JR四国とJR四国ホテルズは2026年9月29日、新ブランド「HOTEL NEMUS by CLEMENT」の第1号となる「HOTEL NEMUS OKAYAMA by CLEMENT」を、岡山駅東口の再開発街区(岡山市北区駅前町一丁目)に2027年3月20日(土)に開業すると発表した。ホテル棟7〜16階・全177室で、同日の社長会見では平均稼働率80%・年間約6万人の宿泊という目標と、スーペリアダブル1人1泊16,000円〜・スーペリアツイン2人1泊19,000円〜という料金水準が示された。本稿では、この目標値を岡山駅から半径1km圏の客室ストック、岡山市北区の推定成約ADR、岡山県ビジネスホテルの稼働カーブ、駅前の商業地価という4つの市場データに照らし、目標が成立する条件を逆算する。
• ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。
• エリア(都道府県・市区町村)単位のADRは、対象施設の推定成約単価の中央値(エリアの標準的な施設の水準)です。
• 掲載価格に言及する箇所は、2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
• OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。
• 出典:メトロエンジンリサーチ(国内約168,000施設のOTA公開価格を継続追跡、うち稼働確認済み約27,000施設)
本記事の客室ストックは、岡山駅から半径1,000m圏内にある客室数10室以上の宿泊施設(レジャーホテルを除く)を対象とし、「稼働中」は直近3か月(2026年8月〜2026年10月)に主要予約サイトで販売価格が確認できた施設を指す(2026年10月21日時点、メトロエンジンリサーチ集計)。 稼働率(推定)は主要予約サイトの掲載在庫ベースの推定値で、対象施設数と客室数を都度併記する。ブッキングカーブはリードタイム45日以内の観測のみを用いる。
- — 年6万人=1室1.16人:177室×365日×稼働80%(通年)の51,684室泊で割った値。ダブル80室が1名利用でも、ツインの2名利用が約29%あれば届く。
- — 供給増分は+2.9%:岡山駅1km圏の客室ストック6,013室(2026年・44軒)に177室。600室の大型開業直後で、野田屋町300室(2028年12月完成予定)を含めても+7.9%。
- — 下限価格は北区中央値の約2.0倍:2名1室19,000円(税抜相当約17,300円)は、北区の推定成約ADR¥8,600(2026年9月・N=50施設・前年同月比+12.9%)の約2.0倍。
- — 受け皿は上位7施設・1,569室:駅1km圏で2026年9月の推定成約ADRが12,000円以上の施設は稼働中客室の27%。150〜250室の中規模で公表下限帯に入る施設は現状ない。
- — 稼働80%は県ビジネス実績を5.1pt上回る設定:観光庁2025年の岡山県ビジネスホテル74.9%に対し、稼働75〜85%・ADR16,000円の客室売上は7.8億〜8.8億円。
エグゼクティブサマリー — 目標は「1室1.16人」と「北区中央値の2倍の単価」に分解できる
結論を先に述べる。年6万人という目標は、177室が年間を通じて80%で回ったときの室泊数51,684に対して1室あたり1.16人が泊まる計算であり、ダブル80室・ツイン97室という構成と矛盾しない。むしろツインの2名利用が3割弱で成立する控えめな前提と読める。価格面では、公表された下限価格(2名1室19,000円・税込表示とすれば税抜相当約17,300円)が、岡山市北区の推定成約ADR中央値¥8,600(2026年9月)の約2.0倍に当たる。この水準で販売できる受け皿が駅1km圏にどれだけあるかが、目標達成の第一の条件になる。
供給面では、駅1km圏の客室ストックは2017年の4,714室から2026年の6,013室へ28%増え、2026年には600室の大型ビジネスホテルが加わった直後である。ここに177室を足した増分は+2.9%にとどまり、供給ショックというより上位帯の層を厚くする追加と位置づけられる。需要面では、岡山県ビジネスホテルの掲載在庫ベース稼働率(推定)が2026年9月に86.8%(N=46施設・5,423室)、観光庁統計の2025年実績でも岡山県ビジネスホテルの客室稼働率は74.9%(全国13位)と、80%目標を支える土台が確認できる。以下、順に見ていく。
