによると、イギリスのホテル市場におけるRevPAR(販売可能な客室1室あたりの収益)は本年5月、前年同月比1.2%減の£93.30(1£=146円、2018年7月現在)となった。また、前年同月比でOCC(客室稼働率)が0.2%減の80.5%となり、ADR(平均客室単価)についても0.9%減の£115.90となった。
イギリスでRevPARの減少は、2016年10月以来の20ヶ月ぶり。イギリスのホテルの好業績を支える極めて高いOCCの微減は今年春季の天候不順による影響と見られ、本年3月から減少傾向に入り、空港での出発着では国内旅行を避け海外に渡航するイギリス人が増えた模様。
ビジネス客が依然として堅調なのに対して、イギリス王室ヘンリー王子のウエディングなどの催事が5月連休にも重なって行われたにも関わらず、個人旅行(前年同月比2.9%減)  、団体旅行(前年同月比4.8%減)ともに低迷した。
ホテルの飲料食事部門の収益は前年同月比2.0%の減少、会議・宴会部門についても前年同月比3.5%の減少となった。
また、労働コストの上昇も発生しており、従業員の給与支払いは前年同月比で0.7%増加し英ホテルの経営を圧迫している。
 
北部都市リーズはツール・ド・ヨークシャー開催で好調
他方で、イングランド北部の都市リーズではOCCが前年同月比6.5%増の79.1%となり、ADRも前年同月比1.5%増加の£80.59となり、RevPARも前年同月比10.6%増の£63.74と好業績となった。
同市では同月にツール・ド・ヨークシャーのファイナスステージをホストしたことが要因で、ツール・ド・フランスのスピンオフ・イベントとして開かれる同イベントには200万人を超える観客が押し寄せた。
同市では飲料食事部門の収益も前年同月比10.1%の増加、会議・宴会部門も前年同月比13.9%増加となった。
 
昨年テロのマンチェスターは依然として客足低迷
リーズに近いイングランドの北部の都市マンチェスターでは、昨年同月(2017年5月22日)にアリーナでのコンサートでテロがあったが、RevPARが前年同月比4.8%減少の£80.71、OCCが前年同月比2.8%減少、ADRも前年同月比1.4%減少と、客足の回復には至っていない。
スポーツイベント開催がリーズの成功の要因であるが、同時に大規模な集客イベントはマンチェスターのようなテロの標的となりうるものであり、テロなどの事件が勃発すれば観光への大きなダメージにもなることから、ホテルなどの宿泊施設も含めてテロへの警戒、セキュリティの強化がイギリス観光業やホテル市場における大きな課題と言える。
 
労働コストの上昇は長期的に経営を圧迫、EU離脱で深刻化も
5月の後退が好調を続けてきたイギリスホテル市場の後退局面入りと言えるのかどうか、については中期的な観測が必要となるが、労働コストの上昇は中長期的にホテルの経営を圧迫する。この先EU離脱によりさらに深刻な労働者不足に直面することも懸念されており労働コストの上昇は避けられず、イギリスホテル市場の転換点となる可能性が出てきた。
 
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