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宮崎のホテルはなぜ2月だけ高いのか — 駅1km圏2,645室の単価帯とコスモス薬品の複合開発を100室・150室で試算

投稿日 : 2026.10.28

宮崎県

投資・開発

宮崎のホテルはなぜ2月だけ高いのか — 駅1km圏2,645室の単価帯とコスモス薬品の複合開発を100室・150室で試算

コスモス薬品(3349)は2026年1月13日の取締役会で「ホテル部」の新設を決め、2月1日付で創業者の長男・宇野之崇氏を部長に据えた。報道によれば第1弾は創業県・宮崎の県都、宮崎市中心部のJT跡地、宮崎駅付近に取得した約2,000坪の用地で、ドラッグストアと宿泊特化型ビジネスホテルの複合施設を2028年ごろに開業する計画だという。一方で客室数・投資額・運営方式は2026年10月時点で未公表である。本稿では、宮崎市の推定成約ADRがなぜ2月だけ跳ねるのかを月別に解き、宮崎駅1km圏の客室ストックと価格帯の空白を確かめたうえで、客室数を100室・150室と仮置きした採算を感度表で開示する。

本記事のデータについて
• ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。
• エリア(都道府県・市区町村)単位のADRは、対象施設の推定成約単価の中央値(エリアの標準的な施設の水準)です。
• 掲載価格に言及する箇所は、2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
• OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。
• 出典:メトロエンジンリサーチ(国内約168,000施設のOTA公開価格を継続追跡、うち稼働確認済み約27,000施設)

本記事の客室ストックは、宮崎駅から半径1,000m圏内にある客室数10室以上の宿泊施設(レジャーホテルを除く)を対象とし、「稼働中」は直近3か月(2026年8月〜2026年10月)に主要予約サイトで販売価格が確認できた施設を指す(2026年10月21日時点、メトロエンジンリサーチ集計)。

Key Takeaways
  • — 2月だけが突出 — 宮崎市の推定成約ADRは2026年2月が12,582円(N=56施設)で、年間の谷の6月6,496円の1.9倍。2月以外は7,000〜9,000円台に収まる。
  • — 駅1km圏2,645室(稼働19軒・2026年10月21日時点)のうち18軒が推定成約ADR 6,000〜12,000円帯に集中し、13,000円以上の100室級は0施設。
  • — 建設費ベース利回り5.3% — 100室・150室とも、ADR9,500円・OCC72%(通年平均の仮定値)・GOP率40%の基本ケース。7%に届かせるにはADR12,600円が要る。
  • — 土地の自社保有が前提 — 駅前公示地価13万円/㎡前後で約2,000坪を分母に加えると、100室ケースの利回りは3.6%程度に下がる。
  • — 客室数・投資額は未公表(2026年10月時点)。2027年3月開業予定のダイワロイネットホテル宮崎212室と合わせ、2年で300〜360室が増える。

結論 — 高いのは2月だけ、駅1km圏に1万3,000円以上の100室級は見当たらない

宮崎市 推定成約ADR 2026年2月
¥12,582
N=56施設・前年同月比+16.9%
同 2026年6月(年間の谷)
¥6,496
N=58施設・前年同月比−3.9%
同 2026年9月
¥8,968
N=59施設・前年同月比+23.8%
宮崎駅1km圏 稼働中ストック
2,645室
19軒(掲載は27軒3,306室)
宮崎市ビジネスホテル 推定OCC
77.6%
2026年9月・19施設2,486室
空白の価格帯
¥13k〜20k
100室以上で該当0施設

先に結論を置く。宮崎市のホテル単価が「高い」と感じられるのは、プロ野球・Jリーグの春季キャンプが重なる2月に限られる。2026年2月の推定成約ADRは12,600円で、年間の谷である6月の6,500円に対して1.9倍の開きがある。ただし2月を除く月は7,000〜9,000円台に収まり、直近12か月(2025年10月〜2026年9月)の単純平均は8,200円、前年同期間の7,900円に対して+3.2%にとどまる。宮崎駅から1kmの円に入る稼働中の宿泊施設は19軒2,645室で、そのうち18軒の推定成約ADR(13か月中央値)は6,000〜12,000円の帯に集中している。13,000円以上で100室を超える施設は一つもなく、ここが新規参入の空白帯になる。