一次資料で確認できる計画概要 — 7タイプ177室、7階にロビーと宿泊者ラウンジ
JR四国の報道資料(2026年9月29日)によれば、所在地は岡山市北区駅前町一丁目2番1号、「岡山市駅前町一丁目2番3番4番地区第一種市街地再開発事業」のホテル棟(地上16階建)の7〜16階に入る。ホテル部分の延床面積は約7,000㎡で、7階にロビー・レセプション・レストラン・ラウンジ、8階に温浴施設・フィットネスルームと客室、9〜16階が客室という構成である。客室はダブル80室・ツイン97室(アクセシブルルームを含む)の計177室で、全室が洗面台・トイレ・浴室を独立させた仕様になる。運営はJR四国ホテルズが担い、公式サイトでの予約受付は2026年10月1日に始まった。
| 客室タイプ | 室数 | 定員 | 面積 |
|---|---|---|---|
| モデレートダブル | 12室 | 2名 | 21㎡ |
| スーペリアダブル | 68室 | 2名 | 23㎡ |
| スーペリアツイン | 84室 | 2名 | 23㎡ |
| アクセシブルツイン | 4室 | 2名 | 28㎡ |
| デラックスツイン | 5室 | 4名 | 43㎡ |
| プレミアツイン | 2室 | 4名 | 43㎡ |
| プレステージツイン | 2室 | 4名 | 43㎡ |
| 合計 | 177室 | — | 21〜43㎡ |
出典:四国旅客鉄道株式会社・株式会社JR四国ホテルズ「新ブランドホテル『HOTEL NEMUS OKAYAMA by CLEMENT』JR岡山駅前に2027年3月20日(土)開業」(2026年9月29日)
目標値と料金は報道資料ではなく会見報道に基づく。KSB瀬戸内海放送(2026年9月29日)は、平均稼働率80%・年間約6万人の宿泊を目標とし、スーペリアダブルが1人1泊16,000円〜、スーペリアツインが2人1泊19,000円〜と報じた。同じ記事で投資額は公表されていない。ホテル部分の投資額が不明である以上、本稿では利回りを論じず、売上と稼働の成立条件に絞る。なお、ホテル棟と住宅棟(分譲タワー)を併せた再開発としての供給論点は住宅併設ホテル7案件1,401室の供給インパクトで扱ったため、ここでは繰り返さない。
目標の算術 — 年6万人は「ツインの2名利用が3割弱」で届く
まず、公表された2つの目標を1つの式につなぐ。177室×365日=64,605室の販売可能室泊に稼働率80%(通年平均の想定)を掛けると51,684室泊になる。年間6万人をこれで割ると、1室あたり1.16人という平均人数が導かれる(60,000 ÷ 51,684 = 1.161)。1日あたりに直せば、約142室の販売で約164人を迎える計算である。
この1.16人という数字を客室構成に当てはめると、目標の性格が見えてくる。ダブル80室が全て1名利用(1.0人/室)で埋まると仮定した場合、残る6万人を達成するためにツイン97室に求められる平均人数は1.29人、すなわちツイン宿泊の約29%が2名利用であればよい。ダブルの平均が1.1人に上がれば、ツイン側に必要な平均は1.21人まで下がる。ビジネス需要の単独利用が主体のダブルと、観光・2名需要を受けるツインを8対10の比率で持つ構成に対して、6万人は保守的な前提から置かれた数字と読める。
| 前提(稼働80%・51,684室泊) | ダブル80室の平均人数 | ツイン97室に必要な平均人数 | ツインの2名利用比率(目安) |
|---|---|---|---|
| ケースA | 1.00人 | 1.29人 | 約29% |
| ケースB | 1.10人 | 1.21人 | 約21% |
| ケースC(4名定員9室が平均2.5人) | 1.00人 | 1.17人(88室) | 約17% |
出典:JR四国報道資料・KSB報道の公表値からホテルバンク編集部試算
供給 — 岡山駅1km圏6,013室に+2.9%、600室の直後に来る177室
岡山駅から半径1,000m圏の客室ストック(客室数10室以上・レジャーホテルを除く)は、開業年が確認できる施設で数えると2017年の35軒・4,714室から2026年の44軒・6,013室へ28%増えた(開業年が確認できない6軒・457室は年次推移に含めていない)。掲載ベースでは60軒・7,067室、直近3か月に販売価格が確認できた稼働中の施設は38軒・5,810室である。2026年の増分600室は、8月6日に開業した「アパホテル&リゾート〈岡山駅新幹線口〉」(岡山市北区桑田町、全600室、県内最大級と公表)によるもので、駅西側の桑田町に大浴殿・露天風呂・展望プールを備えた大型施設が加わった。
その直後に東口へ177室が入る。2026年ストックに対する増分は+2.9%で、メトロエンジンリサーチの建築計画データで確認できる2028年12月完成予定の野田屋町地区(住宅・ホテル・店舗、300室)まで含めても+7.9%にとどまる(確認申請ベースのため、今後の申請追加で件数は増える見込み。現時点の確定パイプラインの下限値として参照)。600室の大型供給が吸収される過程と重なる点は見ておくべきだが、177室は規模よりも価格帯で既存ストックと異なる層に入る。この点は次節で確認する。
| 区分 | 掲載 軒数 | 掲載 室数 | 稼働中 軒数 | 稼働中 室数 |
|---|---|---|---|---|
| ビジネスホテル | 46軒 | 5,853室 | 31軒 | 4,975室 |
| シティホテル | 7軒 | 906室 | 5軒 | 810室 |
| カプセルホテル | 2軒 | 200室 | 0軒 | 0室 |
| ホステル | 3軒 | 50室 | 1軒 | 10室 |
| 旅館 | 1軒 | 43室 | 0軒 | 0室 |
| ゲストハウス | 1軒 | 15室 | 1軒 | 15室 |
| 合計(全区分) | 60軒 | 7,067室 | 38軒 | 5,810室 |
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(岡山駅 半径1,000m圏、2026年10月21日時点。稼働中=直近3か月に主要予約サイトで販売価格が確認できた施設)
価格の受け皿 — 北区の推定成約ADRは¥8,621、2名1室19,000円は上位7施設の帯に入る
岡山市北区の推定成約ADR(対象施設の中央値)は2026年9月に¥8,600(N=50施設)で、前年同月の¥7,600から+12.9%となった。8月は¥9,200で前年同月比+5.8%、直近12か月(2025年10月〜2026年9月)の平均は¥8,000である。岡山県全体でも9月は¥9,100(N=191施設)と前年同月比+19.6%で、県都の中心区が県平均と同じ方向に動いている。北区の施設構成はビジネスホテルが中心であるため、中央値はビジネス帯の標準的な施設の水準を表す。
公表された下限価格をこの中央値と比べる。2名1室19,000円を税込表示とみなして1.1で割ると税抜相当約17,300円となり、北区の9月中央値の2.0倍、1人1泊16,000円(税抜相当約14,500円)でも1.7倍に当たる。しかもこれは「〜から」の下限であり、実際の販売価格の分布は上に広がる。したがって問うべきは「北区の平均に対して高いか」ではなく、「この帯で日々販売できている施設が駅1km圏にどれだけあるか」である。
答えは明確で、2026年9月時点で6か月以上の推定成約ADR履歴がある駅1km圏の施設のうち、2026年9月の推定成約ADRが12,000円以上なのは7施設・1,569室、稼働中5,810室の27%を占める。シティホテル2施設(ホテルグランヴィア岡山、ANAクラウンプラザホテル岡山)が約19,000円で最上位を形成し、その下に三井ガーデンホテル岡山、天然温泉吉備の湯ドーミーイン岡山、ダイワロイネットホテル岡山駅前、スーパーホテル岡山駅東口、ヴィアイン岡山が12,600〜15,300円の帯で並ぶ。公表下限の税抜相当14,500〜17,300円は、この上位帯の中段からシティ帯の手前にあたり、シティ2施設の全プラン平均掲載価格(9月、2名1室・税込)が45,000円超であることを考えると、新ホテルは「ビジネス上位帯の価格でシティ級の客室面積(21〜43㎡)と温浴・ラウンジを提供する」位置に立つ。