この空白をどう埋めるかが、コスモス薬品の複合開発を読むうえでの軸になる。客室数を100室・150室と仮置きし、2028年開業時点の建設費を1室あたり約1,890万円(S造・坪266万円)と見積もると、ADR9,500円・OCC72%(通年平均の仮定値)・GOP率40%の基本ケースで建設費ベースの利回りは5.3%、同じ前提で7%に届かせるにはADR12,600円が要る。土地を自社で保有している点が、この水準でも事業として成り立たせる前提条件になっている。

公表されている事実と、まだ公表されていない項目

まず、何が一次情報として確認でき、何が報道ベースの見通しにとどまるかを切り分けておく。コスモス薬品が自社のIRで開示しているのは、2026年1月13日付「組織変更及び人事異動に関するお知らせ」に記された「ホテル部」の新設と、商品開発部長だった宇野之崇氏のホテル部長就任(2月1日付)である。2026年5月期の決算短信(7月13日)はホテル事業を独立した項目として記載しておらず、連結の土地が前期末の532億円から675億円へ増え、有形固定資産の取得支出が704億円に達したことが読み取れる程度だ。所在地・客室数・投資額・運営方式は、2026年10月時点でいずれも未公表である。

コスモス薬品のホテル参入 — 公表事実と未公表項目(2026年10月時点)
項目内容情報の出どころ
組織2026年2月1日付で「ホテル部」を新設、部長は宇野之崇氏(創業者・宇野正晃会長の長男、前・商品開発部長)コスモス薬品 IR(2026年1月13日)
位置づけドラッグストア・調剤に続く「収益の柱」。横山英昭社長は決算会見で「先行事例を分析してお客さまから選ばれるホテルを作っていく」と発言日本食糧新聞(2026年1月23日)、東洋経済オンライン(4月7日)
第1弾の立地宮崎市中心部、宮崎駅付近のJT(旧日本専売公社)跡地。取得済みの用地は約2,000坪(約6,600㎡)都市商業研究所(2月23日)、日本経済新聞(1月13日)、東洋経済オンライン
業態ドラッグストアと宿泊特化型ビジネスホテルの併設東洋経済オンライン、日本経済新聞
開業時期2028年ごろ(東洋経済)。日経は「少なくとも2年以上」、Impress Watchは「開業まで2年ほど」と報道各報道。会社の公式な開業時期は未公表
客室数・投資額未公表—
運営方式自社ブランドかホテルチェーンとの提携かは未定(報道)Impress Watch(1月21日)
参照事例大阪・道頓堀の「ホテルフォルツァ大阪なんば道頓堀」(180室、2021年5月開業)は1階にドラッグコスモス道頓堀店が入り、3〜12階がホテル。運営はエフ・ジェイ ホテルズ、ビルの開発はコスモスのグループ会社・合同会社クロードImpress Watch、トラベルWatch

出典:各社公表資料・報道よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成

道頓堀の事例は「コスモスが運営するホテル」ではなく、「1階にコスモスの店舗が入るビルの上層階をホテルチェーンが運営する」形であることを押さえておきたい。宮崎の第1弾でホテル部が自社運営に踏み込むのか、道頓堀型の賃貸・提携に寄せるのかは、採算の読み方を大きく変える分岐点になる。

小売の土地がホテルになる理由 — インフレ下の土地保有と、宮崎のインバウンド比率6.8%

ドラッグストアがホテルを建てる動機は、商圏の需要以前に貸借対照表の側にある。コスモス薬品の連結の土地は2026年5月末で675億円と、1年で143億円増えた。東洋経済によれば同社のIR担当は参入の背景に「デフレからインフレへの転換」を挙げ、物価上昇局面では土地を自社で保有・活用する利点が大きいと説明している。店舗用地として先行取得した土地を平屋のドラッグストアで使うより、上層にホテルを載せて容積を使い切るほうが、同じ土地から生む賃料・収益は増える。土地が自社保有であれば、ホテル側の投資は建物に限られ、後述するとおり建設費ベースの利回りが事業の可否を決める。