| 施設 | 区分 | 客室数 | 開業 | 推定成約ADR 2026年9月 | 同 履歴平均(最長13か月) | 掲載価格 9月(全プラン平均・税込) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ANAクラウンプラザホテル岡山 | シティホテル | 219室 | 2005年 | ¥19,296 | ¥20,329 | ¥46,503 |
| ホテルグランヴィア岡山 | シティホテル | 329室 | 1995年 | ¥18,990 | ¥19,343 | ¥45,702 |
| 三井ガーデンホテル岡山 | ビジネスホテル | 297室 | 2000年 | ¥15,317 | ¥14,021 | ¥28,414 |
| 天然温泉吉備の湯ドーミーイン岡山 | ビジネスホテル | 149室 | 2022年 | ¥14,901 | ¥14,228 | ¥30,458 |
| ダイワロイネットホテル岡山駅前 | ビジネスホテル | 216室 | 2008年 | ¥13,381 | ¥12,624 | ¥23,689 |
| スーパーホテル 岡山駅東口 | ビジネスホテル | 108室 | 2020年 | ¥13,106 | ¥11,896 | ¥25,603 |
| ヴィアイン岡山 | ビジネスホテル | 251室 | 2012年 | ¥12,637 | ¥11,201 | ¥20,889 |
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(岡山駅1km圏、6か月以上の履歴がある施設のうち2026年9月の推定成約ADRが12,000円以上の7施設。推定値のため各施設の実績とは異なる)
散布図で見ると、推定成約ADRが公表下限の税抜相当帯(14,500〜17,300円)に入る施設は三井ガーデンホテル岡山(297室)と天然温泉吉備の湯ドーミーイン岡山(149室)の2施設にとどまり、177室前後(150〜250室)の中規模でこの帯に入る施設は現状存在しない。公表下限の帯(図の網掛け)と177室の交点は、既存ストックの空白に置かれている。駅3分という立地で上位帯の価格を日常的に販売するシティ2施設の存在は、この帯に需要があることの実証でもあり、新ホテルにとっては追随すべき先行例が同じ1km圏にあることを意味する。
需要の厚み — 岡山県ビジネスの稼働率(推定)は9月86.8%、観光庁実績は74.9%で全国13位
稼働80%目標を受け止める需要側を2つの統計で確認する。観光庁「宿泊旅行統計調査」の2025年確定値では、岡山県の客室稼働率は全体で59.2%(全国15位)、ビジネスホテルで74.9%(全国13位、全国平均75.3%)、シティホテルで60.5%だった。延べ宿泊者数は5,845,080人泊で前年比+1.1%、うち外国人は678,870人泊で前年比+32.1%(2019年比+39.5%)と、日本人の−2.0%を外国人の伸びが補う構図である。岡山駅前の新ホテルが県ビジネス平均の74.9%を5ポイント上回る80%を掲げるのは、駅3分の立地・新築・上位帯という条件を踏まえた設定と読める。
メトロエンジンリサーチの掲載在庫ベース稼働率(推定)では、岡山県ビジネスホテルは2026年9月に86.8%(N=46施設・5,423室)、8月に85.3%(N=43施設・4,811室)、全区分では9月85.1%(N=127施設・8,197室)である。この指標は主要予約サイトに出された在庫の消化状況から推定するため、観光庁の実稼働率より高めに出る定義であり、80%目標と直接比較する数字ではない。読み取るべきは水準ではなく曜日と日付のパターンで、9月の月〜木は89.4%、金82.8%、土87.5%、日78.0%と、平日のビジネス需要と土曜の観光需要が二本柱になっている。9月19日(土)〜23日(水)の5連休には19〜21日の3日連続で95%を超え(全区分では22日まで4日連続)、休日前後の在庫がほぼ消化された。8月の曜日別の谷とその埋め方は、岡山のビジネスホテル、8月は水曜92.4%・日曜74.6%で掘り下げている。
| 岡山県ビジネスホテル 稼働率(推定) | 月〜木 | 金 | 土 | 日 | 月平均 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2026年9月(N=46施設/5,423室) | 89.4% | 82.8% | 87.5% | 78.0% | 86.8% |
| 2026年8月(N=43施設/4,811室) | 87.6% | 85.8% | 87.8% | 74.6% | 85.3% |
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(主要予約サイト掲載在庫ベースの推定値。日曜は翌日が平日となる宿泊日)
予約の積み上がり方も確認しておく。岡山県ビジネスホテルの2026年9月宿泊分を固定コホート(48施設・5,688室)で追うと、宿泊45日前の時点で総客室の54.6%が消化され、30日前60.8%、14日前70.5%、7日前76.4%、前日86.7%と、最後の2週間で約16ポイントが積み上がる。直前需要が厚いという岡山のビジネス市場の性格は、開業初年度の新ホテルにとって、認知が追いつく前の期間でも日々の販売で埋められる余地があることを示す。一方で、45日前に過半が埋まる土曜・連休のピーク日と、直前まで動く平日とで販売方針を分ける設計が、80%を年間平均で維持する鍵になる。45日前・30日前・直前の3点でこの運用枠を組む考え方は、ブッキングカーブは3点で足りる — 岡山県の実測でみる運用フレームが同じ岡山県の実測で示している。
立地 — 商業地価は本町202万円/㎡(+6.3%)、駅3分の容積率500〜600%地区
国土交通省「不動産情報ライブラリ」の2026年地価公示(令和8年1月1日時点)で、岡山駅周辺の商業地を確認する。駅から東へ約300mの本町(岡山北5-7)は2,020,000円/㎡で前年比+6.3%、駅元町(岡山北5-22、駅270m)は401,000円/㎡で+6.6%、錦町(岡山北5-25)は528,000円/㎡で+7.5%と、駅前商業地は軒並み6〜8%の上昇が続く。用途地域は駅前町・本町・駅元町を含む一帯が商業地域で、容積率は400〜700%(開業地周辺は500〜600%)に指定されており、16階建のホテル棟と31階建の住宅棟からなる再開発はこの容積を使い切る形で成立している。
| 標準地 | 所在 | 2026年公示価格 | 前年比 | 容積率 | 駅距離 |
|---|---|---|---|---|---|
| 岡山北5-22 | 駅元町469番2 | ¥401,000/㎡ | +6.6% | 500(%) | 270m |
| 岡山北5-7 | 本町2番101 | ¥2,020,000/㎡ | +6.3% | 600(%) | 300m |
| 岡山北5-21 | 奉還町2丁目1番108 | ¥178,000/㎡ | +2.9% | 500(%) | 430m |
| 岡山北5-25 | 錦町8番113 | ¥528,000/㎡ | +7.5% | 500(%) | 730m |
| 岡山北5-26 | 平和町6番113外 | ¥302,000/㎡ | +7.5% | 400(%) | 750m |
| 岡山北5-9 | 下石井2丁目3番103 | ¥335,000/㎡ | +8.4% | 400(%) | 800m |
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(地価公示 2026年・用途地域)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成
生産年齢人口比率 65.6%・65歳以上 24.3%
うちオフィス系従業者の比率 21.6%
岡山駅の1日平均乗降客数は2019年の138,650人から2020年に93,526人へ落ち込んだ後、2023年には130,676人(2022年以降は在来線各線と新幹線を含む集計)まで戻った。駅から1km圏には事業所5,091か所・従業者56,987人が集まり、ビジネス需要の発生源が徒歩圏に重なる。居住人口は半径1.5kmで55,044人(2025年)、2040年に−4.5%と緩やかな減少が見込まれるが、宿泊需要の主体は域外からの来訪者であり、乗降客数と就業者数の回復が需要側の基礎になる。下の地図は居住人口の分布で、国勢調査ベースの居住者数であり滞在・通過人口ではない。
成立条件の試算 — 稼働80%×ADR16,000円で客室売上8.3億円、1室あたり467万円