もう一つ、ドラッグストアとホテルの併設には客導線の相乗がある。宿泊客は到着後に日用品・飲料・医薬品を1階で買い、ホテルの客室はドラッグストアの深夜・早朝帯を含む商圏人口を底上げする。ただし「インバウンドの医薬品・化粧品購買」を宮崎で過大に見積もるのは早い。観光庁「宿泊旅行統計調査」の2025年確定値では、宮崎県の延べ宿泊者数388万7,670人泊のうち外国人は26万3,050人泊と6.8%にとどまり、全国の27.2%(1億7,992万人泊/6億6,111万人泊)と比べると4分の1の比率である。外国人延べ宿泊は2019年比で+23.5%と伸びてはいるものの、前年比では−19.4%と振れが大きい。宮崎の第1弾は国内客を主語に組み立てる案件だと読むのが妥当だろう。

宮崎市の月別推定成約ADR — 2月の山、6月の谷、9月の前年比+23.8%

月別の形を見ると、「宮崎のホテルはなぜ高いのか」という問いの答えがそのまま出る。宮崎市(N=52〜59施設)の推定成約ADRは2024年2月10,800円、2025年2月10,800円、2026年2月12,600円と3年連続で2月が年間の最高値で、2026年は前年同月比+16.9%と山がさらに高くなった。プロ野球・Jリーグの春季キャンプで関係者と観戦客が1か月にわたり市内に滞在するためで、キャンプ需要そのものの内訳は本稿では扱わない。一方で谷は毎年6月に来る。2026年6月は6,500円で、2月の52%の水準しかない。

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(宮崎市・推定成約ADR・N=52〜59施設。2026年10月以降は調査時点の掲載水準に基づく推定)

2026年を月別に前年と比べると、1月+12.1%、2月+16.9%と年初が強く、3月は+0.6%で横ばい、4月から8月は−2.4%〜−4.2%と5か月連続で前年を下回った。9月は9,000円と前年同月の7,200円に対して+23.8%で、ここだけ再び跳ねている。10月以降は調査時点の掲載水準に基づく推定で10月11,600円、11月11,400円、12月9,700円と前年を上回る水準で始まっており、九州の旅行支援策と重なる時期でもあるため(九州ふっこう応援割の開始日に宮崎の掲載在庫がどう動いたかは別稿で検証している)、チェックイン日に近づくにつれて下方に動く余地を見ておきたい。

宮崎市の月別推定成約ADR(2024〜2026年、10〜12月は調査時点の推定)
月2024年2025年2026年2026年 前年同月比N(2026年)
1月¥7,702¥7,442¥8,339+12.1%57
2月¥10,809¥10,761¥12,582+16.9%56
3月¥8,142¥7,899¥7,948+0.6%58
4月¥7,503¥7,067¥6,894−2.4%57
5月¥7,737¥7,766¥7,543−2.9%57
6月¥7,109¥6,760¥6,496−3.9%58
7月¥7,466¥7,560¥7,240−4.2%58
8月¥7,635¥7,864¥7,642−2.8%58
9月¥7,829¥7,244¥8,968+23.8%59
10月¥8,130¥7,744¥11,630(推定)—58
11月¥9,024¥9,277¥11,369(推定)—58
12月¥7,358¥7,261¥9,707(推定)—55

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(宮崎市・推定成約ADR。10〜12月は調査時点の掲載水準に基づく推定)

稼働の側も確かめておく。OTA掲載在庫ベースの推定で、宮崎市のビジネスホテル19施設2,486室の稼働率(推定)は2026年6月が73.6%、9月が77.6%だった。全業態36施設3,724室では6月69.3%、9月76.5%である。観光庁の2025年確定値に戻ると、宮崎県のビジネスホテルの客室稼働率は63.8%で47都道府県中45位、全体でも54.1%(30位)と、単価だけでなく稼働にも上積みの余地が残る市場である。駅前の新築が稼働を先に取り、単価は2月と秋の繁忙期で稼ぐ、という宿泊特化型の典型的な形がここでも成り立つ。

宮崎市・宮崎県の推定稼働率と掲載価格平均(2026年6月・9月)
区分施設数客室数2026年6月 稼働率(推定)2026年9月 稼働率(推定)9月 掲載価格平均(税込)
宮崎市 全業態35〜363,639〜3,72469.3%76.5%¥17,428
宮崎市 ビジネスホテル192,48673.6%77.6%¥12,637
宮崎県 全業態(参考)108〜1126,048〜6,17369.9%78.4%¥14,836

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(OTA掲載在庫ベースの推定稼働率。総客室の30%以上をOTAに掲載する施設の固定コホート。施設全体の実稼働率とは異なる)

宮崎駅1km圏の客室ストック — 稼働19軒2,645室、2000年代開業が4割

次に供給を数える。宮崎駅を中心とする半径1,000mの円に入る客室10室以上の宿泊施設は、主要予約サイトへの掲載ベースで27軒3,306室、直近3か月(2026年8〜10月)に販売価格が確認できた稼働中の施設に絞ると19軒2,645室である。稼働中の内訳はビジネスホテル13軒1,942室、シティホテル5軒673室、リゾートホテル1軒30室で、ビジネスホテルが客室の73%を占める。規模別では101〜200室が9軒1,412室、201室以上が5軒1,069室と、100室超の中・大型が客室の94%を持つ市場だ。

開業年代で見ると、稼働中の客室のうち2000年代開業が9軒1,059室(40%)と最も厚く、1980年代が3軒619室(23%)、2010年代が3軒350室(13%)、2020年代が2軒326室(12%)と続く(2024年にアリストンホテル宮崎から転換したホテルマイステイズ宮崎208室は1981年開業として数えた)。開業年が確認できない3軒80室は年次推移に含めていない。年次推移では2017年の19軒2,301室から2021年に2,496室、2024年に2,659室へと、2024年2月に開業したプリンススマートイン宮崎(163室)で一段上がった(同年4月にアリストンホテル宮崎208室から転換したホテルマイステイズ宮崎は客室を増やしていない)。2027年3月にはダイワロイネットホテル宮崎(212室)が加わる予定で、現在の2,659室に対して+8.0%の2,871室になる。

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(宮崎駅1km圏・客室10室以上・開業年が確認できる施設。2027年はダイワロイネットホテル宮崎212室を加えた当社試算)

ここにコスモス薬品の100室または150室が2028年に載ると、稼働中ストック2,645室に対して+3.8%または+5.7%、ダイワロイネットと合わせると+12%〜+14%の増床になる。宮崎市のビジネスホテル稼働率(推定)が9月で77.6%、観光庁ベースの県平均が63.8%という水準で、2年間に300〜360室を吸収するには、2月以外の月の単価を崩さずに稼働を積む設計が要る。

立地 — 公示地価は駅前で13万円/㎡前後、橘通の最高地点で31.6万円

国土交通省「不動産情報ライブラリ」の2026年地価公示で、宮崎駅から1km圏の標準地を拾うと、駅に最も近い商業地「宮崎5-27」(約240m)が133,000円/㎡で前年比+3.9%、「宮崎5-7」(約400m)が128,000円/㎡で+3.2%だった。市内商業地の最高地点である「宮崎5-1」(橘通周辺、駅から約870m)は316,000円/㎡で+5.0%、「宮崎5-2」は217,000円/㎡で+4.8%と、駅前より橘通側のほうが地価は高く上昇率も大きい。県都の中心商業地が年3〜5%で上がっている局面で、2023年ごろから取得を進めてきた土地を遊ばせない、というコスモスの判断は地価の動きとも整合する。

宮崎駅1km圏の公示地価(2026年地価公示)
標準地用途宮崎駅からの距離2026年 公示地価前年比
宮崎5-27商業地約239m¥133,000/㎡+3.9%
宮崎5-7商業地約400m¥128,000/㎡+3.2%
宮崎5-2商業地約506m¥217,000/㎡+4.8%
宮崎5-8商業地約569m¥113,000/㎡+2.7%
宮崎5-28商業地約668m¥111,000/㎡+2.8%
宮崎5-1商業地約872m¥316,000/㎡+5.0%
宮崎-14住宅地約410m¥99,200/㎡+2.3%