最後に、公表値を売上に換算して成立条件を整理する。年間51,684室泊(177室×365日×80%)に推定成約ADRを掛けると、ADR14,000円で約7.2億円、16,000円で約8.3億円、18,000円で約9.3億円の客室売上になる。1室あたりでは年間409万〜525万円で、同じ帯にある駅1km圏の上位施設が日々販売している水準の延長線上にある。ホテル部分の投資額は公表されていないため利回りには踏み込まないが、国土交通省 建築着工統計で宿泊業用建築物の工事費予定額が2024年に坪195.5万円(全構造・全国、2022年の138.6万円から+41%)まで上昇している環境では、延床約7,000㎡(約2,120坪)の規模で売上8億円台を確保できるかが、ホテル棟単体の採算を左右する。
| 稼働率シナリオ(177室) | ADR 14,000円 | ADR 16,000円 | ADR 18,000円 | 年6万人時の人/室 |
|---|---|---|---|---|
| 稼働75%(48,453室泊) | 678百万円 | 775百万円 | 872百万円 | 1.24人 |
| 稼働80%(51,684室泊) | 724百万円 | 827百万円 | 930百万円 | 1.16人 |
| 稼働85%(54,914室泊) | 769百万円 | 879百万円 | 988百万円 | 1.09人 |
出典:公表値からホテルバンク編集部試算(客室売上のみ・税抜相当。料飲・温浴・ラウンジ収入は含まない)
感度としては、稼働が75%に下がると同じ6万人を迎えるには1室あたり1.24人が必要になり、ツインの2名利用比率を4割強まで高める営業が要る。逆に85%に上がれば1.09人で足り、人数目標は稼働目標より先に達成される。つまり年6万人は稼働80%に連動する従属変数であり、運営上の主変数はADRと稼働の組み合わせに集約される。これは簡易試算であり、実際の事業判断には詳細なフィージビリティ・スタディが必要である。
成立条件① 価格帯の受け皿
税抜相当14,500〜17,300円の下限帯は、駅1km圏で7施設・1,569室(稼働中の27%)が販売する上位帯の中段。177室の中規模でこの帯に入る施設は現状なく、客室面積と温浴・ラウンジで差を付ける余地がある。
成立条件② 曜日ミックス
岡山県ビジネスの稼働率(推定)は月〜木89.4%・土87.5%に対し日曜78.0%。平日のビジネス単独利用(ダブル80室)と土曜・連休の2名利用(ツイン97室)を分けて売る設計が、年間平均80%の土台になる。
成立条件③ 直前需要の取り込み
9月宿泊分は45日前54.6%から前日86.7%へ、最後の2週間で約16ポイント積み上がる。開業初年度は認知形成と並行して、直前販売の価格・在庫設計で稼働を確保する運用が有効といえる。
まとめ — 「上位帯の中規模ホテル」という空白に置かれた177室
JR四国の新ブランド1号は、岡山駅1km圏6,013室に+2.9%を加える規模だが、価格帯で見ると既存ストックの空白に入る。北区の推定成約ADR中央値¥8,600(2026年9月・前年同月比+12.9%)の約2倍にあたる下限価格は、同じ1km圏でシティ2施設と上位ビジネス5施設がすでに販売している帯であり、受け皿は実証済みである。稼働80%は観光庁統計の県ビジネス平均74.9%を5ポイント上回る水準で、駅3分・新築・温浴とラウンジを備える施設の設定としては到達可能な射程にある。年6万人は1室1.16人という控えめな人数前提から置かれており、稼働目標が達成されれば人数目標は自然に満たされる。
運営側にとっての論点は、600室の大型供給が吸収される2026〜2027年の市場で、上位帯の価格を開業初年度から維持できるかに絞られる。岡山駅前の商業地価が年6〜8%で上昇し、外国人延べ宿泊が前年比+32%で伸びる局面は、上位帯の新規参入に追い風となる。2027年3月20日の開業まで5か月、公式サイトでの予約受付は始まっており、開業後の推定成約ADRと稼働カーブは本サイトで継続して追う。
⚠ 将来日程のADRに関する注意:本記事の2026年10月以降の推定成約ADRは、調査時点で主要予約サイトに公開されている販売価格から推定した水準であり、チェックイン日に近づくにつれて変動します。現時点で高く設定されている価格が直前の調整で下落する可能性がある点にご留意ください。開業予定ホテルの料金は事業者公表の下限値であり、実際の販売価格とは異なります。