出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(地価公示 2026年)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成

宮崎駅はJR日豊本線・日南線・宮崎空港線の結節点で、宮崎空港までは宮崎空港線で10分前後、橘通の繁華街へは徒歩10〜15分の距離にある。稼働中19軒の分布を地図に落とすと、駅東西の至近(約320m以内)にリッチモンドホテル宮崎駅前(201室)、東横INN宮崎駅前(200室)、JR九州ホテル宮崎(141室)、アートホテル宮崎スカイタワー(131室)が集まり、残りの大半は駅から800〜1,000m離れた橘通沿いに並ぶ。駅から1km圏とはいえ、実態は「駅前クラスター」と「橘通クラスター」の二つに割れており、JT跡地がどちらに近いかで競合の顔ぶれは変わる。

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(円の大きさ=客室数、破線=2027年開業予定)

ポジショニング — 18軒が6,000〜12,000円帯、13,000円以上の100室級は空白

稼働中19軒の推定成約ADR(2025年10月〜2026年10月の13か月中央値。2026年10月は調査時点の掲載水準に基づく推定を含む)を客室数と組み合わせると、市場の形がはっきりする。縦軸の6,000〜12,000円の帯に18軒2,615室が入り、帯の外にいるのはリゾート分類のTHE MEIBIA MIYAZAKI(30室、27,400円)だけである。100室以上で中央値が10,000円を超えるのはJR九州ホテル宮崎(141室、12,000円)、アートホテル宮崎スカイタワー(131室、10,500円)、リッチモンドホテル宮崎駅前(201室、10,300円)の3軒で、いずれも駅から320m以内の駅前クラスターにある。駅至近であることが、そのまま1万円台の単価に換算されている市場だ。市内に限らず県全体の価格帯構造と早期完売の分布は、宮崎・佐賀のホテル投資ホワイトスペースで整理している。

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(宮崎駅1km圏・稼働中19軒。推定成約ADRは2025年10月〜2026年10月の13か月中央値、円の大きさ=客室数)

密集 埋まっている領域

¥6,000〜12,000 × 100〜240室
18軒2,615室が集中。2024年に加わった2軒(新築のプリンススマートイン宮崎、アリストンホテル宮崎から転換したホテルマイステイズ宮崎)もこの帯に入り、新しさだけでは帯の外に出ていない。

空白 アッパーミッド宿泊特化

¥13,000〜20,000 × 100室以上
該当0施設。2月の市全体(12,600円)と駅前3軒の中央値(1.0〜1.2万円)のすぐ上に、誰も取っていない帯がある。

少数 小規模高単価

¥20,000以上 × 30室
THE MEIBIA MIYAZAKIの1軒のみ。規模の経済が働かない帯で、宿泊特化型の複合開発とは競合しにくい。

宮崎駅1km圏・稼働中19軒の推定成約ADR(2025年10月〜2026年10月)
施設名客室数区分開業年駅からの距離推定成約ADR 13か月中央値2026年2月2026年6月
エアラインホテル237シティホテル1981887m¥6,253¥10,623¥5,537
ホテルルートイン宮崎橘通213ビジネスホテル2008871m¥8,226¥12,209¥6,864
ホテルJALシティ宮崎210シティホテル2002888m¥9,576¥16,974¥8,523
ホテルマイステイズ宮崎208ビジネスホテル2024971m¥9,039¥17,690¥6,332
リッチモンドホテル宮崎駅前201ビジネスホテル2002190m¥10,345¥15,971¥7,774
東横INN宮崎駅前200ビジネスホテル2005115m¥7,614¥9,902¥7,058
コンフォートホテル宮崎179ビジネスホテル2018980m¥8,634¥13,187¥6,736
ホテルメリージュ174シティホテル1988840m¥7,948¥12,683¥6,974
グリーンリッチホテル宮崎橘通2163ビジネスホテル2021895m¥9,751¥16,553¥7,157
プリンススマートイン宮崎163ビジネスホテル2024953m¥7,969¥14,066¥6,590
アパホテル〈宮崎駅橘通〉160ビジネスホテル1994818m¥7,608¥14,345¥6,182
JR九州ホテル 宮崎141ビジネスホテル2011102m¥12,013¥19,772¥9,326
アートホテル宮崎 スカイタワー131ビジネスホテル1991317m¥10,519¥21,304¥7,730
レガロホテル宮崎101ビジネスホテル2007829m¥7,152¥10,021¥5,728
ひまわり荘50ビジネスホテル2002724m¥6,012¥9,478¥5,526
ニューウェルシティ宮崎35シティホテル2004259m¥8,732¥13,439¥7,335
ビジネス宮崎ロイヤルホテル32ビジネスホテル2001629m¥5,972¥10,115¥5,262
THE MEIBIA MIYAZAKI30リゾートホテル2012662m¥27,397¥31,927¥23,249
ホテルセンチュリー 宮崎17シティホテル2002387m¥9,357¥14,678¥7,716

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(宮崎駅1km圏・稼働中19軒、客室数の多い順。推定成約ADRは各施設の月次推定値、中央値は2025年10月〜2026年10月の13か月。10月は調査時点の掲載水準に基づく推定を含む)

表からもう一つ読めるのは、2月の山が全施設に一様に乗る点である。駅前のリッチモンドホテル宮崎駅前は中央値10,300円に対して2月16,000円、JR九州ホテル宮崎は12,000円に対して19,800円、橘通のグリーンリッチホテル宮崎橘通2も9,800円に対して16,600円と、この3軒は2月に中央値の1.5〜1.7倍で成約しており、19軒全体でも1.2〜2.0倍の幅にある。キャンプ需要は駅前・橘通の別なく市内全体を持ち上げるため、新規参入者も2月に関しては立地を問わず恩恵を受けられる。逆に6月はリゾート1軒を除く全施設が5,200〜9,300円に沈み、ここでの単価維持が年間の収益を決める。

簡易シナリオ — 100室・150室で建設費ベースの利回りは5.3%、7%にはADR1.26万円

客室数が未公表である以上、以下は仮置きの前提に基づく試算にすぎない。ただ、前提をすべて表で開示したうえで感度を見ておけば、公表された時点で読み替えられる。建設費はarchi-book 2025年版が示すS造の2025年坪単価240.5万円(二次集計値)を出発点に、Turner & Townsendの予測する建設費上昇(2026年+5.3%、2027年+5.0%)を2028年開業の工事中間点まで織り込んで坪266万円とした。客室面積16㎡・客室部分比率68%で1室あたりの延床は23.5㎡(7.1坪)、建設費は1室約1,890万円になる。福井駅前で2028年開業予定の204室が総事業費38.9億円・1室1,907万円と公表されており、桁感は揃っている。

簡易シナリオの前提(本稿の仮置き値)
前提採用値根拠
客室数100室 / 150室(仮置き)未公表のため2ケース。宮崎駅1km圏の101〜200室帯が9軒と最も厚い
ADR¥9,500(感度 ¥8,500〜10,500)駅前3軒の13か月中央値1.0〜1.2万円と、2024年に加わった2軒の約8,000〜9,000円の中間
OCC72%(感度 65〜78%)宮崎市ビジネスホテルの推定稼働率73.6%(2026年6月)〜77.6%(2026年9月)、観光庁の県ビジネスホテル年間63.8%
GOP率40%業界一般の基準とされる30〜40%前後(リロホテルソリューションズ)と、インヴィンシブル投資法人のMHM運営91物件実績38.9%(2024年12月期)を踏まえた本稿の仮定
建設費坪266万円・1室約1,890万円S造2025年240.5万円/坪(archi-book 2025年版)に2028年までの上昇を複利で加算。FF&E・設計監理・ドラッグストア部分は含まない
土地自社保有(投資額に含めない)取得済み約2,000坪(日本経済新聞)。機会費用は本文で別途言及

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成。簡易試算であり、実際の投資判断には詳細なフィージビリティ・スタディが必要