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参考資料・出典一覧
■ データソース
計画概要はJR四国・JR四国ホテルズの報道資料(2026年9月29日)、稼働率・人数目標と料金はKSB瀬戸内海放送の会見報道による。客室ストックはメトロエンジンリサーチ集計(岡山駅半径1,000m・客室数10室以上・レジャーホテル除く、2026年10月21日時点)、推定成約ADRは岡山市北区(N=50施設)・岡山県(N=191施設)の施設別推定成約単価の中央値(2026年9月)、稼働率(推定)とブッキングカーブは岡山県ビジネスホテルの掲載在庫ベース推定(N=46施設/5,423室、固定コホート48施設/5,688室)。公的統計は観光庁「宿泊旅行統計調査」(2025年確定値)、不動産情報ライブラリ(地価公示2026年・用途地域)、国土数値情報(駅別乗降客数・250mメッシュ将来推計人口)、経済センサス-活動調査(2021)。
■ 試算前提
販売可能室泊は177室×365日=64,605室泊(休館日なし)。稼働率は通年平均で75%・80%・85%、ADRは14,000円・16,000円・18,000円(税抜相当)の各3水準。公表料金は税込表示とみなし1.1で割って税抜相当に換算した(宿泊税等は考慮しない)。客室タイプ別の室泊は客室数に比例して配分。試算は客室売上のみで、料飲・温浴・ラウンジ等の付帯収入、販売手数料、運営費、投資額は含まない。
■ 限界・留意点
推定成約ADRと稼働率(推定)はOTA公開価格・掲載在庫に基づく推定値で、各施設の実績や観光庁の実稼働率とは定義が異なる(掲載在庫ベースの稼働率は高めに出る)。2026年10月以降のADRは調査時点の掲載水準による推定で、今後変動する。客室ストックの年次推移は開業年が確認できる44軒が対象で、直近年は今後の掲載で増える可能性がある。上位帯の集計は6か月以上の販売履歴がある施設に限る。公表料金は「〜から」の下限値で、実際の販売価格の分布とは異なる。ホテル部分の投資額が非公表のため、利回り・NOIは試算していない。
■ 一次資料・プレスリリース
- 四国旅客鉄道株式会社・株式会社JR四国ホテルズ「新ブランドホテル『HOTEL NEMUS OKAYAMA by CLEMENT』JR岡山駅前に2027年3月20日(土)開業」(2026年9月29日)
- KSB瀬戸内海放送「JR四国 岡山駅前に新ブランドのホテル 2027年3月20日開業 心に残る滞在を」(2026年9月29日)
- 鉄道チャンネル「HOTEL NEMUS OKAYAMA by CLEMENT」客室構成・付帯施設の報道(2026年10月5日)
- アパホテル株式会社「岡山県内最大級 全600室 アパホテル&リゾート〈岡山駅新幹線口〉本日開業」(PR TIMES、2026年8月6日)
- 野村不動産「岡山市駅前町一丁目2番3番4番地区第一種市街地再開発事業 組合設立」(2020年9月1日)
■ 政府統計・公的データ
- 観光庁「宿泊旅行統計調査 2025年1月〜12月分(確定値)」都道府県別客室稼働率・延べ宿泊者数
- 国土交通省 不動産情報ライブラリ — 地価公示(2026年)・用途地域・駅別乗降客数
- 国土交通省 国土数値情報「250mメッシュ別将来推計人口(R6国政局推計)」
- 総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査(2021)」(境界=国勢調査2020小地域)
- 国土交通省「建築着工統計調査」(ホテル建築費 坪単価)
■ 市場データ
- メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — 推定成約ADR(岡山市北区 N=50施設、岡山県 N=191施設)、稼働率(推定、岡山県ビジネス N=46施設/5,423室)、ブッキングカーブ(固定コホート48施設)、岡山駅1km圏客室ストック(掲載60軒・稼働中38軒、2026年10月21日時点)
- メトロエンジンリサーチ&コンサルティング 建築計画データ(野田屋町地区・駅前町一丁目地区の計画客室数、確認申請ベース)