ケース別の建設費・GOP・建設費ベース利回り(基本ケース)
ケース客室数ホテル延床(概算)建設費年間客室売上GOP建設費ベース利回り1km圏ストック比
A. 100室100室2,353㎡18.9億円2.50億円1.00億円5.3%+3.8%
B. 150室150室3,529㎡28.4億円3.74億円1.50億円5.3%+5.7%

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(ADR¥9,500・OCC72%(通年平均の仮定値)・GOP率40%の基本ケース。ストック比は稼働中2,645室に対する増分)

基本ケースでは100室でGOP1.0億円、150室で1.5億円となり、建設費ベースの利回りは客室数に関わらず5.3%である。GOPの階層と100室モデルの感度で示したとおり、ADRが±5%動けばGOPは±10%前後動く。感度表ではADR8,500円・OCC65%の下限で4.3%、ADR10,500円・OCC78%の上限で6.3%に収まり、同じ前提で7%に届かせるには、OCC72%のままADRを¥12,600まで上げる必要がある。これは2026年2月の宮崎市全体の水準(12,600円)と同じで、JR九州ホテル宮崎の13か月中央値(12,000円)をやや上回る。年間を通してその単価を取るには、駅前立地に加えて空白帯の13,000〜20,000円を取りにいく客室仕様が前提になる。

建設費ベース利回りの感度(ADR×OCC、OCCは通年平均の仮定値)
建設費ベース利回りOCC 65%OCC 72%OCC 78%
ADR ¥8,5004.3%4.7%5.1%
ADR ¥9,5004.8%5.3%5.7%
ADR ¥10,5005.3%5.8%6.3%

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(GOP率40%・1室建設費約1,890万円。網掛けが基本ケース)

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(OCC72%(通年平均の仮定値)・GOP率40%)

利回りが客室数に依存しない形で出るのは、固定費の規模効果をモデルに入れていないためで、実際にはフロント・清掃の人員とドラッグストア側との共用(受付・搬入・駐車場)で150室のほうがGOP率は上に出やすい。一方で土地を投資額に含めない点は、試算を読むうえで最も注意が要る。駅前の公示地価13万円/㎡前後で2,000坪(約6,600㎡)を換算すると土地の時価は8億円台になり、これを分母に加えれば100室ケースの利回りは5.3%から3.6%程度に下がる。土地を持つ事業者だけが成立させられる水準であり、土地を新たに取得して同じ事業を組む投資家にとっては、ADRを空白帯に乗せられるかどうかが可否の分かれ目になる。

工期も複合施設ならではの論点である。ホテルの工期は単独棟で中央値24か月、複合ビルでは49か月と2倍の開きがあり、2028年ごろの開業を目指すなら、低層にドラッグストア・上層に宿泊特化型という構造でも2026年内の着工が目安になる。開業が2029年にずれれば建設費はさらに年4〜5%上がり、1室あたりの建設費は2,000万円に近づく。

投資家・土地オーナー・小売の開発担当への示唆

ここまでを整理すると、宮崎駅前の複合開発は「安い市場に建てる」案件ではなく、「6,000〜12,000円に18軒が並ぶ市場で、13,000円以上の空白帯を100室級で取りにいく」案件として読むのが筋になる。ホテル投資家にとっての論点は三つある。第一に、2月の山(市全体で12,600円)は立地を問わず全施設に乗るため、新規参入者も初年度からキャンプ需要を取り込める。第二に、6月の谷(6,500円)で単価を崩さない客室仕様と販路が、年間の利回りを1pt以上動かす。第三に、2027年のダイワロイネット212室と合わせて2年で300〜360室が増える局面で、観光庁ベースの県ビジネスホテル稼働率63.8%(2025年通年・確定値)にはまだ上積みの余地がある。

地方の土地オーナーにとっては、コスモスの意思決定そのものが参考になる。平屋の物販で使っていた駅前の土地を、ホテルを載せて立体化する選択肢は、地価が年3〜5%で上がる県都の中心商業地ほど価値が出る。土地を既に持っていれば建設費ベースで5%台の利回りが見込め、道頓堀型のように運営をホテルチェーンに委ねて賃料で受け取る形なら、運営リスクを切り離したうえで土地の高度利用だけを取ることもできる。小売・デベロッパーの開発担当にとっては、1階の店舗が宿泊客の生活動線に入り、ホテルの客室が店舗の商圏人口を夜間まで延ばすという相乗が、ドラッグストアに限らずスーパー・家電・ホームセンターでも組み立てられる余地を示している。

⚠ 将来日程のADRに関する注意:本記事の2026年10月以降のADRは調査時点でOTAに公開されている販売価格に基づく推定であり、チェックイン日に近づくにつれて変動する。現時点で高く設定されている価格が直前の価格調整で下落する可能性がある点に留意されたい。また本稿の採算試算は客室数・ADR・OCC・建設費をいずれも仮置きした簡易試算であり、コスモス薬品が公表した計画値ではない。

よくある質問

Q. 宮崎のホテルが高いのはいつですか。
A. 2月です。宮崎市の推定成約ADRは2026年2月が12,600円(N=56施設)で年間の最高値、プロ野球・Jリーグの春季キャンプが要因です。年間の谷は6月(6,500円)で、2月以外の月は7,000〜9,000円台に収まります。

Q. コスモス薬品のホテルは何室で、いつ開業しますか。
A. 客室数・投資額は2026年10月時点で未公表です。報道では宮崎市中心部のJT跡地・約2,000坪に、ドラッグストアと宿泊特化型ビジネスホテルの複合施設を2028年ごろ開業する計画とされています。会社が自社IRで公表しているのは、2026年2月1日付の「ホテル部」新設と部長人事です。

Q. 大阪のホテルフォルツァはコスモスが運営しているのですか。
A. いいえ。ホテルフォルツァ大阪なんば道頓堀(180室、2021年開業)は1階にドラッグコスモス道頓堀店が入るビルで、ホテルの運営はエフ・ジェイ ホテルズ、ビルの開発はコスモスのグループ会社・合同会社クロードと報じられています。

まとめ

宮崎市のホテル単価は2月だけが突出し、それ以外の月は7,000〜9,000円台で推移する。宮崎駅1km圏の稼働中19軒2,645室のうち18軒は6,000〜12,000円の帯にあり、13,000円以上で100室を超える施設はない。コスモス薬品がJT跡地で計画する複合開発を100室・150室で仮置きすると、建設費ベースの利回りはADR9,500円・OCC72%(通年平均の仮定値)で5.3%、7%にはADR12,600円が要り、それは2月の市全体の水準に等しい。土地を自社で保有していることが、この市場で事業を成立させる最大の前提条件であり、客室数と運営方式が公表された時点で本稿の感度表を読み替えてほしい。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

メトロエンジンリサーチ&コンサルティングのOTA公開価格追跡データ — 宮崎市の推定成約ADR(N=52〜59施設、2024年1月〜2026年12月の月次)、宮崎駅半径1,000m圏の客室ストック(客室10室以上・レジャーホテル除く、稼働中=2026年8〜10月に販売価格を確認できた施設、2026年10月21日時点)、OTA掲載在庫ベースの推定稼働率(2026年6月・9月)。公的統計は観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年確定値と国土交通省の2026年地価公示を用いた。

■ 試算前提

客室数100室・150室(仮置き)、ADR9,500円(感度8,500〜10,500円)、OCC72%(通年平均の仮定値、感度65〜78%)、GOP率40%、建設費は坪266万円・1室約1,890万円(S造、2028年開業想定)。土地は自社保有として投資額に含めず、建設費ベース利回り=GOP÷建設費で算出した。

■ 限界・留意点

推定成約ADRはOTA公開価格に業態別の補正係数を適用した推定値で、上場ホテルREITの開示実績との照合では誤差中央値が約7%ある。2026年10月以降の値は調査時点の掲載水準に基づく推定で、直前の価格調整で変動しうる。推定稼働率はOTA掲載在庫ベースで、施設全体の実稼働率とは異なる。試算は固定費の規模効果、FF&E・設計監理費、ドラッグストア部分、土地の機会費用を含まない簡易試算であり、コスモス薬品の計画値ではない。

■ 市場データ

■ 企業公表資料

■ 政府統計・公的データ

■ 業界レポート・REIT開示

■ ニュース・報道

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